JP4201826B1 - 磁性塗料の製造方法及びその磁性塗料を用いた磁気記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒化鉄系磁性粉末を用いた磁気記録媒体の磁気クラスタサイズを低減する。
【解決手段】窒化鉄系磁性粉末、有機珪素化合物、及び有機溶媒を含有し、且つ40質量%以下の非溶媒成分の含有率を有する第1組成物に、剪断力を付与しながら混合撹拌して、前記窒化鉄系磁性粉末を前記有機珪素化合物で表面処理する表面処理工程と、前記表面処理された窒化鉄系磁性粉末を含有する第1組成物を濃縮して、80質量%以上の非溶媒成分の含有率を有する第2組成物を調製する濃縮工程と、前記第2組成物と結合剤とを混練して混練物を調製する混練工程と、前記混練物を、分散メディアを用いて分散処理することにより磁性塗料を調製する分散工程とを有する、磁性塗料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁性塗料の製造方法及びその磁性塗料を用いた磁気記録媒体に関する。
可撓性支持体上に磁性粉末と結合剤とを含有する磁性層が形成された塗布型の磁気記録媒体は、アナログ方式からデジタル方式への記録再生方式の移行に伴い、一層の記録密度の向上が要求されている。特に、高密度記録用のビデオテープやコンピュータ用のバックアップテープなどにおいては、この要求が、年々、高まってきている。
このような記録密度の向上にあたり、短波長記録に対応するため、年々磁性粉末の微粒子化が図られており、現在では0.1μm以下の粒子長を有する針状の鉄系金属磁性粉末が実用化に供されている。また、短波長記録における減磁による出力低下を防止するため、年々磁性粉末の高保磁力化が図られてきている。例えば、鉄−コバルト合金化により、199.0kA/m程度の保磁力を有する鉄系金属磁性粉末が実現されている(特許文献1)。
一方、上記のような磁性粉末を用いた磁気記録媒体を製造するにあたっては、磁性粉末が良好に分散された磁性塗料を作製するために、磁性塗料の製造方法と塗料成分の両方から検討が行われてきている。製造方法の観点からは、例えば、ニーダのような強力な剪断力を磁性粉末に作用させることができる混練機を用いて、磁性粉末と少量の結合剤とを混練する混練工程と、得られた混練物に結合剤を添加し、これをボールミル、サンドグラインダミルなどの高速分散機を用いて磁性粉末を分散させる分散工程とを有する製造方法が知られている。また、塗料成分の観点からは、例えば、混練工程で均一な組成物を得るために、混練工程前に予め磁性粉末を有機珪素化合物などの分散剤で表面処理する方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、上記のような製造方法や塗料成分により磁性粉末の分散性を向上させても、磁性粉末の特性自体が限界に近づいてきていることから、記録再生特性の向上が困難となっているのが現状である。これは、針状の磁性粉末を用いる磁気記録媒体では保磁力が磁性粉末の形状に依存することから、上記粒子長からの大幅な微粒子化が困難なためである。
そこで、本出願人は、5〜50nmの平均粒径を有する粒状の窒化鉄系磁性粉末を用いた磁気記録媒体を先に提案した(特許文献3)。この窒化鉄系磁性粉末は結晶磁気異方性を有するため、微粒子の窒化鉄系磁性粉末であっても、高保磁力と適度な飽和磁化を有しており、そのため短波長領域においても高い出力を有する磁気記録媒体を得ることができる。
特開平3−49026号公報 特開平6−150297号公報 特開2004−273094号公報
ところで、コンピュータ用データ記録システムには、記録情報の再生を行う際に用いる磁気ヘッドとして、従来の誘導型ヘッドに代わり、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)、異方性磁気抵抗効果型磁気ヘッド(AMRヘッド)、巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)、あるいはトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド(TMRヘッド)などの磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下、総称してMR系ヘッドという)の適用が検討されてきている。このようなMR系ヘッドを使用したシステムにおいては、システムに起因するノイズの大幅な低減が可能であるので、磁気記録媒体に由来する媒体ノイズがシステムのS/N比を支配する。従って、今後の高密度記録においてシステムのS/N比を向上させるためには、媒体ノイズの低ノイズ化を図ることが必要とされる。
塗布型の磁気記録媒体において、媒体ノイズは磁性粉末の充填量で比較すると、記録ビット内に存在する粒子の個数が多くなるほど低くなることが知られている。従って、媒体ノイズを低減するためには、微粒子の磁性粉末を使用し、磁性層中の磁性粉末の充填性を向上することが有効であるが、微粒子化に伴って磁性粉末は凝集しやすくなり、磁気クラスタサイズが増大しやすい。この磁気クラスタは信号を記録再生するときにあたかも1つの磁性粉末のような挙動を示す。そのため、磁気クラスタサイズが大きくなるほど、記録ビット中の見かけの磁性粉末の個数が少なくなり、且つ磁化遷移幅が広がり、ノイズが増加しやすくなる。
磁気クラスタサイズを低減するためには、磁性層中で磁性粉末間の交換相互作用を十分に分断する必要がある。磁性粉末間の交換相互作用を分断するためには、磁性粉末間に非磁性体を介在させることにより磁性粉末を分離する方法が効果的であり、塗布型の磁気記録媒体においては、磁性塗料調製時に分散剤や結合剤などの非磁性塗料成分で磁性粉末を均一に被覆することが求められる。
