JP4206671B2 - 偏光分離素子、偏光変換素子、照明装置及びプロジェクタ並びに偏光分離素子の製造方法 - Google Patents

偏光分離素子、偏光変換素子、照明装置及びプロジェクタ並びに偏光分離素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は偏光分離素子、偏光変換素子、照明装置、プロジェクタ及び偏光分離素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来のプロジェクタの光学系を示す図である。図8に示されるように、このプロジェクタ90は、照明装置100と、色分離装置200と、リレー光学装置240と、反射ミラー220と、2つのフィールドレンズ300R、300Gと、3つの液晶パネル310R、310G、310Bと、ダイクロイックプリズム400と、投写レンズ420とを備えている。色分離装置200は、ダイクロイックミラー210、212を有している。リレー光学装置240は、入射側レンズ262、反射ミラー252、リレーレンズ264、反射ミラー254及びフィールドレンズ266を有している。
【0003】
このプロジェクタ90は、照明装置100から出射された光を色分離装置200によって赤、緑及び青の3つの色光に分離し、それぞれの色光を3つの液晶パネル310R、310G、310Bによって変調し、ダイクロイックプリズム400によって合成し、この合成光を投写レンズ420を介してスクリーンS上に投写する。
【0004】
このプロジェクタ90の照明装置100は、照明領域である液晶パネル310R、310G、310Bの有効領域をほぼ均一に照明するためのインテグレータ光学系であって、略平行な光束を出射する光源110と、第1のレンズアレイ120と、第2のレンズアレイ130と、偏光変換素子140と、重畳レンズ150とを備えている。
【0005】
光源110は、光源ランプ112と、この光源ランプ112から出射された放射光をほぼ平行な光線束として出射する凹面鏡114とを有している。光源ランプ112としては、輝度の高い高圧水銀ランプが用いられている。
【0006】
第1のレンズアレイ120は、複数の第1の小レンズを備え、これら複数の第1の小レンズによって光源110から出射された光束を複数の部分光束に分割する機能を有している。
【0007】
図9は、第1のレンズアレイ120の外観を示す斜視図である。第1のレンズアレイ120は略矩形状の輪郭を有する小レンズ122がM行N列のマトリクス状に配列された構成を有している。この例では、M=6、N=4である。各小レンズ122は、光源110(図8)から入射された平行な光束を複数の(すなわちM×N個の)部分光束に分割し、各部分光束を第2のレンズアレイ130の近傍で収束させる。各小レンズ122をz方向から見た外形形状は、液晶パネル310R、310G、310Bの形状とほぼ相似形をなすように設定されている。例えば、液晶パネルの照明領域(画像が表示される領域)のアスペクト比(横と縦の寸法の比率)が4:3であるならば、各小レンズ122のアスペクト比も4:3に設定する。
【0008】
第2のレンズアレイ130は、複数の第2の小レンズを備え、これら複数の部分光束が集光される位置近傍に配置されている。第2のレンズアレイ130も、第1のレンズアレイ120の小レンズ122に対応するように、小レンズがM行N列のマトリクス状に配列された構成を有している。第2のレンズアレイ130は、第1のレンズアレイ120から出射された各部分光束の中心軸(主光線)が重畳レンズ150の入射面に垂直に入射するように構成されている。
【0009】
偏光変換素子140は、第2のレンズアレイ130から出射された光束をほぼ一種類の偏光光束に変換する機能を有している。
【0010】
図10は、偏光変換素子140の詳細な構成および機能を説明するための図である。偏光変換素子140は、図10(A)に示されるように、光軸を挟んで左右対称に配置された2つの偏光変換素子アレイ140L、140Rによって構成されている。この偏光変換素子アレイ140L、140Rは、偏光ビームスプリッタアレイ170L、170Rと、その光射出面の一部に選択的に配置されたλ/2位相差板180(図中斜線で示す。)とを備えている。偏光ビームスプリッタアレイ170L、170Rは、図10(B)に示されるように、それぞれ断面が平行四辺形の柱状の透光性部材171が、順次貼り合わされた形状を有している。透光性部材171の界面には、偏光分離膜172と反射膜173とが交互に形成されている。λ/2位相差板180は、図10(A)に示されるように、偏光分離膜172又は反射膜173の光の射出面のz方向の写像部分に、選択的に貼り付けられる。この例では、偏光分離膜172の光の射出面のz方向の写像部分に貼り付けられている。
【0011】
このように構成された偏光変換素子140の入射面には、S偏光成分とP偏光成分とを含む非偏光光(ランダムな偏光方向を有する入射光)が入射する。
