JP4204183B2 - 情報記録媒体並びに薄膜形成用母材及びその製造方法 - Google Patents

情報記録媒体並びに薄膜形成用母材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4204183B2
JP4204183B2 JP2000266144A JP2000266144A JP4204183B2 JP 4204183 B2 JP4204183 B2 JP 4204183B2 JP 2000266144 A JP2000266144 A JP 2000266144A JP 2000266144 A JP2000266144 A JP 2000266144A JP 4204183 B2 JP4204183 B2 JP 4204183B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
metal layer
reflective metal
recording medium
information
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000266144A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002074752A (ja
Inventor
孝之 土田
治朗 池田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Light Metal Co Ltd
Sony Music Entertainment Japan Inc
Original Assignee
Nippon Light Metal Co Ltd
Sony Music Entertainment Japan Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Light Metal Co Ltd, Sony Music Entertainment Japan Inc filed Critical Nippon Light Metal Co Ltd
Priority to JP2000266144A priority Critical patent/JP4204183B2/ja
Publication of JP2002074752A publication Critical patent/JP2002074752A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4204183B2 publication Critical patent/JP4204183B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)
  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
  • Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録した情報を長期間に亘り安定に読取可能な光学式情報記録媒体と、この情報記録媒体に好適な反射金属層を作製できる薄膜形成用母材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、レーザー光の反射の強弱を情報の検知手段とする光学式情報記録媒体は広く普及し、多方面に利用されている。
このような光学式情報記録媒体は、コンパクトディスクに代表される再生のみ行うROM(read only memory)型媒体、CD−Rディスクと呼ばれるWO(write once)型媒体、DVDなどに代表される媒体に大別されるが、何れの媒体においても、情報を記録した信号層の背面側に反射金属層が設けられる構造が広く採用されている。したがって、媒体に記録した情報を安定に読み出すためには、上記媒体の種類には依存せず、この反射金属層が高い反射率を長期に亘っていかに維持できるかが、媒体の長期信頼性を決める重要な技術課題の一つである。
【0003】
つまり、上述した光学式情報記録媒体では、情報の読取は反射金属層からの反射光を検知して行われるものであるから、反射金属層は物理的および化学的安定性が高く、経時的劣化の少ないことが望まれる。例えば反射率の低下は長期間使用した場合の情報の読取エラーとなり好ましくない。
また、上述した光学式情報記録媒体において情報を反射光で読み取る場合は、反射光量のみで読取の良否が定まるものではなく、レーザー光線を照射して読み取る際にビット長さが長すぎたり短すぎたりして検知される所謂信号周波数の時間的ずれ(ジッターという)が生じ、その時間的ずれが所定値以上となると情報の読取誤差をもたらす。あるいは情報ビットの所定値以上の変形(ピットエラーという)も情報の正確な読取を困難にする。いずれにせよこのような不具合発生は好ましくないことから、読取信号の長期安定性も強く望まれている。
【0004】
上記技術課題を解決すべく、各研究機関において情報記録媒体用の反射金属層の開発が鋭意進められており、例えば次のような材料が提案されている。
(1)特公平07−19396号公報には、重量%で、0.1〜10%のTiを少なくとも含むアルミニウム合金からなる反射金属層が開示されており、耐食性が良好で経時変化も少ないことが報告されている。
(2)特開平11−328673号公報には、重量%で、0.1〜1.5%のSiを含み、更に0.1〜1.5%のMn又は0.05〜0.2%のTiのいずれかを含むアルミニウム合金が記載されており、優れた耐食性をもち、経時変化も小さくできると説明されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の手法には以下に示すような課題があった。
(1)近年は情報記録媒体の市場が拡大するにつれて使用者層も多岐にわたるようになり、これに伴い、高温高湿の雰囲気など過酷な環境下で使用される場面も増える傾向にあるため、例えば雰囲気温度が85℃で相対湿度が95%にて暴露試験を行っても膜質変化が少ないことが求められる。しかしながら、このような過酷な条件下では、上記2つの公報に記載の材料からなる反射金属層では対応が困難となり、反射率が著しく低減したり、あるいはジッターやピットエラーが多発してしまうのが実状であった。
【0006】
(2)また、通常は上記2つの公報からも明らかなように、上記組成の反射金属層は、形成する膜組成とほぼ同じ薄膜形成用母材を用い、高純度な薄膜が得られ易いドライプロセスで作製される。ドライプロセスとしては、例えば膜の密着性に優れるスパッタリング法や極めて高純度の膜が得られ易い蒸着法などが利用される。その際、媒体は情報を記録した面内において均一で均質な再生機能を備える必要があることから、反射金属層にも均質な性質の確保が要求される。
したがって、反射金属層をなす基板への飛翔物の元となる薄膜形成用母材には、組織が微細でかつ組成的偏析も少ない材料が望ましく、このような組織をもつ母材が安定して作製できる製法の開発が強く期待されている。例えば、薄膜形成用母材がスパッタ用途の場合には一体ものとしてある程度の大きさが求められ、具体的には厚さ5〜15cm程度で直径が20〜30cmφ程度のアルミニウム合金の鋳造塊を作製できる安定な製法を確立する必要がある。
