JP4202721B2 - 現金処理装置及び無線ic内蔵紙幣 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、現金処理装置(例えば現金自動支払い機(CD)や現金自動預け払い機(ATM)等)及びその現金処理装置に使用される無線IC内蔵紙幣に関するもので、装置内部で紙幣が重なって搬送される重送障害や、紙幣が搬送されなくなる不送り障害を発生させないようにした現金処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な現金処理装置の構成を図15に示す。尚、現金処理装置の一種である現金自動預け払い機(ATM)では、紙幣に加えて硬貨を扱う機種もあるが、本例では紙幣の取り扱いだけを対象とする。
【0003】
紙幣処理ユニット101は、利用者が入金する時は、入出金部102に投入された紙幣を取り込み、一方利用者が出金する時は、入出金部102に支払金額分の紙幣を払い出すものである。現金カセット103は、金融機関の担当者が支払用の現金を詰めておくカセットである。リジェクトボックス104は、紙幣処理ユニット101内で真券と判定されなかった紙幣(偽札や損傷の著しい紙幣等)を回収するユニットである。カード処理部105は、キャッシュカードを処理する手段である。通帳処理部106は、預貯金通帳に取引明細を印字する手段である。操作パネル107は、利用者が入出金の指示、暗証番号、金額、振込先等取引に必要な情報を入力する手段である。制御部108は、現金処理装置内の各部の制御及び金融機関の本部にあるコンピュータとのデータ通信を行う手段である。
【0004】
次に、図15の紙幣処理ユニット101の構成を図16を用いて説明する。
【0005】
紙幣処理ユニット101は、紙幣を有効利用するために入金された紙幣を出金時に支払用として再使用するリサイクル型となっている。
【0006】
スタッカ110は、入金された紙幣及び出金する紙幣を一時蓄えておく手段である。スタッカ110は金種別に複数台が紙幣処理ユニット101内に搭載されている。スタッカ110の下部にはスタッカ内の紙幣111を一枚ずつ分離して搬送路112へ送り出すための繰り出し機構113が設けられている。紙幣を搬送する搬送路112の分岐部には紙幣の行き先を切り換えるためのポイントがある。入出金部102と現金カセット103の下部にも繰り出し機構113が設けられている。鑑別部114で、スタッカ110や入出金部102から搬送されてきた紙幣の枚数、真贋、金種等を鑑別する。鑑別部114で真券と判定されなかった紙幣はリジェクトボックス104へ収納される。スタッカ110内の紙幣枚数が減少すると現金カセット103から紙幣が適宜補充される。
【0007】
紙幣処理ユニット101における紙幣の流れを以下に示す。
【0008】
▲1▼入金時:入出金部102→搬送路112→鑑別部114→搬送路112→スタッカ110
▲2▼出金時:スタッカ110→搬送路112→鑑別部114→搬送路112→入出金部102
▲3▼補充時:現金カセット103→搬送路112→スタッカ110
次に、図16の繰り出し機構113の構成を図17を用いて説明する。図17(a)は繰り出し機構113を下から見た図、図17(b)は正面から見た図である。ピックローラ1は、積層された紙幣2の下面に当接している。フィードローラ3は、図示していない歯車機構でピックローラ1と連結しており、図示しないローラ駆動モータによってピックローラ1と同一周速度で回転して、紙幣2を右方へ送り出す。
【0009】
セパレータ4は、積層された紙幣2の一番下の紙幣だけを搬送路5側へ通過させ、2枚目以降の紙幣の進行を阻止する。セパレータ4は摩擦力を利用して2枚目以降の紙幣の進行を阻止するため、通常は摩擦係数の大きなゴム材料が使用されている。フィードローラ3とセパレータ4はY軸方向に交互に配置されており、かつY軸方向から見たときにフィードローラ3とセパレータ4は一部が重なって見える。以下この重なり部分をオーバーラップ6と呼び、セパレータ4のフィードローラ3への食い込み量をオーバーラップ量と呼ぶ。このため、オーバーラップ6を通過した紙幣2は撓ませられて、Y軸方向に波打っている。7は搬送ローラで、オーバーラップ6を通過してきた1枚の紙幣を搬送路5へ送り出すものである。8は通過検知センサで、例えば一対の発光素子と受光素子で構成され、発光素子から受光素子へ光ビーム9が張られている。搬送ローラ7を通過してきた紙幣の前端が光ビーム9を横切ると通過検知センサ8はOFF状態になり、一方紙幣の後端が光ビーム9を通過すると光ビーム9は再び受光素子へ達して通過検知センサ8はON状態となる。