この入射光は、図10(A)中矢印で示されるように、まず、偏光分離膜172によってS偏光光とP偏光光に分離される。S偏光光は、偏光分離膜172によってほぼ垂直に反射され、反射膜173によってさらに反射されてから射出される。一方、P偏光光は、偏光分離膜172をそのまま透過する。偏光分離膜を透過したP偏光光の射出面には、λ/2位相差板180が配置されており、このP偏光光がS偏光光に変換されて射出する。従って、偏光変換素子140を通過した光は、そのほとんどがS偏光光となって射出される。すなわち、偏光変換素子140は、第2のレンズアレイ130から出射された光をほぼ1種類の直線偏光光(例えば、S偏光光やP偏光光)に変換して射出する機能を有する。なお、偏光変換素子140から射出される光をP偏光光としたい場合には、λ/2位相差板180を、反射膜173によって反射されたS偏光光が射出する射出面に配置するようにすればよい。
【0012】
重畳レンズ150は、偏光変換素子140によってほぼ一種類の偏光光に変換された複数の部分光束を、液晶パネル310R、310G、310Bに重畳させる機能を有している。
【0013】
このプロジェクタ90においては、光源110から出射された略平行な光束は、インテグレータ光学系を構成する第1と第2のレンズアレイ120、130によって、複数の部分光束に分割される。第1のレンズアレイ120の各小レンズから出射された部分光束は、第2のレンズアレイ130の各小レンズの近傍で光源110の光源像(2次光源像)が形成されるように集光される。第2のレンズアレイ130の近傍に形成された2次光源像から出射された部分光束は、重畳レンズ150によって液晶パネル310R、310G、310Bの有効領域(表示に用いられる領域)上で重畳される。上記の結果、各液晶パネル310R、310G、310Bは、ほぼ均一に照明され、その結果、スクリーン上には輝度むらの抑制された画像を表示することができる。
【0014】
また、このプロジェクタ90においては、第2のレンズアレイ130と重畳レンズ150との間に、偏光変換素子140が設けられているため、従来利用されていなかったP偏光光又はS偏光光のいずれか一方の偏光成分をも利用することができ、照度の高い光を、液晶パネル310R、310G、310Bに照射することが可能となり、その結果、スクリーン上には輝度の高い画像を表示することができる。
【0015】
さらに、この照明装置100は、これらのインテグレータ光学系と偏光変換素子140とが一体化されたコンパクトな照明装置となっているので、この照明装置を用いたプロジェクタも、全体としてもコンパクトなプロジェクタとなっている。
【0016】
しかしながら、このようなプロジェクタにおいても、スクリーン上などに表示される画像の輝度をさらに向上させたいという要求が高まっている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、プロジェクタがスクリーン上などに表示する画像の輝度をさらに向上させることを可能にする偏光分離素子、偏光変換素子及び照明装置を提供することを目的とする。また、スクリーン上などに表示される画像の輝度をさらに向上させたプロジェクタを提供することを目的とする。さらにまた、このような偏光分離素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
本発明の照明装置は、光源と、複数の第1の小レンズを備え、前記複数の第1の小レンズによって前記光源から出射された光束を複数の部分光束に分割する第1のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイから出射された光束をほぼ一種類の偏光光束に変換する偏光変換素子と、を備えた照明装置であって、前記偏光変換素子は、偏光分離面と反射面とを有し入射光束をS偏光光束とP偏光光束とに分離する複数の偏光分離ユニットと、S偏光光束の出射面及びP偏光光束の出射面のいずれかの面に配置されたλ/2位相差板とを備え、前記複数の偏光分離ユニットの光束分離方向の長さが、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くなっていることを特徴とする。
【0019】
上述したように、照明装置においては、光源からの光は、第1のレンズアレイによって複数の部分光束に分割される。しかしながら、光源から出射される光は光軸から離れた周辺部分で最も平行性がよく、光軸に近づくに従って平行性が悪くなる傾向にある。このため、分割光束の集光像の大きさ(すなわち、分割光束の第2のレンズアレイの近傍での大きさ)は、光軸付近で最も大きく、光軸から離れた周辺部では小さくなる。従って、従来の偏光分離素子においては、偏光分離ユニットの光束分離方向の長さが、光軸中心から周辺部にかけて、均一であることから、特に光軸付近において偏光分離面で分割光束の集光像を呑み込むことができず、光の利用効率が低下してしまう。一方、この問題を回避するために、偏光分離面の光束分離方向の長さを全体的に長くすると、光軸付近において偏光分離面で分割光束の集光像を呑み込むことはできるようになるが、偏光分離素子に対応して設けられる第2の小レンズの数が少なくなり、液晶パネルの照明領域における輝度むらを抑制する効果が弱くなる。