しかしながら、上記のような窒化鉄系磁性粉末を用いた磁気記録媒体の検討過程において、窒化鉄系磁性粉末は針状の鉄系金属磁性粉末に比べて微粒子であるだけでなく、広い粒度分布を有していることが明らかとなってきた。これは、窒化鉄系磁性粉末の製造工程が、鉄系酸化物粉末または鉄系水酸化物粉末などの鉄系化合物粉末を還元して鉄系金属粉末を形成する還元処理工程、該鉄系金属粉末を窒化する窒化処理工程、さらには得られた窒化鉄系磁性粉末を徐酸化する安定化工程などの多工程を有するため、粒径のバラツキが発生しやすいことに起因するものと考えられる。このため、高密度記録を目的として微粒子化を進めていくと、平均粒径よりも小さな粒径や大きな粒径を有する窒化鉄系磁性粉末の割合が多くなり、分散剤や結合剤で均一に窒化鉄系磁性粉末を被覆することが極めて困難となる。従って、窒化鉄系磁性粉末の分散性を向上するために上記のような従来の混練工程及び分散工程を有する製造方法や、従来の分散剤による表面処理方法を単に適用しただけでは、窒化鉄系磁性粉末の凝集の抑制に効果が少なく、磁気クラスタサイズを十分に低減することができないという問題がある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、磁性塗料調製時における窒化鉄系磁性粉末の凝集を抑制することにより、磁気クラスタサイズを低減した磁気記録媒体を提供することを目的とする。
本発明は、窒化鉄系磁性粉末、下記式(1)で表される有機珪素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶媒を含有し、且つ40質量%以下の非溶媒成分の含有率を有する第1組成物に、剪断力を付与しながら混合撹拌して、前記窒化鉄系磁性粉末を前記有機珪素化合物で表面処理する表面処理工程と、
前記表面処理された窒化鉄系磁性粉末を含有する第1組成物を濃縮して、80質量%以上の非溶媒成分の含有率を有する第2組成物を調製する濃縮工程と、
前記第2組成物と結合剤とを混練して混練物を調製する混練工程と、
前記混練物を、分散メディアを用いて分散処理することにより磁性塗料を調製する分散工程とを有する、磁性塗料の製造方法である。
Figure 0004201826
(ただし、mは3〜6の整数を表し、R,Rはそれぞれ独立で、−H,−CH基,−フェニル基のいずれかを表す)
上記製造方法によれば、窒化鉄系磁性粉末への吸着性に優れる有機珪素化合物を含有し、低い非溶媒成分の含有率を有する第1組成物に剪断力を付与することにより窒化鉄系磁性粉末の表面処理が行われるため、針状の鉄系金属磁性粉末よりも微粒子で、且つ広い粒度分布を有する窒化鉄系磁性粉末が使用される場合でも、有機珪素化合物を均一に窒化鉄系磁性粉末に吸着させることができる。そして、この有機珪素化合物で均一に表面処理された窒化鉄系磁性粉末を含有する第1組成物を濃縮した高い非溶媒成分の含有率を有する第2組成物と結合剤とが混練されるため、結合剤による窒化鉄系磁性粉末の分離が良好となり、有機珪素化合物で表面処理された窒化鉄系磁性粉末を結合剤で均一に被覆することができる。そして、混練工程で得られた有機珪素化合物及び結合剤で被覆された窒化鉄系磁性粉末を含有する混練物を分散処理すれば、窒化鉄系磁性粉末が有機珪素化合物及び結合剤により一次粒子近くまで分散された磁性塗料を調製することができる。これにより、窒化鉄系磁性粉末の凝集が抑制され、小さい磁気クラスタサイズを有する磁性層を形成することができる。
上記製造方法において、前記第1組成物は、さらに結合剤を含有することが好ましい。上記製造方法によれば、表面処理工程における窒化鉄系磁性粉末の劣化を防止することができる。
また、上記製造方法において、前記混練工程後、分散工程前に、前記混練物に、潤滑剤及び有機溶媒を含有する希釈溶液を添加する希釈工程をさらに設けてもよい。上記製造方法によれば、分散工程において効率的な分散を行うことができる。
さらに、上記製造方法において、前記分散工程後、前記磁性塗料を加圧状態でノズルから噴霧することにより前記磁性塗料を分散させる加圧分散処理工程をさらに設けてもよい。上記製造方法によれば、さらに窒化鉄系磁性粉末の分散性を向上した磁性塗料を製造することができる。
上記製造方法において、前記窒化鉄系磁性粉末は、変動係数35%以下の粒度分布を有することが好ましい。上記粒度分布を有する窒化鉄系磁性粉末であれば、粒度分布が狭いため、さらに凝集の少ない磁性塗料を調製することができる。
そして、本発明は、上記の磁性塗料を用いて製造される磁気記録媒体である。上記製造方法によれば、窒化鉄系磁性粉末の凝集の少ない磁性塗料を製造することができるため、磁気クラスタサイズが低減された磁性層を形成することができる。
以上のように、本発明は、窒化鉄系磁性粉末への吸着性に優れる有機珪素化合物を含有し、低い非溶媒成分の含有率を有する第1組成物に剪断力を付与することにより窒化鉄系磁性粉末が表面処理される表面処理工程と、該第1組成物を濃縮して高い非溶媒成分の含有率を有する第2組成物を調製する濃縮工程と、該第2組成物と結合剤とを混練することにより混練物を調製する混練工程とを有するため、分散工程において窒化鉄系磁性粉末が高度に分散された磁性塗料を調製することができる。これにより、窒化鉄系磁性粉末を用いた磁気記録媒体において、磁気クラスタサイズを低減することができる。
本実施の形態の磁性塗料の製造方法においては、まず、窒化鉄系磁性粉末、下記式(1)で表される有機珪素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶媒を含有し、且つ40質量%以下の非溶媒成分の含有率を有する第1組成物に、剪断力を付与しながら混合撹拌して、前記窒化鉄系磁性粉末を有機珪素化合物で表面処理する表面処理工程が行われる。
Figure 0004201826
(ただし、mは3〜6の整数を表し、R,Rはそれぞれ独立で、−H,−CH基,−フェニル基のいずれかを表す)
