本発明の第1の実施の形態による携帯用電動切断機について図1乃至図30を参照しながら説明する。
(1)基本構成
図1乃至図3に示すように、携帯用電動丸鋸は、モータ1を内部に支持・収納するハウジング2と、ハンドル3と、モータ1により回転駆動される鋸刃4と、ソーカバー5と、ベース6と、ファン7を主に備える。ハンドル3は、ハウジング2に一体もしくは別部材として連結して設けられ、モータ1の駆動を制御するスイッチ3aを備える。ソーカバー5は、ハウジング2に取付けられて鋸刃4外周のほぼ上側半分を覆う形状をなし、鋸刃4の外周及びモータ1側の側面の一部を収納する鋸刃収納部5aを有する。ベース6は、ソーカバー5を介してハウジング2と連結され、被切断材上に摺動可能な底面6aを有し、鋸刃5を底面6aより下方に突出させる開口部6bが形成されている。ファン7は、モータ1の出力軸1aに固定して設けられ、モータ1の駆動により出力軸1aと共に回転し、回転時にファン風を発生させてモータ1の冷却を行なう。図15に示すように、ファン7と鋸刃収納部5aとの間のソーカバー5の部分には、ファン風を鋸刃収納部5a側へと排出するファン風排出口5cが形成され、ファン風排出口5cを区画形成する複数の隔壁5dが設けられている。
図3に示すように、ハウジング2の一端面には、ハウジング2内部と外部とを連通させる空気吸入口2aが形成されている。ファン7が回転すると、空気吸入口2aよりハウジング2内部に空気(ファン風)が流入し、その空気はモータ1外周を通り、これによりモータ1が冷却される。このようにファン7はファン風によってモータ1の冷却を行うことを目的に設けられている。なお、ファン1の回転方向は、図2に矢印Dで示す方向(以下、「ファン回転方向D」と称する)である。
モータ1の出力軸1aの一端側には、ピニオンギヤ8が一体もしくは別体として設けられており、そのピニオンギヤ8はソーカバー5に回動可能に保持されたギヤ9と噛合している。ギヤ9は同軸の駆動軸10に固定されており、この駆動軸10はギヤ9を挟むように配置された同軸上の軸受11、12によってソーカバー5に回転可能に保持されている。駆動軸10上には、駆動軸10に対して回転不能な一対の鋸刃固定部材13が取付けられており、鋸刃固定部材13間に鋸刃4を挾持固定することによって、モータ1の駆動時に出力軸1aの回転力がピニオンギヤ8、ギヤ9、駆動軸10及び鋸刃固定部材13を介して伝達され、鋸刃4による切断作業が可能となる。上記したピニオンギヤ8、ギヤ9によって出力軸1aの回転力が1段減速され、鋸刃4に伝達される。なお、鋸刃4の回転方向はファン回転方向Dと反対の方向である。
携帯用電動丸鋸には、鋸刃収納部5a内において駆動軸10と同軸上で回動可能に保持され、鋸刃収納部5a内に収納可能で、鋸刃4外周のほぼ半分を覆う形状をしたセーフティーカバー17が設けられている。セーフティーカバー17には、手動回動操作用のレバー17aが取付けられている。セーフティーカバー17は図示しないスプリング等の付勢手段によって付勢されており、図1に示すように大半部分がベース6の底面6aよりも下方に突出し鋸刃4外周が露出するのを防止する回動位置が初期状態となっている。切断作業時には、セーフティーカバー17の切断方向前方側端部(図2の右側)が被切断材の端部に当接し、その状態で携帯用電動丸鋸が切断方向に摺動することによってスプリングに抗してセーフティカバー17は鋸刃収納部5a内に収納されるように回動し、ベース6の底面6aにおいて鋸刃4が露出する。被切断材上面に端面と連続しない切断加工を行う窓抜き作業等の場合には、作業者がレバー17aを操作することによってセーフティーカバー17を回動させ、ベース6の底面6aにおいて鋸刃4を露出させることができる。ソーカバー5は、ピニオンギヤ8を収納するピニオンギヤ収納部5eを有する。ピニオンギヤ収納部5eはほぼ円形形状をしており、ピニオンギヤ収納部5eのほぼ中心位置にピニオンギヤ8を位置させるために、ソーカバー5にはピニオンギヤ8を回転可能に支持する軸受14が圧入等により取付けられる。
ソーカバー5の端面は、ハウジング2端面とねじ15によって取付けられる。ピニオンギヤ収納部5eは、鋸刃収納部5aとハウジング2側の端面との間に提供され、ギヤ9を収納する形状をしている。この鋸刃収納部5aとハウジング2側の端面との間の部分がギヤケーシングとして機能する。ソーカバー5は図2に示すように、ベース6の先端側付近と後端側付近において鋸刃4を挟むようにベース6と連結されている。そして連結部には、鋸刃傾動調整機構及び鋸刃切込み深さ調整機構が設けられる。
(2)鋸刃傾動調整機構
鋸刃傾動調整機構は、ベース6先端側(切断方向前方側)付近に位置する先端側傾動調整機構と、ベース6後端側付近に位置する後端側傾動調整機構を有する。図1に示されるように、先端側傾動調整機構は、回動軸部材20と、ヒンジ保持部21と、ベベルプレート23と、ボルト24とを備え、図2及び図8に示されるように、後端側傾動調整機構は、ピン25と、リンク26と、ボルト27と、ベベルプレート28と、ボルト29とを備える。
先端側傾動調整機構について図1及び図4乃至図6に基づき説明する。ピン22は、ベース6の切断方向前方側端部付近において、鋸刃4の回転軸に直交する方向に延びてベース6に固定して設けられる。ピン22は第1の傾斜支点として機能する。ベベルプレート23は、ベース6の前端面とほぼ平行に延びてベース6から立設されると共に、ピン22を中心とした円弧形状の長穴23aが形成されている。ヒンジ保持部21は、ピン22の軸心を中心としてベース6に対して左右方向に回動可能に設けられる。ヒンジ保持部21には長穴23aを貫通するボルト24が螺合しており、ベベルプレート23の長穴23aに対してボルト24を締め付けることで、ヒンジ保持部21の回動位置が固定される。従って、長穴23aに対してボルト24を緩め、ハウジング2を図5の状態から上方に持ち上げると、ピン22を中心としてヒンジ保持部21が回動し、図6に示されるように傾動する。この傾動位置はボルト24を締付けることで維持される。ヒンジ保持部21は、ソーカバー5の先端側を左右から挟むように配置するほぼコ字形状をなし(図4)、回動軸部材20はヒンジ保持部21に回転可能に保持されている。ソーカバー5の先端側端部付近には、鋸刃4の回転軸方向にほぼ平行に延びた穴5f(図15)が形成されており、回動軸部材20は、ヒンジ保持部21に回転可能に保持された状態で穴5fに挿入される。従ってソーカバー5は、回動軸部材20を介してヒンジ保持部21に対して上下方向に回動可能である。
