JP4212352B2 - Mri装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、MRI装置、MRIそのメンテナンス支援を行うメンテナンス支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、MRI装置の修理・点検などのサービスログは、得意記録用、サービス店保管用を紙物にて保管していた。MRI装置に不具合が発生した時には、原因箇所を特定するために、各種の調査が必要になる。その際に基板の構成の確認、据付時に調整された各種パラメータの測定などを行い、保守マニュアルにしたがって故障など障害個所の特定を行っている。この故障など障害個所の特定には、定期点検の結果が非常に参考になることが多い。しかし、点検結果は、上記のように、装置毎に管理され、一元化されていないので、短時間で簡易に入手することができない。
【0003】
また、撮影条件が多岐にわたることから様々な制約が生じている。MRI装置は、多数の種類の撮影技法が使用できることが大きな特徴である。特殊な撮影技法、例えばFASEやEPIは特定の症例の診断に用いられるため使用頻度が低い。一方、通常の診断に用いられる撮影技法、T1、T2、3DMRAなどのルーチンで使われるSEやFSEなどは、その使用頻度は高いが、上記FASEやEPIなどの限界性能を使用するパルスシーケンスに比べ、シーケンス自体のロバスト性にも起因し、装置の劣化がすぐに画像には現れにくい。従って、実際に画像の劣化が起こった際に、原因となるユニットの劣化等がいつ頃から発生しているものか判然としない場合が増えている。逆に装置状態に敏感なパルスシーケンスとして、
1)FSE(ETS=15ms以上)は、渦電流の状態に敏感で、その状態の変化は、面内の感度むら、スライス間の信号強度変化などに現れる、
2)FE−EPIは傾斜磁場の安定性、特に傾斜磁場アンプのオフセット変動にきわめて敏感であり、その影響は画面上に現れる、
3)脂肪抑制パルスシーケンスは、磁場の均一性、残留渦電流などに敏感で、わずかな量でも脂肪抑制のムラ消え残りとして現れる、
4)パフュージョン(Perfusion)撮影に用いられるスピンラベリングのパルスシーケンスでは、RFパルスの印加パターンに合わせて加算平均のステップで差分を取るため、RF系の安定性がベースノイズになってパフュージョンのSNRを決定付ける、
などがあげられる。
【0004】
一方、画質に直接関連しないユニットの故障や劣化など障害等もあり、この場合には、その症状が急激に悪化したのか、それとも徐々に悪くなったのかを判断するあるいは、この故障等の情報収集を行うには多くの時間と労力を必要とする。
【0005】
また、受信用RFコイルが多数存在することによる制約もある。臨床検査において、1つの全身用(WB)コイルでRF信号を受信することは寝台移動を伴う撮影以外ではほとんどなく、RF信号の受信は複数の専用RFコイルを部位に応じて交換することで行われている。
【0006】
この専用コイルの中には、肩用、膝用など使用頻度の低いコイルも存在し、これらのコイルはSNRなどの調子がつかめず、故障であることの判断が遅れる場合があった。
【0007】
上述したように、従来はサービスログ得意記録用、サービス店保管用を紙物にて保管していた。従来はこれらの情報を調査したい時は、それらを保管しているサービス店に問い合わせ、そこまで足を運ぶ必要があった。
【0008】
したがってこれまでの故障など障害の履歴や点検記録、アップグレードや付属品の状況を知るためには一つ一つ問い合わせと確認が必要だった。MRI装置では特にユニットが多く、特定の撮影条件の際に発生する画像不具合等が発生した場合に、その障害の個所と時期、程度を確認するのが困難な場合があり、復旧に時間を要する場合があった。また、個々の装置に関するあらゆるデータが一元管理されていないことで、統計的処理やアップグレードの実施に多くの労力を要していた。
【0009】
このような状況下では、次のような不具合があると考えられる。
サービスマンの思い違いによる間違った修理が行われても気づかれにくい。
トラブルシュートはマニュアルでのみ行っているため、マニュアルに記載されていない内容については、対応に労力と時間がかかる。
点検結果を他の装置と比較するのが困難で、故障等のトレンド解析が困難である。
備品、アップグレードの記録参照が困難で装置固有の条件によるサービス対応が困難である。
異常の可能性があっても気がつかない場合がある、または発見に労力がかかる。
交換用部品は、客先要求から始まり、サービス店を経由して、保守センタに到着し、保守センタから要求着/発送、そして客先着というルートを通り、サービス店を経由する分時間がかかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、故障など障害の際に、新たに装置構成の調査を行う必要を極力少なくして、部品の発送等を迅速化し、修理をすばやく行うことである。あるいは、過去データを把握することで急な故障・徐々に劣化するなどを切り分けることができるようにすることで故障の診断精度を向上させるである。