JP4204307B2 - トラクタの前輪駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、四輪駆動型トラクタの前輪駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来技術においては、中ミッションケースに後ミッションケースを連結し、中ミッションケース内に前後進切り換え機構、主変速機構等を内蔵し、後ミッションケース内に後輪デフ装置を内蔵し、後輪駆動系動力が伝達される軸に前輪動力を取り出す一対の出力ギヤを設け、前記後ミッションケース内にデフピニオン軸と平行に前輪駆動系の伝動軸を配置し、この伝動軸に前記一対の出力ギヤと噛合する一対の入力ギヤを遊嵌すると共にこの一対の入力ギヤを択一的に伝動軸に固定する油圧パックを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平2000−154869号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術では、後ミッションケースに形成された2枚の前後壁間に、一対の入力ギヤ及び油圧パックを配置し、入力ギヤを出力ギヤと噛合状態にしながら、これら総てに貫通するように伝動軸を挿入して組み立てており、組立、位置調整及び噛合調整等が極めて困難になっている。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにしたトラクタの前輪駆動装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、伝動軸に複数のギヤ及び油圧パックを予め備えた状態で、ミッションケースのケース接続面側から奥へ軸方向に挿入して支持することにより、組立等を極めて簡単にできるようにしたトラクタの前輪駆動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、後輪駆動系の回転軸から速度の異なる動力が伝達される複数の入力ギヤ4、5と、この複数の入力ギヤ4、5の回転を択一的に前輪駆動系の伝動軸6に伝達する油圧パック7とを前記伝動軸6上に備え、前記複数の入力ギヤ4、5及び油圧パック7を予め備えた伝動軸6を前後分割可能なミッションケース8のケース接続面8a側から奥へ軸方向に挿入して支持する支持部9と、この支持部9に支持された前記伝動軸6を前端から嵌合して支持する支持部材10とを前記ミッションケース8に設けている。
【0007】
これによって、伝動軸6上に複数の入力ギヤ4、5及び油圧パック7を備えて予め組み立てた状態でミッションケース8内に挿入して、支持部9及び支持部材10で支持させることができ、前輪駆動装置1の組立、位置調整、噛合調整等が極めて簡単になる。
第2に、変速装置12を内蔵する前ミッションケース8Fの後端に後輪デフ装置13を内蔵する後ミッションケース8Rの前端を連結し、前記後ミッションケース8R内に伝動軸6の後端を前側から軸方向に挿入して支持する前記支持部9を設け、この支持部9に支持された前記伝動軸6を前端から嵌合して支持する嵌合支持部10aを有する前記支持部材10を前ミッションケース8Fの後端又は後ミッションケース8Rの前端に着脱自在に装着している。
【0008】
これによって、支持部材10の構成及び組立が簡便にできる。
第3に、前記後ミッションケース8Rは伝動軸6の後側の入力ギヤ4よりも前側に中間壁37を有し、この中間壁37に後側入力ギヤ4を挿通する開口37aを設け、後側入力ギヤ4を前側入力ギヤ5よりも小径に設定している。
これによって、後ミッションケース8Rに対する前輪駆動装置1の前側から後側への挿入が容易になり、しかも、中間壁37に形成する開口37aを小さくできる。
【0009】
第4に、前ミッションケース8Fに後ミッションケース8Rを連結し、前ミッションケース8F内に前後進切り換え機構14、主変速機構15及び副変速機構16を内蔵し、後ミッションケース8R内に後輪デフ装置13を内蔵し、前記副変速機構16の出力軸17とこれに連結されたデフピニオン軸18とに前輪動力を取り出す一対の出力ギヤ19、20を設け、前記後ミッションケース8R内にデフピニオン軸18と平行に前輪駆動系の伝動軸6を配置し、この伝動軸6に前記一対の出力ギヤ19、20と噛合する一対の入力ギヤ4、5を遊嵌すると共にこの一対の入力ギヤ4、5を択一的に伝動軸6に固定する油圧パック7を備えており、
前記後ミッションケース8R内に伝動軸6の後端を前側から軸方向に挿入して支持する支持部9を設け、前ミッションケース8Fの後端に着脱自在に装着されていて前記出力軸17を支持する支持部材10に前記支持部9に支持された伝動軸6に前端から嵌合して支持する嵌合支持部10aを形成している。
【0010】