【0010】
図示しないローラ制御手段は、通過検知センサ8からのON/OFF信号を用いて図示しないローラ駆動モータを制御して、ピックローラ1とフィードローラ3を間欠回転させ、紙幣を一定間隔で送り出す。10は押圧板で、図示しない押圧機構によって紙幣2をピックローラ1とフィードローラ3へある一定の押圧力11で押し付ける。
【0011】
紙幣処理ユニット101内の鑑別部114は、磁気インクで印刷されている紙幣の模様の磁気パターン情報や紫外線照射で浮かび上がる模様等を利用して、紙幣の真贋と金種の鑑別を行っている。そのため、鑑別部114を通過する紙幣は常に1枚であることが必要であり、2枚以上が重なっている場合には、鑑別不可能である。従って、鑑別部114の上流にある繰り出し機構113はスタッカ110内に積層された紙幣111から確実に1枚だけを分離して搬送路112へ送り出すことが要求される。
【0012】
ところで、紙幣は、新品(官封券)から使用されてシワや折れ目のついた紙幣(流通券)まで、多様な紙幣が流通しており、紙としての機械的な性質は多種多様であるため、以下のような課題があった。
【0013】
▲1▼紙幣の分離状況は、フィードローラ・紙幣間の摩擦力、セパレータ・紙幣間の摩擦力、及び紙幣同士間の摩擦力に依存するが、紙幣の摩擦係数は変動が大きいため、摩擦係数が平均値から大きく外れた紙幣を繰り出す場合には不送りや重送が発生しやすい。
【0014】
▲2▼紙幣の性質(摩擦係数やこしの強さ)が平均から大きくはずれた紙幣(長期間使用されて、こしがほとんど無くなったような紙幣等)を分離する場合には、オーバーラップ量はその紙幣にとって最適値とはなっていないため、不送りや重送が発生してしまう。
【0015】
また官封券と流通券とが混在した状況では摩擦係数やこしの強さが大きく異なるため、特に不送りや重送が発生しやすい。
【0016】
重送は繰り出し機構113から紙幣が出過ぎるという障害であり、不送りは紙幣が繰り出し機構113から出て行かないという障害であって、相反するものである。即ち、重送を防止するためにオーバーラップ量を大き目に設定すると不送りが発生し易くなり、逆に、不送りを防止するためにオーバーラップ量を小さ目に設定すると重送が発生し易くなって、重送の防止対策と不送りの防止対策とはトレードオフの関係にある。
【0017】
そのため、重送と不送りを共に防止できるオーバーラップ量の設定許容値を求めると、紙幣の厚さと同程度の±0.1〜±0.2mmとなる。紙幣処理ユニット101の製造時にオーバーラップ量をこの許容値内に設定し、且つ現金処理装置が稼動している長期にわたって設定値を維持するのは容易ではない。
【0018】
また、重送が発生した場合は、重送した紙幣をリジェクトボックス104あるいはスタッカ110へ回収した後に繰り出し動作を続行することができるが、重送が頻発すると本来なら支払われる紙幣の回収枚数が増加して紙幣の利用効率が低下する。一方、不送りが発生した場合には、繰り出し機構113はリトライ動作をして不送りとなった紙幣を繰り出そうと試みるが、数回のリトライ動作で繰り出されない場合は、人手で不送りとなった紙幣をスタッカ110内から取り除く必要があり、作業中は現金処理装置での現金取り扱いを一時休止することになって利用者へのサービスが低下する。
【0019】
したがって、機械的に重送、不送りが発生しないようにするのは困難であるので、重送や不送りを直ちに高精度に検出して、紙幣の利用効率の低下、利用者へのサービス低下を防ぐようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0020】
【特許文献1】
特開平6−329300号公報(第3頁、図1)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、紙幣が重送されても、個々の紙幣を鑑別することができる現金処理装置及びその現金処理装置に使用される無線IC内蔵紙幣を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
図1は、請求項1記載の発明の原理図である。(a)図は紙幣の構成図、(b)図は鑑別部の上面構成図、(c)図は(b)図の正面図である。尚、従来例を示す図15〜図17と同一部分には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図1(a)に示すように、IC紙幣20は、紙幣2の一部に超小型の無線IC21が内蔵されたものである。
【0024】
図1(b)(c)に示すように、鑑別部114には無線ICと通信する通信手段(アンテナ)22が配置してある。繰り出し機構113から搬送路のベルト23で挟持されて搬送されてきたIC紙幣20が鑑別部114内に進入すると、アンテナ22は無線IC21へ質問電波を発信し、無線IC21からの応答電波を受信して、紙幣情報を入手する。無線IC21と通信して紙幣を鑑別するので、紙幣が重送されている場合でも、個々の紙幣を鑑別することができる。
【0025】
ここで、超小型の無線IC21について説明する。大きさが、0.数mm角、厚さが0.数mmで、データを発信するためのアンテナ機能もチップ本体に収納したICチップである。マイクロ波を当てることで発生する交流電流を整流して電力源として動作し、例えば、128ビットのデータを無線で送り返すものである。
【0026】
図2も請求項1記載の発明の原理図である。(a)図は繰り出し機構を下から見た構成図、(b)図は繰り出し機構の正面図である。尚、従来例を示す図15〜図17と同一部分には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
繰り出し機構には、ピックローラ1と、フィードローラ3と、フィードローラ3に隣接して紙幣を分離するセパレータ4とが設けられている。フィードローラ3上に載ったIC紙幣20の無線IC21の近傍に、無線ICと通信する通信手段(アンテナ)24が配置してある。25は、セパレータ4を駆動してフィードローラ3とセパレータ4間のオーバーラップ量を調整する調整手段(アクチュエータ)である。
【0028】
制御部50は、アンテナ24からの信号に基づいて、ピックローラ1とフィードローラ3上にIC紙幣20が載っていることを確認する。
【0029】
そして、制御部50は、IC紙幣20が繰り出される時には、オーバーラップ量を小さくして、IC紙幣20が繰り出され易くなるようにする。
【0030】
よって、IC紙幣20は不送りにならない。
【0031】
請求項2記載の発明は、前記調整手段は、前記セパレータに接続された圧電素子と、該圧電素子を駆動する圧電素子駆動部とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の現金処理装置である。
【0032】
圧電素子駆動部を用いて圧電素子に印加する電圧を変えることで、圧電素子が伸張し、オーバーラップ量を変えることができる。
【0033】
請求項3記載の発明は、前記調整手段は、前記セパレータに接続されたソレノイドと、該ソレノイドを駆動するソレノイド駆動部と、前記セパレータを前記フィードローラから離れる方向に付勢する付勢手段と、で構成されていることを特徴とする請求項1記載の現金処理装置である。
【0034】
ソレノイド駆動部を用いてソレノイドに印加する電圧を変えることで、付勢手段の付勢力に抗して移動するソレノイドの移動量が変わり、オーバーラップ量を変えることができる。
【0035】
ここで、前記通信手段は、前記鑑別部に単数、複数のうちいずれか配置されていることが望ましい。
【0036】
又、前記通信手段は、繰り出し機構に単数、複数のうちいずれか配置されていることが望ましい。
【0037】
通信手段を単数配置することにより、コストダウンを図ることができる。
【0038】
通信手段を複数配置することにより、正確な通信を行える。
【0039】
請求項4記載の発明は、無線ICを備える無線IC内蔵紙幣であって、前記無線ICは、他の無線ICが送信中は自己の送信を保留し、一定時間後に再送信する制御部を有することを特徴とする無線IC内蔵紙幣である。
【0040】
他の無線ICが送信中は自己の送信を保留し、一定時間後に再送信することにより、混信がなくなり、各紙幣の情報を確実に入手することができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
次に図面を用いて本発明の実施の形態例を説明する。尚、従来例を示す図15〜図17と同一部分には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(鑑別部)
