JP4209702B2 - 貴金属めっき液の清浄化法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属キレート形成能を有する官能基が高分子基材に固定化されたキレート形成性高分子を用いて、例えば金、白金、パラジウム、ロジウム、銀などの貴金属を主成分とするめっき液中に混入してくる不純金属イオン、例えば銅、ニッケル、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウムなどを効率よく捕捉・除去して浄化することのできる貴金属めっき液の清浄化法に関し、この方法によれば、めっき液中の貴金属をロスすることなく、不純金属イオンのみを選択的に効率よく捕捉除去できるので、貴金属めっき液の再生や回収・再利用に幅広く活用できる。
【0002】
【従来の技術】
各種貴金属めっき液中には、主成分となる貴金属イオンが高濃度で含まれているので、その排液処理や有価貴金属としての再生や回収処理は実用上極めて重要であり、且つその処理には多くの労力を要する。最近では、環境汚染防止や省資源の観点から、めっき処理は排液処理を含めてクローズドシステムに移行されつつあるが、金、白金、パラジウム、ロジウム、銀等を主成分とする貴金属めっき液は高価であるため、めっき液の再生や回収・再利用も積極的に進められている。
【0003】
めっき液を再生し、あるいは回収・再利用しようとする場合、めっき工程を繰り返すうちに被めっき金属材(ワーク)やめっき設備に付帯する治具や電極、ブスバーなどを構成する例えば銅、ニッケル、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウムなどの部材から金属イオンが貴金属めっき液内へ溶出し、不純金属イオンとして蓄積されてくる。それらの不純金属イオンは、めっき処理効率(めっき電流効率や電流密度)を低下させる他、めっき皮膜の物理的・電気的特性や外観を低下させるなどの悪影響を及ぼす。
【0004】
こうした問題を回避するため、めっき液から不純金属イオンを除去する方法として、イオン交換樹脂やキレート樹脂等を用いて不純金属イオンを吸着除去する方法が提案されている。しかし、主成分となる貴金属イオンが多量存在するめっき液中に微量存在する不純金属イオンを吸着剤で捕捉除去しようとした場合、公知のイオン交換樹脂やキレート樹脂では、不純金属イオンの選択吸着性や吸着速度の点で、満足し得る除去効率は得られ難い。
【0005】
例えば特許文献1には、金属キレート形成性官能基としてイミノジ酢酸基を分子中に有するキレート樹脂を使用し、めっき液中の不純金属を捕捉除去する技術が開示されている。しかしこの技術は、マクロポーラスタイプのキレート樹脂を用いているため処理効率が低く、まためっき液に対するキレート樹脂との接触比率が考慮されていないため、めっき液中に主成分として含まれている金属成分の濃度低下(損失)が懸念される。
【0006】
更に特許文献2には、金めっき液中に含まれる不純金属を、イミノジ酢酸型キレート樹脂を用いて除去する技術が開示されている。しかし、該公報に記載されているキレート樹脂のめっき液に対する接触比率は非常に高く、金や不純金属の濃度の変動により金の損失が増大する可能性がある。
【0007】
またこの特許文献2には、処理効率を高めるための手法として、キレート繊維を使用しバッチ処理によって不純金属を除去する方法が記載されているが、処理すべきめっき液中の貴金属濃度と不純金属成分の濃度が極端に違うため、不純金属成分と共に多量の貴金属が吸着される傾向があり、貴金属を大幅にロスする。こうした問題を回避するため、浴比を調整し、或いはキレート繊維の収納袋なども含めた充填塔形式を工夫し、一旦吸着された貴金属を不純金属と置換する方法を推奨しているが、この様な手法は処理が煩雑になるため実操業にそぐわない。しかもこの方法は、使用済みめっき液の一部を抜き出して処理する方法であるから、処理効率も低い。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−57799号公報
【特許文献2】
