JP4203310B2 - 防眩性反射防止フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子、金属、セラミックなどの被加工物の表面に微細凹凸を形成し、この凹穴により防眩性反射防止フィルムを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
被加工物の表面に微細凹凸を形成することにより、様々な機能を付与することができる。例えば、光学機能として、反射防止、集光、分散、光散乱方向制御など、界面機能として、摩擦低減、耐磨耗性向上、流体抵抗低減などの機能を被加工物表面に付与することができる。また、表面微細加工により、成形品の外観、質感の改良を行うこともできる。
【0003】
表面微細加工方法として、従来より様々な方法が用いられている。例えば非特許文献1では、研削加工、切削加工などの機械加工や、圧子による押し込み加工などの塑性加工が開示されている。また、ガラスビーズ、アルミナなどの粒子を吹き付けるショットブラスト法も用いられている。また、フォトリソグラフィーによる方法も知られている。また、高分子フィルムに微細凹凸をつける方法として、フィルム表面に結着剤とともに微小なビーズを塗布する方法も用いられている。さらに、特許文献1に示されているように、レーザー加工も用いられている。レーザーの種類としては、CO2 レーザー、YAGレーザーが一般的に用いられている。そして、波長、ビーム径、フルエンス、パルス幅、照射回数、デフォーカス、材料の加工性などのレーザー条件を制御することによって加工形状の制御を行っている。
【0004】
【非特許文献1】
マイクロ加工の現状と展望(精密工学会誌Vol.68,No.2,2002、161頁〜166頁)
【特許文献1】
特開平11−151584(第2頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術はそれぞれ改善すべき欠点を有している。機械加工は、規則的な微細凹凸による傾斜面しか形成することができないために、光学機能においてモアレなどの不具合が発生する。また、加工速度が遅いのも難点である。塑性加工は、加工可能な材料の種類に制限があり、また加工速度が遅く、連続的に形状変更ができないという欠点がある。ショットブラストは加工速度が速く、また粒子材質、粒子径、吹き付け条件などによって大まかに凹凸形状を変化させることが可能であるが、微細傾斜面のピッチ及び傾斜角を精密に制御することはできない。フォトリソグラフィーは、レジン塗布、露光、現像、エッジング、洗浄など、工程が多く時間もかかり、また傾斜面を得るためには特殊なマスクを必要とするためコスト高になってしまうという問題がある。フィルムにビーズを塗布する方法においても、微細傾斜面のピッチ及び傾斜角を精密に制御することはできない。
【0006】
また、CO2 レーザー、YAGレーザーによる加工では、熱によって被加工物表面を溶融して加工を行うため、微細傾斜面のピッチ及び傾斜角を高精度に制御することができないという問題がある。また波長が長いため、ビーム径を30〜40μmまでしか絞れず、それ以下の微細な傾斜面のピッチに対応することができないという問題がある。さらに、単なるレーザー条件の制御だけでは細部まで意図する加工形状を得ることができなかった。
【0007】
本発明は、上記各問題点を解決するためになされたものであり、防眩性及び高精細性に優れる防眩性反射防止フィルムを少ない工程で製造することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の防眩性反射防止フィルムの製造方法は、レーザー照射手段によりパルス発振レーザーを被加工物に照射し、前記レーザーの前記被加工物におけるビームプロファイルの形状を、ガウシアン又は略円錐形状とし、前記レーザーによるアブレーション加工により前記被加工物の表面に微細な凹穴を形成し、前記レーザーの光軸を含む前記凹穴の断面において、前記穴面により微細傾斜面を構成し、前記被加工物を、防眩性反射防止フィルム、又は防眩性反射防止フィルム用エンボス版とすることを特徴とする。
【0009】
