JP4202107B2 - 溶接継手構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、溶接継手構造、例えば発電機等の部材を組立てた後に溶接を行なう構造物において、接合対象となる継手への作業者のアクセスや溶接トーチ・溶接棒の操作が困難な部位に対して表側から溶接を行なう溶接継手構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、発電機等の構造物においては、部材の組立て後に、作業に制約が課される環境下で継手の溶接を要する場合があった。特に、接合対象となる構造部材への作業者のアクセスや継手裏側面からの溶接作業が困難な部位があり、このような部位では、 継手を表側からのみ溶接する片側溶接を強いられることが多い。
このような制約のもとで施工される例えばレ型片側開先溶接では、必要な強度を確保するために脚長を増やしたり、場合によっては、構造自体を大幅に見直し、継手の裏側からの溶接が可能な構造に変更する必要があった。また、片側開先溶接に代表される片側溶接の場合、開先傾斜面側への部材の倒れが大きくなり、その修正に多大な時間を必要とした。また、 初層溶接とルートフェイス部間に、溶け込み不良やブローホールといった欠陥を発生させることがあった。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−332567号公報(段落0002−0004、図6)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの問題点を解決するためには、開先傾斜面裏側に安定した裏波ビードを出す溶接が必要であった。しかしながら、片側開先溶接で裏波ビードを出そうとした場合、ルートフェイス部を溶かすために入熱量を大幅に上げる必要があり、更に、入熱量を増やすことにより増加する継手の倒れを修正するための作業時間が増加するという問題点があった。また、安定した裏波ビードの形成が困難であり、品質面での問題も発生した。
この発明は、このような事態に対処するためになされたもので、片側からの溶接でも安定した裏波ビードを出し、十分な強度を確保すると共に、溶接変形の抑制、初層溶接とルートフェイス部間の溶接欠陥発生の抑制、継手の倒れ量の抑制を可能にし、ひいては、溶接時間の抑制及び補修溶接等の溶接工数低減を図ることができる溶接継手構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る溶接継手構造は、ほぼ平坦面とされたルートフェイス部を有する開先を設けた第1構造部材と、第2構造部材とを上記開先において上記第1構造部材の片側からアーク溶接を行なう溶接継手構造において、上記第1構造部材のルートフェイス部及び開先傾斜面から上記第2構造部材側に突出し、先端面がほぼ平坦面とされた開先面突起を適宜の間隔で設け、上記開先面突起の平坦面を上記第2構造部材に当接させることにより、上記ルートフェイス部と上記第2構造部材との間にギャップを形成するようにしたものである。
この場合、ギャップが過小であると裏波ビードの出が安定せず、ギャップが過大であると裏側にスパッタ等の異物が飛散する。一方、溶接後には、溶接金属及び近傍母材の収縮により、構造部材が収縮方向へ引っ張られるために、裏波ビードを出すと共に収縮方向への変形を拘束する構造を持つことが必要となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
この発明のベースとなる構成
以下、この発明のベースとなる構成を図にもとづいて説明する。図1は、この発明のベースとなる構成を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
この構成は、レ形開先を有する第1構造部材1と第2構造部材2とを図1(a)のように組み合わせ、表側である図の右側からアーク溶接を行なう場合を例示している。
第1構造部材1は、レ形開先の開先傾斜面3の端部に形成されたルートフェイス部4に第2構造部材2側に突出した突起5を適宜の間隔で設け、この突起5によってルートフェイス部4と第2構造部材2との間にギャップgを形成している。
【0007】
このギャップgは、大きさを種々変更することにより、裏波ビードの形成状態、継手の倒れに関係する初層溶接とルートフェイス部間の溶接欠陥の発生状況や開先傾斜面裏側へのスパッタ等の異物の飛散状況が変わるため、最適値を確認するために、種々のギャップ値に対する検証を行ない、その結果を表1に示す。
【0008】
【表1】
Figure 0004202107
【0009】
この検証は、第1構造部材1の厚さt1が16mm、18mm、20mmの3種類についてレ形開先の開先角度θを、θ=40°、第2構造部材2の厚さt2を100mmとし、溶接電流350A、溶接電圧29Vの条件で実施し、ギャップgの大きさを0mm〜6mmの間で1mm毎に異ならせて設定し、超音波探傷及び溶接部切断断面の観察によるルートフェイス部4の溶接欠陥の有無、目視点検による裏波ビードの形成状態及び開先傾斜面3の裏側6の状況を確認したものである。
【0010】