さらに、点検結果により中長期的な装置性能の劣化や異常を早期に発見できるようにすることで、事前の再調整や部品交換を可能にしてそれによりシステムダウンの回避を実現することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面は、被検体に所定の高周波磁場を印加し前記被検体から磁気共鳴信号を受信するMRI装置本体と、前記MRI装置本体の点検のための撮影のスケジュールを記憶する記憶手段と、前記撮影スケジュールに沿って前記MRI装置本体の操作者に前記撮影を指示するコントローラと、を備え、前記コントローラは、第1の周期で前記MRI装置本体のホールボディコイルのSNR評価のための画像データを取得するための撮影を指示し、第2の周期で前記MRI装置本体の渦電流の値、FSEの調整値、シミングの調整値、EPIの遅れ時間調整値、FEEPI時間安定性、ゴースト測定値及びFSE感度ムラのうち少なくとも1つのデータを取得する撮影を指示する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係るメンテナンス支援システムの全体構成を示す図である。複数の磁気共鳴映像化装置(MRI装置)100が、一般公衆回線、専用線等の通信回線200を経由して、メンテナンス支援装置300に接続されている。また、複数のサービスセンタ装置400が、通信回線200を経由して、メンテナンス支援装置300に接続されている。
【0013】
メンテナンス支援装置300は、複数のMRI装置100それぞれの各種調整、各部動作状態、修理、保守、点検、ソフト・ハードのアップグレード、ソフト・ハードのカスタマイズ、エラー、据付状況、ネットワーク接続の全て又は少なくとも一に関するデータを累積的に記憶し、必要に応じてMRI装置100やサービスセンタ装置400に情報提供を行う機能を備えている。このような、過去の情報が累積的に貯まっていく情報は、MRI装置100のメンテナンス、修理、アップグレード(機能更新、追加)等の各種作業時に有益な情報として機能する。このような装置固有の履歴記録簿情報を、以下装置カルテ情報と称する。
【0014】
メンテナンス支援装置300は、サーバとしての役割を担い、クライアント、つまりMRI装置100、サービスセンタ装置400は、上記の各種作業に際して、メンテナンス支援装置300から有益な装置カルテ情報の提供を受ける。
【0015】
図2には、MRI装置100、メンテナンス支援装置300、サービスセンタ装置400それぞれの構成を示している。MRI装置100は、磁石アセンブリ(磁石装置)及びコンピュータ装置等を備えMR信号収集及び画像再構成等を担うMRI装置本体161を備え、データ/制御バス113を経由して、ホストコントローラ103が接続されている。データ/制御バス113にはさらに、操作パネル104、ディスプレイ105、通信回線200を経由してメンテナンス支援装置300と通信するための通信装置107、ホストコントローラ103の制御のもとで定期的に自己点検プログラムを実行してMRI装置本体161を動作させ装置状態を点検するための自己点検制御装置109、その装置状態に関する情報を記憶する装置状態記憶装置111が接続されている。
【0016】
メンテナンス支援装置300は、ホストコントローラ301を中心に、データ/制御バス317を経由して、通信装置309、操作パネル303が接続されている。また、さらに本支援装置300は、契約グループ内の複数のMRI装置100やサービスセンタ装置400で発生して送信されてきた情報に基づいて装置カルテ情報を生成する装置カルテ生成部313、装置カルテ情報を一元的に保管する装置カルテデータベース307、そのコントローラ(データベースマネジメントシステム)305、MRI装置100やサービスセンタ装置400からの閲覧要求に呼応して装置カルテデータベース307内の必要な情報を検索する情報検索部311、MRI装置100やサービスセンタ装置400に対するサービスとしてデータベース307から読み出した装置カルテ情報を統計的に加工する情報加工部315が接続される。
【0017】
サービスセンタ装置400は、ユーザ(MRI装置)100に対する保守、修理等の各種サービスを提供するサービスセンタ内に設置され、そのために必要な部品調達や在庫管理、その搬送等を管理する部品管理装置409、サービスマンの派遣やリモートメンテナンス要員のスケジューリングを始め保守修理等の実際の作業管理を行うメンテナンスサービス管理装置411を備えている。また、これら部品管理装置409及びメンテナンスサービス管理装置411に対して、データ/制御バス317を経由して、ホストコントローラ401、通信装置407、操作パネル403、ディスプレイ405が接続されてなる。
【0018】
以下に、装置カルテ情報について詳細に説明する。装置カルテ情報は、以下の多種にわたる記録項目で構成される。これらの記録項目は、後述するそれぞれのカテゴリ毎に分類され、装置毎に一元的に記憶されている。
【0019】
・MRI装置100の各種調整値(RF調整値、シーケンス調整値、磁場均一調整値、など)
・MRI装置100及び周辺の各種状態値(各部の温度、湿度、各部の電圧、LHe(液体ヘリウム)残量、環境温度、冷却水流量など)
・MRI装置100の修理記録(基板交換とそのSER.No.など)
・MRI装置100の保守記録(LHe注液、各部オーバーホールなど)
・MRI装置100の点検記録(定期点検の結果など)
・MRI装置100のソフトウェア・ハードウェアアップグレード記録(ソフトウェアのバージョン記録、ハードウェアのオプション品等の設置記録など)
・MRI装置100のカスタマイズ記録(ソフトウェアのカスタマイズ等)
・MRI装置100のエラー記録(異常時の画像、撮影パラメータ(ただし、画像に関しては患者のプライバシー保護の観点から、患者を特定する情報・サイト情報全てを自動的に削除する機構を有するものとする))
・据付データ(据付日、SNR比などの据付データ、発生トラブル、作業者、建屋工事データ(シールドルーム見取り図、冷水配管経路図、電源敷設経路図、特殊工事状況)など)
・ネットワーク接続情報(接続先、接続日時、ダウンロード種別など)
