JP4204831B2 - 有機ledパネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機LEDパネルとその製造方法にかかり、特に、フルカラー表示に適した有機LEDパネルとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラーフラットパネルディスプレイ用の素子として、有機LED素子が注目されている。有機LED素子は、蛍光性有機化合物を電気的に励起して発光させる自発光型素子であり、高輝度、高視野角、薄型、多色発光が可能であり、しかも数Vという低電圧の直流印加で駆動できることから表示素子の主流になり得る可能性が高いと言われている。
【0003】
図29の符号110は、カラー表示可能な有機LEDパネルを示している。
この有機LEDパネル110はカラス基板104を有している。ガラス基板104表面には、透明導電膜105と、ホール注入層106と、ホール輸送層107と、発光層111と、電子輸送層112と、カソード電極膜118とがこの順序で成膜されており、カソード電極膜118と透明導電膜105との間に直流電源130を接続し、カソード電極に負電圧を印加すると、発光層111内で可視光線が生成され、その可視光はガラス基板104を透過し、有機LEDパネル110の外部に放射されるようになっている。
【0004】
発光層111は、赤色を発光する赤色発光部111Rと、緑色を発光する緑色発光部111Gと、青色を発光する青発光部111Bとで構成されており、各発光部111R、111G、111Bの発光量を変えることで多色表示ができるようになっている。
【0005】
図28の符号100は、上記のような有機LEDパネル110を形成するための従来技術の有機蒸着装置の一例である。
【0006】
この有機蒸着装置100は、真空槽150を有しており、該真空槽150内部の底壁側には、2台の有機蒸発源1221、1222が配置されている。
真空槽150の天井側には基板ホルダ151が配置されている。
【0007】
符号155は、ガラス基板104の表面に透明導電膜105が形成された状態の成膜対象物を示している。この成膜対象物155のガラス基板104側を基板ホルダ151に密着させ、透明導電膜105側を有機蒸発源1221、1222に向ける。
【0008】
2台の有機蒸発源1221、1222のうち、一方の有機蒸発源1221にはホール注入層107を形成する有機材料が配置されており、他方の有機蒸発源1222内には、ホール輸送層107を形成する有機材料が配置されている。
【0009】
先ず、ホール注入層106の有機材料が配置された有機蒸発源1221から、その有機材料の蒸気を発生させ、基板ホルダ151側のシャッタ155と、有機蒸発源1221側のシャッタ1231を開けると、放出された有機材料の蒸気が透明導電膜105表面に付着し、ホール注入層106が形成される。
【0010】
ホール注入層106が所定膜厚に形成された後、シャッタ1231を閉じ、他方の有機蒸発源1222内でホール輸送層107の有機材料の蒸気を生成した状態で、この有機蒸発源1222上のシャッタ1232を開けると、形成されたホール注入層106の表面にホール輸送層107が形成される。
【0011】
ホール輸送層107が所定膜厚に形成された後、シャッタ121、1232を閉じ、ホール注入層106とホール輸送層107とが形成された成膜対象物155をこの有機蒸着装置100の外部に搬出し、他の有機蒸着装置によって、発光層111と電子輸送層112とを形成した後、金属の蒸着装置やスパッタリング装置によってカソード電極膜118を形成すると、有機LEDパネル110が得られる。
【0012】
上記のような有機蒸着装置110では、有機蒸発源1221、1222から有機材料の蒸気を放出させ、成膜対象物155の表面に有機薄膜を成長させる際に、基板ホルダ151を水平面内で回転させており、成膜対象物155が基板ホルダ151と一緒に回転することで、面内膜厚分布が均一な有機薄膜が形成されるようになっている。
【0013】
しかしながら、成膜対象物155の回転中心部分と外縁部分とで同じ膜厚にすることは困難である。
【0014】