なお、図4、図5、図6において、6cは後述するベース6の溝部、16は後述するガイドピース、16a、16bは後述するガイド部、18は後述するネジ、5iaは後述するソーカバーの平面部、34a、34bは後述する照射装置、34aaは後述するLEDである。
後端側傾動調整機構について図7、図8に基づいて説明する。ピン25は、ベース6の上面に沿う方向で鋸刃4の回転軸方向に直交する方向に延び、第2の傾斜支点を構成する。ピン25とピン22は、両者を結ぶ仮想線がほぼ鋸刃4の面方向に平行になるように配置されている。ピン25にはリンク26が連結され、リンク26はピン25を中心としてベース6の左右方向に回動可能である。ベベルプレート28はベース6の後端面とほぼ平行に延びてベース26から立設されると共に、ピン25を中心とした円弧形状の長穴28aが形成されている。リンク26にはベベルプレート28の長穴28aを貫通するボルト29が螺合し、ボルト29を締付けることによりベース6に対するリンク26の回動位置を固定することができる。
上記したようにソーカバー5とベース6とは第1の傾斜支点を構成するピン22と第2の傾斜支点を構成するピン25を介して連結されており、第1、第2の傾斜支点を支点としてソーカバー5とベース6とが相対的に回動することができ、この回動によって、ベース6の底面6aに対する鋸刃4の角度を傾斜させることができる。図6、図8はピン22及びピン25を支点として鋸刃4の側面がベース6の底面6aに対して45度の角度を形成するようにベース6に対してソーカバー5を傾斜させた状態を示すもので、本実施形態で設定されている最大傾斜角度の45度に傾斜している。
ヒンジ保持部21及びリンク26は、ベベルプレート23、28の長穴23a、28aの範囲内で傾斜回動可能となっており、ベベルプレート23、28の鋸刃4側の壁面(即ちベベルプレート23の後側面、及びベベルプレート28の前側面)に沿って傾斜回動する。ベベルプレート23、28の鋸刃4側の壁面は面精度を出すため、機械加工がなされており(特にベベルプレート23)、ヒンジ保持部21及びリンク26の一部分とそれぞれほぼ当接する構成とすることによって、ソーカバー5とベース6とのピン22及びピン25を支点とした相対回動時の位置精度を確保するようにしている。
なお、本実施形態では、ベース6の切断方向前方側端部付近及び後方側端部付近の両方にベベルプレート23及びベベルプレート28を設けた構成としたが、これは傾斜時に本体に加わる荷重によって傾斜角度にずれが生じてしまうことを抑制するためである。通常傾斜切断時の支点となる傾斜支点22,25は、鋸刃4の前後方向延長線に近い位置にある。これは、傾斜切断時にベース6下面から鋸刃4が突出する位置が、直角切断時における突出する位置と大幅に異ならないようにするため、及び、傾斜切断時の切込み深さをより多く得るためである。これに対して、ハンドル3は鋸刃4から離れた個所に位置しているので、ハンドル3に加わった荷重は、ベース6に対してソーカバー5及びハウジング2が傾斜回動する方向に働く。以上に鑑みて、ソーカバー5とベース6との切断方向前方側と後方側の両方の連結部にベベルプレート23、28を設けることが好ましい。不意に切込み深さが変更してしまうことを抑制でき、傾斜位置の精度を向上できるからである。ただし、いずれか一方、特に切断方向前方端部側付近にのみベベルプレート23が設けられた構成であっても良い。
(3)鋸刃切込み深さ調整機構
上述したように、ソーカバー5は回動軸部材20を介してヒンジ保持部21に対して上下方向に回動可能である。またリンク26は、その下部がピン25と関連している。図10に示すように、リンク26の上部はソーカバー5の鋸刃収納部5a内に挿入可能であり、ソーカバー5の鋸刃収納部5aの上側内壁にほぼ沿う形状のリンクガイド26Aを有している。このリンクガイド26Aには、上部の長手方向に延びる長穴26aが形成されており、長穴26a内にはソーカバー5に取付けられた切込み深さ調整用ボルト27が配置し、このボルト27を締付けることによってリンクガイド26Aとソーカバー5との相対位置が固定される。
従って、ソーカバー5の前方側において、ソーカバー5とベース6とは回動軸部材20を支点として相対的に回動することができ、この回動によってベース6の底面からの鋸刃4の突出量、すなわち切り込み深さが変更される。ボルト27の操作によって切込み深さを固定することができる。図9、図10は、回動支持部材20を中心としてソーカバー5を時計方向に回動した状態を示しており、この回動により、リンクガイド26Aがソーカバー5の後端部から露出している。
(4)レーザーユニット
