JP4203793B2 - 殺菌装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水や湯の殺菌装置に関するもので、特に循環式風呂等にて用いられる殺菌装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の発明者は、災害時等の汚染された水や、水質の悪い地域での汚れた水を洗浄、殺菌することにより、飲料水や医療用高純度水にする方法、装置を開発して特願2001−386827号、特願2002−278300号として出願した。それは、各種フィルターを用いて土砂類のほか化学物質等を除去して無害化すると共に、これらフィルターにては除去し得ない細菌類を含む微生物を、紫外線を照射して殺菌しあるいは無害化することにより、飲料水はもとより、医療現場等にて用い得る高純度の水を得ることを目的としている。
【0003】
本発明は、飲料水を得ることではなく、温泉場や健康ランド等における風呂の湯等の浄化、殺菌を目的とする。したがって、前記の水の浄化殺菌方法を適用することによりその目的は簡単に実現し得ると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明の装置において対象となる健康ランドや温泉の湯等は、比較的透明度が低く、特に紫外線は混入される不純物の粒子による散乱等によりその透過度は低い。そのために、単に紫外線ランプを配置して湯等の流体に紫外線を照射しても、流体中に混入されている菌を死滅させることはもちろん、無害化させることも困難である。
【0005】
風呂の湯、特に温泉においては、飲用を目的としないために飲料水に比べてフィルターによる浄化がそれほど重要ではない。そればかりか、温泉水はさまざまな成分のものであるが、身体によいとされる物質、成分が多量に混入されており、そのために、透明度が低い。そのため、これら物質、成分や汚れ等は、前記出願にて用いられているような各種フィルターを組み合わせ配置することにより除去でき、流体の透明度を高くすることは容易である。しかし、この方法によれば、温泉等にて有効な物質や成分も除去してしまうため好ましくない。
【0006】
本発明は、各種の物質、成分を含んだまま湯内の微生物、細菌類を死滅あるいは無害化するようにした殺菌装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の装置は、殺菌すべき湯等の流体を流す流路中に比較的接近させて複数の紫外線ランプを配置したものである。そして、流入側より流体を流入させ紫外線ランプの間を通って流体が流れる間に紫外線の照射を受けて微生物、最近特に問題になっているレジオネラ菌を死滅あるいは無害化するようにした。実際には、流路等に設けられた流入口と流出口とを有する殺菌槽で、流入口から流出口へ向けて流れる流体のその流れに対して直角な方向に、1列に並べて複数の紫外線ランプを配列したもので、流体がこれら紫外線ランプ間を流れる際に紫外線の照射を受けるようにしたものである。しかも各紫外線間の間隔を流体が不透明であることを考慮しても十分紫外線が透過し得る距離で、しかも流体の供給量、循環量を考慮しても実用化の可能な間隔に設定することにより、十分な殺菌あるいは無害化を可能にしたものである。
【0008】
また、本発明の装置は、殺菌槽の側壁に流体の流れの方向に沿って次第に内側に突出する斜面つまり流入口側から流出口側に向けて槽内部に突出する斜面を形成したものである。これにより、側壁に沿って流れる流体を側壁より離れる方向、槽の中央部の方向にその流れを変化させることにより、比較的紫外線の照射を受けにくい部分への流れを少なくし得る。それと共にこのように全体としての流体の流れとは異なる方向の流れを強制的に発生させることにより乱流を起こさせる。これらの作用により、流体のうち紫外線ランプよりの紫外線の照射を受けにくい箇所が少なくなり、紫外線による殺菌効果を増大させ得る。したがって、透明度の低い流体であっても、十分な殺菌作用が得られる。
【0009】