図3を用いて、実施の形態例の鑑別部の構成を説明する。
【0042】
IC紙幣20は、ベルト23によって、鑑別部114内を搬送される。鑑別部114には、IC紙幣20に埋め込まれた無線IC21と通信するためのアンテナ22が、複数個配置してある。
【0043】
本実施の形態例では、アンテナ22は通過していく無線IC21のほぼ真下の位置に配置した。
【0044】
ところで、IC紙幣20の姿勢は、図4に示すように4通りある。尚、図4において、IC紙幣20の姿勢をわかり易くするために、紙は透明として無線IC21と金額の「100」が透けて見えるようにした。IC紙幣20は移動していくので、図4(a)と図4(b)とは同一のアンテナで無線IC21と通信できる。同様に、図4(C)と図4(D)とも同一のアンテナで無線IC21と通信できる。従って、鑑別部114には、アンテナ22を2ヵ所だけに配置した。
【0045】
30は鑑別部114の通信部で、後述する繰り出し制御部50からの指令によって、アンテナ22から質問電波を発射する。IC紙幣20内の無線IC21がアンテナ22上を通過すると、無線IC21は質問電波に応答して、無線IC21内に記録されている紙幣情報(金種、紙幣番号等)を送信する。通信部30はアンテナ22で受信した電波中から紙幣情報を抽出して、繰り出し制御部50へ通知する。
【0046】
尚、図3に示す実施の形態例では、アンテナ22を2ヵ所に配置してあるが、無線IC21と交信可能であれば1ヵ所でもよいし、あるいは2ヵ所以上に配置してもよい。
【0047】
図3に戻って、31は枚数検出部で、鑑別部114に入ってくる紙幣の枚数を検出するものである。紙幣の枚数の検出方法としては、▲1▼圧接したローラ間に紙幣を通過させた時のローラの変位量と紙幣1枚の厚さから枚数を算出する方法、▲2▼紙幣に光を照射した時の透過光量から枚数を算出する方法、等がある。32は判別部で、普通紙幣の真贋と金種を判別するもので、判別方法は従来例と同じである。
【0048】
鑑別部114に2枚のIC紙幣20が重なって搬送されてきた場合の、IC紙幣20の姿勢の組み合わせを、図5に示す。尚、図5では見易くするために、2枚のIC紙幣20を少しずらして図示している。図5の(a)図〜(c)図の組み合わせでは、2枚のIC紙幣20の無線IC21の位置がずれているために、鑑別部114において夫々のIC紙幣20を鑑別することができる。但し、(d)図の場合については、無線IC21がほぼ重なっているために、2個の無線IC21からの電波が混信してしまい、通信部33は紙幣情報をうまく抽出することができないという課題がある。この課題に対する解決手段は、後述する。
(繰り出し機構)
図6を用いて、実施の形態例の繰り出し機構の構成を説明する。
【0049】
IC紙幣20に埋め込まれた無線IC21と通信するためのアンテナ24が、繰り出し機構113に複数個配置してある。アンテナ24は無線IC21のほぼ真下の位置に配置し、図4に示すIC紙幣20の4通りの姿勢に対応して4ヵ所に配置してある。40は繰り出し機構の通信部で、後述する繰り出し制御部50からの指令によって、アンテナ22から質問電波を発射する。ピックローラ1上にIC紙幣20が載っている場合には、無線IC21から応答電波が返ってくるが、普通紙幣が載っている場合には応答電波が返ってこないので、通信部40はアンテナ22で受信した応答電波の有無でIC紙幣20と普通紙幣を区別する。通信部40はピックローラ1上に載っている紙幣が、IC紙幣20か普通紙幣かを繰り出し制御部50へ通知する。尚、同じ姿勢のIC紙幣20が多数枚積層されている場合には、各無線IC21からの応答電波が重なって混信が発生する場合もあるが、通信部40の機能は、ピックローラ1上にある紙幣が、IC紙幣か普通紙幣かを区別することにあるので、混信していてもかまわない。
【0050】
尚、図6の実施の形態例では、アンテナ24を4ヵ所に配置してあるが、無線IC21と交信可能であれば1ヵ所でもよいし、あるいは2ヵ所以上に配置してもよい。
【0051】