また、上記のような有機蒸着装置110では、有機蒸発源1221、1222から放出された有機材料の蒸気のうち、成膜対象物155表面に斜め方向から入射する成分が多量に存在する。
【0015】
ホール輸送層107表面に、赤、緑、青の各発光部111R、111G、111Bを形成する際には、マスクを用いて発光部111R、111G、111Bを順番に形成するため、マスクを斜め方向に通過した有機材料の蒸気が、各発光部111R、111G、111Bの境界をぼやかしてしまい、綺麗な発色が得られないという問題がある。
【特許文献1】
特開平11−140625
【特許文献2】
特開平11−222667
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、フルカラー表示に適した有機LEDパネルとその有機LEDパネルを製造する製造装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、有機薄膜で構成され、互いに異なる色で発光する少なくとも第1、第2、第3の発光部と、有機薄膜で構成され、前記第1、第2、第3の発光部上にそれぞれ位置する第1、第2、第3の電荷輸送層とを有する有機LEDパネルの製造方法であって、前記第1の発光部と前記第1の電荷輸送層は第1の真空槽内で形成し、前記第2の発光部と前記第2の電荷輸送層は前記第1の真空槽とは異なる第2の真空槽内で形成し、前記第3の発光部と前記第3の電荷輸送層は前記第1、第2の真空槽とは異なる第3の真空槽内で形成し、且つ、前記第1の発光部の膜厚は前記第2の発光部の膜厚よりも厚く形成し、前記第1の電荷輸送層の膜厚は前記第2の電荷輸送層の膜厚よりも薄く形成し、前記第1、第2、第3の電荷輸送層の表面高さを略一定にする有機LEDパネルの製造方法である。
請求項2記載の発明は、前記第1、第2、第3の発光部を同じ有機薄膜上に配置し、前記第1の発光部の膜厚と前記第1の電荷輸送層の膜厚とを合計した値と、前記第2の発光部の膜厚と前記第2の電荷輸送層の膜厚とを合計した値と、前記第3の発光部の膜厚と前記第3の電荷輸送層の膜厚とを合計した値とを略等しくする請求項1記載の有機LEDパネルの製造方法である。
請求項3記載の発明は、前記第1、第2、第3の電荷輸送層上に、導電性の薄膜を形成する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の有機LEDパネルの製造方法である。
【0018】
本発明は上記のように構成されており、互いに異なる色で発光する少なくとも第1、第2の発光部を有している。三原色で発光する場合は、第1〜第3の発光部を有している。
【0019】
第1〜第3の発光部は同じ有機薄膜の上に形成されており、各発光部が発光したときに、各色が有機LEDパネルを見る者の目の中で混じり合うようにパターニングされている。
【0020】
第1〜第3の発光部の上にはホール輸送層又は電子輸送層から成る電荷輸送層が配置されている。この電荷輸送層は、第1〜第3の発光部と同じパターンにパターニングされている。
【0021】
ここで、第1〜第3の発光部のうち、少なくとも2つの発光部は膜厚が異なっており、第1、第2の発光部のうち、第1の発光部の膜厚の方が第2の発光部の膜厚よりも厚いとした場合に、第1の発光部上の第1の電荷輸送層の膜厚は、第2の発光部上の第2の電荷輸送層の膜厚よりも薄くなっている。即ち、発光部と電荷輸送層とを合計した膜厚が、略等しくなるようになっている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下で図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1の符号50は、本発明の一例の有機LEDパネル製造装置を示している。この有機LEDパネル製造装置50は、搬送室53を有しており、該搬送室53の周囲に、搬入室51と、搬出室52と、全面成膜室60と、第1〜第3の部分成膜室70、80、90と、カソード電極成膜室56とを有している。
【0023】
