JP4204363B2 - ポリプロピレン捲縮繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来のポリプロピレン捲縮繊維からなるパイル糸を使用したカットパイルカーペットでは得ることができなかったペンシルポイント感を得ることができるポリプロピレン捲縮繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来ポリエステルやナイロンのような合成繊維は、その意匠性が高く評価され多方面の用途に用いられてきた。中でもカーペットの分野においてはポリエステルやナイロンの捲縮繊維は、原糸をそのまま、或いは撚糸熱セット等様々な加工を行った後タフトを行い使用されてきた。特にポリエステルやナイロンを素材とする合成繊維は、撚糸などの加工工程の後、ガラス転移点以上の温度に加熱し常温に戻すいわゆる熱セットという工程を経て使用されることがある。このようにガラス転移点が常温以上の合成繊維素材では、加工工程で付与された形状が熱セットにより常温では良好に固定される。このためポリエステル或いはナイロン繊維を使用したカーペットでは、ペンシルポイント感の優れた外観が得られており、その意匠性や風合いが高く評価されてきた。
【0003】
ところが、合成繊維の中でポリプロピレン繊維は、ポリエステルやナイロンと同様にカーペットの素材となる汎用合成繊維であるが、他の合成繊維素材と同様に撚糸などの加工工程を経た後、熱セットの工程を行っても、撚糸により付与された形状が十分に固定されることはなかった。ポリプロピレンは、ガラス転移点が常温以下であるため繊維とした場合、撚糸等の糸加工を行った後、130℃前後の熱を与えても、その形状を固定するような変化を与えることができなかった。このためポリプロピレン繊維はポリエステルやナイロンのような捲縮加工後の熱セットという効果が期待できず、ポリプロピレン捲縮繊維を撚糸熱セットしたパイル糸をタフトしたカットパイルカーペットにおいても、ペンシルポイント感が満足に得られないことが通常となっていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−5266号公報
【特許文献2】
特開2001−355134号公報
【非特許文献1】
株式会社工業調査会1998・05・15発行、ポリプロピレンハンドブック、エドワード・P・ムーア・Jr編
【0005】
このようにカーペットにしたときにペンシルポイント感が得にくい素材では、この問題を解決すために様々な検討がされてきた。たとえば特許文献1では熱接着性の繊維を混合紡績したパイル糸をタフト前、またはタフト後に熱処理して融着部分をつくりペンシルポイント感を高くする試みがされている。しかしマルチフィラメントで同じように熱接着性の繊維を混合したパイル糸を使用した場合、ペンシルポイント感は高まるものの風合いが硬くなり、また、部分的にカーペットの基布が透けて見えるなど問題がある。
また、特許文献2では断面形状がY型もしくは星型のポリアミド捲縮繊維において、単糸表層部と内層部のレーザーラマン分光法による結晶性の測定値の違いが特定の範囲にある原糸により、染色性が改善され、ペンシルポイント感の高いカットパイルカーペットを得ることができることが開示されているが、ポリプロピレン繊維ではY断面や星型などのマルチローバル断面形の繊維では同様の効果が得られる原糸を得ることができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにポリプロピレン捲縮繊維は、熱セット性が低く、撚糸熱セットしたパイル糸からなるカットパイルカーペットにおいても、ペンシルポイント感を有し、風合いの良いカーペットを得ることが困難であった。
本発明の目的とするところは、ポリプロピレン捲縮繊維の熱セット性を向上させ、ペンシルポイント感を有する意匠性と風合いの良いカーペットを得ることができるポリプロピレン捲縮繊維を提供しようとするにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述した課題を解決するために鋭意検討を進めた結果本発明を完成した。
