以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、全図を通じ、同一の要素には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、説明における上下左右等の位置関係は、いずれも図面の位置関係に基づくものとする。
まず、図1及び図2を参照して好適な実施形態に係る製造方法により得られる電解コンデンサの構造について説明する。
図1は、好適な実施形態に係る製造方法により得られた電解コンデンサの断面構造を模式的に示す図である。
電解コンデンサ1は、基板20上に、複数(ここでは4つ)のコンデンサ素子2が載置・固定された構成を有している。なお、図示しないが、電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2の積層構造の周囲が、このコンデンサ素子2を酸素や湿度、接触等から保護するために樹脂によってモールドされている。
各コンデンサ素子2は、陽極部5と、陰極部6と、陽極部5と陰極部6とを電気的に絶縁するレジスト部7とを有している。電解コンデンサ1においては、4つのコンデンサ素子2が、それぞれの陽極部5、陰極部6及びレジスト部7が積層方向からみて同じ位置となるように積層されている。また、隣接するコンデンサ素子2同士は、各コンデンサ素子2の陰極部6において導電性接着剤17を介して接着され、互いに電気的に接続された状態となっている。
コンデンサ素子2における陽極部5は、箔状または板状の弁作用金属からなる弁金属基体9から構成され、陰極部6の内部から引き出された形状を有している。また、陰極部6は、この弁金属基体9の引き出された部位を除く部分の周囲を覆うように設けられており、弁金属基体9側から順に、誘電体層10及び陰極15が積層された構成を有している。また、レジスト部7は、陽極部5と陰極部6との境界に沿って弁金属基体9上に設けられている。このレジスト部7は、絶縁性材料からなり、好ましくはエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料から構成されるものである。
ここで、図2を参照して、コンデンサ素子2の構造についてより詳細に説明する。図2は、コンデンサ素子2の要部の断面構造を模式的に示す図であり、弁金属基体9、誘電体層10及び陰極15の積層構造を拡大して示したものである。
図示されるように、コンデンサ素子2において、陽極として機能する弁金属基体9は、その表面が粗面化されており、これにより表面積が拡大された状態となっている。ここで、弁金属基体9の構成材料としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン等のいわゆる弁作用金属が挙げられる。なかでも、アルミニウム又はタンタルが好ましい。
誘電体層10は、弁金属基体9の表面形状に沿うように設けられた、極めて薄い層状構造を有している。この誘電体層10は、弁金属基体9の表面を酸化することにより形成された酸化皮膜によって構成されている。
陰極15は、図示されるように、弁金属基体9側から順に、電解質層11及び導体層12が積層された構造を有している。電解質層11は、電解コンデンサにおいて実質的に陰極として機能するものである。かかる電解質層11の構成材料としては、電解コンデンサにおける電解質として通常用いられる材料であれば特に制限はなく、具体的には、二酸化マンガン、錯塩、導電性高分子等が挙げられる。
また、導体層12は、電解質層11側から順にカーボンペースト層13及び銀ペースト層14が積層された2層構造からなるものであり、コンデンサ素子2における陰極側の外部との接続を容易化するために設けられている。
以下、再び図1を参照して電解コンデンサ1について説明する。基板20には、コンデンサ素子2が搭載される側に、陽極端子22a及び陰極端子24aがそれぞれ設けられている。この陽極端子22a及び陰極端子24aは、基板20上のコンデンサ素子2における陽極部5及び陰極部6にそれぞれ対応する位置に設けられている。