搬送室53内には、基板搬送ロボット59が配置されており、該基板搬送ロボット59により、搬入室51内に装着された成膜対象物を、全面成膜室60と、第1〜第3の部分成膜室70、80、90と、カソード電極成膜室56との間で移動させ、搬出室52に搬送した後、該搬出室52から有機LEDパネル製造装置50の外部に搬出するように構成されている。
【0024】
図2〜図5を参照し、全面成膜室60と第1〜第3の部分成膜室70、80、90は、それぞれ真空槽61、71、81、91を有している。
【0025】
各真空槽61、71、81、91内部の底壁側にはそれぞれ、2台の蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94が配置されている。
【0026】
各蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94は、それぞれ筺体63a、64a、73a、74a、83a、84a、93a、94aを有している。
【0027】
各蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94の筺体63a、64a、73a、74a、83a、84a、93a、94a内には、下記のように、1乃至3台の材料容器が配置されている。
【0028】
全面成膜室60は、ホール注入層と、ホール輸送層とを成膜する装置であり、この全面成膜室60内の蒸着源63、64には材料容器63b、64bが1台ずつ配置されている。一方の材料容器63bには、ホール注入層の原料となる有機材料63eが納められ、他方の材料容器64bには、ホール輸送層の原料となる有機材料64eが納められている。
【0029】
第1〜第3の部分成膜室70、80、90は、それぞれ緑色、赤色、青色から成る三原色の各発光部と、電子輸送層とから成る発光領域を、各成膜室70、80、90内で形成するように構成されており、三原色で発光する結果、得られる有機LEDパネルはフルカラー表示が可能になっている。
【0030】
第1〜第3の部分成膜室70、80、90の蒸着源73、74、83、84、93、94は、一方の蒸着源73、83、93がそれぞれ異なる色の発光部の形成用であり、他方の蒸着源74、84、94が電子輸送層形成用になっている。
【0031】
電子輸送層形成用の蒸着源74、84、94内には、1台の材料容器74b、84b、94bが配置されており、各材料容器74b、84b、94b内には同種類の有機材料74e、84e、94eが配置されている。
【0032】
他方、発光部形成用の各蒸着源73、83、93内には、発光部の母材用の材料容器73b、83b、93bが1台ずつと、各発光部の色に応じた発色剤の材料容器73c、83c、83d、93cが配置されている。青及び緑では、それぞれ1台の材料容器73c、93cが各筺体73a、93a内に配置され、赤色では2台の材料容器83c、83dが1台の筺体83a内に配置されている。
【0033】
母材用の材料容器73b、83b、93bに配置された有機材料73e、83e、93eは、ここでは同種類の有機化合物(Alq3(8−hydroxyquinoline aluminium)が用いられている。
【0034】
他方、発色剤の材料容器73c、83c、83d、93c内には、色に応じた有機化合物が納められており、緑色の発色剤用の材料容器73c内の有機材料73fには、C545Tが用いられ、赤色の発色剤用の材料容器83c、83d内の有機材料83f、83gには、それぞれDCJTBとRubreneとが用いられている。
【0035】
また、青色の発色剤用の材料容器93c内の有機材料93fには、DPVBiが用いられている。
【0036】
次に、ホール注入層形成用の蒸着源63を代表させ、各蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94の構造を説明する。
【0037】
図14(a)はその蒸着源63の平面図である。該筺体63aは直方体形状であり、水平方向に延設されている。筺体63aの上部には、細長のスリット63hが、筺体63aの長辺方向に沿って形成されている。他の蒸着源64、73、74、83、84、93、94の筺体64a、73a、74a、83a、84a、93a、94aも同じ構造である。