特開2002−309400号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、貴金属めっき液中に微量存在する不純金属を簡単な方法で効率よく除去し、貴金属めっき液を清浄化することのできる技術を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明にかかる貴金属めっき液の清浄化法とは、金属キレート形成能を有する官能基が高分子基材に固定化されたキレート形成性高分子を貴金属めっき液に接触させ、該めっき液中に混入した不純金属イオンを除去するに当り、前記めっき液中の貴金属濃度を実質的に低下させることなく不純金属イオンを選択的に除去するところに要旨が存在する。
【0011】
この方法を実施するに当っては、貴金属めっき処理に使用されて不純金属イオンが溶出しためっき液に、前記キレート形成性高分子を接触させればよく、その際には、前記めっき液中に溶出した不純金属イオンの濃度に応じて、該めっき液に接触させる前記キレート形成性高分子の使用量を、貴金属のロスを抑えつつ不純金属イオンをより効率的に捕捉除去できる様に調整することが望ましい。キレート形成性高分子としては、接触効率を高めてより優れたキレート捕捉効果を発揮し得るよう、表面積の大きい繊維状や粉末状のものを使用することが望ましい。
【0012】
また該キレート形成性高分子の好ましい使用量(g)は、処理対象となる貴金属めっき液中の不純金属イオン濃度を(A)mg/リットルとしたとき、貴金属めっき液1リットル当り[1/100]・(A)(g)〜[1/50]・(A)(g)の範囲であり、この範囲に調整すれば、貴金属イオンのロスを最小限に抑えつつ不純金属イオンをより効率よく除去できるので好ましい。
【0013】
また本発明は、貴金属めっき処理を行うことにより該めっき液が不純金属イオンの溶出によって汚染された後の処理として有効に活用し得るほか、上記キレート形成性高分子を未使用の貴金属めっき液に接触させながら貴金属めっき処理を進め、被めっき基材から溶出してくる不純金属イオンを前記キレート形成性高分子によって逐次除去することも有効である。
【0014】
本発明を実施する際の上記キレート形成性高分子の好ましい使用量は、貴金属めっき液1リットル当り0.1〜2g/リットルの範囲が好ましく、また処理されるめっき液中の不純金属イオン濃度は70mg/リットル以下に維持することが望ましい。
【0015】
本発明が適用される上記貴金属めっき液に含まれる貴金属成分の種類は特に制限されないが、代表的なのは、金、白金、パラジウム、ロジウム、銀などであり、これらが単独で含まれる場合はもとより、2種以上が含まれる場合もあり得る。また、これらの貴金属めっき液中に混入してくる不純金属イオンの種類も特に限定されないが、代表的なのは、銅、ニッケル、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウムなどであり、これらも単独で混入する場合はもとより、2種以上が混入する場合もある。
【0016】
本発明で使用される上記キレート形成性高分子基材内に導入される金属キレート形成能を有する官能基としては、アミノポリカルボン酸基および/またはリン酸基が好ましく、これらは遊離酸基の状態で高分子基材内に導入されたものの他、これら酸型官能基の少なくとも1部をアルカリ金属塩またはアンモニウム塩としたものであっても構わない。
【0017】
上記金属キレート形成能を有する官能基の中でも特に好ましいのは、イミノ二酢酸基、ニトリロ三酢酸基、エチレンジアミン三酢酸基、エチレンジアミン四酢酸基、ジエチレントリアミン五酢酸基、エチレンジアミン二コハク酸基、グルタミン酸二酢酸基よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0018】
そして、該キレート形成性高分子を貴金属めっき液中に分散させ、該めっき液中の不純金属イオンを該キレート形成性高分子に捕捉させた後、該キレート形成性高分子を貴金属めっき液から分離すれば、不純金属イオンを効率よく捕捉除去することができ、それにより貴金属めっき液は清浄化されて再使用可能となる。
【0019】
めっき液に該キレート形成性高分子を接触させる具体的な方法としては、粉末状の上記キレート形成性高分子を貴金属めっき液中に分散させて直接接触させる方法、上記キレート形成性高分子を容器または袋内に充填し、該容器または袋内に前記めっき液を通液させる方法が例示され、該通液時におけるめっき液の好ましい空間速度(SV)は500〜1000hr−1の範囲である。