図4乃至図6に示されるように、ソーカバー5の鋸刃収納部5aのハウジング2(モータ1)側外壁には、照射装置34a、34bを備えたレーザーユニット34が設けられる。ソーカバー5の鋸刃収納部5aのハウジング2側外壁には、図18に示すように、ほぼ鋸刃4の側面と平行に延びた平面部5iaを有する凹部5iが形成され、この平面部5iaには図16に示すように2個のねじ穴5ibが形成されている。レーザーユニット34は、照射装置34aが平面部5iaにほぼ面接触した状態でねじ35(図28)によって平面部5iaに取付けられる。照射装置34aは2個のLED34aa(図5)を有し、ベース6の切断方向前方端部や該端部よりも切断方向前方部において鋸刃4の刃先位置を指し示すためにレーザー光を照射する。照射装置34bは、ソーカバー5の先頭側下端からベース6方向に突出する形状をしており(図25、図28)、レーザー光の照射方向が鋸刃4側面に対して傾斜する図示しないLEDを有している。照射装置34bは、開口部6bの切断方向前方付近(特に鋸刃4の刃先部付近)において鋸刃4の刃先位置を指し示すためにレーザー光を照射する。レーザーユニット34はハンドル3に設けられた照射装置用スイッチ3b(図1)によって起動が制御され、携帯用電動丸鋸の電源を用いて起動可能である。
レーザーユニット34の配置、特に照射装置34aの配置については、位置精度が要求されるが、上述したソーカバー5の平面部5iaと、レーザーユニット34の外形形状とによって、照射装置34aを容易に位置決めでき、組立性を向上できる。なお、図5、図6に示すように、照射装置34aのLED34aaの照射方向に位置するヒンジ保持部21の一部には、LED34aaから照射されるレーザー光を妨げることが無いように凹部21aが形成されている。
(5)ベース6
次にベース6について図11乃至図14に基づき説明する。ベース6の両端側付近には上述したベベルプレート23、28が設けられる。ベベルプレート23、28はベース6の両端側の側面に沿って延びていると共に、ベース6の底面6aに直交するようにベース6上面に突設している。上述したベース6とソーカバー5との連結部を構成するピン22、25は、ベース6から突設された突部30,32にそれぞれ保持される。突出部30、32はそれぞれベベルプレート23、28と一体に設けられる。具体的には、切断方向前方側のピン22は、図12に示す突出部30に形成された保持穴31内において保持され、切断方向後方側のピン25は図13に示す突出部32に形成された保持穴33内において保持される。この保持穴31と33とは中心軸が同一線上に位置するように形成される。これは鋸刃4の前後方向にほぼ平行である。
なお変形例として、保持穴31が形成された突出部30をピン22の軸方向に2つ並設し、対向する保持穴31、31の間においてピン22を保持すると共に、対向する突出部30の端面間にヒンジ保持部21を位置させる構成とすることにより、ヒンジ保持部21と連結しているピン22の変形を抑制することができる。よって切断作業時等にハンドル3を介してソーカバー5に作業者からの押圧力が過大に加わったとしても、傾斜角度のずれ、切込み深さのずれの発生を抑制することができる。
図14に特に示されるように、ベース6の底面6aの切断方向前方側には、開口部6bと連通しベース6の切断方向前方端部まで延びた溝部6cが形成されている。溝部6cは図9に示す状態において、鋸刃4の切断方向延長線上に位置し、鋸刃4の刃先の幅寸法よりも大きな幅寸法を有している。またこの溝部6cの幅寸法は、傾斜切断時においても鋸刃4側面とベース6の底面6aとが交差する線の延長線が、溝部6cの範囲内に位置するように十分な幅を有する(図6参照)。また溝部6cの高さ寸法は図12に示されるように、溝部6c周辺部分のベース6の厚さ寸法に対して約半分以下である。
溝部6cの切断方向前方部分には、図1、図4、図5等に示すように鋸刃4の刃先位置を指し示すガイドピース16がベース6上面にねじ18によって着脱可能に取付けられる。このガイドピース16は、ベース6の底面6aに対する鋸刃4側面の角度が直角である時の鋸刃4の刃先を指し示すガイド部16aと、ベース6の底面6aに対する鋸刃4側面の角度が45度である時の鋸刃4の刃先を指し示すガイド部16bとを有する。
ガイドピース16の底面は、ガイド部16a、16bを除いてベース6の溝部6cの上面とほぼ同一面となるよう形成されているが、ガイド部16a、16bは、その底面がベース6の底面6aと一致するまで下方に突出している。これによって、被切断材上に描かれたケガキ線に対するガイド部16aあるいは16bの位置を容易に合せることができる。
上述したように、溝部6cは鋸刃4の長手方向延長線上に形成されており、またピン22も鋸刃4の長手方向延長線に近い位置に設けられているので、ピン22は、ベース6上において、溝部6cの上方に位置することとなる(図12)。そしてピン22を保持する保持穴31を形成する突出部30は、溝部6cの直上方部分と非上方部分(ベベルプレート23の左側部が立設している付近)に渡って延びた形状をしている。これにより、切断作業時等にハンドル3を介してソーカバー5に作業者からの押圧力が過大に加わった場合であっても、突出部30によってベース6の特に溝部6c付近が変形してしまうことを抑制できる。また、溝部6cの直上方部分及び非上方部分に渡って延び突出部30と連続した補強リブ6eが、ベース6上方に突出して設けられている。溝部6cを形成したことにより低下してしまう溝部周辺のベース6の強度を、補強リブ6eによって補完することができる。なお補強リブ6eは、突出部30と独立して設けられても良い。
図14に示すように、穴6dが溝部6cと連通してベース6に貫通形成されている。この穴6dは、突出部30の鋸刃4側の面の面精度を高めるための機械加工により形成されたものである。ベース6上面近傍においてピン22を保持する構成としたことにより、ヒンジ保持部21の下部がベース6上面よりも下方に突出する。穴6dは、ヒンジ保持部21の下部を収納する機能も有する。
(6)ブロワ構成
上述したモータ1冷却用のファン7によって生じるファン風を利用したブロワ構成について図3、図15乃至図28に基づき説明する。ソーカバー5のギヤケーシング部分は少なくともギヤ9(図3)の幅寸法(出力軸1aの軸方向の寸法)以上の幅を持っている。図15に示すように、ソーカバー5のギヤケーシング部分には、ピニオンギヤ8の半径方向外方に位置するファン風排出口5cが形成される。ファン風排出口5cは、ハウジング2内を流れモータ1を冷却し終えたファン風をハウジング2から鋸刃収納部5a内に導出するために設けられる。