少なくともリストの上位4項目(MRI装置100の各種調整値、MRI装置100の動作状態、MRI装置100の修理記録、MRI装置100の保守記録)は、自己はもちろん他ユーザへの公開が可能である。また、公開情報は一部のユーザ情報ファイル、およびユーザ書きこみ許可情報以外は書きこみ禁止とし、データの保全を図る。またデータの保存媒体として書きこみ不可逆なものを使用しても良い。
【0020】
メンテナンス支援装置300の情報検索部311により、情報公開依頼元のMRI装置100の過去の装置カルテ情報の検索、他のMRI装置100での類似例検索を可能にしている。
【0021】
メンテナンス支援装置300は、ユーザ(MRI装置100、サービスセンタ装置400)に対して情報のやり取りの機能(電子メールなど)を有し、ユーザからの点検・調整値閲覧要求に対して、情報加工部315で装置カルテ情報をグラフなどの統計的情報に加工して、装置に詳しくないユーザに対して理解しやすい加工済データの形式での提供を実現している。加工情報としては、他に、温度データトレンドグラフ、LHe減衰状況、磁場減衰状況、調整値の他装置との比較状況等がある。
【0022】
次に、これら装置カルテ情報の各項目のカテゴリについて説明する。このカテゴリには、装置自体が自動で保存するカテゴリと、サービスマン(または操作者)が入力するカテゴリに分類され、さらにサービスマン(または操作者)が入力するカテゴリは、操作者の都合等に応じてサービスマン(または操作者)がその都度入力するカテゴリと、サービスマン(または操作者)が定期的または一度だけに入力するカテゴリに分類される。
【0023】
装置自体が自動保存するカテゴリには、各種調整値、各種状態値、エラー記録がある。
【0024】
また、操作者の都合等に応じてサービスマン(または操作者)がその都度入力するカテゴリには、ソフトウェア・ハードウェアアップグレード記録、カスタマイズ状況、ネットワーク接続情報、修理記録がある。ただし、修理記録に関しては、ROMを搭載している基板は、そのROMにID(固有識別番号)を記録しておくことにより、自動で認識し、保存することも可能である。また、RFコイルにはバーコード化したシリアル番号を張っておくとよい。
【0025】
また、サービスマン(または操作者)が定期的または一度だけ入力するカテゴリには、保守記録、点検記録、据付データがある。
【0026】
これらの装置カルテの各項目は、通信回線200を介してどのサービスセンタ装置400からも閲覧できる。また、必要が有れば、メンテナンス支援装置300からの情報印刷物として郵送される。それぞれの項目は、以下のように利用される。
【0027】
修理・エラー記録:修理の妥当性の第3者(他のサービススペシャリスト)による確認が即座に可能となる。これにより、修理ミスの発見が容易になり、事後の故障拡大を予防できる。また、故障状況と対応方法のデータを蓄積することで、トラブルシュートの効率的改定を行うことができる。さらに、メンテナンス支援装置300に対して、MRI装置100及びサービスセンタ装置400が回線で結ばれているため、MRI装置100で異常が発生した場合は、直接、又はサービスセンタ装置400経由で、メンテナンス支援装置300のデータベース307にアクセスして状況と対応方法の最新情報を検索して対応することができる。複雑な故障が発生した場合は他のサービススペシャリストと情報を共有して対応を図ることができる。
【0028】
万一、患者に被害が出る可能性があるような重大故障が発生したときは、サービスセンタ装置400からMRI装置100へのアラートを送信し、使用者へ危険通知される。このようなアラートが発生した場合、管轄官庁への報告が完了次第、その他装置に対しても同様なアラートが(手動または自動的に)リコール情報として送られ、再調整・部品交換・取り扱い警告として各使用者に通知されることにより、類似の事故・故障を未然に防ぐことができる。
【0029】
保守記録:事前保守を効率的に行うための前提条件として装置の正確な状況把握が必要である。このための基本データが後述の定期点検で取得される装置の性能指標パラメータ(渦電流、T2*、…)である。これらの指標パラメータの値が規格値を超えた場合、データベース中の以前の値から大きく変動した場合、単調減少もしくは単調増加など一定のトレンドで変動している場合などを事前保守のトリガーとする。たとえばRFアンプの真空管球は急に破損するのではなく、徐々に出力が低下していくので、ファントムの撮影による送信ゲインの値のトレンドにより、調整時期を決めればよい。調整回数を装置カルテに記録しておくことで、最終的な交換時期を推定して管球が破損して撮影ができなくなる前に管球を交換することでき、システムダウンを防げる。
【0030】
事前保守のもうひとつの例としては、類似のサイトの装置カルテ、環境(外部要因)と装置要因(内部要因)が、当該装置カルテと所定の類似度以上一致する場合に、この類似サイトで行われた調整と同じように、調整等を行うことも可能である。またさらに、故障などの障害が表面化したサイトで得られた情報から故障状態の検出能力に優れた定期点検プログラムに更新することで、障害状態を早期に発見する。事前保守には緊急性がないため、サービス要員の空き時間と病院側の都合のよい時間を合わせるためにスケジューリング機能を用いる。
【0031】