本発明は、アイソタクチックペンタッド分率が93%以上98%以下の範囲にあるホモポリプロピレンのみからなり、DSCを測定した際に融点ピークが少なくとも2個所存在し、かつ、断面形状の中に3つの中空部分を有することを特徴とするポリプロピレン捲縮繊維にある。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のポリプロピレン捲縮繊維の原料となるポリプロピレンは、そのアイソタクチックペンタッド分率(以下、IPFと略記する。)が、93%以上98%以下の範囲にあるものでなければならない。ポリプロピレンのIPFは、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を使用して測定される。13C−NMRスペクトルで5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位メチル炭素のピーク強度が、メチル炭素領域の全吸収ピーク強度に対してどれだけの分率を示すかにより計算される値である。
【0009】
使用するポリプロピレンのIPFが98%より大きくなると、ポリプロピレンの結晶化速度が大きくなりすぎ、延伸工程で単糸切れを頻発するために、製造工程の安定性を確保する上で好ましくない。IPFが93%より小さいものは、DSCの融点ピークが140℃から170℃の範囲で大きくブロードしてしまい、DSCの融点ピークが分離した状態で観察されなくなり、結晶性が著しく低下し該条件でポリプロピレン捲縮繊維を製造しても、熱セット性が得られなくなるため好ましくない。
本発明による上記条件の範囲にあるポリプロピレンを原料として製糸されたポリプロピレン捲縮繊維は、DSCを測定した時に観察されるDSCカーブの融点ピークが140℃から180℃の範囲で少なくとも2箇所以上存在しなければならない。
【0010】
原料となるアイソタクチックポリプロピレン(以下、iPPと略称する。)は異なる多形の結晶を生じることが知られている。iPPを原料とするポリプロピレン繊維においても、β晶やα晶あるいはスメクチック等の複数の構造が同時に存在し、これらの構造は熱履歴により、融解や再結晶化等が起こり、結晶構造の再組織化が起こることが報告されている(非特許文献1)。
【0011】
本発明はこの結晶構造の再組織化現象について鋭意検討した結果、結晶構造の再組織化がポリプロピレン捲縮繊維の熱セット性に影響を与えることを見出し、これを利用したものである。ポリプロピレン繊維に撚糸熱セット等の熱処理を行うと結晶の再組織化に伴う融点ピークの形状の変化が図1にあるように観察される。本発明ではDSCの融点ピークが140℃以上180℃以下の範囲に少なくとも2箇所の融点ピークが存在しなければならない。融点ピークが複数存在する現象は、捲縮繊維中に2つ以上の異なる結晶状態が存在していることを反映しており、特に捲縮繊維中に準安定相が存在している場合、熱セット工程等の熱処理により、結晶状態の再組織化が起こるのである。融点ピークが1箇所しか存在しないものは、製糸工程の熱履歴により結晶化が十分に進んでいるために、撚糸熱セット工程における熱処理でも結晶の再組織化が十分に起こらず、熱セット性が発現されないため好ましくない。
【0012】
融点ピークが2箇所以上存在する場合は、ポリプロピレン捲縮繊維中に、結晶化が十分に進んでいる部分と進んでいない部分が存在していることを示唆している。
【0013】
本発明において融点ピークが存在する範囲は、140℃以上180℃以下の範囲でなければならない。融点ピークが140℃以下になる場合は、ポリプロピレンのIPFが93%以下となっているものによく見られるが、この場合熱セット工程を経てもパイル糸が十分セットされない。融点ピークが180℃を超える場合は、紡糸延伸した繊維を更に拘束緊張化で熱処理する場合等にみられる現象であるが、捲縮繊維を融点ピークが180℃を超えるような条件で熱処理すると、捲縮が引き伸ばされている等形態の変化を伴うばかりでなく、捲縮繊維製造における経済性の点からも好ましくない。また、熱セット工程を経ても良好な熱セット性が得られないので好ましくない。
【0014】