なお、前記レーザー照射手段の光学レンズ、又は曲面反射ミラー、又は位相マスクを用いて、前記ビームプロファイルの形状を変更して、前記微細傾斜面の傾斜角度を変えることが好ましい。また、前記レーザーのフルエンス、又はデフォーカス、又は照射回数を変更して、前記微細傾斜面の傾斜角を変更することが好ましい。また、前記ビーム径を変更して、前記微細傾斜面のピッチを変更することが好ましい。
【0010】
ミラー系走査手段、又は前記被加工物を保持して前記レーザーと交差する方向に移動する被加工物移動手段、又は音響光学偏向器を用いて、前記被加工物に対する前記レーザーの照射位置を変更することが好ましい。前記レーザーが193〜532nmの波長、又は被加工物に対する反射率が40%以下の波長、又は被加工物に対する吸収係数が2000cm -1 以上の波長をもち、50n秒以下のパルス幅をもつことが好ましい。
【0011】
前記微細傾斜面の傾斜角度θを、微小面積の平均傾斜角度分布を用い測定し、その角度分布がピークとなる部分の値を微小傾斜面の傾斜角度θとし、この傾斜角度θが2°≦θ≦3°であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を実施したレーザー加工装置の概略図である。レーザー発信器10から出力されたレーザー光は、ミラー12によって方向が変えられ、集光レンズ14によって集光され、被加工物16に入射する。被加工物16を載置したXYステージ18が直交する2方向に移動することにより、レーザー光を被加工物16上の任意の位置に照射することができる。
【0013】
193〜532nmの波長、又は被加工物に対する反射率が40%以下の波長、又は被加工物に対する吸収係数が2000cm-1以上の波長をもち、50n秒以下のパルス幅をもつ短波長短パルスレーザーを用いると、レーザー光の光子エネルギーが高く、被加工物への光吸収もよくなるため、アブレーション加工となり、100nm単位の高精度な微細傾斜面のピッチ、傾斜角の制御が可能となる。なお、好ましくは193〜355nmの波長又は被加工物に対する反射率が30%以下の波長又は被加工物に対する吸収係数が3000cm-1以上の波長をもち、10n秒以下のパルス幅をもつレーザーを使用する。なお、被加工物に対する反射率及びパルス幅の下限値は特に限定されないが、これらの値は小さければ小さいほどよい。また、被加工物に対する吸収係数の上限値もまた特に限定されないが、この値は大きければ大きいほどよい。
【0014】
さらに、波長が193〜532nmである短波長のレーザーを用いることにより、ビーム径をより小さく絞ることができ、より微細な加工が可能となる。例えば、波長を短くしたYAGレーザーでは数μmのビーム径まで絞ることができる。また、エキシマレーザーを用い、マスクを通過させるようにすれば1μm程度のビーム径まで絞ることができる。
【0015】
また、ビームプロファイルを加工しようとする形状のプロファイルに変更することによって、より意図する断面形状に近い加工が可能になる。ビームプロファイルを変更する方法としては、集光レンズ14の形状を専用のものに変更する方法の他に、曲面反射ミラー、位相マスクを用いる方法がある。
【0016】
また、レーザー加工の速度については、レーザー照射回数がYAGレーザーを用いた場合最高100KHz、エキシマレーザーを用いた場合でも最高200Hzと高速である。さらに、レーザー照射とクリーニングだけのシンプルな工程で加工が可能であるため、加工コストを抑制することができる。
【0017】
図2に示す実施形態では、図1に示すXYステージ18によって被加工物16を移動させる代わりに、ガルバノミラー20を用いて被加工物16上の任意の位置にレーザー光を照射している。ガルバノミラー20は、X軸反射ミラー20aとY軸反射ミラー20bとからなり、この2つのミラーが互いに直交する方向で反射角を変化させることにより、レーザー光の照射位置を2方向に変化させている。したがって、固定ステージ22を用いて被加工物16の任意の位置に凹穴を形成することができる。
【0018】
また、図3に示す実施形態では、回転することによってレーザー光の反射角を変化させるポリゴンミラー24と、ポリゴンミラー24の回転方向と直交する1方向に移動する1軸移動ステージ26を用いることによって被加工物16上の任意の位置にレーザー光を照射することを可能にしている。