微粒子の窒化鉄系磁性粉末を分散剤により表面処理するにあたって、従来と同様の磁性粉末と分散剤とを有機溶媒を用いることなく吸着させる乾式の表面処理方法や、磁性粉末と分散剤とを少量の有機溶媒の存在下で混合撹拌して吸着させる湿式の表面処理方法では、分散剤が均一に窒化鉄系磁性粉末に吸着せず、そのため表面処理した窒化鉄系磁性粉末を混練工程及び分散工程で結合剤により分散させても磁性塗料中で窒化鉄系磁性粉末の凝集を十分に抑制することができず、磁気クラスタサイズが増大する。これは、既述したように、窒化鉄系磁性粉末が針状の鉄系金属磁性粉末に比べて微粒子であるだけでなく、広い粒度分布を有することに起因するものと考えられる。すなわち、粒度分布の広い窒化鉄系磁性粉末の集合体は、針状の鉄系金属磁性粉末に比べて、平均粒径よりも小さな粒径や大きな粒径を有する窒化鉄系磁性粉末の割合が多い。この広い粒度分布を有する窒化鉄系磁性粉末への分散剤の吸着性を考えると、小さな粒径の窒化鉄系磁性粉末は大きなBET比表面積を有するため分散剤が吸着しやすいが、大きな粒径の窒化鉄系磁性粉末は小さなBET比表面積を有するため分散剤が十分吸着することができず、その結果、粒度分布の広い窒化鉄系磁性粉末は集合体全体としての分散性が低下し、大きな粒径を有する窒化鉄系磁性粉末が凝集してさらに大きな凝集体を形成しやすくなっていると考えられる。このため、混練工程や分散工程においては、窒化鉄系磁性粉末の凝集体の表面が結合剤で被覆されることとなり、一次粒子近くまで窒化鉄系磁性粉末を分散することが困難になるものと推測される。
上記観点から、本実施の形態の表面処理工程では、広い粒度分布を有する窒化鉄系磁性粉末に分散剤を均一に吸着させるため、窒化鉄系磁性粉末との吸着性に優れる有機珪素化合物を含有するとともに、40質量%以下の非溶媒成分の含有率を有する第1組成物を調製し、この第1組成物に剪断力を付与しながら混合撹拌する。低い非溶媒成分の含有率を有する第1組成物を調製すれば、第1組成物に含まれる有機溶媒中に有機珪素化合物を均一に溶解させることができる。また、有機溶媒は窒化鉄系磁性粉末の集合体への浸透性に優れるため、有機珪素化合物が均一に分散された有機溶媒で窒化鉄系磁性粉末を十分に濡らすことができる。そして、有機珪素化合物を窒化鉄系磁性粉末に吸着させるに際して、剪断力を第1組成物に付与すれば、窒化鉄系磁性粉末の凝集体を解砕しながら有機珪素化合物と窒化鉄系磁性粉末とを接触させることができるため、有機珪素化合物を窒化鉄系磁性粉末に均一に被覆させることができる。これにより、表面処理工程後の混練工程において第1組成物を濃縮した第2組成物と結合剤とを混練する際に結合剤が窒化鉄系磁性粉末の表面を均一に被覆しやすくなる。その結果、分散工程において結合剤により窒化鉄系磁性粉末を分散させる際に窒化鉄系磁性粉末が一次粒子近くまで分散されやすくなる。
第1組成物の非溶媒成分の含有率が40質量%より高い場合、表面処理工程において有機溶媒が窒化鉄系磁性粉末を十分に濡らすことができず、有機珪素化合物の吸着が不均一になりやすい。また、表面処理工程において結合剤が使用されていない場合、非溶媒成分の含有率が高すぎると、第1組成物に大きな剪断力が掛かり、窒化鉄系磁性粉末の磁気特性が劣化しやすくなる。このため、第1組成物の非溶媒成分の含有率は40質量%以下とする必要があり、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。一方、非溶媒成分の含有率は低いほど窒化鉄系磁性粉末が有機溶媒によって濡れやすくなるため好ましいが、多量の有機溶媒を必要とするため、コスト的に不利となる。このため、非溶媒成分の含有率は1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
本実施の形態において、窒化鉄系磁性粉末は、変動係数が35%以下の粒度分布を有することが好ましく、変動係数が20〜31%の粒度分布を有することがより好ましい。このような粒度分布であれば、平均粒径よりも小さな粒径や大きな粒径を有する窒化鉄系磁性粉末の割合が少なく、より凝集の少ない磁性塗料を調製できる。なお、上記変動係数は、透過型電子顕微鏡(TEM)(倍率20万倍)で撮影した窒化鉄系磁性粉末300個の粒径から平均粒径と、粒径の標準偏差とを求め、標準偏差を平均粒径で除した値(標準偏差/平均粒径)を意味する。
また、窒化鉄系磁性粉末は、Fe16相を含む粒状乃至楕円体状の窒化鉄系磁性粉末が好ましい。このような窒化鉄系磁性粉末は、粒状乃至楕円体状の形状を有するが、Fe16相を含有するため優れた結晶磁気異方性を示し、高保磁力と適度な飽和磁化を有している。窒化鉄系磁性粉末の平均粒径は、5〜50nmが好ましく、5〜17nmがより好ましい。このような微粒子の窒化鉄系磁性粉末を用いた場合、粒度分布が広がりやすく、窒化鉄系磁性粉末の凝集が生じやすいため、本実施の形態の製造方法が特に有効である。なお、粒状乃至楕円体状とは、軸比[長軸径/短軸径]の平均値が1〜2の略球状乃至略楕円体状の形状を意味し、粒径とは、球状の粉末の場合には直径を、楕円体状などの異方性を有する粉末の場合には長軸径を意味する。また、窒化鉄系磁性粉末は、形状が粒状乃至楕円体状であれば、粉末の表面に凹凸があってもよく、若干の変形を有していてもよい。
さらに、窒化鉄系磁性粉末は、鉄に対して1〜20原子%の窒素を含有することが好ましい。窒素の含有量が1原子%以上であれば、高保磁力及び高飽和磁化を示すFe16相を多く含む窒化鉄系磁性粉末が得られる。窒素の含有量が20原子%以下であれば、非磁性窒化物の生成が抑えられ、飽和磁化の過度の低下を防止することができる。
また、窒化鉄系磁性粉末は、希土類元素、ホウ素、シリコン、アルミニウム、及びリンからなる群から選ばれる少なくとも1種の添加元素をさらに含有することが好ましい。このような添加元素を含有する窒化鉄系磁性粉末は、高保磁力でありながら分散性及び形状維持性に優れるため、出力及びノイズをさらに改善することができる。希土類元素としては、具体的には、例えば、Y、Yb、Ce、Sm、Pr、La、Eu、Ndなどが挙げられる。これらの中でも、Y、Sm、及びNdは還元時の粒子形状の維持効果が大きいため、好ましい。添加元素の含有量は、鉄に対してそれぞれ0.05〜20原子%が好ましい。これらの元素の含有量が上記範囲であれば、窒化鉄系磁性粉末の分散性と形状維持性とをさらに向上することができる。このような窒化鉄系磁性粉末の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば特開2004−273094号公報などに記載の方法により製造することができる。
