JP4205704B2 - 撮像偏光計測方法 - Google Patents

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    • G01J4/04Polarimeters using electric detection means

Description

この発明は、計測対象となる光の偏光状態の2次元空間分布を複屈折プリズムペアを利用して計測するようにした撮像偏光計測方法及び装置に関する。
光は、「横波」の性質を有する。互いに直交する3軸(x,y,z)を前提として、光の進行方向をz軸方向とすると、光の振動方向はxy平面に沿った方向となる。xy平面内における光の振動方向には偏りが存在する。この光の偏りは「偏光」と称される。この明細書においては、以下に、光の偏り方を「偏光状態」と称する。この偏光状態は、一般に、2次元x,y平面内の位置(座標)によって異なる。
測定対象に対して、ある偏光状態の光を入射させ、透過光や反射光等の出射光を取得すると、測定対象が光に対する異方性を有すると、入射光と出射光との間で偏光状態の変化が観察される。この偏光状態の変化から、測定対象の異方性に関する情報を取得することを「偏光計測」と称する。なお、このような異方性の原因としては、分子構造の異方性、応力(圧力)の存在、局所電場や磁場の存在等が挙げられる。
入射光と出射光との間における偏光状態の変化を、2次元xy平面内の位置(座標)毎に求め、それらから測定対象の異方性に関する情報を取得することを特に「撮像偏光計測(imaging polarimetry)」と称する。この撮像偏光計測によれば、2次元xy平面内の一点、もしくは面で平均された領域における計測の場合に比べて、格段に多くの情報を取得できる利点がある。この撮像偏光計測においては、出射光(ときには、入射光)の偏光状態を計る装置、すなわち撮像偏光計(imaging polarimeter)がキーデバイスとなる。
撮像偏光計測の応用分野としては、光エレクトロニクス機器の検査、医療分野、リモートセンシング、マシンビジョン等が知られている。例えば、光エレクトロニクス機器の検査においては、残留応力による複屈折や欠陥などを非破壊かつ非接触で計測できることから、液晶、光学フィルム、光ディスク装置などの検査、研究等への応用がなされている。医療分野においては、幾種かの細胞が偏光特性を有することから、緑内障やガン細胞の早期発見への試みがなされている。リモートセンシングにおいては、偏光状態の2次元空間分布から測定対象の傾きや平面度などが遠方より測定できることが利用されており、たとえば植生などの調査へ適用されている。また、同様の理由により、マシンビジョンでは偏光画像からの物体の形状認識が試みられている。
ところで、z軸方向へ進行する光が存在するとして、そのx軸方向の振動成分とy軸方向の振動成分との間に完全な相関がある(同期がとれている)状態における偏光には、直線偏光と楕円偏光と円偏光との3種類が存在する。このとき、楕円偏光の状態を表すためのパラメータとしては、楕円率角ε、方位角θ、位相差Δ、振幅比角Ψが存在する。
また、光の偏光度、楕円率角、方位角等をより効率的に表すためのパラメータとしては、ストークスパラメータ(Stokes Parameter)が使用される。このストークスパラメータは、以下定義を有する4つのパラメータにより構成される。
: 全強度
: 方位0°、90°直線偏光成分強度の差
: 方位±45°直線偏光成分強度の差
: 左右円偏光成分強度の差
互いに直交する3軸をS,S,Sとする三次元空間において原点を中心とする半径S0の球を想定すると、任意の光の偏光状態は、この三次元空間上の1点として表され、偏光度は次式で表される。
偏光度 = (原点から点(S,S,S)までの距離)/S
= (S +S +S 1/2/S
このことから、完全偏光(偏光度=1)ならば、偏光状態を表す1点は半径Sの球上に存在することが理解されるであろう。また、楕円率角と方位角は、上記三次元空間上における偏光状態を表す1点の緯度と経度のそれぞれの半分に相当する。このように、ストークスパラメータであるS,S,S及びSの4つを求めることができれば、偏光状態に関する全ての情報を表現することができるのである。
従来の最も一般的な撮像偏光計測法としては、回転移相子法と偏光変調法とが知られている。
回転移相子法では、撮像装置へ至る計測対象光の経路に、移相子と検光子とが順に介在される。ここで、移相子とは、互いに方位が直交する関係にある2つの主軸(速軸と遅軸)を有すると共に、その通過前後において、2つの主軸間の位相差が変化するように構成された光学素子である。また、検光子とは、1つの主軸を有すると共に、この主軸の方位に相当する1つの直線偏光成分だけを透過させるように構成された光学素子である。
この回転移相子法において、4つのストークスパラメータの2次元空間分布を独立して求めるためには、移相子それ自体を物理的に回転させて、最低4通りの方位のそれぞれについての光強度分布測定を行う必要がある。すなわち、入射光のストークスパラメータは、2次元空間座標の関数S(x,y),S(x,y),S(x,y),S(x,y)として表される。
偏光変調法では、撮像装置へ至る計測対象光の経路に、位相差を電気的に制御可能な2つの移相子(第1移相子と第2移相子)と1つの検光子とが順に介在される。そのような移相子としては、電気光学変調器、液晶、光弾性変調器等が使用される。第1移相子の主軸と第2移相子の主軸との間には例えば45°の方位差が設定されている。
この偏光変調法においても、4つのストークスパラメータの2次元空間分布を独立して求めるためには、第1移相子及び第2移相子の位相差を電気的制御により所定角度範囲で振動させて、複数の光強度分布を取得する必要がある。
しかし、回転移相子法と偏光変調法とに代表される従来一般の撮像偏光計測法にあっては、次のような問題点が指摘されている。
(1)第1の問題点
機械的若しくは能動的な偏光制御素子が必要であるために、[1]振動や発熱等の問題が避けられないこと、[2]機械素子等に容積が必要で小型化にも限界があること、[3]電力を消費する駆動装置が必要不可欠であること、[4]メンテナンスが必要で煩雑であること、等の問題点がある。
(2)第2の問題点
偏光変調(制御)素子の条件を変えながら、複数の光強度分布を繰り返し測定しなければならないため、[1]測定時間が比較的に長くかかること、[2]測定中は測定対象を安定させておかねばならないこと、等の問題点がある。
このような従来一般の撮像偏光計測法の問題点を解決するために、本発明者等は先に、「複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法」を新たに開発した(非特許文献1および2参照)。
複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法を説明するための実験系の構成図が図19に示されている。図から明らかなように、ヘリウム・ネオンレーザ1から射出された光を、コリメータレンズ2,4とピンホール3でビーム径を広げた後、偏光子5とツイストネマティック液晶6に透過させると、2次元xy平面内の位置(座標)によって変わる偏光状態を持つ光波が得られる。この光波のストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y)、S(x,y)、S(x,y)、S(x,y)は、図中波線で囲まれた測定系7で求められる。
被測定光は、先ず、結像レンズ8を透過し、2組の複屈折プリズムペアBPP,BPPと平板検光子Aを順に通った後、CCD撮像素子9に入射する。結像レンズは、測定対象のツイストネマティック液晶6の射出面をCCD撮像素子上に結像する目的で用いられている。一方、2組の複屈折プリズムペアBPP,BPPと平板検光子Aは、CCD撮像素子の前面に重ねられている。(BPP,BPP,およびAの面は、リレーレンズなどを用いて、CCD撮像素子の前面に光学的に結像させても良い。)複屈折プリズムペアとは、複屈折媒質で作られた一対のくさび状のプリズムを互い違いに重ねたものであり、BPPとBPPのそれぞれの接合面は、y軸ないしx軸に対してある微小角度で傾けられている。ここで、複屈折プリズムペアBPPの2つの主軸はそれぞれ、x,y座標に一致させられており、一方、複屈折プリズムペアBPPの2つの主軸は、それから45°傾けられている。そして、検光子Aの透過軸はx軸と平行とされる。
2組の複屈折プリズムペアBPP,BPPのそれぞれにおいて、直交偏光成分間に生ずる位相差は2次元空間座標に依存する。このため、CCD撮像素子9からは、図20に示されるような3つのキャリア成分を含む光強度分布が得られる。各々のキャリア成分の振幅と位相は、被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布により変調されている。したがって、フーリエ変換を利用した信号処理をコンピュータ10にて施せば、各ストークスパラメータを求めることができる。
実験の結果の一例が図21に示されている。これは、ツイストネマティック液晶6において「A」の字の透明電極の部分のみに一様電場をかけた場合に得られるものである。左右の図はそれぞれ、ストークスパラメータの2次元空間分布から計算された、方位角の2次元空間分布θ(x,y)と楕円率角の2次元空間分布ε(x,y)を示している。偏光状態が2次元空間座標に依存して変化することが理解されるであろう。
このように複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法によれば、光強度分布の特性を周波数分析すれば、各ストークスパラメータの2次元空間分布を求めることができる。尤も、周波数分析に先立って、2組の複屈折プリズムペアBPP,BPPのそれぞれについて、リタデーションをあらかじめ求めておくことが必要である。ここで、リタデーションとは、互いに直交する2つの主軸に沿った直線偏光成分間に生ずる位相差のことである。
上述の複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法によれば、[1]回転移相子等の機械的な可動素子が不要であること、[2]電気光学的変調器等の能動的な素子が不要であること、[3]1枚の光強度分布から4つのストークスパラメータが一度に求まり、いわゆるスナップショットな測定ができること、[4]構成が簡単であり、小型化に適すること、等の利点が得られる。
金子敏章、岡和彦、「複屈折ウェッジを用いた偏光状態の空間2次元分布計測」、第49回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、(応用物理学会、平塚、2002)page977 K.Oka and T.Kaneko, "Compact complete imaging polarimeter using birefringent wedge prisms," Opt. Express, Vol.11, No.13, pp.1510-1519, 2003
しかしながら、上述の複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法にあっては、次のような理由により、計測誤差が比較的に大きいと言う問題点が指摘されている。
(1)複屈折プリズムペアBPP,BPPのリタデーションの変動(ゆらぎ)
複屈折プリズムペアのリタデーションは温度変化や圧力変化に起因して敏感に変動する結果、図22に示されるように、撮像素子で検出される光強度分布の位相は温度変化や圧力変化に起因して変動する。その結果、図23に示されるように、光強度分布から得られるストークスパラメータの計測値は、温度変化や圧力変化により誤差を生ずる。なお、図22および23においては、図の都合上、x断面のみ示しているが、y方向も同様である。
(2)複屈折プリズムペアと撮像素子の間の相対位置の位置ずれ
複屈折プリズムペアと撮像素子の間にリレーレンズが挿入されているような系においては、両者の間の相対的な位置ずれが大きな誤差要因となる。もし、測定のたびに、振動などを原因として撮像素子の各画素がサンプルする複屈折プリズムペア上の座標がずれると、図24に示されるように、複屈折プリズムペアのリタデーションが変動した場合と等価な状態が出現することとなり、結果として、光強度分布から得られるストークスパラメータの計測値に誤差を生ずる。なお、図24においては、図の都合上、x断面のみ示しているが、y方向も同様である。
ところで、例えば光エレクトロニクス機器の検査において、楕円率角や方位角の2次元空間分布に求められる精度は誤差0.1°程度以下とされており、これを複屈折プリズムペアのリタデーションの安定化により実現しようとすれば、複屈折プリズムペアの温度変動を0.5℃以下に抑えなければならない。
しかし、そのためには、温度安定化のために加熱器や冷却器等のサイズの大きな温度補償装置が必要となり、折角の複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法の利点(小型化、能動素子を含まない等)が失われてしまう。そのため、複屈折プリズムペアのリタデーションの安定化により、計測誤差を低減することは事実上困難である。
また、リレーレンズが挿入されているような系において、複屈折プリズムペアと撮像素子の間の相対的な位置ずれを無視できるまでに振動などを抑えることは、特にリモートセンシングやロボットビジョンなど、移動体上に偏光計を備え付ける必要のある応用分野においては、事実上困難である。
この発明は、従来の複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、回転移相子等の機械的な可動素子が不要であること、電気光学的変調器等の能動的な素子が不要であること、1枚の光強度分布から4つのストークスパラメータが一度に求まり、いわゆるスナップショットな測定ができること、構成が簡単であり、小型化に適すること、等の利点を保持しつつ、より一層高精度な計測を可能とする複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測方法及び装置を提供することにある。
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
(1)この発明の撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置を用意するステップと、2次元光強度分布を求めるステップと、演算ステップとを含んでいる。
偏光撮像装置を用意するステップにおいて用意される偏光撮像装置は、被測定光が順に透過する第1の複屈折プリズムペア、第2の複屈折プリズムペア及び検光子と、前記検光子を透過した光の2次元強度分布を求める手段とを備え、前記各複屈折プリズムペアは、互いに頂角がほぼ等しいくさび状の2つの移相子が接合されて平行平板状となっており、かつ、接合された2つの移相子の速軸の方向が互いに直交している光学素子であり、第2の複屈折プリズムペアは、その主軸の方向と第1の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置され、検光子は、その透過軸の方向と第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置されたものである。
2次元光強度分布を求めるステップでは、偏光撮像装置に被測定光を入射させて2次元光強度分布を求める。
演算ステップでは、求められた2次元光強度分布を用いて、測定系の位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求める。ここで、位相属性関数の組は、偏光撮像装置の特性によって規定される関数の組であって、第1の複屈折プリズムペアのリタデーションである第1の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数及び第2の複屈折プリズムペアのリタデーションである第2の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数を含み、それ自身のみで被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分であるような関数の組である、又はそれ自身と偏光撮像装置の特性によって規定される他の関数とを組み合わせると被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分な関数の組が得られるような関数の組である。
「2次元光強度分布を求める手段」としては、1次元又は2次元の撮像素子が用いられる。1次元の撮像素子を用いることができるのは、例えば測定対象物と偏光撮像装置とが被測定光の進行方向とほぼ垂直に相対的に変位する場合のように、被測定光の偏光状態の空間分布と偏光撮像装置とが相対的に変位する場合である。このような相対的変位を利用すると、1次元の撮像素子によって取得される光強度の時間的変化から2次元の光強度分布を求めることができる。このとき、1次元の撮像素子の画素の並び方向は、上記相対的変位の方向と垂直にするなど、上記相対的変位の方向と一致しないようにする必要がある。
「偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求める」には、4つのストークスパラメータの2次元空間分布、すなわち、全強度を表すS(x,y)、方位0°及び90°の各直線偏光成分強度の差を表すS(x,y)、方位±45°の各直線偏光成分強度の差を表すS(x,y)並びに右回り及び左回りの各円偏光成分強度の差を表すS(x,y)のすべて又は一部を求めることを含む。実際にすべてのストークスパラメータの2次元空間分布を求めるかどうかは実施者の選択にゆだねられるが、本発明は、原理的にはすべてのストークスパラメータの2次元空間分布を求めることができるものである。