【0020】
これに対して、本発明のように、偏光分離ユニットの光束分離方向の長さを、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くすれば、光軸付近では偏光分離面で分割光束の集光像を呑み込むことができる一方、全体として第2の小レンズの数を確保することができるので、液晶パネルの照明領域における輝度むらを抑制する効果を維持することができる。このため、輝度むらを抑制する効果を維持しつつ光の利用効率の向上が図られる。その結果、本発明の偏光分離装置を用いることによって、照明装置の明るさが向上するとともに、プロジェクタの輝度もさらに向上する。
【0021】
本発明の照明装置は、光源と、複数の第1の小レンズを備え、前記複数の第1の小レンズによって前記光源から出射された光束を複数の部分光束に分割する第1のレンズアレイと、前記第1のレンズアレイから出射された光束をほぼ一種類の偏光光束に変換する偏光変換素子と、を備えた照明装置であって、前記偏光変換素子は、偏光分離面と反射面とを有し入射光束をS偏光光束とP偏光光束とに分離する複数の偏光分離ユニットと、S偏光光束の出射面及びP偏光光束の出射面のいずれかの面に配置されたλ/2位相差板とを備え、前記複数の偏光分離ユニットの光束分離方向の配列ピッチが、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に小さくなっていることを特徴とする。
【0022】
このため、本発明の照明装置においては、輝度むらを抑制する効果を維持しつつ光利用効率の向上が図られる。その結果、本発明の偏光分離装置を用いることによって、照明装置の明るさが向上するとともに、プロジェクタの輝度をさらに向上させることができる。
【0023】
上記本発明の照明装置においては、この偏光分離素子の入射面から出射面までの距離が、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くなるよう構成されてなることが好ましい。
【0024】
このように構成することにより、偏光分離ユニットの光束分離方向の長さを、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くし、かつ、偏光分離ユニットの光束分離方向の配列ピッチを、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くすることができる。
【0025】
上記本発明の照明装置のいずれかに記載の照明装置においては、左右対称であることが好ましい。
【0026】
このように構成することにより、スクリーンに表示される画像の輝度むらを左右対称なものにすることができ、プロジェクタの表示品質をさらに高めることができる。
【0029】
上記本発明の照明装置のいずれかに記載の照明装置においては、前記第1のレンズアレイから射出された前記複数の部分光束が集光される位置近傍に配置される第2のレンズアレイを備えることが好ましい。
【0031】
上記に記載の照明装置においては、上記偏光変換素子の後段に重畳レンズを備えることが好ましい。
【0032】
このように構成することにより、より輝度の高い均一な照明光を液晶パネルに照射することができる。
【0033】
上記に記載の照明装置においては、上記偏光変換素子と上記重畳レンズとの間に、上記偏光変換素子から出射する光を整形するためのくさび型光学要素をさらに備えることが好ましい。
【0034】
このように構成することにより、上記偏光変換素子を射出した光は発散光となっているが、くさび型光学素子の作用により、この発散光が整形され、液晶パネル上に照明光を効率よく照射することが可能となる。
【0035】
上記に記載の照明装置においては、上記くさび型光学素子と上記重畳レンズとが一体となっていることが好ましい。
【0036】
このように構成することにより、上記くさび型光学素子と上記重畳レンズとが一体となっているため、くさび型光学素子の出射面と重畳レンズの入射面における反射損が減り光利用効率が高まるとともに、部品点数が減ることにより光学系の組み立てが容易になるという効果がある。
【0037】
上記に記載の照明装置においては、上記偏光変換素子と上記くさび型光学素子とが一体となっていることが好ましい。
【0038】
このように構成することにより、上記偏光変換素子と上記くさび型光学素子とが一体となっているため、偏光変換素子の出射面と上記くさび型光学素子の入射面における反射損が減り光利用効率が高まるとともに、部品点数が減ることにより光学系の組み立てが容易になるという効果がある。