つまり、本発明は、長期信頼性に優れた反射金属層を備えた情報記録媒体と、この情報記録媒体を作製する際に好適な薄膜形成用母材及びその製造方法と、を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明者は鋭意検討し研究を重ねた結果、所定量のSi、Fe、Mn、Tiを含有させたアルミニウム合金からなる反射金属層を備えた情報記録媒体は、化学的に安定で反射率の経時変化が小さく、しかも信号特性も良好であることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の発明は、反射金属層が形成された信号層に光を照射することにより信号を読み取る情報記録媒体において、前記反射金属層は、その組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴としている情報記録媒体である。
【0008】
上記構成の情報記録媒体によれば、反射金属層の組成を上記の如くすることによって、成膜直後におけるレーザー光線等の光の反射量が高く、しかも信号特性が良好で読取エラーの少ない媒体が得られる。更には、雰囲気温度85℃、相対湿度95%という環境下に96時間放置するという過酷な暴露試験後においても反射量の低下が殆ど無く、信号特性の劣化も極めて小さいことから、上記組成の反射金属層を備えた媒体は長期安定性に非常に優れている。
本発明において、反射金属層はAlを主たる構成元素とするものであり、このAlに添加されるSi、MnおよびTiは、Alからなる反射金属層の耐食性および信号特性の長期安定性を付与するために添加するものである。Si、MnおよびTiの好適な含有範囲は、重量%で、Siが1.0〜10%、Mnが0.8〜1.2%、Tiが0.2〜0.3%である。
成膜処理によって形成される反射金属層においては、Si、MnおよびTiはAl地に固溶して反射金属層の強度向上に寄与し、たとえ一部はAl−Si−Mn系、Al−Mn系、Al−Ti系等の金属間化合物を形成したとしても極微細な化合物であり、反射金属層の表面を安定化して耐食性が向上するものと思われる。特にSiはその添加量を増すことによって反射率は低下する傾向にあるが、Siの添加量によって反射率を定めることができる。Si、MnおよびTiの含有量が各々の下限値より低いと、この表面安定化による耐食性向上という効果が殆ど無くなる。またそれぞれが上限値を超えると反射金属層の表面における粗面化が進み、その結果、入射するレーザー光線の乱反射が増大し、反射率の低下が発生するので芳しくない。
【0009】
また本発明において、Alに添加されるFeは、Si、MnおよびTiの存在下で反射金属層の信号特性の長期安定性付与のために添加するものである。Feの好適な含有範囲は、重量%で、0.05〜0.25%である。
即ち、Feを下限値0.05%以上含有させると、反射金属層中のFe固溶量が増すにつれて、反射金属層の強度が一層向上し、反射金属層は安定性が増し、その結果、反射金属層の信号特性の長期安定性が向上したものと思われる。しかし、Fe含有量がこの下限値より低いと、この反射金属層における強度向上が殆ど見られず、反射金属層の信号特性の長期安定性も確認されなかった。一方、Feの含有量が上限値0.25%を超えると、薄膜形成用母材中にAl−Fe(−Mn)系などの粗大な化合物が形成され易くなり、母材組織の不均一、異常放電等の発生を生じ、これに伴い反射金属層の表面が粗面化し、入射するレーザー光線の乱反射の増大を招き、反射率が低下するので芳しくない。
【0010】
なお、本発明に係るAl合金は、Ti存在下においてBを、重量%で、0.001〜0.02%の範囲で添加しても構わない。この範囲で添加すると、反射金属層をなす膜組織の微細化が期待できる。
さらに、本発明における不可避不純物とは、Cu、Mg、Cr、Ni、Zn、Ga、V等を意味し、これらの各含有量は重量%で0.05%以下が好ましく、不可避不純物の総量としては0.15%以下が許容範囲である。
本発明に係る情報記録媒体は、好ましくは前記信号層は情報ピットを有し、前記反射金属層が該情報ピットを備えた面に沿って設けられたことを特徴としている。この構成によれば、情報ピットに対してレーザー光を入射させた際に、反射金属層からの戻り光を確実に捉えられるので、記録情報の安定した再生が実現するのでより望ましい。
【0011】
第二の発明は、組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴としている薄膜形成用母材である。
上記組成のアルミニウム合金を薄膜形成用母材として用い、例えばスパッタ法や蒸着法により反射金属層を作製すれば、この母材は金属間化合物が微細均一で組成的偏析も少ないので、この母材を物理的あるいは熱的に飛散させて堆積させた反射金属層も均一で均質な組成とすることが可能となる。つまり、上記組成のアルミニウム合金を薄膜形成用母材として作製した反射金属層を採用するならば、上述したように成膜直後におけるレーザー光線等の光の反射量が高く、しかも信号特性が良好で読取エラーの少なく、更には長期安定性にも優れた情報記録媒体の作製が可能となる。従って、本発明に係る薄膜形成用母材は、優れた信号特性や長期信頼性を備えた情報記録媒体の提供に寄与する。
【0012】
第三の発明は、組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金溶湯を用い、半連続鋳造法で鋳造して鋳塊を作製する工程を備えることを特徴としている薄膜形成用母材の製造方法である。
上記組成のアルミニウム合金溶湯を用い、半連続鋳造法で鋳造することによって、金属間化合物が微細均一で組成的偏析も少ない鋳塊を形成できる。
特に、前記鋳塊を作製する工程は、前記アルミニウム合金溶湯の湯溜内における溶湯温度を715℃〜760℃とし、該アルミニウム合金溶湯の鋳塊半径1/2において、固液界面における凝固時冷却速度を1℃/秒以上とすることによって、金属間化合物が微細均一で組成的偏析も少ない鋳塊が極めて安定に得られるのでより望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明に係る好適な実施形態について図面に基づき詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る情報記録媒体は、これを構成する反射金属層を、その組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム(Al)合金とすることにより、上述した作用・効果が得られる。換言すれば、以下の2点に纏められる。
【0014】
(1)上記反射金属層、すなわち組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるAl合金の反射金属層は、従来使用されているスパッタ法あるいは蒸着法で形成したAl合金に比べて、物理的および化学的安定性に優れ、経時的な変化が少ない。
(2)具体的には、上記組成のAl合金からなる反射金属層を、雰囲気温度85℃で相対湿度95%の環境下に96時間放置しても、反射金属層の反射率は殆ど無かった。また、情報の読取におけるジッターやピットエラーも極めて小さいことから、上記反射金属層を備えた情報記録媒体は、信号特性の長期安定性において優れていることが明らかとなった。