各種調整値・各種状態値:使用環境温度などMRI装置100の各種状態値は、すべて情報加工部315の統計処理に回され、その結果としてのトレンドや他装置との比較が、サービスセンタ装置400にて活用される。これらの処理は、自動的に行われても良い。トレンド解析では、点検値の変化から定期交換部品の交換要請が行われたり、劣化・故障の事前予測が可能となる。比較分析では使用環境の異常発見や装置の最高の性能を出すための最適調整値を見つけることができる。例えば、超伝導磁石を冷却するために使用する液体ヘリウムの残量は1日に一回定時刻に装置が自動的に測定し、その値はメンテナンス支援装置300に送られる。この状態データ(減衰量)を回帰計算することにより次回補充が必要な日時が計算され、サービス店や装置使用者に事前に報告される。これにより、より的確なサービススケジュールを立てることができる。たとえば補充後1ヶ月で10%減衰、2ヶ月目で20%減衰する傾向が有り、40%以下となった場合に冷却条件が危険な状態となることがわかっていれば、4ヶ月目までに次の補充を行わなければならない。
【0032】
また、他の例としては、超伝導磁石を冷却するために使用する冷凍機は機構部品が有るために定期的に補修を行わなければならない。その期間はおおむね決まっているが装置の使用条件により若干異なる。故障してから補修した場合は、故障中は装置が使用できないことになり、使用者側としては予定外の大きな損害を蒙る。かといってあまり余裕をみて補修した場合は補修期間が短くなり無駄が多い。冷凍機の能力が下がってくると磁石内の温度が上昇してくることが分かっている場合は、上記の例と同じように定期的に自動測定を行い記録する。これにより、その変化量から次回補修必要な時期を事前に知りスケジュール化することができる。
【0033】
アップグレード、据付けデータ、カスタマイズ状況、ネットワーク接続情報:これらのデータを用いることにより、類似例の検索処理により新規据付け時の問題発生の予防が容易に可能となる。また、これらに加え、据付けやアップグレード上問題になった項目なども記録される。
【0034】
また、建て屋工事データの例として、20階建てビルの最上階に装置を設置するなど、通常あまり想定されていない状況での搬入・据付け等、特別な作業が必要な場合には、特殊なクレーンを用いる場合の法令調査や冷却水の循環高低差の検討など細目に渡る問題が多く発生する。これら問題点と対応内容、注意点などを保管する。たとえば冷水系保守時作業においてはこれらを参照し、バルブを閉める手順などを確認することができる。また、次回類似例が発生した時は、このデータを保守センタで解析することにより通常では起らない特殊な作業についての注意点をつぶさにチェックすることができる。
【0035】
他の例として、MRIのような大型の装置では簡単に買い換え・入れ替えを行うことが難しいため、通常装置の性能向上・操作性改善などハードウエア、ソフトウエアともさまざまなアップグレードが行われる。アップグレードが2度、3度と行われたにも関わらず、その履歴が記録等の管理がされていないと、次のアップグレード時に思わぬ副作用が発生する場合がある。これら情報を記録しておくことにより、事前に問題を取り除くことができる。たとえば、ソフトウエアアップグレードを行うとハードウエア側のCPUの負荷が増えるのが普通である。従って、ハードウエアを確認せずに、ソフトウエアのアップグレードのみをたびたび行っていくと、臨床上必要な動作スピードが確保できなくなる恐れがある。
【0036】
点検記録:従来の技術で示したように、MRI装置100の劣化は、特定のパルスシーケンスによる撮影で判断可能な場合があり、これらの特殊な撮影モードを定期的に使用することで故障診断の基礎データを得ることができる。また、測定が異常値であった場合、もしくは測定値が通常のばらつきを示さず、異常値に向け一定の傾向をもつ場合にはアラートを発生させ、事態に応じて修理のための手続きを開始する。
【0037】
スケジューリング機能により毎週測定する装置カルテ作成の点検の項目を説明する前に、準備するファントムとスケジューリングソフトウェアについて説明する。図6には、複数のファントム510およびこれらを設置する設置台520が示されている。設置台520は寝台530に、例えばベルト520で固定されている。設置台520はMRI装置のガントリ500に挿入される。なお、設置されるファントムは、1つでも良いし、複数であってもよい。
【0038】
撮影法には、繰り返し時間TRを短縮して測定時間を節約する撮影法や、FSEなどある程度長いTRにて大きな信号強度を得る撮影法がある。これらの撮影にそれぞれ応じた最適なファントム用の試料としては、T1強調画像は短いTRで信号を出しやすいオイルなどT1緩和の長い試料(以下オイル)である。また一方、T2強調画像では、水などT2緩和時間の長い試料(以下水)が望ましい。
【0039】
また、静磁場の均一性を測定するためには、磁力線を乱さない球状のファントムが必要である。これらの事情により自動測定は、ひとつのファントムではうまくいかない。そこで、スケジューリングソフトウェアを用いて、適当なファントムを終業時の使用者に設置してもらうように指示する。このファントムは1つまたは複数のファントムである。ここで例えば複数のファントムを使用する場合には、設置台510に、それぞれのファントム520をWBコイルの感度領域を分離できる50-70cm程度の距離をおいて装着する。この設置台を寝台に載せ、スケジューリングソフトウェアの下記プロトコルに応じてこれを自動的に移動させて測定を行うことで一気にデータ収集を行う方法がある。上述のように、ファントム520はそれぞれの信号が干渉しないような位置に設置される。また、設置台は中心軸に沿った方向に、ファントム510が撮影中に設置台520が転がり落ちるのを防止する複数の溝が設けられている。ファントムデータは、スケジューリングソフトウェアのプロトコルに従って収集される。測定日がくると、このスケジューリングソフトウェアが操作者に測定日である旨を通知する。
【0040】