【0038】
全面成膜室60と第1〜第3の部分成膜室70、80、90内では、各蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94は、それぞれスリット63h、64h、73h、74h、83h、84h、93h、94hを同じ方向に向け、各真空槽61、71、81、91内で互いに平行に配置されている。
【0039】
材料容器63b、64b、73b、74b、83b、84b、93b、94bはスリット63h、64h、73h、74h、83h、84h、93h、94hよりも長い直方体形状になっており、各スリット63h、64h、73h、74h、83h、84h、93h、94hの直下の位置に、スリット63hに対して平行に配置されている。
【0040】
蒸着源63の拡大図を図14(b)に示す。また、図15は、図2とは直角方向の断面図であり、図2のA−A線切断面図に相当する。
【0041】
蒸着容器63の上部には、蓋部材63jが配置されている。この蓋部材63jには、スリット63hに対して同方向に伸びる細長の開口63kが形成されている。
【0042】
蓋部材63jには飛沫防止板63mが取り付けられている。この飛沫防止板63mは、開口63kの下方位置に配置されており、蓋部材63jとの間で隙間63pが形成されるようになっている。
【0043】
有機材料63eは、この材料容器63b内の飛沫防止板63mよりも下方位置に配置されている。蓋部材63jと飛沫防止板63mは、抵抗発熱体で構成されており、蓋部材63jと飛沫防止板63mに通電し、発熱させると有機材料63eが蒸発し、その蒸気63nが放出される。
【0044】
飛沫防止板63mの幅及び長さは開口63kの幅及び長さよりも大きくされており、有機材料63eから発生した蒸気63nは、飛沫防止板63mを迂回し、隙間63pを通って開口63kから放出されるようになっている。
【0045】
有機材料63eが突沸した場合、有機材料63eの飛沫は直線的に飛行するため隙間63pを通過できず、飛沫防止板63mか蓋部材63jに衝突し、衝突した位置に付着するようになっている。従って飛沫は開口63kから放出されない。飛沫防止板63mや蓋部材63jに付着した飛沫は飛沫防止板63m又は蓋部材63jで熱せられ、再度蒸発して開口63kから筺体63a内に放出される。
【0046】
いずれにしろ、各蒸着源蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94から筺体63a、64a、73a、74a、83a、84a、93a、94a内に放出された蒸気は、スリット63h、64h、73h、74h、83h、84h、93h、94hを通って、筺体63a、64a、73a、74a、83a、84a、93a、94aの外部に放出される。
【0047】
各蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94は、スリット63h、64h、73h、74h、83h、84h、93h、94hの長辺方向に対して垂直な方向に水平移動可能に構成されている。
【0048】
真空槽61、71、81、91内部の天井側には、基板ホルダ62、72、82、92が配置されている。図2〜図5の符号21〜24は、成膜対象を示しており、各基板ホルダ62、72、82、92にそれぞれ成膜対象物21〜24を保持させた状態で、蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94から有機材料63e、64e、73e、74e、83e、84e、93e、94eの蒸気を放出させ、蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94を真空槽61、71、81、91内の端から端まで移動させると、成膜対象物21〜24は有機材料63e、64e、73e、74e、83e、84e、93e、94eの蒸気で走査される。
【0049】
成膜対象物21〜24と各蒸着源63、64、73、74、83、84、93、94のスリット63h、64h、73h、74h、83h、84h、93h、94hとは近接しており、各スリット63h、64h、73h、74h、83h、84h、93h、94hから放出された蒸気は、成膜対象物21〜24表面に垂直に到達するようになっている。
