JP4211416B2 - ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物に関するものである。さらに詳細には、融体の溶融張力が大きく、成形時の安定性に優れるポリオレフィン樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン樹脂の成形は、通常、ポリオレフィン樹脂を加熱溶融し、ポリオレフィン樹脂が流動する状態で行われる。そして、ポリオレフィン樹脂の成形法としては、従来から、インフレーションフィルム成形法、Tダイキャストフィルム成形法、ダイレクトブロー成形法、インジェクションブロー成形法、各種の形状にポリオレフィン樹脂を押し出す押出成形法、カレンダー成形法、ロール成形法、真空・圧空成形法、発泡成形法、紡糸法等が知られている。
【0003】
これらの成形法を用いて、ポリオレフィン樹脂を成形する場合、ポリオレフィン樹脂の融体の溶融張力がある程度大きくないと、成形ができなかったり、成形が困難であったり、成形条件が限定されたりすることがあり、場合によっては、成形品が不良品になることがある。例えば、インフレーションフィルム成形法の場合、成形時の融体のバブルが不安定になったり、融体の垂れ(ドローダウン)が発生し、得られたフィルムに厚みや幅のむらが現れ、フィルムが不均一となることがある。また、発泡成形法の場合、破泡が起きたり、大きな発泡倍率が得られなかったり、発泡セルの大きさが不均一になったりすることがある。
上述のような状況において、ポリオレフィン樹脂の融体の溶融張力や成形時の安定性についてさらなる改良が望まれており、例えば、ポリオレフィン樹脂の分子量分布を広げる方法などが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−230136号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、融体の溶融張力が大きく、成形時の安定性に優れるポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン樹脂(A)50〜95重量%と、共重合体(B)50〜5重量%とを含有するポリオレフィン樹脂組成物であって、該共重合体(B)がエチレンおよび/またはα−オレフィンと下記ビニル化合物とを共重合して得られる共重合体であり、該ビニル化合物が、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1ペンテン、3−エチル−4−メチル−1−ペンテンまたは3,3−ジメチル−4−メチル−1−ペンテンであり、該共重合体(B)において下記ビニル化合物の共重合組成が15〜85mol%であることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物に係るものである。
ビニル化合物:CH2=CH−Rで表され、置換基Rの立体パラメータEsが−1.64以下であり、かつ置換基Rの立体パラメータB1が1.53以上であるビニル化合物。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)とは、炭素数2〜12のオレフィンから誘導される少なくとも1種の構造単位を50〜100重量%含む熱可塑性樹脂を意味する。
【0008】
ポリオレフィン系樹脂(A)としては、例えば、エチレンまたはα−オレフィンの単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレンとα−オレフィンおよび/または共役ジエンや非共役ジエン等の多不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、上記以外のポリオレフィン樹脂(A)として、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸およびそのエステル化物や酸無水物との共重合体やエチレンと酢酸ビニルなどのビニルエステル類との共重合体等が挙げられ、融体の溶融張力上昇、加工時の安定性の観点から、好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体である。また、これらのポリオレフィン樹脂(A)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
ポリオレフィン樹脂(A)に用いられるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、より好ましくはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1であり、さらに好ましくはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1である。また、これらのα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
多不飽和化合物としては例えばジビニルベンゼン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンノルボルネン等が挙げられ、好ましくはジビニルベンゼン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエンである。
【0011】
ポリオレフィン樹脂(A)として用いられる単独重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−1等が挙げられ、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンである。
【0012】
プロピレン・α−オレフィン共重合体としては、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン・ヘキセン−1共重合体、プロピレン・オクテン−1共重合体等が挙げられ、好ましくは、プロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、より好ましくはプロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ヘキセン−1共重合体である。
【0013】
エチレン・プロピレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・プロピレン・オクテン−1共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレンとプロピレンと、炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体であり、より好ましくはエチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキセン−1共重合体である。
