JP2007253345A - 圧縮木製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】母材をなす木材に対しその木材の肉厚方向に貫通する孔部が形成されている場合、その貫通孔部を補強するととともに、木材の経年変化にも対応して割れ等の劣化を防止することができる圧縮木製品の製造方法を提供する。
【解決手段】母材をなす第1の木材を圧縮して所定の3次元形状を形成する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮した木材に対し該木材の肉厚方向に貫通する貫通孔部を形成する貫通孔部形成工程と、前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に、繊維飽和点以上の含水率を有する状態にある第2の木材から成る補強部材を取り付ける補強部材取付工程と、を含む。
【選択図】 図10
【解決手段】母材をなす第1の木材を圧縮して所定の3次元形状を形成する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮した木材に対し該木材の肉厚方向に貫通する貫通孔部を形成する貫通孔部形成工程と、前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に、繊維飽和点以上の含水率を有する状態にある第2の木材から成る補強部材を取り付ける補強部材取付工程と、を含む。
【選択図】 図10
Description
本発明は、木材を圧縮することによって所定の3次元形状をなす圧縮木製品を製造する圧縮木製品の製造方法に関する。
近年、自然素材である木材が注目されている。木材はさまざまな木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことのできる素材として木材が注目されており、その加工技術も飛躍的に進歩しつつある。
従来、かかる木材の加工技術として、吸水軟化した1枚の木材を圧縮し、その木材を圧縮方向と略平行にスライスして板状の一次固定品を得た後、この一次固定品を加熱吸水させながら所定の3次元形状に成形する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、軟化処理した状態で圧縮した1枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって型成形する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照)。これらの技術では、木材の個体差や種類、加工後の木材の強度やその用途などを含むさまざまな点を考慮して、木材の肉厚や圧縮率が決められる。
ところで、木材に対してその木材の肉厚方向を貫通する貫通孔部を形成した場合、この孔によって木材の繊維が切断されてしまうため、切断面を補修して製品としての強度を保つ必要がある。この場合、該当箇所に金属や合成樹脂などを用いて構成される補強部材を用いるのが一般的であるが、経年変化によって木材が微妙に変形したりする場合、それらの補強部材が木材に追従して変形することがないため、木材に割れ等が生じてしまうことがあった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、母材をなす木材に対しその木材の肉厚方向に貫通する孔部が形成されている場合、その貫通孔部を補強するととともに、木材の経年変化にも対応して割れ等の劣化を防止することができる圧縮木製品の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る圧縮木製品の製造方法は、母材をなす第1の木材を圧縮して所定の3次元形状を形成する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮した木材に対し該木材の肉厚方向に貫通する貫通孔部を形成する貫通孔部形成工程と、前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に、繊維飽和点以上の含水率を有する状態にある第2の木材から成る補強部材を取り付ける補強部材取付工程と、を含むことを特徴とする
