JP4201647B2 - 転造平ダイス、転造ダイス及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転造平ダイス、転造ダイス及びその製造方法に関し、特に、偏当りを防止することで工具寿命を向上し、且つ加工精度の高い転造平ダイス、転造ダイス及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、被転造素材の外周面に転造される歯形の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部の先端側に形成され、仕上げ部に先立って被転造素材に食い付く食付き部と、仕上げ部のうちその食付き部とは反対側に形成された逃げ部とを有する転造ダイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−185713号公報([0002])。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術の転造ダイスでは、食付き部のねじ山及び逃げ部のねじ山のうち、それぞれ仕上げ部側に位置するねじ山が欠損し易く寿命が得られないという問題点があった。図8は従来の転造ダイス100における仕上げ部102及び食付き部103のねじ山形状を示す図である。図8から明らかなように、従来の転造ダイス100においては、食付き部103のうち最も仕上げ部側に位置するねじ山107の山頂が仕上げ部102側へ所定量ずらされている。このため、仕上げ部102と食付き部103とが同時に被転造素材に噛み合い、仕上げ部102のねじ山間が被転造素材で充実した状態においては、被転造素材はねじ山107の山頂からねじ谷底を経て隣接するねじ山108の山頂まで移動するまでの間に、ねじ山107の仕上げ部側のフランク110に大きな力を加え続ける。よって、ねじ山107においていわゆる偏当り状態が生じ、繰り返し曲げ応力が発生するので、ねじ山107が特に欠損を起こし易くなるのである。この曲げ応力は、ねじ底を支点としてねじ山頂に負荷を与えるものであるため、ねじ山が高く、溝角度が小さく、且つ谷底のRが小さいダイス、すなわち付加価値の高いダイスほど、このようなねじ山の欠損が特に顕著となる。
【0005】
このような問題は、仕上げ部102のうち食付き部103とは反対側に形成されたテーパ状の逃げ部においても同様に生じるが、特に、被転造素材の変形抵抗が高い場合には、数個の被転造素材を転造加工しただけで、食付き部または逃げ部のねじ山のうち、仕上げ部に隣接するねじ山が欠損し、他のねじ山が何ら損傷していないのにもかかわらず廃棄又は再研磨せねばならない場合があった。
【0006】
図9は、仕上げ部102から食付き部103へかけて順次ねじ山を加工する従来の転造ダイス100の加工方法を示す図である。従来の加工方法では等ピッチで設けられた複数の加工刃111a〜111eを有する研削砥石111と、この研削砥石111を所定ピッチずつ転造ダイス100の先端側へ移動させ、且つ研削砥石111の高さ方向へも移動させることができるならい装置(図示せず)とが用いられていた。このならい装置に保持された研削砥石111により、順次ねじ山が研削加工されるのであるが、この際、等ピッチのねじ山を加工するよう、研削砥石111は加工刃111a〜111eのピッチの倍数である所定量ずつ先端側へずらされていた(図9では研削砥石111は先端側へ4ピッチ分ずらされている)。
【0007】
また、図9に示すように、食付き部103のねじ山は、ならい装置により研削砥石111を先端側へ1ピッチ分ずらし且つ高さを所定量下げた状態で加工刃111eにより1山ずつ研削加工されていた。
【0008】
このような加工方法が用いられていたことから、従来の転造ダイス100のねじ山は、仕上げ部102から食付き部103まで谷底のピッチがすべて加工刃111a〜111eのピッチと等しくされた谷基準のねじ山となっていた。したがって、従来の転造ダイス100では、ねじ山の山頂のピッチが仕上げ部側へずらされたねじ山107において上述したような偏当りが生じることが避けられなかったのである。
【0009】