【0020】
本発明で使用する前記キレート形成性高分子の中でも特に好ましいのは繊維状高分子であり、中でもセルロース系の植物性繊維や再生繊維は特に好ましいものとして推奨される。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明では、上記の様に金属キレート形成能を有する官能基が高分子基材内に固定化されたキレート形成性高分子を用いてこれを貴金属めっき液に接触させ、該貴金属めっき液中に主成分として含まれる貴金属イオンの濃度を実質的に低下させることなく、該めっき液中に微量混入してくる不純金属イオンのみを選択的に捕捉除去するところに要旨を有している。
【0022】
上記本発明で使用するキレート形成性高分子としては、高分子基材分子内に金属キレート形成能を有する官能基が導入された素材を総称するが、金属キレート形成能を有する官能基として特に好ましいのは、アミノポリカルボン酸基および/またはリン酸基の酸型官能基である。
【0023】
これら酸型官能基は遊離酸の状態で存在していてもよく、或いはそれらのうち少なくとも1部がアルカリ金属塩やアンモニウム塩型とされたものであっても構わない。上記金属キレート形成能を有する官能基のより具体的な例としては、イミノ二酢酸基、ニトリロ三酢酸基、エチレンジアミン三酢酸基、エチレンジアミン四酢酸基、ジエチレントリアミン五酢酸基、エチレンジアミン二コハク酸基、グルタミン酸二酢酸基などが挙げられ、これらは、基材となる高分子中に各々1種のみが導入されていてもよく、或いは2種以上の複数種が導入されたものであっても構わないが、高分子基材への導入の容易性やコストなど考慮すると、イミノ二酢酸基が最も望ましい。
【0024】
基材となる前記高分子としては、汎用のキレート樹脂母体として公知のジビニルベンゼン系共重合体、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、レゾルシン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの樹脂基材、あるいは天然の動植物性繊維や再生繊維、半合成繊維などが挙げられ、これら高分子基材が反応性官能基を有している場合は、該官能基に前述した様なキレート形成性官能基を直接導入し、また該高分子基材が反応性官能基を有していない場合や該官能基の反応性が乏しい場合は、これにグリシジル基の如き反応性官能基を導入してから、キレート形成性官能基を導入すればよい。高分子基材として合成樹脂を使用する場合は、基材分子内に導入されたキレート形成性官能基が不純金属イオンの捕捉除去により効果的に活用されるよう、樹脂基材として比表面積の大きい繊維状、粉末状あるいはフィルム状のものを使用することが望ましい。
【0025】
これらの中でも高分子基材としてより好ましいのは、本発明者らが先に特開平10−183470号、特開2000−169826号、特開2000−248467号、同2001−123381号などとして提示している如く、繊維分子中にキレート形成性官能基が導入されたキレート形成性繊維である。
【0026】
本発明で好ましく使用する上記キレート形成性繊維の基材となる繊維の種類は特に制限されず制されず、植物繊維や動物繊維を含む天然繊維、再生繊維、ポリアミド繊維やポリエステル繊維などの合成繊維などを全て使用できるが、前述した様なキレート形成性官能基の基材高分子内への導入の容易性や導入量、繊維材としての取扱い性やコストなどを総合的に考慮して特に好ましいのは、綿、麻、木材の如き種々の植物性繊維からなるセルロース系繊維である。セルロース系繊維は、分子中に無数のメチロール基や水酸基を有しており、導入されているキレート形成性官能基の金属キレート形成反応に補助的な性能を付与するため、金属イオン捕捉作用が一段と高められるからである。
【0027】
好ましく用いられる上記基材繊維の形状にも格別の制限はなく、長繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、短繊維の紡績糸あるいはこれらを織物状や編物状に製織もしくは製編した布帛、更には不織布であってもよく、また2種以上の繊維を複合もしくは混紡した繊維や織・編物を使用することができる。
【0028】