本発明のポリプロピレン捲縮繊維に使用されるポリプロピレンは、プロピレンのみからなるホモポリマーであることが必要であり、しかもアイソタクチックペンタッド分率が93%以上98%以下の範囲あることが必要である。プロピレンにエチレンやブテン−1などを含むランダムコポリマーである場合、製糸工程における熱履歴が高くても、DSC測定における融点ピークが複数箇所存在することがある。この場合、熱セット工程などの熱処理により結晶状態の再組織化が十分に起こらずペンシルポイント感が不足する。
ポリプロピレンを製造するにあたり使用される触媒は、チグラーナッタ系触媒、メタロセン系触媒等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0015】
ポリプロピレン捲縮繊維にDSCの融点ピークが少なくとも2箇所現れる現象は、捲縮繊維中に異なる結晶構造が存在していることを反映しており、捲縮繊維製造工程で付与される熱量が繊維に均一に与えられていないために生じるものである。このようなDSCにおいて融点ピークが少なくとも2箇所存在するポリプロピレン捲縮繊維を得るためには、繊維の断面形状が中空部分を有する構造のものであることが好ましい。中空部分は、繊維断面中に中空部分を含む形状であればその形状は特に規定されるわけではないが、繊維の断面において中空部分の形状は円形或いは半円形、扇形であってもよく、楕円形状でもよい。三角形或いは多角形でもよく、多葉形状であっても何ら問題はない。これら中空部分は1つであってもよく、2つ或いは3つ以上の個数を有していてもよい。中空部分は繊維の長手方向に連続であっても、不連続であってもよい。好ましくは、断面形状の中に2つ或いは3つの中空部分を有し、繊維表面に現れない中空部分を隔てる部分を有することが望ましい。
【0016】
また、繊維断面の外周形状は円形或いは楕円形状であってもよく、三角形或いは多角形であってもよい。更に、三葉またはそれ以上の多葉形状であっても何ら問題はない。ただし、繊維断面に中空部を含む構造が好ましい。
ポリプロピレン捲縮繊維の製造工程において、中実断面の捲縮繊維、特にY断面捲縮繊維では熱量が断面に均一に伝達されやすいために、繊維の断面方向に結晶構造の違いが現れにくく、本発明による熱セット効果が得にくい。
【0017】
本発明のポリプロピレン捲縮繊維の製造は、一般的な溶融紡糸及び延伸方法により行われる。通常紡糸工程で製糸すればよく、1軸或いは2軸押出機により溶融混練された原料をノズルから押出し、紡糸油剤を給油し、糸条を巻取ることにより未延伸糸を得る。未延伸糸はそのまま連続工程で延伸してもよく、或いは一旦ロール(ボビン)に巻取った後、エージングを行い延伸してもよい。延伸工程は1段或いは2段以上の多段であってもよく、多段延伸における延伸倍率比の設定も特に限定されない。また、延伸工程で接触或いは非接触型の熱源を用いても何ら問題ない。延伸時の延伸ローラー温度は60℃以上155℃以下の範囲が好ましい。延伸ローラー温度が60℃より低い場合は、延伸時に単糸切れが多発するために好ましくない。延伸ローラー温度が155℃を超える場合には、断糸が発生しローラーに原糸が巻きついた時など、ローラー上で原糸が融解し、製糸工程の管理面で不都合が生じる。延伸倍率についても溶融紡糸されたフィラメントの破断伸度の範囲で任意に設定することが可能である。最終的に繊維の強伸度は特に限定されることはない。
【0018】
本発明のポリプロピレン捲縮繊維は、延伸工程から連続で捲縮付与加工を行う。捲縮付与は例えば加熱したエアーによる押し込み捲縮加工、所謂エアースタッフィング加工等の一般的なスタッフィング加工でよく、特に限定されるものではない。ポリプロピレン繊維の結晶構造は、断面形状だけではなく、製造段階の熱履歴によっても大きく影響されるため、エアーの加熱温度は140℃以上195℃以下の範囲でなければならず、更に150℃以上170℃以下の範囲がより好ましい。エアー温度が140℃未満の場合では、捲縮が十分に付与されないことがある。またエアー温度が195℃以上の場合では、断面形状によらずDSCカーブの融点ピークが分離した形状が観察されなくなる。加熱エアー温度はDSCカーブにおいて融点ピークの分離が観察される範囲で、製造する原糸の繊度または断面形状により適時決定されなければならない。
【0019】
本発明に使用されるポリプロピレンのQ値(重量平均分子量/数平均分子量の比)は溶融紡糸工程の製糸安定性の面から5未満であることが望ましいが、特に限定されるものではない。ポリプロピレンのメルトフローレート(以下、MFRと略称する。)はJIS K 7210に準拠し、測定温度230℃、測定荷重2.16kgにより測定される。