【0015】
以下では、上記作用が確認されたAl合金の組成について、情報記録媒体を構成する反射金属層、並びに、この反射金属層の形成に用いる薄膜形成用母材及びその製造方法という観点から詳述する。
(Si、Mn、Ti)
Alに添加されるSi、MnおよびTiは、従来技術と同様にAl反射膜の耐食性および信号特性の長期安定性を付与するために添加するものである。Si、MnおよびTiの好適な含有範囲は、重量%で、Siが1.0〜10%、Mnが0.8〜1.2%、Tiが0.2〜0.3%である。
成膜処理によって得られた反射金属層においては、前述したとおりSi、MnおよびTiはAl地に固溶して金属層の強度を向上し、一部はAl−Si−Mn系、Al−Mn系、Al−Ti系等の金属間化合物を形成したとしても極微細な化合物で、反射金属層の表面を安定化して耐食性が向上するものと思われる。特にSiはその添加量を増すことによって反射率は低下する傾向にあるが、Si添加量によって反射率を定めることができる。Si、MnおよびTi含有量が各々の下限値より低いと、この表面安定化による耐食性向上という効果が少なくなる。またそれぞれが上限値を超えると、反射金属層の表面における粗面化が進み、その結果、入射するレーザー光線の乱反射が増大し、反射率の低下が発生するので好ましくない。
【0016】
(Fe)
Alに添加されるFeは、Si、MnおよびTiの存在下で反射金属層の信号特性の長期安定性付与のために添加するものである。Feの好適な含有範囲は、重量%で、0.05〜0.25%である。
即ち、Feをこの下限値0.05%以上含有させると、反射金属層中のFe固溶量が増すにつれて、さらに反射金属層の強度が向上し、反射金属層は安定性が増加した結果、反射金属層の信号特性の長期安定性が向上したものと思われる。
本発明に係る薄膜形成用母材は、Feをこの含有範囲としたAl合金溶湯を用い半連続鋳造して作製するので、通常方法では粗大化し易いAl−Mn系等の化合物をAl−Si−Fe−Mn系等の微細化合物とすることができる。
従って、このようなターゲット材を使用してスパッタもしくは蒸着により反射金属層を形成すれば、反射金属層はその表面における粗面化が抑制されるので、反射率の向上や耐食性の改善が図れるので、信号特性の長期安定性が向上する。
【0017】
なお、本発明に係るAl合金は、Ti存在下においてBを、重量%で、0.001〜0.02%の範囲で添加してもよい。この範囲でB添加すると、反射金属層をなす膜組織の微細化を促進できるのでより望ましい。
さらに、本発明におけるAl合金は不可避不純物として、Cu、Mg、Cr、Ni、Zn、Ga、V等を含むが、これらの各含有量は重量%で0.05%以下とし、不可避不純物の総量は0.15%以下とするのがよい。不可避不純物がこの範囲を超えると、上述したSi、Mn、TiあるいはFeの添加効果が阻害されるので芳しくない。
【0018】
換言すれば、薄膜形成用母材は、スパッタ法の原材料として使用され、この原材料から作製される反射金属層は均一で耐食性を妨げる化合物のなるべく少ないものが望まれる。従って、均一な反射金属層を得るには、薄膜形成用母材をより均一なものとする必要がある。即ち、薄膜形成用母材に例えば粗大な金属間化合物が存在すれば、その化合物がスパッタされたときに雰囲気の組成が一時的に変化してスパッタされ、反射金属層の均一性を妨げる。しかしながら、本発明に係る半連続鋳造法によれば、反射金属層の強度あるいは安定性を改善するために含有させるFeを高濃度に含む組成としても、均一な鋳塊が得られる。ゆえに、この鋳塊から作製された薄膜形成用母材は、反射金属層を形成するのに好適である。
ここで、半連続鋳造法とは、アルミニウム(Al)合金溶湯を鋳型内に給湯し、鋳型内でこれを冷却し、凝固して得られた鋳塊を鋳型底部より引き出しつつ、この鋳塊を水冷して連続的に急冷鋳造する方法である。図5は半連続鋳造法を示す模式的な説明図である。図5において、21は水冷鋳型、22は冷却水、23はアルミニウム(Al)合金溶湯、24は鋳塊、25は受台、26は湯溜、27はチューブ、28はフロート、29は固液界面である。
【0019】
以下は、半連続鋳造法にて本発明に係る薄膜形成用母材を作製する手順に従い説明する。
先ず、受台55は水冷鋳型51内に収納(図示せず)した状態とする。
次いで、湯溜56内にAl合金溶湯53を導入する。導入されたAl合金溶湯53は、チューブ57を通過してフロート58に至り、このフロート58で水冷鋳型51内に給湯される。図5の矢印a1、a2、a3は湯溜56内のAl合金溶湯53が水冷鋳型51内に給湯される方向を示す。なお、水冷鋳型51は水冷手段として水52を内蔵する。
その際、フロート58は、適当量のAl合金溶湯53が水冷鋳型51内に給湯された時点で、チューブ57の開口部を塞ぎ、水冷鋳型51内におけるAl合金溶湯53’の上面位置を一定に保つように働き、Al合金溶湯53’量を調節する。
そして、この水冷鋳型51内に給湯されたAl合金溶湯53’は水冷鋳型51と受台55で冷却され、冷却を受けた部分が凝固する。この凝固した部分を鋳塊54と呼ぶ。
この凝固を確認しながら、順次受台55を水冷鋳型51より下方(図5の矢印Cの方向)に引き出す。その際、この引き出された鋳塊54は、その側面に沿って流れ下る(図5の矢印b1、b2の方向)ように水冷鋳型51から供給される水流52’によって更に冷却され続ける。
つまり、受台25が下方に引き出されるにつれて、湯溜56内のAl合金溶湯53はチューブ57、フロート58を通過して水冷鋳型51内に給湯され、その後、水冷鋳型51内で急冷されて鋳塊54が得られる。
【0020】
この作業を連続的に行うことにより図5に示す如き状態になる。湯溜56内のAl合金溶湯53の温度は715℃〜760℃が適当である。715℃より低いと合金元素が溶解しきれず、一部化合物として存在する鋳塊54が形成される。一方、760℃を超えると水冷鋳型51内で堅固に凝固できず、水冷鋳型51よりAl合金溶湯53’が漏れる恐れがある。従って、薄膜形成用母材として好ましい結晶形態である鋳塊54を製造するためには、湯溜56内のAl合金溶湯53の温度を715℃〜760℃とする必要がある。
また、水冷鋳型51内のAl合金溶湯53’の凝固時の冷却速度は1℃/秒以上が適当である。1℃/秒未満であると、合金元素を含む化合物が粗大化した鋳塊54となる恐れがあるので、この鋳塊54からは好ましい薄膜形成用母材は得られ難く、ひいては情報記録媒体に適した均一な金属反射層も形成し難い。凝固時の冷却速度には上限は見られないことから、凝固速度は速ければ速いほど好ましい。なお、ここで、凝固時の冷却速度を測定した位置は、図5に符号59で示した固液界面において、その半径の1/2となる位置、すなわち図5に矢印dで示した矢先の位置である。なお、水冷鋳型51内におけるAl合金溶湯53’を機械的あるいは電磁力等によって攪拌しながら鋳造すると、鋳塊内部の組織を一層均一にできて好ましい。また水冷鋳型51上に溶湯53’を溜めておける断熱材製の鋳型を設けたいわゆるホットトップ鋳型を用いて鋳造すると、鋳塊の周辺部分の組織を一層均一にできて好ましい。
【0021】
以下では、上記方法で得られた薄膜形成用母材を用いて作製した上記組成からなる反射金属層を適用するのに好適な情報記録媒体について、その構成や情報の読取方法等という観点から詳述する。