更に、処理される貴金属めっき液との接触効率を一段と高めるため、上記基材繊維として短繊維状の粉末を使用することも有効であり、該短繊維粉末の好ましい形状は、長さ0.01〜5mm、好ましくは0.03〜3mmで、単繊維径が1〜50μm程度、好ましくは5〜30μmであり、アスペクト比としては1〜600程度、好ましくは1〜100程度のものである。
【0029】
上記の様にキレート形成性高分子としては、用いる高分子基材の性状に応じてモノフィラメント状、マルチフィラメント状、紡績糸状、不織布状、繊維織・編物状、粉末状など任意の性状のものとして得ることができるが、いずれにしても、細い繊維分子の表面に導入されたキレート形成性官能基の実質的に全てが金属イオンの捕捉に有効に作用するので、例えばキレート樹脂などの捕捉材に比べると卓越した金属イオン捕捉能を発揮する。従って前記したキレート形成性繊維を貴金属めっき液と接触させると、貴金属めっき液中に含まれる不純金属イオンは該キレート形成性繊維に選択的に捕捉され、貴金属めっき液から効率よく除去される。
【0030】
上記の様なキレート形成性繊維を製造する方法は特に制限されないが、好ましい方法としては、前掲の公開公報にも開示されている如く、分子中に反応性二重結合とグリシジル基の双方を有する架橋反応性化合物(具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなど)を使用し、繊維基材分子中にキレート形成性官能基を導入する方法などが例示される。
【0031】
より具体的には、セルロース系繊維基材を、例えばレドックス触媒などの存在下で上記架橋反応性化合物と接触反応させると、該化合物中の反応性二重結合が繊維分子と反応し、反応性官能基としてグリシジル基を有する基が繊維分子中にペンダント状にグラフト付加する。このグラフト付加物に、グリシジル基との反応性官能基を有するキレート形成性化合物(例えば、イミノ二酢酸基、ニトリロ三酢酸基、エチレンジアミン三酢酸基、エチレンジアミン四酢酸基、ジエチレントリアミン五酢酸基、エチレンジアミン二コハク酸基、グルタミン酸二酢酸基など)を反応させると、該反応性官能基が、グラフト付加した前記架橋反応性化合物のグリシジル基と反応し、繊維分子中にキレート形成性官能基が導入される。
【0032】
基材高分子としてセルロース系の繊維を使用し、該分子内に架橋反応性化合物を用いてキレート形成性官能基を導入する好ましい方法をより具体的に説明すると、たとえば下記の通りである。
【0033】
セルロース系繊維を予め2価鉄塩水溶液に室温で1〜30分程度浸漬し、その後洗浄してから、過酸化水素水、二酸化チオ尿素および架橋反応性化合物(必要により乳化剤などの均一反応促進剤)を含む水溶液に浸漬し、40〜100℃で10分〜5時間程度反応させる。この方法によれば、架橋反応性化合物がセルロース系繊維分子中の水酸基やアミノ基に効率よくグラフト反応し、前記キレート形成性化合物と容易に反応するグリシジル基を繊維分子内に効率よく導入できる。
【0034】
次いで、上記反応によりグリシジル基が導入された繊維とキレート形成性化合物を、水やN,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒中で、必要により50〜100℃で10分〜数十時間程度加熱して反応させると、前記キレート形成性化合物中のアミノ基や酸基などが前記グリシジル基と反応し、繊維分子中にキレート形成性官能基が導入される。
【0035】
その結果、繊維分子の表面にキレート形成性官能基が導入され、該キレート形成性官能基がその中に存在する窒素原子やカルボキシル基などとの相互作用とも相俟って、金属イオンに対して優れたキレート捕捉能を発揮することになる。
【0036】
繊維基材に対するキレート形成性化合物の導入量は、繊維分子中の反応性官能基の量を考慮し、その導入反応に用いる架橋反応性化合物の量、あるいはキレート形成性化合物の量や反応条件などによって任意に調整すればよいが、繊維に高レベルの不純金属イオン捕捉能を与えるには、下記式によって計算される置換率で10質量%程度以上、より好ましくは20質量%程度以上となる様に調整することが望ましい。
置換率(質量%)=[(置換基導入後の繊維質量−置換基導入前の繊維質量)/置換基導入前の繊維質量]×100