基板20における陽極端子22a及び陰極端子24aの反対側には、これらに対応する位置に、陽極端子22b又は陰極端子24bが設けられている。そして、基板20両面の、陽極端子22aと陽極端子22b、及び、陰極端子24aと陰極端子24bは、基板20を貫通するように設けられたスルーホール23及びスルーホール25によってそれぞれ互いに電気的に接続された状態となっている。
基板20における陽極端子22aと陰極端子24aとの間には、レジスト部26が形成されており、また、陽極端子22bと陰極端子24bとの間には、レジスト部28が形成されている。これらによって、陽極端子22a,22bと陰極端子24a,24bとがそれぞれ絶縁されている。
電解コンデンサ1において、コンデンサ素子2は、以下に示すようにして基板20上に戴置されている。すなわち、まず、コンデンサ素子2における陰極部6は、基板20における陰極端子24aと導電性接着剤17を介して接着され、これにより互いに電気的に接続されている。
また、コンデンサ素子2における陽極部5は、例えばレーザー溶接等によって設けられた接合部30により、基板20における陽極端子22aと接合されている。なお、各コンデンサ素子における陽極部5同士も、この接合部30によってそれぞれ接着及び接合されている。
次に、図3〜図7を参照して、上述した構造を有する電解コンデンサ1の製造方法の好適な実施形態について説明する。
図3は、好適な実施形態に係る電解コンデンサの製造工程を示すフローチャートである。
電解コンデンサ1の形成においては、まず、図4(a)〜(c)(ステップS11〜13)に示す各工程を実施する。図4は、弁金属基体に誘電体層を形成するまでの工程を説明する図である。まず、ステップS11において、図4(a)に示すような弁金属シート50を準備する。この弁金属シート50は、次のようにして得ることができる。すなわち、まず、弁金属からなる一枚の金属箔を準備し、これに化学的又は電気化学的なエッチングを施して、表面に微細な凹凸を多数形成させる(拡面化)。次に、この凹凸が形成された表面に陽極酸化等を施し、当該表面上に薄い酸化皮膜を形成する。そして、これらの処理が施されたシートを、例えば、金型による打ち抜き等により、一辺に同一形状(略矩形状)の突出部を複数有する形状に切断する。こうして、図示されるような、接続部52の一辺に上記突出部からなる弁金属基体部60が複数設けられた形状の弁金属シート50が得られる。
次に、ステップS12において、図4(b)に示すように、弁金属基体部60の両面に第1レジスト62及び第2レジスト64を形成する。この第1レジスト62及び第2レジスト64は、弁金属基体部60の先端縁部(接続部52と反対側の縁部)に近い側に第1レジスト62が、遠い側に第2レジスト64が配置されるように設ける。より具体的には、第1レジスト62は、接続部52と上記先端縁部との間の、好ましくは接続部52寄りに、また、第2レジスト64は、この第1レジスト62と接続部52との間に位置するようにする。
これらの第1及び第2レジスト62,64は、互いに略平行となるとともに、それぞれが上記先端縁部と略平行となるように略直線状に形成する。こうして形成された第1レジスト62は、弁金属基体60を陰極領域72と陽極領域74に区画するものであり、得られたコンデンサ素子2におけるレジスト部7となる。また、第2レジスト64は、後述する再化成等において、当該レジスト64よりも上側に化成液等が這い上がるのを防止する機能を有するものとなる。
このような化成液等の這い上がりをより確実に防止する観点からは、第2レジストの幅(短手方向の長さ)が、第1レジストの幅(短手方向の長さ)の2倍以上となるようにすることが好ましい。一例として、例えば、弁金属基体部60の短手方向の長さを1〜20mm、長手方向の長さを2〜40mm程度のサイズとする場合、第1レジスト62の幅を0.2〜1.5mm、第2レジスト64の幅を0.5〜10mm程度とすることが好ましい。また、この際、第1レジスト62と第2レジスト64との間の距離は、1〜10mm程度とすることが好ましい。さらに、これらのレジスト62,64の厚さは、1〜50μm程度とすることが好ましい。