さらに、仕上げ部102と食付き部103との接続部分において、ねじ山107が偏当り状態となっている場合には、ねじ山107の仕上げ部側フランク110による被転造素材の盛り上げ量がねじ山107に隣接するねじ山の先端部側フランク112の盛り上げ量に比較して多く、完成品のねじにおいてねじ山頂の左右の盛りの差が大きい。図6は従来の転造ダイス100により加工されたねじ15のねじ山頂を示す図である。このように、従来の転造ダイス100では、仕上げ部102と食付き部103との接続部分において生じる偏当りにより、ねじのピッチ誤差が大きくなり、且つシーミング深さが深くなるという問題点があった。また、完成品のねじにおいて、山頂が盛り上がり過ぎの部分が螺旋状に痕となって残るという問題点もあった。図10は、従来の転造ダイス100により加工されたおねじ15において螺旋状に現れる痕を示す図である。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、ねじ山の偏当りを防止することにより、工具寿命が向上し、且つ加工精度の高い転造平ダイス、転造ダイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載の転造平ダイスは、転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の先端側に形成された食付き部とを有する転造平ダイスであって、前記仕上げ部から前記食付き部までねじ山の山頂のピッチが一定にされて構成されている。
【0012】
請求項1記載の転造平ダイスによれば、仕上げ部から食付き部までねじ山の山頂のピッチが一定にされているので、仕上げ部と食付き部とが同時に被転造素材にかみ合い、仕上げ部のねじ山間が被転造素材で充実した状態においても、食付き部のうち最も仕上げ部側に位置するねじ山が偏当り状態になることが抑制される。
【0013】
また、請求項2記載の転造ダイスは、転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の後端側に形成された逃げ部とを有する転造ダイスであって、前記仕上げ部から前記逃げ部までねじ山の山頂のピッチが一定にされて構成されている。
【0014】
請求項2記載の転造ダイスによれば、仕上げ部から逃げ部までねじ山の山頂のピッチが一定にされているので、仕上げ部と逃げ部とが同時に被転造素材にかみ合い、仕上げ部のねじ山間が被転造素材で充実した状態においても、逃げ部のうち最も仕上げ部側に位置するねじ山が偏当り状態になることが抑制される。
【0015】
また、請求項3記載の転造ダイスの製造方法は、転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の先端側に形成された食付き部とを有する転造ダイスの製造方法であって、前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する仕上げ部研削砥石により前記仕上げ部のねじ山を加工する仕上げ部加工工程と、前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する食付き部研削砥石により前記食付き部のねじ山を加工する食付き部加工工程とを有し、前記食付き部加工工程は、前記仕上げ部加工工程により加工された仕上げ部のねじ山の山頂と前記食付き部のねじ山の山頂のピッチが一致するように位置決めされた前記食付き部研削砥石により前記食付き部を研削加工するものである。
【0016】
また、請求項4記載の転造ダイスの製造方法は、転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の後端側に形成された逃げ部とを有する転造ダイスの製造方法であって、前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する仕上げ部研削砥石により前記仕上げ部のねじ山を加工する仕上げ部加工工程と、前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する逃げ部研削砥石により前記逃げ部のねじ山を加工する逃げ部加工工程とを有し、前記逃げ部加工工程は、前記仕上げ部加工工程により加工された仕上げ部のねじ山の山頂と前記逃げ部のねじ山の山頂のピッチが一致するように位置決めされた前記逃げ部研削砥石により前記逃げ部を研削加工するものである。
【0017】
【発明の効果】
請求項1記載の転造平ダイスによれば、食付き部のうち最も仕上げ部側に位置するねじ山が偏当たり状態となることを防止できる。よって、食付き部のねじ山のうち仕上げ部に隣接するねじ山に繰り返し曲げ応力がかかって欠損することを抑制できるので、工具寿命が向上するという効果がある。また、本発明の転造平ダイスにより加工された完成品のねじは、ねじ山頂の左右フランクの盛り上がりが均一化するので、ねじのピッチ誤差が小さくなると共に、シーミング深さが浅くなる。よって、本発明の転造ダイスによれば、歯形、歯筋の誤差が小さいねじを転造できるという効果がある。さらに、食付き部のねじ山の偏当りを防止することにより完成品のねじの円周上に山頂が盛り上がり過ぎの部分が痕となって現れる現象を抑制できるという効果もある。