(上記式において置換基とは、架橋反応性化合物とキレート形成性化合物に由来して導入された全置換基を意味する)。
【0037】
不純金属イオン捕捉能を高めて清浄化効果を向上させるうえでは、上記置換率は高い程好ましく、従って置換率の上限は特に規定されないが、置換率が高くなり過ぎると置換基導入繊維の結晶性が高くなって繊維が脆弱になる傾向があるので、不純金属イオン捕捉材としての実用性や経済性などを総合的に考慮すると、置換率は200質量%程度以下、より好ましくは100質量%程度以下に抑えることが望ましい。ただし、基材繊維の種類や形状、キレート形成性化合物の種類、あるいは用途等によっては、150〜200質量%といった高レベルの置換率とすることにより、金属イオン捕捉能を高めることも可能である。
【0038】
ところで、酸型のキレート形成性官能基が導入されたキレート形成性繊維をそのままで貴金属めっき液と接触させた場合、該キレート形成性官能基は金属イオンとキレート結合することでプロトンを放出するので、キレート捕捉後の貴金属めっき液がpH低下を起こすことがある。これに対し、酸型キレート形成性官能基の少なくとも一部を予め中和してアルカリ金属塩やアンモニウム塩型に変えておくと、酸性の貴金属めっき液と接触させたときに、該キレート形成性官能基が金属イオンをキレート捕捉したときにナトリウムイオンやアンモニウムイオンを放出し、清浄化後の貴金属めっき液のpHを上昇させる。貴金属めっき液は、そのpHがめっき性能に大きな影響を与えるので、清浄化すべき貴金属めっき液の好適pHに応じて、キレート形成性繊維中に導入するキレート形成官能基を酸型(H型)もしくは塩型とし、或いは酸型の一部をアルカリ金属塩型やアンモニウム塩型に変えておき、清浄化前・後の貴金属めっき液のpH変化を抑制することも有効である。
【0039】
キレート形成性官能基の酸型または塩型を選択する場合、もともと酸型あるいは塩型のキレート形成性官能基を導入したキレート形成性繊維を使用することも可能であるが、酸溶液やアルカリ溶液を使用し、清浄化処理の前に酸型や塩型に変えてから使用することも可能である。この場合は、例えば0.01〜1モル/リットル程度の酸水溶液やアルカリ水溶液で処理すればよい。
【0040】
本発明により貴金属めっき液を清浄化するための具体的な手法としては、好ましくは粉末状や短繊維状の前記キレート形成性高分子を貴金属めっき液中に分散させ、あるいは上記キレート形成性高分子を通水性容器内に装入してからめっき液中に浸漬し、もしくは上記キレート形成性高分子を充填した通水性ユニットに貴金属めっき液を通液・接触させ、該めっき液中に含まれる不純金属イオンを、キレート形成性高分子基材内に固定化されているキレート形成性官能基によってキレート捕捉させればよい。
【0041】
貴金属めっき液の主成分となる代表的な貴金属としては、金、白金、パラジウム、ロジウム、銀が挙げられ、除去される代表的な不純金属イオンとしては、銅、ニッケル、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウム等が代表的なものとして挙げられるが、本発明の清浄化法を実施するに当り、めっき液中の貴金属濃度を実質的に低下させることなく不純金属イオンを選択的に効率よく除去するには、該めっき液中に混入した不純金属イオンの濃度に応じて、該めっき液に接触させるキレート形成性高分子の量を適切に調整することが望ましく、それにより、貴金属イオンのロスを最小限に抑えつつ不純金属イオンのみを選択的に効率よく捕捉することが可能となる。
【0042】
本発明によって貴金属めっき液の清浄化を行うに際し、貴金属イオンのロスを可及的に抑えつつ不純金属イオンを選択的に効率よく除去するには、めっき液に対する前記キレート形成性高分子の使用量を好適範囲に調整することが望ましく、その量は、処理対象となる貴金属めっき液中の不純金属イオン濃度を(A)mg/リットルとしたとき、該キレート形成性高分子の使用量(g)を、貴金属めっき液1リットル当り[1/100]・(A)(g)以上、より好ましくは[1/90]・(A)(g)以上で、[1/50]・(A)(g)以下、より好ましくは[1/60]・(A)(g)以下の範囲に調整することが望ましい。
【0043】