第2レジスト64としては、レジスト部7を構成する第1レジスト62と同様に、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の絶縁性を有する樹脂材料を適用できる。ただし、酸化皮膜の形成を、例えば、後述するような水溶液からなる化成液を用いて行う場合、この水溶液の這い上がりをより効果的に防止する観点から、第2レジストとしては、撥水性の高い材料(好ましくは第1レジストよりも撥水性の高い材料)により形成することがより好ましい。このような撥水性の高い樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂「TSE326」(東芝シリコーン社製)が例示できる。
第1及び第2レジスト62,64の形成方法としては、例えば、弁金属基体部60の表面に、液状の樹脂を転写又はスクリーン印刷する方法や、あらかじめテープ状に成形されたレジスト材料を、弁金属基体部60における所望の位置に貼り付ける方法が挙げられる。これらの第1及び第2レジスト62,64は、同時に形成してもよく、別々に形成してもよいが、同時に形成することがより好ましい。両レジスト62,64を同時に形成すれば、レジストの形成工程を簡略化できるほか、先に形成したレジストが後のレジスト形成の邪魔になるといった不都合も生じなくなる。このように第1及び第2レジスト62,64を同時に形成する観点からは、これらの形成方法としては、転写又はスクリーン印刷が好適である。
次に、ステップS13において、図4(c)に示すように、弁金属シート50における複数の弁金属基体部60を、所定の容器80内に収容された化成液82中に浸漬し、この浸漬された領域の表面上に陽極酸化等により酸化皮膜を生じさせて誘電体層(図1における誘電体層10)を形成する。この工程においては、予め酸化皮膜が形成された弁金属シート50における、酸化皮膜の未形成部や損傷部に、酸化皮膜が更に形成される(再化成)。このように形成された酸化皮膜は優れた絶縁性を有し、誘電体層10として有効に機能する。
より具体的には、この工程においては、弁金属シート50における各弁金属基体部60を、その陰極領域72側から化成液82中に入れて、当該化成液82の液面Sが、全ての弁金属基体部60における第1レジスト62と第2レジスト64との間に位置するようにする。これにより、各弁金属基体60は、その先端縁部から、第1レジスト62を越えて第2レジスト64を越えない位置まで化成液82に浸漬されることになる。
陽極酸化は、例えば、弁金属シート50における接続部52に正極用リード(図示せず)を接続するなどして、各弁金属基体部60を陽極として電圧を印加することにより生じさせることができる。陽極酸化に好適な化成液としては、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、有機酸アンモニウム等の緩衝溶液が挙げられ、なかでも、有機酸アンモニウムであるアジピン酸アンモニウム水溶液が好ましい。
ここで、上述した誘電体層10を形成する工程は、例えば、以下に示すように、図5に示す化成用システムを用い、第2レジスト64をマーキングとして用いることにより容易に行うことができる。図5は、誘電体層を化成用システムにより形成する工程を模式的に示す図である。図示されるように、化成システム100は、化成液82が収容された容器80、移動機構110、電圧印加部120、カメラ132が接続された画像認識装置130、及び、制御部140から構成されている。
移動機構110は、保持部112において弁金属シート50の接続部52を挟み込むことにより弁金属シート50を保持する。この保持部112は、駆動部114によって上下に移動可能となっており、この上下移動によって弁金属シート50の化成液82への浸漬位置を調整する。電圧印加部120は、電源122、電流計124及び電圧計126を有する回路からなるものである。この回路の一端は弁金属シート50に、また他端は容器80にそれぞれ接続されており、弁金属シート50を陽極として電圧を印加するように構成されている。
また、画像処理部130は、これに接続されたカメラ132で得られた画像データの処理を行う。そして、制御部140は、移動機構110、電圧印加部120及び画像認識装置130のそれぞれに接続されており、画像認識装置130からの情報を基に、移動機構110及び電圧印加部120の動作を制御する。