【0014】
エチレンとα−オレフィンおよび/または共役ジエンや非共役ジエン等の多不飽和化合物との共重合体としては、エチレン・プロピレン・ジビニルベンゼン共重合体、エチレン・プロピレン・ノルボルナジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレン・プロピレン・ジビニルベンゼン共重合体である。
【0015】
エチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ペンテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・ヘプテン−1共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体、エチレン・ノネン−1共重合体、エチレン・デセン−1共重合体、エチレン・4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン・4−メチルヘキセン−1共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンの共重合体であり、より好ましくはエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体、エチレン・4−メチルペンテン−1共重合体であり、さらに好ましくはエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体である。
【0016】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、成形体のべたつき防止、成形体の強度の観点から、870〜970Kg/m3であり、好ましくは875〜940Kg/m3であり、より好ましくは880〜935Kg/m3である。
【0017】
エチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、通常、0.01〜100g/10分であり、押出負荷の上昇防止、成形体の強度や成形性の観点から、0.1〜30g/10分であり、好ましくは0.5〜20g/10分であり、より好ましくは0.8〜10g/10分である。
【0018】
エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法による製造方法が挙げられる。公知の触媒としては、例えば、チーグラーナッタ系触媒、メタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくはメタロセン系触媒である。公知の重合方法としては、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる共重合体(B)は、エチレンおよび/またはα−オレフィンと下記ビニル化合物とを共重合して得られる共重合体であり、下記ビニル化合物は嵩高い置換基を有するビニル化合物である。
ビニル化合物:CH2=CH−Rで表され、置換基Rの立体パラメータEsが−1.64以下であり、かつ置換基Rの立体パラメータB1が1.53以上であるビニル化合物。
【0020】
ここでいう立体パラメータEsおよびB1は、置換基の立体的嵩高さを表すパラメータ(Esは三次元的な広がりを、B1は二次元的な広がりを表す)であり、文献(C.Hansch and A.Leo:“Exploring QSAR Fundamentals and Applications in Chemistry and Biology”Chapter3(ACS Professional Reference Book,Wasington,DC(1995))に記載されている方法で求める。
【0021】
表1に、立体パラメータEsが−1.64以下であり、かつ置換基Rの立体パラメータB1が1.53以上であるビニル化合物を例示する。
【0022】
【表1】
【0023】
参考のため、嵩高くない置換基を有するいくつかのビニル化合物の立体パラメータを表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
本発明で用いられる共重合体(B)のビニル化合物としては、より嵩高い置換基を有するビニル化合物が、より好適に用いられる。
前記置換基Rの立体パラメータEsとして好ましくは−4.65〜−1.70であり、より好ましくは−3.00〜−1.72であり、さらに好ましくは、−2.80〜−1.75であり、最も好ましくは、−2.10〜−1.75である。また、前記置換基Rの立体パラメータB1として好ましくは1.53〜2.90であり、より好ましくは1.70〜2.70であり、さらに好ましくは1.91〜2.30である。前記立体パラメータEsが大きすぎる場合や前記立体パラメータB1が小さ過ぎる場合、成形安定性、弾性回復性や遅延回復性に劣ることがある。
また、共重合体(B)のビニル化合物として、熱安定性の観点から、好ましくは置換基Rが炭化水素基であるビニル化合物であり、より好ましくは置換基Rが飽和炭化水素基であるビニル化合物である。
【0026】
本発明で用いられるビニル化合物としては、3位の炭素原子以外に枝分かれ構造を有しないことが好ましい。ここでいう枝分かれ構造とは、分子骨格が直鎖状ではなく、3級ないし4級の炭素原子を介して分岐した骨格を有する構造のことを言う。かかるビニル化合物は枝分かれ構造を複数有するビニル化合物に比べて合成が容易である。
【0027】
本発明で用いられるビニル化合物としては、3位の炭素原子が3級ないし4級であり、かつ3位の炭素原子以外に枝分かれ構造を有さない構造を有するものがより好ましい。
【0028】
本発明で用いられるビニル化合物としては、置換基Rが2級アルキル基または3級アルキル基であるものがさらに好ましい。
【0029】
ここでいう2級アルキル基または3級アルキル基として好ましくは、炭素数3〜20の2級アルキル基または炭素数4〜20の3級アルキル基である。Rはシクロアルキル基であってもよく、その場合に、好ましくは3〜16員環のシクロアルキル基であり、より好ましくは3〜10員環のシクロアルキル基である。
【0030】