また、「偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求める」には、ストークスパラメータの2次元空間分布と等価なパラメータを求める場合を含む。例えば、光強度、偏光度、楕円率角及び方位角のパラメータの組の2次元空間分布、又は、光強度、偏光度、位相差及び振幅比角のパラメータの組の2次元空間分布は、ストークスパラメータの2次元空間分布と等価である。本発明は、原理的にはこれらのパラメータのすべてを求めることができるものであるが、実施者の選択により一部のパラメータを求める場合も含む。
「偏光撮像装置の特性によって規定される他の関数」としては、基準振幅関数、基準位相関数の較正用基準値、第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータ、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータなどが該当しうる。
測定対象物が占める空間などの特定の測定対象領域における光の偏光状態の2次元空間分布を計測対象とするときには、測定対象領域における光の偏光状態の2次元空間分布が偏光撮像装置において再現されるようにする。そのための一つの手段は、測定対象領域と偏光撮像装置との間に結像レンズを設け、測定対象領域を偏光撮像装置に結像させることである。このとき、第1の複屈折プリズムペア、第2の複屈折プリズムペア、検光子及び撮像素子を互いに近接させて、これらが結像レンズの焦点深度内に入るようにすることが好ましい。あるいは、第2の複屈折プリズムペアと撮像素子とを離間させて、この間にリレーレンズを設け、結像レンズが第1の複屈折プリズムペア及び第2の複屈折プリズムペアにおいて結像させた測定対象領域の像をリレーレンズによって撮像素子に再度結像させるようにしてもよい。この場合、検光子は第2の複屈折プリズムペアと撮像素子との間のどこにあってもよい。
測定対象領域における光の偏光特性の2次元空間分布が偏光撮像装置において再現されるようにするための他の一つの手段は、結像レンズを設けずに、測定対象領域と撮像装置とを接近させて、平行光によって測定対象領域を撮像装置に投影することである。すなわち、本発明おいて結像レンズを用いることは必須ではない。
本発明は、測定対象領域における光の偏光状態の2次元空間分布の計測に限らず、たとえば被測定光の進行方向の分布を撮像装置における光の2次元空間分布に変換する光学系を用いて被測定光の偏光状態の進行方向分布を計測することに用いることもできる。このような計測は、測定対象領域と撮像装置との間にレンズを設け、測定対象領域をレンズの焦点面に置くことによって実現できる。
本発明の撮像偏光計測方法によれば、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法が有する、偏光制御のための機械的可動部や電気的光学変調器のような能動的素子を必要とせず、1回の光強度分布取得により原理的に被測定光のすべての偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めることができるという特徴を継承しつつ、複屈折プリズムペアのリタデーションが温度変化その他の要因により変動することによって生じる偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータの計測誤差を効果的に低減することができる。
(2)前記検光子は、その透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向に対して45°となるように配置されたものとしてもよい。
(3)この発明の撮像偏光計測方法の一つの実施形態では、位相属性関数の組は、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数である。この実施形態の演算ステップにおいては、第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータが利用可能とされている。
この実施形態における演算ステップは、求められた光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
ここで、「第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータ」は、両基準位相関数の間のx軸の方向に対する傾きの比ならびにy軸の方向に対する傾きの比のような、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数の一方が与えられれば他方を求めることができるようなデータである。
「基準位相関数を求める」には、これと等価なパラメータを求める場合を含む。特に、基準位相関数の情報を含む複素関数を求めることは、基準位相関数と等価なパラメータを求めることに該当する。
検光子の透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向に対して45°となるように配置された場合には、第5の光強度分布成分は現れなくなるので、演算ステップにおける第2、第4及び第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求める部分では、第2及び第4の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求めればよい。このようにすると演算が簡単になる利点がある。他方、検光子の透過軸の方向と第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向との間の角度を45°に限定しない場合は、光学系の組み立て誤差に対する制限が緩やかになるので光学系の製造が容易になる利点がある。
(4)この発明の撮像偏光計測方法の他の実施形態では、位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))である。この実施形態の演算ステップにおいては、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))、並びに第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされている。
この実施形態における演算ステップは、求められた光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、第1の基準位相関数の較正用基準値、第2の基準位相関数の較正用基準値、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
ここで、第1及び第2の基準位相関数の「較正用基準値」は、基準位相関数の実測した初期値であってもよいし、実測に基づかずに適当に設定された値でもよい。ただし、両較正用基準値の間の関係は、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係と整合した関係であることが好ましい。
「基準位相関数の変化量」は、「基準位相関数」と「基準位相関数の較正用基準値」との差として定義される。したがって、「基準位相関数の較正用基準値」が実際の初期値と一致しない場合には、「基準位相関数の変化量」は基準位相関数の実際の変化量を意味しない。
「第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータ」は、両変化量の間のx軸の方向に対する傾きの比ならびにy軸の方向に対する傾きの比のような、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量の一方が与えられれば他方を求めることができるようなデータである。
「基準位相関数の変化量を求める」には、これと等価なパラメータを求める場合を含む。特に、基準位相関数の変化量の情報を含む複素関数を求めることは、基準位相関数の変化量と等価なパラメータを求めることに該当する。
検光子の透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向に対して45°となるように配置された場合には、第5の光強度分布成分は現れなくなることについては、前述の場合と同様である。
この実施形態との比較のため、まず上記(3)の実施形態のように基準位相関数の変化量を用いずに基準位相関数を用いて演算を進める場合について考える。演算式における見かけはともかくとして、原理的には被測定光の偏光状態とは独立に確定可能な第2の基準位相関数がまず確定され、次いで第2の基準位相関数を用いて第1の基準位相関数が確定されることになる。このとき、求められた第2の基準位相関数には、2πの整数倍の不定性が付随する。このこと自体は偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータの算出誤差に影響しないが、第2の基準位相関数から第1の基準位相関数を求める際に行うアンラッピング処理が第1の基準位相関数の算出誤差の要因となることによって、偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータの算出誤差が生じることがある。アンラッピング処理とは、第2の基準位相関数の値が位置の変化に対して2πの範囲を超えて連続的に変化していくように第2の基準位相関数の値を決定する処理である。第2の基準位相関数の変化量を用いない場合は、第1の基準位相関数は、アンラッピング処理後の第2の基準位相関数に「第1及び第2の基準位相関数の間の関係を示すデータ」を適用して求められる。位置のサンプリング間隔と比較して第2の基準位相関数の値が2π変化するときの位置の間隔が十分大きくないときや、第2の基準位相関数の計測値にノイズがのっているときには、アンラッピング処理後の第2の基準位相関数の算出を2πを単位として誤る可能性があり、そのように2πを単位とする誤差を含んだ第2の基準位相関数から第1の基準位相関数を求めると、第1の基準位相関数に含まれる誤差は一般に2πを単位とするものではなくなるため、偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを算出する場合の大きな誤差となる。これに対して、この(4)の実施形態の場合には、第2の基準位相関数の変化量の位置変化に対する変化が緩やかであることから、第2の基準位相関数の変化量についてのアンラッピング処理が不要又は少ない頻度ですむため、アンラッピング処理に起因して第1の基準位相関数の変化量に誤差が生じる可能性をなくすこと又はきわめて低減することができる。
(5)上記(4)の実施形態において、さらに、偏光撮像装置に偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータが既知である較正用の光を入射させて較正用の2次元光強度分布を求め、較正用の光の偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータ及び求めた較正用の光強度分布を用いて第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))を求めるステップを備え、それによりこれらの較正用基準値が利用可能とされるようにしてもよい。
(6)また、上記(4)の実施形態において、さらに、偏光撮像装置に偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータが既知である較正用の光を入射させて較正用の2次元光強度分布を求め、較正用の光の偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータ及び求めた較正用の光強度分布を用いて、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))、第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータを求めるステップを備え、それによりこれらの値が利用可能とされるようにしてもよい。
(7)上記(3)の実施形態において、さらに、偏光撮像装置に偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータが既知である較正用の光を入射させて較正用の2次元光強度分布を求め、較正用の光の偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータ及び求めた較正用の光強度分布を用いて第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータを求めるステップを備え、それにより第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータが利用可能とされるようにしてもよい。
(8)上記(5)及び(6)の実施形態において、較正用の光として直線偏光を用いることができる。
(9)また、上記(7)の実施形態においても、較正用の光として直線偏光を用いることができる。
(10)この発明の撮像偏光計測方法の他の実施形態では、演算ステップにおいて、2次元光強度分布に関する情報を含む第1のベクトルが、行列と、被測定光の偏光状態の2次元空間分布に関する情報及び前記位相属性関数の組に関する情報を含む第2のベクトルとの積によって表される関係が成り立つような前記行列の一般化逆行列の各要素の値が利用可能とされている。
この実施形態における演算ステップは、求められた光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、第2のベクトルに含まれる要素の値を用いて位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
(11)上記(10)の実施形態を前提とした他の実施形態では、位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))である。この実施形態の演算ステップにおいては、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされている。さらに、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))から求められた前記行列の一般化逆行列が利用可能とされている。
この実施形態における演算ステップは、求められた光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、第2のベクトルに含まれる要素の値及び第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータを用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
(12)この発明の撮像偏光計測装置は、偏光撮像装置と演算装置とを備えている。
偏光撮像装置は、被測定光が順に透過する第1の複屈折プリズムペア、第2の複屈折プリズムペア及び検光子と、前記検光子を透過した光の2次元光強度分布を求める手段とを備え、前記各複屈折プリズムペアは、互いに頂角がほぼ等しいくさび状の2つの移相子が接合されて平行平板状となっており、かつ、接合された2つの移相子の速軸の方向が互いに直交している光学素子である。ここで、第2の複屈折プリズムペアは、その主軸の方向と第1の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置されている。検光子は、その透過軸の方向と第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置されている。
演算装置は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて、測定系の位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求める。ここで、位相属性関数の組は、偏光撮像装置の特性によって規定される関数の組であって、第1の複屈折プリズムペアのリタデーションである第1の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数及び第2の複屈折プリズムペアのリタデーションである第2の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数を含み、それ自身のみで被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分であるような関数の組である、又はそれ自身と偏光撮像装置の特性によって規定される他の関数とを組み合わせると被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分な関数の組が得られるような関数の組である。
(13)前記検光子は、その透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向に対して45°となるように配置されたものとしてもよい。
(14)この発明の撮像偏光計測装置の一つの実施形態では、位相属性関数の組は、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数である。この実施形態の演算装置においては、第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータが利用可能とされている。
この実施形態における演算装置は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