本実施の形態において、上記式(1)に示される有機珪素化合物としては、具体的には、例えば、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンなどのシロキサン化合物が挙げられる。これらは単独でも複数混合して使用してもよい。これらの有機珪素化合物は、窒化鉄系磁性粉末への吸着性に優れるとともに、窒化鉄系磁性粉末の結合剤に対する濡れ性を向上できる点で共通した性質を有している。これらの中でも、テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンは、窒化鉄系磁性粉末への吸着性に優れるだけでなく、立体障害効果が高いため好ましい。
上記有機珪素化合物の量は、窒化鉄系磁性粉末100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜15質量部がより好ましく、0.3〜10質量部がさらに好ましい。有機珪素化合物の量が0.1質量部以上であれば、有機珪素化合物を窒化鉄系磁性粉末に十分に吸着させることができる。有機珪素化合物の量が20質量部以下であれば、分散工程において低粘度の磁性塗料を調製することができ、良好な塗布適性を確保することができる。
有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶媒;トルエンなどの芳香族系有機溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独または複数混合して使用されてもよい。
第1組成物は、窒化鉄系磁性粉末、有機珪素化合物、有機溶媒以外に、結合剤や他の分散剤、さらには研磨剤、カーボンブラックなどの非磁性粉末を含有してもよい。特に、第1組成物が結合剤を含有すれば、第1組成物に剪断力を効率的に作用させやすくなる。このような結合剤は、後述する混練工程において使用される結合剤と同種の結合剤を使用することができる。中でも、ポリウレタン系樹脂は、第1組成物に剪断力が付与されたときの窒化鉄系磁性粉末同士の衝突を緩和することができ、それによって窒化鉄系磁性粉末の磁気特性の劣化を防止できるため、好ましい。表面処理工程において結合剤を添加する場合、結合剤の量は窒化鉄系磁性粉末100質量部に対して、5〜15質量部が好ましい。結合剤の量が上記の範囲であれば、有機珪素化合物を優先的に窒化鉄系磁性粉末に吸着させることができる。
第1組成物に剪断力を付与するにあたっては、窒化鉄系磁性粉末を混合撹拌装置に投入し、窒化鉄系磁性粉末の解砕を行った後、有機珪素化合物あるいはさらに結合剤を有機溶媒に溶解した溶液を装置内に投入することが好ましい。
第1組成物に剪断力を作用させる混合撹拌装置としては、従来公知の混合撹拌装置を用いることができる。なお、剪断力とは、ずり応力以外にも、衝撃力、キャビテーションなど、粉末を分散させるのに効果的な機械的エネルギーを意味する。代表的な混合撹拌装置としては、容器内で回転翼の付いた回転軸を高速で回転させる回転剪断型撹拌機;分散メディアを含む分散容器内で回転翼の付いた回転軸を高速で回転させるアトライタやサンドミル;超音波分散機などが挙げられる。
表面処理工程においては、窒化鉄系磁性粉末の磁気特性を低下させない範囲で可能なかぎり高い剪断力を加えることが好ましい。具体的には、ずり速度が1×103/sec〜5×10/secとなる剪断力を第1組成物に作用させることが好ましく、1×104/sec〜2×10/secがより好ましい。このような高剪断力は、回転翼と固定部とを備え、この回転翼と固定部との間隙が小さく、高速回転が可能な撹拌機を用いることにより、得ることができる。このような撹拌機としては、IKA社製のウルトラタラックス、プライミクス社製のT.K.ホモミクサー、T.K.フィルミックス、エム・テクニック社製のクレアミックスなどのバッチ式撹拌機が挙げられる。また、荏原製作所製のエバラマイルダー、ユーロテック社製のキャビトロンなどの連続式の撹拌機が用いられてもよい。連続式撹拌機は、1回処理で使用されてもよいし、循環ラインにより複数回処理で使用されてもよい。
次に、上記表面処理工程後、第1組成物を濃縮して、80質量%以上の非溶媒成分の含有率を有する第2組成物を調製する濃縮工程が行われる。この有機珪素化合物で表面処理された窒化鉄系磁性粉末を含有する第1組成物を濃縮した高い非溶媒成分の含有率を有する第2組成物と結合剤とを混練することにより、窒化鉄系磁性粉末に高い剪断力を作用させることができる。第2組成物中の非溶媒成分の含有率が80質量%未満である場合、混練工程において第2組成物に高い剪断力を付与することができず、結合剤による窒化鉄系磁性粉末の分離が十分に進まず、分散工程における分散が不十分となる。このため、第2組成物中の非溶媒成分の含有率は80質量%以上とする必要があり、90質量%以上がより好ましい。一方、第2組成物が有機溶媒を含有しない場合、装置からの第2組成物の取出しが困難となるため、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。第1組成物を濃縮し、非溶媒成分の含有率が80質量%以上の第2組成物を調製する方法としては、加熱、減圧などにより第1組成物中の有機溶媒を蒸発させる方法が好ましい。
次に、上記濃縮工程後、第2組成物と結合剤とを混練して混練物を調製する混練工程が行われる。上記したように、表面処理工程において非溶媒成分の含有率が低い第1組成物に剪断力を付与することにより、窒化鉄系磁性粉末の表面には均一に有機珪素化合物が吸着しており、この第1組成物を濃縮することにより調製される高い非溶媒成分の含有率を有する第2組成物と結合剤とが混練されるため、混練工程において第2組成物に高剪断力を作用させることができ、表面処理された窒化鉄系磁性粉末が結合剤によって均一に被覆される。これにより、分散工程において窒化鉄系磁性粉末を一次粒子近くまで分散させることができる。