因みに、キレート形成性高分子の使用量が少な過ぎると、不純金属イオンに対する捕捉除去効果が不十分となって満足の行く清浄化効果が発揮され難くなり、逆に使用量が多くなり過ぎると、不純金属イオンの捕捉効果は高まる反面、貴金属イオンの捕捉量が多くなってロスが多くなる傾向があるからである。
【0044】
従ってより好ましいのは、処理される貴金属めっき液中の不純金属イオン濃度に応じて、前記キレート形成性高分子の使用量を適宜変更し、貴金属イオンロスを最小限に抑えつつ不純金属イオンに対して最も高い選択捕捉性が発揮される好適範囲に調整することである。
【0045】
但し、被処理めっき液に対する前記キレート形成性高分子の使用量が少な過ぎると、不純金属イオンに対して十分な接触頻度が確保できなくなって処理効率が低下するので、貴金属めっき液1リットル当りの使用量は0.1g/リットル以上、より好ましくは0.5g/リットル以上、2g/リットル以下、より好ましくは1.5g/リットル以下とすることが望ましい。
【0046】
また貴金属めっきにおいて、該めっき液中に含まれる不純金属イオン量がめっき皮膜に与える悪影響の程度は、貴金属の種類や不純金属イオンの種類などによっても変わってくるが、一般的にはめっき液中の不純金属イオンの濃度が70mg/リットルを超えるとその影響が顕著に表われてくるので、本発明の処理により貴金属めっき液中の不純金属イオン濃度は高くとも70mg/リットル以下、より好ましくは60mg/リットル程度以下に維持できるように、キレート形成性高分子の使用量等を調整することが望ましい。
【0047】
本発明を実施する際のキレート形成性高分子の使用形態としては、前述した如く粉末状や短繊維状のキレート形成性高分子を貴金属めっき液中に直接投入して分散させることも可能であるが、好ましいのは上記キレート形成性高分子をメッシュ容器の如き通水性容器内に充填してめっき浴内に装入し、或いはカセットタイプの容器内に上記キレート形成性高分子を充填し、該充填層内にめっき液を通過させる方法であり、この場合、不純金属イオンをより確実に捕捉除去するには、キレート形成性高分子が充填された袋や容器内におけるめっき液の空間速度(SV)を500hr−1以上、より好ましくは600hr−1以上で、1000hr−1以下、より好ましくは900hr−1以下となる様に処理速度を調整するのがよい。空間速度が500hr−1未満では単位時間当りの処理量が不十分となり、逆に1000hr−1を超えて空間速度を過度に高くすると、不純金属イオンに対する捕捉効果が低下して満足の行く清浄化効果が発揮され難くなる恐れがあるからである。
【0048】
かくして本発明によれば、例えば金、白金、パラジウム、ロジウム、銀などを主成分とする貴金属めっき液中に含まれる不純金属イオン、例えば銅、ニッケル、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウムなどを効率よく捕捉除去できるため、各種の不純金属イオンが混入した使用済みの貴金属めっき液からでも金属イオンを効率よく除去して清浄化することができ、貴金属めっき液のリサイクル再使用も支障なく実施し得るなど、現実に即した多くの利益を享受できる。
【0049】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
実施例1
シアン化金系めっき液(日進化成社製の商品名「ニッシンオーロベースM−150」、金濃度;5.1質量%)を用いて銅基板への電解金めっきを行ない、該めっき液中に銅イオンが約102mg/リットル溶出した状態のめっき液1リットルを、セルロース繊維に金属キレート形成性官能基として置換率約30質量%のイミノジ酢酸を固定化したセルロース繊維(キレスト社製の商品名「キレストファイバーIRY」)、短繊維粉末状)または置換率約30質量%のイミノジ酢酸を固定化したスチレン/ジビニルベンゼン型キレート樹脂(三菱化学社製の商品名「ダイヤイオンCR11」、平均粒径0.5mmの粒状物)を所定量充填したカラムに、空間速度(SV);200hr−1または600hr−1、60℃で48時間循環して通液させた後、ICP発光分光分析装置を用いてめっき液中の金濃度と銅イオン濃度を測定した。結果を表1に一括して示す。
【0051】
【表1】
Figure 0004209702
【0052】
