JP4213981B2 - ヒートパイプ及びそれを用いた冷却装置 - Google Patents

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    • F28D15/0266Heat-exchange apparatus with the intermediate heat-transfer medium in closed tubes passing into or through the conduit walls ; Heat-exchange apparatus employing intermediate heat-transfer medium or bodies in which the medium condenses and evaporates, e.g. heat pipes with separate evaporating and condensing chambers connected by at least one conduit; Loop-type heat pipes; with multiple or common evaporating or condensing chambers

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は例えば加熱、冷却、放熱、伝熱、及び熱交換などに用いることができるヒートパイプ、特に熱流束特性を改善したヒートパイプ及びそれを用いた冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のヒートパイプとしては各種方式のものが提案されている。例えばループ型ヒートパイプにおいて、往路ヒートパイプの流路抵抗を復路ヒートパイプの流路抵抗よりも小とするため、復路ヒートパイプの一部を押圧して断面を長円形にしたり、復路ヒートパイプの一部に内径の小なるパイプを接続し、受熱部で気化した冷媒のガスを流路抵抗の小なる往路ヒートパイプに流入させることにより、流路抵抗となる弁を使用せずに冷媒の流れを規制すると共に、起動時間を短縮させたヒートパイプなどが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−280473号公報(第3頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
現在、開発改良が急ピッチで進行している各種電子機器は、よりコンパクトになると共に高出力化しており、その発熱流束は数十から数百W/cm2程度、中には数千W/cm2程度のレベルにまで増大している。このように、より優れた電子機器が開発されている中で、現状ではそれにマッチする高性能な放熱素子がなく、実用化できない状況であり、高性能放熱素子の開発が強く熱望されている。
【0005】
上記のような従来の放熱素子の内、毛細管力式ヒートパイプでは、毛細管力という小さな駆動源により液を循環していることから高発熱流束での使用は難しく、また重力式ヒートパイプでは姿勢の影響が大きく取付けが難しい。また、数百W/cm2レベルの高発熱流束条件の場合、熱を輸送できるものがなかった。さらに、自励振動式ヒートパイプは姿勢の影響は小さいものの、動作が不安定であり、また高発熱流束条件では熱を輸送することができないという問題があった。
【0006】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、外部動力を用いることなく確実に動作を開始し、高発熱流束の場合でも熱を安定して輸送することができるヒートパイプ、及びそのヒートパイプを用いたコンパクトな冷却装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
なお、本書においてヒートパイプとは必ずしも外観が細長いパイプ状のものに限るものでないことは勿論であり、例えば板材、ブロック材、多数の放熱フィンを設けたヒートシンクなどの基体の内部に、作動流体の流路を形成したものなどを全て含むものとする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明によるヒートパイプは、作動流体が密封収容される流路に、流路の断面周長及び偏平率の少なくとも一方が流路に沿って増大する流路変化部を、増大方向を揃えて複数直列に連結させると共に、これら複数の流路変化部を受熱部として用いるようにしたものである。
【0009】
また、この発明によるヒートパイプを用いた冷却装置は、作動流体が密封収容される流路に、流路の断面周長及び偏平率の少なくとも一方が流路に沿って増大する流路変化部を、増大方向を揃えて複数介在させると共に、これら複数の流路変化部を受熱部として用いるようにしたヒートパイプを基体に一体的に組み込んでなるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1及び図2はこの発明の実施の形態1によるヒートパイプを説明するものであり、図1はヒートパイプの流路構成を模式的に示す断面図、図2はその動作を説明するための要部断面図である。また、図3及び図4は実施の形態1の変形例及び他の変形例を説明する要部断面図である。なお、他の実施の形態を含め、各図を通じて同一符は同一もしくは相当部分を示すものとする。
【0011】
図に示すように、閉ループ1を形成する断面が略矩形の流路10は、該流路10の一方の通流方向(図の例では、左回りの方向)に断面周長(即ち作動流体の通流方向に直角な面で流路を輪切りにしたときの内周面の長さ)が拡大するように形成された複数(図では4箇所)の流路変化部11と、この流路変化部11の小周長側に連結されたここでは断面周長が小である流路幅がW1である基部流路12と、流路変化部11の大周長側に連結されたここでは断面周長が大である流路幅がW2の増大側流路13と、上記基部流路12と増大側流路13の反流路変化部11側相互を互いに連結する接続流路14からなっている。
【0012】
なお、この実施の形態1では、上記流路10の深さは通流方向(流路の方向)に実質的に略一様であり、流路10の幅は図示のように流路に沿って変化させており、上記流路幅W1とW2の関係は、W1<W2である。
【0013】
上記流路変化部11は、発熱体あるいは受熱用の熱交換器などを熱的に結合するための受熱部2に配設され、一方、流路変化部11以外の全てまたは一部は、放熱部3として用いられ、この放熱部3にヒートシンクあるいは放熱用の熱交換器などが熱的に結合される。そして、閉ループ1の内部には作動流体4が密封されている。なお、41は作動流体4の液相部分(以下、単に液体と言う)、42は作動流体4の気相部分(以下、単に気体と言う)、42aは蒸気泡、小矢印42bは蒸気の発生、流出を示す。なお、流路10内に示す両端矢印Aは作動流体4の振動方向、長矢印Bは作動流体4の一時的な、ないしは、ある瞬間における移動方向を示す。
【0014】
上記流路変化部11は、この実施の形態1では流路の深さを変えずに流路の幅が流路の方向に沿って漸増するテーパ状に形成され、断面周長と偏平率が増大するように形成されており、基部流路12と増大側流路13との連結、作動流体4(液体41及び気体42)の加熱(または過熱)、蒸気泡42aの生成、作動流体4の送出、ならびに作動流体4が振動しながら移動する通路などとしての役割を有している。
【0015】
上記基部流路12と増大側流路13は、作動流体4が振動しながら移動する通路の役割を有し、これら流路12、13の全部またはその一部は、液体41の冷却及び気体42の凝縮の役割も有している。該流路12、13の断面形状は特に矩形に限定されず、例えば正方形、円形、楕円形、及び三角形、五角形などその他の多角形、あるいはそれらを組み合わせた任意の形状でもよく、また曲がり・エルボを伴った通路でも良く、蛇行・コルゲート管状の通路でも良い。また、流路の方向に断面形状を変えても良い。
【0016】
次に、上記のように構成された実施の形態1の動作を、図2を参照して説明する。受熱部2に配設された流路変化部11内の液体41は、受熱により温度上昇し高温流体となり、沸騰が生じ蒸気泡42aが発生する(図2(1))。この蒸気泡42aの単独成長または複数の蒸気泡42aの合体により、流路変化部11は気体42により覆われ、大きな蒸気泡42aとなって、蒸発・凝縮の不安定性に起因した微振動(自励振動)を生じながら停滞する(図2(2))。
【0017】
この時、何らかの要因、例えば、閉ループ1を形成する流路10内の他の流路変化部11内での突沸または外部からの振動などにより、液体41が例えば図2(3a)のように増大側流路13の側から矢印Bの向きに送入されると、蒸気泡42aが基部流路12の方向へ移動すると共に、増大側流路13側気液界面が反転し、液体41と気体42と流路変化部11壁の接する線(濡れ縁長さ)上近傍で活発な蒸発が生じ、またこの濡れ縁長さが大きいことから、より多くの蒸気42bを発生し、蒸気泡42aの容積は増大し、単なる同容積の蒸気泡42aが移動した場合(図2(3a)中の破線Cで示す気液界面)に比べ、さらに該送入方向(図の右方)前方へ気液界面が移動する(図2(3a))。
【0018】