【0039】
上記に記載の照明装置においては、上記偏光変換素子と上記くさび型光学素子と上記重畳レンズとが一体となっていることが好ましい。
【0040】
このように構成することにより、上記偏光変換素子と上記くさび型光学素子と上記重畳レンズとが一体となっているため、上記偏光変換素子の出射面と、くさび型光学素子の入出射面と、重畳レンズの入射面における反射損が減り、光利用効率が高まるとともに、部品点数が減ることにより光学系の組み立てが容易になるという効果がある。
【0041】
上記本発明の照明装置のいずれかに記載の照明装置においては、複数の第2の小レンズを備え、前記偏光変換素子の後段に配置され、偏光光束を後段の照明すべき領域に重畳させる機能を有する第2のレンズアレイと、を備えることが好ましい。
【0042】
このため、本発明の照明装置は、輝度むらを抑制する効果を維持しつつ光利用効率の向上が図られる。その結果、本発明の照明装置を用いることによって、プロジェクタの輝度をさらに向上させることができる。
【0043】
上記いずれかの照明装置と、この照明装置からの光を赤、緑及び青の3つの色光に分離する色分離装置と、 上記3つの色光をそれぞれ変調するための3つの電気光学変調装置と、上記3つの電気光学変調装置で変調された光を投写する投写レンズとを備えたことを特徴とする。
【0044】
このため、本発明のプロジェクタは、上述した偏光分離素子の有する効果をそのまま有することになる。その結果、高輝度の画像を表示できるプロジェクタとなる。電気光学変調装置としては、液晶パネル、微小ミラーデバイス、微小油滴デバイスなどが好適に用いられる。
【0045】
上記のプロジェクタにおいて、上記3つの電気光学変調装置で変調された光を合成して前記投写レンズに導く色合成装置をさらに備えることが好ましい。
【0046】
このように構成することにより、投写レンズを調整するのみで、ズーム調整やフォーカス調整を行うことができ、使い勝手が向上する。
【0047】
本発明の偏光分離素子の製造方法は、上記いずれかに記載の照明装置に備えられる偏光分離素子を製造するための方法であって、以下の(a)乃至(c)の工程を有することを特徴とする偏光分離素子の製造方法。
(a)第1の基板、偏光分離層、第2の基板、反射層の繰り返し構造を有し、かつこの繰り返し構造の繰り返しピッチが徐々に変化している基板ブロックを形成する工程。
(b)前記基板ブロックを切断して、断面が前記偏光分離素子の片側半分の形状をした四角柱の光学ブロックを形成する工程。
(c)前記光学ブロックを2枚準備して、これらの2枚の光学ブロックを左右対称になるように貼り合せて前記偏光分離素子とする工程。
【0048】
偏光分離面と反射面とを有し入射光束をS偏光光束とP偏光光束とに分離する複数の偏光分離ユニットを備え、前記複数の偏光分離ユニットの光束分離方向の配列ピッチが、前記照明装置の光軸中心から周辺部にかけて、徐々に小さくなり、入射面から出射面までの距離が、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くなることを特徴とする偏光分離素子を製造することができる。
【0049】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、特に説明のない限り、光の進行方向をz方向、光の進行方向(z方向)からみて3時の方向をx方向、12時の方向をy方向とする。
【0050】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るプロジェクタの光学系を示す図である。図1に示されるように、このプロジェクタ10は、照明装置100Aと、色分離装置200と、リレー光学装置240と、反射ミラー220と、2つのフィールドレンズ300R、300Gと、3つの液晶パネル310R、310G、310Bと、ダイクロイックプリズム400と、投写レンズ420とを備えており、基本的には従来のプロジェクタ90と同じ光学系を有している。実施形態1に係るプロジェクタ10が、従来のプロジェクタ90と異なるのは、照明装置100Aである。
【0051】
実施形態1に係る照明装置100Aは、従来の照明装置100と同じく、照明領域である液晶パネル310R、310G、310Bの有効領域をほぼ均一に照明するためのインテグレータ光学系であって、略平行な光束を出射する光源110と、第1のレンズアレイ120Aと、第2のレンズアレイ130Aと、偏光変換素子140Aと、重畳レンズ150とを備えている。
【0052】
第1のレンズアレイ120Aは、従来の第1のレンズアレイ120と同じく、複数の第1の小レンズを備え、この複数の第1の小レンズによって光源から出射された光束を複数の部分光束に分割する機能を有している。実施形態1に係る第1のレンズアレイも、略矩形状の輪郭を有する小レンズが12行8列のマトリクス状に配列された構成を有している。各小レンズは、光源110から入射された平行な光束を複数の(すなわち12×8個の)部分光束に分割し、各部分光束を第2のレンズアレイ130Aの近傍で収束させる。各小レンズをz方向から見た外形形状は、液晶パネル310R、310G、310Bの形状とほぼ相似形をなすように設定されている。
