JP4202549B2 - 電気化学デバイス及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマーリチウム2次電池、電気2重層キャパシタ等の電気化学デバイス及びその製造方法に関し、特に、導出端子のシール部における密封性が向上した電気化学デバイス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム2次電池と称される負極活物質に炭素材料、酸化すず、酸化ケイ素等を用いた2次電池が各種エレクトロニクス製品、電気自動車に使用または検討されている。これらのリチウム2次電池は、液体の溶媒に電解質塩を溶解させたいわゆる電解液を用いている。電解液を用いた電池は、内部抵抗が低いという長所があるが、反面、液漏れがしやすい、発火する危険性があるという問題点がある。このような問題点に対し、例えば、高分子、電解質塩及び溶媒からなるゲル状の高分子固体電解質が近年脚光を浴びている。
【0003】
このようなゲル状の高分子固体電解質は、導電率が液体のそれに近く、10-3S・cm-1台の値を示すものもある。
【0004】
高分子固体電解質を用いた電池は、液体の電解質を用いていないため液漏れがしにくい。従って、液体の電解液を用いた従来の電池のように金属製容器とその問にある高分子製のパッキンで機械的にかしめる必要はない。高分子固体電解質を用いた電池は高分子フィルムと金属箔とからなるラミネートフィルムを外装袋(容器)とする程度で液漏れは防止できる。
【0005】
しかしながら、電池内部から外部へと導出している導出端子(金属箔)とラミネートフィルムの最内面の高分子フィルム(熱接着性樹脂層)との密着性が不足し、電池のシール性が十分でなく、電池のサイクル寿命の点で問題となっていた。
【0006】
上記の欠点を改良するために、特開平10−289698号公報では、金属層の両面に熱融着性の樹脂層が固着されてなるラミネートシートで構成された外装袋に、正負両極と電解質とを含む発電要素が収納された薄型密閉電池において、前記正負両極には金属からなる集電タブがそれぞれ設けられ、前記それぞれの集電タブは外装袋の集電タブ導出部から電池外に導出され、かつ前記集電タブ導出部は、集電タブと外装袋内面との問に熱融着性の変性樹脂層を介在させて熱融着することにより封口されていることを特徴とする薄型密閉電池が開示されている。
【0007】
しかし、上記の熱融着性の変性樹脂層でもまだシール性が十分ではないという欠点を有していた。この原因を分析したところ、集電タブ(端子、金属)と、変性樹脂層との接着性がリチウム塩含有有機電解液で低下するということが判明したが、注液時に端子シール部にまったく電解液が触れないように電池を作成することは非常に困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、シール性に優れ、耐漏液性に優れた電気化学デバイスおよびその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により解決される。
(1) 外装袋と、この外装袋内に封入される電気化学素子とを有する電気化学デバイスであって、前記外装袋は、金属層と熱接着性樹脂層を有するラミネートフィルムであり、前記電気化学デバイスは、前記外装袋の熱接着性樹脂層相互の熱接着したシール部で封口されて密封され、かつ前記シール部を通って外部に導出する導出端子を有し、前記シール部の前記導出端子と前記外装袋との間に、前記導出端子側から順次熱硬化性樹脂層と、酸変性ポリオレフィン樹脂層とを有し、前記熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂との間に化学結合を有し、前記熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂はウレタン樹脂である電気化学デバイス。
(2) 前記化学結合は、熱硬化性樹脂が有する水酸基、またはアミノ基と、酸変性ポリオレフィン樹脂の有する反応性基との共有結合反応である上記(1)の電気化学デバイス。
(3) 前記酸変性ポリオレフィン樹脂は、マレイン酸無水化物をグラフト重合して得られた酸変性ポリプロピレン樹脂である上記(1)または(2)の電気化学デバイス。
) リチウムイオン2次電池である上記(1)〜()のいずれかの電気化学デバイス。
) 電気2重層キャパシタである上記(1)〜()のいずれかの電気化学デバイス。