【0019】
さらに、図4に示す実施形態では、ポリゴンミラー24の代わりに音響光学偏向器であるAOD(Acousto Optic Deflector)28を用いている。AOD28は波長が400nm以上のレーザー光の出射方向を制御するものであるが、レーザー光がAOD28を通過した後で波長変換素子30によってレーザー光をさらに短波長にして被加工物16上に照射させることができる。
【0020】
図5に示す実施形態では、ロール32周面の任意位置にレーザー加工を行うため、ロール32を回転させるロール回転部34と、ロール軸方向にレーザー照射部35を移動させるシフト機構36とを備えている。さらにAOD28を組み合わせることによって細かい照射位置制御を行っているが、AOD28に代えてガルバノミラー20又はポリゴンミラー24を用いてもよい。
【0021】
図6に示す実施形態は、図1のレーザー加工装置において、レーザー発信器37としてエキシマレーザーを用い、マスク38を通過したレーザー光を被加工物16上に照射するようにしたものである。このようにエキシマレーザーを用い、マスクを通過させるようにすればビーム径を1μm程度まで絞ることができ、より微細な加工が可能となる。なお、マスクでレーザーのビーム径を絞ると、光回折の影響によりビーム周縁部の強度が強くなってしまうため、必要に応じ、例えば集光レンズ23の形状を変更することによって被加工面上のビームプロファイル形状を前記光回折の影響をなくしたほぼフラットな形状にする。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0023】
[実施例1]
図4に示したレーザー加工装置において、レーザー発信器10としてYAG−SHG(波長532nm)、パルス幅15n秒を用い、波長変換素子30で波長を266nmに変換して、ビーム径φ15μm、フルエンス1μJ/パルス、1箇所当たりに1回の照射を行い、被加工物16であるポリイミドフィルム表面に多数の凹穴を形成し、この凹穴により微細傾斜面を得た。ビームは集光レンズ19でガウシアン型のビームプロファイルを形成し、QスイッチでON、OFFを行い、AOD28と1軸移動ステージ26を用いてポリイミドフィルムを任意位置にランダムに移動することにより、ランダムな傾斜面を形成した。なお、1cm2 当たりの窪み形成個数は約83万個である。
【0024】
図7は、ポリイミドフィルムの表面に形成した微細傾斜面の一例を示す断面図である。レーザービームの照射により凹穴(窪み)50を多数形成し、この凹穴50の穴面を微細傾斜面51とする。また、これら凹穴50の重なりによって各凹穴50の周縁により形成された突起52のピッチをpとし、これを微細傾斜面51のピッチpとする。微細傾斜面を観察してこのピッチpを求めることは実際には困難であるので、このピッチpとして、表面粗さを表すRsm(輪郭曲線要素の平均長さ)を用いる。
【0025】
また、微細傾斜面51の傾斜角度θは、凹穴50の断面形状が湾曲しているので、これを微細領域で観察すると、各微細領域毎にその向きが異なるため、微細傾斜面51の傾斜角度θも異なり、特定することが困難である。このため、微細傾斜面51の傾斜角度θは、微小面積の平均傾斜面角度分布を用いて、その角度分布がピークとなる部分の値を微細傾斜面の傾斜角度θとして用いる。この微小面積の平均傾斜面角度分布は、マイクロマップ社製の3次元非接触表面形状計測システム550Nを用いて求めた。傾斜角度を定量化するため、傾斜面を1.3×1.3μmの微小傾斜面に分割し、その微小面積の平均傾斜面の法線が垂線(被加工物の表面に対する垂線)となす角度のヒストグラムを作成した。図8は得られたヒストグラムの一例であり、このヒストグラムにおいて頻度のピーク部分に対応する角度である2°を微細傾斜面の傾斜角度θとした。図8からも明らかなように、傾斜角度2°周辺に微小領域の平均傾斜面角度が集中しており、目標とする傾斜角度2°前後の微細傾斜面の傾斜角度θが得られていることがわかる。また、作成した傾斜面のRsmは15〜18μmであった。なお、20kHzの繰り返しで加工を行った結果、加工時間は1cm2 当たり約45秒であった。