図1は、本発明に係る情報記録媒体の一例を示す模式的な断面図である。この情報記録媒体10は、コンパクトディスク(通常CDと略称される)などで採用されている単盤ディスクと呼ばれる構造を備えた媒体である。
詳細には、この情報記録媒体10は、情報ピット14を有する信号層(記録層)15、この情報ピット14を備えた面に沿って設けられる反射金属層12、並びに、この反射金属層12の上に設けられる保護層13を備え、この保護層13が最表面をなす表面19Fと平坦をなす裏面19Bとをもつ基板11からなり、この基板11の裏面19B側から情報ピット14に光L1を入射させることを特徴としている。この裏面19Bは再生面と呼ばれ、再生面側から情報ピット14に向けて集光手段18を通してレーザー光線等の光L1を入射し、戻り光を不図示の検知手段で検出することによって情報を再生する。
【0022】
この構成からなる媒体は、先ず光L1に対して透明な基板11に上述の如く種々の情報をデジタル信号に変換した信号が情報ピット14の列として穿孔記録し、この情報ピット14を含む透明な基板11の薄層は信号層(もしくは記録層)15と呼ばれている。
次いで、デジタル信号に変換した信号を情報ピット14の列として穿孔記録された信号層(記録層)15を含む透明な基板11には、スパッタ法または蒸着法等の手段で情報ビット14面に光L1を反射する反射金属層12が設けられる。そして、反射金属層12が設けられた後に保護層13が設けられる。この反射金属層12として、上述した本発明に係る組成のアルミニウム合金からなる薄膜を用いる。
光L1はピックアップ装置の光源(図示せず)から発せられるもので、集光手段18で集光され反射金属層12面に収斂する。読み取りにあたっては、情報記録媒体10を回転させ、透明な基板11のフラットな再生面19B側から光L1を入射させ、収斂した光線が情報ビットを走査し、反射金属層12からの反射光を前記ピックアップ装置で検知し、情報ビット14の列に変換することで、音声や画像、文字などの情報として読み取るものである。
【0023】
図2は、本発明に係る情報記録媒体の他の一例を示す模式的な断面図である。この情報記録媒体20は、一般に片面単層ディスクと呼ばれる媒体であり、構造的には、第一基板21の保護層23側に接着剤26を介して第二基板27を貼り合わせた点のみ図1に示す情報記録媒体10と異なる。
詳細には、情報ピット24を有する信号層25、この情報ピット24を備えた面に沿って設けられる反射金属層22、並びに、この反射金属層22の上に設けられる保護層23を備え、この保護層23が最表面をなす表面と平坦をなす裏面29Bとをもつ第一基板21と、表裏両面とも平坦をなす第二基板27とを具備し、第一基板21と第二基板27の各々の表面同士が接着剤26で固着されてなり、この第一基板21の裏面29B側から情報ピット24に光L2を入射させることを特徴としている。
図2に示す構成の情報記録媒体20は、保護層23の上に第二基板27が接着剤26を介して強固に接着されているので、情報記録媒体10に比べて情報ピット24側が外力から保護される点において優れており、媒体が使用される雰囲気の影響も受けづらい構造をなしている。図2の情報記録媒体20における情報の読取方法は、上述した図1の情報記録媒体10の場合と同様である。
【0024】
図3は、本発明に係る情報記録媒体の更に他の一例を示す模式的な断面図である。この情報記録媒体30は、一般に両面単層ディスクと呼ばれる媒体であり、構造的には、図1に示す情報記録媒体10を2枚用意し、各々の媒体の保護層13側同士を接着剤を介して貼り合わせた構造をなしている。
詳細には、情報記録媒体30は、
情報ピット34aを有する信号層35a、この情報ピット34aを備えた面に沿って設けられる反射金属層32a、並びに、この反射金属層32aの上に設けられる保護層33aを備え、この保護層33aが最表面をなす表面と平坦をなす裏面39aとをもつ第一基板31aと、
情報ピット34bを有する信号層35b、この情報ピット34bを備えた面に沿って設けられる反射金属層32b、並びに、この反射金属層32bの上に設けられる保護層33bを備え、この保護層33bが最表面をなす表面と平坦をなす裏面39bとをもつ第二基板を具備しており、
この第一基板31aと第二基板31bの各々の表面同士が接着剤36で固着されてなり、第一基板31aと第二基板31bの各々の裏面39a、39b側から、各々の情報ピット34a、34bに各々光L3a、L3bを入射させることを特徴としている。
【0025】
したがって、上記構成の情報記録媒体30における情報の読取方法は、図1の情報記録媒体10では片面(再生面19B)側から行っていた読取を、両面(再生面39aと再生面39b)でそれぞれ読取を行う点が大きく異なっている。具体的には、次に述べるような2つのステップ(S31)と(S32)により行われる。
(S31)先ず再生面39a側で読取をする際は、情報記録媒体10と同様に情報記録媒体30を回転させ、透明な基板31aのフラットな再生面39a側からレーザー光線等の光L3aを入射させ、集光手段38aで集光させて情報ビット34aに設けられた反射金属層32a面に収斂させる。収斂した光線が情報ビットを走査し、反射金属層32aからの反射光を不図示のピックアップ装置で検知し、情報ビット34aの列に変換することで、音声や画像、文字などの情報として読み取るものであることは図1の場合と同様である。
(S32)次いで、情報記録媒体30の場合は、再生面39a側からの読取終了後、再生面39b側からレーザー光線等の光L3bを入射させ、集光手段38bで集光させて情報ビット34b設けられた反射金属層32b面に収斂させる。読取は先に述べた情報ビッット34aを光L3aで読み取る場合と同様に、情報ビッット34bを光L3bを用いて読み取る。
これにより、情報記録媒体30は、片面読取の場合すなわち情報記録媒体10や情報記録媒体20に比べて2倍の情報読取力を有する。
【0026】
図4は、本発明に係る情報記録媒体の更に他の一例を示す模式的な断面図である。この情報記録媒体40は、一般に片面2層ディスクと呼ばれる媒体であり、構造的には、図3に示す情報記録媒体30と同じである。しかしながら、図3の情報記録媒体30では両面から読取が行われるのに対して、図4の情報記録媒体40は片面から読取を行う点において異なる。
詳細には、情報記録媒体40は、
情報ピット44aを有する信号層45a、この情報ピット44aを備えた面に沿って設けられる反射金属層42a、並びに、この反射金属層42aの上に設けられる保護層43aを備え、この保護層43aが最表面をなす表面と平坦をなす裏面49aとをもつ第一基板41aと、
情報ピット44bを有する信号層45b、この情報ピット44bを備えた面に沿って設けられる反射金属層42b、並びに、この反射金属層42bの上に設けられる保護層43bを備え、この保護層43bが最表面をなす表面と平坦をなす裏面49bとをもつ第二基板を具備しており、
この第一基板41aと第二基板41bの各々の表面同士が接着剤46で固着されてなり、第一基板41aの裏面49a側から、第一基板41aと第二基板41bの各々の情報ピット44a、44bに各々光L4a、L4bを入射させることを特徴としている。
【0027】
