以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る木材の加工方法によって形成される圧縮木製品を外装材とする電子機器の構成を示す斜視図である。同図に示す電子機器はデジタルカメラ100であり、略椀状の木製のカバー部材11および12が組み合わさって成る略直方体形状の外装材1の内部に各種電子部材が収容されている。
図2は、カバー部材11および12の構成を示す斜視図である。カバー部材11は、略長方形状の表面をなす主板部11aと、この主板部11aの長手方向に沿って主板部11aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部11bと、主板部11aの短手方向に沿ってその主板部11aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部11cとを有する。
カバー部材12もカバー部材11と略同形状をなし、略長方形状の表面をなす主板部12aと、この主板部12aの長手方向に沿って主板部12aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部12bと、主板部12aの短手方向に沿ってその主板部12aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部12cとを有する。
図3は図1のA−A線断面図である。この図3および上述した図2に示すように、カバー部材11および12は、個別に圧縮した2枚の木材を重ねて一括して圧縮することによって形成される。より具体的には、カバー部材11は外部材111および内部材112の二層から成る一方、カバー部材12は外部材121および内部材122の二層から成る。
外部材111はカバー部材11の長手方向に略平行な繊維方向L111を有する一方、内部材112はカバー部材11の短手方向に略平行な繊維方向L112を有する。また、外部材121はカバー部材12の長手方向に略平行な繊維方向L121を有する一方、内部材122はカバー部材12の短手方向に略平行な繊維方向L122を有する。したがって、各カバー部材を構成する外部材と内部材の繊維方向は略直交している。
カバー部材11の主板部11aには、撮像レンズを有する撮像部5およびフラッシュ6をそれぞれ表出する開口部13および14が形成されている。また、カバー部材11の側板部11bおよび11cには、それぞれ切り欠き151および161が形成されている。
他方、カバー部材12の主板部12aには、画像情報や文字情報を表示するために液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、または有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等によって実現される表示部8を表出する開口部17が形成されており、この開口部17表面には、表示部8を保護するガラス等の保護部材が装着される。カバー部材12の側板部12bおよび12cには、切り欠き152および162がそれぞれ形成されている。
これら二つのカバー部材11および12を用いてデジタルカメラ100を組み立てると、切り欠き151と152が向かい合って開口部15を形成し、切り欠き161と162が向かい合って開口部16を形成する。このうち開口部15はシャッターボタン7を表出する一方、開口部16はパソコン等の外部機器への接続を行う接続デバイスを表出する。この接続デバイスは、例えばUSB(Universal Serial Bus)等の接続用端子、xDピクチャーカードやスマートメディア等の外部記憶媒体を装着する装着用デバイス、および電源等の差込用ジャックなどである。これらの接続デバイスを未使用時に保護するため、開口部16に蓋を装着してもよい。
なお、カバー部材11および12には、上述した開口部や切り欠き以外にも、ファインダを取り付けたり操作入力ボタンを表出するための開口部や切り欠き等をさらに形成してもよい。
外装材1の内部には、図3に示すように、デジタルカメラ100が有する電子的機能を実現する電子部材のうちの少なくとも一部、より具体的にはデジタルカメラ100の撮像処理等に関する駆動制御を行う制御回路、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子、および音声の入出力を行うマイクロフォンやスピーカを含む電子部材を備えた制御部9が収納されている。このうち制御回路は、演算および制御機能を有するCPU(Central Processing Unit)、および所定のOS(Operation System)を起動するプログラム等の各種情報を記憶するフラッシュメモリなどによって実現される。
電子部材を格納して外装材1を組み立てる際には、カバー部材11とカバー部材12の対向する側板部端面に接着剤等を塗布して互いに接合する。この後、二つのカバー部材の接合部分の外周を弾性部材等から成る封止部材を用いて封止してもよい。また、接合部分となる二つのカバー部材の側板部端部のうちいずれか一方のカバー部材の側板部端部に溝部を穿設し、他方のカバー部材の側板部端部にはその溝部に嵌合可能な突起部を形成しておき、接合時に両者を嵌合するようにしてもよい。
次に、以上の構成を有するカバー部材の加工方法を詳細に説明する。まず、カバー部材11および12の原材料となる木材を無垢材から形取る。図4は、カバー部材11および12の原材料となる木材を無圧縮状態の無垢材50から形取る状況を模式的に示す説明図である。外部材111または121の原材料となる木材51は平板状をなし、その木材51の長手方向が無垢材50の繊維方向Lに略平行となるように無垢材50から形取られる。このように形取られた木材51は、図5に示すように、肉厚Rを有し、表面の木目50Gが略平行に走る柾目材である。
これに対し、内部材112または122の原材料となる木材52も平板状をなし、その木材52の短手方向が無垢材50の繊維方向Lに略平行となるように無垢材50からの形取りを行う。図6は形取った木材52の構成を示す斜視図である。この木材52も肉厚がRの柾目材であるが、長手方向の長さは木材51の長手方向の長さよりも短い。
なお、木材51および52を無垢材50から形取る際には、予め後述する圧縮工程によって減少する分の容積を加えておく。また、この実施の形態1で使用する無垢材は、檜、檜葉、桐、杉、松、桜、欅、黒檀、チーク、マホガニー、ローズウッドなどである。これらの無垢材は、本発明の全ての実施の形態で使用することができる。
次に、木材51を圧縮する(一次圧縮工程)。図7は木材51の一次圧縮工程の概要を示す説明図であり、図8は図7のB−B線断面図である。これらの図7および図8に示すように、一次圧縮工程では、二つの金型61および71を用いて木材51を圧縮する。二つの金型のうち、木材51の上方から木材51に対して圧縮力を加える金型61は、下方に突出する凸部62を有する。これに対し、圧縮時に木材51の下方から木材51に対して圧縮力を加える金型71は、下方に窪んだ凹部72を有する。
この一次圧縮工程を行うに際して、まず木材51を高温高圧の水蒸気雰囲気中に所定時間放置する。これにより、木材51は過剰に水分を吸収して軟化する。その後、同じ水蒸気雰囲気中で二つの金型61および71のうち少なくともいずれか一方の金型を他方の金型に近づけるようにして木材51を挟持、圧縮する。図9は、この圧縮状態を示す図であり、図8と同じ切断面を有する縦断面図である。この図9に示すように、木材51を二つの金型61および71で挟持、圧縮することにより、木材51は凸部62と凹部72の隙間の三次元形状に相当する略椀状に変形する。
この実施の形態1においては、一次圧縮工程によって木材51の肉厚r1(<R)は場所によらずほぼ均一となる。したがって、一次圧縮工程における木材51の圧縮率C1は(R−r1)/Rで与えられる。この圧縮率C1の具体的な数値は、0.3〜0.6程度である。
図9に示す状態で所定時間放置した後、金型61と金型71を離間させて圧縮を解除し、水蒸気雰囲気を解いて木材51を乾燥させる。なお、木材51の材質によっては、二つの金型を離間すると元の形状に戻ってしまう場合もある。この場合には、金型61および71で木材51を挟持した状態で圧縮を解除して乾燥を行う。木材51の乾燥時間は、木材51の形状や種類に応じて変化する。
ここまで木材51の一次圧縮工程を説明したが、木材52に対しても同様の一次圧縮工程を行う。この木材52の一次圧縮工程では、木材51を圧縮するときの金型61および71とは異なる金型を用いることにより、一次圧縮された木材51よりも若干小さい外形形状を有するとともに、場所によらずほぼ均一な肉厚r2(<R)を有する略椀状に変形される。したがって、この一次圧縮工程における木材52の圧縮率C2は(R−r2)/Rで与えられる。
この実施の形態1では、一次圧縮工程後の木材51の肉厚r1と木材52の肉厚r2が等しくなるように金型が設計されている。このため、一次圧縮工程における木材51の圧縮率C1と木材52の圧縮率C2は等しい(C1=C2)。以下では、一次圧縮工程によって成形された木材51および52を外部材111および内部材112とそれぞれ称する。
以上説明した一次圧縮工程の後、外部材111と内部材112を重ねて一括して圧縮する(二次圧縮工程)。以下では、カバー部材11を形成する場合を例にとって説明するが、カバー部材12の場合も同じである。
図10は二次圧縮工程の概要を示す説明図であり、図11は図10のC−C線断面図である。この二次圧縮工程では、一次圧縮工程と同じ高温高圧の水蒸気雰囲気中において外部材111に内部材112を重ね、この重ねた二つの部材を金型81および91の間の所定位置に配置し、それら二つの金型で外部材111と内部材112を挟持、圧縮して所定の形状に成形する。
上方から内部材112に圧縮力を加える金型81は、内部材112の内側面に嵌合する凸部82を有する。この凸部82において、内部材112の内側面で底面部と側面部の間で湾曲する湾曲部112abに当接する曲面の曲率半径RAは、その湾曲部112abの内側面の曲率半径RIよりも小さい。他方、下方から外部材111に圧縮力を加える金型91は、外部材111の外側面を嵌入する凹部92を有する。この凹部92において、外部材111の外側面で底面部と側面部の間で湾曲する湾曲部111abに当接する曲面の曲率半径RBは、その湾曲部111abの外側面の曲率半径ROよりも小さい。
図12は、外部材111と内部材112を金型81および91で挟持、圧縮している状態を示す断面図であり、図11と同じ切断面を有する縦断面図である。この図12に示す状態で外部材111と内部材112はさらに圧縮される。この二次圧縮工程では、外部材111と内部材112からそれぞれ樹脂成分がしみ出て接着剤の役目を果たすため、外部材111と内部材112は接着剤を用いなくても互いに固着して一体となる。なお、外部材111および内部材112の材質によっては、両部材が互いに接する面に適量の接着剤を塗布してから二次圧縮工程を行ってもよい。
図12に示す状態で所定時間放置した後、圧縮を解いて外部材111と内部材112を乾燥させる。図13は二次圧縮工程後のカバー部材11原型の構成を示す斜視図であり、図14は図13のD−D線断面図である。二次圧縮後の外部材111と内部材112の肉厚はほぼ等しくrとなり、カバー部材11の肉厚はおよそ2rとなる。この肉厚2rは、圧縮前の無垢材から形取った状態における二つの木材の肉厚の合計2Rの30〜50%程度である。したがって、2回の圧縮工程終了後の合計の圧縮率は0.5〜0.7程度となり、一次圧縮工程の圧縮率(0.3〜0.6程度)よりも若干大きな値となる。
この後、開口部や切り欠き等を切削または穿孔によって所定の位置に形成することによりカバー部材11が完成する。なお、カバー部材11の外縁に不要部分が形成された場合には、この不要部分を切削によって除去し、適当な端面処理を施す。
図15は、上述したように圧縮されてカバー部材11となる外部材111および内部材112内部の強度分布を状態ごとに模式的に示す縦断面図である。一次圧縮工程を経た後の外部材111および内部材112は、金型からの圧縮力を受ける表面付近の領域Sの強度が中間領域Mの強度よりも相対的に強くなる。
このような外部材111と内部材112を2枚重ねて二次圧縮工程を行ってカバー部材11を形成すると、そのカバー部材11の表面付近の領域S1は圧縮力を受けることによって繊維密度が増加し、強度がさらに高くなる。また、外部材111と内部材112で互いに接着する表面付近の領域S2は、領域S1より強度は劣るものの中間領域M1よりも強度が高く、なおかつ厚みのある層を形成する。このようにして、カバー部材11は、強度が相対的に強い層と弱い層とが交互にかつ多様に重なりあうようになり、二回の圧縮工程を経た結果、靭性を備え、強くてしなやかな材質となる。
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、2枚の木材を個別に圧縮(一次圧縮工程)した後、その2枚の木材を重ねて一括してさらに圧縮(二次圧縮工程)することにより、一次圧縮工程の段階で木材の肉厚を薄くすることができ、成形が容易になる。
また、この実施の形態1によれば、二次にわたる圧縮工程を経た結果、木材に強度が強い層と弱い層とが交互に現れる上、その強弱の度合いも多様なものとなるため、靭性を備え、強くてしなやかな材質の圧縮木製品を提供することが可能となる。
さらに、この実施の形態1によれば、カバー部材をなす外部材と内部材の繊維方向を略直交させることにより、表面方向に沿って強度が弱い部分を互いに補い合うことができるので、木材表面に沿った方向における強度の非一様性を解消することが可能となり、適切な強度を一様に付与することができる。
なお、上述した実施の形態1とは逆に、外部材111の繊維方向を短手方向に略平行とし、内部材112の繊維方向を長手方向に略平行とすることにより、外部材111と内部材112の繊維方向を略直交させてもよい。
また、2枚の木材の繊維方向は上記の如く略直交していなくてもよく、少なくともそれらの木材の繊維方向が交差するように2枚の木材を形取れば、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。この意味では、無垢材50から形取る木材は柾目材でなくてもよい。
さらに、カバー部材11とカバー部材12とで、外部材と内部材が指向する繊維方向と外形形状との関係を逆にしてもよい。すなわち、カバー部材11は上記実施の形態1と同様に形成する一方で、カバー部材12の方は、外部材121の繊維方向が短手方向に略平行となり、内部材122の繊維方向が長手方向に略平行となるように形成してもよい。
ところで、以上の説明では2枚の木材を重ねて圧縮木製品を形成する場合を扱ったが、3枚以上の木材を用いて加工することもできる。例えば柾目材を3枚用いる場合には、各々の木材の繊維方向が60度の角度をなして交差するようにすれば、互いの強度の弱い部分を補い合うことができ、強度の向上を実現することができる。より一般にn枚(nは2以上の整数)の柾目材を用いる場合には、各々の繊維方向が(180/n)度の角度をなして交差するようにすればよい。
ここで、小型の携帯用電子機器であるデジタルカメラ等の外装材をなすカバー部材を、2枚の木材を用いて形成する場合に好適な数値例を挙げておく。まず、肉厚R=2mm程度の平板状の2枚の木材を形取り、一次圧縮工程で1.0〜1.1mm程度の肉厚となるまでそれぞれ圧縮する。続く二次圧縮工程では、二つの木材の肉厚の合計2rが1.6〜1.8mm程度となるまで圧縮する。
(実施の形態2)
図16は、本発明の実施の形態2に係る木材の加工方法によって形成される圧縮木製品を外装材とする電子機器の構成を示す斜視図である。同図に示す電子機器はデジタルカメラ200であり、略椀状の木製のカバー部材21および22が組み合わさって成る略直方体形状の外装材2の内部に各種電子部材が収容されている。
図17は、カバー部材21および22の構成を示す斜視図である。カバー部材21は、略長方形状の表面をなす主板部21aと、この主板部21aの長手方向に沿って主板部21aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部21bと、主板部21aの短手方向に沿ってその主板部21aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部21cとを有する。カバー部材12もカバー部材21と略同形状をなし、主板部22aと、この主板部22aの周縁からそれぞれ立ち上がって延出する側板部22bおよび22cを有する。
カバー部材21は、個別に圧縮した2枚の木材を重ねて一括して圧縮することによって形成され、外部材211および内部材212の二層から成る。カバー部材22もカバー部材21と同様に形成され、外部材221および内部材222の二層から成る。この実施の形態2においては、各カバー部材を構成する外部材と内部材が異なる木目50Gを有する。より具体的には、外部材211および221が板目材である一方、内部材212および222は柾目材である。
図17に示す場合、板目材である外部材211および221の繊維方向は一様な方向を指向していない。これに対して柾目材である内部材212および222は、各々の繊維方向L212およびL222がカバー部材21および22の長手方向にそれぞれ略平行である。このように、非一様な繊維方向を有することが多い板目材を外部材とする一方で、一様な繊維方向を有する柾目材を内部材としてその両者を重ねてカバー部材21および22を形成することにより、互いの木材の繊維方向が交差するようになる。この結果、各カバー部材の強度の異方性が小さくなる。
カバー部材21の主板部21aは、撮像部5を表出する開口部23とフラッシュ6を取り付ける開口部24とを有する。また、カバー部材21の側板部21bおよび21cには、それぞれ切り欠き251および261が形成されている。
他方、カバー部材22の主板部22aには、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、または有機ELディスプレイ等によって実現される表示部8を表出する開口部27が設けられ、この開口部27表面には、表示部8を保護するガラス等の保護部材が装着される。カバー部材22の側板部22bおよび22cには、それぞれ切り欠き252および262が形成されている。
これら二つのカバー部材21および22を用いてデジタルカメラ200を組み立てると、切り欠き251と252が向かい合って開口部25を形成し、切り欠き261と262が向かい合って開口部26を形成する。このうち開口部25はシャッターボタン7を表出する一方、開口部26はパソコン等の外部機器への接続を行う接続デバイスを表出する。この開口部26には、未使用時に接続デバイスを保護するための蓋を装着してもよい。
デジタルカメラ200の内部は上述したデジタルカメラ100の内部と同様の構成を有する(図3を参照)。すなわち、外装材2の内部には、デジタルカメラ200における撮像処理などの機能を実現する電子部材の少なくとも一部をなす制御部9が収容されている。なお、外装材2の構成や組立方法等は、上記実施の形態1における外装材1の構成や組立方法等とそれぞれ同じである。
次に、以上の構成を有するカバー部材の加工方法を詳細に説明する。まず、カバー部材21および22の原材料となる木材を、予め圧縮によって減少する容積を加えた形態で無垢材から形取る。図18は、カバー部材21および22の原材料となる木材を無圧縮状態の無垢材50から形取る状況を模式的に示す説明図である。外部材211または221の原材料となる木材53は平板状をなし、その木材53の長手方向が無垢材50の繊維方向Lに略平行となるように形取られる。このように形取られた木材53は板目材である(図19を参照)。
これに対して内部材212または222の原材料となる木材54は、その長手方向が無垢材50の繊維方向Lに略平行となるように形取られた柾目材である。この木材54は、図5に示す木材51と同様の構成を有する。なお、木材53および54の肉厚はともにRで等しく、木材53の長手方向の長さは木材54の長手方向の長さよりも長い。
次に、形取った木材53および54を圧縮する(一次圧縮工程)。この一次圧縮工程では、圧縮を行う前に、木材53および54を高温高圧の水蒸気雰囲気中に所定時間放置する。その後、各木材に対して所定の二つの金型を用いることにより、水分を過剰に吸収して軟化した木材53および54をそれぞれ挟持、圧縮する。
この一次圧縮工程によって木材53の肉厚r3(<R)および木材54の肉厚r4(<R)は、場所によらずほぼ均一となる。木材53の圧縮率C3=(R−r3)/Rおよび木材54の圧縮率C4=(R−r4)/Rは、ともに0.3〜0.6程度である。
図20は、木材53および54を個別に圧縮して形成した外部材211および内部材212を重ねて再度一括して圧縮する二次圧縮工程の概要を示す説明図である。以下では、カバー部材21の二次圧縮工程を説明するが、カバー部材22の二次圧縮工程も同じである。この二次圧縮工程では、一次圧縮工程と同じ高温高圧の水蒸気雰囲気中で、外部材211に内部材212を重ねて二つの金型81および91の間の所定位置に配置し、それら二つの金型で外部材211と内部材212を挟持、圧縮して成形する。
その後、圧縮を解いて外部材211と内部材212を乾燥させることにより、カバー部材21の原型が完成する。この結果、カバー部材21の肉厚は、圧縮前の二つの木材の肉厚の合計2Rの30〜50%程度となる。したがって、2回の圧縮工程終了後の合計の圧縮率は0.5〜0.7程度となり、一次圧縮工程の圧縮率(0.3〜0.6程度)よりも若干大きな値となる。
このようにして圧縮加工されたカバー部材21に対し、開口部や切り欠きを切削または穿孔によって所定の位置に形成することによりカバー部材21が完成する。なお、カバー部材21の外縁に不要部分が形成された場合には、この不要部分を切削によって除去し、適当な端面処理を施す。
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、この実施の形態2によれば、2枚の木材を個別に一次圧縮した後、その2枚の木材を重ねて一括して二次圧縮工程を行うことにより、一次圧縮工程の際の木材の肉厚を薄くすることができ、成形が容易になる。
また、この実施の形態2においても、二次にわたる圧縮工程の結果、強度が強い層と弱い層とが交互に現れる上、その強弱の度合いも多様なものとなるため(図15を参照)、靭性を備え、強くてしなやかな圧縮木製品を提供することが可能となり、適切な強度を一様に付与することができる。
さらに、この実施の形態2によれば、カバー部材をなす外部材と内部材の木目を異なるものとすることにより、互いの繊維方向が交差し、表面方向に沿って強度が弱い部分を互いに補い合うことができる。この結果、木材表面に沿った方向における強度の非一様性を解消することが可能となる。
ところで、この実施の形態2では外部材として板目材を、内部材として柾目材を用いたが、これは次の意味で好ましい。すなわち、板目材は多様な木目を有しているため、そのような板目材を製品の外部材として適用すれば意匠的な意味での個体差がより顕著になる。これに対して柾目材は異方性が小さく一様な繊維方向を有しているため、その繊維方向に垂直な方向の強度が強く、繊維方向に沿った曲げ加工を行うのが容易である。このように板目材と柾目材を組み合わせることにより、互いの長所を活かした圧縮木製品を製造することが可能となる。
なお、外部材として木口材を用いることも可能であるし、内部材として柾目材以外のもの、例えば追柾材を用いることも可能である。特に板目材や木口材は比較的軟らかくて樹脂成分が多いので、これらの木材を用いると二次圧縮工程時に他方の木材と接着しやすくなるという効果も得られる。
この実施の形態2においても、3枚以上の木材から圧縮木製品を加工することができる。上述したように、板目材や木口材は意匠的に見て個性的なので、例えば板目材または木口材を表面をなす部材として用いる一方、内側の部材として2枚の柾目材を互いの繊維方向が略直交するように重ねて二次圧縮工程を行えば、強度と美観を兼ね備えた圧縮木製品を得ることができる。この場合には、板目材または木口材を他の2枚の柾目材よりも肉厚を薄くして形取りを行ってもよい。
(実施の形態3)
図21は、本発明の実施の形態3に係る木材の加工方法によって形成される圧縮木製品を外装材とする電子機器の構成を示す斜視図である。同図に示す電子機器はデジタルカメラ300であり、略椀状の木製のカバー部材31および32が組み合わさって成る略直方体形状の外装材3の内部に各種電子部材が収容されている。
図22は、カバー部材31および32の構成を示す斜視図である。カバー部材31は、略長方形状の表面をなす主板部31aと、この主板部31aの長手方向に沿って主板部31aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部31bと、主板部31aの短手方向に沿ってその主板部31aと略直交する方向に立ち上がって延出する二つの側板部31cとを有する。カバー部材32もカバー部材31と略同形状をなし、主板部32aと、この主板部32aの周縁からそれぞれ立ち上がって延出する側板部32bおよび32cを有する。
カバー部材31は、個別に圧縮した2枚の木材を重ねて一括して圧縮することによって形成され、外部材311および内部材312の二層から成る。カバー部材32もカバー部材31と同様に形成され、外部材321および内部材322の二層から成る。
外部材311および321、ならびに内部材312および322は全て柾目材である。このうち、外部材311と内部材312の繊維方向はカバー部材31の長手方向に略平行であり、重なり合う外部材311と内部材312の木目50Gはほぼ揃っている。また、外部材321と内部材322の繊維方向はカバー部材32の長手方向に略平行であり、重なり合う外部材321と内部材322の木目50Gもほぼ揃っている。
カバー部材31の主板部31aは、撮像部5を表出する開口部33とフラッシュ6を取り付ける開口部34とを有する。また、カバー部材31の側板部31bおよび31cには、それぞれ切り欠き351および361が形成されている。
他方、カバー部材32の主板部32aには、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、または有機ELディスプレイ等によって実現される表示部8を表出する開口部37が設けられ、この開口部37表面には、表示部8を保護するガラス等の保護部材が装着される。カバー部材32の側板部32bおよび32cには、それぞれ切り欠き352および362が形成されている。
これら二つのカバー部材31および32を用いてデジタルカメラ300を組み立てると、切り欠き351と352が向かい合って開口部35を形成し、切り欠き361と362が向かい合って開口部36を形成する。このうち開口部35はシャッターボタン7を表出する一方、開口部36はパソコン等の外部機器への接続を行う接続デバイスを表出する。この開口部36には、未使用時に接続デバイスを保護するための蓋を装着してもよい。
デジタルカメラ300の内部は上述したデジタルカメラ100の内部と同様の構成を有する(図3を参照)。すなわち、外装材3の内部には、デジタルカメラ300における撮像処理などの機能を実現する電子部材の少なくとも一部をなす制御部9が収容されている。なお、外装材3の構成や組立方法等は、上記実施の形態1における外装材1の構成や組立方法等とそれぞれ同じである。
次に、以上の構成を有するカバー部材の加工方法を詳細に説明する。まず、カバー部材31および32の原材料となる木材を、予め圧縮によって減少する容積を加えた形態で無圧縮状態の無垢材50から形取る。
図23は、カバー部材31および32の原材料となる木材を無圧縮状態の無垢材50から形取る状況を模式的に示す説明図である。外部材311または321の原材料となる木材55は平板状をなし、その長手方向が無垢材50の繊維方向Lに略平行となるように形取られた柾目材である。また、内部材312または322の原材料となる木材56も平板状をなし、その長手方向が無垢材50の繊維方向Lと略平行になるように形取られた柾目材である。木材55および56の肉厚はともにRで等しく、木材55の長手方向の長さは、木材56の長手方向の長さより長い。
この後、形取った木材55および56を圧縮する(一次圧縮工程)。この一次圧縮工程では、圧縮を行う前に、木材55および56を高温高圧の水蒸気雰囲気中に所定時間放置する。その後、各木材に対して所定の二つの金型を用いることにより、水分を過剰に吸収して軟化した木材55および56をそれぞれ挟持、圧縮する。
この一次圧縮工程によって木材55の肉厚r5(<R)および木材56の肉厚r6(<R)は、場所によらずほぼ均一となる。この実施の形態3では、木材55の肉厚r5と木材56の肉厚r6が等しくなるように一次圧縮工程を行う。このため、木材55の圧縮率C5=(R−r5)/Rおよび木材56の圧縮率C6=(R−r6)/Rは等しく、その値は0.3〜0.6程度である。
図24は、木材55および56を個別に圧縮して形成した外部材311および内部材312を重ねて再度一括して圧縮する二次圧縮工程の概要を示す説明図である。以下では、カバー部材31の二次圧縮工程を説明するが、カバー部材32の二次圧縮工程も同じである。
この二次圧縮工程では、一次圧縮工程と同じ高温高圧の水蒸気雰囲気中で、外部材311に内部材312を重ねて二つの金型81および91の間の所定位置に配置し、それら二つの金型で外部材311と内部材312を挟持、圧縮して所定の形状に成形する。
その後、圧縮を解いて外部材311と内部材312を乾燥させることにより、カバー部材31の原型が完成する。この結果、カバー部材31の肉厚は、圧縮前の二つの木材の肉厚の合計2Rの30〜50%程度となる。したがって、2回の圧縮工程終了後の合計の圧縮率は0.5〜0.7程度となり、一次圧縮工程の圧縮率(0.3〜0.6程度)よりも若干大きな値となる。
このようにして圧縮加工されたカバー部材31に対し、開口部や切り欠きを切削または穿孔によって所定の位置に形成することによりカバー部材31が完成する。なお、カバー部材31の外縁に不要部分が形成された場合には、この不要部分を切削によって除去し、適当な端面処理を施す。
この実施の形態3においては、一般に二次圧縮工程後の外部材と内部材の木目がほぼ揃っているため、外力が作用したり温度や湿度が変化することによって生じる外装材3の伸縮の態様が、互いに固着する外部材と内部材とでほぼ一致し、それらの部材内部に応力が溜まりにくくなる。この結果、外力が作用したり温度や湿度が変化したりしてもひずみを生じにくいという特有の効果を得ることができる。
また、外部材と内部材の木目をほぼ揃えることによって、1枚の木材で成形した同形状の圧縮木製品と同等の特性を得ることができる。その一方で、外部材と内部材の繊維方向は略平行であるが、固着した後に両部材の木目が完全に一致することはないため、1枚の木材を用いて圧縮木製品を形成する場合に比べて強度の異方性を小さくし、より一様な強度を付与することができる。
なお、この実施の形態3で用いる木材は、外部材と内部材の木目がほぼ揃っていれば必ずしも柾目材である必要はなく、板目材、木口材、または追柾材を用いて実現することも可能である。
以上説明した本発明の実施の形態3によれば、2枚の木材を個別に一次圧縮した後、この2枚の木材をさらに重ねて一括して二次圧縮工程を行うことにより、上記二つの実施の形態と同様に、一次圧縮工程を行う際の木材の肉厚を薄くすることができ、成形が容易になる。
また、この実施の形態3によれば、二次にわたる圧縮の結果、強度が強い層と弱い層とが交互に現れる上、その強弱の度合いも多様なものとなるため(図15を参照)、靭性を備え、強くてしなやかな圧縮木製品を加工することが可能となる。
さらに、この実施の形態3によれば、カバー部材をなす外部材と内部材の木目がほぼ一致するように重ねて二次圧縮工程で固着するため、互いに固着する外部材と内部材の伸縮の態様がほぼ一致し、それらの部材内部に応力が溜まりにくくなる。したがって、外部から力が加わったり温度や湿度の変化があったりしてもひずみを生じにくい。
また、この実施の形態3によれば、木目を揃えることによって1枚で成形する場合と同等の特性を得ることができる一方で、重ねた部材の木目が完全に一致することはないので、1枚の木材を加工して圧縮木製品を形成する場合よりも強度の異方性を小さくすることができ、より一様な強度が得られる。
(実施の形態4)
図25は、本発明の実施の形態4に係る木材の加工方法における二次圧縮工程の概要を説明する図である。同図に示す場合、同じ圧縮率で一次圧縮した外部材411と内部材412の間に補強材413を挟んで二次圧縮を行う。このうち、無垢材から形取った平板状の木材を個別に圧縮して外部材411と内部材412を形成する一次圧縮工程は、上記実施の形態1〜3と同様である。
なお、図25では外部材411と内部材412の木目や繊維方向を明示していない。これは、本実施の形態4に係る木材の加工方法が、外部材411や内部材412をなす木材の木目や繊維方向によらずに実施可能なためである。
補強材413は、例えばセルロース等の木材繊維成分を含む天然繊維である木綿、麻、亜麻等や、再生セルロース繊維であるレーヨン等を用いて形成される。より具体的には、補強材413は、均一な線状をなす複数の繊維を一様な方向に密に揃えたものを束ねることによって形成される。このような補強材413の繊維方向が、木材の繊維方向と交差してその木材の強度が弱い方向を指向するようにすれば、加工後の圧縮木材の曲げ強度および引張り強度とも向上させることができる。
一例をあげると、外部材411および内部材412が実施の形態1の外部材111および内部材112と同様の柾目材である場合、外部材411の繊維方向はカバー部材41の長手方向に略平行であり、内部材412の繊維方向はカバー部材41の短手方向に略平行となる。そこで、補強材413の繊維方向を外部材411および内部材412の繊維方向と45度程度の角度で交差するように両部材間で配設すれば、外部材411と内部材412を重ねたときに強度が相対的に弱い方向を補強することができる。
図26は、二次圧縮工程の後、圧縮を解いて乾燥させることによって完成したカバー部材41の構成を示す斜視図であり、図27は図26のE−E線断面図である。これらの図26および図27に示すように、補強材413は、外部材411と内部材412の間で圧縮されることにより、その一部が外部材411と412の表面にそれぞれ若干食い込んでいるが、補強材413の主成分は木材が含有する成分と同じなので、木材との親和性が高い。この結果、木材自体の繊維を切断等によって傷つけたりすることなく、木材になじんだ状態で木材の表面に接着する。
また、カバー部材41に外力が作用したり温度や湿度が変化したりする場合には、補強材413がカバー部材41に追随して変形し、カバー部材41の過度の変形を防止することができる。これは、補強材413の主成分が木材の含有する成分と同じであり、補強材413のヤング率、熱膨張係数、および湿度膨張係数が、カバー部材41のヤング率、熱膨張係数、および湿度膨張係数にそれぞれ近い値をとるためである。
なお、補強材413の繊維方向は必ずしも一様に揃っている必要はなく、その繊維方向がランダムであってもよい。また、線状の繊維をネット状に編むことによって補強材を形成してもよい。加えて、各々の繊維の長さも均一でなくてよく、絹や麻などから成る極薄の布や不織布等を用いて補強材413を形成してもよい。
また、補強材413の素材は木材繊維成分を含むものに限られるわけではない。例えば、補強材413としてカーボン繊維を用いてもよいし、適当な素材に所定の繊維を貼付することによって補強材413を形成してもよい。また、金属シートや金属ネットを用いて補強材413を形成することもできる。
上記の如く形成されたカバー部材41は、同様に形成される別のカバー部材(図示せず)と組み合わさって電子機器の外装材をなす。その電子機器がデジタルカメラである場合の外装材の構成や組立方法等は、補強材413の有無を除いて上記実施の形態1におけるデジタルカメラ100の外装材1の構成や組立方法等とそれぞれ同じである(図1〜図3を参照)。
以上説明した本発明の実施の形態4によれば、二次にわたる圧縮工程を行うことにより、成形が容易であるとともに、適切な強度を一様に付与することができる。
また、この実施の形態4によれば、カバー部材(圧縮木製品)をなす外部材と内部材の間に補強材を設けることにより、そのカバー部材の強度を一段と向上させることができる。
特に、木材繊維成分を含んで成る補強材を用いることにより、木材と補強材との収縮率が略同一となり、木材との親和性が高く、材質の均一化を図ることができる。また、そのような補強材は、木材自体の繊維を切断したりすることがないため、木材自体の強度を劣化させることなく、圧縮木製品としてのカバー部材の強度を一段と向上させることができる。
ところで、補強材を外部材の外側表面および内部材の内側表面の一方または両方に設けることも可能である。補強材を外部材の外側表面に設ける場合には、圧縮木製品の強度を向上させるとともに、その補強材自体がデザインの一部となって一段と個性的な製品を提供することができる。これに対して、補強材を内部材の内側表面に設ける場合には、外観に影響を及ぼさずに圧縮木製品の強度を向上させることができる。
なお、3枚以上の木材を用いて圧縮木製品を製造する場合には、隣接する木材間の少なくともいずれか一つの木材間に補強材を配設すればよい。
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施する上で最良と思われる形態を、実施の形態1〜4として詳述してきたが、本発明はこれらの実施の形態によってのみ限定されるものではない。以下、その他の実施の形態を説明する。
(1)カバー部材を構成する外部材と内部材の間に電子機能部材を配設することもできる。例えば、この電子機能部材として外部材と内部材の間にアース回路基板を挿入し、外装材内部の電子部材と接続すれば、外装材内部に本来設けるべきアース回路用の空間を節約することができる。また、別の電子機能部材として、金属シートを外部材と内部材の間に設けることにより、補強材としての機能に加えて電磁波を防止するシールド部材としての機能を兼備させることができる。さらに別の電子機能部材として、ICチップや各種実装部品を組み込んだシートまたはフレキシブル基板等を挿入することにより、多様な機能を備えた電子機器を実現することが可能となる。
なお、3枚以上の木材を用いてカバー部材を形成する場合には、補強材や電子機能部材を配設する場所が複数あるので、カバー部材の用途に応じて、それらの部材を組み合わせて配設してもよい。
(2)図28は、外部材と内部材とで肉厚を変えて圧縮加工を行った圧縮木製品としてのカバー部材の構成を示す断面図である。ここでは、外部材451と内部材452の圧縮率は一次圧縮工程および二次圧縮工程それぞれにおいて同一とする。図28に示す場合、カバー部材45は、外部材451の肉厚h1が、内部材452の肉厚h2よりも小さい(h1<h2)。したがって、相対的に肉厚が小さい外部材451として板目材や木口材のような割れやすく成形が難しい木材を用いることができ、一次圧縮工程における加工が容易となって割れ等を防止することができる。
この場合には、内部材として強度の高い柾目材等を用いることにより、カバー部材45自体の肉厚は同一でも、強度の高い方の部材の肉厚を厚くした分だけ強度を向上させることができる。なお、平板状の木材からの曲げ等の加工において、一次圧縮工程における変形の度合が外部材と内部材とで異なる場合には、変形の度合が大きい方の肉厚を薄くし、成形しやすい方を厚くしてもよい。
(3)一次圧縮工程における金型の形状や木材の肉厚を調整することにより、外部材と内部材の圧縮率を部材ごとに変える。同じ種類の木材の場合、その木材の圧縮後の色調は圧縮率によって異なる。より具体的には、圧縮率が相対的に大きい木材の方が炭化が進むため、圧縮によって表面の色がより濃く変化する。また、圧縮率が相対的に大きい木材の方が、表面の平滑性や光沢に優れ、汚れにくい。
これに対して、圧縮率が相対的に小さい木材は、圧縮率が相対的に大きい木材よりも表面の色の変化が少ないが、より軟らかい。また、圧縮率が相対的に小さい木材の方が木の風合いが残っていて手触りもよい。このような特徴に鑑みて、適用する製品に付与したいデザインやその製品の特性に応じた圧縮率を設定すれば、多様な色調を有する個性的な圧縮木製品を形成することができる。
一例をあげると、木口材のように曲げ等による成形が難しい材質に対しては圧縮率を小さくする一方、柾目材のように成形が容易な材質に対しては圧縮率を大きくすれば、それらを重ねて圧縮して成る圧縮木製品を容易に成形することができる。したがって、異なる圧縮率の木材を組み合わせて用いることにより、製品の色調や外観を多様に変化させながらも、適切な強度を得ることが可能となる。
ところで、木材の圧縮率がその木材の限界圧縮率を超えない範囲で十分高い場合には、色調が変化するだけでなく、金型温度が高温であるために焼成によって木材が炭化して導電体となり、電磁シールド効果を生じる。このため、本発明に係る木材の加工方法を用いて得られる圧縮木製品を電子機器の外装材として適用する場合には、高い圧縮率によって導電体となった木材と、炭化しないで絶縁体のままである木材とを重ねて外装材を構成すればより好ましい。このためには、一次圧縮工程において、外部材と内部材の対向する面のうち少なくとも一方の面を炭化すればよい。
なお、この場合には一方の木材が炭化してしまっているので、樹脂成分だけで二つの木材を接着することはできない。したがって、木材間の接着には接着剤が必要である。
(4)以上の説明では、原材料の無垢材として同一種類の木材を用いることを前提としていたが、各層で木材の種類を変えてもよい。例えば、2枚の木材を重ねて電子機器のカバー部材を形成する場合、外部材としてデザインを重視して意匠性の高い見栄えのよい木材を選択する一方、内部材としては強度を重視して強度の高い木材を適用する。このように異なる種類の木材をうまく組み合わせて加工することにより、1枚の木材からでは決して実現することのできない強度と美観を兼ね備えた圧縮木製品を提供することができる。
なお、この場合にも、外部材や内部材として用いる木材の加工の難易度に応じて各部材の肉厚や圧縮率を上記同様に調整することができる。
(5)金型の形状を調整することにより、一次圧縮工程と二次圧縮工程の特性を活かした加工を行う。より具体的には、一次圧縮工程時には各々の木材が肉薄で成形が容易なため、この段階で最終形に近い形状まで加工する。これに対し、二次圧縮工程では変形の度合いを一次圧縮工程よりも少なくして肉厚方向の圧縮を行うとともに、木材同士の接着および製造者や製品名の刻印やデザイン上の凹凸などのように位置決め精度が要求される部分の形成を主とする。このように各木材を2回ずつ圧縮することの利点を活かした加工を行うことにより、精度のよい成形を実現することができる。
(6)所定の三次元形状になすように無垢材からの形取りを行ってもよい。この場合、木材を形取る段階で開口部や切り欠きを一緒に形成してもよいし、木材を形取った後でそれらの開口部や切り欠きを切削や穿孔等によって形成してもよい。
(7)本発明に係る木材の加工方法によって形成された圧縮木製品を外装材として適用し得る電子機器は、デジタルカメラの他に、携帯電話またはPHSまたはPDA等の携帯型通信端末、MDまたはCDまたはカセットテープ等の音声記録媒体を装着して音声を出力する携帯型オーディオ装置、ICレコーダ、携帯型テレビ、携帯型ラジオ、各種家電製品のリモコン、デジタルビデオなどがある。また、本発明に係る圧縮木製品は、電子機器の外装材以外の用途にも適用可能である。
本発明は、以上説明した実施の形態1〜4およびその他の実施の形態(1)〜(7)を適当に組み合わせることによって実現可能な実施の形態も含まれる。このように本発明は、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。