表1からも明らかな様に、不純金属イオンとして銅イオンを含む金めっき液を適量のキレート形成性高分子で処理すれば、金濃度を実質的に低下させることなく、不純金属としての銅イオンを選択的に効率よく捕捉除去することができ、該めっき液中の銅イオン濃度を金めっきの皮膜特性に悪影響を与えない範囲に確実に低減し得ることが分かる。
【0053】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、例えば金、白金、パラジウム、ロジウム、銀などの貴金属を主成分とするめっき液の清浄化に適用し、該めっき液中に含まれる貴金属濃度を実質的に低下させることなく、不純金属イオンを効率よく捕捉除去できるので、貴金属めっき液の再生・再利用に有効に活用できる。

Claims (11)

  1. 金属キレート形成能を有する官能基が高分子基材に固定化されたキレート形成性高分子を容器または袋内に充填し、該容器または袋内に前記めっき液を循環して通液させ、該めっき液中に混入した不純金属イオンを除去するに当り、
    前記めっき液中の不純金属イオン濃度を(A)mg/リットルとしたとき、前記キレート形成性高分子の使用量(g)を、貴金属めっき液1リットル当り[1/100]・(A)(g)〜[1/50]・(A)(g)とし、
    前記容器または袋内に貴金属めっき液を通液させるに際し、該めっき液の空間速度(SV)を500〜1000hr -1 することを特徴とする貴金属めっき液の清浄化法。
  2. めっき処理に使用されて不純金属イオンが溶出した貴金属めっき液に、前記キレート形成性高分子を接触させる請求項1に記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  3. 前記キレート形成性高分子として、繊維状または粉末状のものを使用する請求項1または2に記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  4. 処理されるめっき液中の不純金属イオン濃度を70mg/リットル以下に維持する請求項1〜のいずれかに記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  5. 前記キレート形成性高分子を未使用の貴金属めっき液に予め接触させてめっき処理を行ない、めっき工程でめっき液中に混入してくる不純金属イオンを逐次除去する請求項に記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  6. 前記貴金属めっき液が、金、白金、パラジウム、ロジウム、銀よりなる群から選択される少なくとも1種の金属を主成分とするめっき液である請求項1〜のいずれかに記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  7. 前記不純金属イオンが、銅、ニッケル、鉄、鉛、亜鉛、アルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜のいずれかに記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  8. 前記金属キレート形成能を有する官能基が、アミノポリカルボン酸基および/またはリン酸基である請求項1〜のいずれかに記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  9. 前記金属キレート形成能を有する官能基が、アミノポリカルボン酸基および/またはリン酸基からなる酸型官能基の少なくとも1部をアルカリ金属塩またはアンモニウム塩としたものである請求項に記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  10. 前記金属キレート形成能を有する官能基が、イミノ二酢酸基、ニトリロ三酢酸基、エチレンジアミン三酢酸基、エチレンジアミン四酢酸基、ジエチレントリアミン五酢酸基、エチレンジアミン二コハク酸基、グルタミン酸二酢酸基よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項またはに記載の貴金属めっき液の清浄化法。
  11. 前記キレート形成性高分子の基材が、セルロース系繊維である請求項1〜10のいずれかに記載の貴金属めっき液の清浄化法。
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