【0050】
次に、上記の有機LEDパネル製造装置50を用い、有機LEDパネルを製造する工程を説明する。
【0051】
図16(a)の符号21は、成膜対象物であり、ガラス基板4の表面にITO(インジウム・錫酸化物)から成る透明導電膜5が形成されている。
【0052】
先ず、搬送室53と搬入室51の間のバルブを閉じ、搬送室53と各成膜室60、70、80、90、56を真空排気しておく。
【0053】
搬送室53と、各成膜室60、70、80、90、56の真空雰囲気を維持しながら搬入室51を大気に開放し、搬入室51内に成膜対象物21を所定枚数装着する。そして、大気との間の扉を閉じ、搬入室51内部を真空排気する。
【0054】
この状態では、成膜対象物21を真空雰囲気に置いたまま、成膜対象物21を搬入室51と搬出室52と各成膜室60、70、80、90、56の間で移動させられるようになっている。
【0055】
先ず、搬入室51と搬送室53の間のバルブを開け、基板搬送ロボット59によって成膜対象物21を1枚ずつ取り出し、全面成膜室60の真空槽61内に搬入し、透明導電膜5を真空槽61の底壁側に向け、基板ホルダ62に水平に保持させる。
【0056】
全面成膜室60内では、ホール注入層用の蒸着源63を真空槽61内の横方向の一端部に配置し、ホール輸送層用の蒸着源64を真空槽61内の横方向の他端部に配置しておく。
【0057】
その状態で、先ず、ホール注入層用の蒸着源63から、ホール注入層用の有機材料63eの蒸気を発生させ、スリット63hの長手方向とは垂直の方向に水平移動させ、成膜対象物21の直下位置を移動させる。
【0058】
図6は、ホール注入層用の蒸着源63が成膜対象物21の直下の成膜対象物21の真ん中付近の位置にある状態を示しており、図7は、成膜対象物21の直下位置を通過し、ホール輸送層用の蒸着源64の隣接位置まで到達した状態を示している。この状態では成膜対象物21は、ホール注入層用の有機材料63eの蒸気で1回走査されている。
【0059】
次に、有機材料63eの蒸気を放出させながらホール注入層用の蒸着源63を元の位置に戻し、図2に示したような状態に戻ると、成膜対象物21は有機材料63eの蒸気で2回走査され、透明導電膜5表面にホール注入層6が形成される(図16(b))。
【0060】
次に、ホール注入層用の蒸着源63内からの有機材料63eの蒸気発生を停止させ、ホール輸送層用の蒸着源64内から有機材料64eの蒸気を放出させ、スリット64hとは垂直方向に水平移動させる。
【0061】
図8は、ホール輸送層用の蒸着源64が、ホール注入層用の蒸着源63の隣接位置まで移動した状態を示しており、この状態から図2に示したような元の位置に戻ると、ホール輸送層用の蒸着源64は成膜対象物21の直下位置を往復し、ホール注入層6表面に、ホール輸送層7が形成される(図16(c))。
【0062】
次に、ホール注入層6とホール輸送層7が形成された後、成膜対象物21を全面成膜室60内から搬出し、第1の部分成膜室70内に搬入する。
【0063】
図3の符号22は、第1の部分成膜室70内に搬入され、基板ホルダ72に水平に保持された成膜対象物を示している。この成膜対象物22表面のホール輸送層7は、真空槽71の底壁側に向けられている。
【0064】
また、この成膜対象物22のホール輸送層7の近傍には、マスク31が配置されている。
【0065】
このマスク31は、図16(d)に示すように、金属板から成るマスク本体33と、該マスク本体33に所定の規則で配置された多数の貫通孔32とで構成されている。
【0066】
第1の部分成膜室置70内では、発光部形成用の蒸着源73と、電子輸送層形成用の蒸着源74とは、真空槽71内の両端に配置されており、先ず、発光部形成用の蒸着源73のスリット73hから、母材と緑色の発色剤である有機材料73e、73fの蒸気を放出させながら、スリット73hの長手方向とは垂直な方向に水平移動させる。
【0067】
図9は、発光部形成用の蒸着源73が、電子輸送層形成用の蒸着源74の隣接位置まで移動した状態を示している。