【0053】
第2のレンズアレイ130Aは、複数の第2の小レンズを備え、これら複数の部分光束が集光される位置近傍に配置されている。第2のレンズアレイ130Aも、第1のレンズアレイ120Aの小レンズに対応するように、小レンズが12行8列のマトリクス状に配列された構成を有している。第2のレンズアレイ130Aは、第1のレンズアレイ120Aから出射された各部分光束の中心軸(主光線)が重畳レンズ150の入射面に垂直に入射するように構成されている。
【0054】
偏光変換素子140Aは、第2のレンズアレイ130Aから出射された光束をほぼ一種類の偏光光束に変換する機能を有している。
【0055】
図2は、偏光変換素子140Aの構造を示す図である。偏光変換素子140Aは、図2に示されるように、光軸を挟んで左右対称に配置された2つの偏光変換素子アレイ140L、140Rによって構成されている。この偏光変換素子アレイ140L、140Rは、偏光ビームスプリッタアレイと、その光射出面の一部に選択的に配置されたλ/2位相差板180とを備えている。
【0056】
偏光ビームスプリッタアレイは、図2に示されるように、偏光分離面172と反射面173とを有し入射光束をS偏光光束とP偏光光束とに分離する偏光分離ユニット176を複数備えている。そして、この偏光分離ユニット176の光束分離方向の長さLが、光軸中心Oから周辺部Pにかけて、徐々に短くなっている。また、偏光分離ユニットの光束分離方向の配列ピッチが、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に小さくなっている。
【0057】
従来の偏光分離素子においては、偏光分離ユニットの光束分離方向の長さが、光軸中心から周辺部にかけて、均一であることから、特に光軸付近において偏光分離面で分割光束の集光像を呑み込むことができず、光の利用効率が低下してしまう。一方、この問題を回避するために、偏光分離面の光束分離方向の長さを全体的に長くすると、光軸付近において偏光分離面で分割光束の集光像を呑み込むことはできるようになるが、偏光分離素子に対応して設けられる第2の小レンズの数が少なくなり、液晶パネルの照明領域における輝度むらを抑制する効果が弱くなる。
【0058】
これに対して、実施形態1に係る偏光分離素子140Aにおいては、偏光分離ユニットの光束分離方向の長さを、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くすれば、光軸付近では偏光分離面で分割光束の集光像を呑み込むことができる一方、全体として第2の小レンズの数を確保することができるので、液晶パネルの照明領域における輝度むらを抑制する効果を維持することができる。このため、輝度むらを抑制する効果を維持しつつ光の利用効率の向上が図られる。その結果、本発明の偏光分離装置を用いることによって、照明装置100Aの明るさが向上するとともに、プロジェクタ10の輝度もさらに向上する。
【0059】
また、実施形態1に係る偏光変換素子140Aにおいては、入射面から出射面までの距離が、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くなるよう構成されている。
【0060】
このため、偏光分離ユニットの光束分離方向の長さを、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くし、かつ、偏光分離ユニットの光束分離方向の配列ピッチを、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くすることができる。
【0061】
また、この偏光変換素子140Aは左右対称である。このため、この偏光変換素子140Aを用いることにより、スクリーンに表示される画像の輝度むらを左右対称なものにすることができ、プロジェクタ10の表示品質がさらに高められている。
【0062】
図3は、実施形態1に係る偏光変換素子140Aの製造方法を示す図である。図3に示されるように、実施形態1に係る偏光変換素子140Aは、以下の(a)乃至(d)の工程を有する比較的簡単な方法で製造することができる。
(a)第1の基板184、偏光分離層172、第2の基板186、反射層173の繰り返し構造を有し、かつこの繰り返し構造の繰り返しピッチが徐々に変化している基板ブロック182を形成する。
(b)次に、上記基板ブロック182を切断して、断面が上記偏光分離素子の片側半分の形状をした四角柱の光学ブロック188を形成する。
(c)次に、上記光学ブロック188を2枚準備して、これらの2枚の光学ブロック188を左右対称になるように貼り合せて上記偏光分離素子178とする。(d)次に、この偏光分離素子178の出射面における所定位置に、λ/2位相差板を形成して、実施形態1に係る偏光変換素子140Aとする。
【0063】
実施形態1に係る重畳レンズ150は、従来の重畳レンズと同様に、偏光変換素子140Aによってほぼ一種類の偏光光に変換された複数の部分光束を、液晶パネル310R、310G、310Bに重畳させる機能を有している。
【0064】
実施形態1に係る照明装置100Aは、従来の照明装置100とは異なり、偏光変換素子140Aと上記重畳レンズ150との間に、偏光変換素子140Aから出射する光を整形するためのくさび型光学要素160をさらに備えている。このため、上記偏光変換素子140Aを射出した発散光が、くさび型光学素子160の作用により、整形され、各液晶パネル310R,310G,310B上に照明光を効率よく照射することが可能となる。
【0065】
色分離装置200は、2つのダイクロイックミラー210、212を備え、重畳レンズ150から出射される光を、赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有している。第1のダイクロイックミラー210は、照明装置100から出射された光束の赤色成分を透過させるとともに、青色成分と緑色成分とを反射する。第1のダイクロイックミラー210を透過した赤色光は、反射ミラー220で反射され、フィールドレンズ300Rを通って赤光用の液晶電気光学変調装置310Rに達する。
【0066】
第1のダイクロイックミラー210で反射された青色光と緑色光のうち、緑色光は第2のダイクロイックミラー212によって反射され、フィールドレンズ300Gを通って緑光用の液晶パネル310Gに達する。
【0067】
一方、青色光は、第2のダイクロイックミラー212を透過し、入射側レンズ262、反射ミラー252、リレーレンズ264、反射ミラー254、フィールドレンズ266を備えたリレー光学系240を通り、青色用の液晶パネル310Bに達する。
【0068】
液晶パネル310R、310G、310Bは、与えられた画像情報(画像信号)に従って、各色光の出射光強度を変調する。
【0069】
ダイクロイックプリズム400は、3色の色光を合成してカラー画像を形成する色合成装置としての機能を有している。ダイクロイックプリズム400には、赤色光を反射する誘電体多層膜と、青色光を反射する誘電体多層膜とが、4つの直角プリズムの界面に略X字状に形成されている。これらの誘電体多層膜で構成される色光反射膜の波長選択特性により、3つの色光が合成されて、カラー画像を投写するための合成光が形成される。
【0070】
ダイクロイックプリズム400で生成された合成光は、投写レンズ420に導かれる。投写レンズ420は、この合成光をスクリーンS上に投写して、カラー画像を表示する投写手段としての機能を有する。
【0071】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係るプロジェクタの光学系を示す図である。図4に示されるように、このプロジェクタ20は、照明装置100Bと、色分離装置200と、リレー光学装置240と、反射ミラー220と、2つのフィールドレンズ300R、300Bと、3つの液晶パネル310R、310G、310Bと、ダイクロイックプリズム400と、投写レンズ420とを備えており、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ10と同じ光学系を有している。実施形態2に係るプロジェクタ20が、実施形態1に係るプロジェクタ10と異なるのは、照明装置100Bである。
【0072】
実施形態2に係る照明装置100Bが実施形態1に係る照明装置100Aと異なるのは、実施形態1に係る照明装置100Aでは偏光変換素子140Aとくさび型光学素子160とが分離しているのに対して、実施形態2に係る照明装置100Bではくさび型光学素子160と重畳レンズ150とが一体となっている点である。
【0073】
このため、くさび型光学素子160の出射面と重畳レンズ150の入射面における反射損が減り、光利用効率が高まるとともに、部品点数が減ることにより光学系の組み立てが容易になるという効果がある。
【0074】
(実施形態3)
図5は、実施形態3に係るプロジェクタの光学系を示す図である。図5に示されるように、このプロジェクタ30は、照明装置100Cと、色分離装置200と、リレー光学装置240と、反射ミラー220と、2つのフィールドレンズ300R、300Bと、3つの液晶パネル310R、310G、310Bと、ダイクロイックプリズム400と、投写レンズ420とを備えており、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ10と同じ光学系を有している。実施形態3に係るプロジェクタ30が、実施形態1に係るプロジェクタ10と異なるのは、照明装置100Cである。
【0075】
実施形態3に係る照明装置100Cが実施形態1に係る照明装置100Aと異なるのは、実施形態1に係る照明装置100Aでは偏光変換素子140Aとくさび型光学素子160とが分離しているのに対して、実施形態3に係る照明装置100Cでは偏光変換素子140Aとくさび型光学素子160とが一体となっている点である。
【0076】
このため、実施形態3に係る照明装置100Cは、偏光変換素子140Aの出射面とくさび型光学素子160の入射面における反射損が減り、光利用効率が高まるとともに、部品点数が減ることにより光学系の組み立てが容易になるという効果がある。
【0077】
(実施形態4)
図6は、実施形態4に係るプロジェクタの光学系を示す図である。図6に示されるように、このプロジェクタ40は、照明装置100Dと、色分離装置200と、リレー光学装置240と、反射ミラー220と、2つのフィールドレンズ300R、300Bと、3つの液晶パネル310R、310G、310Bと、ダイクロイックプリズム400と、投写レンズ420とを備えており、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ10と同じ光学系を有している。実施形態4に係るプロジェクタ40が、実施形態1に係るプロジェクタ10と異なるのは、照明装置100Dである。
【0078】
実施形態4に係る照明装置100Dが実施形態1に係る照明装置100Aと異なるのは、実施形態1に係る照明装置100Aでは偏光変換素子140Aとくさび型光学素子160と重畳レンズ150とが分離しているのに対して、実施形態4に係る照明装置100Dでは偏光変換素子140Aとくさび型光学素子160と重畳レンズ150とが一体となっている点である。
【0079】
このため、実施形態4に係る照明装置100Dは、偏光変換素子140Aの出射面とくさび型光学素子160の入射面及び反射面と、重畳レンズ150の入射面における反射損が減り光利用効率が高まるとともに、部品点数が減ることにより光学系の組み立てが容易になるという効果がある。
【0080】
(実施形態5)
図7は、実施形態5に係るプロジェクタの光学系を示す図である。図7に示されるように、このプロジェクタ50は、照明装置100Eと、色分離装置200と、リレー光学装置240と、反射ミラー220と、2つのフィールドレンズ300R、300Bと、3つの液晶パネル310R、310G、310Bと、ダイクロイックプリズム400と、投写レンズ420とを備えており、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ10と同じ光学系を有している。実施形態5に係るプロジェクタ50が、実施形態1に係るプロジェクタ10と異なるのは、照明装置100Eである。
【0081】
実施形態5に係る照明装置100Eが実施形態1に係る照明装置100Aと異なるのは、実施形態1に係る照明装置100Aでは第2のレンズアレイ130とくさび型光学素子160と重畳レンズ150とがそれぞれ独立して配置されているのに対して、実施形態5に係る照明装置100Eではこれらの機能が一体となった第2のレンズアレイ190を有している点である。
【0082】
このため、実施形態5に係る照明装置100Eは、これらの光学要素の入出射面の数が減少しているため反射損が減り光利用効率が高まるとともに、部品点数が減ることにより光学系の組み立てが容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るプロジェクタの光学系を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る偏光変換素子の構造を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る偏光変換素子の製造方法を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る照明光学装置の光学系を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る照明光学装置の光学系を示す図である。
【図6】本発明の実施形態4に係る照明光学装置の光学系を示す図である。
【図7】本発明の実施形態5に係る照明光学装置の光学系を示す図である。
【図8】従来のプロジェクタの光学系を示す図である。
【図9】第1のレンズアレイの外観を示す斜視図である。
【図10】従来の偏光変換素子の構成及び機能を説明するための図である。
【符号の説明】
10、20、30、40、50、90・・・プロジェクタ
100、100A、100B、100C、100D、100E・・・照明装置
110・・・光源
112・・・光源ランプ
114・・・凹面鏡
120、120A・・・第1のレンズアレイ
122・・・小レンズ
130、130A・・・第2のレンズアレイ
140、140A・・・偏光変換素子
140L、140R・・・偏光変換素子アレイ
150・・・重畳レンズ
160・・・くさび型光学素子