【0018】
請求項2記載の転造ダイスによれば、逃げ部のうち最も仕上げ部側に位置するねじ山が偏当り状態となることを防止できる。よって、逃げ部のねじ山のうち仕上げ部に隣接するねじ山に繰り返し曲げ応力がかかって欠損することを抑制できるので、工具寿命が向上するという効果がある。
【0019】
請求項3記載の転造ダイスの製造方法によれば、複数の加工刃を有する食付き部研削砥石を、仕上げ部加工工程により加工された仕上げ部のねじ山の山頂のピッチに合うように位置合わせするだけで、仕上げ部から食付き部まで、ねじ山の山頂のピッチがすべて等しい転造ダイスを容易に製造することができるという効果がある。請求項3記載の製造方法により製造された転造ダイスは、食付き部のねじ山のうち仕上げ部に隣接するねじ山が偏当り状態となることが防止され、ねじ山に繰り返し曲げ応力がかかって欠損することを抑制できるので、工具寿命が向上する。また、本発明の製造方法により製造された転造ダイスにより加工された完成品のねじは、ねじ山頂の左右フランクの盛り上がりが均一化するので、ねじのピッチ誤差が小さくなると共に、シーミング深さが浅くなる。よって、本発明によれば、歯形、歯筋の誤差が小さいねじを加工できる転造ダイスを容易に製造できるという効果がある。さらに、本発明の方法により製造された転造ダイスによれば、食付き部のねじ山の偏当りが防止されることにより完成品のねじの円周上に山頂が盛り上がり過ぎの部分が痕となって表れることを抑制できるという効果もある。
【0020】
請求項4記載の転造ダイスの製造方法によれば、複数の加工刃を有する逃げ部研削砥石を、仕上げ部加工工程により加工された仕上げ部のねじ山の山頂のピッチに合うように位置合わせするだけで、仕上げ部から逃げ部まで、ねじ山の山頂のピッチがすべて等しい転造ダイスを容易に製造することができるという効果がある。したがって、請求項4記載の製造方法により製造された転造ダイスは、逃げ部のねじ山のうち仕上げ部に隣接するねじ山が偏当り状態となることを防止し、ねじ山に繰り返し曲げ応力がかかって欠損することを抑制できるので、工具寿命が向上する。
【0021】
請求項1から請求項4に記載の発明の効果は、被転造素材が変形抵抗が高い材料例えばSUS,SCM,SNCMなどである場合には、特に顕著になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例における転造ダイス1を示す図であり、図1(a)は転造ダイス1の側面図であり、図1(b)は転造ダイス1の正面図である。まず、図1を参照して転造ダイス1の全体構成について説明する。
【0023】
転造ダイス1は、円筒型の外周にねじ山のある丸ダイスであって、転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部2と、その仕上げ部2の先端側、すなわち仕上げ部2に先立って被転造素材に食い付く側に形成され、且つねじ山の山頂を結ぶ線が前記仕上げ部2の山頂を結ぶ線と食付き角αで交わるようにねじ山が設けられたテーパ状の食付き部3、仕上げ部2の後端側、すなわち仕上げ部2のうち前記食付き部3とは反対側に形成され、且つねじ山の山頂を結ぶ線が前記仕上げ部2の山頂を結ぶ線と逃げの角βで交わるようにねじ山が設けられたテーパ状の逃げ部4とを有して構成されている。
【0024】
転造ダイス1は、転造盤の主軸(図示せず)に挿入される穴部6aが形成されており、その穴部6aの一箇所には、その転造盤の主軸と係合されるキー溝6bが形成されている。転造ダイス1は転造盤の主軸に係合されるとともに、被転造素材を挟持して、その被転造素材の外周面を塑性変形させておねじ等の軸状部材を形成する。
【0025】
図2は、仕上げ部2の先端側と食付き部3におけるねじ山形状を示す図であり、食付き部3のねじ山のうち最も仕上げ部2よりに位置するねじ山を第1ねじ山7として示し、仕上げ部2のねじ山のうち最も食付き部3側に位置するねじ山を仕上げ部先端ねじ山8として示す。図3は、転造ダイス1の仕上げ部2から食付き部3にかけてのねじ山のピッチを、従来の転造ダイスと比較して示す図である。実線が従来の転造ダイスのねじ山を表し、破線が本実施例の転造ダイス1のねじ山を表している。図3に示す破線から明らかなように、転造ダイス1は、仕上げ部2から食付き部3にかけてねじ山の山頂のピッチが一定であり、第1ねじ山7の仕上げ部側の谷底と仕上げ部先端ねじ山8の谷底との間のピッチは仕上げ部2と食付き部3のねじ山の山頂のピッチよりも大きくされている。