かかるビニル化合物の具体例としては、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ヘプテン、3−メチル−1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘプテン、3,3−ジメチル−1−オクテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘプテン、3,4−ジメチル−1−オクテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,5−ジメチル−1−ヘプテン、3,5−ジメチル−1−オクテン、3,6−ジメチル−1−ヘプテン、3,6−ジメチル−1−オクテン、3,7−ジメチル−1−オクテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,3,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,3,4−トリメチル−1−オクテン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,4,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,4,4−トリメチル−1−オクテン、5−ビニル−2−ノルボルネン、1−ビニルアダマンタン、4−ビニル−1−シクロヘキセンなどが挙げられる。
【0031】
より好ましいビニル化合物は、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、5−ビニル−2−ノルボルネン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、または3,4,4−トリメチル−1−ペンテンである。さらに好ましいビニル化合物は、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、または3,3,4−トリメチル−1−ペンテンであり、特に好ましいビニル化合物は、ビニルシクロヘキサン、または3,3−ジメチル−1−ブテンである。
【0032】
本発明で用いられる共重合体(B)のα−オレフィンとしては、前述のポリオレフィン樹脂(A)として用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンと同様のものを用いることができる。
【0033】
本発明で用いられる共重合体(B)は、エチレンやα−オレフィン、嵩高い置換基を有するビニル化合物に加え、さらに少なくとも1種の付加重合性モノマーを共重合させた共重合体であってもよい。前記付加重合性モノマーとしては、例えば炭素数3〜20の環状オレフィン、ビニリデン化合物、ジエン化合物、または、共重合体(B)に用いられる嵩高い置換基を有するビニル化合物以外のビニル化合物を挙げることができる。
【0034】
かかる環状オレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−ベンジル−2−ノルボルネン、2−テトラシクロドデセン、2−トリシクロデセン、2−トリシクロウンデセン、2−ペンタシクロペンタデセン、2−ペンタシクロヘキサデセン、8−メチル−2−テトラシクロドデセン、8−エチル−2−テトラシクロドデセン、5−アセチル−2−ノルボルネン、5−アセチルオキシ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−エトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、8−メトキシカルボニル−2−テトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−2−テトラシクロドデセン、8−シアノ−2−テトラシクロドデセン等が挙げられる。より好ましい環状オレフィンは、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、2−テトラシクロドデセン、2−トリシクロデセン、2−トリシクロウンデセン、2−ペンタシクロペンタデセン、2−ペンタシクロヘキサデセン、5−アセチル−2−ノルボルネン、5−アセチルオキシ−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、または5−シアノ−2−ノルボルネンであり、特に好ましくは2−ノルボルネン、または2−テトラシクロドデセンである。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記ビニリデン化合物の具体例としては、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−メチル−1−オクテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ヘプテン、2,3−ジメチル−1−オクテン、2,4−ジメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられる。特に好ましいビニリデン化合物はイソブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、または2,4,4−トリメチル−1−ペンテンである。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ジエン化合物の具体例としては、1、3−ブタジエン、1、4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられる。特に好ましいジエン化合物は1、4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、または5−エチリデン−2−ノルボルネンである。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、共重合体(B)に用いられる嵩高い置換基を有するビニル化合物以外のビニル化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明で用いられる共重合体(B)において、嵩高い置換基を有するビニル化合物の共重合組成は、透明性や加工性の観点から、15〜85mol%である。ただし、共重合体(B)の全組成を100mol%とする。前記ビニル化合物の共重合組成は、1H−NMRスペクトルや13C−NMRスペクトルを用いる定法により容易に求められる。
【0039】