ファン風排出口5cは、ソーカバー5に一体あるいは別体として設けられた複数の隔壁5dによって区画形成されている。隔壁5dは図3に示すように、ソーカバー5のギヤケーシング部分の幅寸法Lの1/3程度の幅寸法L1(出力軸1aの軸方向の寸法)を有する。また、ファン風排出口5cの出力軸1aを中心とした半径方向の寸法は、ファン7の羽根部分の外周がファン風排出口5cの範囲内に位置するようになっている。
本実施の形態では、隔壁5dが7個設けられており、図15、図16に示されるように、ファン風排出口5cはファン7の回転軸心C1を中心として放射状に配置されている。隔壁5dはファン回転方向Dの上流側から順に配置された隔壁5da1、5da2、5da3、5db、5dc1、5dc2、5dc3を有し、隣合う隔壁5d間にファン風排出口5cが画成される。なお、隔壁5da1や5da2はファン7の回転軸方向と平行に延びているので、図15や図19においては隔壁5da1や5da2の端面のみが示され、隔壁5da1と隔壁5da2間の隙間がファン風排出口5cとなる。一方、隔壁5dbや5dc1はファン7の回転軸方向と平行ではない部分(後述する冷却風ガイド部分)を有するので、図15や図19においては、これら隔壁5dbや5dc1の端面のみならず、隔壁5dbや5dc1の冷却風ガイド部分も見える。従って、図面上では冷却風ガイド部分がファン風排出口5cとしても示される。
本実施の形態の隔壁5dは、3種類に分かれる。第1の隔壁群は、ファン回転方向D上流側で、ファン7の回転軸心C1や鋸刃4の回転軸心C2よりも切断方向後方側に位置する隔壁5da1〜5da3である。これらの隔壁5da1〜5da3は図20に示すように、ファン7の回転軸方向に沿って延びる。隔壁5da1〜5da3は、ファン排出風をファン7の回転軸方向に沿って排出するよう機能する。
第2の隔壁群は、隔壁5dc1〜5dc3である。隔壁5dc1〜5dc3は、隔壁5da1〜5da3よりもファン回転方向D下流側に位置し、ファン7の回転軸心C1や鋸刃4の回転軸心C2よりも切断方向前方側に位置する。これらの隔壁5dc1〜5dc3は、図22〜図24に示されるように、ファン7の回転軸方向に沿って延びる減速部分5dc1a〜5dc3aと、減速部分5dc1a〜5dc3aに対して傾斜して延びるガイド部分5dc1b〜5dc3bを有する。減速部分5dc1a〜5dc3aは、ファン7側に形成され、ガイド部分5dc1b〜5dc3bは鋸刃収納部5a側に形成されている。これらの隔壁5dc1〜5dc3は、ファン排出風を切断方向前方側へ排出するよう機能する。
第3の隔壁群は、ファン回転方向Dで第1の隔壁群(隔壁5da1〜5da3)と第2の隔壁群(隔壁5dc1〜5dc3)との間に位置する隔壁5dbである。隔壁5dbは鋸刃4の回転軸心C2のほぼ上方に位置する。図21に示すように、隔壁5dbは、ファン7の回転軸方向に沿って延びた減速部分5dbaと、減速部分5dbaに対して傾斜して延びるガイド部分5dbbを有する。減速部分5dbaはファン7の回転軸方向において隔壁5dc1〜5dc3とほぼ同程度の長さを有する。
上記した第2、第3の隔壁群の隔壁のガイド部分5dbb、5dc1b、5dc2b、5dc3bは、ファン回転方向D上流側の隔壁面が、減速部分5dba及び減速部分5dc1a、5dc2a、5dc3aのファン回転方向D上流側の隔壁面に対してほぼ45度の角度となるように、減速部分5dba及び5dc1a〜5dc3aの鋸刃収納部5a側端部から、ファン回転方向D斜め下流側に傾斜して延びている。隔壁5dc1〜5dc3の減速部分5dc1a〜5dc3aとガイド部分5dc1b〜5dc3bとのファン回転方向D上流側の壁面の境目は円弧状に面取りされておらず、角形状となっている。
また、隔壁5da1〜5da3、隔壁5dbの減速部分5dba、及び隔壁5dc1〜5dc3の減速部分5dc1a〜5dc3aは、図15、図16に示すように、ファン7の回転軸心C1を中心とした放射方向に対して傾斜して設けられている。この傾斜方向は、隔壁5da1〜5da3、減速部分5dba及び5dc1a〜5dc3aの半径方向外端部分が、半径方向内端部分よりもファン回転方向D上流側に位置するような方向であり、その傾斜角度(図15に示す角度θ)は45度である。
隔壁5dc3のファン回転方向D下流側には、隔壁5dc3との間にファン風排出口5cを区画形成するための壁5hが設けられている。この壁5hのファン回転方向D上流側の壁面は、隔壁5da1等と同様に、回転軸心C1を中心とした放射方向に対して反ファン回転方向D側に傾斜している。また、隔壁5dc3のガイド部分5dc3bの鋸刃収納部5a側の端面は壁5hの壁面と平行となるように形成されている。
隔壁5dは、図15及び図26に示すようにソーカバー5を正面側から見たときに(紙面の直下方向から見たとき)、隣り合う隔壁5dの間から向こう側が覗けるように形成されている。具体的には、ファン7の回転軸方向において、隔壁5dbと隔壁5dc1との間に隙間が形成され、両者が重ならないようにしている。隔壁5dc2と隔壁5dc3との関係も同様である。このような構成により、ソーカバー5を型により成型することができる。この隙間は、ファン7の回転軸を中心とした半径方向内方から外方にかけて、略平行な隙間である。