従って、気体42の凝縮が生じる面積が急増し、激しい凝縮が生じ(通路壁のせん断力の影響が小さな通路中央を蒸気泡42aが移動しようとすることから、通路壁上の液体膜の厚さが薄くなり、活発な凝縮が生じるには蒸気泡42aの移動に比べて時間遅れが生じるため、急激な凝縮が生じる)、送出した液体41を流路変化部11へ吸引する共に、基部流路12側の気液界面は反転する(図2(4a))。
【0019】
この過程は閉ループ1を形成する流路10内の他の流路変化部でも生じており、その影響で例えば、図2(3a)の状態から増大側流路13の方向(図の左方向)へ液体41が吸引されると、増大側流路13側の気液界面(初期の液体41送入時に反転した気液界面)が再度反転し接触角が減少し、濡れ縁部が薄膜となることから活発な蒸発が生じると共に、偏平流路中央部では側壁からの毛細管力が小さいために、濡れ縁部の移動が生じ内壁に薄い液膜が形成され、その部分で非常に活発な蒸発が生じる。それ故、微振動を生じながら停滞していたとき(図2(2))の気液界面位置よりも更に該吸引方向前方(図の左方向)へ気液界面は移動する(図2(4a))。
【0020】
よって、前述同様、気体42の凝縮が生じる面積が急増し激しい凝縮が生じ、増大側流路13内の液体41を流路変化部11へ再び吸引し、増大側流路13側気液界面が再度反転すると共に、図2(3a)以上に蒸気泡42aの容積が増大し、より多くの蒸気42bを基部流路12内へ送出する(図2(5a))。(小周長側では、偏平率が大きい、または流路が小さいため、増大側流路側の反転の際の蒸気発生量よりも小さい。)
【0021】
この液体41の送出方向の反転が繰り返され、蒸気泡42aは成長し、流体振動振幅が増大し、ある一定の振幅に達すると安定した振動になる場合もあるが、振幅が増大し続ける場合もあり、この場合流路変化部11を介して蒸気泡42aの一部を、接続流路14を介して送出することもあり、また閉ループを形成する流路10における隣の流路変化部11を介して振動する蒸気泡42aを押し流すこともある。
【0022】
この場合は、再び図2(1)のように流路変化部11内で蒸気泡42aが生成され成長し、再び振動が生じる。これら一連の過程が反復され、継続することにより、受熱部2から伝えられた熱は大きな振幅を伴う振動及び液体41と気体42の相変化により、熱を放熱部3へ輸送する。
【0023】
上記動作説明においては、図2の左側から右方向への液体41の初期移動変化が起きた場合を起点として説明したが、図2(3b)のように、図の右側から左方向への液体41の初期移動変化が起点である場合は、増大側流路13側では凝縮量が大きく、基部流路12側では蒸発量が小さいために、蒸気泡42aの容積が収縮して大きな振動は生じさせることができず、図2(4b)の微振動が生じている状態で安定する。
【0024】
従来の自励振動型ヒートパイプの場合、初期移動変化の方向によらず、初期移動変化後の状態が蒸発量より凝縮量が大きい場合には蒸気泡容積が縮小し、逆に凝縮量より蒸発量が大きい場合には蒸気泡容積が増大する。本発明の実施の形態1も、従来の自励振動型ヒートパイプも、閉ループに形成された流路に複数の受熱部2が設けられ、これら複数の受熱部でそれぞれ蒸気泡が形成される点は同じである。全ての蒸気泡が初期移動変化により実質的に一斉に同一方向に移動することは確率的に非常に稀なことであり、ほとんどの場合、それぞれの蒸気泡は不規則に移動している。
【0025】
従来のパイプ径が一様な自励振動型ヒートパイプでは、各蒸気泡で同様の容積縮小または増大がランダムに生じており、不規則な方向へ液体の送出または送入が生じるため、該送出または送入による変化が互いに打ち消しあい、大きな振動を生じるに至らない。このことは、例えば、ブランコに乗った人が不規則な動きをしても、ブランコは大きく揺れないことと同様の現象である。
【0026】
これに対し、本発明では、複数の流路変化部11を受熱部2に配設していることにより、初期移動の方向によって、蒸気泡42aに生じる蒸発量・凝縮量が互いに異なるため、任意の一方向への初期移動変化においては液体41を送出し(図2(3a))、逆の方向への初期移動変化においては液体41を吸引する(図2(3b))ように動作するため、閉ループ1を形成する流路10内の複数の流路変化部11でそれぞれ発生する複数の蒸気泡42aが、相互に不規則な方向に移動しても、大きな振幅を伴う振動が確実に生じる。このことは、例えば外力を与えることなく、ブランコに乗った人が周期的に重心移動することにより、ブランコは次第に大きく揺れ、その揺れは増大し継続するのと同様である。
【0027】
上記のように、外力を与えることなく、その微振動の系に影響する物理量または物性値など(本発明では、蒸発量及び凝縮量)が、該微振動の周期に呼応して変化する場合に生じる振動を、一般に係数励振振動と呼ばれているが、本発明のヒートパイプは正にこの係数励振振動を利用して熱の輸送が行われているものと考えられる。
【0028】
上記実施の形態1では、上記係数励振振動が生じることにより、外部動力を用いることなく流路変化部11を介して閉ループを形成する流路10内の複数の蒸気泡42aが大きく往復運動(振幅の大きな振動)し、閉ループ1に沿った作動流体(液体41及び気体42)の移動、流路10壁近傍流体の攪拌、流体の相変化(沸騰・蒸発または凝縮)及び顕熱変化を利用して、熱を効率良く輸送または拡散することができる。
【0029】
上記説明したように、この実施の形態1によれば、外部動力を用いることなく閉ループ1内の液体41の係数励振振動が確実に信頼性高く生じ、流路変化部11を介して閉ループ1内の複数の蒸気泡42aが大きく往復運動(振幅の大きな振動)し、閉ループ1に沿った流体(液体41及び気体42)の移動、閉ループ1壁近傍流体の攪拌、流体の相変化(沸騰・蒸発または凝縮)及び顕熱変化を利用して、受熱部2から放熱部3へ熱を効率良く輸送することができる。
【0030】
また、ポンプ等の可動部を有さないことにより、耐久性・信頼性に富み、コンパクトで軽量であり、特に薄型化が容易である。さらに、重力を利用しない熱輸送機器であり、また重力の影響を受け難い構造であるため、微小重力及び無重力空間,逆に高重力環境においても使用することができる。さらに、高発熱流束の発熱体からの熱輸送及び熱拡散が容易であり、熱特性が非常に良い。
【0031】
上記流路変化部11は、この実施の形態1では流路の幅を広げることにより断面周長を増大させ、その結果、流路の偏平率及び断面積も大きくなるように構成したが、断面周長、偏平率、及び断面積の何れかを変えずに構成しても同様の効果が期待できる。なおここでは、流路の幅と高さの内、何れか大きい方の寸法に対する小さい方の寸法の割合を偏平率とする。例えば、断面正方形、正円形、及び幅と高さが等しい多角形などの場合は偏平率=1となり、例えば長方形、楕円形、及び幅と高さが異なる多角形などの場合は、偏平率<1となる。
【0032】
即ち、この発明のヒートパイプにおける流路変化部11は、次の(1)、(2)の何れか一方、または(1)及び(2)の条件を合わせた構成とすることが必要である。
(1)流路の断面周長が流路に沿って増大する。
(2)流路の偏平率が流路に沿って増大する。
なお、上記(1)の場合において、流路変化部11の前後で断面積、または偏平率は同一であっても良い。また、上記(2)の場合において、流路変化部11の前後で断面周長、または断面積は同一であっても良い。
【0033】
また、上記流路変化部11は、閉ループ1もしくは一つの流路10の中に少なくとも2つ、流路の何れか一方の方向に拡大方向を揃えて設けられていれば良い。なお、確実な起動を行わせるためには、一つの流路10内に設ける数は多い方が好ましい。また、上記流路変化部11の通流方向への形状は、テーパ状のものに限定されるものではない。
【0034】
例えば、流路変化部11の変形例である図3(a)に示すように断面略円形の曲線の一部を用いて流路変化部を形成したもの、図3(b)に示すように作動流体の移動方向に断面積を変えずに周長を増大させるように形成したもの、あるいは流路変化部11の他の変形例であると同時に、流路10の変形例(非ループ状にしたもの)でもある図4に示すように流路の曲げ部によって形成したものなどでも同様の効果が期待できる。
【0035】
なお、上記図3(b)において、(1)は図示を省略している基部流路との接続部近傍における流路変化部の断面形状であり、内周面10aは平滑な円形である。(2)は流路変化部11の中間部分の断面形状であり、内周面10bは高さの低い襞状の凹凸に形成されている。(3)は図示を省略している増大側流路との接続部近傍における流路変化部の断面形状であり、中間部の内周面10bよりも高い襞状の凹凸の内周面10cが形成され、上記(1)〜(3)は順次連続的に変化するように形成されている。上記(1)と(3)では、断面積及び偏平率は実質的に同一であるが、周長は増大しており、図1の場合と同様の係数励振振動を生じさせることができる。
【0036】
また、上記流路変化部11の断面周長を通流方向に増大させる場合、通流方向に鋭角な角を有する通路(例えばテーパの開き角度が180度以上というような急拡大)を形成することは、増大側流路との接続部の角部にドライスポット(液体41で濡らされ難い部分)が発生し易く、また流体移動に伴う摩擦圧力損失が大きくなることから、断面周長が滑らかに増大するように形成することが望ましい。例えば特に限定されるものではないが、テーパ状の場合には開き角度が約60°以下、さらには約30°以下にすることは望ましい。さらに上記流路変化部11の断面形状は例示した矩形や円形に限定されるものではなく、例えば、楕円形、その他の多角形あるいはそれらを任意に組み合わせた形状のものでも良い。