以下、この化成システム100を用いて誘電体層10を形成する工程の一例について説明する。まず、移動機構110における保持部112において弁金属シート50を保持する。この保持部112を、駆動部114を駆動させて徐々に下降させ、弁金属シート50における各弁金属基体部60を、その陰極領域72側から化成液82中に浸漬させる。この際、弁金属基体部60の浸漬の状態を、カメラ132にて撮像する。このカメラ132にて撮像して得られた画像データをもとに、弁金属基体部60における第2レジストの位置を画像認識装置130が認識する。
やがて、保持部112の下降により、第2レジストが化成液82の液面Sに近づいたのを画像認識装置130が認識すると、制御部140は、駆動部114の駆動を停止し、弁金属基体部60がこれ以上化成液82中に浸漬されないようにする。そして、制御部140は、弁金属シート50の下降を停止させた後、電圧印加部120における電源122を駆動させ、弁金属シート50が陽極となるように電圧を印加する。この際、制御部140は、電流計124及び電圧計126で得られたデータをもとに、弁金属シート50に印加する電圧値を適切に制御する。こうして、弁金属シート50における弁金属基体部60の所定領域が酸化されて酸化皮膜が生じ、誘電体層10が形成される。
なお、このような化成システム100を用いる方法においては、上述した第2レジスト64のみならず、第1レジスト62もマーキングとして用いてもよい。すなわち、画像認識装置130において、化成液82の液面Sが第1レジスト62と第2レジスト64との間に到達するのを認識したら、弁金属シート50の下降を停止するようにしてもよい。こうすれば、各弁金属基体部60における第1レジスト62までの領域(すなわち、陰極領域72)を確実に化成液82中に浸漬させることが可能となる。
以下、再び図3を参照して、電解コンデンサ1の製造方法について説明する。
上述したような方法により弁金属基体部60の所定領域上に誘電体層10を形成した後、ステップS14において、各弁金属基体部60に形成された誘電体層10の表面上に、化学酸化重合や電解重合により電解質層(電解コンデンサ1における電解質層11)を形成する。より簡便に電解質層11を形成する観点からは、前者の化学酸化重合がより好ましい。
化学酸化重合は、弁金属基体部60を、モノマー及び酸化剤を含む重合液に浸漬した後、引き上げる工程を複数回繰り返すようにして実施する。この工程においては、重合液から引き上げた際に、弁金属基体部60の表面上でモノマーの酸化重合が生じ、ポリマー層が形成される。なお、化学酸化重合は、これ以外に、あらかじめモノマーを弁金属基体部60に塗布しておき、これを、酸化剤を含む溶液に浸漬させることにより行ってもよい。
化学酸化重合の重合液に用いるモノマーとしては、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物等の重合により導電性ポリマーとなり得るモノマーが挙げられる。また、酸化剤としては、ヨウ素、臭素等のハロゲン化物、五フッ化珪素等の金属ハロゲン化物、硫酸等のプロトン酸、三酸化イオウ等の酸素化合物、硫酸セリウム等の硫酸塩、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素等の過酸化物、パラトルエン酸鉄等の鉄塩を例示できる。なお、重合液には、ポリマー層に導電性を付与するためのドーピング材料が更に含まれていてもよい。ドーピング材料としては、パラトルエンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸や、無機スルホン酸等が挙げられる。
この電解質層11の形成においては、弁金属基体部60における第1レジスト62で区画された陰極領域72のみを重合液に浸漬する。つまり、重合液の液面が第1レジスト62に接する位置まで浸漬する。これにより、弁金属基体部60における陰極領域72に形成された誘電体層10の全面に電解質層11が形成されることになる。
このように電解質層11を形成した後、ステップS15において、弁金属シート50における弁金属基体部60を再び化成液に浸漬させて通電する。この際、弁金属基体部60は、上述した再化成と同様に、第1レジスト62を越えて第2レジスト64を越えない位置まで化成液に浸漬させる。これにより、化成液が、第2レジスト64以上の領域、例えば、接続部52等にまで付着するのを防止できる。このような工程も、上述した化成システム100を用いて好適に行うことができる。