本発明において、「含水率」とは、{(木材の乾燥前の重量−全乾状態の重量)/全乾状態の重量}×100(%)で定義される量のことである。ここで、「全乾状態」とは、木材の細胞壁に含まれて木材を構成する分子と結合する結合水がほとんどなくなった状態のことであり、この全乾状態における含水率はほぼ0%である。また、「繊維飽和点」とは、木材に含まれる水分のうち、細胞内腔や細胞壁の間隙にある自由水が存在せず、結合水のみが存在する状態における含水率のことである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記補強部材取付工程において前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に取り付けられた前記補強部材としての前記第2の木材の繊維方向と、前記貫通孔部の内縁部付近の前記第1の木材の繊維方向とは交差することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第2の木材は略円筒形状をなし、略円環状の表面の周回方向に略沿った繊維方向を有することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項記載の発明において、前記補強部材取付工程は、大気中で一対の金型によって前記第1および第2の木材を狭持して圧縮力を加えることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項記載の発明において、前記圧縮工程における前記第1の木材の圧縮率は、前記補強部材取付工程における前記第2の木材の圧縮率と略同一であることを特徴とする。
本発明に係る圧縮木製品の製造方法によれば、母材をなす第1の木材を圧縮して所定の3次元形状を形成する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮した木材に対し該木材の肉厚方向に貫通する貫通孔部を形成する貫通孔部形成工程と、前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に、繊維飽和点以上の含水率を有する状態にある第2の木材から成る補強部材を取り付ける補強部材取付工程と、を含むことにより、母材をなす木材に対しその木材の肉厚方向に貫通する孔部が形成されている場合、その貫通孔部を補強するととともに、木材の経年変化にも対応して割れ等の劣化を防止することが可能となる。
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の概要を示すフローチャートである。同図に示すように本実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法においては、まず、所定の形状をなす木材を原木から形取る(ステップS1)。図2は、この形取工程の概要を模式的に示す図である。同図に示す木材1(第1の木材)は、原木である無圧縮状態の無垢材100(木目Gを有する)から切削等によって形取られ、略長方形状の表面をなす平板状の主板部1aと、この主板部1a表面の長手方向に略平行な2辺の各々から主板部1a表面に対して所定の角度をなして延出する二つの側板部1bと、主板部1a表面の短手方向に略平行な2辺の各々から主板部1a表面に対して所定の角度をなして延出する二つの側板部1cとを備え、皿状(椀状、シェル状、箱状等の形状を含む)をなす。この木材1は、後述する工程によって減少する分の容積を予め加えた容積を有する。
図2に示す場合、無垢材100から形取る木材1の長手方向とその木材1の繊維方向Lとが略平行であって主板部1aの表面が柾目面をなすように形取りを行っているが、これはあくまでも一例に過ぎない。他にも、木材1の長手方向がその木材1の繊維方向Lと略平行であり、主板部1aの表面が板目面、追柾面をなすように形取ることもできる。また、木材1の長手方向がその木材1の繊維方向Lと略直交し、主板部1aの表面が木口面をなすように形取ることもできる。このように、木材を原木からどのように形取るかは、その木材に対して要求する強度や美観等の条件に応じて定められる。そこで、以後の説明で参照する図面においては、木目を省略して記載する。
なお、無垢材100は、ヒノキ、ヒバ、桐、杉、松、桜、欅、黒檀、紫檀、竹、チーク、マホガニー、ローズウッドなどの中から、加工した木材の用途等に応じて最適なものを選択すればよい。また、木材を原木から形取る際には平板状に形取ってもよい。
次に、形取った木材1を圧縮する(ステップS2)。図3は、この圧縮工程において使用する金型の構成および木材1を圧縮する前の状態を示す図である。また、図4は、図3のA−A線断面図である。これらの図に示すように、木材1は一対の金型51および61によって挟持され、所定の圧縮力が加えられる。
