JP4204021B2 - 毛髪セット方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波振動とパーマネント剤とを利用した毛髪セット方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2液性パーマネント剤による毛髪セット方法は、第1剤による毛髪内のSS結合(シスチン結合)の切断、第1剤の洗い流し、第2剤によるSS再結合、第2剤の洗い流しという手順で行われるとともに、より確実なパーマネントセットのために加熱処理がなされるが、pH値の高い第1剤は毛髪に与えるダメージが大きく、第2剤による再結合が不充分であると、SS結合が切断されたままの状態となるために、蛋白変性による損傷も大きくなる。そして、何よりも上記加熱が毛髪に与える損傷が大きい。
【0003】
このために、上記加熱に代えて、パーマネント剤に超音波振動を併用する毛髪セット方法も米国特許第4023579号明細書、米国特許第466977号明細書、特開平3−182203号明細書などに示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の超音波振動を利用した毛髪セット方法における超音波振動の付与は、毛髪への第1剤の塗布時や第2剤の塗布時に行われており、パーマネント剤によるSS結合の切断と再結合とを促進するものとして用いられている。
【0005】
従って、超音波振動はパーマネント剤による毛髪処理時間の短縮という点で機能すると同時に、パーマネント剤が毛髪に与えるダメージも増加させるものとして作用するものとなっている。熱を毛髪に与える場合に比してダメージは小さいとはいえ、ダメージがより少ない状態で確実な毛髪セットを行えるものが望まれている。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは毛髪にやさしい毛髪セット方法を提供するにあり、また短時間で手軽に且つ確実にセットを行うことができる毛髪セット方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、SS結合が切断された毛髪に対して超音波振動を付与すれば、この超音波振動によってSS再結合がなされることを見出した。
【0008】
本発明はこの点に基づくものであり、請求項1の発明は、2液性パーマネント剤における毛髪のSS結合切断用である第1剤で毛髪を処理した後、毛髪の水洗と乾燥とを行い、その後、毛髪を接触させた毛髪接触部を超音波振動させて毛髪に空気酸化促進作用のための超音波振動を付与することで毛髪のSS再結合によるセットを行うとともに、この時、毛髪表面温度の測定温度に応じて超音波発生装置を制御して、毛髪への超音波付与に際しての毛髪表面温度を125℃未満に抑え、更には2液性パーマネント剤における第2剤による毛髪処理は行わないことに特徴を有している。
【0009】
第1剤で毛髪を処理した後、毛髪の水洗と乾燥とを行い、その後、毛髪に超音波振動を付与するために、剤過剰や析出物に起因する問題点を避けることができる。
【0010】
また、2液性パーマネント剤における第2剤による毛髪処理を行わなくても毛髪のセット能力が十分に得られるとともに毛髪にダメージを与えることもないために、全体処理時間の短縮を図ることができる。
【0011】
2液性パーマネント剤における毛髪のSS結合切断用である第1液としては、チオグリコール系のものよりもシステイン系のものを用いることが毛髪に与えるダメージをより少なくする点で好ましい。
【0012】
ここにおいて、毛髪の表面温度が125℃を越えると、毛髪に熱による損傷が生じやすくなるために、毛髪髪表面温度の測定温度に応じて超音波発生装置を制御して、毛髪への超音波付与に際しての毛髪表面温度を125℃未満に抑えるのであるが、この時、毛髪表面温度の測定を毛髪の複数箇所において行って、測定温度として複数箇所における最高温度を用いることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態に基づいて詳述すると、図1は本発明において用いる超音波式のヘアセット器4の一例を示しており、図中3は振動子駆動回路、30は超音波振動子、31は超音波ホーンであり、毛髪2が巻きつけられる毛髪接触部1が上記超音波ホーン31に接続されており、振動子駆動回路3によって駆動されて超音波領域での振動を行う振動子30は、その振動を超音波ホーン31を介して毛髪接触部1に伝達し、毛髪接触部1に接触する毛髪2に超音波振動を付与する。
【0014】
そして上記ヘアセット器による毛髪への超音波振動の付与は、2液性パーマネント剤の第1剤による毛髪処理、つまり毛髪のSS結合の切断の後に行う。SS結合が切断された毛髪に対して超音波振動を付与すれば、毛髪はセットされた状態を維持する。上記ヘアセット器4の毛髪接触部1にSS結合を切断した毛髪を巻き付けて超音波振動を付与すれば、毛髪はカール状態を維持するものであり、パーマネント処理がなされたものとなる。
【0015】
SS結合を切断した毛髪に対して超音波振動を付与すればカール状態を維持するということは、毛髪においてSS再結合がなされたことを意味し、この再結合は酸化によってなされることから、超音波振動が空気酸化促進作用を発揮したものと思われる。
【0016】
上記第1剤としては、チオグリコール系のものとシステイン系のものとが一般に提供されており、どちらを用いてもよいが、後述するようにシステイン系のものを用いる方が好ましい結果を得ることができる。
【0017】
第1剤を毛髪に塗布した後、超音波振動を付与するにあたっては、まず毛髪を乾燥させ、その後に超音波振動を付与することが好ましい。超音波振動の付与時間を短くすることができる上に付与量も少なくすることができる。
【0018】
さらに、第1剤を毛髪に塗布して毛髪に浸透させた後、第1剤を洗い流し、毛髪を乾燥させた後、超音波振動を付与することが好ましい。第1剤の剤過剰や析出物との摩擦による毛髪ダメージを防ぐことができるからである。
【0019】
超音波振動の付与の後、更に2液性パーマネント剤の第2剤による毛髪処理を行ってもよいが、後述するように、超音波振動の付与で毛髪のSS再結合を完了させてしまうことができると思われることから、実際上、第2剤による毛髪処理は処理時間を長くしてしまう上に、かえって毛髪にダメージを与えてしまう虞があり、全体処理時間の短縮を図ることができる点も含めて、第2剤による毛髪処理は行わないほうが良い。なお、第2剤による処理も行う場合は、超音波振動の付与の後に、第2剤の塗布、水洗とする手順で行うのが好ましい。
【0020】
次に上記超音波振動の付与によるSS再結合を図った場合と、従来の2液性パーマネント剤にアイロンによる熱処理を併用した場合とを統計的処理の上で比較した結果について説明する。
【0021】
まず、図2は2液性パーマネント剤としてシステイン系パーマネント剤(パーマ剤)とチオグリコール系パーマネント剤(パーマ剤)とを夫々第1剤のみを使用した時、第1剤と第2剤を共に用いた時、さらに超音波振動の付与として、超音波ホーン31への入力を31Wとした時と36Wとした時の毛髪の切断荷重を調べたものであり、超音波振動は30秒間付与した。サンプルとして毛髪は各9本を使用し、このうちの毛髪同個所の太さを4点計測して4点とも75〜85μmの毛髪を各3本選択して、引っ張り強度試験機にかけた。引張強度試験は長さ10mm以上の毛髪について、1本ずつ測定するものとした。また、試験に供する毛髪は、水素結合や塩結合の影響を避けてSS結合の強度を正しく評価することができるように、純水に2分以上漬けたウェット状態のものとした。図中「機器剤なし」とあるのは、処理前の毛髪のことであり、「機器なし」とあるのは超音波振動の付与を行わなかったものを意味する。
【0022】
なお、2液性パーマネント剤の第1剤としては、アルカリパーマ用として市販されているチオグリーコール酸6.5% pH9のものと、中性パーマ用として市販されているチオグリコール酸6.5% pH8のもの(以上の2つはチオグリコール系)と、アルカリシスパーマ用として市販されているシステイン4.1%、チオグリコール酸1.0% pH9のもの(システイン系)のものとを用いた。
【0023】
また、図3はアイロンによる熱処理を行った場合との毛髪切断荷重を比較したものであり、アイロンについては180℃に毛髪を加熱するものを用いた。使用した2液性パーマネント剤や超音波振動付与は上述のものと同じである。パーマネント剤のみで熱も超音波も与えていない場合より、熱を加えると切断荷重が小さくなっており、毛髪が熱でダメージを受けていることがわかる。また、パーマネント剤のみで熱も超音波も与えていない場合より、超音波振動の付与を行ったほうが切断荷重が大きくなっており、超音波振動の付与が毛髪にダメージを与えにくいことがわかる。
【0024】
さらに、第1剤のみに超音波振動付与を行った場合と、通常のパーマネント剤で処理した場合とを比較すれば、システイン系及びチオグリコール系のいずれのパーマネント剤を用いた場合でも、第2剤が不要であることがわかる。加えるに、システイン系のものは、第2剤の処理をさらに行っても毛髪に与えるダメージを未処理の毛髪との比較で見た時、ダメージが大きく増えることはなかったが、チオグリコール系のものを用いる場合は、第2剤による処理を行わないほうが良いことがわかる。表1にこの結果をまとめた。表中の「シス系」は「システイン系」を、「チオグリ系」は「チオグリコール系」の意味である。
【0025】
【表1】
Figure 0004204021
【0026】
上記のテストに際して、毛髪の表面温度をサーモビュアーを用いて熱や超音波振動による刺激終了時の毛髪表面温度5点を計測した。また、毛髪のセット効果の評価のために、セットは直径10mmのものに20cm毛束を巻き付け長さが13〜15cmとなるように3.0巻きしてカール付けを行うものとし、評価は前述のウェット状態において、3.0巻き分の長さ(バネ長)を測定することで行った。つまり、バネ長が短い方がセット効果が高い。