(15)この発明の撮像偏光計測装置の他の実施形態では、位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))である。この実施形態の演算装置においては、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))、並びに第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされている。
この実施形態における演算装置は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、第1の基準位相関数の較正用基準値、第2の基準位相関数の較正用基準値、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
(16)この発明の撮像偏光計測装置の他の実施形態では、演算装置において、2次元光強度分布に関する情報を含む第1のベクトルが、行列と、被測定光の偏光状態の2次元空間分布に関する情報及び位相属性関数の組に関する情報を含む第2のベクトルとの積によって表される関係が成り立つような前記行列の一般化逆行列の各要素の値が利用可能とされている。
この実施形態における演算装置は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、第2のベクトルに含まれる要素の値を用いて位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
(17)上記(16)の実施形態を前提とした他の実施形態では、位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))である。この実施形態の演算装置においては、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされている。さらに、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))から求められた前記行列の一般化逆行列が利用可能とされている。
この実施形態における演算装置は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、第2のベクトルに含まれる要素の値及び第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータを用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
本発明によれば、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法が有する、偏光制御のための機械的可動部や電気的光学変調器のような能動的素子を必要とせず、1回の光強度分布取得により原理的に被測定光のすべての偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めることができるという特徴を継承しつつ、複屈折プリズムペアのリタデーションが温度変化その他の要因により変動することによって生じる偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータの計測誤差を効果的に低減することができる。
以下に、本発明の好適な実施の一形態を添付図面(図1〜図11)を参照しながら詳細に説明する。
第1章 本発明の前提となる複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法について
1.1 複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法の原理
複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法に使用される、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計の基本構成が図1に示されている。この撮像偏光計は、結像レンズ102、2組の複屈折プリズムペア103(BPPとBPP)、検光子A、および撮像素子104によって構成されている。なお、撮像素子104を用いる代わりに、測定物体を走査することもできる。
各々の複屈折プリズムペアは、図1右下の囲み部に示されるように、複屈折物質で作られた同じ頂角を持つ一対のくさび状のプリズムを、斜辺が互い違いになるようにして貼り付けて作られている。ただし対となる複屈折プリズムの結晶軸の方向は、ともに光軸に垂直で、かつ互いに直交させておく。この構成を一つのプリズムペア全体で見ると、その前面と後面は平行でかつ光軸に対して垂直となっており、一方、2つのプリズム間の接合面はプリズムペアの前後の面に対して若干傾くこととなる。光学的には、この複屈折プリズムペアは、2次元座標によりその性質が変わる移相子として働く。ここで移相子とは、互いに直交する直線偏光成分間の位相差を、素子透過前後で変化させる素子である。この直交直線偏光成分の2つの軸を主軸と呼び、この位相差の変化量をリタデーションと呼ぶ。
2つの複屈折プリズムペアBPPとBPPの主軸は、互いに45°傾けられており、一方検光子Aの透過軸(transmission axis)は複屈折プリズムペアBPPの一方の主軸と一致させる。
ただし、この3つの素子(複屈折プリズムペアBPP、BPP、および検光子A)の間の交差角は、必ずしも45°でなくとも良い。他の交差角でも、多少効率が悪くはなるが、測定は可能となる。要は、隣り合う素子の主軸が重ならなければよい。この点については後に詳述する。重要なのは、各素子は固定であり、従来法のように回転させたりあるいは変調させたりする必要が無い点にある。
また、プリズム接合面の傾きの方向は、複屈折プリズムペアBPPとBPPでは、互いに異なるようにしておく必要がある。一例としては、図1右下の囲み部に示したように、BPPの接合面をy方向のみ、BPPの接合面はx方向のみにそれぞれ傾けておけばこの条件は満たされる。
この偏光計が対象とする被測定光(偏光状態が測られる光)は、偏光状態が2次元空間座標によって異なる光である。このような光は一般に、透過・反射・散乱により偏光状態を変える特性が、2次元空間座標によって異なる測定対象物によって作り出される。この被測定光の偏光状態(State of Polarization, SOP)の2次元空間分布は、2次元空間座標(x,y)に依存したストークスパラメータS(x,y),S(x,y),S(x,y),およびS(x,y)で表すことができる。なお、このストークスパラメータを決めるための座標軸x,yは、BPPの互いに直交する2つの主軸に一致させて取るものとする。
図の左に置かれた測定対象物101を射出した被測定光は、結像レンズ102、2つの複屈折プリズムペア103(BPP、BPP)、検光子Aを順に透過し、撮像素子104に入射する。ここで結像レンズ102は、測定対象物の射出面を撮像素子104の撮像面に結像する働きをする。なお、複屈折プリズムペアBPPとBPPおよび検光子Aは、十分に薄く、かつ撮像素子104の撮像面に密着されているものとする。これは、測定対象物の射出面が結像されている撮像素子の入射面が、プリズムペアBPPとBPPの面と同一と見なせるようにすること、言い換えると、プリズムペアBPPに入射してから撮像素子104に入射するまでの間に回折などによる像の広がりやぼけなどを受けないことのために必要である。なお、複屈折プリズムペアBPPとBPPおよび検光子Aを撮像素子104に密着させる代わりに、リレーレンズ(第2、第3の結像レンズ)をBPPとBPPの間、あるいはBPPと撮像素子の間(検光子Aの前もしくは後)などに適宜挿入することにより、上記4者(測定対象の射出面、BPP、BPP、撮像素子の入射面)の間の結像関係を保つこともできる。
この撮像素子から得られる光強度分布より、後述する所定の手順を使うと、2次元空間座標x,yに依存したストークスパラメータを求められるのである。
ストークスパラメータを求める手順について説明する前に、その準備として、複屈折プリズムペアBPPおよびBPPの特性を定式化しておく。今、図2に示すように、複屈折プリズムペアBPP中のくさびの接合面が、x,y方向となす角を、それぞれ、γ1xとγ1yとする。同様に、BPPについても、接合面の傾き角γ2xとγ2yを定義する。これを用いると、複屈折プリズムペアBPP(j=1,2)のリタデーションは、次式のように書ける。
φ(x,y)=2π(Ujxx+Ujyy)+Φ(x,y) (1.1)
ただし
Figure 0004205704
ここで、λは光源の波長であり、またBはプリズム媒質の複屈折である。さらに、Φ(x,y)は、プリズム加工時の不完全さなどによる小さな非線形成分を示す。これらの式からわかるように、各々の複屈折プリズムペアのリタデーションは、空間座標x,yに対してほぼ線形に変化している。
なお、BPPとBPP内の面の傾きが互いに異なっていることより、
γ1x≠γ2x (1.3a)
γ1y≠γ2y (1.3b)
のすくなくとも一方は成立している必要がある。たとえば、BPPの接合面がy方向のみ、BPPの接合面はx方向のみにそれぞれ傾いているとすると、(すなわち、図1右下囲みのようなときは、)
γ1x=0 (1.4a)
γ1y≠0 (1.4b)
γ2x≠0 (1.4c)
γ2y=0 (1.4d)
となる。
1.2 撮像素子で取得される光強度分布
図1に示される「複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計」において、撮像素子104で取得される光強度分布は次式により表わされる。
Figure 0004205704
ただし、
23(x,y)=S(x,y)+iS(x,y) (1.6)
となる。ここで、m(x,y),m(x,y),m(x,y),m(x,y)は、撮像素子が光強度分布の細かい振動成分に十分追随できないことによる振幅減衰率を示す。この式の性質を理解するために、式(1.1)を代入すると、
Figure 0004205704
ただし、
−x=U2x−U1x (1.8a)
−y=U2y−U1y (1.8b)
+x=U2x+U1x (1.8c)
+y=U2y+U1y (1.8d)
Φ-(x,y)=Φ2(x,y)−Φ1(x,y) (1.8e)
Φ+(x,y)=Φ2(x,y)+Φ1(x,y) (1.8f)
となっていることがわかる。
式(1.7)からわかるように、撮像素子から得られる光強度分布I(x,y)には、4つの成分が含まれている。このうちの一つは、空間座標(x,y)に対して緩やかに変動する成分であり、残りの3つは、空間座標(x,y)に対して振動する疑似正弦的な成分となっている。これらを模式的に示したのが、図3である。
ここで、3つの振動成分の各々の中心空間周波数は、(U−x、U−y),(U2x、U2y),(U+x、U+y)となっている。これは、3つの異なる方向の干渉縞が重畳されていることを示している。
ここで注意すべきは、この4つの成分が、それぞれ、S(x,y)、S(x,y)もしくはS23(x,y)のいずれかの情報をもっている点である。各々の成分を分離することができると、ひとつの光強度分布I(x,y)から全てのストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y),S(x,y),S(x,y),S(x,y)を決定する事ができることとなる。
1.3 素子間の交差角が45°以外の場合
次に、素子間の交差角が45°以外の場合に、撮像素子104で取得される光強度分布について説明する。
ここで補足として、光学系中の各素子間の交差角が45°以外となった場合に得られる光強度分布についても説明しておく。
今、図1の光学系において、複屈折プリズムペアBPPとBPPの主軸の間のなす角をθBB、複屈折プリズムペアBPPの主軸と検光子Aの透過軸がなす角をθBAとする。これまでは、θBB=45°,θBA=−45°に限って計算してきたが、ここがより一般的な角度になった場合について示す。
得られる光強度分布I(x,y)は、
Figure 0004205704
となる。これらを模式的に示したのが図4である。
この式を、先の式(1.5)の時の光強度分布、すなわちθBB=45°,θBA=−45°に限定した時の光強度分布と比較すると、単なる係数の定数倍の違いの他に、下記の違いがあることがわかる。なお、この違う部分は、式(1.9)中に下線で示した。
・空間座標(x,y)に対して緩やかに変動する成分が、S(x,y)のみならずS(x,y)にも依存するようになる。
・位相φ(x,y)によって疑似正弦的に振動する成分、すなわち中心空間周波数(U1x,U1y)で振動する成分が加わる。なお、この成分も(φ(x,y)−φ(x,y)およびφ(x,y)+φ(x,y)に従って振動する2つの成分と同様に、)S23(x,y)の情報を持っている。すなわち、この項は、S23を含む他の2項と同様に扱えることを意味している。
ここで、上記の2つの成分が現れないための条件について考えてみる。
前者の項は「θBB≠±45°とθBA≠±45°の両方が成り立つとき」に限って現れる。一方後者の項は、「θBA≠±45°となるとき、(θBBが45°と一致しているか否かには無関係に)」現れる。これから、下記の事実が言える。
複屈折プリズムペアBPPの主軸と検光子Aの透過軸が45°で交差しているとき(すなわちθBA=±45°のとき)には、撮像素子から得られる光強度分布は、各項の係数の定数倍の違いを除き、式(1.5)で与えられる。このとき、複屈折プリズムペアBPPとBPPの主軸の間のなす角θBBが±45°に一致するか否かは無関係である。
さらに、これを言い換えると、光強度分布が、式(1.5)の形を取るためには、複屈折プリズムペアBPPの主軸と検光子Aの透過軸が±45°で交差していることが条件となる。一方、複屈折プリズムペアBPPとBPPの主軸の間のなす角が±45°に一致するか否かは無関係である。
1.4 ストークスパラメータの2次元空間分布復調の手順
ストークスパラメータの2次元空間分布を復調するための具体的な手順について、図5を参照しつつ、以下説明する。大まかな流れは、次の通りになる。
Step1:撮像素子から得られた光強度分布I(x,y)から、各項を分離する。
Step2:各々の成分の振幅と位相を求める。
(あるいは、同値な量、例えば複素表示した際の実部と虚部を求める。)
Step3:各振動成分の振幅と位相に含まれる
Figure 0004205704
を除いて、ストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y),S(x,y),S(x,y),S(x,y)を得る。(これらの基準関数は、被測定光によらず、偏光計のパラメータのみに依存するものである。)
各ステップについて、以下説明する。
[Step1]
前節で述べたように、撮像素子から得られた光強度分布I(x,y)には4つの成分が含まれている。各々を信号処理により取り出す作業をする。この作業で利用するのは、各々の成分が異なる周期(周波数)で振動していることである。通信工学や信号解析などの分野で広く用いられている様々な周波数フィルタリングの技法(のどれか一つ)を用いれば、各々を分離することができる。
Figure 0004205704
成分[1]は、位置変化に対して非周期振動性の光強度分布成分である。成分[2]は、位置変化に対して第1の基準位相関数φ(x,y)と第2の基準位相関数φ(x,y)との差に依存する周波数で振動する光強度分布成分である。成分[3]は、位置変化に対して第2の基準位相関数φ(x,y)に依存し第1の基準位相関数φ(x,y)に依存しない周波数で振動する光強度分布成分である。成分[4]は、位置変化に対して第1の基準位相関数φ(x,y)と第2の基準位相関数φ(x,y)との和に依存する周波数で振動する光強度分布成分である。複屈折プリズムペアBPPの主軸の方向と検光子Aの透過軸の方向とのなす角が45°でない場合には、位置変化に対して第1の基準位相関数φ(x,y)に依存し第2の基準位相関数φ(x,y)に依存しない周波数で振動する光強度分布成分[5]が現れる。
[Step2]
Step1で分離された各成分それぞれについて、図6に示されるように、その「振幅と位相の組」ないし「複素表示」を求める。この作業にも、Step1同様、通信工学や信号解析などの分野で一般的な様々な復調法を利用して容易に実現できる。例えば、
振幅復調:整流検波法、包絡線検波法など
位相復調:周波数弁別器法、ゼロクロス法など
複素表示の復調:フーリエ変換法(後述)、同期検波法など
が挙げられる。
ここで、振動成分の「振幅」、「位相」、「複素表示」について、その定義と基本的な性質を下記にまとめておく。式(1.10a)〜(1.10d)を見ればわかるように、分離された各成分は、成分[1]以外は皆
a(x,y)cosδ(x,y) (1.11)
の形を取っている。このa(x,y)とδ(x,y)それぞれを、その振動成分の「振幅」および「位相」と呼ぶ。なお、ここで成分[1]についても、位相がδ(x,y)=0である(すなわちcosδ(x,y)=1である)と見なせば、この成分についても振幅を定義することができる。
また、この振幅・位相と
Figure 0004205704
なる関係があるF(x,y)を、複素表示と呼ぶ。このF(x,y)の実部は振動成分の振幅を半分にしたものであり、虚部は実部と位相が90度ずれたものである。なお、成分[1]においては、δ(x,y)=0、すなわち虚部がないため、1/2倍はしない。
ここで注意すべきは、「振幅と位相の組」ないし「複素表示」のいずれか一方のみが復調できれば、他方は下記関係式を用いて直ちに計算できることにある。
Figure 0004205704
すなわち、一方のみを復調すれば、他方も必要に応じてすぐに計算できることになる。
各成分の「振幅」と「位相」を復調すると、その結果は
Figure 0004205704
となる。
一方、各成分の「複素表示」を復調すると、その結果は
Figure 0004205704
となる。ここで、*は、複素共役を表す。なお、以下の都合上、これらの複素表示の式を下記のように書き直しておく。