170L、170R・・・偏光ビームスプリッタアレイ
171・・・透光性部材
172・・・偏光分離膜
173・・・反射膜
176・・・偏光分離ユニット
178・・・偏光分離素子
180・・・λ/2位相差板
182・・・基板ブロック
184・・・第1の基板
186・・・第2の基板
188・・・偏光分離素子の片側半分
200・・・色分離装置
210・・・第1のダイクロイックミラー
212・・・第2のダイクロイックミラー
220、252、254・・・反射ミラー
240・・・リレー光学系
262・・・入射側レンズ
264・・・リレーレンズ
300R、300G、266・・・フィールドレンズ
310R、310G、310B・・・液晶パネル
400・・・ダイクロイックプリズム
420・・・投写レンズ
S・・・スクリーン
C1、C2、C3、C4・・・切断面
L・・・偏光分離ユニットの光束分離方向の長さ
O・・・光軸中心
P・・・周辺部

Claims (9)

  1. 光源と、
    複数の第1の小レンズを備え、前記複数の第1の小レンズによって前記光源から出射された光束を複数の部分光束に分割する第1のレンズアレイと、
    前記第1のレンズアレイから出射された光束をほぼ一種類の偏光光束に変換する偏光変換素子と、を備えた照明装置であって、
    前記偏光変換素子は、偏光分離素子と、偏光光束の出射面及びP偏光光束の出射面のいずれかの面に配置されたλ/2位相差板とを備え、
    前記偏光分離素子は、偏光分離面と反射面とを有し入射光束をS偏光光束とP偏光光束とに分離する複数の偏光分離ユニットを有し、
    前記複数の偏光分離ユニットの光束分離方向の配列ピッチが、前記照明装置の光軸中心から周辺部にかけて、徐々に小さくなり、
    前記偏光分離素子の入射面から出射面までの距離が、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くなるよう構成されてなり、
    前記偏光分離素子は、2つの四角柱の光学ブロックから構成され、
    前記光学ブロックは、複数の偏光分離ユニットを有することを特徴とする照明装置。
  2. 請求項に記載の照明装置において、前記光軸を挟んで左右対称であることを特徴とする照明装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の照明装置において、
    前記第1のレンズアレイから射出された前記複数の部分光束が集光される位置近傍に配置される第2のレンズアレイを備えることを特徴とする照明装置。
  4. 請求項1乃至に記載の照明装置において、
    前記偏光変換素子の後段に重畳レンズを備えたことを特徴とする照明装置。
  5. 請求項に記載の照明装置において、
    前記偏光変換素子と前記重畳レンズとの間に、前記偏光変換素子から出射する光を整形するためのくさび型光学要素をさらに備えたことを特徴とする照明装置。
  6. 請求項に記載の照明装置において、
    前記くさび型光学素子が、前記重畳レンズと前記偏光変換素子との少なくとも一方と一体となっていることを特徴とする照明装置。
  7. 請求項1または請求項2に記載の照明装置において、
    複数の第2の小レンズを備え、前記偏光変換素子の後段に配置され、偏光光束を後段の照明すべき領域に重畳させる機能を有する第2のレンズアレイと、を備えたことを特徴とする照明装置。
  8. 請求項1乃至のいずれかに記載の照明装置と、
    前記照明装置からの光を赤、緑及び青の3つの色光に分離する色分離装置と、
    前記3つの色光をそれぞれ変調するための3つの電気光学変調装置と、
    前記3つの電気光学変調装置で変調された光を合成する色合成装置と、
    前記色合成装置で合成された光を投写する投写レンズとを備えたことを特徴とするプロジェクタ。
  9. 偏光分離面と反射面とを有し入射光束をS偏光光束とP偏光光束とに分離する複数の偏光分離ユニットを備え、前記複数の偏光分離ユニットの光束分離方向の配列ピッチが、前記照明装置の光軸中心から周辺部にかけて、徐々に小さくなり、入射面から出射面までの距離が、光軸中心から周辺部にかけて、徐々に短くなることを特徴とする偏光分離素子を製造するための方法であって、以下の(a)乃至(c)の工程を有することを特徴とする偏光分離素子の製造方法。
    (a)第1の基板、偏光分離層、第2の基板、反射層の繰り返し構造を有し、かつこの繰り返し構造の繰り返しピッチが徐々に変化している基板ブロックを形成する工程。
    (b)前記基板ブロックを切断して、断面が前記偏光分離素子の片側半分の形状をした四角柱の光学ブロックを形成する工程。
    (c)前記光学ブロックを2枚準備して、これらの2枚の光学ブロックを左右対称になるように貼り合せて前記偏光分離素子とする工程。
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