したがって、上記構成の情報記録媒体40における情報の読取方法は、次に述べるような2つのステップ(S41)と(S42)により行われる。
(S41)再生面49a側から光L4aを入射させて情報ピット44aの読取をする際は、情報記録媒体30におけるステップ(S31)と同様に読取が行われる。つまり、先ず再生面49a側で情報ピット44aの読取をする際は、情報記録媒体40を回転させ、透明な基板41aのフラットな再生面49a側からレーザー光線等の光L4aを入射させ、集光手段48aで集光させて情報ビット44aに設けられた反射金属層42a面に収斂させる。収斂した光線が情報ビットを走査し、反射金属層42aからの反射光を不図示のピックアップ装置で検知し、情報ビット44aの列に変換することで、音声や画像、文字などの情報として読み取るものである。
(S42)次いで、情報記録媒体40の場合は、再生面49a側から光L4aを入射させて情報ピット44aを読み取った後、同じ再生面49a側から光L4bを入射させて今度は情報ピット44bの読み取りを行う。
その際は、再生面49a側から光L4bを入射させ、集光手段48bで集光させて情報ピット44bに設けられた反射金属層42bに収斂させて読み取る。この場合、レーザー光線等の光L4bの少なくとも一部は情報ピット44aに設けられた反射金属層42aを通過させる必要があるため、反射金属層42aとしては極薄い膜厚のものが好ましく、例えば厚さ20nm程度の金(Au)膜が好適である。このような形態からなる反射金属層42aを通過した光L4bが情報ピット44bに収斂し、反射光がピックアップの検知手段(図示せず)で検知されて、情報として読み取るものである。
つまり、情報記録媒体40は、情報記録媒体30と同様に、片面読取の場合すなわち情報記録媒体10や情報記録媒体20に比べて2倍の情報読取力を有する。特に、情報記録媒体40は、この2倍の情報読取力を片面からの読取で実現できる点が情報記録媒体30と異なる。つまり、情報記録媒体40は光源やピックアップ等の読取手段を媒体の片面側に配置しさえすれば良いことから、情報記録媒体40から情報を読み取る装置の薄型化を図る上で大きく寄与する。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
本例では、先ず、Si、Fe、MnおよびTiを含有し、残りがAlと不可避不純物からなるAl合金である鋳塊(直径20cmφ)を半連続鋳造法で作製した。その際、Al合金が含有する各種元素を、Siは0.05〜15%、Feは0.01〜0.30%、Mnは0.01〜1.5%、Ti:0.01〜0.35%の各範囲で変更することにより各種組成のAl合金を形成した。
半連続鋳造法における湯溜内溶湯温度は720℃〜725℃とした。また鋳塊の凝固時の冷却速度は半径1/2の位置における固液界面の位置で2〜10℃/秒であった。表1〜3には、得られた鋳塊の組成を発光分光分析法により調べた結果を示した。なお、この表中に示した組成以外の残部は、Alと不可避不純物である。この鋳塊から薄膜形成用母材として表1〜表3に示した各種組成のスパッタターゲット材を作製した。
このスパッタターゲット材を用い、図2に示す片面単層ディスク構造の情報記録媒体20の反射金属層22を作製した。反射金属層22は、厚さ0.6mmで、透明のポリカーボネート樹脂からなる基板21の情報ピット24面上にスパッタ法により形成し、その厚さは50nmとした。得られた反射金属層の組成を分析した結果、使用した各スパッタターゲット材の組成と形成した反射金属層の組成は同じであることが確認された。
【0029】
次いで、各組成のAl合金からなる反射金属膜22を設けた情報記録媒体20を、雰囲気温度が85℃で相対湿度が95%の環境中に、96時間暴露放置し、情報記録媒体に対して高温高湿負荷テストを行った。ここで、高温高湿負荷テストは、所定の暴露放置時間毎に、所定値以上の欠落(ピットエラー)等を測定する信号系評価と反射金属層の反射率を測定評価する2項目からなる。
反射率とは、反射金属層22に対して、図2に示す如くレーザー光線からなる光L2を入射させ、反射光量を測定し、入射光量に対する反射光量の比率から求めた数値である。表1〜3に示す反射率の評価結果において、「前」とは暴露時間0時間、即ち暴露前の反射金属層の反射率を示す。一方、「後」とは96時間の暴露放置を終えた後の反射金属層の反射率を示す。
信号系の評価結果とは、DVD規格に基づきジッターとピットエラーを評価し、各規定値を満たすか否かを調べた結果である。表1〜3に示す信号系の評価結果における○印は、ジッター及びピットエラーが評価基準を満足し、情報記録媒体として良好であることを示す。一方、×印はこの評価基準を満たさないことを示す。
【0030】
表1〜3に示した各組成は、次のような意図で変更された。
表1の上段は、各元素の最小値に対して他の元素の含有量を増加させた場合を検討した結果である。これに対して、表1の下段は、Siの含有量を変更し、他の元素はある一定値に固定(Fe=0.15%、Mn=1.0%、Ti=0.25%)した場合である。
表2の上段は、試料No.16以外は、Feの含有量を変更し、他の元素はある一定値に固定(Mn=1.0%、Ti=0.25%、Si=5.0%)した場合である。一方、表2の下段は、Mnの含有量を変更し、他の元素はある一定値に固定(Fe=0.15%、Ti=0.25%、Si=5.0%)した場合である。
表3の上段は、Tiの含有量を変更し、他の元素はある一定値に固定(Fe=0.15%、Mn=1.0%、Si=5.0%)した場合である。最後に、表3の下段に記載した試料No.30〜32は、Fe含有量を最小値0.01%としてSi含有量を大きく変えた場合を示し、試料No.33はFeを含有しない場合である。
【0031】
【表1】
Figure 0004204183
【0032】
【表2】
Figure 0004204183
【0033】
【表3】
Figure 0004204183
【0034】
表1〜3より、以下に述べる評価結果が得られた。但し、以下の説明で用いる%は重量%を表す。
(1)試料1〜5の結果より、Al合金が含有する個別の元素すなわちFe、Mn、Ti、Siを増加させても、信号系の評価結果は改善しない。
(2)試料6〜9の結果より、Feを0.15%含有させたAl合金に、Mn、Ti、Siを所定量以上に加えていくと、信号系の評価結果において良好となる暴露時間が伸びていき、信号系の評価に著しい改善が見られた。
(3)表1下段(試料8〜15)の結果より、Si含有量を1〜10%とした時、信号系の評価結果が良好(暴露96時間後でも○印)であり、かつ、暴露後の反射率も70%以上を確保できる。
(4)表2上段(試料11、16〜21)の結果より、Fe含有量を0.05〜0.25%とした時、信号系の評価結果が良好(暴露96時間後でも○印)であり、かつ、暴露後の反射率も70%以上を確保できる。
(5)表2下段(試料19、22〜25)の結果より、Mn含有量を0.8〜1.2%とした時、信号系の評価結果が良好(暴露96時間後でも○印)であり、かつ、暴露後の反射率も70%以上を確保できる。
(6)表3上段(試料11、26〜29)の結果より、Ti含有量を0.2〜0.3%とした時、信号系の評価結果が良好(暴露96時間後でも○印)であり、かつ、暴露後の反射率も70%以上を確保できる。