次に、この装置カルテ作成に使用される点検時に取得される性能指標パラメータについて説明する。この指標パラメータは、測定間隔として例えば3つのタイプがあり、1つ目は、RFコイルのSNRなど使用前に毎回(毎日)測定するもの、2つ目は毎週測定するもの、3つ目は毎月測定されるものである。またこれらのデータは、スケジューリング機能により順次測定される。これらのデータは本体に蓄積されるほかメンテナンスセンター300に送付され蓄積される。
【0041】
(毎日(隔日)測定するもの)
WBコイル(全身用コイル)のSNR(Signal to Noise Ratio)を含む基準画像は、WBコイルそのものの検査のほか、送受信機能を含めシステム全体としての動作チェックに用いる。一般的には使用者の日常点検により行なわれる。ここで測定するパラーメータとしてSNR、信号値、ノイズ値、磁場の中心周波数、RF系の送受信ゲイン、傾斜磁場の安定性などがあげられる。ファントムには、T1の短い鉱物油などが用いられ、1分程度で測定される。
【0042】
・SNR:装置の状態を包括的に知ることができるパラメータである。ある基準値を下回る場合直ちに修理・調整が必要である。なお、SNRに異常があった場合、以下の信号値、ノイズ値、磁場の中心周波数、RF系の送受信ゲインを参照することにより、その主な原因を直ちに推定することができる。
【0043】
・信号値:SNRの信号値で、上記ファントムの再構成画像上の信号値、または再構成前の信号をさす。この値をRF系の受信ゲインで割ったものが実際の信号値となる。信号値の変動は、受信コイル(WBコイル)の劣化のほか、RF送信系の異常・劣化、RF受信系の異常・劣化が主な原因である。
【0044】
・ノイズ値:SNRのノイズ値のことで、再構成画像上の背景信号値(ファントム以外の部分のノイズ値)、または再構成前のノイズ信号をさす。この値をRF系の受信ゲインで割ったものが実際のノイズ値となる。この信号はRF送信系には影響せず、ノイズ値の変動は受信コイル(WBコイル)の劣化のほか、RF受信系の異常・劣化が主な原因である。
【0045】
・RF系の送受信ゲイン:RF系の送信ゲインはRF送信量を決めるパラメータである。この値が大きいときは被検体に投入されるRF電力が大きく、小さいときは投入RF電力が小さい。通常、患者の体形や体重により変化するため一概にいくらが正しいとは言えない量であるが、日常点検である決まったファントムを使用する場合は必要な投入RF電力が一定であるため、この変動によりRF送信系の異常・劣化の有無を知ることができる。RF系の受信ゲインは被検体の信号値から間接的に知ることできる。予め特性の分かっている特定のファントムを用いて、信号値・および上記のRF送信系の異常の可能性を知ることにより受信コイルの劣化のほかRF受信系の異常・劣化を知ることができる。
【0046】
・磁場の中心周波数:磁石中心(静磁場中心)の磁気共鳴周波数のことである。ラーモアの原理から、この周波数をもとに磁場中心の静磁場強度を知ることができる。一般的に磁石の磁気シールドや磁気回路に磁性材料(鉄など)を使用している場合はそれら磁性体の温度によって変動する。超伝導磁石を用いている場合はその他に長期的に一様の磁場減衰が発生する。この静磁場の安定性と均一性はMRIにとって良好な画質を得る上で非常に重要なパラメータである。ボールペンなどの磁性体が装置の近辺にある場合や、MRI撮影室の周りに大きな磁性体(例えば車など)があるような場合には、この中心周波数が非連続に変動することがある。これら場合は画質劣化の発生確率が高いので直ちに対応を取らなければならない。実際に画質劣化が発生した場合、逆にこのデータを取っていない場合はその原因を調査するために多大な労力が必要である。
【0047】
以上、WBコイルを用いてファントムを撮影することによりSNRを測定する場合を説明したが、ほかの手段として患者画像を使用することも可能である。これによりWBコイル以外の各種コイルについても使用者の負担を増やすことなくSNRを測定することができる。
【0048】
例えば、その日に最初に使用するRFコイルにて(頭部コイルが複数の患者さんで使われる場合は1回目)最初にコイル固有のノイズを測定するためのRF出力ゼロでの撮影を行い、ついでロケーター(スカウト)画像収集を行う。ロケータ撮影は位置決めを行なうために撮影するもので臨床用として読影に用いられることはない。撮影時間の短縮が最優先であるため撮影視野FOVやその他撮影パラメータを固定しておくことが可能である。次に、このFOVの画像が収集され、この画像の信号値(たとえば体表面部分に近い脂肪部分を自動的に抽出しその脂肪の信号値)と上記RF出力ゼロで得たノイズ信号からSNRを算出する。ノイズは、先ほどのRFカット画像で回路系のノイズ成分だけ抽出する方法のほかに、2回の独立の撮影にて差分を取る方法等も考えられる。これらの測定により、SNRだけでなく、RFアンプ送信ゲイン、コイルの受信ゲイン、RFアンプに対する反射率、なども測定しておく。
【0049】
(毎週測定(調整)するもの)
以下、スケジューリングソフトウェアにより、毎週測定される具体的な点検の項目について説明する。
【0050】
・渦電流の状態データ:必要ファントムは例えばオイルの角型である。渦電流とは、主に傾斜磁場の磁場スイッチングに起因して、装置の近辺にある金属から電磁誘導によって発生する有害な磁場成分である。傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイルのもれ磁束が主な原因である。近年、能動遮蔽型傾斜磁場コイルの登場でその量は格段に減少したが、完全にゼロにはなっておらず、このためわずかながらであるが補正量の調整(渦調整)が必要である。