電気化学素子の正負両極に接続された導出端子の部分に前記導出端子側から順次熱硬化性樹脂層と、酸変性ポリオレフィン樹脂層とを積層して熱接着する導出端子被覆工程と、前記導出端子被覆工程の終了した電気化学デバイスの正負両極間にある高分子膜に電解液を含浸させて高分子固体電解質を得る注液工程と、前記注液工程がなされた電気化学素子を、金属層と熱接着性樹脂層を有するラミネートフィルムである外装袋に収納し、前記導出端子を前記外装袋の熱接着性樹脂層間に挟んで熱接着によりシール部を形成し、封口する封口工程と、を有する電気化学デバイスの製造方法。
前記熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂がウレタン樹脂である上記()の電気化学デバイスの製造方法。
【0010】
【作用】
本発明者は、検討を重ねた結果、金属で構成される導出端子上に熱硬化性樹脂がウレタン樹脂である熱硬化性樹脂層を被覆し、さらに酸変性ポリオレフィン樹脂層で覆ったのち、外装袋とのラミネートを行なうことにより、シール部の電解液への耐性が飛躍的に向上することが判明した。
【0011】
即ち、外装袋の内面が熱接着性樹脂層でありかつこの熱接着性樹脂層と導出端子との間に熱硬化性樹脂がウレタン樹脂である熱硬化性樹脂層と、酸変性ポリオレフィン樹脂層とを配置すると、外装袋の内面の熱接着性樹脂層と導出端子(アルミニウム、ニッケル等の金属)との密着性が向上する。酸変性ポリオレフィン樹脂層と外装袋の熱接着性樹脂間は、電解液が存在していても融着時の強度は落ちないので、シール性を保つことができるので、漏液を防止し、サイクル寿命、高温保存特性の良い電気化学デバイスを得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の電気化学デバイスの概略の構造を示すものである。図2は、図1(c)におけるA−A線に沿った断面図であり、導出端子を含むシール部の断面構造を示している。
【0013】
図1(c)に示す電気化学デバイス1は、図1(a)に示す電気化学素子10を、図1(b)に示す第1シール部21で袋状に形成された外装袋20の中に電気化学素子の10の導出端子13,14が外部に突き出した状態で収納し、外装袋20の開口した端面を導出端子13、14を挟んで熱融着で封口して第2シール部22を形成して構成されている。電気化学デバイス1は、電気化学素子10を外装袋20内に密封すると共に、第2シール部22から導出端子13,14が外部に突き出した構造を有する。
【0014】
電気化学素子10は、アルミニウム箔や銅箔等の集電体で構成される正負両極の電極11、12と図示しない高分子固体電解質とを含む。正負両極の電極11、12には、図1(a)に示すようにそれぞれ導出端子13、14が接続されている。導出端子13、14は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属で、矩形または円形の断面を有するリード状に構成される。導出端子13、14には、概念上それぞれ第2シール部22で覆われる領域のシール部13a、14aを有する。
【0015】
外装袋20は、例えばアルミニウム等の金属層の両面に、熱接着性樹脂層としてのポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂層や耐熱性のポリエステル樹脂層が積層されたラミネートフィルム30から構成されている。外装袋20は、図1(b)に示すように、予め2枚のラミネートフィルム30をそれらの3辺の端面の熱接着性樹脂層相互を熱接着して第1シール部21を形成し、1辺が開口した袋状に形成される。あるいは、一枚のラミネートフィルムを折り返して両辺の端面を熱接着してシール部を形成して袋状としてもよい。
【0016】
本発明の電気化学デバイス1の第2シール部22では、図2に示すように、導出端子13、14が外装袋20を構成するラミネートフィルム30で挟まれており、導出端子13、14とラミネートフィルム30の熱接着性樹脂層との間には、導出端子上に直接積層された熱硬化性樹脂層41、及びこの熱硬化性樹脂層41を被覆する酸変性ポリオレフィン樹脂層42の順に積層された中間層40を有する。
【0017】
従来、金属箔で構成される導出端子と外装袋を構成する熱接着性樹脂層との密着性が不十分であった。本発明の電気化学デバイス1においては、熱硬化性樹脂層41を導出端子13、14のシール部分13a、14aを覆うように直接積層し、金属(アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなど)と酸変性ポリオレフィン樹脂に対し密着性を保つものであり、ラミネート袋から導出端子を引き出し、かつ密封を図る上で極めて効果的である。
【0018】
酸変性ポリオレフィン樹脂層42はラミネートフィルム30の熱接着性樹脂層としてのポリオレフィン樹脂層との相互の接着性に優れるため、熱接着性樹脂層として機能する。酸変性ポリオレフィン樹脂層42の厚さは、3〜100μm程度が好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂として、例えばカルボン酸等の酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸をグラフト重合して得られる酸変性ポリプロピレン等を例示できるが、特に酸変性ポリプロピレンが好ましい。相溶性から、ラミネートフィルム30の熱接着性樹脂層がポリエチレン系であるときは、中間層40のポリオレフィン樹脂層42もポリエチレン系が好ましく、ラミネートフィルム30の熱接着性樹脂層がポリプロピレン系であるときは、中間層40のポリオレフィン樹脂層42もポリプロピレン系とすることが接着性の点で好ましい。
【0019】
これらの樹脂は、下記の熱硬化性樹脂と化学結合するための反応性基、具体的にはカルボキシル基等を有していることが好ましい。
【0020】
このような樹脂としては、上記の無水マレイン酸をグラフト重合して得られる酸変性ポリプロピレンが知られており、例えば、三井化学株式会社より、商品名アドマーとして販売されている。このアドマーのなかでも特に、ポリプロピレン−タイプアドマーが好ましく、特に、ホモポリマーとして、QF305(融点:160℃)、QF500(融点:165℃)、エチレンとのコポリマーとして、QF551(融点:135℃)、QB540(融点:150℃)、QB550(融点:140℃)、QE060(融点:139℃)が好ましい。
【0021】
本発明においては、さらに、この酸変性ポリオレフィン樹脂42と導出端子13,14との接着性を良好なものとするため、その下地層として熱硬化性樹脂層41を被覆する。
【0022】
熱硬化性樹脂層41としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を例示できる。熱硬化性樹脂層41は、金属(導出端子)と酸変性ポリオレフィン樹脂との間に介在してこれらの密着性を良好にするためのものであるから、導出端子13、14のシール部13a、14aを覆う程度の大きさで十分である。熱硬化性樹脂層41の厚さは、1〜50μm程度が好ましい。
【0023】
熱硬化性樹脂は、好ましくは水酸基、またはアミノ基を有する。この水酸基、またはアミノ基は、上記酸変性ポリオレフィン樹脂の反応性基との間で化学結合を形成する。このような水酸基、アミノ基は熱硬化性樹脂自体に含有されていてもよいし、硬化剤、反応促進剤等の添加在中に含有され、最終的に熱硬化性樹脂中に導入されるようなものであってもよい。
【0024】
具体的には、エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型が好ましく、この他、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型等も好ましい。硬化剤としては、ポリアミン系として、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン等が好ましく、3級アミンイミダゾールルイス酸系として、ベンジルジメチルアミン等が好ましい。
【0025】
このような熱硬化性樹脂層/酸変性ポリオレフィン樹脂層で構成される中間層40で導出端子のシール部13a、14aを被覆する導出端子被覆工程は、例えば熱硬化性樹脂を導出端子のシール部13a、14aの両面に塗布し、ある程度、好ましくは50〜90%程度熱硬化させ、その後、酸変性ポリオレフィンフィルムを熱硬化性樹脂層の上に熱溶着する方法がある。この導出端子被覆工程の際に、導出端子は電解液注液前の電池または電気2重層キャパシタに溶接もしくは接着してあっても良いし、端子単体であっても良い。いずれにしても、本発明の中間層40を導出端子13、14に形成・配置するのは、電解液注液前である必要がある。
【0026】
導出端子被覆工程後、上記処理を行なった導出端子を備える電池正極および電池負極と高分子膜を有する素子を、リチウム塩含有有機電解液の中に浸けることによって電解液を含浸させ、高分子膜を高分子固体電解質化させて電気化学素子を作製する注液工程を行う。
【0027】
その後、電気化学素子を金属と樹脂とからなるラミネート袋に挿入し、開口部をヒートシールし、密封する封入工程によって、電気化学デバイスとする。
【0028】
なお、外装袋を構成するラミネートフィルムとしては、ラミネートフィルムを構成する金属箔と導出端子間の絶縁を確保するため、内層側から熱接着性樹脂層/ポリエステル樹脂層/金属箔/ポリエステル樹脂層の積層構造を有するラミネートフィルムを用いることが好ましい。このようなラミネートフィルムを用いることにより、熱接着時に高融点のポリエステル樹脂層が溶けずに残るため、導出端子と外装袋の金属箔との離間距離を確保し、絶縁を確実にすることができる。そのため、ラミネートフィルムのポリエステル樹脂層の厚さは、5〜100μm程度とすることが好ましい。
【0029】
本発明の電気化学デバイスは、次のようなリチウム2次電池、電気2重層キャパシタとして用いることができる。
【0030】
<リチウム2次電池>
本発明のリチウム2次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極、負極及び高分子固体電解質から構成され、シート型電池や円筒型電池等に好適に適用される。
【0031】
また、高分子固体電解質と組み合わせる電極は、リチウム2次電池の電極として公知のものの中から適宜選択して使用すればよく、好ましくは電極活物質とゲル電解質、必要により導電助剤との組成物を用いる。
【0032】
負極には、炭素材料、リチウム金属、リチウム合金あるいは酸化物材料のような負極活物質を用い、正極には、リチウムイオンがインターカレート・デインターカレート可能な酸化物または炭素材料のような正極活物質を用いることが好ましい。このような電極を用いることにより、良好な特性のリチウム2次電池を得ることができる。
【0033】
電極活物質として用いる炭素材料は、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、天然あるいは人造の黒鉛、樹脂焼成炭素材料、カーボンブラック、炭素繊維などから適宜選択すればよい。これらは粉末として用いられる。中でも黒鉛が好ましく、その平均粒子径は1〜30μm 、特に5〜25μm であることが好ましい。平均粒子径が小さすぎると、充放電サイクル寿命が短くなり、また、容量のばらつき(個体差)が大きくなる傾向にある。平均粒子径が大きすぎると、容量のばらつきが著しく大きくなり、平均容量が小さくなってしまう。平均粒子径が大きい場合に容量のばらつきが生じるのは、黒鉛と集電体との接触や黒鉛同士の接触にばらつきが生じるためと考えられる。
【0034】
リチウムイオンがインターカレート・デインターカレート可能な酸化物としては、リチウムを含む複合酸化物が好ましく、例えば、LiCoO2、LiMn24、LiNiO2、LiV24などが挙げられる。これらの酸化物の粉末の平均粒子径は1〜40μm 程度であることが好ましい。
【0035】
電極には、必要により導電助剤が添加される。導電助剤としては、好ましくは黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、ニッケル、アルミニウム、銅、銀等の金属が挙げられ、特に黒鉛、カーボンブラックが好ましい。
【0036】
電極組成は、正極では、重量比で、活物質:導電助剤:ゲル電解質=30〜90:3〜10:10〜70の範囲が好ましく、負極では、重量比で、活物質:導電助剤:ゲル電解質=30〜90:0〜10:10〜70の範囲が好ましい。ゲル電解質は、特に限定されず、通常用いられているものを用いればよい。また、ゲル電解質を含まない電極も好適に用いられる。この場合、バインダとしてはフッ素樹脂、フッ素ゴム等を用いることができ、バインダの量は3〜30wt%程度とする。
【0037】
電極の製造は、まず、活物質と必要に応じて導電助剤を、ゲル電解質溶液またはバインダ溶液に分散し、塗布液を調製する。
【0038】
そして、この電極塗布液を集電体に塗布する。塗布する手段は特に限定されず、集電体の材質や形状などに応じて適宜決定すればよい。一般に、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が使用されている。その後、必要に応じて、平板プレス、カレンダーロール等により圧延処理を行う。
【0039】
集電体は、電池の使用するデバイスの形状やケース内への集電体の配置方法などに応じて、適宜通常の集電体から選択すればよい。一般に、正極にはアルミニウム等が、負極には銅、ニッケル等が使用される。なお、集電体は金属箔、金属メッシュなどが、通常、使用される。金属箔よりも金属メッシュの方が電極との接触抵抗が小さくなるが、金属箔でも十分小さな接触抵抗が得られる。
【0040】
そして、溶媒を蒸発させ、電極を作製する。塗布厚は、50〜400μm 程度とすることが好ましい。
【0041】
高分子膜は、例えば、PEO(ポリエチレンオキシド))系、PAN(ポリアクリロニトリル)系、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)系等の高分子微多孔膜を用いることができる。
【0042】
このような正極、高分子膜、負極をこの順に積層し、圧着して電池素体とする。
【0043】
高分子膜に含浸させる電解液は一般に電解質塩と溶媒よりなる。電解質塩としては、例えば、LiBF4 、LiPF6 、LiAsF6 、LiSO3 CF3 、LiClO4 、LiN(SO2 CF32 等のリチウム塩が適用できる。
【0044】
電解液の溶媒としては、前述の高分子固体電解質、電解質塩との相溶性が良好なものであれば特に制限はされないが、リチウム電池等では高い動作電圧でも分解の起こらない極性有機溶媒、例えば、エチレンカーボネート(略称EC)、プロピレンカーボネート(略称PC)、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート(略称DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン等の環式エーテル、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン等の環式エーテル、γ−ブチロラクトン等のラクトン、スルホラン等が好適に用いられる。3−メチルスルホラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、エチルジグライム等を用いてもよい。
【0045】
溶媒と電解質塩とで電解液を構成すると考えた場合の電解質塩の濃度は、好ましくは0.3〜2mol/lである。通常、1mol/l辺りで最も高いイオン伝導性を示す。
【0046】
このような電解液に微多孔性の高分子膜を浸漬すると、高分子膜が電解液を吸収してゲル化し、高分子固体電解質となる。
【0047】
高分子固体電解質の組成を高分子/電解液で示した場合、膜の強度、イオン伝導度の点から、電解液の比率は40〜90wt%が好ましい。
【0048】
<電気2重層キャパシタ>
本発明の電気2重層キャパシタの構造は特に限定されないが、通常、一対の分極性電極が高分子固体電解質を介して配置されており、分極性電極および高分子固体電解質の周辺部には絶縁性ガスケットが配置されている。このような電気2重層キャパシタはコイン型、シート型、積層型等と称されるいずれのものであってもよい。
【0049】
分極性電極としては、活性炭、活性炭素繊維等を活物質とし、これにバインダとしてフッ素樹脂、フッ素ゴム等を加える。そして、この混合物をシート状電極に形成したものを用いることが好ましい。バインダの量は5〜15wt%程度とする。また、バインダとしてゲル電解質を用いてもよい。
【0050】
分極性電極に用いられる集電体は、導電性ブチルゴム等の導電性ゴムなどであってよく、またアルミニウム、ニッケル等の金属の溶射によって形成してもよく、上記電極層の片面に金属メッシュを付設してもよい。
【0051】
電気2重層キャパシタには、上記のような分極性電極と高分子固体電解質とを組み合わせる。
【0052】
高分子膜は、例えば、PEO(ポリエチレンオキシド))系、PAN(ポリアクリロニトリル)系、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)系等の高分子微多孔膜を用いることができる。
【0053】
電解質塩としては、(C254 NBF4 、(C253 CH3 NBF4 、(C254 PBF4 等が挙げられる。
【0054】
電解液に用いる非水溶媒は、公知の種々のものであってよく、電気化学的に安定な非水溶媒であるプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン単独または混合溶媒が好ましい。
【0055】
このような非水溶媒系の電解質溶液における電解質の濃度は、0.1〜2mol/lとすればよい。
【0056】
このような電解液に微多孔性の高分子膜を浸漬すると、高分子膜が電解液を吸収してゲル化し、高分子固体電解質となる。
【0057】
高分子固体電解質の組成を高分子/電解液で示した場合、膜の強度、イオン伝導度の点から、電解液の比率は40〜90wt%が好ましい。
【0058】
絶縁性ガスケットとしては、ポリプロピレン、ブチルゴム等の絶縁体を用いればよい。
【0059】
【実施例】
[実施例1]
(電池の作製)
端子材料として幅4mm、長さ50mm、厚み0.1mmのアルミニウム箔及びニッケル箔を用意した。熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂として、油化シェルエポキシ(株)の商品名「エピコート828」、「エポメートB002」を用いた。エピコート828は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポメートB002は複素ジアミン変性物である。エピコート828:エポメートB002:トルエン=20:10:70重量部となるように混合し、これを導出端子のシール部位置にスプレーした。その後、60℃、1時間で硬化させ、さらにその上に酸変性ポリオレフィン樹脂である酸変性ポリプロピレンフィルム(三井化学(株)アドマーQE060、厚み80μm )を熱圧着したものを導出端子とした。その後、前記端子を80℃で3時間さらに硬化させた。
【0060】
電極は、正極はLiCoO2、カーボンブラック(HS−100、電気化学工業製)、PVDF(ポリふっ化ビニリデン)からなるものをドクターブレード法でアルミニウム箔に塗布し作成した。負極は、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、HS−100、PVDFからなるものをドクターブレード法で銅箔に塗布し作成した。高分子固体電解質としてPVDF微多孔膜を使用した。正極、負極は、横31mm、縦41mmに切断した。セパレータは横33mm、縦43mmに切断した。
【0061】
電池素体の作成は次のように行った。まず正極とセパレータを積層し熱プレスでラミネートした。ラミネート条件は150℃で、圧力5kgcm-2で2分問加圧した。これに負極を積層し同様にラミネートした。
【0062】
この電池素体のアルミニウム集電体には上記のアルミニウム導出端子、銅集電体にも同様に上記のニッケル導出端子を抵抗熔接した。この電池素体をEC(エチレンカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)の体積比1:2の混合溶媒にLiPF6を1M溶解させた電解液330ml中に30分間浸せきした。電解液から電池素体を取り出したあと電極表面に付着している電解液を拭き取った。この電池素体は電解液を吸収しゲル状態となった。PET(12μm)/アルミニウム(20μm)/PET(12μm)/PP(80μm)からなるラミネート袋(最内層がPP)に前記電池素体を挿入し、開口部をヒートシールし、シート型ポリマーリチウム2次電池を200個作製した。なお、上記においてPET:ポリエチレンテレフタレート、PP:ポリプロピレンである。
【0063】
表1に各サンプルをフル充電で、室温下にて60日間保存したときの漏液個数を示した。表1から明らかなように、本発明の電池は全て漏液を生じていなかった。
【0064】
[実施例2]
ウレタン樹脂として東洋モートン(株)の商品名「AD−506S」、「CAT−RTl」を用いた。AD−506Sはポリエステル樹脂、CAT−RTlはイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。これらを混合硬化させるとウレタン樹脂となる。AD−506S:CAT−RTl=100:5重量部となるように混合し、スプレー可能な粘性となるように酢酸エチルで希釈し端子にスプレーした。これを80℃で30分間硬化させた後、アドマーQE060を熱融着し、端子として用いた。その他は実施例1と同様にシート型ポリマーリチウムイオン2次電池を作製し、評価した。その結果表1に示すように漏液したサンプルは5個であった。
【0065】
[実施例3]
ウレタン樹脂として東洋モートン(株)の商品名「AD−335A」、「CAT−10」を用いた。AD−338Aはポリエステル樹脂、CAT−10はトルエンジイソシアネート(TDI)である。これらを混合硬化させるとウレタン掛脂となる。AD−335A:CAT−10=100:6重量部となるように混合し、スプレー可能な粘性となるようにメチルエチルケトン:トルエン=1:1の混合溶媒で希釈し端子にスプレーした。これを80℃で30分硬化後、この上にポリプロピレンフィルム(アドマーQE060:厚み80μm )を熱圧着し、端子として用いた。その他は、実施例1と同様にシート型ポリマーリチウムイオン2次電池を作製し、評価した。その結果、表1に示すように漏液した電池は10個であった。
【0066】
[比較例1]
熱融着性樹脂として三井化学(株)の商品名「アドマーQEO60」のみを端子の上に熱圧着し、これを端子として用いた。アドマーQEO60は酸で変性したポリプロピレンである。その他は、実施例1と同様にシート型ポリマーリチウムイオン2次電池を作製し、評価した。その結果、表1に示すように漏液したサンプルは、100/200個であった。
【0067】
【表1】
Figure 0004202549
【0068】