(7)試料30〜32の結果より、Fe含有量が少ない(0.01%)とSi含有量を増加させても、96時間後の信号系の評価結果は改善しない。但し、反射率は暴露後も高い値を維持できる。
(8)試料33の結果より、Feを含有しないと、Al合金にMn、Ti、Siを所定量以上に加えても、96時間後の信号系の評価結果は改善しない。
【0035】
以上の結果から、情報記録媒体20を構成する反射金属層22として、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成のAl合金からなる薄膜を設けることにより、上述した高温高湿負荷テストにおいて極めて良好な媒体が安定して得られることが明らかとなった。
なお、ここでは、図2に示す片面単層ディスク構造の情報記録媒体20の反射金属層22に、本発明に係る組成を適用した場合について詳述したが、他の構造の情報記録媒体10、30、40においてもほぼ同様の結果が得られることが見出された。
したがって、本発明に係る組成、すなわち重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成のAl合金を反射金属層に採用すれば、長期信頼性に優れた情報記録媒体の提供が可能になると判断した。
【0036】
(実施例2)
本例では、実施例1でAl合金を作製する際に用いた半連続鋳造法に代えて金型鋳造法を用い、実施例1における試料11の組成からなるAl合金の鋳塊を作製した。鋳塊の直径は実施例1と同様に20cmとした。
本例に係る金型鋳造法の鋳造条件は、半連続鋳造法における湯溜に相当するレンドル内の溶湯温度を720〜725℃とし、凝固時の冷却速度は、鋳塊長さ1/2で半径の1/2の位置で0.01〜0.05℃/秒であった。
つまり、実施例1で用いた半連続鋳造法と大きく異なる点は、凝固時の冷却速度である。具体的には、半連続鋳造法における凝固時の冷却速度が1℃/秒以上であるのに対して、本例に係る金型鋳造法における凝固時の冷却速度は0.01〜0.05℃/秒であり、前者に比べて後者は凝固時に約100倍遅く冷却処理される。
本例に係る金型鋳造法で得られた鋳塊からも、実施例1と同様にスパッタターゲット材を製作した。
そして、このスパッタターゲット材を使用して、実施例1と同じ条件で透明のポリカーボネート樹脂の情報ピット面にスパッタ処理し、実施例1と同じ構成の図2に示す情報記録媒体20を作製し、実施例1と同じ項目について同条件で測定した。その結果を表4に示す。なお、本例で作製した試料は試料34と呼称する。なお、表4には比較のため、実施例1で作製した試料11の結果も合わせて示した。
【0037】
【表4】
Figure 0004204183
【0038】
表4の結果から、鋳造に際して冷却速度の遅いスパッタターゲット材を用いて形成した反射金属層を備えた媒体(試料34)は、鋳造の冷却速度が速い半連続鋳造法で得たスパッタターゲット材を用いて形成した反射金属層を備えた媒体(試料11)と比較して、信号系の評価においては大きな差はなく、反射率においても良好であるが、反射率の劣化速度が大きいことが分かった。
つまり、96時間暴露後において試料11では反射率に変化は見られないのに対して、試料34では反射率が73%から70%へと低下する傾向を示すことから、本発明に係る組成のAl合金を鋳造して作製する方法は、鋳造時の冷却速度が速い半連続鋳造法が好ましいと判断した。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る情報記録媒体は、信号層を構成する反射金属層として、その組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム(Al)合金を設けた。これにより、化学的に安定で反射率の経時変化が小さく、しかも信号特性も良好な情報記録媒体の提供が可能となった。特に、本発明に係る情報記録媒体は、作製後の諸特性が優れるばかりではなく、雰囲気温度85℃、相対湿度95%という高温高湿の雰囲気に長時間放置された後でも、この初期特性を維持できる。ゆえに、従来より長期信頼性の面において著しく改善された情報記録媒体の提供が可能となる。
【0040】
また、上記組成の反射金属層を設けさえすれば、媒体構造に依らず、上記効果が得られる。本願では、図1〜図4に示した代表的な4種類の情報記録媒体に適用した例について述べたが、本発明は、反射金属層が形成された信号層に光を照射することにより信号を読み取る情報記録媒体であれば、如何なる構造の媒体にも応用できることは言うまでもない。
上記作用・効果をもたらす反射金属層を形成するためには、反射金属層と同じ組成のアルミニウム合金からなる薄膜形成用母材が好適である。反射金属層を設ける作製法に応じて、母材の形態はスパッタターゲット材として提供される。
【0041】
上記薄膜形成用母材は、均一で耐食性に優れた反射金属層を形成する原材料として用いるものである。従って、母材内に例えば粗大な金属間化合物が存在し、その化合物がスパッタあるいは蒸着され、雰囲気の組成が一時的に変化した結果、形成される反射金属層の均一性が阻害される懸念があってはならない。これに対し、本発明に係る組成、すなわち重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組成のAl合金からなる薄膜形成用母材は、含有する金属間化合物が極めて少ないことから、上記特質すなわち高温高湿下における優れた耐久性を備えた反射金属層を安定して作製することに寄与する。
また、上記組成の薄膜形成用母材を安定して製造するためには、半連続鋳造法が有効である。特に、半連続鋳造法で上記組成のAl合金を作製するためには、湯溜56内のAl合金溶湯53の温度と、水冷鋳型51内のAl合金溶湯53の凝固時の冷却速度とを所定値とすることが重要であり、これにより、含有する金属間化合物の極めて少ない母材が常に安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る情報記録媒体の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】 本発明に係る情報記録媒体の他の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】 本発明に係る情報記録媒体の更に他の一例を示す模式的な断面図である。
【図4】 本発明に係る情報記録媒体の更に他の一例を示す模式的な断面図である。
【図5】 本発明に係る半連続鋳造法を示す模式的な説明図である。
【符号の説明】
L1、L2、L3a、L3b、L4a、L4b 光、
10、20、30、40 情報記録媒体、
12、22、32a、32b、42a、42b 反射金属層、
13、23、33a、33b、43a、43b 保護層、
14、24、34a、34b、44a、44b 情報ピット、
15、25、35a、35b、45a、45b 信号層(記録層)、
18、28、38a、38b、48a、48b 集光手段、
19F 表面、
19B、29B、39a、39b、49a、49b 裏面、
21、31a、41a 第一基板、
26、36、46 接着剤、
27、31b、41b 第二基板、
51 水冷鋳型、
52 冷却水、
53 湯溜56内のアルミニウム(Al)合金溶湯、
54 鋳塊、
55 受台、
56 湯溜、
57 チューブ、
58 フロート、
59 固液界面。