かかる工程においては、誘電体層10と電解質層11との微小な隙間に化成液が入り込む。この際、例えば、誘電体層10が、その形成後の電解質層11を形成する工程等において損傷を受けていた場合には、当該損傷部位に酸化皮膜が形成され、これにより誘電体層10が修復されることになる。したがって、このような工程を実施することによって、電解コンデンサ1における弁金属基体9と電解質層11との絶縁がより高められる。
その後、ステップS16において、弁金属基体部60における電解質層11上に、カーボンペースト層13及び銀ペースト層14を順次積層して、これらより構成される導体層12を形成する。これらの層は、各層を形成するためのペーストを用い、スクリーン印刷法、浸漬法(ディップ法)やスプレー塗布法等を行うことにより形成することができる。こうして、弁金属シート50には、各弁金属基体部60の位置にそれぞれコンデンサ素子2が形成される。
続いて、ステップS17において、複数のコンデンサ素子2が形成された弁金属シート50を、接続部52と各コンデンサ素子2との間で切断し、弁金属シート50から各コンデンサ素子2を切り離す。図6は、コンデンサ素子を切り離す工程を説明するための図である。図6に示すように、切断は、各弁金属基体部60に設けられた第1レジストと第2レジストとの間の切断線Cに沿って行うことが好ましい。こうすれば、第1レジスト62を境として陽極部5及び陰極部6を備えるコンデンサ素子2を確実に得ることができる。また、このように切断することによって、コンデンサ素子2に不要な第2レジスト64を確実に除去することができる。
この切断の工程は、上述した誘電体層10を形成する工程と同様、第2レジスト64をマーキングとし、これを画像認識装置で認識することによって容易に行うことができる。図7は、画像認識装置を備える切断システムにより弁金属シートの切断を行う工程を説明する図である。
図示されるように、切断システム200は、弁金属シート50を切断する切断部220、カメラ232が接続された画像認識装置230、これらの動作を制御する制御部240、及び、弁金属シート50を載置するテーブル250から構成されている。以下、この切断システム200を用いた弁金属シートの切断方法の一例について説明する。
まず、コンデンサ素子2が複数形成された弁金属シート50を、テーブル250上に載置する。次に、カメラ232により弁金属シート50の弁金属基体部60(コンデンサ素子2の形成部分)を撮像する。このカメラ232にて撮像して得られた画像データに基づき、画像認識装置230が、第2レジスト64の位置を認識する。
このように画像認識装置230が第2レジスト64の位置を認識したら、制御部240は、弁金属基体部60におけるこの第2レジスト64よりもやや第1レジスト62寄りの位置を切断線Cとして決定し、この位置に切断部220を移動させる。そして、弁金属基体部60を、切断部220によりこの切断線Cに沿って切断し、これにより各コンデンサ素子2を弁金属シート50から切り離す。弁金属シート50の切断は、切断部220をテーブルに対して移動させることによって行ってもよく、テーブル250を切断部220に対して移動させることにより行ってもよい。
なお、この切断の工程においても、上述した誘電体層10を形成する工程と同様に、第2レジスト64のみならず第1レジスト62もマーキングとして用いてもよい。すなわち、第1レジスト62と第2レジスト64との間に切断線Cを設定し、この切断線Cに沿って切断を行ってもよい。こうすれば、切断位置をより容易且つ適切に設定することができる。
その後、ステップS18において、所望の数のコンデンサ素子2を積層するとともに、得られた積層体を基板20上に載置する。それから、各コンデンサ素子2の陰極部6同士、及び、最下層のコンデンサ素子2の陰極部6と基板20の陰極端子24aとを、導電性接着剤17により接着する。また、積層されたコンデンサ素子2における陽極部5側にレーザー溶接等を施すことにより接合部30を形成して、各コンデンサ素子2の陽極部5同士、及び、最下層のコンデンサ素子2と基板20の陽極端子22aとを接合する。なお、陽極部5の表面には酸化皮膜が形成されている場合もあるが、この酸化皮膜は、上述したようなレーザー溶接によって容易に除去される。