【0037】
本発明では、典型的な動作として係数励振振動を生じるものであることから、「小流路幅<大流路幅」(断面周長の拡大を溝の深さが略一定の流路で形成した場合)および「蒸気泡と液スラグの入替りが生じない」ことが重要である。ここで、気泡離脱直径(加熱壁から離脱する蒸気泡の直径、例えば大気圧基準の蒸留水では約2.7mm、フロリナートでは約1mmなど)をDとしたときに、好ましい動作を得るためには、流路10の深さに関しては、2D以下、さらに好ましくはD以下であることが望まれるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0038】
また、増大側流路13の幅W2の寸法が大き過ぎると耐圧設計が難しくなり、容器壁厚を大きくしなければならず、コスト・重量・容積増大のために製作が不利になる。また、蒸気泡と液スラグの入替りが生じないように流路幅W2が大き過ぎないことが望ましい。例えば、増大側流路の幅W2は10D以下、さらに好ましくは5D以下とすることは望ましい。また、基部流路12の流路幅W1と増大側流路13の流路幅W2の比率(W2/W1)としては約1.1倍以上が望ましく、更に約2〜5倍程度とすることは望ましい。さらに、幅と深さの関係を逆にしても差し支えない。
【0039】
一方、受熱部2の流路方向への長さは、上記気泡離脱直径Dより小さ過ぎるとドライスポットになり易いので、約0.2D以上、さらに好ましくは約D以上とするのが望ましい。なお、微小重力の場合、上記「蒸気泡と液スラグの入替りが生じない」ことは寸法によらず入替わりが発生し難くなることから、上記寸法を外れても良い。また、上記受熱部2の流路方向への長さが、流路変化部11の長さよりも長くなっても差し支えないが、増大側流路13及び基部流路12部分が受熱部2に長い距離置かれることは、生じた気泡が流体の振動及び移動を阻害する(周長の変化しない流路部分に2つ以上の蒸気泡が停滞すると自励振動の場合と同様に振動を減衰させてしまい、却って大きな振動を発生させなくなる)ので好ましくない。
【0040】
また、上記基部流路12または増大側流路13の一部は、受熱用熱交換器などの受熱部2の一部が接しても良く、この場合、流体の加熱または過熱の役割を有することになる。また、通路内に例えば伝熱促進及び耐圧設計を目的としたリブ(該流路12、13をリブにより仕切られた並行通路を形成することも含む)または乱流促進体(図示省略)などを設けても良い。
【0041】
さらに、接続流路14は基部流路12と増大側流路13とを連結する役割と、密封された流体4が振動しながら移動する通路の役割も有し、その断面は流路12、13と同様に特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、その他の多角形及びそれらを任意に組み合わせた形状など、所望により適宜な形状を選んで用いることができる。また、同様に断面形状及び断面周長は、流路方向に一様である必要はなく、例えば急拡大、テーパまたエルボ、曲がり、さらにコの字形などの通路でも差し支えない。
【0042】
さらに、上記接続流路14は必ずしも必須なものではなく、無限小の長さでも良い。このように接続流路14を省いた場合は、基部流路12と増大側流路13との単なる接続口、あるいは一組の基部流路12、流路変化部11、及び増大側流路13からなる連結体を「要素」として捉えたときに、該要素相互の単なる連結口ないしは連通部と見なすことができる。
【0043】
さらにまた、上記流路10は、作動流体を収容する容器及び流体が振動しながら移動または循環する通路の役割を有し、この実施の形態1では閉ループ1を形成する循環路としたが、例えば図4に示す他の変形例のように、閉ループ(循環路)に形成しなくても差し支えない。なお、図4(a)は5つの流路変化部11を受熱部2に配設し、管端部を放熱部3に配設した例、図4(b)は3つの流路変化部11と両管端部を受熱部2に配設した例を示す。また、図の左側のA図は第1の状態の例、右側のB図は第2の状態の例を模式的に示し、動作中、AとBの状態を液体41と気体42が行き来して振動することにより、熱輸送が行われることを説明している。図において、流路10は板状の基体101の表面に沿って形成され、受熱部2は基体101の一方の面における図の下方部に集合して形成され、基体101の反対側の全面が放熱部3として用いられている。
【0044】
図4(a)に示す両端を閉じた流路では、両最端部の流路は放熱部3に配設されていることにより、ほぼ常時液体で満たされており、ほとんど振動せず、熱輸送に貢献しない。しかし、両端に最も近い流路変化部を含め、受熱部2に配設された流路変化部11では沸騰が生じるため、それらの間の流路内では図4(a)のA及びBの模式図のように液体と気体の振動が生じ、閉ループの場合と同様の動作が生じる。従って、該振動により熱の輸送が行われる。
【0045】
また、両端を閉じた流路を図4(b)に示すように用いた場合には、両最端部の流路は受熱部3に配設されていることにより、動作中、流路内壁が液体で濡らされ難い面があるものの、受熱部2に配設された流路変化部11で同様の沸騰が生じ、図4(b)のA及びBの模式図のように液体と気体の振動が生じ、同様に熱輸送が行われる。
【0046】
一方、上記流路10は例えば一本のパイプから構成し、または複数のパイプを連結した構成でも良く、さらに任意の伝熱特性の良い基体中にループ状もしくは非ループ状の通路を形成したもの、あるいはそれらを組み合わせた構成としても良い。また、例えば一周または周回するループ、あるいは蛇行するループなどでも良い。
【0047】
上記受熱部2は、図では模式的に示しており、該受熱部2に例えば加熱ヒータ、電子機器、電子部品、炎、エネルギ線照射(例えば、太陽光、レーザー光、赤外線)等の発熱体、またそれらの発熱体から熱輸送する機器の放熱部、熱交換器等を密着させることにより熱的に結合しても良いし、ヒートパイプを文字通りパイプ材で構成した場合には、流路変化部11の外周面を受熱部としても良い。
【0048】
また、上記放熱部3も同様に模式的に示しており、例えば自然対流、または強制対流熱伝達や輻射を利用する熱交換器の放熱壁(例えば、低温空間と接する壁や空冷または水冷用ヒートシンクなど)などを放熱部3として構成することができる。さらに、流路10を構成する例えばパイプ材などの外表面部自体を放熱部3としても良く、例えば空気中、水中、宇宙空間などの外部空間に直接剥き出しに設置し、直接、自然・強制対流熱伝達や輻射を利用しても良い。さらに、放熱効果を上げるためにフィン等の放熱手段をその剥き出し部外表面に設けても良い。また、該放熱部3を熱交換器の受熱部として用いても良い。さらに、本発明のヒートパイプを複数積層して用いても良い。
【0049】
一方、作動流体4としては、特に限定されるものではなく、例えば従来知られている蒸留水、エタノール、アンモニアなどの単一成分の液体、またはそれらを組み合わせた混合液体のような相変化を生じる流体、冷凍サイクルに用いられるその他の冷媒類などを用いることができる。なお、気体42は、液体41の蒸気であり、該蒸気以外の気体が若干量混入しても良い。
【0050】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2によるヒートパイプを模式的に示す断面図、図6はその変形例を模式的に示す断面図である。図に示すように、受熱部2はこの例では4ヶ所に分散して設けられ、各受熱部2に流路変化部11がそれぞれ位置するように配設されている。それに伴い、基部流路12、増大側流路13も、8ヶ所に分散する放熱部3に配設され、流路変化部11の周長拡大方向(偏平率拡大方向)が一方向に揃うように蛇行状に連結され、閉ループ1が形成されている。その他の符号は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0051】
この実施の形態2によるヒートパイプは、例えば冷却を必要とする発熱素子が回路基板上に分散しているような場合などに好ましく用いることができるものである。なお、図では流路変化部11などの各部分を規則的に配置した例で示しているが、これに限定されるものではなく、各流路の長さ、隣接する流路の間隔など被冷却対象の形状などに合わせて適宜変更することも差し支えない。また、上記のように構成された実施の形態2の動作としては、上記実施の形態1と実質的に同様であるので説明を省略する。
【0052】
上記のように、この実施の形態2では、実施の形態1の効果に加えて、ヒートパイプを適用する用途の形態に応じてフレキシブルに対応できる効果がある。また、図6に示す変形例では、基部流路12の一部の容積を拡大した拡径部12Aを設けていることにより、閉ループ1内に収容する作動流体10の許容量を大きくできる利点がある。さらに、流路変化部以外のスペースを基部流路12及び増大側流路13が占有することができ、その場合には凝縮面積の増大による熱特性の向上が期待できる。
【0053】
実施の形態3.
図7は、実施の形態3によるヒートパイプを模式的に示す断面図である。図に示すように、この実施の形態3では、各基部流路12を四つの小容積流路(12a〜12d)によって形成し、各増大側流路13を四つの大容積流路(13a〜13d)としてそれぞれ構成している。なお、11a〜11dは上記実施の形態2と同様の流路変化部、14a〜14dは接続流路である。なお、数字の直後に示すアルファベットa〜dは、閉ループ1上の4ヶ所の位置を区別するためのものである。その他の符号は、上記実施の形態2と同様であるので説明を省略する。
【0054】
この実施の形態3においては、小容積である基部流路12と大容積である増大側流路13が収容し得る液体41の量が互いに異なることから、係数励振振動により、流路変化部11を介して蒸気泡42aが各流路12、13へ振動しながら流入する際に、各流路12、13それぞれに接続された接続流路14を介して送出される液体41の量が異なり、例えば閉ループ1内で大容積流路13aから順に接続流路14a、小容積流路12b及び流路変化部11bを経て、隣の大容積流路13b方向へ、液体41及び気体42の不規則ではあるが確実な循環が生じる。
【0055】
例えば、小容積である基部流路12の容積をV1、大容積である増大側流路13の容積をV2、各流路容積の差をV3(=V2−V1>0)とする。また、流路変化部11の容積をV4とする。ただし、それぞれ4ヶ所ずつ設けられた小容積流路12a〜12d、大容積流路13a〜13d、及び流路変化部11a〜11dの各流路容積は、各別にそれぞれ等しいものとする。
【0056】
さらに、ここで一つの流路変化部11と、その直前及び直後にそれぞれ連結された基部流路12及び増大側流路13とを一組の「要素」とし、接続流路14aを介して連結された二組の要素、即ち小容積流路12a、流路変化部11a、大容積流路13a、接続流路14a、小容積流路12b、流路変化部11b、及び大容積流路13bと順次接続された二組の要素を連結体15とする。
【0057】
このときに、該連結体15における、二組の要素とも小容積流路12a、12bと流路変化部11a、11bが蒸気泡42aで満たされ、一方二組の大容積流路13a、13bと接続流路14aが液体41で満たされている状態から、係数励振振動により蒸気泡42aが移動し、上流側小容積流路12aにV1の容積の液体41が送入され、上流側流路変化部11aと大容積流路13aが蒸気泡42aで満たされると、上流側大容積流路13aが収容していた液体41(V2)が接続流路14aを介して小容積流路12bへ送出される。
【0058】
V3>0であることから、下流側流路変化部11bへも液体41が送入され、V3>(V1+V4)の場合、流路変化部11b内も液体41で満たされ、初期に下流側小容積流路12bと流路変化部11b内に収容されていた下流側蒸気泡42aは下流側大容積流路13b内へ送出される。
【0059】
この時、下流側流路変化部11b内で沸騰が生じ、蒸気泡42aが生成・成長し、下流側小容積流路12bと流路変化部11b内に収容される液体41を分断し、該蒸気泡42aの一部が下流側小容積流路12b及び大容積流路13bへ送出され、結果として、これら一連の過程により上流側大容積流路13aに収容されていた液体の一部が下流側大容積流路13bへ送出されることになる。
【0060】
なお、これら一連の過程により、上流側大容積流路13a内の液体41の量が減少するが、小容積流路12aと大容積流路13aの内表面積が異なることから、凝縮能力が小容積流路12aより大容積流路13aの方が高く、凝縮量が多いことから、継続する係数励振振動中に蒸気泡42aを介して蒸気が大容積流路13aへ移動し、再び初期の状態に戻る。
【0061】
このようにして、小容積流路12aと大容積流路13aの凝縮能力の差による蒸気の移動及び容積差から生じる液体41及び気体42の移動が不規則ではあるが確実に生じ、液体41と気体42の閉ループ1に沿った循環が生じる。したがって、該循環による熱輸送が生じ、より効率良く熱を輸送し、また、蒸気泡42aで満たされやすい流路変化部11の内壁を液体41で濡らすことができ、高発熱流束条件においても熱輸送が可能となる。
【0062】
実施の形態4.
図8は実施の形態4になるヒートパイプを模式的に示す図であり、図8(a)は平面断面図、図8(b)は図8(a)のb−b線に相当する矢視側面図である。図に示すように、流路10は、例えば銅、アルミニウムなど伝熱特性の良好な材料からなる板状の基体101を構成する流路形成部材102の表面部に沿ってループ状に穿設された溝部102aと、この流路形成部材102の表面部に重合密着された同様の伝熱性材料からなる覆蓋体103によって形成されている。そして上記流路10の内部には、図示を省略している注入口より作動流体4が真空排気後に注入され、密封された後、板状のヒートパイプ100が得られる。
【0063】
この実施の形態4においては、流路変化部11は、流路10の一部を曲率の異なる1つまたは複数の曲面によって拡径させた曲げ部からなり、さらに該流路変化部11は基体101における図の右側部分の受熱部2に集合して配置されている。上記流路変化部11は、上記実施の形態1ないし3に示した直線状のテーパ部を、この例では略180度の角度曲げたものに相当している。また、基体101の上記受熱部2とは反対側(図8(b)の下側)の面は全面が放熱部3となっている。
【0064】
上記受熱部2の表面部は、例えばCPU、IGBT、ダイオードなどの発熱体16に密着され、放熱部3にはヒートシンク17が熱的に結合して設けられている。なお、多数の小矢印Dは、発熱体16から受熱部2への熱の伝達、多数の小矢印Eは、放熱部3からヒートシンク17への熱の伝達をそれぞれ示している。
【0065】
上記のように構成された実施の形態4によれば、上記流路変化部11を曲げ部によって形成していることにより、受熱部2をヒートパイプ100の所望の部分に集中させることが容易になる。また、受熱部2直下の反対側の面を全て放熱部3とすることができるので、放熱用熱交換器などのヒートシンク17への熱輸送が容易になる。さらに、放熱部3を受熱部2とは離れた別の場所に設けることも容易となる(図示省略)。また上記流路変化部11を1箇所に集合して配置したことにより、例えば電子回路の基板などで発熱体16が特定の部分に集中している場合など、局所集中発熱する発熱体16からの熱輸送及び熱拡散が容易に行えるなどの効果が得られる。
【0066】
さらに、係数励振振動により上記流路変化部11に進入する液体41の遠心方向への慣性力により、該流路変化部11の外周壁18に沿った液体41の強制流れが生じるため、高発熱流束条件における液体41により閉ループ1内壁が濡らされ難くする現象(例えばライデンフロスト)においても、該外周壁18を液体41で濡らし、該外周壁18上に形成される液膜が破断し難く、より高発熱流束条件下においても熱を輸送することができるという特徴を有する。
【0067】
実施の形態5.