Claims (10)

  1. 反射金属層が形成された信号層に光を照射することにより信号を読み取る情報記録媒体において、
    前記反射金属層は、その組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする情報記録媒体。
  2. 前記信号層は情報ピットを有し、前記反射金属層が該情報ピットを備えた面に沿って設けられたことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
  3. 情報ピットを有する前記信号層、該情報ピットを備えた面に沿って設けられる前記反射金属層、並びに、該反射金属層の上に設けられる保護層を備え、該保護層が最表面をなす表面と平坦をなす裏面とをもつ基板からなり、
    前記基板の裏面側から情報ピットに光を入射させることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
  4. 情報ピットを有する前記信号層、該情報ピットを備えた面に沿って設けられる前記反射金属層、並びに、該反射金属層の上に設けられる保護層を備え、該保護層が最表面をなす表面と平坦をなす裏面とをもつ第一基板と、表裏両面とも平坦をなす第二基板とを具備し、該第一基板と該第二基板の各々の表面同士が接着剤で固着されてなり、
    前記第一基板の裏面側から情報ピットに光を入射させることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
  5. 情報ピットを有する前記信号層、該情報ピットを備えた面に沿って設けられる前記反射金属層、並びに、該反射金属層の上に設けられる保護層を備え、該保護層が最表面をなす表面と平坦をなす裏面とをもつ第一基板と第二基板を具備し、該第一基板と該第二基板の各々の表面同士が接着剤で固着されてなり、
    前記第一基板と前記第二基板の各々の裏面側から、各々の情報ピットに光を入射させることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
  6. 情報ピットを有する前記信号層、該情報ピットを備えた面に沿って設けられる前記反射金属層、並びに、該反射金属層の上に設けられる保護層を備え、該保護層が最表面をなす表面と平坦をなす裏面とをもつ第一基板と第二基板を具備し、該第一基板と該第二基板の各々の表面同士が接着剤で固着されてなり、
    前記第一基板の裏面側から、前記第一基板と前記第二基板の各々の情報ピットに光を入射させることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
  7. 組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする薄膜形成用母材。
  8. 前記アルミニウム合金はスパッタターゲット材であることを特徴とする請求項7に記載の薄膜形成用母材。
  9. 組成が、重量%で、Si:1.0〜10%、Fe:0.05〜0.25%、Mn:0.8〜1.2%、Ti:0.2〜0.3%を含有し、残りがAlと不可避不純物からなるアルミニウム合金溶湯を用い、半連続鋳造法で鋳造して鋳塊を作製する工程を備えることを特徴とする薄膜形成用母材の製造方法。
  10. 前記工程は、前記アルミニウム合金溶湯の湯溜内における溶湯温度を715℃〜760℃とし、該アルミニウム合金溶湯の鋳塊半径1/2において、固液界面における凝固時冷却速度を1℃/秒以上とすることを特徴とする請求項9に記載の薄膜形成用母材の製造方法。
JP2000266144A 2000-09-01 2000-09-01 情報記録媒体並びに薄膜形成用母材及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4204183B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000266144A JP4204183B2 (ja) 2000-09-01 2000-09-01 情報記録媒体並びに薄膜形成用母材及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000266144A JP4204183B2 (ja) 2000-09-01 2000-09-01 情報記録媒体並びに薄膜形成用母材及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002074752A JP2002074752A (ja) 2002-03-15
JP4204183B2 true JP4204183B2 (ja) 2009-01-07