41は圧電素子で、一端部がセパレータ4に接続され、セパレータ4の位置を変化させるものである。IC紙幣20を繰り出す場合は、後述する繰り出し制御部50からの指令によって、圧電素子駆動部42は圧電素子41に印可する電圧を制御して、圧電素子41を収縮させ、フィードローラ3とセパレータ4間のオーバーラップ量を初期設定位置よりも小さくして、IC紙幣20が繰り出され易くなるようにする。一方、普通紙幣を繰り出す場合には、圧電素子駆動部42は圧電素子41に印可する電圧を制御して、圧電素子41を伸張させ、オーバーラップ量を初期設定位置まで戻して、普通紙幣が重送されるのを防止する。これら圧電素子41と圧電素子駆動部42とで調整手段が構成されている。
【0052】
本実施の形態例での紙幣処理ユニット101は、図3に示した鑑別部と図6に示した繰り出し機構を組み合わせて以下の構成とした。
【0053】
第1実施の形態例(請求項1に対応):従来例の繰り出し機構(図17)+図3の鑑別部
第2実施の形態例(請求項2に対応):図6の繰り出し機構+図3の鑑別部図7(a)は、第1実施の形態例のブロック図、図7(b)は第2実施の形態例のブロック図である。
【0054】
ここで、第1実施の形態例、第2実施の形態例の繰り出し制御部50の動作を図8〜図11を用いて説明する。
(第1の実施の形態例)
第1の実施の形態例のフローである図8及び図9を用いて説明する。尚、基本的な制御フローを明確にするために、金種は1種類に限定して制御フローが必要以上に複雑になるのを避けた。
【0055】
最初に、制御部108から払い出し枚数(m)を受信し(ステップ1)、ピックローラ1とフィードローラ3の駆動部へ紙幣1枚分の繰り出し動作を指示し(ステップ2)、繰り出し機構113を駆動し、鑑別部114へ紙幣を搬送する。
【0056】
鑑別部114の枚数検出部31から通過枚数(n)を入手し(ステップ3)、通過枚数が1ならば、鑑別部114の通信部30に指令して、紙幣情報を入手する(ステップ5)。紙幣がIC紙幣20ならば、このステップで紙幣情報が入手される。次に、判別部32から紙幣情報を入手する(ステップ6)。紙幣が普通紙幣ならば、このステップで紙幣情報が入手される。
【0057】
そして、紙幣が真券ならば(ステップ7)、搬送路112へ入出金部102への搬送を指示する(ステップ8)。払い出し枚数m=m−1とし、m=0となるまでステップ2からの動作を繰り返し(ステップ9、ステップ10)、所定枚数の払い出しを完了する。
【0058】
ステップ7で紙幣が真券でないと判断された場合、搬送路112へ紙幣をリジェクトボックス104へ搬送するように指示する(ステップ11)。そして、ステップ2に戻り、ステップ2以降の動作を続行する。
【0059】
ステップ4で、n≠1、通過枚数が2以上、即ち重送が発生した場合には、鑑別部114の通信部30に指令してIC紙幣20の紙幣情報及びIC紙幣20と特定した枚数(p)を入手する(ステップ12)。
【0060】
重送された紙幣の枚数(n)とIC紙幣20と特定した枚数(p)とが一致する(ステップ13)と、重送された紙幣は全てIC紙幣20であるので、払い出し枚数m=m−nとし(ステップ14)、m=0ならば、これで、払い出した枚数の合計が、最初に制御部108から指令された払い出し枚数(m)となるので、搬送路112へn枚のIC紙幣20の入出金部102への搬送を指示し(ステップ16)、所定枚数の払い出しを完了する。
【0061】
ステップ14でm<0ならば、所定枚数より払い出し過ぎなので、n枚のIC紙幣20をスタッカ110へ戻すように搬送路112へ指示し(ステップ17)、m=m+nとして(ステップ18)、ステップ2へ戻る。
【0062】
ステップ14でm>0ならば、搬送路112へn枚のIC紙幣20の入出金部102への搬送を指示し(ステップ19)、ステップ2へ戻る。
【0063】
更に、ステップ13で重送された紙幣の枚数(n)とIC紙幣20と特定した枚数(p)とが一致しない場合、IC紙幣20と普通紙幣とが混在して重送されているので、鑑別部114での鑑別が不可能となり、重送された紙幣全てをスタッカ110へ戻すように搬送路112へ指示し(ステップ20)、ステップ2へ戻る。
【0064】
上記構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
従来は重送した紙幣はリジェクトボックスに回収するので、回収分だけ紙幣が無駄になっていた。
【0066】
しかし、本実施の形態例によれば、繰り出し機構113から繰り出されたIC紙幣20が重送している場合でも、無線IC21を使用して、重なっているIC紙幣20を全て鑑別できるため、従来は鑑別不能として回収していた紙幣も正常紙幣として使うことができて、現金処理装置における紙幣の利用効率が向上する。