以上の実施例から、本発明によって電池の密閉性が向上した結果、電解液の漏出を防ぐ効果があることがわかる、
【0069】
[実施例4]
(キャパシタの作製)
活物質:活性炭素粉末、
導電助剤:アセチレンブラック、
高分子:PVDF[KynarFlex 2801(エルフ・アトケム社製)]、(ポリふっ化ビニリデンと6ふっ化プロピレンとの共重合体)、
溶媒:アセトン
を重量比で、活物質:導電助剤:高分子:溶媒=8:1:1:15となるように混合して高分子溶液を調製し、これをアルミニウム箔に塗布し、正負電極とした。
【0070】
高分子固体電解質としてPVDF微多孔膜を使用した。
【0071】
次に、正極および負極を高分子固体電解質を介して積層し、正負極には実施例1に用いたアルミニウム端子を溶接した後、電解液を含浸させ、実施例1と同様に密閉した。なお、電解液には、プロピレンカーボネートに4ふっ化ホウ酸4エチルアンモニウムを1Mの濃度で溶解したものを用いた。
【0072】
その他は実施例1と同様にしてキャパシタ1を得た。また、実施例2、3、比較例1と同様にしてキャパシタ2,3、比較キャパシタ1を作製した。
【0073】
得られたキャパシタ1,2,3および比較キャパシタ1を実施例1と同様にして評価したところほぼ同様の結果が得られた。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電気化学デバイスによれば、シール性に優れ、耐漏液性に優れた電気化学デバイスおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学デバイスの構造を示し、(a)は電気化学素子を構成する電極及び導出端子を示す平面図、(b)は外装袋を示す平面図、(c)は電気化学素子を外装袋に封入して構成される電気化学デバイスを示す平面図である。
【図2】図1(c)のA−A線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1 電気化学デバイス
10 電気化学素子
11,12 電極
13,14 導出端子
13a、14a シール部
20 外装袋
21 第1シール部
22 第2シール部
30 ラミネートフィルム
40 中間層
41 熱硬化性樹脂層
42 酸変性ポリオレフィン樹脂層

Claims (7)

  1. 外装袋と、この外装袋内に封入される電気化学素子とを有する電気化学デバイスであって、
    前記外装袋は、金属層と熱接着性樹脂層を有するラミネートフィルムであり、
    前記電気化学デバイスは、前記外装袋の熱接着性樹脂層相互の熱接着したシール部で封口されて密封され、かつ前記シール部を通って外部に導出する導出端子を有し、
    前記シール部の前記導出端子と前記外装袋との間に、前記導出端子側から順次熱硬化性樹脂層と、酸変性ポリオレフィン樹脂層とを有し、
    前記熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂と酸変性ポリオレフィン樹脂層のポリオレフィン樹脂との間に化学結合を有し、前記熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂はウレタン樹脂である電気化学デバイス。
  2. 前記化学結合は、熱硬化性樹脂が有する水酸基、またはアミノ基と、酸変性ポリオレフィン樹脂の有する反応性基との共有結合反応である請求項1の電気化学デバイス。
  3. 前記酸変性ポリオレフィン樹脂は、マレイン酸無水化物をグラフト重合して得られた酸変性ポリプロピレン樹脂である請求項1または2の電気化学デバイス。
  4. リチウムイオン2次電池である請求項1〜のいずれかの電気化学デバイス。
  5. 電気2重層キャパシタである請求項1〜のいずれかの電気化学デバイス。
  6. 電気化学素子の正負両極に接続された導出端子の部分に前記導出端子側から順次熱硬化性樹脂層と、酸変性ポリオレフィン樹脂層とを積層して熱接着する導出端子被覆工程と、
    前記導出端子被覆工程の終了した電気化学デバイスの正負両極間にある高分子膜に電解液を含浸させて高分子固体電解質を得る注液工程と、
    前記注液工程がなされた電気化学素子を、金属層と熱接着性樹脂層を有するラミネートフィルムである外装袋に収納し、前記導出端子を前記外装袋の熱接着性樹脂層間に挟んで熱接着によりシール部を形成し、封口する封口工程と、
    を有する電気化学デバイスの製造方法。
  7. 前記熱硬化性樹脂層の熱硬化性樹脂がウレタン樹脂である請求項の電気化学デバイスの製造方法。
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