また、ソーカバー5を正面側から見たときに、隔壁5db、5dc1、5dc2のガイド部分5dbb、5dc1b、5dc2bの鋸刃収納部5a側の端面と、隣り合う隔壁5dc1、5dc2、5dc3の減速部分5dc1a、5dc2a、5dc3aのファン7側の端面とが、ほぼ平行となるように形成されている。このため、ガイド部分5dbbと減速部分5dbaとの連結部に着目すると、半径方向内方におけるガイド部分5dbbと減速部分5dbaとがなす角度と、半径方向外方におけるガイド部分5dbbと減速部分5dbaとがなす角度とは若干異なる。ガイド部分5dc1bと減速部分5dc1aの関係、ガイド部分5dc2bと減速部分5dc2aの関係、ガイド部分5dc3bと減速部分5dc3aの関係についても同様である。このような構成とすることによって、隔壁5d間の空間を有効に使って、ファン排出風を切断方向前方側へと排出するファン風排出通路5cを区画形成できる。なお、ガイド部分5dbb、5dc1b、5dc2bはそれぞれ連続した面で形成されている。
図19、図25〜図27に示されるように、ソーカバー5の鋸刃収納部5aの内壁であって、ファン風排出口5cとソーカバー5の切断方向前方側下端との間には、鋸刃4側に向かって突出する段差5gが設けられている。この段差5gは、上述したレーザユニット34取付のための凹部5iを形成する際に凹部5iの裏側に同時に形成されるものであり、図26に示すような鋸刃4の前傾姿勢状態(切込み深さを浅くした状態)においても、段差5gの下端がベース6の開口部6bの切断方向前方端部よりも切断方向後方側に位置する個所に形成されている。
図27に示すように、セーフティーカバー17の回動方向先頭部は、ソーカバー5の鋸刃収納部5a内の段差5gと当接可能にされていて、段差5gはセーフティーカバー17が図27に示す時計回り方向への過度の回動を規制するための回動規制手段として機能する。
図3に示されるように、ファン7は遠心ファンであることから、ファン7の半径方向外側に向けて吹き出されたファン風は、ハウジング2内に設けられたファンガイド19によって、ハウジング2の内壁に沿って、ファン風排出口5c内に旋回しながら流入する。ファン風排出口5c内に流入したファン排出風は、隔壁5da1〜5da3及び隔壁5dbの減速部分5dba、隔壁5dc1〜5dc3の減速部分5dc1a〜5dc3aのファン回転方向D上流側の壁面に衝突して減速される。減速されたファン排出風は、壁面に沿ってファン風排出口5cを通り、鋸刃収納部5a内に排出される。特に、減速部分5dc1a〜5dc3aに衝突して減速されたファン風は、減速部分5dc1a〜5dc3aと連続したガイド部分5dc1b〜5dc3bの壁面にほぼ沿いながら鋸刃収納部5a内に排出される。
このとき、隔壁5da1〜5da3、減速部分5dba及び5dc1a〜5dc3aが上述したように回転軸心C1を中心とする放射方向に対して傾斜して設けられているため、ファン排出風は半径方向内方に向かいながら、回転軸心C1を中心としてファン回転方向Dに旋回して鋸刃収納部5a側に排出される。ファン排出風がこのように半径方向内方に向かいながら旋回して排出されるため、ファン風排出口5cより鋸刃収納部5a側に排出されるファン排出風の風量及び風速は、半径方向外方では小さく、半径方向内方においては大きくなる。従って、半径方向外方での騒音の発生を低減しつつ、半径方向内方では排出風の風量を大きくして全体的なファン風量を確保でき、更には後述のように開口部6bの範囲内に排出されるファン排出風及び溝部6c内に流れ込むファン排出風の風量を多くすることができる。
なお、このような効果を得るためには、隔壁5dのうちのファン回転方向D上流側の壁面がファン7の回転軸心C1を中心とした放射方向に対して、ファン回転方向Dに反する方向に傾斜していれば足りるものである。しかし本実施の形態では、図20〜図24に示すように、ファン回転方向D下流側の隔壁面(特に、隔壁5dc1〜5dc3の減速部分5dc1a〜5dc3a及び隔壁5dbの減速部分5dbaのファン回転方向D下流側の壁面)についても、同様にファン7の回転軸心C1を中心とした放射方向に対して、ファン回転方向Dに反する方向に傾斜させている。結果的には、ファン回転方向D上流側の壁面と下流側の壁面とが互いに平行にされている。これにより、各ファン風排出口5cの風路面積を大きく確保することができると共に、隔壁5db、5dc1〜5dc3間のファン風排出口5cの形状をファン7の回転軸方向に対して傾斜した形状とすることができ、ファン排出風がガイド部分の形状に沿って鋸刃収納部5a内にかつ切断方向前方により排出され易くしている。
また、ガイド部分5dbb及び5dc1b〜5dc3bの回転方向D上流側の壁面を、鋸刃収納部5a側端部がファン7側端部よりもファン回転方向D下流側に位置するように、ファン7の回転中心軸方向に対して斜めに形成しているため、ガイド部分5dbb及び5dc1b〜5dc3bに沿って流れたファン排出風は、切断方向前方方向に向かって鋸刃収納部5a内に排出される。このように排出されたファン排出風は、鋸刃収納部5a内のセーフティーカバー17のファン7側の側面(図27)あるいは鋸刃4のファン7側の側面(図25)に傾斜した角度で衝突し、該側面に沿いながらその大部分はファン7の回転軸心C1(図15)から見て回動軸部材20側へ指向して流れる。このようにセーフティーカバー17あるいは鋸刃4の側面に沿って流れたファン排出風の一部は、ベース6の開口部6bの範囲内に向かって流れる。
ここで、切込み深さが深くなるにつれて、切断方向において鋸刃4が被切断材に接する長さが長くなるため、鋸刃4側面の仕切壁としての機能が増し、鋸刃4の刃先と被切断材との間の空間から鋸刃4の反ハウジング側(図2の紙面手前側、図3の紙面左側)へと漏出するファン流が減少する。よって、ファン流はより有効にベース6の開口部6b方向に指向する。特に図2に示すような切込み深さが最大付近の状態では、ファン排出風がベース6の開口部6bの範囲内に向かって最も流れやすい。また、切り込み深さが最大付近で、図27に示されるようにセーフティカバー17が回動してその大部分がソーカバー5の内部に収容されている状態では、鋸刃収納部5a内に排出されたファン排出風はそのほとんどがセーフティーカバー17のファン7側の側面に衝突し、その側面に沿うように拡散する。拡散されたファン排出風は上述したように切断方向前方側に排出されるが、ファン排出風の一部は、鋸刃収納部5aとセーフティーカバー17との間を通り、ソーカバー5の切断方向後方側付近にも排出される。これにより、切断方向後方側のベース6上面にもファン排出風が排出され、この個所に切粉が堆積することを抑制する。