Family

ID=18753288

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000266144A Expired - Fee Related JP4204183B2 (ja) 2000-09-01 2000-09-01 情報記録媒体並びに薄膜形成用母材及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4204183B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4622947B2 (ja) * 2006-06-29 2011-02-02 ソニー株式会社 光ディスクおよび光ディスクの製造方法
JP2010250888A (ja) * 2009-04-14 2010-11-04 Kobe Steel Ltd 光情報記録媒体
JP4783857B2 (ja) * 2009-04-14 2011-09-28 株式会社神戸製鋼所 光情報記録媒体およびスパッタリングターゲット
KR20110128198A (ko) 2009-04-14 2011-11-28 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 광 정보 기록 매체, 광 정보 기록 매체의 반사막 형성용 스퍼터링 타깃

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002074752A (ja) 2002-03-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3365762B2 (ja) 光情報記録媒体用の反射層または半透明反射層、光情報記録媒体及び光情報記録媒体用スパッタリングターゲット
US6764735B2 (en) Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium
US6451402B1 (en) Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium
US6280811B1 (en) Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium
US6790503B2 (en) Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium
JP3907666B2 (ja) レーザーマーキング用再生専用光情報記録媒体
KR100445083B1 (ko) 광정보 기록매체용 반사층 또는 반투명 반사층, 광정보기록매체 및 광정보 기록매체용 스퍼터링 타겟
US7033730B2 (en) Silver-reactive metal alloys for optical data storage and recordable storage media containing same
JP2009087527A (ja) 光情報記録用Al合金反射膜、光情報記録媒体および光情報記録用Al合金反射膜の形成用のAl合金スパッタリングターゲット
JP2000109943A (ja) 薄膜形成用スパッタリングターゲット材およびそれを用いて形成されて成る薄膜、および光学記録媒体
US8309195B2 (en) Read-only optical information recording medium
JP4204183B2 (ja) 情報記録媒体並びに薄膜形成用母材及びその製造方法
JP3924308B2 (ja) レーザーマーキング用再生専用光情報記録媒体用Ag合金反射膜の形成用のAg合金スパッタリングターゲット
TWI381377B (zh) Optical information recording media
CN101942644B (zh) 光记录介质用半透明反射膜和反射膜、以及用于形成这些半透明反射膜和反射膜的Ag合金溅射靶
JP2003030901A (ja) 光記録ディスク反射膜形成用アルミニウム合金
JPH0426757A (ja) Al合金薄膜及び溶製Al合金スパッタリングターゲット
JP2898112B2 (ja) 組成均一性に優れる光学式記録媒体の反射膜用Al合金薄膜形成用溶製Al合金スパッタリングターゲット
JP3968662B2 (ja) 光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット
JP2000348383A (ja) 光学的情報記録用媒体及びその製造方法
US20060127630A1 (en) Copper based alloys and optical media containing same
JP2003027158A (ja) 光記録ディスク反射膜形成用金合金
JP2003006927A (ja) 光記録ディスク反射膜形成用金合金
CA2455002A1 (en) Metal alloys for the reflective or the semi-reflective layer of an optical storage medium
JP2006012318A (ja) 光記録媒体用積層反射膜およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20040305

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040525

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070228

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20070228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20070228

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080825

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080916

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20081014

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111024

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121024

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131024

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees