JP4203776B2 - 電子材料用洗浄液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子材料用洗浄液に関する。さらに詳しくは、本発明は、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などの電子材料のウェット洗浄に用いられる、気体を溶解し、かつ溶存不純物量の極めて少ない電子材料用洗浄液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などは、RCA洗浄と呼ばれる、硫酸と過酸化水素水の混合液、塩酸と過酸化水素水と水の混合液、アンモニア水と過酸化水素水と水の混合液など、過酸化水素をベースとする濃厚薬液を用いた高温洗浄により清浄化されていた。この洗浄法を採用した場合の多大な薬液コスト、リンス用の超純水コスト、廃液処理コスト、薬品蒸気を排気し新たに清浄空気を作る空調コストを低減し、さらに水の大量使用、薬物の大量廃棄、排ガスの放出といった環境への負荷を低減するために、近年ウェット洗浄工程の見直しが進められている。
本発明者らは、先に洗浄対象物及び洗浄目的に応じて、超純水若しくは超純水に塩酸、アンモニア、過酸化水素、重亜硫酸塩などを溶解した洗浄用液体に、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、塩素ガス、窒素ガス、希ガスなどの気体を溶解した電子材料用洗浄液を開発した。
このような特定の気体を溶解した電子材料用洗浄液は、不純物の含有量が少ないことが要求され、溶解する気体も高純度である必要がある。気体中に含まれる固形の不純物は、市販されているガス用フィルターによって容易に除去することができるが、気体中に含まれる可溶性金属成分や有機物成分は、気体に同伴されて電子材料用洗浄液に混入しやすい。市販されている高純度の気体を購入して使用する手段も考えられるが、高純度の気体が常に適用できる状況で入手し得るとは限らず、また、高純度品の入手が不可能な気体もある。
例えば、オゾンは、オゾンガス単体としてはもちろん、オゾンを含有する高純度の気体としても、ボンベなどで入手できるものではなく、水の電気分解や、空気又は酸素ガスを原料とする無声放電によって使用前に製造され、その純度は製造条件に依存している。オゾンは、一般的に無声放電方式の方が生産性がよいが、電極材質の混入などを起こしやすく、純度の面で劣る。また、水の電解方式にしても、オゾンの純度は、接液材料の材質や表面状態に依存し、高純度なオゾンを得ることは容易ではない。
このために、オゾン、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、塩素ガス、窒素ガス、希ガスなどを溶解し、簡便かつ経済的に製造することができる高純度電子材料用洗浄液が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板、フォトマスク用石英基板などの電子材料のウェット洗浄に用いられる、気体を溶解し、溶存不純物量が極めて少なく、簡便かつ経済的に製造することができる電子材料用洗浄液を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、洗浄用液体に溶解する気体を、あらかじめ純水と接触させて清浄化することにより、不純物の少ない高純度の電子材料用洗浄液を容易に得ることができることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)あらかじめ純水と接触させて水に可溶性の無機物成分又は有機物成分を除去して清浄化したオゾンを0.1〜20mg/リットルのオゾン濃度になるように溶解した洗浄用液体であることを特徴とする電子材料用洗浄液、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の電子材料用洗浄液は、あらかじめ純水と接触させて清浄化した気体を、洗浄用液体に溶解してなるものである。洗浄用液体には特に制限はなく、例えば、純水、超純水、純水又は超純水に塩酸、硫酸、フッ化水素酸、硝酸などを溶解した酸性洗浄液、純水又は超純水にアンモニア、水酸化ナトリウムなどを溶解したアルカリ性洗浄液、純水又は超純水に過酸化水素、酸化性塩素などを溶解した酸化性洗浄液、純水又は超純水に重亜硫酸塩などを溶解した還元性洗浄液などを挙げることができる。
本発明において、洗浄用液体に溶解する気体には特に制限はなく、例えば、オゾン、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、塩素ガス、窒素ガス、アルゴンなどの希ガスなどを挙げることができる。オゾンを溶解した電子材料用洗浄液は、溶存オゾンが低い濃度であっても非常に強い酸化力を示し、電子材料の表面に付着した有機物汚染や金属汚染の除去に効果を発揮する。電子材料用洗浄液中のオゾン濃度は、室温で0.1〜20mg/リットルであることが好ましい。水素ガスを溶解した電子材料用洗浄液は、電子材料の表面に付着した微粒子を極めて効果的に除去することができる。電子材料用洗浄液中の水素ガス濃度は、室温で0.7〜1.5mg/リットルであることが好ましい。酸素ガスを溶解した電子材料用洗浄液は、電子材料表面の金属汚染や微粒子などの洗浄に使用することができ、かつ、酸素ガスには自己分解性がないので、安定性が良好で取り扱いが容易である。電子材料用洗浄液中の酸素ガスの濃度は、室温で10〜40mg/リットルであることが好ましい。
炭酸ガスを溶解した電子材料用洗浄水は、薬品洗浄後のリンス水として使用することができる。超純水に炭酸ガスを溶解して比抵抗を低下させることにより、電子材料表面の帯電を防止することができる。塩素ガスを溶解した電子材料用洗浄液は、電子材料表面の金属汚染などの洗浄に使用することができる。窒素ガスを溶解した電子材料用洗浄水は、メガソニックと併用すると、窒素ガスの一部がイオン化して超純水の比抵抗が下がるので、炭酸ガスを溶解した電子材料用洗浄水と同様に、リンス水として使用することができる。アルゴンなどの希ガスを溶解した電子材料用洗浄液は、メガソニックと併用することによりラジカルの発生が促進されるので、電子材料表面の洗浄液として使用することができる。
【0006】
本発明の電子材料用洗浄液は、溶解すべき気体をあらかじめ純水と接触させて清浄化したのち、洗浄用液体に溶解してなるものである。溶解すべき気体を接触させる純水は、純水から溶解すべき気体中へ不純物が移行しない水質のものであれば特に制限はないが、通常は気体を溶解する洗浄用液体の調製に用いたものと同じ純水を使用することが管理面からは好都合である。例えば、洗浄用液体が超純水である場合には、気体を接触させる純水として同じ超純水を用い、洗浄用液体が超純水に過酸化水素を溶解した酸化性洗浄液である場合は、気体を接触させる純水として、酸化性洗浄液の調製に用いたものと同じ超純水を用いることが好ましい。気体を接触させる純水と、洗浄用液体の調製に用いた純水を同じ純度の純水とすることにより、気体と純水の接触により、純水から気体へ不純物が移行するおそれがなく、気体を清浄化することができる。
本発明において、溶解すべき気体を純水と接触させる方法には特に制限はなく、例えば、気泡式気液接触法、液滴式気液接触法、充填塔を用いる気液接触法などを挙げることができる。気泡式気液接触法は、気体を多数の小気泡とすることにより純水との接触面積を大にするものである。図1は、気泡式気液接触装置の一態様の説明図である。気体は、原料気体配管1を通じて、密閉式の水槽容器2の底部に設けられた多孔板3に導かれ、多数の小気泡となって純水中に放出される。小気泡は、含有する不純物を純水に溶解して清浄化されつつ純水中を浮上し、水槽容器上部において気液分離する。清浄化された気体は、清浄化気体配管4を経由して、洗浄用液体への溶解のために移送される。水槽容器には、純水入口5及び気体清浄化後の水出口6を設け、連続的又は間歇的に水槽容器内の水を更新することが好ましい。気泡式気液接触法としては、この他に、泡鐘塔、多孔板塔などのプレート塔などを挙げることができる。液滴式気液接触法は、純水を噴霧又は雨滴状とすることにより、気体との接触面積を大にするものであり、例えば、フェルド型気体洗浄器などを挙げることができる。充填塔を用いる気液接触法は、充填物を満たした塔の上部から純水を充填物の表面に沿って薄層状に流下させ、気体は塔の下部から充填物の間隙を上昇して純水と向流的に接触させるものである。これらの中で、気泡式気液接触法は、装置が簡単で所要動力も少ないので好適に使用することができる。気体を純水と接触させて清浄化するための条件は、気体の汚染の程度、供給し得る気体の圧力、要求される気体ひいては電子材料用洗浄液の目標純度などを勘案して、適宜選定することができる。
【0007】
純水と気体の接触を始めた初期においては、気体を清浄化するための純水に気体が溶解するために、洗浄用液体に溶解すべき気体が失われる。しかし、清浄化のための純水は、短時間で接触している気体で飽和し、それ以降は実質的に気体は失われることなく清浄化される。清浄化される気体中に含まれる不純物の水への溶解度は、通常は気体自体の水への溶解度よりはるかに大きいので、接触される純水が気体で飽和したのちも、なお多量の不純物を溶解して除去することができる。気体と接触する純水は、一定量を気液接触装置に入れ、一定量の気体と回分式に接触したのち全量を更新することができ、あるいは、気液接触装置中の純水を、連続式に少量ずつ交換して常に一定の水質を保持させることもできる。
水可溶性不純物を含有する気体をそのまま洗浄用液体に溶解すると、得られる電子材料用洗浄液は不純物を含む低純度のものとなるが、本発明の電子材料用洗浄液は、気体を洗浄用液体に溶解する前に、あらかじめ洗浄用液体と同じ純度の純水と接触させ、気体中の不純物を水相に移行させて清浄化するので、不純物による汚染のない高純度の電子材料用洗浄液を得ることができる。
【0008】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
水の電気分解により製造したオゾンを含有する気体を、図1に示される装置を用いて超純水と接触させることにより清浄化したのち、溶存オゾン濃度が5.0mg/リットルになるように超純水に溶解して電子材料用洗浄液を調製した。
この電子材料用洗浄液に含まれる鉄、ニッケル、クロム、鉛、亜鉛、アルミニウム、チタン、銅、銀及び白金の10種の金属の濃度を、誘導結合プラズマ発光質量分析法にて測定したところ、総金属濃度は10ng/リットル以下であった。比較例1
実施例1と同じ水の電気分解により製造したオゾンを含有する気体を、超純水と接触させて清浄化することなく、溶存オゾン濃度が5.0mg/リットルになるように直接超純水に溶解して電子材料用洗浄液を調製した。
この電子材料用洗浄液に含まれる10種の金属の濃度を、実施例1と同様にして測定したところ、総金属濃度は25ng/リットルであった。
実施例2
酸素ガスを原料とする無声放電により製造したオゾンを含有する気体を、図1に示される装置を用いて超純水と接触させることにより清浄化したのち、溶存オゾン濃度が5.0mg/リットルになるように超純水に溶解して電子材料用洗浄液を調製した。
この電子材料用洗浄液に含まれる鉄、ニッケル、クロム、鉛、亜鉛、アルミニウム、チタン、銅、銀及び白金の10種の金属の濃度を、実施例1と同様にして測定したところ、総金属濃度は10ng/リットル以下であった。
比較例2
実施例2と同じ酸素ガスを原料とする無声放電により製造したオゾンを含有する気体を、超純水と接触させて清浄化することなく、溶存オゾン濃度が5.0mg/リットルになるように直接超純水に溶解して電子材料用洗浄液を調製した。
この電子材料用洗浄液に含まれる10種の金属の濃度を、実施例1と同様にして測定したところ、総金属濃度は60ng/リットルであった。
比較例3
実施例1〜2のオゾンを含有する気体の清浄化及び溶解と、比較例1〜2のオゾンを含有する気体の溶解に用いた超純水に含まれる鉄、ニッケル、クロム、鉛、亜鉛、アルミニウム、チタン、銅、銀及び白金の10種の金属の濃度を、実施例1と同様にして測定したところ、総金属濃度は10ng/リットル以下であった。
実施例1〜2及び比較例1〜3の結果を、第1表に示す。
【0009】
【表1】
【0010】
第1表の結果から、オゾンを含有する気体を超純水と接触させて清浄化し、超純水に溶解することにより、無声放電により製造した比較的純度の低いオゾン含有気体を用いた実施例2においても、水の電気分解により製造した比較的純度の高いオゾン含有気体を用いた実施例1と同様に、総金属濃度の低い高純度の電子材料用洗浄液が得られることが分かる。
これに対して、オゾンを含有する気体を超純水と接触させて清浄化することなく、直接超純水に溶解した場合には、得られる洗浄液中の総金属濃度が高く、かつ無声放電により製造したオゾン含有気体を用いた比較例2の方が、水の電気分解により製造したオゾン含有気体を用いた比較例1よりも総金属濃度が高く、使用したオゾン含有気体の純度がそのまま得られる洗浄液の純度に現れている。
比較例3において測定した、オゾン含有気体の溶解に用いた超純水の総金属濃度が低いことからも、比較例1及び比較例2の洗浄液中の金属分は、清浄化することなく使用したオゾン含有気体に同伴されて混入したものであることが確かめられた。
【0011】
【発明の効果】
本発明の電子材料用洗浄液は、洗浄用液体に溶解すべき気体を、あらかじめ純水と接触させて可溶性不純物を除去し清浄化するので、水溶性不純物を含有する気体を原料として使用しても、高純度の電子材料用洗浄液とすることができる。例えば、無声放電により製造したオゾンを含有する気体や、特別な高純度化処理を施されていない水の電気分解によるオゾンを含有する気体を、高純度の電子材料用洗浄液の原料として使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、気泡式気液接触装置の一態様の説明図である。
【符号の説明】
1 原料気体配管
2 密閉式の水槽容器
3 多孔板
4 清浄化気体配管
5 純水入口
6 気体清浄化後の水出口
Claims (1)
- あらかじめ純水と接触させて水に可溶性の無機物成分又は有機物成分を除去して清浄化したオゾンを0.1〜20mg/リットルのオゾン濃度になるように溶解した洗浄用液体であることを特徴とする電子材料用洗浄液。
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