【0026】
以上のようにして得られたポリイミドフィルムについて、市販のディスプレイに貼り付けられている防眩フィルムとの比較評価を以下の項目で行った。表1にその結果を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
(1)防眩性評価
それぞれのフィルムに対して、ルーバーなしの剥き出し蛍光灯(8000cd/m2 )を映し、蛍光灯の反射像のボケの程度を目視で評価し、光散乱方向制御の一例である防眩性の評価を行った。市販の防眩フィルムにおけるボケの程度を△とし、市販のものよりボケの程度が非常に大きいものを◎とし、市販のものよりボケの程度が大きいものを○とし、市販のものよりボケの程度が小さいものを×とした。
【0029】
(2)高精細さ評価
それぞれのフィルムに対して、フィルム表面の凹凸平均周期Rsmを、JIS−1994の規格に基づき、(株)ミツトヨ製のSJ−401を使用して計測した。Rsmが20μm以下を○とし、21μm以上30μm以下を△とし、31μm以上を×とした。
【0030】
(3)コスト評価
市販のフィルムを製造するのにかかると思われるコストを△とし、市販のものよりコストが小さいものを○、コストが大きいものを×とした。この実施例1では、1cm2 当たり約45秒かかり、製造コストは現時点では1m2 当たり約15万円程度であり、市販品と比べてコスト高であり、評価は×となっている。
【0031】
(4)総合評価
上記(1)〜(3)の評価に基づいて、製品としての総合評価を行った。この実施例1では、防眩性、高精細さで市販の防眩フィルムよりも高機能が得られたが、コスト評価の点で市販品と比べて遜色がある。レーザーで直接フィルム表面を加工する方法はコスト面で量産には向かないが、開発段階では意図する形状のフィルムを短期間で製作できるため有用な方法である。量産方法としては後述するエンボスロール版による転写が効率的な方法である。
【0032】
[実施例2−1]
図1に示したレーザー加工装置において、レーザー発信器10としてYAG−THG(波長355nm)、パルス幅25n秒を用い、ビーム径φ15μm、フルエンス20μJ/パルス、1箇所当たりに4回の照射を行い、被加工物16である酸化クロム板表面に凹穴加工した。酸化クロム板は、金属版に酸化クロムを溶射した後、表面粗さRa0.1μm程度に研磨を行ったものであり、研磨後の酸化クロム層の厚さは200〜300μmである。ビームは集光レンズ14でガウシアン型のビームプロファイルを形成し、QスイッチでON、OFFを行い、XYステージ18を用いて酸化クロム板を任意位置にランダムに移動することにより、ランダムな傾斜面を形成した。なお、1cm2 当たりの凹穴形成個数は約83万個である。
【0033】
作成した傾斜面のRsmは16〜20μmであった。また、実施例1と同様に3次元非接触表面形状計測システムを使用して傾斜面の表面形状を測定し、ヒストグラムを作成したところ、図9に示す結果となり、目標とする傾斜角3°前後の面が形成できていることがわかった。
【0034】
[実施例2−2]
図5に示すレーザー加工装置を用いて、実施例2−1と同形状の加工を行った。そして、ロール回転部34とシフト機構36とを使用してロール32の胴面に加工を行ってエンボスロールを作成し、このエンボスロールの形状を圧力と温度をかけてフィルムに転写した。
【0035】
続いて、このようにエンボス加工を行って得られたフィルムについて、市販の防眩フィルムとの比較評価を実施例1と同様に行った。表2にその結果を示す。エンボスロールを用いることにより、より効率的にフィルム表面に微細傾斜面を形成することが可能となる。
【0036】
【表2】
【0037】
[実施例3−1]
図1に示したレーザー加工装置において、レーザー発信器10としてYAG−FHG(波長266nm)、パルス幅15n秒を用い、ビーム径φ15μm、フルエンス1μJ/パルス、1箇所当たりに1回の照射を行い、被加工物16であるポリイミドフィルム表面に凹穴を形成した。このとき、ビームプロファイルは図10(A)に示すガウシアン型である。加工された凹状窪みの形状は、図10(B)に示すようにビームプロファイルとほぼ同形状である。