これによって、伝動軸6上に複数の入力ギヤ4、5及び油圧パック7を備えて予め組み立てた状態で後ミッションケース8R内に挿入して、支持部9及び支持部材10で支持させることができ、前輪駆動装置1の組立、位置調整、一対の出力ギヤ19、20との噛合調整等が極めて簡単になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、農用トラクタ2のトランスミッションは、メインクラッチを介してエンジン動力が伝達される走行推進軸23の動力を、変速装置12を介して後輪駆動用の後輪デフ装置13に伝達すると共に、前輪駆動用の前輪駆動装置1に伝達可能になっている。
変速装置12は、PTO推進軸24上の走行推進軸23の回転動力を、同じくPTO推進軸24上の走行筒軸25へ前進動力又は後進動力として伝達する前後進切り換え機構14と、前記走行筒軸25とカウンタ軸26とに渡って設けられていて前記前後進動力を多段(4段)変速する主変速機構15と、主変速されたカウンタ軸26の回転を多段(3段)変速して出力軸17に伝達する副変速機構16とを有しており、前記副変速機構16は高低変速機構と超減速機構とで4段変速するように構成することもある。
【0012】
後輪デフ装置13はデフ大ギヤ27と噛合するデフピニオン軸18を有しており、このデフピニオン軸18は前記カウンタ軸26と同心の出力軸17に直結されている。変速装置12で変速された後輪駆動系動力は、デフピニオン軸18から後輪デフ装置13等を介して後輪に伝達される。
前記副変速機構16の出力軸17とこれに連結されたデフピニオン軸18とは後輪駆動系の回転軸であり、これらには前輪動力を取り出す一対の出力ギヤ19、20が設けられている。
【0013】
前記出力軸17及びデフピニオン軸18の下方にはそれらと平行に伝動軸6が配置されている。この伝動軸6には軸受を介して一対の入力ギヤ4、5が遊嵌されており、両入力ギヤ4、5はそれぞれ前記出力ギヤ19、20と常時噛合している。
伝動軸6上の入力ギヤ4、5は軸方向に間隔をおいて前後に配置され、それらの間には油圧パック7が設けられていて、一対の入力ギヤ4、5を伝動軸6に択一的に固定可能になっている。
【0014】
油圧パック7を作動して入力ギヤ4を固定すると、出力ギヤ19からの動力が入力ギヤ4を介して伝動軸6に伝達され、入力ギヤ5を固定すると、出力ギヤ20からの動力が入力ギヤ5を介して伝動軸6に伝達される。そして、伝動軸6から前回転軸29、前輪デフ装置等を介して前輪系動力が前輪に伝達される。
前記伝動軸6の前側の入力ギヤ5は出力ギヤ20と略同一径であって等速動力を伝達し、後側の入力ギヤ4は前側の入力ギヤ5及び出力ギヤ19よりも小径であって、増速動力を伝達可能になっている。
【0015】
前記油圧パック7で入力ギヤ4を固定すると、前輪系に前輪周速を後輪より増速させる増速態様を採らせ、入力ギヤ5を固定すると、前輪系に前輪を後輪と同一周速の等速態様を採らせることができ、油圧パック7に作動油を供給せずに入力ギヤ4、5を共にフリー状態にしたときに、前輪を駆動しない2輪駆動態様となる。
30はPTO油圧クラッチで、PTO推進軸24からPTO伝動軸31への動力の断接を行う。
【0016】
前記トランスミッションは前後分割可能なミッションケース8に内蔵されており、ミッションケース8は前ミッションケース8Fと後ミッションケース8Rとをケース接続面8aで接続している。
前ミッションケース8Fは、固定の前支持壁33と中途支持壁34とを有し、前支持壁33に前支持壁部材35が着脱自在に装着され、この前支持壁部材35の前側でメインクラッチを覆っている。従って、前ミッションケース8Fはクラッチハウジングとも言う。
【0017】
前記前ミッションケース8Fは、中途支持壁34と前支持壁部材35とで走行推進軸23、走行筒軸25及びカウンタ軸26等を回転自在に支持し、前後進切り換え機構14、主変速機構15及び副変速機構16等を内蔵しており、前支持壁33は前回転軸29の中途部を支持している。
後ミッションケース8Rは、固定の中間壁37と後壁38とを有し、前ミッションケース8Fの後端のケース接続面8aに装着された支持部材10が後ミッションケース8Rの前内部に配置されており、中間壁37はデフピニオン軸18及びPTO伝動軸31等を支持している。
【0018】
この中間壁37は出力ギヤ19より前側でデフピニオン軸18を支持しており、下部に伝動軸6上の後側の入力ギヤ4を挿通するための開口37aを形成してある。前記入力ギヤ4は入力ギヤ5より小径であるので、開口37aの大きさはは比較的小さくできる。
前記支持部材10は、伝動軸6、出力軸17及び副変速機構16の筒軸39等を支持しており、10aは軸受を介して伝動軸6を支持する嵌合支持部となっている。
【0019】
前記後壁38はデフピニオン軸18の後部を支持する一方、伝動軸6の後端を支持する支持部9を形成している。この支持部9に伝動軸6上の油圧パック7へ作動油を供給するための油圧回路が形成されている。