図9ないし図11は、実施の形態5に係るヒートパイプの要部を模式的に示す図であり、図9(a)は断面図、図9(b)は図9(a)のb−b線に相当する矢視断面図、図10(a)は形成されたキャビティの一例を示す要部断面図、図10(b)はキャビティの他の例を示す要部断面図、図11(a)はキャビティ部分の詳細を示す組立図、図11(b)は焼結金属粒子相互の空間をキャビティとした例を示す断面図である。図に示すように、この実施の形態5では、各流路変化部11の外側(遠心方向)の通路壁18に気泡核の残留あるいは気泡の生成を助けるキャビティ19がそれぞれ設けられている。
【0068】
キャビティ19は、流体の流動・攪拌、また流体及び通路壁18の温度変化によらず安定して通路壁18上またはキャビティ19の中に気体42を残留させ、蒸気泡42aを発生する役割を有しており、図10(a)に示すような通路壁18上の引っかき傷や、図10(b)に示すような小さな導管19aにより通路と連結された空間(リエントラント型キャビティ)のことであり、図11はその構成ないしは組立方法の一例の要部を示している。
【0069】
基体101は、例えばアルミニウム、銅、あるいはそれらの複合材料など伝熱性の良好な板状金属材料でなる流路形成部材102と覆蓋体103からなり、該流路形成部材102の表面に流路変化部11を含む流路10が板面に沿って閉ループを形成した溝状に穿設され、キャビティ19を設けた後、その上に覆蓋体103が重合され、気密を保持して密着され上記実施の形態4と同様に、図示を省略している別途設けられた注入口より基体101の内部に形成された流路10内に、真空排気後に、作動流体が注入され、密封してヒートパイプ100が形成される。なお、図11(b)に示すように焼結金属粒子5の空間によりキャビティ19を形成しても良い。
【0070】
上記のように構成された実施の形態5によれば、実施の形態4の効果に加え、例えば低温度で内部圧力が低くい場合においても、キャビティ19内に存在する残留気体が蒸気泡42a発生の起点となり、蒸気泡42aを容易に発生することができ、起動及び熱特性が向上する。また、上流側蒸気泡42aの容積増大に伴う液体41の送入により、蒸気泡42aがより下流側へ流出した場合に、該キャビティ19で蒸気泡42aが生成・成長することにより、循環方向と逆向きの液体41の流れを抑制し(液体41の逆流の代わりに、蒸気泡42aが成長し、気体42を送出する)、閉ループ1内の平均循環質量流量が増大し、熱特性が向上するなどの効果が得られる。
【0071】
実施の形態6.
図12及び図13は実施の形態6に係るヒートパイプを模式的に示す図であり、図12(a)は平面断面図、図12(b)は図12(a)のb−b線における矢視断面図、図13(a)は図12の変形例を示す平面断面図、図13(b)はその正面図である。図に示すように、受熱部2はヒートパイプ100の中央部を縦断する如く図の上下方向に伸びて配設され、曲げ部からなる流路変化部11が該受熱部2に点対称的に集中して8箇所配設され、全体が直列に接続されて一つの閉ループ1を形成している。
【0072】
上記のように構成された実施の形態6によれば、中央部で向い合う流路変化部11の温度変化が互いに相手側に伝わり、相の状態がより不安定になり、蒸気泡の振動を誘発し易く、安定した熱輸送が可能になる。また、取付け姿勢の影響が小さく、特に垂直姿勢であっても、例えば図の右側部分が上方、左側部分が下方に向けて配設された場合であっても、発熱体16より上方側の閉ループ1内では、係数励振振動と重力による液体41の還流が生じ、効率良く熱を輸送すると共に、閉ループ1に沿った該係数励振振動の伝播、及び向い合う流路変化部11相互間の温度変化の伝播により、発熱体16より下方の閉ループ1内でも係数励振振動が生じ、熱を輸送することができるなどの効果が得られる。
【0073】
さらに、上記のような垂直姿勢であってさえも閉ループ1の内容積の50%以上の作動流体4を封入すると、発熱体16と液体41が流路変化部11の壁部を介して必ず接する構造であるので、作動流体4の封入量が小さくても熱輸送が可能であると共に、容積変動を生じる気体42の空間が大きくなり、蒸気泡または液体41の塊の振幅が大きくなり、より効率良く熱を輸送することができる。
【0074】
なお、図13は図12に示すヒートパイプを改良した変形例である。この実施の形態6においては、接続流路14が受熱部2と隣接することとなる(熱的に結合される位置にある)ので、図の上下2箇所の接続流路14における受熱部2に対応する部分に、図13に示すようにそれぞれ流路の同一方向に断面周長がテーパ状に拡大する流路変化部11を設けたものである。この変形例の場合、図12のものに比べて流路変化部の数が多い分有利である。また、図12の場合、接続流路14で蒸気泡が発生、停滞し、係数励振振動を阻害することがあるが、図13の場合、追加された流路変化部11においても係数励振振動を引き起こし、熱特性が向上する。
【0075】
さらに、小容積の基部流路12と大容積の増大側流路13は冷却対象物の形状、配置等に応じてそれぞれ長さが異なるようにしても良い。例えば、図12において左側の基部流路12と増大側流路13は、長く、より遠くへ熱を輸送し、右側の基部流路12と増大側流路13は短く近い部分で放熱する構成としても良い。
【0076】
実施の形態7.
図14は実施の形態7に係るヒートパイプを模式的に示すもので、図14(a)は平面断面図、図14(b)は側面図である。図に示すように、この例では、板状のヒートパイプ100を円板形とし、その中心部の一方の面に受熱部2を配設し、他方の面の全部を放熱部3として構成し、受熱部2には流路変化部11を周方向に12箇所設け、該流路変化部11に連なる基部流路12、及び増大側流路13は放射方向に設けられ、それらを順次蛇行状に接続することにより、円形のヒートパイプ100の内部に、円の中心部を中心点とする点対称で1つの閉ループ1が形成されている。
【0077】
上記のように構成された実施の形態7のヒートパイプは、基本的には上記実施の形態6と同様に、収容された作動流体4が係数励振振動を伴う振動を起こし、発熱体16の熱を効果的にヒートシンク17に伝達し、取付姿勢に影響されず高効率の冷却装置を提供することができる。
【0078】
実施の形態8.
図15及び図16は実施の形態8になるヒートパイプを模式的に示す図であり、図15(a)は平面断面図、図15(b)は図15(a)のb−b線における矢視断面図、図15(c)は図15(a)c−c線における矢視断面図、図16(a)は上層部分に形成された第1の流路を示す平面断面図、図16(b)は下層部分に形成された第2の流路を示す平面断面図である。上記実施の形態7までは、ヒートパイプを一つの平面内に1つもしくは複数の閉ループ、または非ループによって形成した例を示したが、この実施の形態8(及び実施の形態9、10)は、複数の平面(即ち複数の層)に跨って1つまたは複数の閉ループを形成した例を示す。
【0079】
図に示すように、伝熱性材料からなる流路形成部材102は、第1の面を形成する上層の第1の層102Uと、第2の面を形成する下層の第2の層102Lからなる。第1の層102Uには、曲げ部からなる流路変化部11と、この流路変化部11を介して設けられた小容積の基部流路12と、大容積の増大側流路13とからなる要素R1、R3、R5、R7、・・・、及びR15がそれぞれ溝状に形成され、各流路変化部11の外周面部にはキャビティ19がそれぞれ設けられている(図16(a)参照)。
【0080】
なお、上記流路変化部11は、第1の層102Uの中央部を上下方向に縦断する如く、かつ点対象的に左右に4つずつ計8つ配設されている。また、各要素R1、R3、R5、R7、・・・、及びR15の反流路変化部側端部には、第1の層102Uを上下方向に貫く連通路20がそれぞれ設けられている。
【0081】
一方、第2の層102Lには、上層と同様の要素R2、R4、R6、R10、R12、及びR14が同様に点対称的に溝状に形成され、さらに最外側の要素R8及びR16は直線状に形成され、その流路変化部11は、テーパ状に形成されている(図16(b)参照)。
【0082】
そして第1の層102Uは第2の層102Lに対する覆蓋体の機能を兼ねており、該第1の層102Uを第2の層102Lの表面部に重合密着した後、覆蓋体103を第1の層102Uに重合密着することにより、第1の層102Uと、第2の層102L相互の要素同士は、R1→R2→R3→R4→・・・→R15→R16→R1と上下層間が各連通路20を介して交互に順次連通され、全体で1つの閉ループ1を形成した流路10が形成されている。なお、上記のように形成された流路10内には、同様にして作動流体が密封され、ヒートパイプ100が得られる。
【0083】
上記のように構成された実施の形態8によれば、発熱体16から発生する熱は第1の層102U及び第2の層102L内の各流路変化部11内の作動流体4に熱伝導により伝達されることから、熱伝達面積が増大し、より効率良く熱輸送または熱拡散し、従ってより高発熱流束条件においても動作する。なお、流路10を2層にまたがって形成した場合を例に説明したが、3層以上とすることも差し支えなく、その場合でも同様の効果が期待できる。
【0084】
実施の形態9.