【0051】
現在、主にX-X、X-Y、X-Z、Y-X、Y-Y、Y-Z、Z-X、Z-Y、Z-Zの9軸の渦調整を行っており、初期状態に比べ更に1/10-1/100以下の残留渦になるよう調整されている。しかし、この場合でも、傾斜磁場電源や傾斜磁場コイル系の故障により測定値が不安定になる現象、残留渦が増加する現象が起こることが分かっている。このため、毎週など定期的に、残留渦電流の測定と再調整を複数回行い短期の安定性と、過去ログによる長期の安定性を計測すると良い。なお、このファントム撮影は、1回の測定と調整が10分程度であり、深夜の自動調整であれば複数回の測定・調整でも問題は生じない。
【0052】
・傾斜磁場調整:必要ファントムは例えばオイルの角型である。傾斜磁場調整には、傾斜磁場強度の調整と波形特性の調整が含まれる。傾斜磁場強度の調整には、まず、あらかじめ1辺の長さが正確に判明している立方体ファントムを傾斜磁場X、Y、Z軸に沿う形で設置する。この状態でファントムを撮影し、X、Y、Z軸それぞれの方向からの投影データからその長さを測定することで行なう。立方体1辺の測定長と実際の長さが同じになるように調整パラメータを設置する。
【0053】
傾斜磁場の波形特性調整は、傾斜磁場の立ちあがりなど変化点にて発生する歪量を補正するものである。具体的には、傾斜磁場の時間的変動量をファントムからの信号(信号と位相情報)をもとに測定し、歪量を算出補正する。これらの調整が正しくないと以下のFSE調整、EPI遅れ時間調整、FE−EPI時間安定性調査を正しく行なうことができない。
【0054】
・FSE調整値:必要ファントムは例えばオイルもしくは水の角型である。FSEとは撮影方法の一種であるFast Spin Echo法のことで、繰り返されたエコー信号の位相の制御が重要なパラメータとなり、RF系の遅れ時間、渦電流などによる傾斜磁場系の遅れ時間を総合的に評価したものがFSEの各種調整値となる。このパラメータは、マルチスライスの周波数に比例する部分と、周波数に依存しないオフセット成分に分離され、それぞれ位相と位相/周波数として表現される。わずかなエラーを位相分で検出できるため、主にRF系の故障診断に用いることができる。
【0055】
シミング調整値:必要ファントムは、例えば水である。シミングとは磁石の磁場強度(静磁場)の均一性調整をさす。静磁場の均一性が各種要因によって変動する。病院側のレイアウト変更、患者さんや操作者が持ち込んだクリップなど微小な磁性体の張り付き、傾斜磁場電源の変動、シミング電源の変動、シムコイル、傾斜磁場コイルの劣化、など要因が多すぎて判断がつかない場合も多いが、前記磁場の中心周波数の値と合わせて定期的なデータとして蓄積することで故障診断が容易となる。
【0056】
・EPI遅れ時間調整値:基本的に、必要ファントムに制限はない。EPIとはEcho Plainer Imaging の略称で、送信RFにて被検体を励起後、傾斜磁場を正負に振って被検体からの信号を順次取り出す。傾斜磁場電源の出力歪や、渦電流(特にRFシールドに起因する短い渦成分)に依存してEPIのEven/Oddのエコーピークの遅れ時間が生じるのでRFのタイミングなどを調整して遅れ時間を調整する。
【0057】
・FE−EPI時間安定性:必要ファントムは、形状は問わないが水の方が変動が大きく有効である。ファントムの同一箇所を所定の時間間隔で複数回撮影するダイナミック撮影で時間安定性を評価する。傾斜磁場電源、傾斜磁場コイルの故障、RFシールドの剥離などを検出可能である。N/2アーチファクトのレベルを複数ポイントで測定する。
【0058】
・ゴースト測定:必要なファントムの形状は問わず水とオイルである。再構成画像でエンコード方向背景部への信号値の散らばり、アーチファクトをゴーストと定義する。
【0059】
・T1強調画像(SE)とT2強調画像を組で取得する。T1強調画像でわかりやすいアーチファクトと、T2強調画像で目立つアーチファクトは異なるためである。T1強調画像は短いTRで信号を出しやすいオイルファントム、T2強調画像では、水ファントムが望ましい。何が原因であるか判断できない場合も多い。したがってログ収集機能が必須である。
【0060】
(スケジューリング機能により毎月測定(調整)するもの)
上記の組み合わせにより、時間のかかるものを測定対象とする。毎週測定するものと同様、測定日になると測定スケジューリングソフトウエアは測定日の作業終了を確認するとディスプレイ等にて操作者に測定日である旨通知し、測定準備を依頼する。その他の手順は毎週測定の内容と同じで良い。
【0061】
次に、本実施の形態における各部の動作について、定期点検、故障、ソフトウェアのアップグレードを例にあげ以下に説明する。
【0062】
まず、図2及び図3を参照して、定期点検を例に説明する。メンテナンスセンター300では、病院100により、コイルやシーケンスの使用頻度がそれぞれ異なるため使用条件に合わせた定期点検メニューを作成する。たとえば、WBコイルの使用頻度の低い脳神経外科の病院では、通常の毎日のSNR検査を頭部の送受信コイルで行い、WBコイルの検査は毎週の定期検査で代用するように定期点検メニューが作成される。このことで頭部コイルの検査間隔が短縮され、障害発見を早めることができる。定期点検メニューは、スケジューリングソフトウエアの一部として、各MRI装置100の自己点検制御装置109に保存される。
【0063】