混練工程において添加される結合剤としては、従来公知の磁気記録媒体用の結合剤を使用することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、エポキシ系樹脂、及びポリウレタン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、具体的には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂などが挙げられる。ポリウレタン系樹脂としては、具体的には、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂とポリウレタン系樹脂との併用が好ましく、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂とポリエステルポリウレタン樹脂との併用がより好ましい。また、これらの結合剤は、窒化鉄系磁性粉末の分散性を向上し、充填性を上げるために、官能基を有するものが好ましい。このような官能基としては、具体的には、例えば、COOM、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)(Mは水素、アルカリ金属塩またはアミン塩である)、OH、NR、NR(R,R,R,R及びRは、水素または炭化水素基であり、通常その炭素数が1〜10である)、エポキシ基などを挙げることができる。2種以上の樹脂を併用する場合、官能基の極性が一致した樹脂を用いるのが好ましく、中でも、−SOM基を有する樹脂の組み合わせが好ましい。これらの結合剤は、窒化鉄系磁性粉末100質量部に対して、7〜50質量部、好ましくは10〜35質量部の範囲で用いられる。特に、塩化ビニル系樹脂5〜30質量部と、ポリウレタン系樹脂2〜20質量部との併用が好ましい。
混練工程において、第2組成物と結合剤とを混練するに際しては、第2組成物中への結合剤の浸透を円滑化するため、結合剤を微量の有機溶媒で溶解させた樹脂溶液を用いてもよい。ただし、結合剤を溶解させるための有機溶媒の量が多いと第2組成物の粘度が低下し、混練工程で第2組成物に剪断力が掛かり難くなり、濃縮工程の意義が失われるため、樹脂溶液の濃度は50〜65質量%が好ましく、55〜60質量%がより好ましい。
第2組成物と結合剤とを混練する混練装置としては、従来公知の回分式混練機や連続式2軸混練機などが挙げられる。これらの中でも高剪断力を混練物に作用させることができる混練装置が好ましい。このような混練装置としては、具体的には、例えば、栗本鐵工所製のKEX−30、KEX−40、KEX−50、KEX−65、KEX−80、日本製鋼所製のTEX30αII、TEX44αII、TEX65αII、TEX77αII、TEX90αIIなどが挙げられる。
本実施の形態においては、混練工程後、分散工程前に潤滑剤及び有機溶媒を含有する希釈溶液を混練物に添加する希釈工程を設けてもよい。混練工程により得られる混練物は高粘度であるため、分散工程の初期において混練物を分散機に送出し難くなったり、また空気の噛み込みにより分散が不均一となる場合がある。このため、潤滑剤及び有機溶媒を含有する希釈溶液を混練物に添加すれば、効率よく分散を行うことが可能となる。
潤滑剤としては、具体的には、例えば、10〜30の炭素数を有する脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどを使用することができる。潤滑剤の含有量は、窒化鉄系磁性粉末100質量部に対して、0.2〜3質量部が好ましい。希釈溶液中の潤滑剤の濃度は、0.1〜1質量%が好ましい。希釈溶液は、混練機内の混練物に添加してもよいし、混練機から混練物を取出し、これに希釈溶液を添加して、ディスパなどの撹拌機で混合してもよい。なお、希釈工程を行わない場合には、分散工程において混練物に定率で希釈溶液を添加してもよい。
次に、混練物を分散メディアを有する分散機で分散する分散工程が行われる。これにより、窒化鉄系磁性粉末を一次粒子近くまで分散させることができる。分散機としては、従来公知のメディア型分散機を使用することができる。具体的には、例えば、撹拌軸にディスク(穴あき型、切り込み入り型、溝付型などのディスク)、ピン、リングが設けられた分散機や、ナノミル、ピコミル、サンドミル、ダイノミルなどのロータ回転式の分散機が挙げられる。
分散メディアとしては、ガラス媒体、セラミック媒体、金属媒体(表面が樹脂で被覆されたものも含む)などの従来公知の分散メディアを使用できる。これらの中でも、微粒子の窒化鉄系磁性粉末に対しては、密度の大きい(3g/cm以上)材質からなる分散メディアが好ましい。分散メディアの粒子径は、0.05〜2.0mmが好ましく、0.2〜1.6mmがより好ましい。粒子径が0.05mm未満では、磁性塗料と分散メディアとの分離が難しくなる傾向がある。一方、粒子径が2.0mmを超えると、分散能力が低下する傾向がある。分散メディアのミル容器内の充填率は、ミル内容量に対して見掛け容量比率で50〜90容量%が好ましい。見掛け容量比率が50容量%未満では、分散効率が低下する傾向がある。一方、見掛け容量比率が90容量%を超えると、分散メディアの動きが悪くなり、また磁性塗料が発熱しやすくなる。
撹拌軸の回転速度は、回転部の周速で6〜15m/sが好ましい。回転部の周速が6m/s未満では、分散メディアの分散エネルギーが小さくなる傾向がある。一方、回転部の周速が15m/sを超えると、分散メディアが破壊される場合がある。
分散時の滞留時間は、磁性塗料の成分及び用途により異なるが、通常30〜90分が好ましい。2連以上のサンドミルを用いて分散を行う場合に、各ミルの分散条件を変えてもよい。