更に、本発明の装置は、殺菌槽の底面に、流体の流れの方向に向けて次第に上昇する形状の斜面、つまり流入口側から流出口側に向け上昇する斜面を設けることにより、流体の流れに乱流を起こさせて、同様に紫外線による殺菌効果を増大せしめ得る。
【0010】
また、前述の殺菌槽に設ける斜面は、側壁面と底面の両方に設けてもよい。
【0011】
また、本発明の装置の他の構成は、流体を流す流路中に一定間隔を置いて複数の紫外線ランプを配置し、このランプに近接させまたこれを囲むように反射板を設けた構成であって、ランプと反射板との間を通って流体が流れるようにし、このランプと反射板の間を通る際に紫外線の照射を受けてレジオネラ菌その他の菌や微生物を殺すようにしている。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の温泉等の湯の殺菌装置の実施の形態について述べる。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態の殺菌装置の構成を示す。この図1において、(A)は水平方向の断面図、(B)は垂直方向の断面図である。
【0014】
これら図において、1は装置本体(殺菌槽)で、ステンレス製の仕切り板2により、第1槽11と第2槽12の二つの槽に区切られている。
【0015】
これら二つの槽のうち、第1槽11は殺菌槽1に設けられた流入口4に接続され、この流入口4に、例えば浴槽よりのパイプが連結されていて湯(流体)が流入する。また、この第1の槽11には、不織布等よりなるフィルター21が設けられ、浴槽内の湯に混入された髪の毛や垢等の汚れを取るためのものである。
【0016】
また、第2の槽12には、複数本の紫外線ランプが等間隔に1列に並んで配置されたものが3列設けられている。
【0017】
更に第2の槽12は、浴槽等に湯(流体)を供給する側の流出口9が形成され、この流出口9に循環用のパイプが連結されていて、例えば浴槽に接続されている。
【0018】
このような装置において、モータの運転により浴槽内の湯をパイプを通して殺菌槽本体1の流入口4より第1の槽11に流入させる。この第1の槽11に入った湯は、フィルター21により、湯内に混入されている髪の毛や垢等の入浴による汚れ等を除去する。
【0019】
続いて、第1の槽11内の湯は、モータ22の働きによりパイプ23、24を通って殺菌槽12に送られる。送られた湯は、図において殺菌槽1を右から左へ流れる間に各紫外線ランプの列25、26、27をそのランプ4の間を通り抜けて流れる。
【0020】
このように、複数のランプ間を通る湯は、ランプより発する紫外線にて照射されて殺菌される。
【0021】
この三つのランプ列25、26、27を流れる間に、夫々紫外線ランプの列25、26、27の各ランプより発する紫外線の照射を受けてレジオネラ菌等の細菌類は、ほとんどすべてが殺菌され、少なくとも無害化される。
【0022】
この発明の装置は、フィルター21として、不織布等よりなるフィルターが一つまたは二つ配置されているのみであり、これにより入浴による汚れ等は、十分除去し得る。一方、温泉に含まれる有効成分は、このフィルター21にて除去されることはない。
【0023】
また、温泉の有効成分が混入されていることにより、通常の水よりも透明度が低く、したがって、紫外線の湯中を透過する量も散乱等により比較的急激に減少するが、本発明の装置のように、比較的狭い間隔をおいて紫外線ランプが多数配置されており、つまり図1(A)の25、26、27の位置に図面の上下方向に多数紫外線ランプが配置されており、これら紫外線ランプ間の狭い間隔を通して湯が流れるようにすることにより、多少透明度の低い温泉の湯等であっても、十分殺菌が可能になる。
【0024】
また、湯の透明度がより低い場合、1列に配置する紫外線ランプの数を増やすことにより、つまり、ランプ間の間隔をより小にするか、ランプの照度を増大することにより、十分な殺菌が可能になる。
【0025】
また、殺菌槽の両側壁の断面形状を、図1の(A)に示すように、第2の槽12の内部へ向けて台形状の突出部1aを形成するようにすることにより、一方にのみ紫外線ランプの列が配置されているこの両側壁付近を流れる湯の一部は、台形状の突出部1aの斜面Aにて当たり、槽の中央方向に流れることになり、側壁での殺菌効果の減少は解消され、全体として殺菌効果を得ることが可能である。
【0026】
また、この台形状突出部1aの斜面Aつまり流体の流れる方向に向けて槽内部分に突出する斜面Aによる流れの変化によって乱流が生じ、これによっても殺菌効果が増大する。
【0027】
同様に、図1の(B)に示すように殺菌槽1の底面には流体の流れる方向に沿って次第に高くなる勾配をもった突出部1bを設けて斜面Bを形成することにより斜面Aと同様に底面付近を流れ、紫外線が照射されにくい箇所の流体に対しても紫外線の十分な照射が可能になる。しかも、この斜面Bに当たる流体は、流れの方向を上方に変化し、これにより乱流を生ずるため、紫外線照射の上で有効である。
【0028】
これらの斜面A、Bは、いずれか一方形成するのみでもよい。しかし両斜面A、Bを形成すればより好ましい。
【0029】
また、これら斜面A、Bの傾斜角は、あまり小であると流れの方向の変化が少なく乱流ができにくい等から効果が少ない。また斜面A、Bの傾斜角が大き過ぎると、この斜面に当たった流体の流れの方向が戻る方向に近くなり好ましくない。
【0030】
この斜面Aまたは斜面Bは、その長さが大(面積が大)である程、広い範囲にわたって流体の流れの方向を変化させることが可能であり、また乱流が起こり易い等の理由から、殺菌効果の増大に寄与する。
【0031】
このように、第2の槽12内を図1の右より左に向けて流体が流れる間に、流体は紫外線ランプの間を通って殺菌されるかあるいは無害化される。この殺菌された流体はフィルター28を通り、ポンプ30の働きによって、パイプ29を通って、流出口9より流出し、例えば循環パイプを通り、浴槽に戻される。浴槽に戻された流体(湯)は、紫外線の照射により殺菌され、少なくとも無害化される。一方、比較的大きなゴミ類は、フィルター21、28により除去されるが、温泉の成分等は除去されることはない。
【0032】
また、図1に示す実施の形態において、40はカバーで、このカバー40にはステンレスメッシュフィルターを設けた通気孔と強制換気装置42が設けられている。これにより、殺菌槽1を流れる湯による熱気の除去を不純物の混入を防止しながら行ない得るようにしてある。またカバー40の内面43には結露防止用不燃断熱材が設けられている。
【0033】
更に、紫外線ランプは、常に湯等の比較的不純物を含んだ流体と接している。特に温泉の湯の場合、各種の物質が含まれており、紫外線ランプはこれに常に接している。したがって長時間使用により、これら物質の付着により使用不能となる。そのために交換する必要性が生ずる。これらの理由により、石英等よりなる透明のカバーを各紫外線ランプに設ければこのカバーの交換にてランプ自体は比較的長時間の使用が可能となり、コストの面では有利である。
【0034】
また、不織布等からなるフィルターは、着脱可能にすることが好ましい。このフィルターは使用によりその効果が低下する。それと共にフィルターに一部微生物その他の有害物質が付着するため、定期的な交換や洗浄を行なうことが好ましい。特に、レジオネラ菌は、アメーバー内に混入していることが多く、このアメーバーは不織布等によるフィルターに付着するため、風呂等の湯に殺菌用として本装置を用いる場合、フィルターの交換、洗浄は重要である。
【0035】
図2は、本発明装置の他の第2の実施の形態を示す。
【0036】
この第2の実施の形態の装置は、例えば硫黄泉等のように、混入する成分の濃度や物質による透明度の一層低い湯に対して有効な装置の例である。
【0037】
この図2において、50は紫外線ランプ、51は紫外線ランプの外周面に沿った曲面形状をしたステンレス等よりなる反射板、52、53は夫々流体の流入口および流出口である。
【0038】
この装置によれば流入口52より流入した流体は、紫外線ランプ50と反射板51との間を流れて流出口53より送り出される。この間に流体は紫外線ランプ50より発する紫外線による照射を受け、流体中に混入されている細菌等の微生物は殺菌される。
【0039】
ここで、紫外線ランプ50より発した紫外線は、反射されるため、紫外線による殺菌効果は大である。しかも、紫外線ランプ50と反射板51との間の間隔は比較的小であり、殺菌効果を大である。したがって、透明度の低い流体であっても十分殺菌可能である。しかし、紫外線ランプ50と反射板51との間隔があまり小であると、流れが遅くなり、循環等における流体を殺菌した上で供給する能力が減少する。したがって、流体の透明度によって、適切な間隔にすることが好ましい。
【0040】
図2に示す第2の実施の形態の装置は、一つの紫外線ランプのみを示したが、これを複数本並び配置し、これら複数の各紫外線ランプ50と反射板51の間を同時に流れるようにすれば所望量の流体の殺菌処理が可能である。
【0041】
この第2の実施の形態も、紫外線ランプ50のまわりを覆う石英等よりなる透明カバーを設け、流体がこの透明カバーと反射板との間を流れるようにしてもよい。その場合、透明カバーや反射板を夫々着脱可能にすることにより、その交換や洗浄が容易になる。
【0042】
前記出願にも記載されているように、紫外線の照度が20mw・sec/cm2であれば水中に含まれる微生物のほとんどを殺菌することができる。
【0043】
特に、UV−C領域の紫外線つまり波長域が200nm〜280nmの紫外線が殺菌作用が強く、波長254nmの紫外線が最も殺菌力が強い。
【0044】
したがって、以上述べた実施の形態の装置にて用いる紫外線ランプとしては、波長域が200nm〜280nmの紫外線を発するものが望ましい。また、波長254nmの紫外線を発するランプが最も望ましい。
【0045】
以上の説明は、主として温泉等の湯の殺菌について行なったが、これに限るものではない。例えば、冷房用の冷却水中にもレジオネラ菌等の細菌類等の混入が考えられる。そして、冷却水は、冷房設備のクーリングタワーのファン部分において外部に直接触れ又外部に噴霧される。そのために、この冷却水中に混入した細菌類がクーリングタワー外に放出され、特にその周辺にいあわせた人に害を及ぼす可能性を有している。したがって、この冷却水の循環の途中に本発明の装置を設置することも有効である。このように、本発明の装置は、飲料水等を除いた流体中の殺菌として種々のもので適用し得る。
【0046】
【発明の効果】
本発明の装置によれば、透明度の低い流体の殺菌をそのままの状態を保ったまま可能である。したがって、流体使用の際に、透明度を高くする必要のない流体の殺菌が可能であり、特に温泉等における殺菌に利用すれば、混入されている物質等をほとんど除去することなしに殺菌することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例の構成を示す図
【図2】 本発明の第2の実施例の構成を示す図
【符号の説明】
1 装置本体(殺菌槽)
1a 台形状突出部
1b 突出部
2 仕切り板
4 流入口
9 流出口
11 第1槽
12 第2槽
21 フィルター
22 モータ
23、24 パイプ
25、26、27 紫外線ランプの列
28 フィルター
29 パイプ
30 モータ
Claims (3)
- 流体の流入口と流出口とを有する殺菌槽と、前記殺菌槽内に湯等の流体の流れる方向に対しほぼ直角方向に所望の間隔をおいて1列に並び配置された複数本の紫外線ランプとよりなり、前記殺菌槽の底面に、流れの方向に沿って上方に向かう斜面を形成することにより、斜面に当たった流体がその流れの方向を変化させて乱流を生ずるようにし前記流入口より殺菌槽に流入した流体が前記各紫外線ランプの間の間隙を通って流れ、流出口より流体を供給する装置で、流体が紫外線ランプの間を通過する際にランプよりの紫外線による照射を受けて微生物を死滅させるようにした殺菌装置。
- 前記殺菌槽の両側面に流体の流れる方向に沿って次第に槽内部に向け突出する斜面を設けることにより、少なくとも前記斜面に当たった流体がその流れる方向を変化させることによって乱流を生ずるようにしたことを特徴とする請求項1の殺菌装置。
- 前記殺菌槽の両側面に台形状をした突出部を設けたことを特徴とする請求項1の殺菌装置。
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