【0026】
図4は、仕上げ部2と食付き部3と逃げ部4におけるねじ山の形状を示す図であり、実線が転造ダイス1のねじ山を表す。ここで、仕上げ部2の中央部のねじ山は図示を省略する。また、逃げ部4のねじ山のうち最も仕上げ部2よりに位置するねじ山を第2ねじ山9として示し、仕上げ部2のねじ山のうち最も逃げ部4側に位置するねじ山を仕上げ部後端ねじ山10として示す。図4から明らかなように、仕上げ部2から逃げ部4にかけてねじ山の山頂のピッチは一定であり、第2ねじ山9の仕上げ部側の谷底と仕上げ部後端ねじ山10の谷底との間のピッチは仕上げ部2と逃げ部4のねじ山の山頂のピッチよりも大きくされている。
【0027】
図3に従来の転造ダイスのねじ山を実線で示す。図3から明らかなように、従来の転造ダイスは、食付き部のねじ山と仕上げ部のねじ山とは、谷底のピッチは一致しているが、食付き部のねじ山のうち最も仕上げ部よりに位置するねじ山の山頂が仕上げ部側にずらされており、仕上げ部と食付き部とが共に被転造素材に噛み合い仕上げ部が被転造素材で充実した状態では、このピッチがずらされたねじ山において片側のフランク110に大きな力が加えられるいわゆる偏当り状態が生じる。また、逃げ部のねじ山においても食付き部のねじ山と同様に山頂のピッチが仕上げ部側にずらされているため、同様の偏当りが生じる。
【0028】
転造ダイス1によれば、図4に実線で示すように、仕上げ部2、食付き部3、逃げ部4におけるねじ山の山頂のピッチが一定にされているため、仕上げ部2、食付き部3、逃げ部4が被転造素材に噛み合い、仕上げ部2のねじ山間が充実した状態であっても、仕上げ部2と食付き部3の接続部分すなわち第1ねじ山7や、仕上げ部2と逃げ部4の接続部分すなわち第2ねじ山9が偏当り状態となることを抑制できるのである。
【0029】
次に、図5を参照して、上記のように構成された転造ダイス1の製造工程を説明する。仕上げ部加工工程20では、仕上げ部研削砥石11を用いて仕上げ部2のねじ山を研削加工する。図4に破線及び実線で仕上げ部研削砥石11を示す。仕上げ部研削砥石11は、仕上げ部2のねじ山のピッチに相当するピッチで複数の加工刃が設けられており、転造ダイス1のうち仕上げ部2に相当する部分を研削加工する。
【0030】
食付き部加工工程21では食付き部研削砥石12を用いて食付き部3のねじ山を研削加工する。ここで、食付き部研削砥石12は図4に一点鎖線及び実線で示すように、仕上げ部2のねじ山のピッチに相当するピッチで加工刃が設けられ、且つ食付き角αの食付き部3を加工するようにテーパ状の加工面を有する。図4に示すように、食付き部加工工程21では、仕上げ部加工工程20により加工された仕上げ部2のねじ山の山頂と食付き部3のねじ山の山頂のピッチが一致するように位置決めされた食付き部研削砥石12により研削加工が行われる。
【0031】
具体的には、仕上げ部2のねじ山のピッチや食付き角αから、仕上げ部2のねじ山の山頂と食付き部3のねじ山の山頂のピッチが一致するようなピッチのずらし量P1を算出する。そして、食付き部研削砥石12の加工刃を仕上げ部2のねじ山の谷底と一致させた場合に比較してずらし量P1だけ食付き部研削砥石12を転造ダイス1の先端側へずらして、食付き部3を研削加工する。このずらし量P1は、転造ダイス1の呼び×ピッチが例えばTr20×4であり、食付き角αが1°14′である場合、例えば0.020mmとされる。
【0032】
逃げ部加工工程22では逃げ部研削砥石13を用いて逃げ部4のねじ山を加工する。ここで、逃げ部研削砥石13は図4に二点鎖線及び実線で示すように、仕上げ部2のねじ山のピッチに相当するピッチで加工刃が設けられ、且つ逃げの角βの逃げ部4を加工するようにテーパ状の加工面を有する。図4から明らかなように、逃げ部加工工程22では、仕上げ部加工工程20により加工された仕上げ部2のねじ山の山頂と逃げ部4のねじ山の山頂のピッチが一致するように位置決めされた逃げ部研削砥石13により研削加工が行われる。
【0033】
具体的には、仕上げ部2のねじ山のピッチや逃げの角βから、仕上げ部2のねじ山の山頂と逃げ部4のねじ山の山頂のピッチが一致するようなピッチのずらし量P2を算出する。そして逃げ部研削砥石13の加工刃を仕上げ部2のねじ山の谷底と一致させた場合に比較してずらし量P2だけ逃げ部研削砥石13を転造ダイス1の後端側へずらして、逃げ部4を研削加工する。このずらし量P2は、転造ダイス1の呼び×ピッチが例えばTr20×4であり、逃げの角βが3°00′である場合、例えば0.049mmとされる。
【0034】
次に、上述のように構成された転造ダイス1と従来の転造ダイスとを用いて行った転造試験について説明する。この転造試験は、以下に示す転造条件で行なった。
【0035】
(転造条件)
転造盤 :30トン
転造物の呼び×ピッチ:Tr20×4
転造物の材料 :S45C
転造物の硬さ :12HRC
転造圧力 :20トン
主軸回転数 :20min-1
送り速度 :1000mm/min。
【0036】
上記転造条件で試験を行った結果、従来の転造ダイスでは、加工長さは2000mであったのに対し、本発明に係る転造ダイス1では、5000〜6000mの加工長さが得られた。工具寿命はいずれもダイスのねじ山の欠損であった。
【0037】
転造試験の結果からも明らかなように、本発明の転造ダイス1によれば、従来の転造ダイスに比較して2.5〜3倍程度の加工長さが得られ、工具寿命が向上した。
【0038】
また、図6は転造ダイス1により加工されたおねじ14のねじ山と従来の転造ダイスにより加工されたおねじ15のねじ山との断面形状を比較する図である。図6から明らかなように、転造ダイス1により加工されたおねじ14のねじ山は、従来の転造ダイスにより加工されたおねじ15のねじ山に比較して、ねじ山頂の左右フランクの盛り上がりが均一で且つシーミング深さSが浅い。これは、上述のように、本発明の転造ダイス1によれば、食付き部2と仕上げ部3の接続部分である第1ねじ山7における偏当りが抑制されるためであると考えられる。
【0039】
以上説明したように、転造ダイス1によれば、食付き部2のうち最も仕上げ部側に位置する第1ねじ山7、及び逃げ部4のうち最も仕上げ部側に位置する第2ねじ山9が偏当り状態となることを防止できる。よって、第1ねじ山7及び第2ねじ山9に繰り返し曲げ応力がかかって欠損することを抑制できるので、工具寿命が向上する。また、本発明の転造ダイス1により加工された完成品のねじは、ねじ山頂の左右フランクの盛り上がりが均一化するので、ねじのピッチ誤差が小さくなると共に、シーミング深さが浅くなる。よって、本発明の転造ダイス1によれば、歯形、歯筋の誤差が小さいねじを加工できる。さらに、第1ねじ山7の偏当りを防止することにより完成品のねじの円周上に山頂が盛り上がり過ぎの部分が痕となって現れる現象を抑制できる。
【0040】
また、本実施例の転造ダイスの製造方法によれば、複数の加工刃を有する食付き部研削砥石12を仕上げ部加工工程20により加工された仕上げ部2のねじ山の山頂のピッチに合わせて位置合わせするだけで、仕上げ部2から食付き部3まで、ねじ山の山頂のピッチがすべて等しい転造ダイス1を容易に製造することができる。
【0041】
また、本実施例の転造ダイスの製造方法によれば、複数の加工刃を有する逃げ部研削砥石13を仕上げ部加工工程20により加工された仕上げ部2のねじ山の山頂のピッチに合わせて位置合わせするだけで、仕上げ部2から逃げ部4まで、ねじ山の山頂のピッチがすべて等しい転造ダイス1を容易に製造することができる。
【0042】
また、本実施例によれば、食付き部研削砥石12の位置合わせ、逃げ部研削砥石13の位置合わせの2回の位置合わせだけで、仕上げ部2、食付き部3及び逃げ部4のねじ山の山頂のピッチがすべて一致した転造ダイス1を製造できるので、容易に転造ダイス1を製造できる。
【0043】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定される物ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0044】
例えば、本実施例では、転造ダイス1は丸ダイスであったが、例えば図7に示すような仕上げ部32、食付き部33、逃げ部34を有する平ダイス30に本発明が適用された場合にも同様の効果が得られる。
【0045】
また、本実施例では、転造ダイス1は三角ねじを転造加工するものであったが、三角ねじ以外のねじ山を転造加工するものであっても、同形状で同ピッチのねじ山を転造加工する転造ダイスであれば本発明は適用される。
【0046】
また、本実施例の転造ダイス1の食付き部3、逃げ部4のねじ山は、いずれも完全なねじ山の形を持つ完全ねじ山部を有していたが、食付き部3、逃げ部4のねじ山山頂が平坦にされていても良い。