そして、このように基板20上に複数のコンデンサ素子2からなる積層体を接続・接合した後、この積層体を、キャスティングモールド、インジェクション、トランスファーモールド等の公知の方法によりモールドすることで、図1に示した電解コンデンサ1を得る。
上述したような実施形態の電解コンデンサの製造方法によれば、以下に示すような作用・効果が得られるようになる。
まず、電解コンデンサ1の製造においては、上述のように、弁金属基体部60に、陰極領域72と陽極領域74とを区画する第1レジスト62に加えて、第2レジスト64を形成している。従来、電解コンデンサの弁金属基体は、上述の如く、表面に多数の微細な凹凸が形成されていることから、再化成の際に化成液が毛細管現象によって目的外の領域まで浸透しやすい(這い上がりやすい)傾向にあった。これを防ぐためには、陰極領域と陽極領域とを区画する区画レジストを予め形成し、陰極領域のみを化成液に浸漬する方法が考えられる。しかしながら、この場合、化成液は、上記区画レジストに接しているため、この区画レジストを伝って反対側(上側)に回りこむ現象がしばしば見られた。また、区画レジストに欠損等がある場合、この部分を通って化成液が這い上がることもあった。
これに対し、本実施形態においては、上述のように2つのレジストを形成しており、再化成の際に、弁金属基体部60を、化成液82の液面Sがこの2つのレジストの間に位置するように浸漬している。このため、化成液82が、毛細管現象により液面Sよりも上側に這い上がったとしても、第2レジスト64により、それ以上の這い上がりが抑止される。
さらに、上述した区画レジストのみを形成する方法においては、陰極領域上に確実に誘電体層を形成するためには、弁金属基体の浸漬位置を、化成液の液面が当該レジストに接するぎりぎりの位置となるように設定しなければならなかった。これに対し、本実施形態では、化成液82の液面Sを第1レジスト62と第2レジスト64との間に設定すればよいことから、従来に比して浸漬位置の調整が容易となる。また、上述の如く、この浸漬位置の決定は、第2レジスト64(或いは更に第1レジスト62)をマーキングとして画像認識装置を用いて行うこともできる。この場合、かかる再化成の工程は、上述したような化成システム100を用いることによって自動化が可能であり、これにより更なる簡便化を図ることができる。
なお、陰極領域のみに正確に酸化皮膜(誘電体層)を形成するためには、例えば、区画レジストの厚さや幅を大きく設計することも考えられる。しかし、区画レジストを厚くすると、コンデンサ素子2を積層する際に邪魔になりやすく、また、幅を大きくすると相対的に陽極部5又は陰極部6の面積が小さくなる結果となる。そして、前者の場合、結果的にコンデンサ容量が小さくなったり、後者の場合、陽極等の接続が困難となって作業性が悪くなったりする等の弊害が生じ易くなる。これに対し、本実施形態においては、第2レジスト64において化成液82の這い上がりを十分に防止できることから、上述のように第1レジスト62の厚さや幅を過度に広くする必要が無く、これらの弊害は極めて生じ難い。
特に、好適な場合、第2レジスト64の幅を第1レジスト62の2倍以上とすることから、第1レジスト62の幅を可能な限り狭くしたとしても、化成液82の這い上がりを十分に防止することができ、その結果、コンデンサ素子2の高容量化が図れる。また、化成液82が第2レジスト64に接するように浸漬した場合であっても、第2レジスト64がこのように太く形成されていることから、上述したような化成液82の回り込みも極めて生じ難くなる。
なお、本実施形態においては、再化成よりも前に第1レジスト62の形成を行っているため、弁金属基体部60の当該レジスト62に覆われた領域には誘電体層10が形成されないことになる。しかしながら、このような場合であっても、本実施形態においては、上述のように第1レジスト62の幅を狭くすることができ、また陰極領域72に良好に誘電体層10を形成し得ることから、電解コンデンサとしての実用上全く問題が無いことが確認された。