本発明で用いられる共重合体(B)のポリマー骨格中(ポリマーの分子鎖中に分岐したポリマー鎖がある場合はそれも含む。)には、嵩高い置換基を有するビニル化合物由来の2級炭素原子と3級炭素原子とが存在する。また、エチレンと嵩高い置換基を有するビニル化合物との共重合体の場合にはエチレン由来の2級炭素原子も存在し、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体の場合にはα−オレフィン由来の2級炭素原子と3級炭素原子も存在する。ポリマー骨格中のシーケンスに応じて、3級炭素原子同士が1個のメチレン基によって隔てられた構造や、2個のメチレン基によって隔てられた構造、3個のメチレン基によって隔てられた構造、4個以上のメチレン基によって隔てられた構造が存在しうる。かかるポリマー構造は、13C−NMRスペクトルにより決定される。本発明で用いられる共重合体(B)は、その骨格において、嵩高い置換基を有するビニル化合物に由来する置換基Rで置換された炭素原子同士が好ましくは3個のメチレン基によって隔てられる構造を有し、さらに好ましくは1個のメチレン基によって隔てられる構造を有する。かかる構造を有する共重合体は柔軟性に優れ、好ましい。
【0040】
本発明で用いられる共重合体(B)は、耐候性という観点から共重合体の末端を除くポリマーの全ての分子構造(置換基Rも含む)中に2重結合を含まないことが好ましい。ポリマーの分子構造中に二重結合を含む共重合体は熱安定性にも劣って成形加工中のゲル化によるフィシュアイ発生などの問題が生じる場合もある。
【0041】
本発明で用いられる共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、機械的強度や透明性の観点から、好ましくは1.5〜4.0であり、さらに好ましくは1.5〜3.5であり、特に好ましくは1.5〜3.0である。
【0042】
また、本発明で用いられる共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、機械的強度の観点から、好ましくは5,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは10,000〜500,000であり、特に好ましくは20,000〜400,000である。
【0043】
本発明で用いられる共重合体(B)の極限粘度[η]は、機械的強度の観点から、好ましくは0.2〜10.0dl/gであり、さらに好ましくは0.25〜6.0dl/gであり、特に好ましくは0.3〜5.0dl/gである。
【0044】
本発明で用いられる共重合体(B)の製造方法としては、例えば、トリチルボレートおよびトリイソブチルアルミニウムとを、またはメチルアルモキサンとを接触させて得られる触媒の存在下、エチレンおよび/またはα−オレフィンと嵩高い置換基を有するビニル化合物とを共重合する方法が挙げられる。その際、エチレンやα−オレフィン、嵩高い置換基を有するビニル化合物の投入量、重合温度や重合時間などの重合条件を適宜変更することによって、共重合組成や分子量等の異なる共重合体を得ることができる。
【0045】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂(A)と共重合体(B)の含有量としては、ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が50〜95重量%であり、共重合体(B)の含有量が50〜5重量%であり、より好ましくは、ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が60〜90重量%であり、共重合体(B)の含有量が40〜10重量%である。ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が少なすぎる(共重合体(B)の含有量が多すぎる)と、得られた樹脂組成物を用いた成形品において外観が不良にあることがあり、ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が多すぎる(共重合体(B)の含有量が少なすぎる)と、溶融張力が低下し、成形安定性に劣ることがある。ただし、ポリオレフィン樹脂(A)と共重合体(B)の合計量を100重量%とする。
【0046】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物には、必要に応じて、他の樹脂成分や安定剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を配合してもよい。
【0047】
安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名:IRGANOX 1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX 1076、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等のフェノール系安定剤;ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト系安定剤等が挙げられる。
【0048】
滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0049】
ブロッキング防止剤としては、無機系ブロッキング防止剤および有機系ブロッキング防止剤が挙げられ、無機系ブロッキング防止剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリ(メタクリル酸メチル−スチレン)共重合体、架橋シリコーン、架橋ポリスチレンの粉末等が挙げられる。好ましくは有機系ブロッキング防止剤である。
【0050】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法としては、公知の混合方法が挙げられ、例えば、本発明で用いられるポリレフィン樹脂(A)と共重合体(B)を溶融混練する方法等が挙げられる。
【0051】
また、必要に応じて配合されるその他の樹脂や安定剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、ブロッキング防止剤等の添加剤の混合方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)と共重合体(B)からなる樹脂組成物にあらかじめ溶融混練する方法、本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)または共重合体(B)の個々にドライブレンドする方法、少なくとも1種のその他の樹脂や添加剤のマスターバッチを用意してドライブレンドする方法等が挙げられる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例で用いたポリオレフィン樹脂(A)と共重合体(B)からなる樹脂組成物の物性の測定は、以下の方法に従って行った。
【0053】
(1)メルトフローレート(単位:g/10分)
JIS K6760に規定された方法に従って測定した。荷重は2.16kgであり、温度は190℃であった。
(2)溶融張力(単位:c・N)