Figure 0004205704
である。
[Step3]
最後に、先のStep2で求めた「振幅」と「位相」、もしくは「複素表示」から、空間座標(x,y)の関数としてのストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y),S(x,y),S(x,y),S(x,y)を決定する。
Step2で得られた「振幅」と「位相」には、求めるストークスパラメータの2次元空間分布の他に、
Figure 0004205704
が含まれている。
前者は振幅に、後者は位相に含まれている。これらは、各々の振動成分の振幅と位相からストークスパラメータの2次元空間分布を決定する際の基準を与える。そこで以下各々を、「基準振幅関数(reference amplitude function)」ならびに「基準位相関数(reference phase function)」と呼ぶことにする。これらのパラメータは、被測定光に依存しないため、各々を除算ないし減算することによって、
・S(x,y)は、「成分[1]」から
・S(x,y)とS(x,y)は、「成分[2]」もしくは「成分[4]」(いずれか一方)から
・S(x,y)は「成分[3]」から
が、それぞれ決定できることとなる。
一方、「複素表示」の場合には、偏光計自体の特性のみで決まるパラメータ(関数)は、式(1.18a)〜(1.18d)で定義されるK(x,y),K(x,y),K(x,y),K(x,y)となる。これらは、いわば「基準複素関数」と呼ぶべきものとなる。
式(1.17a)〜(1.17d)からわかるように、上記基準複素関数が求まっていれば、Step2で復調された各振動成分の複素表示を除算することによって、
・S(x,y)は、「成分[1]」から
・S(x,y)とS(x,y)は、「成分[2]」もしくは「成分[4]」(いずれか一方)から
・S(x,y)は「成分[3]」から
が、それぞれ決定できることとなる。
複屈折プリズムペアBPPと検光子Aのなす角が45°でない場合には、現れる第5の項を、「成分[2]」と「成分[4]」の代わりに使うことができる。すなわち、上記の2行目は
・S(x,y)とS(x,y)は、「成分[2]」、「成分[4]」、「成分[5]」のうちの一つから
と書き換えられることとなる。
次に、ストークスパラメータの2次元空間分布復調のための信号処理法の一つとして、「フーリエ変換法」を図7を参照しつつ説明する。この方法を用いると、Step1とStep2を一度に効率良く行え、各振動成分の複素表示全てが直ちに求められることとなる。
この方法では、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計内の撮像素子で測定された光強度分布I(x,y)をまずフーリエ変換する。得られるのは、撮像素子入射光の2次元空間スペクトル
Figure 0004205704
このうち(f、f)=(0,0)、(U−x,U−y),(U2x、U2y)、(U+x,U+y)を中心とする4つの成分を取り出して、各々をフーリエ変換すると、
Figure 0004205704
となる。
この式を見ればわかるように、上記の操作で求められるものは、前述のStep2で求めるべき、成分[1]〜[4]の複素表示そのものになっている。すなわち、上記の操作で、Step1とStep2が一度に実現されるのである。この結果に、後はStep3の操作を施せば、全てのストークスパラメータの2次元空間分布が一度に求められることとなる。
1.5 事前較正:基準振幅関数、基準位相関数、基準複素関数の「測定前の」較正
前節で述べたように、撮像素子から得られる光強度分布から被測定光の偏光状態の2次元空間分布(ストークスパラメータの2次元空間分布)を決定する際には、Step3において、偏光計自体の特性のみで決まるパラメータ、すなわち、
「基準振幅関数」m(x,y),m(x,y),m(x,y),m(x,y)
および「基準位相関数」φ(x,y),φ(x,y)
あるいは
「基準複素関数」K(x,y),K(x,y),K(x,y),K(x,y)
を予め決定しておく必要がある。前者(「基準振幅関数」及び「基準位相関数」)と後者(「基準複素関数」)は、それぞれ、各振動成分の「振幅・位相」あるいは「複素表示」からストークスパラメータの2次元空間分布を求める場合に必要となる。これらは、被測定光によらない関数であるので、すくなくとも測定前に較正をしておくことが望ましい。
本節では、これらの基準関数を「測定の前に、すなわち事前に」較正する手順を説明する。すなわち、図8に示されるように、偏光測定(ステップ711〜714)に先立ち、事前較正(ステップ701〜705)を行わねばならない。代表的な考え方に、
・『方法1』:光学系に用いる各素子の特性から、基準位相関数や基準振幅関数を較正する方法
・『方法2』:既知の偏光状態を持つ光を用いて、基準位相関数や基準振幅関数を較正する方法
の2通りがある。
1.5.1 『方法1』
光学系に用いる各素子の特性から、基準位相関数や基準振幅関数を較正する方法
基準位相関数や基準振幅関数は、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計に用いる素子によって基本的にその特性が決まる。従って、個々の素子の光学特性を実験もしくは計算などで調べて、それらを積み重ねてパラメータの較正が行える。
1.5.2 『方法2』
既知の偏光状態を持つ光を用いて、基準位相関数や基準振幅関数を較正する方法
基準位相関数や基準振幅関数は、「複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計」の特性だけで決まる量であり、「被測定光の偏光状態」にはよらない。そこで、「偏光状態が既知の光(測定結果が分かっているもの)」を偏光計に入力し、その結果を用いて、基準位相関数や基準振幅関数を逆算することができる。
なお、「複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計」にはその利点として、
・「偏光状態が既知の光」としては、「一種類だけ」でもOKである。
・その「一種類」の光には、「直線偏光」が使える。
がある。
一般に、ストークスパラメータの2次元空間分布を求める現用の偏光計では、較正をする際に、最低でも4つの異なる偏光状態の光を用意せねばならず、さらに、そのうちの少なくとも一つは直線偏光以外でなければならなかった。これに対し、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計では、一種類の既知偏光、それも直線偏光で良いのである。なぜ直線偏光が都合がよいかというと、他の偏光状態とは異なり、高消光比の結晶型偏光子を用いれば純度の高い光が容易に作り出せるからである。
以下、その較正の手順を示す。なお、本節最初に述べたように、
・各振動成分の「振幅と位相」から偏光状態を求める場合には「基準振幅関数」と「基準位相関数」が、
・各振動成分の「複素表示」から偏光状態を求める場合には「基準複素関数」が、
それぞれ必要となる。
以下それぞれの場合に分けて較正手順を述べる。それらは本質的には同一であり、単なる計算方法の違いであるが、便宜上並記しておく。
A.基準振幅関数と基準位相関数を別々に求める較正手順
この較正では、まず初めに、「何らかの既知の偏光状態を持った光」を用意し、それを複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計に入射する。その既知の光のストークスパラメータの2次元空間分布をS (0)(x,y),S (0)(x,y),S (0)(x,y)、およびS (0)(x,y)とする。この光について、先に示した復調手段を施すと、Step2で求められた振幅と位相は、式(1.15a)〜(1.15d)より
Figure 0004205704
ただし、
23 (0)(x,y)
=S (0)(x,y)+iS (0)(x,y) (1.24)
となる。なお、これは、S(x,y)〜S(x,y)をS (0)(x,y)〜S (0)(x,y)に置き換えただけである。
各振動成分の振幅と位相は、ストークスパラメータの2次元空間分布と基準振幅関数並びに基準位相関数だけで決まっている。ここで、「既知の偏光状態の光を入れた場合」には、ストークスパラメータの2次元空間分布が既知であるため、復調された振幅と位相から、残る基準振幅関数m(x,y),m(x,y),m(x,y),m(x,y)と基準位相関数φ(x,y),φ(x,y)が決定できることになる。具体的には、
Figure 0004205704
で与えられる。一度これらの基準関数が決まれば(較正できれば)、今度は、未知の偏光状態の光のストークスパラメータの2次元空間分布が決められることとなる。
なお、上記を見ると、既知の偏光状態の光の条件としては、S (0)(x,y),S (0)(x,y),S23 (0)(x,y)の全てが0でないことのみであることがわかる。特に、最後のS23 (0)(x,y)については、S (0)(x,y)とS (0)(x,y)のどちらか一方が0であっても他方が0でなければ良いことを意味している。ここで、S (0)(x,y)=0とは、直線偏光を意味する。すなわち、直線偏光だけでも較正ができることを意味している。具体的には、既知の光に方位θの直線偏光を用いた場合には、
(0)(x,y)=I(0)(x,y) (1.26a)
(0)(x,y)=I(0)(x,y)cos2θ (1.26b)
(0)(x,y)=I(0)(x,y)sin2θ (1.26c)
(0)(x,y)=0 (1.26d)
となる。ここでI(0)(x,y)は較正光の光強度分布である。この場合には、上記式(1.25a)〜(1.25g)は
Figure 0004205704
となる。
これより、方位θと光源の光強度分布I(0)(x,y)さえ事前にわかっていれば、基準振幅関数や基準位相関数が求められることがわかる。さらに、I(0)(x,y)が不明であっても、方位θのみが既知であるならば、一部の(重要な)偏光パラメータを求める用途には十分である。
B.両者を一緒に(基準複素関数として捉えて)一度に求める較正手順
上記に述べた方法は、各振動成分の「振幅」と「位相」を分離して計算する方法であった。しかし、場合によっては、各振動成分の「複素表示」として計算する方が都合が(効率が)良い場合もある。一例としては、先に図7に示したフーリエ変換法のように、直接「複素表示」(式(1.17a)〜式(1.17d))が求まる場合が挙げられる。この様な場合には、いちいち「振幅」や「位相」に分離しないで、「複素表示」のまま較正を行ってしまうのが効率良い。
以下に、その場合の計算式を示す。なお、注意すべきは、物理的な本質は全く一緒であることにある。単に計算が複素数を使って効率が良いというだけである。
前節と同様に、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計に、既知のストークスパラメータの2次元空間分布S (0)(x,y),S (0)(x,y),S (0)(x,y),S (0)(x,y)を持った光が入射する場合を考える。この場合に求められる、各振動成分の複素表示は、それぞれ(式(1.17a)〜式(1.17d))より、
(0)(x,y)=K(x,y)S (0)(x,y) (1.28a)
(0)(x,y)=K(x,y)S23 (0)(x,y) (1.28b)
(0)(x,y)=K(x,y)S (0)(x,y) (1.28c)
(0)(x,y)=K(x,y)S23 (0)*(x,y) (1.28d)
となる。
ここで、上式に含まれる複素関数K(x,y),K(x,y),K(x,y),K(x,y)は、式(1.18a)〜(1.18d)よりわかるように、基準振幅関数と基準位相関数のみから決まる量(基準複素関数)であり、被測定光によらない。従って、これらは、
Figure 0004205704
として逆算することができる。
振幅と位相を分離して計算した場合と同様に、一度上記の基準複素関数が決まれば(較正できれば)、今度は、未知の偏光状態の光のストークスパラメータの2次元空間分布が決められることとなる。
なお、参考までに、方位θの直線偏光を用いた場合の上記を記しておく。
Figure 0004205704
第2章 複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計の問題点
1.4節のStep3に述べたように、測定された光強度分布I(x,y)からストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y),S(x,y),S(x,y),S(x,y)を復調するためには、
Figure 0004205704
をあらかじめ求めておく(較正しておく)必要がある(図8参照)。
ところが、基準位相関数φ(x,y)とφ(x,y)は、様々な理由により変動するという性質がある。これらが変動すると、ストークスパラメータの2次元空間分布の測定値に大きな誤差が生じるという問題が生ずる。
2.1 基準位相関数の変動を引き起こす原因
2.1.1 温度変化
基準位相関数φ(x,y)とφ(x,y)は撮像偏光計中の複屈折プリズムペアBPPとBPPによって決まる量(リタデーション)である。このリタデーションは温度に対して敏感に変化するという性質を持つ。そのため、温度変化により光強度分布の位相がずれる(図22参照)。その結果、温度上昇により、測定値がずれて、誤差を生ずる(図23参照)。また、圧力変化に対しても同様の変化が起きる。
2.1.2 複屈折プリズムペアと撮像素子の間の相対位置の位置ずれ
複屈折プリズムペアと撮像素子の間の相対的な位置がずれると、基準位相関数のゆらぎと「等価な」問題が生ずる。リレーレンズが挿入されているような系において、両者の間の相対的な位置がずれると、光強度分布が横ずれしたのと同様の効果になる。これは等価的な位相のずれとなる(図24参照)。特に、リモートセンシングやロボットビジョンなど、移動体上に偏光計を備え付ける必要のある応用分野においては,振動が不可避なため、複屈折プリズムペアと撮像素子の間の相対的な位置ずれが生じやすい。
2.1.3 容易に考えつく解決策
各振動成分の基準位相関数が変動しないように、ゆらぎの原因を安定化させることが考えられるが、これはなかなか容易なことではない。例えば、温度変動についてみると、光エレクトロニクス機器の検査で、楕円率角や方位角の2次元空間分布に求められる精度は0.1°程度以下とされ、そのためには、温度変動を0.5℃以下程度に抑えなければいけない。これには、温度安定化に大きな装置が必要となり、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計の様々な利点(小型化、能動素子を含まない、など)が失われる。
第3章 本発明の実施形態の構成について
撮像素子から得られる光強度分布中に含まれる各振動成分の基準位相関数φ(x,y)とφ(x,y)(被測定光によらない、偏光計のパラメータのみに依存する)が、様々な要因で変動し、それが誤差の大きな要因となる。この点に鑑み、本実施形態では、測定中に(測定と並行して)、各振動成分の基準位相関数φ(x,y)とφ(x,y)を較正できる機能を複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計にもたせるようにしている(図9〜図11参照)。なお、図11においては、図の都合上、x断面のみ示しているが、y方向も同様である。
3.1 「測定中」に較正する方法(その1)
1.5節で述べた較正方法は、「測定の事前に」較正する方法であった。それに対して、以下の節では、「測定中に」較正できる方法を示す。これらが「発明の主要部」についての実施形態になる。
3.1.1 基本的な考え方
いま、測定中に(偏光状態が未知の光が複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計に入っている場合に、)第1章のStep2で求められた振幅と位相を再掲すると、下記のようになる。
Figure 0004205704
ここで、4つのストークスパラメータの2次元空間分布を求めるのに必要なのは、実は
・成分[1]の[振幅]→S0(x,y)
・成分[2]と成分[4]の一方の[振幅]と[位相]→S2(x,y)とS3(x,y)
・成分[3]の[振幅]→S1(x,y)
のみであることがわかる。残る
・成分[3]の[位相]
・成分[2]と成分[4]の中で残った方の[振幅]と[位相]
は、ストークスパラメータの2次元空間分布の復調には使われていないことがわかる。
本発明者らは、この残る成分も活用すると、実は、4つのストークスパラメータの2次元空間分布のみならず、「基準位相関数(φ(x,y)とφ(x,y)など)」が一度に求められることを見いだした。この方法では、特に既知の偏光状態の光を入力しなくても、測定の真っ最中に較正も同時にできる、ことを意味している。
3.1.2 準備
この「測定中の計測法」を使うには、下記の前準備が必要となる。
・基準振幅関数m(x,y),m(x,y),m(x,y),m(x,y)については、事前較正をしておく(図8参照)。
以下の方法は、基準位相関数のみしか有効でないため、基準振幅関数に関しては、1.5節に述べたいずれかの方法でおこなうこととする。なお、基準振幅関数の測定中のゆらぎの大きさは、一般にかなり小さく、多くの場合無視できる。すなわち、基準位相関数とは異なり、基準振幅関数を測定中に再較正する必要性は、一般的には、ほとんどない。
・基準位相関数については、事前較正は必ずしも必要はない。ただし、φ(x,y)とφ(x,y)の一方から他方を求めることができるような、φ1(x,y)とφ2(x,y)の関係は求めておかねばならない。
以下、φ(x,y)とφ(x,y)の関係を求めるための具体的な例を示す。
例1:複屈折プリズムペアBPPとBPPが同じ媒質で作られていて、さらに非線形項Φ(x,y)とΦ(x,y)が無視できるとする。