本発明のポリプロピレン捲縮繊維に用いるポリプロピレンのMFRは7g/min以上であることが好ましく、さらに製糸安定性の面から10g/min以上50g/min以下の範囲であることがより好ましい。MFRが7g/minより小さい場合には、紡糸温度を高温に設定することが必要となり、添加剤の熱安定性が懸念される。また延伸特性も低下するために単糸切れが頻発し、製糸安定性も低下する。MFRが50g/minより大きい場合には、紡糸段階のドローダウンが大きくなり、放流糸切れが起こりやすくなるため好ましくない。
【0020】
本発明のポリプロピレン捲縮繊維の原料であるポリプロピレンには、その用途に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、中和剤、可塑剤、抗菌剤、難燃剤等の添加剤を製糸性を損なわない範囲で添加してもよい。特に安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤を使用することが経年劣化安定性の点から好ましい。
【0021】
添付の図1は、ポリプロピレン捲縮繊維を種々の温度で撚糸熱セットした後に、後記実施例の項で説明した測定法によってDSCを測定した融点ピークのDSCカーブを示す。
図1において縦軸はDSC(mW)を、横軸は融点(℃)を採り、試料として用いたポリプロピレン捲縮繊維は、3芯中空断面ポリプロピレン捲縮繊維を、熱処理しないで測定したもの(D)、145℃で10分(A)、135℃で10分(B)及び125℃で10分(C)熱処理したものを測定した融点カーブをそれぞれ示している。熱処理は無荷重、乾熱で行っており、融点カーブにおいて(C)は174℃と176℃の2箇所に融点ピークが存在していることが分かる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明する。
本発明においてDSC測定、ペンシルポイント感評価は、次のようにして行った。
(1)DSC測定方法
測定は島津製作所株式会社製、島津示差走査熱量計DSC−60によりDSCを測定した。
捲縮繊維約5mgをアルミニウム製試料パンに密封し測定を行った。測定温度は、昇温速度は10℃/minで50℃から200℃まで測定した。測定雰囲気は窒素で、測定中30ml/minの流量で流した。
【0023】
(2)ペンシルポイント感評価方法
捲縮繊維3本を撚数150t/mで撚糸し、撚糸した捲縮繊維を125℃で45秒スペルバセットを行った。スペルバセットした糸をタフティングと同時にカットを行い、カットパイルカーペットを作成した。作成したカットパイルカーペットを目視によりペンシルポイント感を相対的に5段階評価を行った。評価は評価者5人の平均値とし、最もペンシルポイント感の高かったものを5点とし、低かったものを1点とし、平均評価4点以上を合格点とした。
【0024】
[実施例1]
MFRが30g/min、IPFが95%であるiPPを、1軸押出機を使用して紡糸温度220℃で3芯中空断面用ノズルから押出し、500m/minの速度でフィードローラーにより巻取り、未延伸糸を得た。紡糸工程で得た未延伸糸を連続工程で延伸倍率3倍、延伸温度140℃により延伸を行い、更に、連続工程でエアースタッフィング加工を行って捲縮を付与した。捲縮付与工程で使用した加熱エアーの温度は160℃であった。捲縮を付与した後、ワインダーにより巻取り、1330dtex、120フィラメントの単糸断面に3つの中空部を有する3芯中空断面ポリプロピレン捲縮繊維を得た。
得られた3芯中空断面ポリプロピレン捲縮繊維は、DSCを測定すると、165.0℃,171.8℃,174.1℃の3箇所に融点ピークが得られた。更にペンシルポイント感を評価したところ、相対評価で5の評価を得た。
【0025】
比較例1
紡糸ノズルを三角断面用ノズルに変更し、実施例1と同様の方法により紡糸し、未延伸糸を得た。紡糸工程で得た未延伸糸を連続工程で延伸倍率3倍、延伸温度140℃により延伸を行い、エアースタッフィング加工を加熱エアー温度150℃で行って捲縮を付与し、1330dtex、120フィラメントの三角断面ポリプロピレン捲縮繊維を得た。