測定日の作業終了時になると、自己点検制御装置109に保存されているスケジューリングソフトウエアは、ディスプレイ105等にて操作者に測定日である旨、およびこれに対応した撮影方法通知し、測定準備を依頼する。測定スケジューリングソフトの作業終了確認はシステムシャットダウンなど、操作パネル104を介して操作者に入力されたOFFコマンド検知などにて認識することができる(ステップ1)。次に、スケジューリングソフトウェアはこの測定日に対応した測定を行うため上述のファントムを指定し、操作者に通知する(ステップ2)。操作者が測定準備を完了しファントム撮影が開始すると、このスケジューリングソフトウエアにて、システムのパラメータ測定と調整が自動で行なわれる(ステップ3)。上記ファントムを自動で移動できる機能を備えていれば、操作者は一度ファントムを準備すれば、その場にいなくても良く、深夜の自動調整が可能である。スケジューリングソフトウエアは測定が各項目完了毎もしくは全て完了すると、測定結果により必要があればMRI装置の各種調整が行われ、その測定結果や更新調整データを通信回線200からメンテナンス支援装置300に送信する。送信された測定結果と更新調整データは、装置カルテデータベース307に保存される(ステップ4)。
【0064】
また、操作者からの結果閲覧要求があるときは、直ちにその結果や解析状況をMRI装置100に返信し、操作者にディスプレイ105を通して通知する。グラフ化など簡単な解析内容であれば、解析を自動スケジューリングソフトウエアに織り込み装置本体が行なって表示しても良い。
【0065】
また、定期点検とその結果報告は組にして逐次行うことが望ましい。たとえば定期点検を毎週金曜日の検査終了時にファントムを病院側使用者にセットしてもらい、その結果は月曜日にディスプレイに表示させることができる他、メールにて医師、担当技師、技師長などに通知することができる。
【0066】
さらに、装置の状態が悪い場合には、装置全体の使用禁止・使用制限(患者さんに危害を及ぼす、もしくは装置に甚大な障害が発生する可能性がある場合)、特定コイルの使用禁止・使用制限(患者さんに危害を及ぼす、もしくはコイルに甚大な障害が発生する可能性がある場合、代替コイルを準備するまでの暫定措置)、特定シーケンスの使用禁止・使用制限(誤診を招く恐れのある等、画質に問題がある場合など)、特定撮影の使用制限(誤診を招く恐れのある等、画質に問題がある場合など)などの区分で報告を行う。上記と同様、ディスプレイに表示させることができる等での閲覧が可能な他、医師などあらかじめ指定したメンバーにメールで通知する機能を備える。さらに、上記のように状態が悪い場合の報告に付随して、ファントムの設置を依頼して、調査用画像を収集した上で確定診断をつけることも可能である。これは特にコイルに依存した不具合の場合に有効である。
【0067】
次に、故障時の動作手順について、図2及び図4を参照し説明する。MRI装置100で自動的に作成されメンテナンスセンター300に保存されたエラー記録のうち、特に重要なエラー記録が発見された場合、あるいは画像不具合が発生し操作者から直接連絡を受けた場合には、メンテナンスセンター300は、この故障の情報と共にMRI装置から送られてきた不具合画像及びその装置のカルテ情報をサービスセンタ装置400に送信する。(ステップ1)。サービスセンタのトラブルシュート担当者は送られた画像とその装置のカルテ情報をチェックする(ステップ2)。さらにこれに基づいて、メンテナンスセンター300に蓄積されている不具合画像データベースなどから類似例の検索を行う(ステップ3)。トラブルシュート担当者はこれらの情報を検討し、不具合原因を可能性の高いケースからいくつかリストアップする(ステップ4)。ついでその病院をサポートするサービス店に連絡をとり、部品の手配と修理要員の手配をする(ステップ5)。この時点で初動調査の結果を病院側使用者に通信回線経由、もしくは直接電話などにより復旧の見込みなどを含め、報告を行う。さらに、不具合画像がそのサイトで、近い撮影方法で高い頻度で撮影されている場合、不具合を回避して撮影できる可能性がある場合には、その旨提案を行ってもよい。故障の原因が一時的、もしくはソフトウェアの修正で回避できる場合には、所定の期間が経った後、あるいはソフトウェアを変更した後、使用者に確認ためのファントム撮影をお願いする。撮影された画像は、メンテナンス支援装置300経由で、サービスセンタ装置400に送られ、トラブルシューターが撮影された画像をチェックすることで故障から回復している否かを確認することができる(ステップ6)。これらの手続きをネットワーク経由で行いログ情報を逐一残しておく(ステップ7)ことで、画像不具合の再発を防ぐ。
【0068】
故障が一過性のものではなく、サービス要員の派遣が必要である場合には次のプロセスを実行する。まず、故障原因に応じた物品の手配と、サービス店経由のサービス要員の手配、サービス要員に対する指示書の作成(上記故障可能性のリストに依存する)である。手配ができた時点で、病院の使用者に連絡を行う。なお、装置の空き時間を予めMRI装置100に入力しておくことにより、サービス要員がこれをネットワーク経由で確認し、連絡を行ってもよい。頻度の低い撮影の場合には、空き時間を優先し、頻度の高い撮影の場合には、病院側と交渉して空き時間を作ってもらう。サービス要員は、病院での修理の際、装置カルテを参照することで故障診断を迅速に行う。故障の症状によっては、サービス要員の到着までの間、上記カスタマイズされた撮影条件による故障診断用の撮影を病院側使用者にお願いしてファントムを設置することで行うことも考えられる。故障診断用の撮影とはたとえば、位相エンコード方向の傾斜磁場をoffすることで、撮影中のデータの時間変化を可視化可能なシーケンスを実行する、あるいはFSEの感度ムラ測定シーケンスの実行するなどである。
【0069】