このとき、φ(x,y)とφ(x,y)を決める係数U1x、U1y、U2x、U2yの比は、接合面の傾き角の比から決まる。従って、φ(x,y)がわかれば、それからU2x、U2yが決まり、比例計算でU1x、U1yを求められる。
例2:例1同様、複屈折プリズムペアBPPとBPPが同じ媒質で作られていて、さらに非線形項Φ(x,y)とΦ(x,y)が無視できるとする。
この場合には、基準位相関数も事前較正すれば、U1x、U1y、U2x、U2yの比が決まる。
なお、非線形項Φ(x,y)とΦ(x,y)が無視できない場合には、例1、例2とも、U1x、U1y、U2x、U2yの代わりに、各画素ごとの「局所的な係数」
Figure 0004205704
を使えばよい。また、画素ごとに上記比が異なる場合、たとえば観測範囲内に温度のむらがある場合にも、上記の各画素ごとの「局所的な係数」の比を使えばよい。
1x、U1y、U2x、U2y比が測定中に変わる場合(たとえば2つの複屈折プリズムペアの温度が互いに異なる場合)などには、以下に述べる方法は使えない。
3.1.3 実際の較正方法
以下に、この考えに基づき、実際に較正する方法について説明する。
A.振動成分[3]より基準位相関数φ (x,y)を求める方法
振動成分[3]のみに注目してその振幅と位相を再掲すると、
Figure 0004205704
となっている。ここで注目すべきは、この成分の位相δ(x,y)は、基準位相関数のうちの一つφ(x,y)(そのもの)となっている。すなわち、成分[3]の位相δ(x,y)が測定されれば、基準位相関数の一方φ(x,y)が次式によって直ちに決められていることを意味している。
φ(x,y)=δ(x,y) (3.3)
この関係式は、被測定光の偏光状態によらず常に成り立つため、どのような被測定光からでも、測定値から直ちに基準位相関数の一方が求められることを意味している。これは、測定中に完全に並行して行える較正の方法であり、「既知偏光を利用した」場合(1.5節)のような「測定の事前で行う、もしくは測定を中断して行う」必要性は全くない。ただし、この際に、成分[3]が十分なSN比で観測されているという条件を満たしている必要はあることを注意しておく(後述のC参照)。
なお、1.4節「ストークスパラメータの2次元空間分布復調の手順」のStep2において、「振幅・位相の組」の代わりに「複素表示」を求めた場合には、上記を書き換えた以下に説明する計算方法を利用すれば良い。
式(1.14b)より、δ(x,y)は成分[3]の複素表示F(x,y)と
δ(x,y)=arg[F(x,y)] (3.4)
なる関係を有している。従って、基準位相関数φ(x,y)は、成分[3]の複素表示から
φ(x,y)=arg[F(x,y)] (3.5)
とすれば求められることができる。なお、複素表示の時に必要なのは、基準位相関数φ(x,y)ではなく、基準複素関数K(x,y)になる。両者の間には式(1.18c)の関係があるから、φ(x,y)が決まればK(x,y)も求められることとなる(詳しくは、後述のFにて述べる)。
B.複数の振動成分([2]と[4]の組など)より、基準位相関数φ (x,y)を求める方法
振動成分[2]と[4]各々の成分の位相を再掲すると、
成分[2]の位相:
δ(x,y)=φ(x,y)−φ(x,y)
+arg{S23(x,y)} (3.6a)
成分[4]の位相:
δ(x,y)=φ(x,y)+φ(x,y)
−arg{S23(x,y)}+π (3.6b)
となる。この両者の位相を加えると、φ(x,y)とarg{S23(x,y)}がうち消され、φ(x,y)に依存する項のみが残る。これより、
Figure 0004205704
が成立することがわかる。
この式の右辺は、振動成分[2]と[4]の位相の平均を取れば、基準位相関数の一つφ(x,y)が求められることを意味している。この関係式も、方法A同様、被測定光の偏光状態によらず常に成り立つため、どのような被測定光による光強度分布からでも、測定値から直ちに基準位相関数の一方が求められることを意味している。
すなわち、方法Aの時と同様に、「測定中に完全に並行して行える較正の方法」であり、「既知偏光を利用した」場合(1.5節)のような「測定の事前で行う、もしくは測定を中断して行う」必要性は全くない。ただし、この方法では、こんどは成分[2]と[4]の両方が十分なSN比で観測されているという条件を満たしている必要があることを注意しておく(後述のC参照)。
ここで、方法Aの時と同様に、1.4節のStep2において、「振幅と位相の組」の代わりに「複素表示」を求めた場合での計算式についてもふれておく。
式(1.14b)より、δ(x,y),δ(x,y)は成分[2]と[4]の複素表示F(x,y),F(x,y)と
δ(x,y)=arg[F(x,y)] (3.8a)
δ(x,y)=arg[F(x,y)] (3.8b)
なる関係を有している。
従って、基準位相関数φ(x,y)は、両成分の複素表示から
Figure 0004205704
として求めることができる。あるいは、上式を簡単な複素関数の公式で書き換えた
Figure 0004205704
を利用しても良い。
図1の光学系(複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計)において、複屈折プリズムペアBPPと検光子Aのなす角が45°以外の場合には、図4などで述べた様に、得られる光強度分布にもう一つ異なる周期を持った成分が含まれる。
式(1.9)を見ればわかるように、この成分の位相は「δ(x,y)=φ(x,y)−arg{S23(x,y)}」となり、上記振動成分[2]や[4]とよく似た位相項となっている。このため、[2]や[4]とこれを組み合わせても(あるいは、一方と入れ替えても)同様のφ(x,y)の較正ができることとなる。
C.AとBの組み合わせ
以上までに述べた2つの方法(方法Aと方法B)は、いずれも測定中に完全に並行して基準位相関数の一方φ(x,y)の較正ができる方法である。ただし、2つの方法では、用いられている振動成分が異なっている。ここで注意すべきは、方法Aで利用される振動成分[3]の振幅はS(x,y)に比例し、一方、方法Bで利用される振動成分[2]と[4]の両方の振幅は
Figure 0004205704
に比例していることである。
被測定光の偏光状態は未知であるため、ストークスパラメータの2次元空間分布が各成分の位相測定に常に十分な大きさがあるという保証はない。たとえば、S(x,y)が小さい光が被測定光に来た場合には、その成分の位相を使うAの方法でφ(x,y)を求めると誤差が大きくなってしまうこととなる。この問題を解決するには、AとBの方法を適応的に組み合わせることが望ましい。具体的には、両者の結果を選択する、あるいは重み付け平均することなどにより、φ(x,y)のより確からしい値を求めることができるようになる。
なお、S(x,y)とS23(x,y)の「両方が」非常に小さくなるような被測定光は、事実上、存在しない。なぜなら、両方が小さいときとは、完全偏光成分の光強度
Figure 0004205704
が小さい場合、すなわち限りなく無偏光に近い状態である。このような場合には、偏光状態を求めること自体に意味が無くなる。従って、上記のAとBを組み合わせると、どのような偏光状態の被測定光に対しても、測定と並行したφ(x,y)の較正ができることとなる。
D.AとBの組み合わせ(その2)
AとBを効率よく組み合わせるための考え方の一つを下記に示す。これは、特別な場合分けなどをせずに、直接的に計算できる方法である。なお、この部分(方法D)では、振動成分[2]〜[4]の複素表示F(x,y),F(x,y),F(x,y)の3者を用いて計算を行う。各振動成分の「振幅と位相の組」から計算する際には、これらを式(1.13)を使って一旦「複素表示」に直してから以下の計算手順に従えばよい。
この方法を説明するための準備として、まず下記2式を導出し、その性質を述べる。式(3.5)を変形すると、
2φ(x,y)=arg[F (x,y)] (3.11)
が得られる。一方、式(3.10)の両辺を2倍すれば
2φ(x,y)=arg[−F(x,y)F(x,y)] (3.12)
が得られる。この両式を見比べれば、各々の右辺の大括弧の中の複素関数は、同じ偏角2φ(x,y)を持つことがわかる。さらに、各々の式で、大カッコの中に入ってる複素関数の絶対値を調べると、
Figure 0004205704
となることがわかる。この式が意味することは、(成分[3]から来る)前者の絶対値はS (x,y)に比例し、一方、(成分[2]と[4]によって決まる)後者の絶対値はS (x,y)+S (x,y)に比例することである。先に述べたように、この両者が同時に小さくなることはない。これより、上記の2つの複素関数に対して「同じ偏角を持つ適当な重み関数α(x,y)とβ(x,y)」をそれぞれ乗算して加えた
Figure 0004205704
では、2つの項の和の絶対値が小さくなることは(事実上)ない事がわかる。S (x,y)とS (x,y)+S (x,y)のいずれか一方が小さくなると、それに伴って上記2項のうちの一方も小さくなるが、必ず他方は残るのである。結果として被測定光の偏光状態が変化しても、この式の絶対値は極端に小さくなることは無い。また、この式の偏角は、常に2φ(x,y)+argα(x,y)に等しい。これらの性質を利用すれば、次式に従えばS/Nが落ちることなく、φ(x,y)が求められることがわかる。
Figure 0004205704
具体的なα(x,y)とβ(x,y)の選び方を下記に2通り示す。
[D−1] α(x,y)=β(x,y)=1
重み関数の最も簡単な選び方は、両者を同じ定数(1)にしてしまうことである。この場合には、基準位相関数φ(x,y)を求めるための式は、
Figure 0004205704
となる。
Figure 0004205704
もう一つの例は、事前較正された基準振幅関数を用いて、上式のようにα(x,y)とβ(x,y)を選ぶ方法である。このとき、復調された振動成分の複素表示から基準位相関数φ(x,y)を導出する式は
Figure 0004205704
となる。この形にすると、
Figure 0004205704
特に、完全偏光の時にこれは、(偏光状態によらず)常に被測定光の光強度の自乗S (x,y)に一致する。つまり、被測定光に十分な光強度さえあれば、式(3.17)を使えば常にφ(x,y)は安定して求められることとなる。
E.φ (x,y)の計算
φ(x,y)については、φ(x,y)と同様の揺らぎをしていると考えられるため、φ(x,y)の測定値から比例計算など(φ(x,y)とφ(x,y)の関係)を使って求めることができる。
F.基準複素関数の計算
1.4節「ストークスパラメータの2次元空間分布復調の手順」のStep2での復調において、(「振幅と位相の組」ではなく)「複素表示」を求めた場合には、最終的にストークスパラメータの2次元空間分布を求めるためのStep3の作業の際に必要となるのは、基準位相関数φ(x,y),φ(x,y)ではなく、基準複素関数K(x,y),K(x,y),K(x,y),K(x,y)になる。しかし、これらも、上記Eまでの手順で基準位相関数φ(x,y),φ(x,y)が求まっていれば、式(1.18a)〜(1.18d)の関係を利用して直ちに求められる。
本節で述べた撮像偏光計測方法は、以下のようにまとめることができる。いずれの場合も、φ(x,y)とφ(x,y)との間の関係を示すデータが利用可能とされていることが前提である。
本節の撮像偏光計測方法は、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計の光学系(偏光撮像装置)に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも1つを求め、φ(x,y)とφ(x,y)との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、φ(x,y)及びφ(x,y)を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
より具体的には、本節の方法Aの撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも1つを求め、求めた成分[3]からφ(x,y)を求め、φ(x,y)とφ(x,y)との間の関係を示すデータ並びに求めたφ(x,y)からφ(x,y)を求め、求めた各光強度分布成分、φ(x,y)及びφ(x,y)を用いて偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。方法Aは、被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y)が0又は0に近い値でない場合に好適な実施形態である。
本節の方法Bの撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも2つを求め、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち求めた少なくとも2つの成分からφ(x,y)を求め、φ(x,y)とφ(x,y)との間の関係を示すデータ並びに求めたφ(x,y)からφ(x,y)を求め、求めた各光強度分布成分、φ(x,y)及びφ(x,y)を用いて偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。方法Bは、被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y)及びS(x,y)の両方が0又は0に近い値である場合以外の場合に好適な実施形態である。
本節の方法C及びDの撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも2つを求め、求めた成分[3]からφ(x,y)を求める第1の手順と、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち求めた少なくとも2つの成分からφ(x,y)を求める第2の手順とのいずれかを選択してφ(x,y)を求め、又は第1の手順と第2の手順とを組み合わせてφ(x,y)を求め、φ(x,y)とφ(x,y)との間の関係を示すデータ並びに求めたφ(x,y)からφ(x,y)を求め、求めた各光強度分布成分、φ(x,y)及びφ(x,y)を用いて偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。方法C及びDは、第1の手順と第2の手順とを適切に選択し、又は適切に組み合わせることにより、被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y)、S(x,y)及びS(x,y)のすべてが同時に0又は0に近い値とさえならなければ計測が可能な実施形態である。
本節の撮像偏光計測方法において、検光子Aの透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアBPPの主軸の方向に対して45°となるように配置された場合には光強度分布の成分[5]は現れなくなるので、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも1つ又は2つを求める部分では、成分[2]及び成分[4]のうち少なくとも1つ又は2つを求めればよい。
3.2 「測定中」に基準位相関数を較正する方法(その2)
3.2.1 基本的な考え方
前節3.1で述べたのと同じ考え方で、基準位相関数の「変化量のみ」を求めることもできる。以下、便宜上「事前較正」、「初期値」という用語を用いるが、較正の時期は被測定光の測定よりも時間的に前であることは必要ではない。したがって、基準位相関数の初期値は、より一般的には基準位相関数の較正用基準値として把握される。また、基準位相関数の較正用基準値として、実測値ではない適当な値を使用することもできる。
先の(前節3.1での)方法では、事前較正では「基準振幅関数」を求めており、「基準位相関数」については、特に求める必要はなかった。ところが、3.2節からわかるように、両者はほぼ同時に較正することができる。そこで、「事前較正で基準位相関数の初期値」を求めておき、測定中はその変化量だけを追うようにすることもできる。
その場合のメリットとしては、
・撮像素子や信号処理系などの特性などによってつくかもしれない若干の付加的な位相ずれの部分が、取り除ける。
・面倒な位相アンラッピングが不要となる。
・位相の変動量自体が小さいため、計算のダイナミックレンジを小さくできる。また、この結果として、多くの場合、計算誤差を相対的に小さくできる。
などがある。
従って、「基準位相関数の変化量のみを求めること」は、意味がある。
説明を補足すれば、図11に示されるように、φよりφを計算するについては、2つの手法では誤差要因が異なる。すなわち、図11(a)に示されるように、φ(x,y)からφ(x,y)を求めるについては、アンラッピングを行うことが必要となる。このアンラッピングは、誤差の大きな要因となる。特に、周期がサンプリングに比較して高周波のときやノイズの乗っているとき等においては、誤ったアンラッピングを行うことがある。アンラッピングを誤ると誤差は2πの整数倍となり、誤った位相を算出することになる。また、この誤差は広い範囲に影響を及ぼす。この差異は、本質的には、偏角を求めるarg演算子(或いはarctan演算子)の解に2πの整数倍の不定性があること、に起因している。これに対して、図11(b)に示されるように、Δφ(x,y)からΔφ(x,y)を求めるについては、基準位相関数の初期値からの変化量Δφ(x,y)は小さいため、アンラッピングを行う必要がない。そのため、計算誤差を相対的に小さくできる。
3.2.2 準備
この「測定中の計測法」を使うには、「基準振幅関数」と「基準位相関数」の両者とも事前較正しておくことが前提となる。なお、位相に関しては、変動分−誤差分−を後に補正できるため、それほど精度良く求めておく必要はない。