さらに、電解コンデンサの製造においては、誘電体層が形成された弁金属基体上に電解質層を形成した後、再び化成液に浸漬して通電し、これにより誘電体層の修復を行うことが多い。かかる修復の工程においても、本実施形態では上述した第1及び第2レジスト62,64を形成しているため、再化成と同様に、所望外の領域への化成液の付着を大幅に低減することができるほか、かかる工程の自動化を図ることも可能である。
さらにまた、高効率化の観点から、コンデンサ素子は、本実施形態のように一枚のシートを用いて複数まとめて形成することが多く、この場合には、得られた各コンデンサ素子を一枚のシートから正確に切り離す必要がある。かかる工程を行う場合も、本実施形態においては、第1レジスト62と第2レジスト64との間に切断位置を設定すればよく、これによりコンデンサ素子2に不要な第2レジスト64が確実に除去され得る。また、この第2レジスト64(或いは更に第1レジスト62)をマーキングとして画像認識装置により切断位置を決定することもでき、この場合、上述したような切断システム200を用いれば、かかる切断の工程を自動化して更なる簡便化を図ることもできる。
以上、好適な実施形態に係る電解コンデンサの製造方法及びこれにより得られた電解コンデンサについて説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行うことができる。
まず、電解コンデンサ1の製造においては、複数の弁金属基体部60が設けられた弁金属シート50を用い、複数のコンデンサ素子2をまとめて形成したが、これに限定されず、単一の弁金属基体に対して誘電体層、電解質層、導体層等を形成する各工程を行い、これによりコンデンサ素子を一つずつ形成するようにしてもよい。また、弁金属シート50としては、一枚の弁金属からなる金属箔を切り出したものを用いたが、例えば、各弁金属基体部60に相当する金属箔を複数枚準備した後、これらを一枚の金属シートに貼り付けることで弁金属シート50を形成してもよい。
さらに、上記製造方法では、電解質層11の形成後に、誘電体層10の修復を行う工程を実施したが、誘電体層10に損傷等が生じていない場合には、このような工程を行う必要は必ずしもない。さらにまた、コンデンサ素子2を基板20上に載置する際の陽極部5の接続・接合は、上述したレーザー溶接以外に、例えば、導電性接着剤による接着、かしめ、抵抗溶接等により行ってもよい。なお、これらの場合、陽極部5に対しては、その電気的な接続を確保するために、必要に応じて酸化皮膜を除去するためのエッチング等の処理を行うことが好ましい。
さらにまた、上記電解コンデンサ1として、基板20上にコンデンサ素子2の積層体が載置されたものを例示したが、例えば、一つのコンデンサ素子2のみが載置された単層型の電解コンデンサであってもよい。また、上記電解コンデンサ1は、陽極部5及び陰極部6を1つずつ有する2端子型の電解コンデンサであるが、本発明は、複数の陽極部を有する多端子型コンデンサにも適用できる。また、電解コンデンサとして、一つのコンデンサ素子2の積層体が一つの基板20上に載置されたものを例示したが、本発明においては、一つの基板20上にこの積層体が複数並列されたものを形成することもできる。さらに、上述したような基板20以外に、例えば、リードフレーム等を適用することもできる。
1…電解コンデンサ、2…コンデンサ素子、5…陽極部、6…陰極部、7…レジスト部、9…弁金属基体、10…誘電体層、11…電解質層、12…導体層、13…カーボンペースト層、14…銀ペースト層、15…陰極、17…導電性接着剤、20…基板、22a,22b…陽極端子、23…スルーホール、24a,24b…陰極端子、25…スルーホール、26,28…レジスト部、30…接合部、50…弁金属シート、52…接続部、60…弁金属基体部、62…第1レジスト、64…第2レジスト、72…陰極領域、74…陽極領域、80…容器、82…化成液、100…化成システム、110…移動機構、112…保持部、114…駆動部、120…電圧印加部、122…電源、124…電流計、126…電圧計、130…画像認識装置、132…カメラ、140…制御部、200…切断システム、220…切断部、230…画像認識装置、232…カメラ、240…制御部、250…テーブル。