また、セーフティーカバー17の一端部には切欠き傾斜面17bが形成されていて、図27に示すようにセーフティーカバー17の先頭部が前述の段差5gに当接した状態にあるときでも、セーフティーカバー17の側面が全てのファン風排出口5cに対向するのを防止している。切欠き傾斜面17bによって、セーフティーカバー17の側面に衝突し側面に沿って排出されたファン排出風や、ファン風排出口5cから直接的に排出されたファン排出風は、ベース6の開口部6bに向かって円滑に流れる。
一方、図26に示すように回動軸部材20を支点としてソーカバー5を上方へ回動させ、切り込み深さを浅くした際には、ファン風排出口5cから排出されたファン排出風の一部は鋸刃4の側面に沿ってベース6の開口部6bの範囲内に排出され、ファン排出風の他部は段差5gに衝突する。段差5gに衝突したファン排出風は段差5gに沿ってソーカバー5下方に向かい、その後切断方向前方側に向かって流れ、ベース6の開口部6bの範囲内に向かって排出される。
このように開口部6bの範囲内に排出されたファン排出風は、被切断材の上面に衝突して切粉を吹き飛ばし、切断時に鋸刃4の刃先とベース6の底面6aとの交点(すなわち切断部)の周辺に切粉が堆積することを抑制する。よって、切断部付近の視認性が向上し、切断部手前のケガキ線の視認性を向上することができ、作業性を向上できる。
また、被切断材の上面に衝突したファン排出風はその後、被切断材の上面に沿って溝部6c内に流れ込む。溝部6cの鋸刃4回動軸方向の幅寸法は開口部6bの幅よりも小さく、溝部6c内に鋸刃4のベース6の底面6aと交差する鋸刃4の両側面部分の延長線が存在する形状とされているため、溝部6c内に流れ込んだファン排出風は切断方向への指向性を発揮してベース6の前端から切断方向前方に排出される。これによって、ベース6よりも切断方向前方側の被切断材上に切粉が堆積することを抑制する。特に、溝部6cが鋸刃4の長手方向の延長線上に位置しているので、被切断材上面に描かれたケガキ線上をファン排出風が流れることになり、ケガキ線上の切粉が吹き飛ばされ、作業性を向上できる。また、鋸刃4が傾斜した状態で切断するときにおいても、鋸刃4の長手方向の延長線上に溝部6cが位置するように溝部6cは十分な幅寸法を持っているため、傾斜切断作業であっても同様に作業性を向上できる。また上述したように、ガイドピース16(図14)の底面は溝部6cの上面とほぼ同一面となるように形成されているため、溝部6c内に流れ込んだファン排出風はガイドピース16に阻害されることなくベース6前端から切断方向前方側に吹き出すことができる。
上述したように、隔壁5dc1〜5dc3の減速部分5dc1a〜5dc3aとガイド部分5dc1b〜5dc3bとのファン回転方向D上流側の壁面の境目は円弧状に面取りされておらず、角形状となっている。ここで、仮に境界部を面取りすると減速部分5dc1a〜5dc3aの面積が小さくなり、ファン風は減速部分5dc1a〜5dc3aに十分に衝突しないままファン風排出口5cを介して鋸刃収納部5a内に排出され、その結果、風速の高いファン排出風が発生してしまい、騒音が発生してしまうという問題がある。しかし、上記したような角形状とすることによりこの問題を解消できる。
また、複数の隔壁5dによってファン風排出口5cを区画しているので、ファン風排出口5cの面積を確保しつつソーカバー5の強度を確保できる。上述したように全ての隔壁5dをファン7の回転軸心C1を中心とした放射方向に対して傾斜した形状としたため、隔壁5dの補強効果が低下するが、隔壁5dの少なくとも一部にファン7の回転軸方向に対して傾斜したガイド部分5dbb及び5dc1b〜5dc3bを一体に設けたことにより、隔壁5dの補強効果を補うことができる。
切断作業時に鋸刃4がロックした時等には、ギヤ9とピニオンギヤ8とが相互に離間する方向に軸受11、12、14を介してソーカバー5に負荷が働く。即ち、ピニオンギヤ8と同軸であるファン7の回転軸心C1の周囲や、ギヤ9と同軸である鋸刃4の回転軸心C2周囲付近に負荷が作用する。しかし、図25に示すように、これらの箇所にはガイド部分5dc1b〜5dc3bを有する隔壁5dc1〜5dc3が位置するので、負荷が加わり易い部分で隔壁5dによる補強効果が発揮でき、ソーカバー5の寿命を向上させることができる。
ファン風排出口5cをファン7の回転軸心C1を中心として放射状に配置した構成としたことにより、切込み深さを変えた際にも、いずれかのファン風排出口5cより排出されたファン排出風が鋸刃4の側面あるいはセーフティーカバー17の側面に衝突し、側面に沿いながら開口部6bの範囲内に排出されるため、切込み深さが異なる切断作業であっても作業性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、隔壁5dc1〜5dc3に減速部分5dc1a〜5dc3aを設けた構成としたが、ベース6の開口部6bの範囲内にファン排出風を排出する目的や、ベース6に設けられた溝部6cを通じてベース6前端から切断方向前方側にファン排出風を排出する目的を達成するためには、隔壁5dc1〜5dc3はガイド部分5dc1b〜5dc3bのみから成る形状としても良い。また、開口部6bの範囲内に排出されたファン排出風が溝部6cを通りベース6の切断方向前端から前方側に排出される構成であれば、ベース6の底面6aに溝部6cを覆うような部材を設けてもよい。