また、「基準位相関数の変化量」Δφ(x,y)とΔφ(x,y)の関係も事前に求めておく必要がある。これには、
・例1:φ(x,y)とφ(x,y)の関係をそのまま使う。
・例2:実際に揺らぎ(例えば温度変化)を与えて、それでΔφ(x,y)とΔφ(x,y)の関係を求める。
のようないくつかの手がある。
3.2.3 実際の較正方法
較正方法の基本的な考え方は、3.1節と全く同じである。従って、3.1.3節で述べたA〜Eの全てに対応する計算方法が存在する。そこで以下では、考え方は違いのみ示し、計算式の列挙を中心に述べることとなる。
初めに、記号をいくつか定義しておく。事前較正によって求まる基準位相関数をφ (i)(x,y),φ (i)(x,y)とすることとする。それに対応する基準複素関数は、式(1.18a)〜(1.18d)より
Figure 0004205704
となる。さて、測定中に基準位相関数が
φ(x,y)=φ (i)(x,y)+Δφ(x,y) (3.20a)
φ(x,y)=φ (i)(x,y)+Δφ(x,y) (3.20b)
へと変化したとする。以下、この基準位相関数の変化量Δφ(x,y),Δφ(x,y)、あるいは、それに相当する基準複素関数の変化を求める方法について説明する。
A.振動成分[3]より基準位相関数φ (x,y)を求める方法
前節の方法Aで述べたように、成分[3]の位相は
δ(x,y)=φ(x,y)
=φ (i)(x,y)+δφ(x,y) (3.21)
となる。そこで、φ(x,y)の変化量は
Δφ(x,y)=δ(x,y)−φ (i)(x,y) (3.22)
として求められる。すなわち、成分[3]の位相δ(x,y)が測定されれば、基準位相関数の一方の変化量δφ(x,y)が直ちに決められることを意味している。
なお、Step2において、「振幅と位相の組」ではなく、「複素表示」を求めた場合には、
Figure 0004205704
とすれば求められる。
B.複数の振動成分([2]と[4]の組など)より、基準位相関数φ (x,y)を求める方法
振動成分[2]と[4]各々の成分の位相から求める方法では、φ(x,y)の変化量を求める式は
Figure 0004205704
となる。
「振幅と位相の組」ではなく、「複素表示」を使う場合においては、
Figure 0004205704
として求めることができる。あるいは、上式を簡単な複素関数の公式で書き換えて
Figure 0004205704
を利用しても良い。なお、3.1.3節最後に注記したのと同様に、もう一つの項を利用する場合においても、上記と同じ考え方が利用できる。
C.AとBの組み合わせ
前節で述べた場合と同様に、基準位相関数の「変化量」のみを求める場合でも、方法AとBの適応的な組み合わせは効果的である。なお、内容は前節と全く同じなので省略する。
D.AとBの組み合わせ(その2)
変化量のみを求める場合の計算式として望ましいものの一つは、
Figure 0004205704
である。このとき、arg[α(x,y)]=arg[β(x,y)]=2φ(x,y)であるため、
Figure 0004205704
特に、完全偏光の時にこれは、(偏光状態によらず)常に被測定光の光強度の自乗S (x,y)になる。つまり、被測定光に十分な光強度さえあれば、上式によって常にΔφ(x,y)は安定して求められることとなる。
E.Δφ (x,y)の計算
Δφ(x,y)については、Δφ(x,y)と同様の揺らぎをしていると考えられるため、Δφ(x,y)の測定値から比例計算など(Δφ(x,y)とΔφ(x,y)の関係)を使って求めることができる。
F.基準複素関数の計算
各振動成分をStep2で復調する際に「振幅と位相の組」ではなく、「複素表示」を求めた場合に、最終的にストークスパラメータの2次元空間分布を求める(Step3の作業)の際に必要となるのは、基準位相関数φ(x,y),φ(x,y)ではなく、基準複素関数K(x,y),K(x,y),K(x,y),K(x,y)になる。
上記Eまでの手順で基準位相関数の変化量Δφ(x,y),Δφ(x,y)が求まっていれば、これらは、
Figure 0004205704
として、直ちに求められる。
本節で述べた撮像偏光計測方法は、以下のようにまとめることができる。いずれの場合も、第1の基準位相関数の較正用基準値φ (i)(x,y)及び第2の基準位相関数の較正用基準値φ (i)(x,y)並びにΔφ(x,y)とΔφ(x,y)との間の関係を示すデータが利用可能とされていることが前提である。
本節の撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも1つを求め、φ (i)(x,y)、φ (i)(x,y)、Δφ(x,y)とΔφ(x,y)との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、Δφ(x,y)及びΔφ(x,y)を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
より具体的には、本節の方法Aの撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも1つを求め、求めた成分[3]を用いてΔφ(x,y)を求め、求めたΔφ(x,y)を用いてΔφ(x,y)を求め、求めた各光強度分布成分、Δφ(x,y)及びΔφ(x,y)を用いて偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
本節の方法Bの撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも2つを求め、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち求めた少なくとも2つの成分を用いてΔφ(x,y)を求め、求めたΔφ(x,y)を用いてΔφ(x,y)を求め、求めた各光強度分布成分、Δφ(x,y)及びΔφ(x,y)を用いて偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
本節の方法C及びDの撮像偏光計測方法は、偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた光強度分布を用いて、光強度分布の成分[1]及び成分[3]を求め、かつ、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも2つを求め、求めた成分[3]を用いてΔφ(x,y)を求める第1の手順と、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち求めた少なくとも2つの成分を用いてΔφ(x,y)を求める第2の手順とのいずれかを選択してΔφ(x,y)を求め、又は第1の手順と第2の手順とを組み合わせてΔφ(x,y)を求め、求めたΔφ(x,y)を用いてΔφ(x,y)を求め、求めた各光強度分布成分、Δφ(x,y)及びΔφ(x,y)を用いて偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである。
本節の撮像偏光計測方法において、検光子Aの透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアBPPの主軸の方向に対して45°となるように配置された場合には光強度分布の成分[5]は現れなくなるので、成分[2]、成分[4]及び成分[5]のうち少なくとも1つ又は2つを求める部分では、成分[2]及び成分[4]のうち少なくとも1つ又は2つを求めればよい。
第4章測定中較正が可能であることの一般的な証明
前章で説明した様に、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法では、「測定中に(測定と並行して)」基準位相関数、もしくはその変化量を較正(あるいは補正)することができる。ただし前章の説明では、周波数フィルタリングを使った信号処理法を利用すること、すなわち撮像素子から得られた光強度分布より異なる周期で振動する擬似正弦的な成分を分離することをその前提としていた。ところがこの周波数フィルタリングは、「測定中の較正」の実現において、実は必須なステップではない。発明者らは、ほかの復調法、すなわちほかの信号処理法においても、測定中の基準位相関数の較正が可能であることを見いだした。
このことを示すために、まず本章では、複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法において、なぜ測定中の較正が可能であるかを、「具体的な信号処理法の手順」を限定せずに説明する。さらに次の章で、「周波数フィルタリングを利用しない、測定中の較正法」の具体的な例として、「一般化逆行列を利用する方法」を示す。
4.1 撮像素子から得られる光強度分布と基準位相関数φ (x,y),φ (x,y)の関係
まず始めに、撮像素子から得られる光強度分布と基準位相関数の関係を、干渉の考え方を使って説明する。図25の下方において、平行に走る上下2本の線は、それぞれ、互いに直交する直線偏光成分の経路を表す。ただし、複屈折プリズムペアBPPとBPPの中での各々の直線偏光の方向は、それぞれの素子の主軸の方向に沿って取るものとする。複屈折プリズムペアBPPに左から入った光は、x,y各偏光成分E(x,y),E(x,y)に分かれて、それぞれBPPの方位0°方向と90°方向を向く2つの主軸に沿った成分として伝搬する。BPPを射出した2つの直線偏光成分は、BPP入射前に主軸方位が45°回転され、この際に偏光成分の一部が交換される。この光は、BPPの45°方向と135°方向を向く2つの主軸に沿った成分に再配分され、BPPを透過する。BPPを射出した2つの成分は、検光子Aにおいて重ね合わされ、撮像素子に入射する。
この図の経路をたどるとすぐにわかるように、入射端から撮像素子までには、下記に示す計4本の経路が存在する。
・E(x,y)→BPP0°方向の主軸→BPP45°方向の主軸→撮像素子
・E(x,y)→BPP0°方向の主軸→BPP135°方向の主軸→撮像素子
・E(x,y)→BPP90°方向の主軸→BPP45°方向の主軸→撮像素子
・E(x,y)→BPP90°方向の主軸→BPP135°方向の主軸→撮像素子
撮像素子では、この4つの成分が重ね合わされ、互いに干渉する。干渉項の位相は、これらの4成分間から取り出した任意の2成分間の位相差から決まる。その可能な組を全て列挙すると、

φ(x,y)
(x,y)−δ(x,y)}
φ(x,y)−{φ(x,y)−δ(x,y)}
φ(x,y)+{φ(x,y)−δ(x,y)}
となる。ただし、δ(x,y)は、被測定光のx,y偏光成分間の位相差、すなわち
δ(x,y)=arg[E(x,y)]−arg[E(x,y)]
=arg[S23(x,y)] (4.1)
である。撮像素子で発生される光強度分布には、結果として上記5通りの位相差に対応した振動成分が含まれることとなる。(ただし、1.2節で述べたように、BPPとAの交差角が45°となっている場合には、{φ(x,y)−δ(x,y)}に依存する項はうち消されるので、光強度分布の中には生じない。)
ここで、光強度分布の中に現れる位相差の組み合わせにおいて、φ(x,y)とφ(x,y)の出現の仕方を調べてみる。φ(x,y)は常に、被測定光のx,y偏光成分間の位相差δ(x,y)=arg[S23(x,y)]との差、すなわち、{φ(x,y)−δ(x,y)}として現れている。一方φ(x,y)は、単独、ないしは{φ(x,y)−δ(x,y)}との和および差として現れる。この事実より、下記が分かる。
φ(x,y)に関しては、被測定光の偏光状態が未知の場合には、撮像素子から得られた光強度分布のみからでは、直接にはその値を求めることはできない。なぜなら、求めることが可能なのは、{φ(x,y)−δ(x,y)}としてのみであり、被測定光のx,y偏光成分間の位相差δ(x,y)が未知の場合にはφ(x,y)を特定することはできないからである。
一方、φ(x,y)に関しては、φ(x,y)の様な制約はない。φ(x,y)は、単独で含まれる項がある。あるいは、{φ(x,y)−δ(x,y)}との和と差の両方があるので、それらの平均を取っても良い。すなわち、撮像素子から得られた光強度分布の中に含まれるφ(x,y)は、被測定光の偏光状態、特に、x,y偏光成分間の位相差δ(x,y)がいかなる値を取っていても、常に確定させることができる。これはすなわち、φ(x,y)については、測定と並行した較正ができることを意味している。
なお、一旦φ(x,y)が求まれば、φ(x,y)も間接的に求められる場合が多い。なぜなら、φ(x,y)とφ(x,y)には、同様の外乱が加わっている場合が多く、かつ、両者の関係が事前にわかっている場合も多いからである。すなわち、φ(x,y)が一度撮像素子からの光強度分布より確定されてしまえば、事前にわかっている両者の関係より、φ(x,y)も確定できることになるのである。
上記で得られた基本原理をまとめると、下記のようになる。
・適当な信号処理を施せば、撮像素子から得られる光強度分布よりφ(x,y)を、被測定光の偏光状態に無関係に、すなわち被測定光の偏光状態に関する先見情報を用いることなく復調できる。
・φ(x,y)とφ(x,y)の関係を利用すれば、間接的にではあるが、φ(x,y)も被測定光の偏光状態によらずに復調できる。
なお、ここで注意すべきは、方程式の立て方によっては、見かけ上は必ずしも、φ(x,y)がφ(x,y)より先に求まるとは限らないことである。φ(x,y)とφ(x,y)の関係が事前に与えられており、かつそれも含めて方程式が立てられている場合には、(少なくとも数式の表現上では、)両者が同時、あるいはφ(x,y)がφ(x,y)より先に求まる様な表記となることもあり得る。
4.2 測定系の位相属性関数
前節では、基準位相関数φ(x,y)が、被測定光の偏光状態によらずに求められることを示した。ここでこの原理は、φ(x,y)そのものを直接求めねばならないことを意味しているのではない。たとえば、初期値φ (i)(x,y)がわかっているときに、それからの変化量Δφ(x,y)を求めることも同様に含まれる。あるいは、基準位相関数φ(x,y)などを含む量、たとえばK(x,y),cosφ(x,y),cosΔφ(x,y)なども、測定中に求めることができる。
さらに、φ(x,y)とφ(x,y)の関係が事前にわかっているのであれば、φ(x,y)やその変化量Δφ(x,y)などを含む式、たとえば、K(x,y),K(x,y),cos[φ(x,y)−φ(x,y)],cos[Δφ(x,y)−Δφ(x,y)]なども全て測定中に較正でき、これらを使ってストークスパラメータの2次元空間分布、あるいはそれに類する偏光パラメータを同時に測定することができる。
以下、この様に、基準位相関数φ(x,y)やφ(x,y)、あるいは、それらの基準値からの変化量と、直接ないし間接的に関係づけられていて、さらに複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測系のパラメータのみで決まる関数のことを、その測定系の位相属性関数と呼ぶこととする。撮像素子から得られる光強度分布から被測定光の偏光状態の2次元空間分布を復調する際には、位相属性関数のいくつかが必要であるが、そのほかに基準振幅関数のような基準位相関数には依存しない関数が必要な場合もある。複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測系のパラメータのみで決まり、偏光状態の2次元空間分布を復調するのに十分な関数の組のことを総称して測定系の属性関数の組と呼ぶこととする。
この言葉を使うと本発明は、「偏光状態の2次元空間分布を復調するのに十分な属性関数の組のうちの位相属性関数の組を、偏光測定と並行して較正する方法を提供している」と言える。
さて、これまでの議論を踏まえると、測定系の位相属性関数を撮像素子から得られた光強度分布から求めるのに、「陽な」周波数フィルタリング処理は必ずしも必須でないことがわかる。たしかに、信号処理においては、光強度分布に含まれるいくつかの成分を分離する作業がかならず含まれるが、その分離は「必ずしも擬似正弦的な成分の周期」を基準にして行う必要はない。必要なのは、φ(x,y)ないしその変化量に関連した量を抽出できるのに十分な分離をすれば良いだけなのである。
第5章 一般化逆行列を利用した、測定中較正法
本章では、周波数フィルタリングを使わない、すなわち、撮像素子で得られた光強度分布からの擬似正弦的な振動成分の分離を行わない、位相属性関数の測定中較正ならびにストークスパラメータの2次元空間分布の復調法の具体例の一つとして、一般化逆行列を用いる方法を示す。
5.1 行列表示
いま、何らかの事前較正によって求まる基準位相関数を、φ (i)(x,y)およびφ (i)(x,y)とする。測定中に基準位相関数が
φ(x,y)=φ (i)(x,y)+Δφ(x,y) (5.1a)
φ(x,y)=φ (i)(x,y)+Δφ(x,y) (5.1b)
へと変化したとする。以下、この基準位相関数の変化量Δφ(x,y),Δφ(x,y)、あるいは、それに相当する基準複素関数の変化を求める方法について説明する。
上式を式(1.5)に代入すると、
Figure 0004205704
が得られる。ただし、
Figure 0004205704
である。
ところで、実際の測定では、ディジタル化された測定値を用いるため、2次元空間座標は離散化される。そのx,y方向それぞれの離散化点数をM,N、離散化された2次元空間座標を、x,y(m=1…M,n=1…N)とする。すると、式(5.3)は、
Figure 0004205704