東洋精機製作所製 メルトテンションテスターを用い、150℃、降下速度5.5mm/分のピストンで、径2.09mmφ、長さ8mmのオリフィスから押出された溶融樹脂を、40rpm/分の巻取り上昇速度で巻き取り、その張力を測定した。
(3)極限粘度([η]、単位:dl/g)
極限粘度[η]は、ウベローデ型粘度計を用い、テトラリンを溶媒として135℃で測定した。
(4)重合体中のビニルシクロヘキサン単位共重合組成(単位:mol%)
重合体中のビニルシクロヘキサン単位共重合組成は、13C−NMR解析により求めた。
13C−NMR装置:BRUKER社製 DRX600
測定溶媒:オルトジクロロベンゼンとオルトジクロロベンゼン−d4の4:1(容積比)混合液
測定温度:135℃
(5)密度
JIS K6760に規定された方法に従って測定した。
【0054】
実施例で用いたポリオレフィン樹脂(A)と共重合体(B)を以下に示す。
(I)ポリオレフィン樹脂(A)
(A−1):エチレン−ヘキセン−1共重合体
スミカセンE FV402(日本エボリュー(株)製、住友化学工業(株)販売、密度915kg/m3、メルトフローレート4.0g/10分
(A−2):エチレン−ヘキセン−1共重合体
スミカセンE FV205(日本エボリュー(株)製、住友化学工業(株)販売、密度923kg/m3、メルトフローレート2.0g/10分)
【0055】
(II)共重合体(B)
(B−1):エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体
(1)合成方法
アルゴンで置換した5000mlのオートクレーブ中にビニルシクロヘキサン117g、脱水トルエン1618gを投入した。50℃に昇温後、エチレンを0.8MPa仕込んだ。メチルアルモキサンのトルエン溶液[東ソー・アクゾ(株)製MMAO、Al原子換算濃度6wt%]14.7mlを仕込み、つづいてイソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド10.8mgを脱水トルエン10.8mlに溶解したものを投入した。反応液を35分攪拌した後、反応液をメタノール6000ml中に投じ、沈殿した白色固体をロ取した。該固体をメタノールで洗浄後、減圧乾燥した結果、重合体292.6gを得た。以下、本重合体を(B−1)と称する。
(2)物性
得られたエチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体(B−1)の極限粘度[η]は0.90dl/gで、ビニルシクロヘキサンの共重合組成は12mol%であった。
【0056】
(B−2):エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体
(2)合成方法
上記エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体(B−1)の合成において、ビニルシクロヘキサン117gを1116gに、脱水トルエン1618gを507gに、エチレン0.8MPaを0.1MPaに、メチルアルモキサンのトルエン溶液14.7mlを31.0mlに、イソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド10.8mgを脱水トルエン10.8mlに溶解したものをイソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド21.6mgを脱水トルエン21.6mlに溶解したものに、攪拌時間35分を90分に変えた以外は上記エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体(B−1)の合成と同様に重合を実施した結果、重合体425.5gを得た。以下、本重合体を(B−2)と称する。
(2)物性
得られたエチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体(B−2)の極限粘度[η]は0.38dl/gで、ビニルシクロヘキサンの共重合組成は77mol%であった。
【0057】
実施例1〜3、比較例1,2
表1に示した配合量のポリオレフィン樹脂(A)及び共重合体(B)を、東洋精機社製ラボプラストミル装置を用いて150℃で5分間混練を行い、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のメルトフローレートおよび溶融張力の結果を表3に示した。
【0058】
【表3】
【0059】
本発明の要件を満足する実施例1〜3は、溶融張力が大きいものであることが分かる。
これに対して、本発明の要件である共重合体(B)を用いなかった比較例1、および、本発明の要件である共重合体(B)ではないエチレン−ヘキセン−1共重合体を用いた比較例2は、いずれも溶融張力が小さいものであることが分かる。
【0060】
【発明の効果】
以上、詳述したとおり、本発明によって、融体の溶融張力が大きく、成形時の安定性に優れるポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の樹脂組成物は、押出機負荷の低減、成形体の強度の観点においても優れる。
Claims (4)
- ポリオレフィン樹脂(A)50〜95重量%と、共重合体(B)50〜5重量%とを含有するポリオレフィン樹脂組成物であって、該共重合体(B)がエチレンおよび/またはα−オレフィンと下記ビニル化合物とを共重合して得られる共重合体であり、該ビニル化合物が、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1ペンテン、3−エチル−4−メチル−1−ペンテンまたは3,3−ジメチル−4−メチル−1−ペンテンであり、該共重合体(B)において下記ビニル化合物の共重合組成が15〜85mol%であることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
ビニル化合物:CH2=CH−Rで表され、置換基Rの立体パラメータEsが−1.64以下であり、かつ置換基Rの立体パラメータB1が1.53以上であるビニル化合物。 - 共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.0であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
- ビニル化合物がビニルシクロヘキサンであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
- ポリオレフィン樹脂(A)が、エチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
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