【0038】
このビームプロファイルをもつビームを、集光レンズ14として専用に光学設計して製作した非球面レンズを通過させることにより、図11(A)に示す略円錐形状のビームプロファイルに変更してポリイミドフィルムに照射したところ、図11(B)に示すようなほぼ円錐に近い凹状窪みが形成された。略円錐形状のビームプロファイルでは傾斜面がより均一な角度に加工される。
【0039】
こうして得られた円錐状の凹穴をポリイミドフィルム表面に多数ランダムに加工した。作成した傾斜面のRsmは15〜18μmであった。また、実施例1、2と同様にして図12に示すヒストグラムを作成したところ、傾斜面の分布がより均一になっていることがわかった。防眩性の評価を行った結果、傾斜面の分布が均一であるために光散乱の縁がよりクリアーになることが確認された。
【0040】
[実施例3−2]
図5に示すレーザー加工装置を用いて、実施例3−1と同形状の凹穴加工を行った。そして、ロール回転部34とシフト機構36とを使用してロール32の胴面に加工を行ってエンボスロールを作成し、このエンボスロールの形状を圧力と温度をかけてフィルムに転写した。
【0041】
続いて、このようにエンボス加工を行って得られたフィルムについて、市販の防眩フィルムとの比較評価を実施例1と同様に行った。表3にその結果を示す。
【0042】
【表3】
【0043】
[実施例4]
図6に示すレーザー加工装置において、レーザー発信器36としてKrFエキシマレーザー(波長248nm、パルス幅16n秒)を用い、φ100μmの開口部を有するマスク38を通過させて多層フレキシブル基板27のビアホール加工を行った。図13(A)で、レーザー光がマスク38を通過したところであるマスク通過位置P1では、光回折によりビームプロファイルは(B)に示すようにビーム周縁部が突出した形状となっている。このレーザー光を球面レンズである集光レンズ23によって集光させると、多層フレキシブル基板27上にある結像位置P2で、ビームプロファイルが(C)に示すような略矩形となる。したがって、図14(A)に示すように銅42とポリイミド44の積層で構成される多層フレキシブル基板27に断面形状において底部がほぼフラットなビアホール40を形成することができる。このため、所望とする層までの穴加工が可能になり、後に説明するような絶縁不良部分の発生がなくなる。
【0044】
なお、このような場合、集光レンズ23としてビームプロファイルをフラットにするために専用に光学設計したレンズを製作することも考えられるが、高価で製作納期が長い。今回、安価で短納期な球面レンズを用いることによってビームプロファイルを略矩形にすることができ、このビームプロファイルで穴加工することによって確実な導通が得られるビアホール形状を形成できることがわかった。
【0045】
[比較例]
図6に示すレーザー加工装置において、従来通りの一般的な集光レンズを用いた以外は、図のものと同様な構成である。この比較例では、マスクを通過した直後のビームプロファイル形状が図13(B)に示すような周縁部が突出した形状であり、多層フレキシブル基板でも同様なビームプロファイル形状となるため、図14(B)に示すように凹穴の周縁部が深くなったビアホール41となってしまう。したがって、一部が目標とする層よりも深く加工されてしまい、この突出形状部分45によって絶縁不良部分が発生してしまう。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の微細傾斜面の加工方法によれば、材料表面での化学結合を切断するアブレーション加工により前記凹穴の断面形状を制御することにより、また、193〜532nmの波長又は被加工物に対する反射率が40%以下の波長又は被加工物に対する吸収係数が2000cm-1以上の波長をもち、50n秒以下のパルス幅をもつことを特徴とする短波長短パルスレーザーを用いて加工を行うことにより、高精度な任意の微細傾斜面ピッチ、傾斜角を任意のパターンで、しかも少ない工程で高速に形成することができる。
【0047】