圧縮時に木材1の上方から圧縮力を加える金型51は、木材1の主板部1aから側板部1bおよび1cに各々立ち上がって湾曲する曲面の内側面に嵌合する形状をなす凸部52を備えたコア金型である。木材1の内側面のうち、主板部1aから側板部1bに立ち上がって湾曲する曲面1ab内側面の曲率半径をRIとし、凸部52のうち曲面1abに当接する曲面の曲率半径をRAとすると、この二つの曲率半径は、RI>RAという関係を満たす。
これに対し、圧縮時に木材1の下方から圧縮力を加える金型61は、木材1の主板部1aから側板部1bおよび1cに各々立ち上がって湾曲する曲面の外側面を嵌入する凹部62を備えたキャビティ金型である。木材1の主板部1aから側板部1bに立ち上がって湾曲する曲面1abの外側面の曲率半径をROとし、凹部62のうち曲面1abの外側面に当接する曲面の曲率半径をRBとすると、この二つの曲率半径は、RO>RBという関係を満たす。
以上の構成を有する金型51および61を用いて木材1を圧縮する前に、木材1を大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で所定時間放置することにより、水分を過剰に吸収させて軟化させる。ここでいう高温高圧とは、温度が100〜230℃、より好ましくは180〜230℃、さらに好ましくは180〜200℃程度であり、圧力が0.1〜3.0MPa(メガパスカル)、より好ましくは0.45〜2.5MPa、さらに好ましくは1.0〜1.6MPa程度の状態を指す。なお、上述した水蒸気雰囲気中で木材1を放置して軟化させる代わりに、例えばマイクロウェーブの如き高周波の電磁波によって木材1を加熱して軟化させてもよい。
この後、金型51および61の少なくとも一方を他方に対して移動することによって木材1を挟持し、所定の圧縮力を加えて木材1を徐々に所定の形状へと変形する。この際には、例えば適当な駆動手段を用いて金型51および/または61を電気的に移動させることにより、木材1に加わる圧縮力を調整する。なお、金型51と金型61とをねじで連結し、このねじを手動または自動で締めることによって金型51を金型61に対して上下動させるようにしてもよい。
図5は、軟化した木材1を所定の位置に配置した後、金型51と金型61との間で木材1を挟持して圧縮力を加えている状態を示す図であり、木材1の変形がほぼ完了した状態を示す図である。図5に示すように、木材1は金型51および61から圧縮力を受けることにより、金型51と金型61との隙間に相当する3次元形状に変形する。図5に示す状態で木材1に所定時間(1〜数十分、より好ましくは5〜10分程度)圧縮力を加えた後、上記水蒸気雰囲気を解いて木材1を乾燥させ、金型51と金型61を離間させて圧縮を解除することによって圧縮工程が終了する。
圧縮工程で木材1を圧縮した結果、木材1の肉厚は、圧縮前の木材1の肉厚の30〜50%程度となる。換言すると、この初期圧縮工程における木材1の圧縮率(圧縮による木材の肉厚の減少分ΔRとその木材の圧縮前の肉厚Rの比の値ΔR/R)は、0.50〜0.70程度である。
次に、木材1の主板部1aに対しその肉厚方向に貫通する貫通孔部を、切削加工やプレス打抜加工などの手法によって形成する(ステップS3)。以後、ステップS3によって貫通孔部が形成された木材を「木材2」と称する。図6は、ステップS3の後の木材の構成を示す斜視図である。同図に示す木材2は、木材2の主板部2a、ならびに側板部2bおよび2cにそれぞれ対応する主板部2a、ならびに側板部2bおよび2cを有し、主板部2aの略中央部に貫通孔部21が形成されている。
この後、上記の如く形成した貫通孔部21を補強するための補強部材を取り付ける(ステップS4)。図7は、このステップS4で木材2に取り付ける補強部材の構成を示す図である。同図に示す補強部材3は、中空略円筒形状をなす木材(第2の木材)から成る。この補強部材3をなす木材の繊維方向L3は、略円環状の表面の周回方向すなわち円周方向に略沿った方向であり、その外径routは貫通孔部21の径(r2とする)よりも小さい。また、補強部材3の高さh3は、木材2の肉厚(h2とする)よりも大きい。なお、補強部材3をなす木材の種類は、木材2と同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。