本実施形態では、ソーカバー5の一部とベース6とが連結され、ソーカバー5を介してハウジング2とベース6とが連結される構成としたが、本発明はこの構成に限られるものではなく、直接的にハウジング2とベース6とが連結する構成、あるいはハウジング2に対して相対移動不能な部材がベース6に連結される構成であっても良い。
(7)ファン風吹き出し調整機構
上述したファン排出風を利用して被切断材上における切粉の堆積を抑制するブロワ機能を調整するファン風吹き出し調整機構について図29乃至31を参照して説明する。
図29に示されるように、ソーカバー5には、上下方向に延びる段差5gに沿って上下方向に摺動可能な遮蔽部材51が設けられている。遮蔽部材51は、段差5gに摺接する段差摺接部51Aと、ソーカバー5に摺接するソーカバー摺接部51Bを有し、断面L字状をなす。図30及び図31に示されるように、ソーカバー5には上下方向に延びるスロット5kが形成され、ソーカバー摺切部51Bに螺合しているネジ52がスロット5k内を貫通している。従ってハウジング2側からソーカバー5に向かってネジ52を緩めることにより、遮蔽部材51はスロット5kの長さの範囲で上下方向に移動可能であり、その位置はネジ52を締め付けることで固定される。
図29に示されるように、ネジ52がスロット5kの上端と当接しているとき、遮蔽部材51は上方位置である非遮蔽位置に固定され、ファン風は遮蔽部材51の段差摺切部51Aに当たった後、あるいは直接的にベース6の開口部6b方向にかつ、切断方向前方側に指向する。よってファン風は、溝部6cを通ってベース6の前端から吹き出ることができる。一方、図30に示されるように、ネジ52がスロット5kの下端と当接しているとき、遮蔽部材51は下方位置である遮蔽位置に固定され、開口部6bに向かうファン風は、遮蔽部材51に当たるので、切断方向前方には指向できない。よってファン風は溝6c内に導入されず、ベース6前端からファン風の前方への吹き出しが阻止され、切粉の飛散が防止される。更に、遮蔽部材51を非遮蔽位置と遮蔽位置の間の位置で固定すれば、ベース6前方の開口部から吹き出されるファン風の風量を調整でき、これにより切粉の飛散を抑えつつ、ブロワ機能を利用することができる。本実施の形態では、段差5gが遮蔽部材51の移動を案内しているので、遮蔽部材51を固定するために、ネジ52は1本のみで十分である。
本発明の第2の実施の形態による携帯用電動切断機について図32乃至図35を参照しながら説明する。本実施の形態による携帯用電動切断機において前記第1の実施の形態における携帯用電動切断機と同一の部材には同一の参照番号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
第2の実施の形態は、遮蔽部材151の形状と移動方向が、第1の実施の形態の遮蔽部材51とは異なる。遮蔽部材151は、ソーカバー105の壁面に沿って切断方向及び反切断方向に移動可能に設けられる。遮蔽部材151は、略四辺形状をなし、段差105gに平行な第一辺と、該一辺に略直交する第2辺と、第2辺に略平行な第3辺と、隔壁5dの半径方向外方端部に倣う円弧状をなす第4辺を有する。図33乃至図35に示すように、ソーカバー105には、切断方向に互いに平行に延びる一対のスロット105k、105kが形成されている。そして遮蔽部材151に螺合している一対のネジ152が、一対のスロット105k、105k内を貫通している。従ってハウジング2側からソーカバー105に向かってネジ152を緩めることにより、遮蔽部材151はスロット105kの長さの範囲で切断方向に移動可能であり、その位置はネジ152を締付けることで固定される。
図32に示されるように、ネジ152がスロット105kの右端と当接しているとき、遮蔽部材151は右方限界位置である非遮蔽位置に固定される。この状態では、遮蔽部材151の円弧状の辺部は、ファン風排出口5cの全てを開放しており、ファン風は遮蔽部材151に遮られることなく、ベース6の開口部6b方向にかつ、切断方向前方側に指向できる。よってファン風は、溝部6cを通ってベース6の前端から吹き出ることができる。一方、図33に示されるように、ネジ152がスロット105kの左端と当接しているとき、遮蔽部材151は左方限界位置である遮蔽位置に固定される。この状態では、遮蔽部材151の円弧状の辺部の周辺が、切断方向前方側のファン風排出口5cをほぼ閉鎖するようになり、ファン風が開口部6の切断方向前方、すなわち溝部6cの方向に向かって指向することが遮蔽部材151によって遮られる。よってファン風は溝6c内に導入されず、ベース前端6からファン風の前方への吹き出しが阻止され、切粉の飛散を防止できる。更に、遮蔽部材151を非遮蔽位置と遮蔽位置の間の位置で固定すれば、ベース6前方の開口部から吹き出されるファン風の風量を調整でき、これにより切粉の飛散を抑えつつ、ブロワ機能を利用することができる。
本発明の第3の実施の形態による携帯用電動切断機について図36乃至図41を参照しながら説明する。これらの図において、第1の実施の形態と対応する部材には、同一の参照番号に「300」を加えている。これらの図は、ハウジング302、ハンドル303、ソーカバー305、鋸刃収納部305a、ファン風排出口305c、隔壁305d、ベース306、ベース開口部306b、セーフティカバー317等を示す。
図36に示すように、ベース306の底面306aには、開口部306bと連通する溝部306cが、開口部306bの切断方向前端からベース306の前端まで形成されている。第1の実施の形態と同様に、溝部306cは鋸刃4の長手方向延長線上に位置し、幅は鋸刃4の幅よりも大きい。第1の実施の形態と同様に、溝部306cの幅は、ベース306底面に対して鋸刃4を最大角度に傾斜させたときにも、溝部306c内にベース底面6aと交差する鋸刃4の部分の長手方向延長線が位置することが可能な幅寸法、すなわち傾斜切断作業時にもケガキ線が溝306c内に位置できるような幅寸法を備える。第1の実施の形態と同様に、ベース306はハウジング302あるいはソーカバー305に連結されるか、ハウジング302とソーカバー305とに連結される。