【0068】
次いで、発光部形成用の蒸着源73を、図3に示したような元の位置に戻すと、蒸着源73が成膜対象物22の真下位置を往復移動する間に、蒸着源73から放出された有機材料73e、73fの蒸気が、スリット31の貫通孔32を通過し、成膜対象物22の表面に到達し、ホール輸送層7表面に緑色の発光部11が形成される(図17(e))。この発光部11は、貫通孔32の配置パターンに応じたパターンになっており、発光部11が形成されていない部分では、ホール輸送層7表面が露出している。
【0069】
次いで、発光部形成用の蒸着源73の蒸気放出を停止させ、電子輸送層形成用の蒸着源74から、電子輸送層の有機材料74eの蒸気放出を開始し、真空槽71内を移動させる。
【0070】
図10は、電子輸送層形成用の蒸着源74が発光部形成用の蒸着源73の隣接位置まで移動した状態を示しており、その状態から、図3に示したような元の位置に戻すと、図17(f)に示すように、貫通孔32を通過した蒸気により、緑色の発光部11の表面に、電子輸送層12が形成される。この電子輸送層12は、ホール輸送層7上には形成されない。
【0071】
次に、電子輸送層12が形成された成膜対象物22を第1の部分成膜室70から搬出し、第2の部分成膜室80内に搬入し、基板ホルダ82に水平に保持させる。
【0072】
図4の符号23は、その状態の成膜対象物を示している。基板ホルダ82に保持された成膜対象物23は、発光部11が形成された表面が、真空槽81の底壁側に向けられており、発光部11が形成された表面の近傍には、マスク35が配置されている。
【0073】
図17(g)はその状態を示しており、マスク35は、金属板から成るマスク本体37と、該マスク本体37に、所定の規則で配置された貫通孔36とで構成されている。
【0074】
このマスク35と、第1の部分成膜室置70で用いたマスク31を重ね合わせた場合、貫通孔32、36は、異なる位置に配置されており、従って、成膜対象物23の近傍にこのマスク35を配置した場合、貫通孔36底面には緑色の発光部11は露出せず、ホール輸送層7表面が露出するようになっている。
【0075】
その状態で赤色の発光部用の蒸着源83から、母材の有機材料83eと、二種類の発色剤の有機材料83f、83gの蒸気を放出させながら、成膜対象物23の直下位置を往復移動させると、図18(h)に示すように、ホール輸送層7表面に赤色の発光部13が形成される。
【0076】
次いで、電子輸送層用の蒸着源84から電子輸送層用の有機材料84eの蒸気を放出させながらを往復移動させると、図18(i)に示すように赤色の発光部13表面に電子輸送層14が形成される。
【0077】
赤色の発光部13と電子輸送層14とが形成された後、第2の部分成膜室80内から、赤色の発光部13とその表面の電子輸送層14とが形成された成膜対象物23を搬出し、第3の部分成膜室90内に搬入し、基板ホルダ92に水平に保持させる。図5の符号24は、その状態の成膜対象物を示している。
【0078】
この状態の成膜対象物24の表面には、マスク41が配置されている。該マスク41は、図18(j)に示すように、マスク本体43と、マスク本体43に所定規則で多数配置された貫通孔42とで構成されている。貫通孔42の底面にはホール輸送層7表面が露出している。
【0079】
この第3の部分成膜室90内でも、緑色及び赤色の発光部11、13が形成された面は、真空槽91の底面に向けられており、蒸着源93から母材の有機材料93eと青色の発色剤の有機材料93fの蒸気を放出させながら往復移動させると、図19(k)に示すように、成膜対象物24のホール輸送層7表面に青色の発光部15が形成される。次いで、電子輸送層用の蒸着源94から、電子輸送層の有機材料94eの蒸気を放出させながら往復移動させると、図19(l)に示すように、青色の発光部15の表面に電子輸送層16が形成される。
【0080】
ここでは、三原色の発光部11、13、15の厚みD1〜D3は相互に異なっているが、各発光部11、13、15の厚みD1〜D3の相違は、各発光部11、13、15上に形成された電子輸送層12、14、16の厚みE1〜E3の相違によって補償されている。即ち、
