JP4201118B2 - 光分析用セルとこのセルを用いた光分析装置及び光分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光を用いて分析を行う光学分析に使用する光分析用セル及びこのセルを用いた光分析装置及び光分析方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光分析は従来から環境、化学、医療分野での分析等で広く用いられており、特に近年では環境汚染の拡大により大気、水質、土壌等の分析で一般的に用いられている。被検体となる試料の種類、状態、量等も様々であり、それぞれの条件に適応するような分析装置が用いられる。機構やその仕組みは各装置によって異なり、それぞれに応じた光学系が必要となる。
光分析は、光を照射したときに物質固有の波長の光が選択的に吸収、発光、透過、散乱される特性を利用している。例えば原子吸光分析法は、遊離基底状態の原子が特定波長の光を吸収する現象を利用した分析手法である。この方法は非常に巾の狭い線スペクトルの光源を用いているため、他の元素による光の吸収がほとんどの場合無視できる。そのため、他の分析法で問題となる共存元素の影響をほとんど受けない。この分析方法は特に金属元素の高感度測定に適している。しかし、分光学的干渉や化学干渉等留意しなければならない問題がある。また、試料の原子化には一般に炎を用いるため、燃焼ガスが必要となりガスボンベ等の設備が必要となる。そのため、分析を行う現場へ携帯して測定するには不向きである。
一方、UV−可視吸光分析は携帯できる分析機器もあり、且つ測定試料にほとんど制限がないため試料の調整が簡単で、汎用性に優れている。さらに水質分析等においては、採水現場での連続測定が可能であるため、一般に広く利用されている。
この測定方法の場合は通常、液体の被検体をセルに注入し、セルを介して試料に光を透過させる方法を用いることが多く、透過率のよい材料のセルである方がより高い分析精度を得ることができる。そのため一般的には石英ガラスが使用されているが、たとえ石英ガラスであっても100%光を透過させることは不可能であり、また石英ガラスは非常に高価である故に頻繁に交換することができないのが現状である。
さらに、セル壁の汚染は光の透過を妨害するため大きな問題となる。たとえ透過率の優れた石英セルを使用したとしても、汚れの付着によって透過率が低下することがある。試料が接触している内壁部分は汚れが付着しやすく、特に排水処理に関する分析時には汚れの付着が顕著であった。何故なら排水処理液には凝集沈殿剤や鉄、マンガンといった金属のイオンが含まれていることが多く、それらが酸化されることによりゲル状水酸化物等が生成し、セルの内壁に付着すると除去することが非常に困難となるからである。特に連続式の分析装置の場合には、試料がセル内部に長期間接触した状態となるので、付着物の蓄積がより一層促進されて分析値の信頼度が著しく失墜するという問題を抱えていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑みて、セル壁への汚れの付着に左右されずに高精度の分析を行うことのできるセル、及びこのセルを用いた光分析装置及び光分析方法を提供するものである。詳細には、高精度の水質分析を行うためのセルと、これを用いた分析装置及び分析方法である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1.試料に光を照射して溶液中の物質の濃度と濁度の両方の分析を行う光分析装置に用いる、試料を貯留する光分析用セルにおいて、セルを構成する対向する壁面に光の導入孔と透過孔を配置し、これらの孔が試料の液面より下方にあり、試料の表面張力によって該試料の漏出が防止される大きさの孔であり、かつセル上部が開口しており該開口を光の導入孔または透過孔とし、前記壁面の孔が直進する光のみ又は直進する光と散乱光の両者を透過する孔であり、前記セル上部の開口が散乱光を透過することを特徴とする光分析用セル。
2.セルが光透過孔以外では光を透過しない光遮蔽構造のセルである、1項に記載された光分析用セル。
3.1項または2項に記載されたセルを用い、試料を透過した光により分析を行う光分析装置。
4.1項または2項に記載されたセルを用い、試料を透過した直進光により試料の濁度と含有される溶解成分の分析を行う光分析装置。
5.セルの試料注入口と下部に試料排出口を設け、試料を排出するときには排出口を開口するように制御した、3項または4項に記載された光分析装置。
6.3項ないし5項のいずれか1項に記載された光分析装置を用いて、試料を透過した光により分析を行うことを特徴とする、光分析方法。」に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は光分析に使用する光分析用セル及びこのセルを用いた光分析装置及び光分析方法であり、光分析用セルを構成する面には光を導入させるためと光を透過するための孔が配設されている。
通常、被検体が液体である場合にはセルに試料を注入し、セルを介して試料に光を透過し、再びセル壁を通って受光部へと光が送られる。ここで用いられるセルは透過率の高い材質のものが使用されている。しかし、透過率の優れたセルであっても被検液と接触している壁面に汚れ等が付着すると透過率は低下しそれに伴い測定精度が低下するといった問題もあった。
【0006】
そこで、本発明ではセルの材質や、セル壁への汚れの付着に影響されることのない光分析用セルと、それを用いた分析精度の優れた光分析装置と光分析方法を提供する。
セルには、試料を導入するための注入口を設け、一般的に使用されている上部開口型のものが利用できる。この開口を分析するための光を導入する導入孔、あるいは試料を透過した光が通る透過孔として利用することもできる。またセル壁面の試料液面より上方に導入孔を設けることもでき、このように孔が試料の液面より上方に設けられている場合は孔の大きさは任意でよいが、液面より下方に設ける場合は、孔の大きさは、試料の表面張力によって試料の漏出が防止される大きさの孔でなければならない。
光の透過孔は、試料の液面より下方のセルの面に配置されるのが実際的であり、底面であってもよい。
本発明の光分析用セルはセルを構成する面に光を通過させるための孔を配設したものである。光が該孔を通過することでセルを介さず試料に直接光を透過させ、受光部に受光させることができるため、セルの壁面に付着した汚れに依って光の透過率を低下させることがなく、セルの材質や汚れの付着によって分析精度が左右されない。
セルに設けた孔はセルに孔配設部以上に試料を注入しても、孔から液が漏れることのない大きさとした。つまり、液の水圧と孔に対しての表面張力がつり合っているか、または表面張力が液の水圧より大となっている状態であれば、液は漏出しない。孔の寸法については、セル内部の面積、材質、液量、液体の種類等によって表面張力や水圧が変わるため、一概にはいえないが、それぞれの条件から適宜変更すればよい。例えば、孔に合う栓を複数個用意し、この栓に異なる大きさの孔を貫通して設け、この栓を適宜選んでセルの孔に嵌着する方法がある。勿論複数個の孔を設ける場合には、孔の大きさの異なるセルを用意してもよい。孔径が大きすぎると孔から液が漏出してしまい、孔が小さすぎると光が試料に十分照射されないという問題が生ずる。具体的には、例えばプール水の残留塩素の測定を行う場合、容器としてポリスチレン容器を用いるときは孔径1〜3mmでよい。
【0007】
孔の形状については特に限定されず光が透過できるものであればよい。また、光が孔以外のセルの壁面を通過し、これを受光すると、孔を通過したことで得られるスペクトルと、孔以外のセルの外壁を通過したことで得られるスペクトルが混在することとなるため測定値に誤差が生じてしまうことから、孔を通過して直接溶液に照射されて得られたスペクトルのみを得るため、孔を配設したセルの壁、少なくとも孔の周辺部を光が透過しない構造とするのが好ましい。例えば、孔を配設したセルの側壁部に黒色塗装を施して遮光したり、孔配設部の側面部が黒色であるセルを使用する方法がある。その他にも光が孔以外を透過しない構造の遮光板を光源とセルの間に設置する方法も含む。
通常は、孔の配設位置は光がセルの導入孔を通って試料を透過し、対向透過孔を通って受光部に到達するように配設すればよい。一般的には被検液を通過した前後での光の屈折はそれ程大きくないことから、セルの対向する面の向き合う位置に適当な大きさの孔をそれぞれに配設すればよい。また光分析装置の構造によって、光がセルを構成する壁面に対して角度をもって照射される場合には、光線の角度に合わせて2つの孔の配設場所を決定すればよい。例えば対向する面に配置した高さの異なる2つの孔を有するセルにおいては、セルの一つの側面に配設された孔に向って上部の導入孔から光が照射された場合、その対向する面では導入孔よりも下側に透過孔を設置し、光がセルの側面を通過せず孔を通過する構造とすればよい。また、被検液が少量である場合には孔を底面に近い部分に配設することで液量が比較的少量であっても測定することができる。しかし、正確な測定を行うためには少なくとも孔の上側まで被検液を入れる必要がある。
液量に対応するためにセル壁面の上部と下部の両方に対向する孔を設けてもよく、また複数の孔を配設してもよい。その他にもセル上部の開口から斜めにセル内の試料に光を照射し、そしてセル側面の透過孔を通過して受光する方法を用いてもよい。つまり、セル上部の開口を利用すれば2つの孔を設ける必要はなくセルの一側面にのみ1つの孔を配設したセルであってもよい。場合によっては孔を底面に配置したセルも含む。しかし、測定値が液量のばらつきに左右されないためには被検液の液面よりも下の側面に対向する2つの孔を配設したセルを用い、2つの孔を通過して得られた光を測定するのが最も好ましい。
セルの形状に関しては、一般的に使用されている10mm角のセルでよく、円柱状やその他の形状でもよい。例えば、セルの底面が斜めにカットされた形状でもよく、底面に反射鏡を付け反射した光を透過孔を通過させて受光する構造としてもよい。また、濁度測定を行う際には散乱光を測定する方法があり、それに対応して孔を設ければよい。
濁度とは、「光がサンプル内をまっすぐに通り抜けずに散乱及び吸収される光学特性」と定義付けられる。この「散乱」及び「吸収」は光とサンプル媒体中に浮遊している粒子との相互作用によって起こる。濁りは沈泥、粘度、藻、その他のプランクトン、有機物などの細かい非溶解性粒子を含む浮遊物によって発生する。光の透過を遮る粒子によってサンプルは不透明または曇ったように見える。通常濁度は入射光が粒子により直角に散乱した光の量を測定する比濁法で求められる。光が粒子にぶつかったとき、その光は四方八方に散乱される。散乱した光のレベルは粒子濃度に比例し、検出器で測定することができる。これより濁度測定は入射角と垂直の位置で散乱光を受光することが最適である。吸収はサンプル媒体中に溶解する成分によっても生じる。試薬によりサンプルを発色させ光を通して吸光度を測定し、予め作成した検量線を用いて溶解されている物質の濃度を検出することができる。
したがって、サンプルを透過した直進光を受光装置で受光すれば、濃度と濁度を測定することができ、サンプル中で分散した光を受光すれば濁度が測定できる。それ故、光の導入孔と透過孔の位置は、光の進行方向に対向して配置されてもよく、透過孔を光の進行方向の側面側に配置してもよい。
【0008】
セルの材質については、光をセル材を通過することなく直接被検液に照射させるため透過率のよいセル、例えば石英ガラス等の高価な材質を使用する必要はなく、通常は合成樹脂製のセルを使用すればよい。ただし、腐食性の高い溶液等特殊なものにおいては、それに耐性のある材質のセルを使用する必要がある。
本発明のセルはセル内に注入した被検体に光を照射してスペクトルを測定する光分析装置、または類似するセルを用いる光分析装置、その他濁度の測定装置に使用することができる。
本発明の光分析用セルは試料注入口と試料排出口を設け、試料を注入する時は排出口を閉じ、試料を排出する時は排出口を開口するように制御すると連続的に分析操作を容易に行うことができるので好ましい。
【0009】
【実施例】
本発明の実施の形態を吸光光度計を用いたDPD法による溶液中の残量塩素測定を実施例をあげて説明する。
近年ではプールや飲料水中の残留塩素濃度の調査方法として安価で簡単なOT法と言われるオルトトリジン法が一般的に使用されていた。しかし、オルトトリジンは発ガン性の危険があることから現在はDPD法というジエチル−p−フェニレンジアミン法に移行されている傾向がある。OT法は標準比色との比較にて残留塩素(HCLO、CLO- )濃度を調査するものであるが、その調査方法は比色という目視によるものであるため、測定精度の要求される調査には不向きであった。一方DPD法はDPD試薬によって溶液中の残留塩素を発色させ、その溶液の吸光度を測定することから残留塩素濃度を調査する方法であり、吸光度測定に吸光光度計が用いられる。
本実施例では、吸光度を測定してプール水等の遊離残留塩素濃度を調査するDPD法を例にあげ、本発明のセルを用いた測定方法と光分析装置について説明する。ここでは特に測定時に使用する試薬が2種である遊離残留塩素濃度測定について説明するが、測定時に使用する試薬が3種である結合残留塩素濃度測定も同様の機構の装置を用いて測定することができる。もちろん残留塩素だけでなく、発色試薬の種類を変更したり、その他の方法を用いることでマンガンやアルミニウム等の定量を行うこともできる。
遊離残留塩素濃度を測定するDPD吸光光度法は、遊離残留塩素を含む試薬にリン酸溶液等の緩衝液とDPD試薬を加え、発色させてから吸光光度計で吸光度を測定し、遊離残留塩素を定量するものである。DPDは残留塩素に反応して赤紫色に発色するものであり、緩衝溶液はpHを安定させるためのものである。
【0010】
本実施例では、図2に示す対向する側面部に光の導入孔と透過孔を有する本発明のセルを吸光光度計に使用した。
セルの形状等は以下の通りである。
寸法…………10×10×40mm(10mmプラスチック標準品)
材質…………ポリスチレン製−壁面黒色塗装
孔配設位置…壁面に底面から20mmの位置に対向して1組の孔を配設
孔の大きさ…直径3mmの円形
液量…………3mL
その他の形状…上面に試料注入口(開口型)、底面に試料排出口配設
セルには試料、DPD試薬、緩衝液の3液が注入される。セルに配設した孔は光がセルの壁を通過することなく直接被検液のみを透過させるように配設したものであり、試料が表面張力によって漏出することのない大きさとした。つまり、液の水圧と孔に対しての表面張力がつり合っているか、または表面張力の液の水圧より大となっている状態になるようにした。孔の大きさについては、セル内部の面積、液量、液体の表面張力等によって異なるため一概にはいえず、被検液の種類、液量、その他の諸要素によって適宜変更すればよい。孔径が大きすぎると孔から液が漏出してしまい、孔が小さすぎると正確に光が受光できないという問題が生じる。また、ここでは孔配設部分はセルの対向する側面部にありここでは対向する側面に2つの孔を設け、光がセル側面の導入孔を通りそして試料を通過して、次いでセルの壁面に当たることなくもう一方の透過孔を通り、試料のみを透過した光が測光部に到達する構造とすればよい。また、孔以外、つまりセル構成材自身を通過しないように孔配設部分の側面に黒色塗装を施した。このような構造とすることで直接溶液を透過したスペクトルのみを受光し精度の優れた分析ができる。
該セルを光分析装置に設置し、被検液となるプール水にDPD溶液と緩衝溶液の2液を十分混合してセルに注入する。この2液を残留塩素を含んだ溶液に添加すると溶液は残留塩素量に応じて淡赤紫色〜赤紫色に発色する。そして、この溶液の吸光度を求めることで溶液中の遊離残留塩素濃度を測定することができる。このようにして被検液の遊離残留塩素濃度を測定する。
この2液を混合する手段としてはシリンジやモーター、ポンプ等を用いて一定量添加する方法があるが、その他の方法を用いても構わない。この実施例ではクランクモーターを回転させて各々必要な溶液をピストンの引き上げによって一定量シリンジに吸入し、その後ピストンの押し込みによって1つのセルに抽出する方法を用いた。液の混合は液送チューブ内であっても測定セル内であってもよく、また別途混合容器を用いてもよい。被検液を一定量セルに注入する方法には、LED素子を用い液の注入によって上昇してきた液面を感知後、送液を停止させるシステムを用いたり、また電極によって液面を感知させる方法やその他の方法を用いても良い。LEDでの液面感知方法は測定用のLED素子をそのまま用いることもできる。残留塩素を含んだ溶液については一定時間毎に採取し、測定できる構造とした。また、測定後のセル内の洗浄においては残留塩素を含んだ溶液を使用するものとし、共洗い洗浄を行うこととする。また連続測定を行うことから、セルの上部に試料を注入するための試料注入口、そしてセルの底部に測定後の溶液を排出するための試料排出口を設けることで効率よく測定を行うことが可能となった。試料の排出には吸引装置等を設ける方法も有効である。
本発明のセルを用いた吸光光度計の機構については図1を参考にしながら説明する。
【0011】
図1は本発明の光分析用セルを用いた吸光光度計である。図2は本発明の孔を有する光分析用セルである。本実施例では光分析用セル1に一定量の試薬を注入するためにマイクロシリンジを用いており、DPD溶液を注入するためのシリンジ4、緩衝溶液を注入するためのシリンジ5、そして遊離塩素を含む試料を注入するためのシリンジ6が配置されており、各シリンジにはそれぞれの液を移送させる移送管が接続されている。シリンジから光分析用セル1への溶液の注出を制御するために各液送管にはピンチバルブが配設されている。
光分析用セル1とシリンジ4の間にはピンチバルブ13、シリンジ5との間にはピンチバルブ14、シリンジ6との間にはピンチバルブ15が設置されている。 シリンジへの各液の注入に関してはピストン10、11、12の引き出しによって吸引されるものであり、それぞれのシリンジ4、5、6には弁7、8、9が配置されている。ピンチバルブ13、14、15が閉じている状態でピストンの引き上げによって各シリンジの弁が開放されて液が一定量シリンジに注入される。次にピストンが押し入れられシリンジ内が圧縮され、それによって弁は閉鎖され、ピンチバルブ13、14、15が開放されると、シリンジ内の溶液がセルに注出されるのである。このようにして目的の溶液が一定量セルに注入される。
【0012】
測定にあたってはまずブランク測定がなされる。ブランク測定の際には光分析用セル1に、試料溶液のみを注入して測定する。その際にはシリンジ6と接続している液送管に設置されているピンチバルブ15を閉め、クランクモーターでピストン12を作動させる。それによって試料槽18からシリンジ6内に一定量の試料が吸引される。次いでピンチバルブ15を開放しクランクモーター19によってピストン12を押し込みシリンジ6に吸引された試料を光分析用セル1に注入し、その後試料に光を照射する。この際、試料の濁度測定を行うことも可能である。濁度測定は試料への入射角に対して直線状の透過孔を受光して測定するものや、入射角に対して垂直位置で受光する散乱光を測定するものがある。ここでは濃度測定のために設けた2つの孔を利用して透過光にて濁度を測定した。もし散乱光で受光する場合にはセルの上部の開口から試料に向けて光を照射し、セル側面に配置された一方の孔を通る散乱光を受光し測定すればよい。装置の構成やシステム等により適宜選択すればよい。光源からの光は光分析用セル1の導入孔2、試料、透過孔3を通過し、受光部に到達し測光部で検出される。またブランク測定前に空測を行えば、光源の劣化や、セル内の残留試料等を発見することもできる。ブランク測定用の試料はピンチバルブ22を開放し、そして光分析用セル1に配設された試料排出口21から排出する。ブランク測定の後、試料測定を行う。試料測定は目的試料溶液にDPD溶液、緩衝溶液を混合して溶液を発光させてから吸光度を測定する。そのため、試料溶液注入用のシリンジ6の他に2液を注入するためのシリンジを別途2つ用いた。DPD溶液槽16と緩衝溶液槽17、及び試料溶液槽18からそれぞれ一定量の液を吸引する。そしてシリンジ内に吸引された溶液はピストンの押入によって光分析用セル1に注入される。まずピンチバルブ13、ピンチバルブ14、ピンチバルブ15を閉じ、そしてクランクモーター19を回転させることによってシリンジ4、5、6のピストン10、11、12を引き上げる。シリンジ内が減圧されることによって各シリンジの弁7、8、9が開放され、DPD溶液槽16、緩衝溶液槽17、試料溶液槽18から液送管を通って、シリンジに充填される。次いで、ピンチバルブ13、14、15を開放し、クランクモーターを用いてピストン10、11、12を押し下げる。これ等の工程を経て光分析用セル1に目的の3種の溶液が一定量注入される。また、DPD溶液と緩衝溶液を試料に均一に混合させるために、2つの液の液送管を光分析用セル到達前に接続し、2液を混合させてからセルに注入する構造とした。勿論、2液を試料に混合してから1つの口からセルに注入する構造のものであってもよい。各液の注入量はシリンジの体積、ピストンの移動量また、LED素子や電極による液面の検知等によって調節すればよい。このようにして目的の試料を1つのセルに一定量注入できる。残留塩素が含まれた試料にDPD溶液と緩衝溶液を混合すると残留塩素濃度に対して発光し、その発光した溶液のスペクトル強度を測定することで残留塩素濃度を知ることができる。このセルを用いて同時に濁度測定を行うこともできるが、その際にはセルの対向する壁面にある2つの孔を用いて透過光を受光して測定する方法か、あるいはセルの上部の開口から試料に光を入射しセル壁面の1つの孔を通過して得られた散乱光を受光して測定する方法であってもよい。その場合、試料への入射角に対して垂直方向に受光することとなるが、透過光ではなく被検液中の粒子にあたって生じる散乱光を受光することで濁度を測定することができるため、何ら支障はない。測定に際してはセルの孔の上まで試料を注入し、そしてセルの大きさ、孔の位置、シリンジの大きさ、各液の比率等を考慮に入れてそれぞれ調整する必要がある。
【0013】
また、本実施例では遊離残留塩素を時間毎に測定できる機構としたため残留塩素濃度の経時変化を観測することができる。ブランク試料の注入、ブランク測定、ブランク試料の排出、試料の注入から測定、試料の排出、セル洗浄を自動で行うようなシステムとした。そのために、セル上部に試料注入口、下部に試料排出口を備え、セルに注入するときには試料排出口を閉め、排出する際には試料排出口を開口するように制御した。セルの洗浄水には残留塩素を含んだ試料溶液を用いた。洗浄水の供給に関しては、本実施例のように試料槽からシリンジ6とは別の経路でセルに供給してもよく、またシリンジ6から洗浄用試料水が供給されるような機構としてもよい。
【0014】
本発明の光分析用セルを用いた光分析装置では、光源部から放出された光が試料に照射され、光によって励起した残留塩素特有のスペクトルが発せられる。次いで分光部で目的のスペクトルが選考され、そしてセル側面の透過孔を通って受光部で受光し、測光部でそのスペクトルを検出するのである。先に濃度既知の標準溶液によって検量線を作成しておけばそこから被検液中の残留塩素濃度を知ることができる。
本発明の光分析用セルのようにセルの光が透過する部分に孔を配設し、直接試料に光を照射し、それによって得られたスペクトルを検出、解析することによって定性、定量を行うことができる。本発明のような構造のセルを使用することで、セルに付着した汚れや透過率の低い材質のセルを用いることで生じる分析精度の低下の発生がなく、容易に分析精度の優れた分析を行うことが可能となった。
本実施例は光の導入孔と透過孔を対向して配置したが、図2において光の導入孔2をセル上方の開口部とし、光の透過孔3からサンプル液中で散乱した光を取り出して受光器で受光し、濁度を測定することもできる。
【0015】
【発明の効果】
セルを構成する面に試料が表面張力によって漏出することのない大きさの、光を透過させるための孔を配設した光分析用セルを用いた光分析装置を使用しセルに注入された試料のみを透過した光を用いて分析を行うため、セルに付着した汚れやセルの透過率に左右されることなく濁度と濃度の高精度の光分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光分析用セルを用いた吸光光度計の説明図である。
【図2】本発明の光分析用セルの説明図である。
【符号の説明】
1 光分析用セル
2 光導入孔
3 光透過孔
4 DPD溶液注入用シリンジ
5 緩衝溶液注入用シリンジ
6 試料溶液注入用シリンジ
7 DPD溶液注入用弁
8 緩衝溶液注入用弁
9 試料溶液注入用弁
10 DPD溶液用ピストン
11 緩衝溶液用ピストン
12 試料溶液用ピストン
13 DPD溶液用ピンチバルブ
14 緩衝溶液用ピンチバルブ
15 試料溶液用ピンチバルブ
16 DPD溶液槽
17 緩衝溶液槽
18 試料溶液槽
19 クランクモーター
20 洗浄溶液用ピンチバルブ
21 排出口
22 排水用ピンチバルブ
23 試料採取用ポンプ
Claims (6)
- 試料に光を照射して溶液中の物質の濃度と濁度の両方の分析を行う光分析装置に用いる、試料を貯留する光分析用セルにおいて、セルを構成する対向する壁面に光の導入孔と透過孔を配置し、これらの孔が試料の液面より下方にあり、試料の表面張力のみによって該試料の漏出が防止される大きさの孔であり、かつセル上部が開口しており該開口を光の導入口または透過口とし、前記壁面の透過孔が壁面の対向する導入孔から直進する光及び上部の開口から導入された光の散乱光を透過し、又は前記上部の開口が壁面にある導入孔から導入された光の散乱光を透過し及び導入孔から導入された直進光を壁面の対向する透過孔から透過することを特徴とする光分析用セル。
- セルの壁面が光を透過しない光遮蔽構造のセルである、請求項1に記載された光分析用セル。
- 請求項1または2に記載されたセルを用い、試料を透過した光により分析を行う光分析装置。
- 請求項1または2に記載されたセルを用い、試料を透過した直進光により試料の濁度と含有される溶解成分の分析を行う光分析装置。
- セルの試料注入口と下部に試料排出口を設け、試料を排出するときには排出口を開口するように制御した、請求項3または4に記載された光分析装置。
- 請求項3ないし5のいずれか1項に記載された光分析装置を用いて、試料を透過した光により分析を行うことを特徴とする、光分析方法。
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