以上の製造工程により窒化鉄系磁性粉末が高度に分散された磁性塗料を調製することができるが、本実施の形態においては、分散工程後、架橋剤を有機溶媒に溶解させた配合溶液を磁性塗料に添加する配合工程を行ってもよい。このような架橋剤としては、結合剤中に含まれる官能基と結合し架橋構造を形成する熱硬化性の架橋剤が好ましい。具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物;イソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数有する化合物との反応生成物;イソシアネート化合物の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが挙げられる。架橋剤は、結合剤100質量部に対して、通常10〜50質量部の範囲で用いられる。なお、配合工程においては、磁性塗料の粘度調整のために有機溶媒をさらに磁性塗料に添加してもよい。
また、分散工程後、磁性塗料を加圧状態でノズルから噴霧することによって磁性塗料を分散させる高圧噴霧衝突式分散機による加圧分散処理をさらに行ってもよい。このような加圧分散処理工程を行うことにより、磁性塗料中の窒化鉄系磁性粉末の凝集をさらに低減することができる。高圧噴霧衝突式分散機としては、磁性塗料を高圧フランジャポンプにて加圧し、小径のノズルから磁性塗料を放出させるチャンバを有する分散機、対向した複数のノズルから磁性塗料を高速高圧で噴霧させ、磁性塗料同士を対面衝突させるチャンバを有する分散機が挙げられる。具体的には、例えば、アルティマイザー、ホモゲナイザー、ナノマイザーなどが挙げられる。磁性塗料を噴霧するときの加圧圧力は50MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましい。処理回数は、分散前後の粘度差や磁性塗料中の被分散物の粒度分布、磁性塗料のショートパス防止などを考慮して2回以上行うのがよい。また、ノズル目詰まりを防ぐために、処理前にフィルタなどで粗大粒子をろ過することが好ましい。なお、上記配合工程は加圧分散処理工程の後で行ってもよい。
本実施の形態の磁気記録媒体は、上記のようにして得られる磁性塗料を、可撓性支持体上に塗布して磁性塗料膜を形成し、この磁性塗料膜に磁場配向処理、乾燥処理を行って磁性層を形成することにより、作製することができる。なお、乾燥処理後に、磁性層にカレンダなどの表面平滑化処理を施すことが好ましい。磁性層の厚さは、特に限定されるものではないが、300nm以下が好ましく、10〜200nmがより好ましい。磁性層の厚さが300nmより大きいと、厚さ損失により再生出力が小さくなったり、残留磁束密度と厚さの積が大きくなりすぎ、特に高感度のMR系ヘッドが使用される場合、再生出力の飽和による出力の歪が起こりやすい。
本実施の形態においては、可撓性支持体と磁性層との間に下塗り層を設けることが好ましい。下塗り層の厚さは、0.1〜3.0μmが好ましく、0.15〜2.5μmがより好ましい。下塗り層の厚さが0.1μm未満では、耐久性が劣化する傾向がある。また、下塗り層の厚さが3.0μmを超えると、磁気記録媒体の全厚が厚くなるため、1巻当りのテープ長さが短くなり、記録容量が小さくなる傾向がある。下塗り層は、塗料粘度や磁気記録媒体の剛性の制御を目的に、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどの非磁性粉末;γ−酸化鉄、Co−γ−酸化鉄、マグネタイト、酸化クロム、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Ni−Co合金、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Ni−Cu系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライトなどの磁性粉末を含んでもよい。これらは単独または複数混合して用いてもよい。また、下塗り層は、導電性を付与するため、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックを含んでもよい。下塗り層に使用される結合剤としては、上記の磁性層で使用される結合剤と同様の樹脂を使用することができる。
本実施の形態の磁気記録媒体は、可撓性支持体の磁性層が設けられている面と反対面にバックコート層が設けられてもよい。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましく、0.3〜0.8μmがより好ましい。バックコート層は、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックを含有することが好ましい。バックコート層の結合剤としては、磁性層や下塗り層に用いられる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。これら中でも、摩擦係数を低減し走行性を向上するため、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂との併用が好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。なお、以下において、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
<実施例1>
[磁性塗料の調製]
(表面処理工程)
下記表1に示す成分を有する第1組成物(非溶媒成分の含有率:30質量%)を、回転剪断型撹拌機(エム・テクニック社製クレアミックス)を用いて、以下の表2に示す混合撹拌条件Aで,60分間混合撹拌した。
Figure 0004201826
Figure 0004201826
(濃縮工程)
得られた第1組成物を、縦型振動乾燥機(中央化工機社製VFD−01)に投入した。槽内を振動させ(振動数:1800cpm,振幅:2.2mm)、20kPaの減圧下、60℃に第1組成物を加温して濃縮し、第2組成物(非溶媒成分の含有率:90質量%)を調製した。
(混練工程)
次に、得られた第2組成物に下記表3に示す樹脂溶液を加え、連続式2軸混練機(東洋精機製作所製ラボプラストミル)で混練して、混練物を調製した。
Figure 0004201826
(希釈工程)
次に、連続式2軸混練機の希釈部において、下記表4の希釈成分を有する希釈溶液の一部を混練物に加えて希釈を行い、取り出した混練物に、さらに希釈溶液の残部を加え、高速撹拌して均一なスラリ状の混練物を調製した。