評価は、裏波ビード形成状態が良好、ルートフェイス部の溶接欠陥なし、開先傾斜面裏側部へのスパッタ飛散なしと判定されたものを○、裏波ビードの形成は可能であったが、その他の項目が良好でなかったものを△、裏波ビードの形成が不安定であったものを×としている。この表から、ルートフェイス部にギャップを設けることにより、入熱量を上げることなく裏波ビードの形成が可能であることが分かる。また、ルートフェイスギャップを3mm以上とした場合に、裏波ビードの形成が安定し、ルートフェイスギャップを5mm以下とした場合に開先傾斜面裏側部へのスパッタ等の飛散がないことも確認できる。
【0011】
実施の形態
次に、この発明の実施の形態を図にもとづいて説明する。図2は、実施の形態の構成を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
これらの図において、図1と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。図1と異なる点は、ルートフェイス部4及び開先傾斜面3から第2構造部材2側に突出する開先面突起7を適宜の間隔で設け、この開先面突起7によってルートフェイス部4と第2構造部材2との間にギャップgを形成するようにした点である。開先面突起7を設けることにより、ギャップgによる図1と同様な効果を奏する他、図2(a)において右方向への継手倒れ量を低減させることができる。
【0012】
参考例
次に、この発明の参考例を図にもとづいて説明する。図3は、参考例の構成を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
これらの図において、図1と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。図1と異なる点は、第1構造部材1の両側端部に、第1構造部材1の厚さt1より広い幅t3を有し、ルートフェイス部4から第2構造部材2側に突出する突起部8Aと、この突起部8Aから反ルートフェイス部側に延在し、第1構造部材1の厚さt1とほぼ同じ幅を有する延在部8Bとから構成されるL形突起8を設け、このL形突起8によってルートフェイス部4と第2構造部材2との間にギャップgを形成するようにした点である。L形突起8を設けることにより、ギャップgによる図1と同様な効果を奏する他、図3(a)において右方向への継手倒れ量を更に低減させることができ、また、L形突起近傍でのルートフェイス部の溶接欠陥の発生を未然に防止することができる。
なお、以上の説明では、L形突起8として板状のものを第1構造部材1の両側端に装着する例を示したが、これに限られるものではなく、第1構造部材1から突起部8Aを切り出す形で形成するようにしてもよい。
【0013】
また、図1〜図3において、ルートフェイスギャップgを3mmに固定した条件で、溶接後の継手倒れ量、即ち、第1構造部材1のP点が図1(a)、図2(a)、図3(a)において右方に偏位する量を測定した結果を表2に示す。
【0014】
【表2】
Figure 0004202107
【0015】
この表から分かるように、図3の構成による倒れ量が最も少なく、続いて図2図1の順で倒れ量が増大している。
【0016】
【発明の効果】
この発明に係る溶接継手構造は、ルートフェイス部を有する開先を設けた第1構造部材と、第2構造部材とを片側からアーク溶接を行なう溶接継手構造において、上記第1構造部材のルートフェイス部から第2構造部材側に突出し、上記ルートフェイス部と第2構造部材との間にギャップを形成する突起を適宜の間隔で設けたものであるため、片側からの溶接でも安定した裏波ビードを出し、十分な強度を確保すると共に、溶接変形や初層溶接とルートフェイス部間の溶接欠陥発生の抑制、継手の倒れ量の抑制が可能となり、溶接時間の抑制及び補修溶接等の溶接工数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のベースとなる構成を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】 この発明の実施の形態の構成を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】 この発明の参考例の構成を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。

Claims (2)

  1. ほぼ平坦面とされたルートフェイス部を有する開先を設けた第1構造部材と、第2構造部材とを上記開先において上記第1構造部材の片側からアーク溶接を行なう溶接継手構造において、上記第1構造部材のルートフェイス部及び開先傾斜面から上記第2構造部材側に突出し、先端面がほぼ平坦面とされた開先面突起を適宜の間隔で設け、上記開先面突起の平坦面を上記第2構造部材に当接させることにより、上記ルートフェイス部と上記第2構造部材との間にギャップを形成するようにしたことを特徴とする溶接継手構造。
  2. 上記ギャップの大きさを3mm以上、5mm以下に設定したことを特徴とする請求項1記載の溶接継手構造。
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