と書き表すことができる。この式の意味するところは、光強度分布I(x,y)が、ストークスパラメータの2次元空間分布と基準位相関数の変化量を含む変数群p(x,y),p(x,y),p(x,y),qss(x,y),qcc(x,y),qsc(x,y),qcs(x,y)の線形和となっていることである。従って、これは、行列の形で書くことができる。その書き方の例として、下記を挙げておく。
P=RQ (5.6)
ただし、列ベクトルP(MN行)、Q(7MN行)の要素は、m=1…M、n=1…Nにおいて、l=(m-1)N+nとして
=I(x,y) (5.7a)
(7l−6)=p(x,y) (5.7b)
(7l−5)=p(x,y) (5.7c)
(7l−4)=p(x,y) (5.7d)
(7l−3)=qss(x,y) (5.7e)
(7l−2)=qcc(x,y) (5.7f)
(7l−1)=qsc(x,y) (5.7g)
(7l)=qcs(x,y) (5.7h)
となり、一方行列R(MN行7MN列)の要素は、m=1…M,n=1…Nにおいて
l(7l−6)=1 (5.8a)
l(7l−5)=cos[φ (i)(x,y)] (5.8b)
l(7l−4)=sin[φ (i)(x,y)] (5.8c)
l(7l−3)
=sin[φ (i)(x,y)]sin[φ (i)(x,y)] (5.8d)
l(7l−2)
=cos[φ (i)(x,y)]cos[φ (i)(x,y)] (5.8e)
l(7l−1)
=sin[φ (i)(x,y)]cos[φ (i)(x,y)] (5.8f)
l(7l)=cos[φ (i)(x,y)]sin[φ (i)(x,y)] (5.8g)
のみ値を持ち、残りの要素は0である。なお、この選び方では、全ての要素が実数となっていることを注意しておく。
複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計の特性を行列で表示する仕方には、ここに挙げた以外にも無数に存在し得る。下記の条件を満たしているものであれば、どのような表現でも良い。
条件1 左辺の列ベクトル(上記の例ではP)は、撮像素子で得られた光強度の2次元空間分布に関する情報を列挙したものであること。
条件2 右辺の列ベクトル(上記の例ではQ)は、被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布、ならびに測定系の位相属性関数などを含む情報を列挙したものであること。
条件3 右辺の行列(上記の例ではR)は、左辺と右辺の列ベクトルの関係を完全に関係づける線形和となっており、かつその全ての要素は、復調前に確定していること。(仮の較正値などを使っていても良い。)なお、上記の例では、一つのPの要素に関連づけられたQの要素は、他のPの要素には関係しないこととなっているが、これは必須ではない。むしろ、光学系の構成や理論式の近似の取り方などによっては、こうならない場合、すなわち、ある一つの座標(x,y)での光強度分布が、他の(その回りの)座標のストークスパラメータの2次元空間分布などと関係を持つ場合もあり得る。
5.2 一般化逆行列による逆変換
上記の議論からわかるように、式(5.6)は、線形連立方程式をあらわしている。なぜなら、左辺の列ベクトルPは、光強度分布の測定で決まり、一方右辺の行列Rは、測定前に確定しているからである。この線形連立方程式を解けば、右辺の列ベクトルQ(未知)を決めることができる。ただし、一般に、Pの要素の数に比べて、Qの要素はかなり多い。(上記の例では7倍である。)このため、行列Rは、逆行列を持たない。
このような場合に行列で書かれた線形連立方程式を解く方法として、一般化逆行列を使う方法がある。次の4つの条件を満たす様な行列XをRの一般化逆行列と言い、Rで表す。
RXR=R (5.9a)
XRX=X (5.9b)
(RX)=RX (5.9c)
(XR)=XR (5.9d)
ただし、行列に付けられた上付き添え字*は、共役転置行列を表す。なお、このようなXはどのようなRに対しても必ず存在し、しかもRに対し一意に定まる。なお、具体的にRからRを算出する数値計算の方法は、種々の方法が提案されている。(参考文献:戸川隼人、「マトリクスの数値計算」、オーム社、1971年、page 46)
そして、この一般化逆行列Rを使うと、式(5.6)の右辺に含まれる列ベクトルQの未知の各要素を、下式により決定することができる。
Q=RP (5.10)
これはすなわち、ストークスパラメータの2次元空間分布と基準位相関数の変化量を含む変数群p(x,y),p(x,y),p(x,y),qss(x,y),qcc(x,y),qsc(x,y),qcs(x,y)(ただし、m=1…M,n=1…N)が求められることを意味する。
なお、前節の最後に書いたような、別の行列表記を用いた場合であっても、該当する一般化逆行列を用いれば、「被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布、ならびに測定系の位相属性関数などを含む情報を列挙したもの」が確定できる。
この一般化逆行列で求められる各要素は、撮像素子から得られる光強度分布中に含まれる擬似正弦的に振動する各成分と1対1対応している訳ではない。たとえば、上記導出過程から明らかなように、qss(x,y),qcc(x,y),qsc(x,y),qcs(x,y)の各々は、φ(x,y)−φ(x,y)とφ(x,y)+φ(x,y)に関係する2つの擬似正弦成分の両方に関連している。
すなわち、この一般化逆行列の計算による要素の分離は、フーリエ変換法などで行われる周波数フィルタリングによる擬似正弦的な周期成分の分離とは、1体1での対応はしていない。
5.3 位相属性関数の復調
次に、列ベクトルQの要素から、位相属性関数を求める。
前章に一般論として述べたように、
・撮像素子から得られた光強度分布の中に含まれている情報から、φ(x,y)(あるいはそれによって決まる関数)が被測定光の偏光状態とは無関係に求められる。
・φ(x,y)とφ(x,y)の関係(先見情報)を使えば、φ(x,y)のみならずφ(x,y)が、さらには両者に関連する関数が、被測定光の偏光状態とは無関係に求められる。
従って、一般化逆行列を使って得られた列ベクトルQの要素に、さらに方程式を立てて解けば、φ(x,y)とφ(x,y)、ないしそれと等価な関数、すなわち位相属性関数を求めることができる。さらに、その結果を連立して解くと、被測定光の偏光状態が決定できる。
さて、列ベクトルQの各要素が、式(5.7b)〜(5.7h)で与えられる場合の、具体的な計算式の例を下記に挙げる。結果のみの表示となるが、極力、第3章に説明した方法に対応させて示す。
A. S (x,y)≠0の場合に有効な、Δφ (x,y)を求める方法
列ベクトルQのうち、p(x,y)とp(x,y)は、
Figure 0004205704
として計算することができる。ここで、上式の逆正接中の分母、分子は、ともに被測定光のS(x,y)に比例している。従って、S(x,y)が0で無い限り、上式でΔφ(x,y)が求められる。
B. S (x,y)≠0またはS (x,y)≠0の少なくともいずれか一方が成立している場合に有効な、Δφ (x,y)を求める方法
列ベクトルQの成分のうち、上記A.で使わなかったものからも、
Figure 0004205704
があることがわかる。上式の逆正接の中の分母、分子は、ともに、被測定光のS (x,y)+S (x,y)に比例している。従って、S(x,y)とS(x,y)の両方が同時に0にならない限り、上式でΔφ(x,y)が求められる。
C. AとBの組み合わせ
3章で述べた場合(周波数フィルタリングを用いる場合)と同様に、方法AとBの適応的な組み合わせは効果的である。なお、処理は前と全く同じなので省略する。
D. S ,S ,S の全てが同時に0にならない限り有効な、Δφ (x,y)を求める方法
列ベクトルQに含まれる要素の、さらに別の組み合わせより、
Figure 0004205704
が導き出される。上式の逆正接の中の分母、分子は、ともにm (x,y)S (x,y)+m(x,y)m(x,y)[S (x,y)+S (x,y)]に比例している。従って、被測定光のS(x,y)、S(x,y)、S(x,y)の全てが同時に0にならない限り、上式でΔφ(x,y)が求められる。
なお、S(x,y)=S(x,y)=S(x,y)=0というのは、被測定光が無偏光の場合であり、この場合は位相属性関数の較正自体が不要である。なぜなら、偏光度(すなわち0)のみが意味のある情報となるからである。
E. Δφ (x,y)の計算
Δφ(x,y)については、Δφ(x,y)と同様の揺らぎをしていると考えられるため、Δφ(x,y)の測定値から比例計算など(Δφ(x,y)とΔφ(x,y)の関係)を使って求めることができる。
F. ストークスパラメータの2次元空間分布の復調
得られた、Δφ(x,y)とΔφ(x,y)を使って、p(x,y),p(x,y),p(x,y),qss(x,y),qcc(x,y),qsc(x,y),qcs(x,y)より被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布S(x,y),S(x,y),S(x,y),S(x,y)を決定する。たとえば下記の関係式を使えばよい。
Figure 0004205704
以下に、本発明の好適な実施例を図12〜図18を参照しつつ、詳細に説明する。撮像偏光計測装置の一実施例の構成図が図12に示されている。同図に示されるように、この装置は、投光側ユニット200と受光側ユニット300とを備えている。なお、400は試料である。
投光側ユニット200は、電源201と、電源201から給電されて点灯する光源202と、光源202の出射方向前面側に配置されたピンホール板203と、ピンホール板203のピンホール通過光を平行光化するコリメートレンズ204と、コリメートレンズ204の前面側にあって通過光を開閉するシャッタ205と、シャッタ通過光が入射される偏光子206とを含んでいる。
偏光子206を通過後の光は投光側ユニット200から出射されて、試料400へと照射される。試料400を透過又は試料400で反射された光は、受光側ユニット300へと入射される。
受光側ユニット300内における入射光路上には、結像レンズ301と偏光撮像装置310とが配置されている。この偏光撮像装置301は、2組の複屈折プリズムペア302a、302bと、検光子303と、CCD撮像素子304とが順に介在するように構成されている。受光側ユニット300はさらに、CCD撮像素子304の受光出力をデジタル信号に変換するA/D変換器305とを含んでいる。A/D変換器305から得られるデジタル受光出力信号は、CCD撮像素子304から取り出され、これがパソコン(PC)等のコンピュータ306にて処理される。
周知の通り、コンピュータ306は、マイクロプロセッサ等で構成される演算処理部306aと、ROM,RAM,HDD等で構成されるメモリ部306bと、ディスプレイ,プリンタ,各種データ出力装置,通信装置等で構成される測定結果出力部306cとを含んでいる。
なお、本実施形態においては上述のように投光側ユニットと受光側ユニットとを別体として構成としたが、投光側ユニットと受光側ユニットとを一体化しても良い。また、光源202については、単一波長の光を発するものであれば良い。その例としては、レーザ、白色ランプ+干渉フィルタ、輝線スペクトルを持つランプ+色フィルタ、等が挙げられる。
図13には、図12における偏光撮像装置310の断面図が示されている。同図にて示されるように、複屈折プリズムペア302aの前面側にはガラス板307が配置されており、検光子303とCCD撮像素子304との間には、スペーサ308とカバーガラス309とが配置されている。このような構成により、撮像素子と一体化した極めてコンパクトな偏光撮像装置を実現することができる。
次に、事前較正手順のフローチャートが図14に示されている。同図に示されるように、事前較正手順として、先ず、ステップ1401では、装置(この場合、受光側ユニット300)に対して、ストークスパラメータの2次元空間分布が既知の光を入射させる。なお、ストークスパラメータの2次元空間分布が既知の光を発生させるには、例えば、装置図中の偏光子206を回転して所望の方位に合わせればよい。
次に、ステップ1402では、撮像素子にて透過光の2次元空間光強度分布を計測する。このとき、不要な光、例えば迷光の影響を低減させるのにはシャッタ205を活用することができる。具体的には、シャッタ開と閉それぞれの状態で測定された光強度分布の差をとれば、不要光分の光強度分布は相殺される。
次に、ステップ1403では、透過光の2次元空間光強度分布を撮像素子よりコンピュータ306に転送して演算処理部306aにおける演算に供する。
次に、ステップ1404では、演算処理部306aの作用により、基準位相関数と基準振幅関数とが算出される。
次に、ステップ1405では、算出した基準位相関数と基準振幅関数がメモリ部306bに保存され、これにより事前較正手順が完了する。
次に、測定手順のフローチャートが図15に示されている。同図に示されるように、測定手順として、先ず、ステップ1501においては、装置に被測定光を入射させる。このとき、試料400での透過や反射に伴う偏光変化を調べることが計測の目的である場合には、先ず、試料400に既知の偏光状態を持つ光を照射し、次に試料400を透過乃至反射した光を当該装置(受光側ユニット300:偏光計)に入射させればよい。
次に、ステップ1502では、撮像素子304にて透過光の2次元空間光強度分布を計測する。このとき、不要な光、例えば迷光の影響を低減させるのにはシャッタ205を活用することができる。具体的には、シャッタ開と閉それぞれの状態で測定された光強度分布の差をとれば、不要光分の光強度分布は相殺される。
次に、ステップ1503では、透過光の2次元空間光強度分布を撮像素子304よりコンピュータ306へと転送して、演算処理部306aにおける処理に供する。
次に、ステップ1504では、コンピュータ306において、演算処理部306aはメモリ部306bより基準位相関数と基準振幅関数とを取得する。
次に、ステップ1505では、コンピュータ306において、演算処理部306aは測定した2次元空間光強度分布、及び基準位相関数・基準振幅関数を用いて、基準位相関数の変化量(Δφ及びΔφ)を算出する。
次に、ステップ1506では、コンピュータ306において、演算処理部306aは測定した2次元空間光強度分布及び基準位相関数・基準振幅関数の変化量を用いて、被計測光のストークスパラメータの2次元空間分布を算出する。
次に、ステップ1507では、コンピュータ306において、演算処理部306aは被測定光のストークスパラメータの2次元空間分布を出力する。このとき、測定結果出力部306cとしては、メモリ、ハードディスク、他の処理部(楕円率角、方位角算出部等)などを挙げることができる。
以上説明したように、この実施例の撮像偏光計測装置においては、図12に示されるシステム構成において、図14に示される事前較正手順並びに図15に示される測定手順を経ることにより、被測定光に関するストークスパラメータを算出するものである。
次に、具体的な実験結果例を図16〜図18を参照しつつ説明する。この実験においては、まず、基準位相関数などの事前較正をした。次に、約3℃ずつ温度を上げ、3回測定を行った。被測定光は、方位22.5°の直線偏光であり、測定領域内で、偏光状態は一定である。
図16および図17に楕円率角の測定結果を示すグラフが示されており、図16には事前較正のみの場合における測定結果が示されている。同図(a)には温度を3℃上昇させた場合の測定結果が、同図(b)には温度をさらに3℃(+6℃)上昇させた場合の測定結果が、そして同図(c)には温度をさらに3℃(+9℃)上昇させた場合の測定結果が示されている。そして、図17には事前較正に加え、測定中較正を行った場合における測定結果がそれぞれ示されており、図16同様に、図17(a),(b),(c)には温度を3℃、6℃、9℃上昇させた場合の測定結果がそれぞれ示されている。
図16にて示されるように、事前較正のみの場合には、温度の上昇に伴って、測定値がずれていくことがわかる。被測定光の偏光状態が一定であるにもかかわらず、温度とともに測定値がずれている。しかも、このずれ量は、位置(空間座標)によって異なっている。
一方、図17にて示されるように、事前較正に加えて、測定中の基準位相関数の変化量の補正(ΔφとΔφの測定中の補正)を行った場合には、温度変化によらず、測定領域全体にあってほぼ理想的な値(0°)が得られた。
さらに、図18(a)には図16にて示される事前較正のみを行った場合の測定結果を示すグラフの断面図が、そして同図(b)には図17にて示される事前較正に加えて測定中較正を行った場合の測定結果を示すグラフの断面図がそれぞれ示されている。同図にて明らかなように、事前較正のみではなく、測定中の較正(補正)を加えると、測定値が温度に左右されないことが明白である。
ここで、被測定光は、方位22.5度直線偏光であるため、楕円率角の測定値は理想的には位置(空間座標)によらず0となる筈である。図16〜18から明らかなように、事前較正のみであっては、温度上昇に伴い測定結果が変化しているのに対して、事前較正に加えて測定中較正を行うことによって、温度が上昇しても、測定結果は0°付近に分布していることが理解される。このことから、本発明の撮像偏光計測装置にあっては、温度変動に拘わらず、安定した計測結果が得られることがわかる。