【0081】
D1+E1 = D2+E2 = D3+E3 = F
にされており、ホール輸送層7表面から各発光部11、13、15の電子輸送層12、14、16の表面までの高さFは略一定になっている(ここでは「=」は略等しいことを表している)。
【0082】
ここでは、三原色の発光部11、13、15は、明るさを等しくするために厚みが異なるようにされており、蒸着源63、73、83から放出される蒸気の量を制御して厚みを制御したり、蒸着源63、73、83の移動速度を制御することで厚みを制御することができる。
【0083】
電子輸送層12、14、16は、ここでは表面高さFを一定にすることで段差を解消させ、表示品質を向上させるために厚みを制御している。
【0084】
このような三原色の発光部11、13、15が形成された成膜対象物24をカソード電極成膜室56内に搬入し、各発光部11、13、15の表面に、図19(m)に示すように、金属薄膜等の導電性の薄膜から成るカソード電極18を形成すると有機LEDパネル25が得られる。この有機LEDパネル25では、カソード電極18の表面は平坦になっている。
【0085】
得られた有機LEDパネル25は搬出室52に搬送し、搬出室52内に所定枚数がまとめられた後、有機LEDパネル製造装置50から搬出される。
【0086】
上記は、厚みの異なる発光部11、13、15表面に対し、各発光部11、13、15の厚みを補償する厚みの電子輸送層12、14、16を形成したが、本発明はそれに限定されるものではない。図20(a)に示すように、各発光部11、13、15表面に同じ膜厚の電子輸送層12'、14'、16'を形成した後、同図(b)に示すように、その表面にカソード電極18'を形成してもよい。
【0087】
また、上記はホール注入層5を形成する蒸着源63や発光部12、13、15を形成する蒸着源73、83、93を往復移動させた後、ホール輸送層6を形成する蒸着源64や電子輸送層12、14、16を形成する蒸着源74、84、94を往復移動させたが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0088】
例えば全面成膜室60を例にとって説明すると、先ず、図2に示した状態から、ホール注入層形成用の蒸着源63から蒸気を放出させながら移動させ、図7に示すように、ホール輸送層形成用の蒸着源64の隣接位置で止める。
【0089】
次いで、同様に蒸気を放出させながらホール注入層形成用の蒸着源63を元の位置に戻す際に、ホール輸送層形成用の蒸着源64から蒸気を放出させながら、その蒸着源64をホール注入層形成用の蒸着源63に随伴して移動させる。
【0090】
図11は、随伴移動中の状態を示しており、ホール注入層形成用の蒸着源63が元の位置に戻り、図12に示すような状態になったときには、ホール注入層形成用の蒸着源63は成膜対象物21の直下位置を2回通過し、ホール輸送層形成用の蒸着源64は成膜対象物21の直下位置を1回通過したことになる。
【0091】
次いで、ホール輸送層用の蒸着源64から蒸気を放出させながら元の位置に戻すと、両方の蒸着源63、64が、成膜対象物21の直下位置を2回通過したことになり、図16(c)に示したように、透明導電膜4の表面に符号6、7で示したホール注入層とホール輸送層が形成される。
【0092】
第1〜第3の部分成膜室70、80、90についても、発光部11、13、15形成用の蒸着源73、83、93を片道移動させた後、電子輸送層形成用の蒸着源74、84、94を随伴移動させることができる。
【0093】
以上のように、本発明では、異なる色を発光する発光部11、13、15を別々の部分成膜室70、80、90内で形成しており、更に、各部分成膜室70、80、90内で個別に電子輸送層12、14、16を形成し、発光部11、13、15上に配置している。
【0094】
従って、発光部11、13、15の膜厚が異なる場合であっても、各発光部11、13、15上に形成する電子輸送層12、14、16の膜厚を調節すれば電子輸送層12、14、16の表面高さを揃えることができる。
【0095】