【0047】
また、本実施例では食付き部加工工程21による食付き部3の加工の後に逃げ部加工工程22による逃げ部4の加工が行われていたが、食付き部3の加工に先立って逃げ部4の加工が行われても良い。
【0048】
また、本実施例において、転造ダイス1のねじ山は、複数の加工刃を有する食付き部研削砥石12及び逃げ部研削砥石13を用いて研削加工されていたが、1条の加工刃を有する砥石を用いたNC加工により転造ダイス1のねじ山を研削加工しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例における転造ダイス1を示す図であり、図1(a)は転造ダイス1の側面図であり、図1(b)は転造ダイス1の正面図である。
【図2】 仕上げ部2の先端側と食付き部3におけるねじ山形状を示す図である。
【図3】 転造ダイス1の仕上げ部2から食付き部3にかけてのねじ山のピッチを、従来の転造ダイスと比較して示す図である。
【図4】 仕上げ部2と食付き部3と逃げ部4におけるねじ山形状を示す図である。
【図5】 転造ダイス1の製造工程を説明する工程図である。
【図6】 転造ダイス1により加工されたおねじ14のねじ山と従来の転造ダイスにより加工されたおねじ15のねじ山との断面形状を比較する図である。
【図7】 本発明が適用される平ダイス30の側面図である。
【図8】 従来の転造ダイス100における仕上げ部102及び食付き部103のねじ山形状を示す図である。
【図9】 従来の転造ダイス100のねじ山の研削加工方法を示す図である。
【図10】従来の転造ダイス100により加工されたおねじ15において螺旋状に現れる痕を示す図である。
【符号の説明】
1 転造ダイス
2 仕上げ部
3 食付き部
4 逃げ部
11 仕上げ部研削砥石
12 食付き部研削砥石
13 逃げ部研削砥石
14 おねじ
20 仕上げ部加工工程
21 食付き部加工工程
22 逃げ部加工工程
Claims (4)
- 転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の先端側に形成された食付き部とを有する転造平ダイスにおいて、
前記仕上げ部から前記食付き部までねじ山の山頂のピッチが一定にされていることを特徴とする転造平ダイス。 - 転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の後端側に形成された逃げ部とを有する転造ダイスにおいて、
前記仕上げ部から前記逃げ部までねじ山の山頂のピッチが一定にされていることを特徴とする転造ダイス。 - 転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の先端側に形成された食付き部とを有する転造ダイスの製造方法であって、
前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する仕上げ部研削砥石により前記仕上げ部のねじ山を加工する仕上げ部加工工程と、
前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する食付き部研削砥石により前記食付き部のねじ山を加工する食付き部加工工程とを有し、
前記食付き部加工工程は、前記仕上げ部加工工程により加工された仕上げ部のねじ山の山頂と前記食付き部のねじ山の山頂のピッチが一致するように位置決めされた前記食付き部研削砥石により前記食付き部を研削加工するものである転造ダイスの製造方法。 - 転造加工されるおねじのねじ山の仕上げを行う仕上げ部と、その仕上げ部のねじ山の山頂を結ぶ線に対しねじ山の山頂を結ぶ線が傾くように前記仕上げ部の後端側に形成された逃げ部とを有する転造ダイスの製造方法であって、
前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する仕上げ部研削砥石により前記仕上げ部のねじ山を加工する仕上げ部加工工程と、
前記仕上げ部のねじ山のピッチに相当するピッチで設けられた複数の加工刃を有する逃げ部研削砥石により前記逃げ部のねじ山を加工する逃げ部加工工程とを有し、
前記逃げ部加工工程は、前記仕上げ部加工工程により加工された仕上げ部のねじ山の山頂と前記逃げ部のねじ山の山頂のピッチが一致するように位置決めされた前記逃げ部研削砥石により前記逃げ部を研削加工するものである転造ダイスの製造方法。
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