【0027】
毛髪の表面温度と100%荷重切断の値との散布図を図4に、毛髪の表面温度とバネ長との散布図を図5に示す。両図において、△はアイロンによる140℃熱処理、▲はアイロンによる180℃熱処理、○は31Wの超音波振動、●は36Wの超音波振動、□はホーン形状の異なるものにおける20Wの超音波振動、■はホーン形状の異なるものにおける25Wの超音波振動を与えたものを示している。尚、熱及び超音波振動は比較のために共に30秒間付与するものとした。
【0028】
毛髪表面温度が125℃を越えると、パーマネント剤を使用しない時よりも毛髪のダメージが増加するために、毛髪表面温度は125℃未満、好ましくは120℃未満としておくことがよいのがわかる。また、毛髪のセット効果は超音波振動の付与時と熱付与時とでほぼ同じであることがわかる。
【0029】
図6は毛髪温度(の最高温度)が125℃(120℃)を越えないようにするために、毛髪接触部1に巻き付けた毛髪の複数箇所の温度を測定する温度センサー7を設けて、これら温度センサー7で測定した毛髪表面温度のうちの最高温度に応じて、振動子駆動回路3の動作を制御するようにしたものを示している。
【0030】
なお、本発明において用いることができる超音波式のヘアセット器4は図示例の毛髪にカール付けを行うためのものに限るものではなく、たとえば超音波振動子1に直接毛髪接触部2を貼り付けて、毛髪にストレートセットを行うものであってもよい。
【0031】
また2液性パーマネント剤の第1剤を用いるとしたが、要は毛髪のSS結合を切断するものであればよく、しかも、第2剤を使わない場合は、厳密にはパーマネント剤と言い難いものになる。従って、パーマネント剤に限定するものではない。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明においては、SS結合を切断した毛髪に超音波振動を付与して、超音波振動によってSS再結合を行わせて毛髪のセットを行うものであり、このために2液性パーマネント剤が毛髪に与えるダメージを超音波振動が増加させるということがなく、毛髪にやさしい毛髪セットを行えるものであり、しかも2液性パーマネント剤の第2剤の使用を不用とすることから、処理時間も短くすることができるものであって、短時間で手軽に且つ確実にセットを行うことができる。
【0033】
しかも、第1剤で毛髪を処理した後、毛髪の水洗と乾燥とを行い、その後、毛髪に超音波振動を付与するために、剤過剰や析出物に起因する摩擦でのダメージといった問題点を避けることができる。また、毛髪表面温度の測定温度に応じて超音波発生装置を制御して、毛髪への超音波付与に際しての毛髪表面温度を125℃未満に抑えれば、毛髪の熱による損傷を抑えることができる。
【0034】
2液性パーマネント剤における毛髪のSS結合切断用である第1液として、チオグリコール系のものよりもシステイン系のものを用いれば、毛髪に与えるダメージをより少なくすることができる。
【0035】
また、毛髪表面温度の測定を毛髪の複数箇所において行って、測定温度として複数箇所における最高温度を用いることが毛髪の熱による損傷を抑える点において好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例において超音波振動付与に用いるヘアセット器の概略図である。
【図2】同上の説明図である。
【図3】同上の説明図である。
【図4】同上の説明図である。
【図5】同上の説明図である。
【図6】ヘアセット器の他例の概略図である。
【符号の説明】
1 毛髪接触部
2 毛髪
3 振動子駆動回路
4 ヘアセット器
30 超音波振動子

Claims (3)

  1. 2液性パーマネント剤における毛髪のSS結合切断用である第1剤で毛髪を処理した後、毛髪の水洗と乾燥とを行い、その後、毛髪を接触させた毛髪接触部を超音波振動させて毛髪に空気酸化促進作用のための超音波振動を付与することで毛髪のSS再結合によるセットを行うとともに、この時、毛髪表面温度の測定温度に応じて超音波発生装置を制御して、毛髪への超音波付与に際しての毛髪表面温度を125℃未満に抑え、更には2液性パーマネント剤における第2剤による毛髪処理は行わないことを特徴とする毛髪セット方法。
  2. 2液性パーマネント剤における毛髪のSS結合切断用である第1液として、システイン系のものを用いることを特徴とする請求項1記載の毛髪セット方法。
  3. 毛髪表面温度の測定を毛髪の複数箇所において行って、測定温度として複数箇所における最高温度を用いることを特徴とする請求項1記載の毛髪セット方法。
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