本発明の前提となる複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法の原理説明図である。 本発明の前提となる複屈折プリズムペアを説明する図である。 撮像素子から得られる光強度分布とその4つの成分との関係を示す説明図(その1)である。 撮像素子から得られる光強度分布とその5つの成分との関係を示す説明図(その2)である。 ストークスパラメータの2次元空間分布復調の手順(信号処理の流れ)を示す説明図である。 Step 2の一つの例を示す説明図である。 フーリエ変換法の説明図である。 事前較正と偏光測定のフローチャートである。 測定中の、較正の信号の流れを示す説明図である。 「測定中の較正」及び「ストークスパラメータの2次元空間分布の測定」をあわせた信号の流れを示す説明図である。 測定中に基準位相関数を較正する方法(その1,2)の比較説明図である。 撮像偏光計測装置の一実施例の構成図である。 図12における偏光撮像装置の断面図である。 事前較正手順を示すフローチャートである。 測定手順を示すフローチャートである。 実験結果例(事前較正のみ)を示す図である。 実験結果例(事前較正+測定中較正)を示す図である。 実験結果例(測定結果の断面図)を示す図である。 本発明者等が先に提案した複屈折プリズムペアを用いた撮像偏光計測法の実験系の構成図である。 同実験系における撮像素子から得られた光強度分布を示す図である。 同実験系における測定された方位角と楕円率角を示すグラフである。 光強度分布の温度変化による位相ずれを説明するためのグラフである。 温度変化によるストークスパラメータの変動を説明するためのグラフである。 複屈折プリズムペアと撮像素子の間の相対的な位置ずれによる位相ずれを説明するためのグラフである。 光強度分布と基準位相関数の関係を説明する図である。
符号の説明
1 ヘリウム・ネオンレーザ
2 コリメータレンズ
3 ピンホール
4 コリメータレンズ
5 偏光子
6 ツイストネマティック液晶
7 測定系
8 結像レンズ
9 CCD撮像素子
10 コンピュータ
BPP 複屈折プリズムペア
BPP 複屈折プリズムペア
A 検光子
101 測定対象物
102 結像レンズ
103 複屈折プリズムペア
104 撮像素子
200 投光側ユニット
201 電源
202 光源
203 ピンホール板
204 コリメートレンズ
205 シャッタ
206 偏光子
300 受光側ユニット
301 結像レンズ
302a 複屈折プリズムペア
302b 複屈折プリズムペア
303 検光子
304 撮像素子
305 A/D変換器
306 コンピュータ
306a 演算処理部
306b メモリ部
306c 測定結果出力部
307 ガラス板
308 スペーサ
309 カバーガラス
310 偏光撮像装置
400 試料

Claims (17)

  1. 被測定光が順に透過する第1の複屈折プリズムペア、第2の複屈折プリズムペア及び検光子と、前記検光子を透過した光の2次元光強度分布を求める手段とを備え、
    前記各複屈折プリズムペアは、互いに頂角が等しいくさび状の2つの移相子が接合されて平行平板状となっており、かつ、接合された2つの移相子の速軸の方向が互いに直交している光学素子であり、
    第2の複屈折プリズムペアは、その主軸の方向と第1の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置され、
    検光子は、その透過軸の方向と第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置された、偏光撮像装置を用意するステップと、
    偏光撮像装置に被測定光を入射させて2次元光強度分布を求めるステップと、
    求められた光強度分布を用いて、測定系の位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求める演算ステップとを備えた撮像偏光計測方法であって、
    前記位相属性関数の組は、偏光撮像装置の特性によって規定される関数の組であって、第1の複屈折プリズムペアのリタデーションである第1の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数及び第2の複屈折プリズムペアのリタデーションである第2の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数を含み、それ自身のみで被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分であるような関数の組である、又はそれ自身と偏光撮像装置の特性によって規定される他の関数とを組み合わせると被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分な関数の組が得られるような関数の組である、撮像偏光計測方法。
  2. 前記検光子は、その透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向に対して45°となるように配置されたものである、請求項1に記載の撮像偏光計測方法。
  3. 前記演算ステップにおいて、
    前記位相属性関数の組は、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数であり、
    第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータが利用可能とされており、
    前記演算ステップは、
    求められた光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、
    第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項1に記載の撮像偏光計測方法。
  4. 前記演算ステップにおいて、
    前記位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))であり、
    第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))、並びに第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされており、
    前記演算ステップは、
    求められた光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、
    第1の基準位相関数の較正用基準値、第2の基準位相関数の較正用基準値、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項1に記載の撮像偏光計測方法。
  5. さらに、偏光撮像装置に偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータが既知である較正用の光を入射させて較正用の2次元光強度分布を求め、較正用の光の偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータ及び求めた較正用の光強度分布を用いて第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))を求めるステップを備え、それによりこれらの較正用基準値が利用可能とされる、請求項4に記載の撮像偏光計測方法。
  6. さらに、偏光撮像装置に偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータが既知である較正用の光を入射させて較正用の2次元光強度分布を求め、較正用の光の偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータ及び求めた較正用の光強度分布を用いて、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))、第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータを求めるステップを備え、それによりこれらの値が利用可能とされる、請求項4に記載の撮像偏光計測方法。
  7. さらに、偏光撮像装置に偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータが既知である較正用の光を入射させて較正用の2次元光強度分布を求め、較正用の光の偏光状態の2次元空間分布を示す各パラメータ及び求めた較正用の光強度分布を用いて第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータを求めるステップを備え、それにより第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータが利用可能とされる、請求項3に記載の撮像偏光計測方法。
  8. 前記較正用の光は直線偏光である、請求項5に記載の撮像偏光計測方法。
  9. 前記較正用の光は直線偏光である、請求項7に記載の撮像偏光計測方法。
  10. 前記演算ステップにおいて、
    2次元光強度分布に関する情報を含む第1のベクトルが、行列と、被測定光の偏光状態の2次元空間分布に関する情報及び前記位相属性関数の組に関する情報を含む第2のベクトルとの積によって表される関係が成り立つような前記行列の一般化逆行列の各要素の値が利用可能とされており、
    前記演算ステップは、
    求められた光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、
    前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、
    第2のベクトルに含まれる要素の値を用いて前記位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項1に記載の撮像偏光計測方法。
  11. 前記演算ステップにおいて、
    前記位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))であり、
    第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされており、
    さらに、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))から求められた前記行列の一般化逆行列が利用可能とされており、
    前記演算ステップは、
    求められた光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、
    前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、
    第2のベクトルに含まれる要素の値及び第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータを用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項10に記載の撮像偏光計測方法。
  12. 被測定光が順に透過する第1の複屈折プリズムペア、第2の複屈折プリズムペア及び検光子と、前記検光子を透過した光の2次元光強度分布を求める手段とを備え、
    前記各複屈折プリズムペアは、互いに頂角が等しいくさび状の2つの移相子が接合されて平行平板状となっており、かつ、接合された2つの移相子の速軸の方向が互いに直交している光学素子であり、
    第2の複屈折プリズムペアは、その主軸の方向と第1の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置され、
    検光子は、その透過軸の方向と第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向とが不一致となるように配置された、偏光撮像装置と、
    偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて、測定系の位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求める演算装置とを備えた撮像偏光計測装置であって、
    前記位相属性関数の組は、偏光撮像装置の特性によって規定される関数の組であって、第1の複屈折プリズムペアのリタデーションである第1の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数及び第2の複屈折プリズムペアのリタデーションである第2の基準位相関数(φ(x,y))に少なくとも依存する関数を含み、それ自身のみで被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分であるような関数の組である、又はそれ自身と偏光撮像装置の特性によって規定される他の関数とを組み合わせると被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるのに十分な関数の組が得られるような関数の組である、撮像偏光計測装置。
  13. 前記検光子は、その透過軸の方向が第2の複屈折プリズムペアの主軸の方向に対して45°となるように配置されたものである、請求項12に記載の撮像偏光計測装置。
  14. 前記演算装置において、
    前記位相属性関数の組は、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数であり、
    第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータが利用可能とされており、
    前記演算装置は、
    偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、
    第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数及び第2の基準位相関数を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項12に記載の撮像偏光計測装置。
  15. 前記演算装置において、
    前記位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))であり、
    第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))、並びに第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされており、
    前記演算装置は、
    偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて、位置変化に対して非周期振動性の第1の光強度分布成分及び位置変化に対して第2の基準位相関数に依存し第1の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第3の光強度分布成分を求め、かつ、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との差に依存する周波数で振動する第2の光強度分布成分、位置変化に対して第1の基準位相関数と第2の基準位相関数との和に依存する周波数で振動する第4の光強度分布成分及び位置変化に対して第1の基準位相関数に依存し第2の基準位相関数に依存しない周波数で振動する第5の光強度分布成分のうち少なくとも1つを求め、
    第1の基準位相関数の較正用基準値、第2の基準位相関数の較正用基準値、第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータ及び求めた各光強度分布成分を用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項12に記載の撮像偏光計測装置
  16. 前記演算装置において、
    2次元光強度分布に関する情報を含む第1のベクトルが、行列と、被測定光の偏光状態の2次元空間分布に関する情報及び前記位相属性関数の組に関する情報を含む第2のベクトルとの積によって表される関係が成り立つような前記行列の一般化逆行列の各要素の値が利用可能とされており、
    前記演算装置は、
    偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、
    前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、
    第2のベクトルに含まれる要素の値を用いて前記位相属性関数の組を求めるとともに被測定光の偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項12に記載の撮像偏光計測装置。
  17. 前記演算装置において、
    前記位相属性関数の組は、第1の基準位相関数の較正用基準値からの第1の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))並びに第2の基準位相関数の較正用基準値からの第2の基準位相関数の変化量(Δφ(x,y))であり、
    第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータが利用可能とされており、
    さらに、第1の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))及び第2の基準位相関数の較正用基準値(φ (i)(x,y))から求められた前記行列の一般化逆行列が利用可能とされており、
    前記演算装置は、
    偏光撮像装置に被測定光を入射させて求められた2次元光強度分布を用いて第1のベクトルの各要素の値を特定し、
    前記一般化逆行列と第1のベクトルとの積演算により第2のベクトルの各要素の値を求め、
    第2のベクトルに含まれる要素の値及び第1の基準位相関数の変化量と第2の基準位相関数の変化量との間の関係を示すデータを用いて、第1の基準位相関数の変化量及び第2の基準位相関数の変化量を求めるとともに偏光状態の2次元空間分布を示すパラメータを求めるものである、請求項16に記載の撮像偏光計測装置
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