Figure 0004201826
(分散工程)
上記のスラリ状の混練物をサンドミル(メディア:0.5mmφのジルコニアビーズ,充填率:80容量%,羽根周速:10m/s)で分散処理(滞留時間:90分)を行って、磁性塗料を調製した。
(配合工程)
上記の磁性塗料に、下記表5の配合成分を加え、撹拌・ろ過した。
Figure 0004201826
(加圧分散処理工程)
上記の配合成分が配合された磁性塗料を、高圧噴霧衝突式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製)により、圧力100MPaで4回分散処理して最終的な磁性塗料を調製した。
[下塗り層塗料の調製]
下記表6の下塗り層用塗料成分を回分式ニーダで混練した。この混練物に表7に示す下塗り層用希釈成分を添加した後、これをサンドミルで分散処理(滞留時間:60分)した。この分散塗料に表8に示す下塗り層用配合成分を加え、撹拌し、ろ過して、下塗り層塗料を調製した。
Figure 0004201826
Figure 0004201826
Figure 0004201826
[バックコート層塗料の調製]
下記表9のバックコート層用塗料成分を、サンドミルで分散処理(滞留時間:45分)し、この分散塗料にポリイソシアネート8.5部を加え、撹拌し、ろ過して、バックコート層塗料を調製した。
Figure 0004201826
[磁気シートの作製]
上記の下塗り層塗料を、厚さ8μmのポリエチレンナフタレートフィルム上に、乾燥、カレンダ後の厚さが0.9μmになるように塗布し、未乾燥状態の下塗り層上に、上記の磁性塗料をエクストルージョン型コータにて、乾燥、カレンダ後の厚さが0.08μmになるように塗布した。塗布後、磁場配向処理〔N−N対向磁石(磁界強度:398kA/m)及びソレノイド磁石(磁界強度:398kA/m)の連続配向処理〕を行い、ドライヤ及び遠赤外線を用いて塗料膜を乾燥させて、磁気シートを作製した。得られた磁気シートの磁性層を形成した反対面に上記のバックコート層塗料を、塗布、乾燥した。このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダを用い、温度100℃、線圧196kN/mの条件で鏡面化処理(カレンダ処理)した。そして、磁気シートをコアに巻いた状態で60℃48時間エージングし、評価用の磁気シートを作製した。
<実施例2>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの量を1.5部に、テトラヒドロフランの量を170部(非溶媒成分の含有率:40質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<実施例3>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの量を10部に、テトラヒドロフランの量を488部(非溶媒成分の含有率:20質量%)に変更し、混合撹拌条件を以下の表10に示す混合撹拌条件Bに変更し、さらに、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を95質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
Figure 0004201826
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<実施例4>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの量を7部に、テトラヒドロフランの量を476部(非溶媒成分の含有率:20質量%)に変更し、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を95質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<実施例5>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの量を15部に、テトラヒドロフランの量を508部(非溶媒成分の含有率:20質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<実施例6>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの量を20部に、テトラヒドロフランの量を528部(非溶媒成分の含有率:20質量%)に変更し、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を80質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<実施例7>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの量を0.3部に、テトラヒドロフランの量を168部(非溶媒成分の含有率:40質量%)に変更し、混合撹拌条件を以下の表11に示す混合撹拌条件Cに変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
Figure 0004201826