前記伝動軸6の組み付けは、予め伝動軸6上に入力ギヤ4、5及び油圧パック7を装着してアッセンブリにしておいて、中間壁37にデフピニオン軸18及びPTO伝動軸31を支持した後に、前記アッセンブリを後ミッションケース8Rの前開口から挿入し、中間壁37の開口37aを貫通し、伝動軸6の後端を支持部9に挿入させ、入力ギヤ4を出力ギヤ19に噛合させる。
【0020】
一方、前ミッションケース8Fに前後進切り換え機構14、主変速機構15及び副変速機構16を組み付け、前回転軸29を支持し、出力軸17及び筒軸39を支持する支持部材10を前ミッションケース8Fの後端のケース接続面8aに装着しておく。
この前ミッションケース8Fを後ミッションケース8Rに近づけて行き、支持部材10の嵌合支持部10aを前記支持部9に支持させたアッセンブリの伝動軸6に、その前側から嵌合し、出力ギヤ20を入力ギヤ5に噛合させる。また、伝動軸6を嵌合支持部10aに挿入しながら前回転軸29に連結する。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1、2に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、支持部材10を後ミッションケース8Rの前端に装着するようにしたり、入力ギヤ4及び出力ギヤ19を中間壁37の前側に配置したり、2枚の出力ギヤ19、20を共に出力軸17又はデフピニオン軸18上に配置したりしてもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、伝動軸6上に複数の入力ギヤ4、5及び油圧パック7を備えて予め組み立てた状態でミッションケース8内に挿入して、支持部9及び支持部材10で支持させることができ、前輪駆動装置1の組立、位置調整、噛合調整等が極めて簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すトランスミッションの断面側面図である。
【図2】本発明の要部を示す断面側面図である。
【符号の説明】
1 前輪駆動装置
2 トラクタ
4 入力ギヤ
5 入力ギヤ
6 伝動軸
7 油圧パック
8 ミッションケース
8F 前ミッションケース
8R 後ミッションケース
9 支持部
10 支持部材
10a 嵌合支持部
12 変速装置
13 後輪デフ装置
14 前後進切り換え機構
15 主変速機構
16 副変速機構
17 出力軸
18 デフピニオン軸
19 出力ギヤ
20 出力ギヤ
37 中間壁
37a 開口
Claims (2)
- 前ミッションケース(8F)に後ミッションケース(8R)を連結し、前ミッションケース(8F)内に前後進切り換え機構(14)、主変速機構(15)及び副変速機構(16)を内蔵し、後ミッションケース(8R)内に後輪デフ装置(13)を内蔵し、前記副変速機構(16)の出力軸(17)とこれに連結されたデフピニオン軸(18)とに前輪動力を取り出す等速用出力ギヤ(20)と増速用出力ギヤ(19)とをそれぞれ設け、前記後ミッションケース(8R)内にデフピニオン軸(18)と平行に前輪駆動系の伝動軸(6)を配置し、この伝動軸(6)に前記等速用出力ギヤ(20)と増速用出力ギヤ(19)とにそれぞれ噛合する等速用入力ギヤ(5)と増速用入力ギヤ(4)とを遊嵌すると共にこれら等速用入力ギヤ(5)と増速用入力ギヤ(4)とを択一的に伝動軸(6)に固定する油圧パック(7)を備えており、
前記後ミッションケース(8R)はデフピニオン軸(18)の前後方向中間部を支持する固定の中間壁(37)と後部を支持する固定の後壁(38)とを有し、この中間壁(37)と後壁(38)との間に前記増速用出力ギヤ(19)を配置し、前記後壁(38)に伝動軸(6)の後端を前側から軸方向に挿入して支持する支持部(9)を設け、前記中間壁(37)に伝動軸(6)の後側の増速用入力ギヤ(4)を挿通して前記増速用出力ギヤ(19)と噛合させる開口(37a)を設けており、
前記前ミッションケース(8F)の後端に支持部材(10)を着脱自在に装着し、この支持部材(10)に前記出力軸(17)を前記等速用出力ギヤ(20)の前方で支持させるとともに、前記支持部(9)に支持された伝動軸(6)に前端から嵌合して支持する嵌合支持部(10a)を形成していることを特徴とするトラクタの前輪駆動装置。 - 前記支持部材(10)は、前記等速用出力ギヤ(20)を有する前記出力軸(17)を支持した状態で前記前ミッションケース(8F)の後端のケース接続面(8a)に装着しており、かつ嵌合支持部(10a)を伝動軸(6)に嵌合しながら後ミッションケース(8R)の前内部に配置していることを特徴とする請求項1に記載のトラクタの前輪駆動装置。
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