得られた三角断面ポリプロピレン捲縮繊維は、DSCを測定すると、174.0℃,176.1℃の2箇所に融点ピークが得られた。ペンシルポイント感を評価したところ、相対評価で4の値が得られた。
【0026】
比較例2
紡糸ノズルを円形中空断面ノズルに変更した外は実施例1と同様の方法で製糸を行い、1330dtex、120フィラメントの円形中空断面ポリプロピレンマルチフィラメント捲縮繊維を得た。
得られた円形中空断面ポリプロピレン捲縮繊維は、DSCを測定すると174.6℃,176.9℃の2箇所に融点ピークが得られた。更にペンシルポイント感を評価したところ、相対評価で4の評価を得た。
【0027】
[実施例
実施例1と同様の方法により、2100dtex、180フィラメントの3芯中空断面ポリプロピレンマルチフィラメント捲縮繊維を得た。
得られたポリプロピレンマルチフィラメント捲縮繊維は、DSCを測定すると164.9℃,170.7℃,172.8℃の3箇所に融点ピークが得られた。ペンシルポイント感を評価したところ、相対評価で5の評価を得た。
【0028】
[比較例
エアースタッフィング加工に使用する熱風の温度を200℃とした外は実施例1と同様の方法により、1330dtex、120フィラメントの3芯中空断面ポリプロピレン捲縮繊維を得た。
得られた3芯中空断面ポリプロピレン捲縮繊維のDSCを測定したところ、融点ピークが分離せず、174.3℃に1箇所だけ融点ピークが得られた。ペンシルポイント感を評価したところ、相対評価で3の評価となった。
【0029】
[比較例
紡糸ノズルを三角断面ノズルにした外は、実施例1と同様の方法により、1330dtex、120フィラメントの中実三角断面ポリプロピレン捲縮繊維を得た。
得られたポリプロピレン捲縮繊維のDSCを測定したところ、169.1℃に1箇所だけ融点ピークが得られた。ペンシルポイント感を評価したところ、ポイント感が不足し、相対評価で3の評価となった。
【0030】
[比較例
紡糸ノズルをY断面ノズルとした外は、実施例1と同様の方法により、1330dtex、120フィラメントの中実Y断面ポリプロピレン捲縮繊維が得られた。
得られたポリプロピレン捲縮繊維のDSCを測定したところ、171.2℃に1箇所だけ融点ピークが得られた。ペンシルポイント感を評価したところ、ポイント感が全く得られず、相対評価で1の評価となった。
【0031】
[比較例
MFRが30g/min、IPFが91.5%であるiPPを、実施例1と同様の方法により紡糸、延伸を行い、連続工程でエアースタッフィング加工を行って捲縮を付与した。捲縮付与工程で使用した加熱エアーの温度は140℃であった。捲縮を付与した後、ワインダーにより巻取り、1330dtexで120フィラメントの3芯中空断面ポリプロピレン捲縮繊維を得た。
得られた3芯中空断面ポリプロピレン捲縮繊維のDSCを測定したところ、136.4℃に1箇所だけ融点ピークが得られた。ペンシルポイント感を評価したところ、相対評価で3の評価となった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によるポリプロピレン捲縮繊維は、従来のポリプロピレン捲縮繊維からなるパイル糸を使用したカットパイルカーペットでは得ることができなかったペンシルポイント感と風合いを有し、意匠性に優れたカットパイルカーペットとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】同一の繊維であっても熱処理条件により繊維中の結晶構造が変化するためにDSCの融点ピークが変化することを示す曲線である。

Claims (2)

  1. アイソタクチックペンタッド分率が93%以上98%以下の範囲にあるホモポリプロピレンのみからなり、DSCを測定した際に融点ピークが少なくとも2個所存在し、かつ、断面形状の中に3つの中空部分を有することを特徴とするポリプロピレン捲縮繊維。
  2. DSCを測定した際に得られる少なくとも2個所の融点ピークが、すべて140℃以上180℃以下の範囲にある請求項1記載のポリプロピレン捲縮繊維。
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