図17及び図18は実施の形態9になるヒートパイプを模式的に示す図であり、図17(a)は平面断面図、図17(b)は正面断面図、図17(c)は図17(a)のc−c線に相当する矢視側面断面図、図18(a)は上層部分に形成された第1の流路を示す平面断面図、図18(b)は下層部分に形成された第2の流路を示す平面断面図である。
【0085】
図に示すように、この実施の形態9では、第1の面を形成する第1の層102Uには、曲げ部からなる流路変化部11を流路形成部材102の中心部方向に配設した要素R1A〜R1Dが右側に、及び同様に流路変化部11を中心部方向に配設したR3A〜R3Dが左側に配設されて点対称をなしており、第2の面を形成する第2の層102Lにはテーパ状の流路変化部を中心部に配設した要素R2A〜R2D、及び要素R4A〜R4Dが互い違いに形成され配設されている。
【0086】
そして、上記実施の形態8と同様に各層を重合密着することにより、上下層の各要素は、連通路20によりR1A→R2A→R3A→R4A→R1Aと順次接続された第1の閉ループ1A、同様に上下層交互に順次接続された第2〜第4の閉ループ2A、3A、及び4Aがそれぞれ互いに独立して形成されている。
【0087】
上記のように構成された実施の形態9によれば、実施の形態8と同様、発熱体16から発生する熱は第1の層102U及び第2の層102L内の各流路変化部11内の作動流体4に熱伝導により伝達され、効率良く熱輸送または熱拡散し、高発熱流束条件においても優れた冷却能力を発揮する。また、この場合には閉ループ1A〜1Dが互いに独立しているので、他の閉ループに影響されずに各閉ループ別に係数励振振動が発生し、また任意の一つの閉ループが破損した場合(例えば液漏れ)でも、その他の閉ループで熱を輸送することができる。
【0088】
実施の形態10.
図19及び図20は実施の形態10になるヒートパイプを模式的に示す図であり、図19(a)は平面断面図、図19(b)は正面断面図、図19(c)は図19(a)のc−c線における断面図、図20(a)は上層部分に形成された第1の流路を示す平面断面図、図20(b)は下層部分に形成された第2の流路を示す平面断面図である。図に示すように、この実施の形態10では、第1の面を形成する第1の層102Uには曲げ部からなる流路変化部11を流路形成部材102の中心部方向に配設した要素R1、R3、R5、R7が右側に、及び同様に流路変化部11を中心部方向に配設したR9、R11、R13、R15が左側に配設されて点対称をなしている。
【0089】
一方、第2の面を形成する第2の層102Lには、通流方向に断面周長が減少する流路変化部とは逆向きの曲げ部からなる流路断面減少部21が中心部に配設された流路r2、r4、r6が図の右側部に、また、これらとは逆向きの同様に通流方向に断面周長が減少する流路断面減少部21が中心部に配設された流路r10、r12、r14が図の左側部に配設され、さらに、通流方向に断面周長が減少するテーパ状の流路断面減少部22が下端部中央部に配設された流路r8、及びr16が図の下端部及び上端部に点対称的にそれぞれ形成され配設されている。
【0090】
また、第1及び第2の層102U、102Lの間は、R1→r2→R3→r4→R5→r6、・・・、r14→R15→r16→R1のように、第1の層102Uに設けられた要素と第2の層102Lに設けられた流路が、連通路20により交互に順次接続され、全体で一つの閉ループ1が形成されている。
【0091】
上記のように構成された実施の形態10では、発熱体16から遠い側の第2の層102Lに設けた流路rの流路断面減少部21は、流路変化部11と全く同様の構造で、流路方向に対する断面周長が拡大する向きが実施の形態9までの例とは逆向きに設けられているが、発熱体16に接する受熱部2に近い流路変化部11において、蒸気泡が活発に生成され係数励振振動が活発に生じるので、このような通流方向に流路面積が減少する形状としても問題なく動作する。
【0092】
要するに、受熱部2に近い層(ここでは上層)では、活発な係数励振振動が発生するために通流方向に周長拡大方向を統一して配置する必要があるが、受熱部2よりも遠い層(ここでは下層)ではその係数励振振動より弱い係数励振振動が発生する、または沸騰せず上層の係数励振振動の伝播による液単相の振動が発生するため、受熱部2に遠い層の流路形状は本発明の動作上特別な制限はない。
【0093】
しかし、熱特性の観点から、受熱部2より遠い層では、通流方向と逆向きに周長拡大方向を統一した場合(図19)、通流方向に周長が変化しない場合(図省略)よりも、通流方向に周長拡大方向を統一した場合(図15、図17)の方が好ましい。なお、受熱部2より遠い層の流路内が液単相で振動する場合でも、顕熱による熱輸送が生じることから、本発明のヒートパイプを2層以上の複数層にすることは熱的特性向上のために有効である。
【0094】
実施の形態11.
図21及び図22は実施の形態11になるヒートパイプを模式的に示す図であり、図21(a)は平面断面図、図21(b)は正面断面図、図21(c)は側面断面図、図22(a)は上層部分に形成された第1の流路を示す平面断面図、図22(b)は下層部分に形成された第2の流路を示す平面断面図である。図に示すように、この実施の形態11では、第1の面を形成する第1の層102Uには曲げ部からなる流路変化部11を流路形成部材102の中心部方向に配設した要素R1A、R2A、R3A、及びR4Aが右側に順次直列に接続して設けられ、同様に流路変化部11を中心部方向に配設した要素R1B、R2B、R3B、及びR4Bが左側に順次直列に接続して点対称的に配設されている。
【0095】
また、第2の面を形成する下層の第2の層102Lには、上層と同様の曲げ部からなる流路変化部11を基体101の流路形成部材102の中心部方向に配設した要素R5A、R6A、R7A、及びR8Aが右側に順次直列に接続して設けられ、同様に流路変化部11を中心部方向に配設した要素R5B、R6B、R7B、及びR8Bが左側に順次直列に接続して右側と点対称的に配設されている。
【0096】
そして、上層の第1の層102Uに設けられた流路と、下層の第2の層102Lに設けられた流路とは、第1の層102Uの四隅部にそれぞれ設けられた連通路20によって始端部と終端部相互がそれぞれ接続され、R1A→R2A→・・・、→R8A→R1Aに至る第1の密閉流路と、R1B→R2B→・・・、→R8B→R1Bに至る第2の閉ループとの2つの閉ループが形成されている。
【0097】
上記のように構成された実施の形態11によれば、発熱体16から発生する熱は第1の層102U及び第2の層102L内の各流路変化部11内の作動流体4に熱伝導により伝達されることから、実施の形態9と同様の効果が期待できる。
【0098】
実施の形態12.
図23は、実施の形態12になるヒートパイプを模式的に示すもので、図23(a)は平面断面図、図23(b)は正面図である。図に示すように、形状的には上記図8に示す実施の形態4のヒートパイプと同様であるが、この実施の形態11では閉ループ1を構成する基体101の全部またはその一部が電気絶縁材からなっている。
【0099】
電気絶縁材は、液体41及び気体42が透過することを遮断し、また電気を絶縁する役割を有しており、例えば樹脂やセラミック(例えば、AlN、Al23等)などの材料であり、気体41の透過性のある材料の場合、金属材料(例えばAl箔など)との複合材料(例えばラミネートフィルム)でも良い。この構造によれば、例えばIGBT、CPU、ダイオードなどの通電される高発熱電子素子を直接本発明のヒートパイプに取付け、絶縁するために設けられる他の介在物(例えば、サーマルグリースなど)を介さずに、直接発生する熱を輸送または拡散することが可能であることから熱抵抗が小さくなる。
【0100】
実施の形態13.
図24は、実施の形態13になるこの発明のヒートパイプを用いたヒートシンク一体型の冷却装置を示す要部断面図である。図に示すように、冷却装置23は例えばアルミニウム、銅、真鍮などの金属からなる基体としてのヒートシンク17の上部表面部内に、この発明のヒートパイプを一体的に形成したものに相当するものであり、例えば実施の形態6ないし実施の形態11などに示すものから選ばれた任意のヒートパイプは何れも適宜選択して用いることができる。
【0101】
即ち、図の左右方向の中心部に受熱部2が配設され、その直下に例えば実施の形態6などに示すものと同様の曲げ部からなる流路変化部11が点対称的に対向して配設され、その両側に基部流路、及び増大側流路をそれぞれ配設した1つもしくは複数の閉ループを形成した流路10が設けられ、該流路10内に図示を省略している作動流体が密封されている(詳細図示省略)。なお、流路変化部11にはキャビティを設けることも有効である。
【0102】
そして、中央部に設けられた流路変化部11の上方に配設された受熱部2は、例えばCPU、IGBTなど冷却を必要とする所望の発熱体16に密着される。また、ヒートシンク17の図の下方部には放熱手段としての多数の放熱フィン17aが一体的に設けられている。要するに、この実施の形態13では、ヒートシンク17が上記実施の形態4〜12に示した基体101の機能を兼ねているものであり、詳細については図示を省略しているが、ヒートシンク17を流路10の例えば図の上縁部で上下に分割し、分割した下方部分に溝部によって流路を形成し、上方部分を覆蓋体とすることにより、容易にヒートシンク一体型の冷却装置とすることができる。
【0103】
上記のように構成された実施の形態13によれば、発熱体16の発生する熱が中央部で向い合う流路10の流路変化部11に伝わり、例えば上記実施の形態6と同様、作動流体の相の状態を不安定にして係数励振振動を容易に誘発し、放熱フィン17aに直ちに伝熱され冷却され、流路10内を作動流体が活発に移動することにより、例えば数百W/cm2程度以上といった高い熱流束での冷却も可能になる。また、取付け姿勢の影響が小さいので、多用途の冷却に用いることができる。さらに、この発明のヒートパイプをヒートシンクに一体的に組み込み形成したことにより、装置をよりコンパクト化できると共に、低コスト化できるという効果が得られる。なお、流路の形成方法などの製造方法は例示したものに限定されないことは言うまでもない。
【0104】
実施の形態14.
図25は、実施の形態14になるこの発明のヒートパイプを用いたヒートシンク一体型の冷却装置を示す要部断面図である。図に示すように、この実施の形態14では、冷却装置23のヒートシンク17は、図の下方部分全体に多数の放熱フィン17aが突設されている他に、上方部分における受熱部2を避けた部分にも放熱フィン17aが突設されている。その他の構成は上記実施の形態13と同様であるので説明を省略する。
【0105】
上記のように構成された実施の形態14では、発熱体16の周囲がフリーである場合などに好ましく用いられ、実施の形態13と同様の効果が得られる他、放熱フィン17aの放熱面積の増大が容易であるため、より発熱量の大きい発熱体の冷却に適用することができる。
【0106】
実施の形態15.
図26は、実施の形態15になるこの発明のヒートパイプを用いたヒートシンク一体型の冷却装置を示す要部断面図である。この実施の形態15では、例えば上記図12、図13、図15〜図22に示す実施例のように、矩形平面の中央部を横断する如く流路変化部と受熱部を設けた板状のヒートパイプ100を、図26に示すように受熱部2とは反対方向に断面略コ字状に屈曲形成し、図の上方に延びる放熱部3の両面にそれぞれ放熱フィン17aを突設させた構造に形成されている。発熱体16は図の下面部の受熱部2に密着され、熱的に結合して用いられる。
【0107】
上下方向を図示の方向で用いた場合に、上記のように構成された実施の形態15においては、より有効に熱を上方へ輸送できることから、上方空間を有効利用することができ、コンパクトなヒートシンクを作成することができる。
【0108】
実施の形態16.
図27は、実施の形態16になるこの発明のヒートパイプを用いたヒートシンク一体型の冷却装置を示す図であり、図27(a)は正面断面図、図27(b)は図27(a)のb−b線における矢視断面図、図27(c)は図27(a)のc−c線における矢視断面図である。図に示すように、この実施の形態16では、下面部に受熱部2を有するベース17cに対して、上下方向に伸びる基体101A、101B、101C、及び101Dが固着され、隣接する基体相互には多数のコルゲート状の放熱フィン17aが固着されている。
【0109】
そして、各基体101A〜101Dの内部には、例えば基体101Dでは、下端部に配設された流路変化部11と、その前後に設けられた基部流路12及び増大側流路13とからなる要素R41、R42、R43、R44、及びR45が順次直列に接続された流路R40が設けられ、同様に他の基体101C、101B、101Aの内部にも、同様の流路R30、R20、R10がそれぞれ左右方向互い違いとなるように設けられている。そして、各流路R10、R20、R30、R40は、図27(b)に示すように上端部材17d部で接続流路14によって順次直列に接続され、全体で1つの閉ループ1が形成されている。
【0110】
上記のように構成された実施の形態16においては、発熱体16の熱はベース17cを介して流路変化部11に伝熱され、図示を省略している作動流体に上記各実施例と同様の係数励振振動を生じさせ、多数の放熱フィン17aに伝熱され、例えば空気中に放熱されることにより、発熱体16を効率的に冷却することができる。なお、流路10はパイプによって形成してもよい。また、基体101A〜101Dは互いに独立した本発明の流路を形成したヒートパイプであっても良い。
【0111】
実施の形態17.
図28は、実施の形態17になるこの発明のヒートパイプを用いたヒートシンク一体型の冷却装置を模式的に示す断面図である。図に示すように、ヒートパイプ100は実施の形態15と同様に断面略コ字型に形成され、該ヒートパイプ100の内部に2つの流路10A、10Bが略L字型に対称的に設けられている。そして、中央下部に流路変化部11が左右に対向して配設され、その下面部に受熱部2が設けられ、また、それぞれ上方に伸びるように形成された放熱部3相互の対向面に放熱フィン17aが交互に突設されている。
【0112】
上記のように構成された実施の形態17では、上方に延びる2つの放熱部3相互が対向する空間部に放熱フィン17aを集中的に配設したので、装置をコンパクトにすることができ、また両放熱部3にそれぞれフィンを形成した後成形することができ、フィン隙間を小さくした、より高性能な放熱部を作成することができる。
【0113】
実施の形態18.
図29は、実施の形態18になるこの発明のヒートパイプを用いたヒートシンク一体型の冷却装置を模式的に示す断面図である。図に示すように、ヒートパイプ100は断面略ロ字型、即ち箱型に形成され、同様に2つの流路10A、10Bが形成され、図の上部中央部に発熱体16に密着させるための受熱部2が設けられている。また、内周面は全面放熱部3となっており、対向する上下の放熱部を連結する多数の放熱フィン17aが設けられている。
【0114】
上記のように構成された実施の形態18においては、上記実施の形態13と同様の効果が得られるほか、冷却装置23が箱型に形成されているので、構造的に頑丈であり、取り扱いが容易であるという付随効果が得られる。また、フィンの両側から熱が伝えられるので、フィン効率の低下が抑制されることから、放熱能力が向上する。
【0115】
実施の形態19.