修理の際には、カルテ情報をフルに活用できる。特に問題がおきやすいのは、サイト固有の原因がある場合に、装置の限界性能を引き出すような撮影をした場合である。例としては、磁石の均一性調整後に外部の大きな磁性体を移動させ、かつ、磁場均一性に対する影響を受けやすいEPIや脂肪抑制による撮影をした場合なのである。また、シールドルームの遮蔽が不十分で且つCT等の他の装置の稼動開始時、しかもノイズを受けやすいパルスシーケンスの組み合わせなどがある。特に外部環境については装置では収集しにくい情報なので、病院側からの協力を仰ぎ頂いた情報を蓄積し、装置不具合に関連する情報を管理センター側で抽出するようにする。また、このデータを他のサイトから集積されるデータとの比較により、異常値の発見を早めることも可能である。
【0070】
次に、ソフトウエアのアップグレード時の動作について図5を参照して説明する。例えば、より精度の高い測定法などが開発された場合、(新しいパルスシーケンスが開発された場合など)にこのアップグレードが行われる。アップグレードに関する情報は、所定のデータベースに保存されており操作者は随時更新されたこの情報を参照することできる。操作者がアップグレードを望む場合には、その情報をメンテナンスセンター300へ送信する(ステップ1)。メンテナンスセンター300では、このアップグレードに対し、MRI装置が適切かどうかを判断する。具体的には、アップグレード担当者は、アップグレードを要求するMRI装置100の装置カルテにアクセスする(ステップ2)。この装置カルテから当該MRI装置がアップグレードに適しているかどうかに加え、アップグレードに最適な条件(例えばアップグレードを行い際のネットワークの転送速度等)を設定する(ステップ3)。設定後、メンテナンスセンター300からMRI装置100に対してソフトウェアを送信し、アップグレードを行う(ステップ4)。アップグレードの情報は、メンテナンスセンター300に装置カルテの一部として保存される(ステップ5)。なお、ソフトウェアのアップグレード後、今までの検査法と並行して施行し、ある程度の両測定法をオーバーラップさせて両者の関係性(データの関連性)が明確になった後、新規測定法へ完全に更新を行ってもよい。
【0071】
また、これら以外にも、上記説明の装置カルテは、部品の自動発送にも用いることができる。具体的には、サービスセンタ内の部品管理装置409では、メンテナンス支援装置300からの装置カルテ情報を元に、部品のサービスセンタからの自動発送を行うことが可能となる。
【0072】
以上のように本実施形態によれば、MRI装置で自動的に測定されたデータと、サービスマンの入力するデータを一元的に管理しているので、故障の際に、迅速かつ的確な修理を行うことができる。
【0073】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、故障など障害の際に、新たに装置構成の調査を行う必要を極力少なくして、部品の発送等を迅速化し、修理をすばやく行うことができる。あるいは、過去データを把握することで急な故障・徐々に劣化するなどを切り分けることができるようにすることで故障の診断精度を向上させることができる。さらに、点検結果により中長期的な装置性能の劣化や異常を早期に発見できるようにすることで、事前の再調整や部品交換を可能にしてそれによりシステムダウンの回避を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるメンテナンス支援システム全体構成を示す図。
【図2】図1のMRI装置、メンテナンス支援装置及びサービスセンタ装置それぞれの構成を示す図。
【図3】本実施形態において、定期点検時の動作の流れを示す図。
【図4】本実施形態において、故障発生時の動作の流れを示す図。
【図5】本実施形態において、アップグレード時の動作の流れを示す図。
【図6】本実施形態において、ファントム撮影時の様子を示す図。
【符号の説明】
100…MRI装置、
200…電子的通信回線、
300…メンテナンス支援装置、
400…サービスセンタ装置。
Claims (5)
- 被検体に所定の高周波磁場を印加し前記被検体から磁気共鳴信号を受信するMRI装置本体と、
前記MRI装置本体の点検のための撮影のスケジュールを記憶する記憶手段と、
前記撮影スケジュールに沿って前記MRI装置本体の操作者に前記撮影を指示するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、第1の周期で前記MRI装置本体のホールボディコイルのSNR評価のための画像データを取得するための撮影を指示し、第2の周期で前記MRI装置本体の渦電流の値、FSEの調整値、シミングの調整値、EPIの遅れ時間調整値、FEEPI時間安定性、ゴースト測定値及びFSE感度ムラのうち少なくとも1つのデータを取得する撮影を指示するMRI装置。 - 前記第1の周期は、前記第2の周期よりも短い周期である請求項1記載のMRI装置。
- 前記記憶装置は、前記撮影のスケジュールを複数種類記憶し、
前記コントローラは、前記撮影スケジュールに沿って前記MRI装置本体の操作者にそれぞれの種類の撮影に応じたファントムを指定し、前記ファントムの撮影を指示することを特徴とする請求項1記載のMRI装置。 - 寝台に設置され、前記ファントムを複数設置可能な設置台と、前記それぞれのファントムを撮影するため前記寝台を自動的に移動させる寝台制御手段と、をさらに備える請求項3記載のMRI装置。
- 前記設置台には、前記複数のファントムがそれぞれ設置される溝が設けられている請求項4記載のMRI装置。
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