なお、上記実施例では、発光部11、13、15の上に電子を電荷とする電荷輸送層(電子輸送層)を形成したが、発光部11、13、15の上に、ホールを電荷とする電荷輸送層(ホール輸送層)を形成することもできる。
【0096】
また、異なる色で発光する各発光部11、13、15の膜厚や、各発光部11、13、15の上にそれぞれ形成される電荷輸送層の膜厚は、発光部と電荷輸送層とで構成される各発光領域の輝度が同じになるように変えることもできる。
【0097】
【発明の効果】
表示品質が高い有機LEDパネルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機LEDパネル製造装置を説明するための図
【図2】その全面成膜室を説明するための図
【図3】第1の部分成膜室を説明するための図
【図4】第2の部分成膜室を説明するための図
【図5】第3の部分成膜室を説明するための図
【図6】全面成膜室内の蒸着源の移動方法を説明するための図(1)
【図7】全面成膜室内の蒸着源の移動方法を説明するための図(2)
【図8】全面成膜室内の蒸着源の移動方法を説明するための図(3)
【図9】第1の部分成膜室内の蒸着源の移動方法を説明するための図(1)
【図10】第1の部分成膜室内の蒸着源の移動方法を説明するための図(2)
【図11】全面成膜室内の蒸着源の他の移動方法を説明するための図(1)
【図12】全面成膜室内の蒸着源の他の移動方法を説明するための図(2)
【図13】全面成膜室内の蒸着源の他の移動方法を説明するための図(3)
【図14】(a):蒸着源の平面図 (b):その断面図
【図15】図2のA−A線切断面図
【図16】(a)〜(d):有機LEDパネルの製造工程を説明するための図(1)
【図17】(e)〜(g):有機LEDパネルの製造工程を説明するための図(2)
【図18】(h)〜(j):有機LEDパネルの製造工程を説明するための図(3)
【図19】(k)〜(m):有機LEDパネルの製造工程を説明するための図(4)
【図20】(a)、(b):本発明の有機LEDパネルの他の構造の例を説明するための図
【図21】従来技術の有機LEDパネル製造装置の例
【図22】従来技術の有機LEDパネルを説明するための図
【符号の説明】
11、13、15……発光部
12、14、16……電荷輸送層
18……導電性の薄膜(カソード電極)
21〜24……成膜対象物
25……有機LEDパネル
31、35、41……マスク
32、36、42……貫通孔
50……有機LEDパネル製造装置
61、71、81、91……真空槽
62、72、82、92……基板ホルダ
63、64、73、74、83、84、93、94……蒸着源
70、80、90……部分成膜室
Claims (3)
- 有機薄膜で構成され、互いに異なる色で発光する少なくとも第1、第2、第3の発光部と、
有機薄膜で構成され、前記第1、第2、第3の発光部上にそれぞれ位置する第1、第2、第3の電荷輸送層とを有する有機LEDパネルの製造方法であって、
前記第1の発光部と前記第1の電荷輸送層は第1の真空槽内で形成し、
前記第2の発光部と前記第2の電荷輸送層は前記第1の真空槽とは異なる第2の真空槽内で形成し、
前記第3の発光部と前記第3の電荷輸送層は前記第1、第2の真空槽とは異なる第3の真空槽内で形成し、且つ、
前記第1の発光部の膜厚は前記第2の発光部の膜厚よりも厚く形成し、
前記第1の電荷輸送層の膜厚は前記第2の電荷輸送層の膜厚よりも薄く形成し、
前記第1、第2、第3の電荷輸送層の表面高さを略一定にする有機LEDパネルの製造方法。 - 前記第1、第2、第3の発光部を同じ有機薄膜上に配置し、
前記第1の発光部の膜厚と前記第1の電荷輸送層の膜厚とを合計した値と、前記第2の発光部の膜厚と前記第2の電荷輸送層の膜厚とを合計した値と、前記第3の発光部の膜厚と前記第3の電荷輸送層の膜厚とを合計した値とを略等しくする請求項1記載の有機LEDパネルの製造方法。 - 前記第1、第2、第3の電荷輸送層上に、導電性の薄膜を形成する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の有機LEDパネルの製造方法。
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