図30は、実施の形態19になるこの発明のヒートパイプを用いたヒートシンク一体型の冷却装置を模式的に示す断面図である。図に示すように、ヒートパイプ100は上記実施の形態18と同様に、断面略ロ字型、即ち角筒型に形成され、さらに内周面部の放熱部3には放熱フィン17aが格子状に一体的に形成されている。なお、上記放熱フィン17aは、例えば押出成型、嵌め込みロー付け加工など、公知の従来技術を用いて容易に形成することができる。その他の構成は上記実施の形態18と同様である。
【0116】
上記のように構成された実施の形態19によれば、実施の形態18と同様の効果が得られるほか、装置をよりコンパクト化できると共に低コスト化できる。また、流体への熱伝達を向上させるために、単位体積当たりの伝熱面積を大きくすることができ、伝熱特性をさらに向上させることができる。
【0117】
なお、上記実施の形態18、19では、ヒートパイプを構成している流路が延在する面を断面角筒型に屈曲させた形状に構成したが、これに限定されるものではなく、冷却対象の形状や、周囲の環境等に応じて所望の形状、寸法に構成することができる。例えば円管状に加工し、その内面または外周面にフィンを取付けたものなどでも同様の効果が期待できる。
【0118】
さらに上記実施の形態の説明において、流路変化部11を曲げ部によって形成する例として、略U字型、または略V字型に流路を略180度もしくはそれに近い角度に曲げて形成した場合を示したが、それらに限定されず、曲げの角度は任意に選ぶことができることは言うまでもない。また、基体101として板状の材料を用い、あるいはヒートシンク17を基体として用いたが、これら基体の形状や材料などは上記実施の形態のものに限定されるものではない。例えば流路を形成する板材は平面状に限定されず、曲面状のものでも差し支えないし、また、押出し成型材、金属ブロック、ダイカスト成型品、型鍛造成形品などを基体として用い、さらには筐体の一部、例えば電力機器、電子機器や(携帯)パソコンなどの筐体を構成する蓋や裏蓋などを基体としてもよい。
【0119】
さらに、基体101に流路10を設ける方法として、流路形成部材102に溝部102aを形成し、その後溝部102aを覆うように流路形成部材102の上に覆蓋体103を重合密着する例について説明したが、これに限定されるものではないことは勿論である。例えば、パイプ材で形成したヒートパイプを例えば板材にロー付けで固着したものなどでも同様の効果が期待できる。
【0120】
さらに、この発明を主としてCPU、IGBT,ダイオードなどの電子部品の冷却に用いる場合について説明したが、冷却対象は上記例示したものに限定されず、さらに冷却以外に加熱、伝熱、ヒートスプレッダ、熱交換など他の用途にも広く用いることができることは当然である。
【0121】
【発明の効果】
以上説明した通りこの発明によれば、流路の断面周長及び偏平率の少なくとも一方が流路に沿って増大する流路変化部を、増大方向を揃えて複数直列に連結させると共に、これら複数の流路変化部を受熱部として用いるようにしたことにより、外部動力を用いることなく確実に動作を開始し、高発熱流束の場合でも熱を輸送することができ、しかも、熱を効率良く輸送することができるヒートパイプが得られる。
【0122】
また、上記ヒートパイプを構成する流路を、基体に一体的に組み込んで構成したことにより、外部動力を用いることなく確実に動作を開始し、高発熱流束の場合でも冷却能力を維持するコンパクトな冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1によるヒートパイプの流路構成を模式的に示す断面図である。
【図2】 図1のヒートパイプの動作を説明するための要部断面図である。
【図3】 実施の形態1の変形例である流路変化部の他の例を示す要部断面図である。
【図4】 実施の形態1の他の変形例である流路の他の構成例を模式的に示す断面図である。
【図5】 実施の形態2によるヒートパイプを模式的に示す断面図である。
【図6】 実施の形態2の変形例を模式的に示す断面図である。
【図7】 実施の形態3によるヒートパイプを模式的に示す断面図である。
【図8】 実施の形態4になるヒートパイプを模式的に示す断面図である。
【図9】 実施の形態5に係るヒートパイプを模式的に示す断面図である。
【図10】 実施の形態5に係るヒートパイプに用いたキャビティの他の例を示す要部断面図である。
【図11】 図10のキャビティ部分の詳細を示す図である。
【図12】 実施の形態6に係るヒートパイプを模式的に示す図である。
【図13】 実施の形態6によるヒートパイプの変形例を示す図である。
【図14】 実施の形態7に係るヒートパイプを模式的に示す図である。
【図15】 実施の形態8になるヒートパイプを模式的に示す図である。
【図16】 図15の上層部分及び下層部分の流路配置をそれぞれ示す平面断面図である。
【図17】 実施の形態9になるヒートパイプを模式的に示す図である。
【図18】 図17の上層部分及び下層部分の流路配置をそれぞれ示す平面断面図である。
【図19】 実施の形態10になるヒートパイプを模式的に示す図である。
【図20】 図19の上層部分及び下層部分の流路配置をそれぞれ示す平面断面図である。
【図21】 実施の形態11になるヒートパイプを模式的に示す図である。
【図22】 図21の上層部分及び下層部分の流路配置をそれぞれ示す平面断面図である。
【図23】 実施の形態12になるヒートパイプを模式的に示す図である。
【図24】 実施の形態13になる冷却装置を示す要部断面図である。
【図25】 実施の形態14になる冷却装置を示す要部断面図である。
【図26】 実施の形態15になる冷却装置を示す要部断面図である。
【図27】 実施の形態16になる冷却装置を示す図である。
【図28】 実施の形態17になる冷却装置を模式的に示す断面図である。
【図29】 実施の形態18になる冷却装置を模式的に示す断面図である。
【図30】 実施の形態19になる冷却装置を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 閉ループ、 2 受熱部、 3 放熱部、 4 作動流体、 41 液体、 41a 薄い液膜、 42 気体、 42a 蒸気泡、 42b 蒸気、 5 焼結金属粒子、 10 流路、 11 流路変化部、 12 基部流路、 12A 拡径部、 13 増大側流路、 14 接続流路、 15 連結体、 16 発熱体、 17 ヒートシンク(基体)、 17a 放熱手段(放熱フィン)、 17c ベース、 18 通路壁、 19 キャビティ、 20 連通路、 21、22 流路断面減少部、 23 冷却装置、 100 ヒートパイプ、 101 基体、 102 流路形成部材、 102a 溝部、 102U第1の層(第1の面)、 102L 第2の層(第2の面)、 103 覆蓋体、 R 要素。

Claims (13)

  1. 作動流体が密封収容される流路に、流路の断面周長及び偏平率の少なくとも一方が流路に沿って増大する流路変化部を、増大方向を揃えて複数直列に連結させると共に、これら複数の流路変化部を受熱部として用いるようにしたことを特徴とするヒートパイプ。
  2. 上記流路変化部は、流路の内周面をテーパ状に広げたものであることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
  3. 上記流路変化部は、流路を屈曲させた曲げ部によって形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
  4. 上記流路変化部は、流路の幅が深さよりも大であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のヒートパイプ。
  5. 上記流路変化部は、断面が略矩形に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のヒートパイプ。
  6. 上記流路は、第1の面に沿って配設され上記流路変化部を有する第1の流路と、第2の面に沿って配設された第2の流路と、これら第1の流路及び第2の流路を互いに連通する連通路とを備えたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のヒートパイプ。
  7. 上記流路変化部を、所望の一箇所もしくは複数箇所に複数個集合して配設したことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載のヒートパイプ。
  8. 上記流路変化部の流路を形成する壁部に気泡の生成を助けるキャビティを設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載のヒートパイプ。
  9. 上記流路は、閉ループに形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかに記載のヒートパイプ。
  10. 上記流路は、基体の内部に延在して形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項9の何れかに記載のヒートパイプ。
  11. 上記請求項1ないし請求項10に記載のヒートパイプを基体に一体的に組み込んでなることを特徴とする冷却装置。
  12. 上記基体は、多数の冷却フィンを備えたヒートシンクからなることを特徴とする請求項11に記載の冷却装置。
  13. 上記基体は角筒状に形成され、上記流路変化部を上記筒を形成している任意の一つの面内に集合して配設すると共にその外表面部を受熱部とし、かつ上記筒の内部側に冷却フィンを配設してなることを特徴とする請求項12に記載の冷却装置。
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