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<実施例8>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン3部をオクタメチルシクロテトラシロキサン10部に、テトラヒドロフランの量を488部(非溶媒成分の含有率:20質量%)に変更し、混合撹拌条件を表10に示す混合撹拌条件Bに変更し、さらに、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を95質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<実施例9>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン3部をオクタフェニルシクロテトラシロキサン10部に、テトラヒドロフランの量を488部(非溶媒成分の含有率:20質量%)に変更し、混合撹拌条件を表10に示す混合撹拌条件Bに変更し、さらに、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を95質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<比較例1>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分として1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを使用せず、テトラヒドロフランの量を448部(非溶媒成分の含有率:20質量%)に変更し、混合撹拌条件を表10に示す混合撹拌条件Bに変更し、さらに、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を95質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<比較例2>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン3部を1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン10部に、テトラヒドロフランの量を100部(非溶媒成分の含有率:55質量%)に変更し、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を80質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
<比較例3>
実施例1の磁性塗料の調製において、表面処理工程での第1組成物成分中の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン3部をヘキサメチルジシロキサン1.5部に、テトラヒドロフランの量を170部(非溶媒成分の含有率:40質量%)に変更し、濃縮工程での第2組成物の非溶媒成分の含有率を75質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして磁性塗料を調製した。
上記のようにして得られた磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用の磁気シートを作製した。
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各評価用磁気シートの磁気クラスタサイズを以下の方法により評価した。表12はこの結果を示す。
〔磁気クラスタサイズ〕
磁気力顕微鏡として、デジタルインスツルメント社製,Nano Scope IIIを用い、周波数検出法により磁性層の漏れ磁界像を測定した。測定プローブには、コバルトアロイコートを有するプローブ(先端曲率半径:25〜40nm,保磁力:約400Oe,磁気モーメント:約1×10−13emu)を用い、走査範囲は5μm四方、走査速度は5μm/secとした。得られた漏れ磁界像の磁化強度の中心値Cと標準偏差δとの和(C+δ)より大きな磁化強度を有する部分を2値化処理することにより表示し、該部分を磁気クラスタとして、その円相当径の平均値を測定した。
Figure 0004201826
上記表12に示すように、実施例の各磁気シートの磁気クラスタサイズは比較例のそれに比べて小さいことが分かる。

Claims (7)

  1. Fe 16 相を含み、5〜50nmの平均粒径を有する粒状乃至楕円体状の窒化鉄系磁性粉末、下記式(1)で表される有機珪素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤、並びに有機溶媒を含有し、且つ40質量%以下の非溶媒成分の含有率を有する第1組成物に、剪断力を付与しながら混合撹拌して、前記窒化鉄系磁性粉末を前記有機珪素化合物で表面処理する表面処理工程と、
    前記表面処理された窒化鉄系磁性粉末を含有する第1組成物を濃縮して、80質量%以上の非溶媒成分の含有率を有する第2組成物を調製する濃縮工程と、
    前記第2組成物と結合剤とを混練して混練物を調製する混練工程と、
    前記混練物を、分散メディアを用いて分散処理することにより磁性塗料を調製する分散工程とを有する、磁性塗料の製造方法。
    Figure 0004201826
    (ただし、mは3〜6の整数を表し、R,Rはそれぞれ独立で、−H,−CH基,−フェニル基のいずれかを表す)
  2. 前記有機珪素化合物は、テトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びオクタフェニルシクロテトラシロキサンからなる群から選ばれる1種を含有する請求項1に記載の磁性塗料の製造方法。
  3. 前記第1組成物は、さらに結合剤を含有する請求項1または2に記載の磁性塗料の製造方法。
  4. 前記混練工程後、分散工程前に、前記混練物に、潤滑剤及び有機溶媒を含有する希釈溶液を添加する希釈工程をさらに有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁性塗料の製造方法。
  5. 前記分散工程後、前記磁性塗料を加圧状態でノズルから噴霧することにより前記磁性塗料を分散させる加圧分散処理工程をさらに有する請求項1〜のいずれか1項に記載の磁性塗料の製造方法。
  6. 前記窒化鉄系磁性粉末は、変動係数35%以下の粒度分布を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の磁性塗料の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の磁性塗料を用いて製造される磁気記録媒体。
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