図38に示すように、ソーカバー305のハウジング302側端部付近には外壁面305Aが設けられる(カバー305のハウジング302側壁面305A)。この外壁面305Aには複数の隔壁305dが設けられ、隣合う隔壁305d間にファン風排出口305cが画成される。これら隔壁305dは、図36に示すように、ベース306、特にその開口部306bの範囲内の切断部付近に向かって傾斜した形状である。ファン風排出口305cはファン7の軸方向においてファン7から離間した位置に形成され、かつファン7の半径方向外方に位置する。
図39、図41に示すように、鋸刃収納部305aとハウジング302との間には、鋸刃収納部305aとハウジング302との間を仕切る壁部305bが配置されていて、鋸刃収納部305a内にファン風Wが流入するのを防止する。壁部305bのファン風排出口305c付近には、傾斜壁部305jが設けられる。傾斜壁部305jは、ファン7の半径方向外方に向かうに従って、鋸刃4側面との距離が徐々に小さくなるよう傾斜していて、更に鋸刃4の刃先とベース306の底面との交点に向かって傾斜している。図39に示すように、ソーカバー305の切断方向前方側には、ファン風Wを通過させる凹部305mが形成される。
かかる構成により、ファン風Wは外壁面305Aの内側を通って壁部305bに吹き当たり、傾斜面305jに沿って鋸刃4側面に近づく方向に流れ、開口部306bの範囲内に指向する。そしてファン風Wはファン風排出口305c及び凹部305mを通じてソーカバー305の外部へ、切断方向前方(図37において右側方向)に排出される。
ソーカバー305の外部に排出されたファン風Wは、ベース306の開口部306bの範囲内に排出され、開口部306bの範囲内に位置する被切断材の上面に吹き当たり拡散する。拡散したファン風Wの一部は、溝306cと被切断材上面との間の空間を通り、被切断材上面に沿ってベース306の先端面から排出される。このため、ファン風Wによって開口部306bの範囲内における被切断材上面に切粉が溜まることを抑制することができると共に、ベース306前端よりも切断方向前方側の被切断材上面においても切粉が溜まることを抑制することができ、ケガキ線の視認性を向上させ、更に作業性の向上を図ることができる。また、このファン風排出口305c及び隔壁305dは、ファン風を切断方向前方へ排出するような位置に設けられているため、ファン風Wが切断作業時に作業者に向かうこともない。
このように、第1の実施の形態による携帯用電動切断機では、ファン流は、ソーカバー5内部を通って切断方向前方に指向して開口部6bに至るが、本実施の形態では、ファン流はソーカバー5外壁に沿って流れて、切断方向前方に指向して開口部6bに至る。
次に、遮蔽部材351について説明する。図39及び図40に示すように、遮蔽部材351は、ソーカバー305の切断方向前方側であって、外壁面305Aの外面に移動可能に取付けられる。詳しくは、遮蔽部材351には上下方向に延びるスロット351aが形成され、スロット351aを貫通して取付ネジ352が外壁面305Aに螺合している。
図39に示すように、取付ネジ352が遮蔽部材351のスロット351aの下端と当接した位置にあるときは、遮蔽部材351は非遮蔽位置である上方位置に固定される。この状態では、遮蔽部材351は、ソーカバー305の凹部305mを開放しているので、ファン風排出口305cを通過したファン風は、遮蔽部材351に遮断されることなく、凹部105mを通過し、ベース開口部306b内に指向して、切断方向前方に導かれ、ベース306の溝部306c内を通って、ベース306前端から吹き出ることができる。一方、図40に示すように取付ネジ352が遮蔽部材351のスロット351aの上端と当接した位置にあるときは、遮蔽部材351は遮蔽位置である下方位置に固定される。この状態では、遮蔽部材351は凹部305mを閉鎖しているので、ファン風排出口305cを通過したファン風Wは、遮蔽部材351で遮断され、ファン風Wはベース306の溝部306c内に導入されず、ベース306前端からファン風Wの前方への吹き出しが阻止され、切粉の飛散が防止される。更に、遮蔽部材151を非遮蔽位置と遮蔽位置の間の位置で固定すれば、ベース106前方の開口部から吹き出されるファン風の風量を調整でき、これにより切粉の飛散を抑えつつ、ブロワ機能を利用することができる。
本発明による携帯用電動切断機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
1はモータ、2はハウジング、3はハンドル、4は鋸刃、5はソーカバー、5aは鋸刃収納部、5cはファン風排出口、5dは隔壁、5eはピニオンギヤ収納部、5fは穴、5gは段差、5hは壁、5iは凹部、6はベース、6aはベース底面、6bは開口部、6cは溝部、7はファン、8はピニオンギヤ、9はギヤ、10は出力軸、11、12は軸受、13は鋸刃固定部材、14は軸受、15はねじ、16はガイドピース、17はセーフティーカバー、18はねじ、20は回動軸部材、21はヒンジ保持部、22はピン、23はベベルプレート、24はボルト、25はピン、26はリンク、27はボルト、28はベベルプレート、29はボルト、30は突出部、31は保持穴、32は突出部、33は保持穴、34はレーザーユニット、35はねじ、51は遮蔽部材、105kはスロット、151は遮蔽部材、152はネジ、302はハウジング、303はハンドル、ソーカバー305は、305Aは外壁面、305aは鋸刃収納部、305cはファン風排出口、305dは隔壁、305mは凹部、306はベース、306bはベース開口部、306cは溝部、317はセーフティカバー、351は遮蔽部材、351aはスロット、352は取付ネジ。