また、短波長短パルスレーザーのビームプロファイルを意図する形状に変更することにより、加工形状の細部に渡りさらに高精度な任意の表面傾斜面ピッチ、傾斜角を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施したレーザー加工装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態におけるレーザー加工装置の概略図である。
【図3】本発明の第3の実施形態におけるレーザー加工装置の概略図である。
【図4】本発明の第4の実施形態におけるレーザー加工装置の概略図である。
【図5】本発明の第5の実施形態におけるレーザー加工装置の概略図である。
【図6】本発明の第6の実施形態におけるレーザー加工装置の概略図である。
【図7】ポリイミドフィルムの微細加工面を拡大して示す断面図である。
【図8】実施例1の加工結果を示すヒストグラムである。
【図9】実施例2−1の加工結果を示すヒストグラムである。
【図10】ガウシアンビームプロファイルとガウシアンビーム加工断面を示す説明図である。
【図11】円錐状ビームプロファイルと円錐状ビーム加工断面を示す説明図である。
【図12】実施例3−1の加工結果を示すヒストグラムである。
【図13】実施例4の作用を示す説明図である。
【図14】多層フレキシブル基板のビアホール加工を示す説明図である。
【符号の説明】
10 レーザー発信器
14 集光レンズ
16 被加工物
18 XYステージ
20 ガルバノミラー
24 ポリゴンミラー
26 1軸移動ステージ
28 AOD
32 ロール
34 ロール回転部
36 シフト機構
50 凹穴
51 微細傾斜面
Claims (7)
- レーザー照射手段によりパルス発振レーザーを被加工物に照射し、
前記レーザーの前記被加工物におけるビームプロファイルの形状を、ガウシアン又は略円錐形状とし、
前記レーザーによるアブレーション加工により前記被加工物の表面に微細な凹穴を形成し、
前記レーザーの光軸を含む前記凹穴の断面において、前記穴面により微細傾斜面を構成し、
前記被加工物を、防眩性反射防止フィルム、又は防眩性反射防止フィルム用エンボス版とすることを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。 - 前記レーザー照射手段の光学レンズ、又は曲面反射ミラー、又は位相マスクを用いて、前記ビームプロファイルの形状を変更して、前記微細傾斜面の傾斜角度を変えることを特徴とする請求項1記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
- 前記レーザーのフルエンス、又はデフォーカス、又は照射回数を変更して、前記微細傾斜面の傾斜角を変更することを特徴とする請求項1または2記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
- 前記ビーム径を変更して、前記微細傾斜面のピッチを変更することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
- ミラー系走査手段、又は前記被加工物を保持して前記レーザーと交差する方向に移動する被加工物移動手段、又は音響光学偏向器を用いて、前記被加工物に対する前記レーザーの照射位置を変更することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
- 前記レーザーが193〜532nmの波長、又は被加工物に対する反射率が40%以下の波長、又は被加工物に対する吸収係数が2000cm-1以上の波長をもち、50n秒以下のパルス幅をもつことを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
- 前記微細傾斜面の傾斜角度θを、微小面積の平均傾斜角度分布を用い測定し、その角度分布がピークとなる部分の値を微小傾斜面の傾斜角度θとし、この傾斜角度θが2°≦θ≦3°であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
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