(第2実施の形態例)
第2の実施の形態例のフローである図10及び図11を用いて説明する。尚、基本的な制御フローを明確にするために、金種は1種類に限定して制御フローが必要以上に複雑になるのを避けた。
【0067】
最初に、制御部108から払い出し枚数(m)を受信し(ステップ1)、繰り出し機構113の通信部40に指令して紙幣情報を入手する(ステップ2)。ピックローラ1上にIC紙幣20がある場合、圧電素子駆動部42へオーバーラップ量の初期設定値からの減少を指示し、不送りをなくすようにする(ステップ4)。ピックローラ1上に普通紙幣がある場合には、圧電素子駆動部42へオーバーラップ量の初期値への復帰を指示する(ステップ5)。
【0068】
次に、ピックローラ1とフィードローラ3の駆動部へ紙幣1枚分の繰り出し動作を指示し(ステップ6)、繰り出し機構113を駆動し、鑑別部114へ紙幣を搬送する。
【0069】
鑑別部114の枚数検出部31から通過枚数(n)を入手し(ステップ7)、通過枚数が1ならば、鑑別部114の通信部30に指令して、紙幣情報を入手する(ステップ9)。紙幣がIC紙幣20ならば、このステップで紙幣情報が入手される。次に、判別部32から紙幣情報を入手する(ステップ10)。紙幣が普通紙幣ならば、このステップで紙幣情報が入手される。
【0070】
そして、紙幣が真券ならば(ステップ11)、搬送路112へ入出金部102への搬送を指示する(ステップ12)。払い出し枚数m=m−1とし、m=0となるまでステップ2からの動作を繰り返し(ステップ13、ステップ14)、所定枚数の払い出しを完了する。
【0071】
ステップ11で紙幣が真券でないと判断された場合、搬送路112へ紙幣をリジェクトボックス104へ搬送するように指示する(ステップ15)。そして、ステップ2に戻り、ステップ2以降の動作を続行する。
【0072】
ステップ8で、n≠1、通過枚数が2以上、即ち重送が発生した場合には、鑑別部114の通信部30に指令してIC紙幣20の紙幣情報及びIC紙幣20と特定した枚数(p)を入手する(ステップ16)。
【0073】
重送された紙幣の枚数(n)とIC紙幣20と特定した枚数(p)とが一致する(ステップ17)と、重送された紙幣は全てIC紙幣20であるので、払い出し枚数m=m−nとし(ステップ18)、m=0ならば、これで、払い出した枚数の合計が、最初に制御部108から指令された払い出し枚数(m)となるので、搬送路112へn枚のIC紙幣20の入出金部102への搬送を指示し(ステップ20)、所定枚数の払い出しを完了する。
【0074】
ステップ18でm<0ならば、所定枚数より払い出し過ぎなので、n枚のIC紙幣20をスタッカ110へ戻すように搬送路112へ指示し(ステップ21)、m=m+nとして(ステップ262)、ステップ2へ戻る。
【0075】
ステップ18でm>0ならば、搬送路112へn枚のIC紙幣20の入出金部102への搬送を指示し(ステップ23)、ステップ2へ戻る。
【0076】
更に、ステップ17で重送された紙幣の枚数(n)とIC紙幣20と特定した枚数(p)とが一致しない場合、IC紙幣20と普通紙幣とが混在して重送されているので、鑑別部114での鑑別が不可能となり、重送された紙幣全てをスタッカ110へ戻すように搬送路112へ指示し(ステップ24)、ステップ2へ戻る。
【0077】
上記構成によれば、第1の実施の形態例の効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
(1)繰り出し機構113におけるIC紙幣20の不送り障害が発生しないため、不送り紙幣を取り除くための現金処理装置の休止が発生せず、利用者への現金入出金サービスが大幅に向上する。
(2)繰り出し機構113でIC紙幣20と普通紙幣を識別して繰り出し動作を制御するため、IC紙幣20と普通紙幣が混在していても正しく繰り出し処理を行うことができる。
(3)普通紙幣の繰り出し時に不送りが発生した場合、調整手段を用いてオーバーラップ量を減少させることによって不送りした紙幣を自動的に排出することができるので、普通紙幣に対しても不送り障害の発生を防止できる。
【0078】
ところで、図5(d)に示したように、無線IC21が重なっている場合には、鑑別部114において2ケの無線IC21からの応答電波が混信するために、通信部30において応答電波から各IC紙幣20の紙幣情報を抽出することができないという課題がある。この課題に対しては、本実施の形態例では、以下のようにした。
【0079】
無線IC21のブロック図を図12に示す。60はアンテナで、鑑別部114内のアンテナ22及び繰り出し機構113内のアンテナ24と無線で送受信するものである。61は情報を送信する送信部、62は情報を受信する受信部である。63は、金種や紙幣番号等の紙幣情報を記憶しておく記憶部である。64は無線IC21内の動作を制御する制御部である。65は、照射されたマイクロ波から発生する交流電流を整流し、無線IC21で必要な電力を供給する電源部である。
【0080】
制御部64の動作を図13を用いて説明する。
【0081】
制御部64は質問電波を受信すると(ステップ1)、質問電波を解読し(ステップ2)、記憶部63から紙幣情報を読み出す(ステップ3)。
【0082】
複数の無線IC21からの応答電波の混信を防止するために、制御部64は、他の無線IC21から発信される応答電波を常時モニターしている(ステップ4)。質問電波を受信して記憶部63内の紙幣情報を送信する際に、他の無線IC21が送信中の場合は送信を保留し、一定時間(ΔT)経過後に再送信を試みる(ステップ5)。他の無線IC21が送信していない場合は、紙幣情報を送信し(ステップ6)、ステップ1に戻る。
【0083】
このような構成にすれば、無線IC21同士が送信タイミングを調整するので混信を防ぐことができ、図5(d)の場合でも通信部33は各紙幣の紙幣情報を確実に入手することができる。
【0084】
本実施の形態例では、スタッカ110から紙幣を繰り出す場合を例にして説明したが、利用者が入出金部102へ投入した紙幣をスタッカ110へ収納する入金動作の場合も、入出金部102にある繰り出し機構113をスタッカ110の繰り出し機構113と同一構造とすることにより、実施の形態例と同じ処理を行うことができる。但し、入金処理の場合、鑑別できない紙幣があった場合は、その紙幣を入出金部102へ戻して利用者自身に確認してもらう点が異なる。
【0085】
本実施の形態例の繰り出し機構113において、普通紙幣を繰り出す場合は、オーバーラップ量を初期設定値にするが、普通紙幣の繰り出し動作で不送りが発生した場合には、圧電素子41を収縮してオーバーラップ量を減少させることによって、不送り紙幣を繰り出し機構113から排出することで、普通紙幣に対しても不送り障害を防止することができる。
【0086】
更に、調整手段としては、図14に示すような構成でもよい。即ち、セパレータ4に接続されたソレノイド70と、ソレノイド70を駆動するソレノイド駆動部72と、セパレータ4をフィードローラ3から離れる方向に付勢する戻しバネ(付勢手段)とで構成した。
【0087】
IC紙幣20を繰り出す場合は、繰り出し制御部50からの指令によって、ソレノイド駆動部72はソレノイド70への印可電圧を0にすると、セパレータ4は戻しバネ71によってフィードローラ3から離れ、フィードローラ3とセパレータ4間のオーバーラップ量が初期設定値よりも小さくなって、IC紙幣20は繰り出され易くなる。一方、普通紙幣を繰り出す場合には、繰り出し制御部50からの指令によって、ソレノイド駆動部72はソレノイド70へ電圧を印可してソレノイド70を伸張させ、オーバーラップ量を初期設定値まで戻して、普通紙幣が重送されるのを防止する。
【0088】
(付記1) 紙幣の枚数、真贋、金種を鑑別する鑑別部を有する現金処理装置において、
前記鑑別部に、紙幣に内蔵された無線ICと通信する通信手段を設けたことを特徴とする現金処理装置。
【0089】
(付記2) 紙幣を分離するフィードローラとセパレータ間のオーバーラップ量を調整する調整手段を有した紙幣繰り出し機構と、
該紙幣繰り出し機構に設けられ、紙幣に内蔵された無線ICと通信する通信手段と、
該通信手段からの信号に基づいて前記紙幣繰り出し機構の調整手段を制御する制御部と、
を設けたことを特徴とする付記1記載の現金処理装置。
【0090】
(付記3) 前記調整手段は、前記セパレータに接続された圧電素子と、該圧電素子を駆動する圧電素子駆動部とで構成されていることを特徴とする付記2記載の現金処理装置。
【0091】
(付記4) 前記調整手段は、前記セパレータに接続されたソレノイドと、該ソレノイドを駆動するソレノイド駆動部と、前記セパレータを前記フィードローラから離れる方向に付勢する付勢手段と、で構成されていることを特徴とする付記2記載の現金処理装置。
【0092】
(付記5) 前記通信手段は、前記鑑別部に単数、複数のうちいずれか配置されていることを特徴とする付記1記載の現金処理装置。
【0093】
(付記6) 前記通信手段は、繰り出し機構に単数、複数のうちいずれか配置されていることを特徴とする付記2記載の現金処理装置。
【0094】
(付記7) 内蔵された無線ICと、
他の無線ICが送信中は自己の送信を保留し、一定時間後に再送信する制御部と、
を有することを特徴とする無線IC内蔵紙幣。
【0095】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1記載の発明によれば、前記鑑別部に、紙幣に内蔵された無線ICと通信する通信手段を設けたことにより、紙幣が重送されている場合でも、個々の紙幣を鑑別することができる。
【0096】
紙幣を分離するフィードローラとセパレータ間のオーバーラップ量を調整する調整手段を有した紙幣繰り出し機構と、該紙幣繰り出し機構に設けられ、紙幣に内蔵された無線ICと通信する通信手段と、該通信手段からの信号に基づいて前記紙幣繰り出し機構の調整手段を制御する制御部とを設けたことにより、IC紙幣の場合は、オーバーラップ量を少なくして、不送りをなくすことができる。
【0097】
請求項2記載の発明によれば、圧電素子駆動部を用いて圧電素子に印加する電圧を変えることで、圧電素子が伸張し、オーバーラップ量を変えることができる。
【0098】
請求項3記載の発明によれば、ソレノイド駆動部を用いてソレノイドに印加する電圧を変えることで、付勢手段の付勢力に抗して移動するソレノイドの移動量が変わり、オーバーラップ量を変えることができる。
【0099】
請求項4記載の発明によれば、他の無線ICが送信中は自己の送信を保留し、一定時間後に再送信することにより、混信がなくなり、各紙幣の情報を確実に入手することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1記載の発明の原理図である。
【図2】請求項1記載の発明の原理図である。
【図3】実施の形態例の鑑別部の構成図である。
【図4】IC紙幣の姿勢を説明する図である。
【図5】重送されたIC紙幣の姿勢を説明する図である。
【図6】実施の形態例の繰り出し機構の構成図である。
【図7】実施の形態例のブロック図である。
【図8】第1の実施の形態例のフロー図である。
【図9】第1の実施の形態例のフロー図である。
【図10】第2の実施の形態例のフロー図である。
【図11】第2の実施の形態例のフロー図である。
【図12】無線ICのブロック図である。
【図13】図12の制御部のフロー図である。
【図14】調整手段の他の例を示す構成図である。
【図15】一般的な現金処理装置の構成図である。
【図16】図15の紙幣処理ユニットの構成図である。
【図17】図16の繰り出し機構の構成図である。
【符号の説明】
20 IC紙幣
21 無線IC
22 アンテナ
114 鑑別部
Claims (4)
- 紙幣の枚数、真贋、金種を鑑別する鑑別部を有する現金処理装置において、
前記鑑別部に、紙幣に内蔵された無線ICと通信する通信手段と、
紙幣を分離するフィードローラとセパレータ間のオーバーラップ量を調整する調整手段を有した紙幣繰り出し機構と、
該紙幣繰り出し機構に設けられ、紙幣に内蔵された無線ICと通信する通信手段と、
該通信手段からの信号に基づいて前記紙幣繰り出し機構の調整手段を制御する制御部と、
を設けたことを特徴とする現金処理装置。 - 前記調整手段は、前記セパレータに接続された圧電素子と、該圧電素子を駆動する圧電素子駆動部とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の現金処理装置。
- 前記調整手段は、前記セパレータに接続されたソレノイドと、該ソレノイドを駆動するソレノイド駆動部と、前記セパレータを前記フィードローラから離れる方向に付勢する付勢手段と、で構成されていることを特徴とする請求項1記載の現金処理装置。
- 無線ICを備える無線IC内蔵紙幣であって、
前記無線ICは、他の無線ICが送信中は自己の送信を保留し、一定時間後に再送信する制御部を有することを特徴とする無線IC内蔵紙幣。
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