以上の構成を有する補強部材3として、例えば柾目材をその繊維方向と平行な方向に線状に切り出したものを、上述した圧縮工程(ステップS2)と同様の水蒸気雰囲気中でリング状に丸めることによって形成することができる。その際、対向する端面同士は必ずしも接着しなくてもよく、また厳密に当接している必要もない。これは、補強部材3は、後述するように圧縮力を加えながら貫通孔部21に対して取り付けられるため、取付前の段階で当接または接着されていなくても、圧縮力によって端面同士が当接するとともに接着するからである。
補強部材3は、繊維飽和点以上の含水率を有する状態にあり、十分に軟化した状態で木材2への取付が行われる。繊維飽和点の値は、補強部材3を構成する木材の種類等に応じて多少異なるが、概ね25〜30%程度である。補強部材3の含水率の調整は、高圧水蒸気処理、煮沸処理、または浸漬処理によって行うことができる。なお、補強部材3を上述した状態で保持するにあたっては、適当な温度、湿度、および圧力を有する環境を人工的に作り出し、そのような環境下で補強部材3を保管しておけばよい。
以下、ステップS4で補強部材3を木材2に取り付ける際に使用する金型の構成を説明する。図8は、ステップS4で木材2の上方から圧縮力を加える金型の構成を示す斜視図である。同図に示す金型71は、木材2の主板部2aから側板部2bおよび2cに向かってそれぞれ湾曲する内側面に嵌合する形状をなす凸部72を有する。この凸部72の底面には、円柱状の突起部73が形成されている。金型71の凸部72の表面は、木材2の内側面(図6の上面側の表面)と略同形をなす。なお、図8は、奥行き方向(x軸方向)を回転軸として回転し、実際の使用時と上下を逆転したものを記載している。
図9は、ステップS4で木材2の下方から圧縮力を加える金型の構成を示す斜視図である。同図に示す金型81は、木材2の主板部2aから側板部2bおよび2cに各々立ち上がって湾曲する曲面の外側面を嵌入する凹部82を備える。凹部82の底面の略中央部には、その底面と直交する方向に穴部83が穿設されている。この穴部83は、上述した金型71の突起部73と略同径をなしており、使用時には突起部73の下方に位置して突起部73の先端が挿入可能である。金型81の凹部82の表面は、木材2の外側面(図6の底面側の表面)とほぼ同じ形状をなす。なお、図9に示す座標系は図8に示す座標系と同じであり、図9に示すB−B線は図8に示すB−B線と同じである。
図10は、以上の構成を有する補強部材3ならびに金型71および81を用いた補強部材取付工程(ステップS4)の概要を示す図である。このステップS4は大気中で行うが、補強部材3に関しては上述したように水分を過剰に吸収して軟化している状態で行う。
以下、ステップS4を詳細に説明する。まず、木材2を金型81の凹部82の上に載置する。これにより、主板部2aに形成された貫通孔部21は、凹部82の表面から穿設された穴部83の上方に位置することとなる。その後、貫通孔部21の内側に挿入する形で補強部材3を金型81の凹部82の上に載置する。
続いて、金型71および81の少なくとも一方を他方に対して移動する。金型71および/または81の移動は、ステップS2における金型51および/または61の移動と同様の機構によって実現すればよい。かかる移動によって金型71と金型81とが接近し、突起部73が補強部材3の中空部分を貫通して穴部83へ徐々に進入していくと、やがて凸部72の表面のうち突起部73を囲続する部分が補強部材3の上端面に当接し、圧縮力が加わり始める。金型71と金型81とがさらに接近していくと、補強部材3が高さ方向に押しつぶされるようにして幅方向へ広がっていき、凸部72の表面全体が木材2の内側面に当接するとともに、補強部材3の外側面が貫通孔部21の内縁部に当接し、補強部材3の内側面が突起部73の外周に当接するようになる。
図11は、金型71および/または81の移動が終了し、木材2および補強部材3の変形がほぼ完了した状態を示す図である。同図に示す状態で、補強部材3の外側面は貫通孔部21の内縁部と密着している。このステップS4において、補強部材3は過剰に水分を吸収して軟化しているため、樹脂成分等が外部へ染み出す。この染み出した樹脂成分の一部が木材2との接着剤の役目を果たすことによって補強部材3が木材2へ固着される。ところで、木材2は、金型71および81によって狭持されるときに微小な圧縮力しか受けない上、大気中での圧縮となるため、その形状はほとんど変化しない。したがって、ステップS4における圧縮率も0に近い値をとる。なお、補強部材3の種類等の条件によっては、木材2と補強部材3との間に適当な接着剤を予め塗布してからステップS4を行ってもよい。
図10からも明らかなように、以上説明したステップS4を実現するためには、突起部73の径R1、補強部材3の内径rin、外径rout、貫通孔部21の径r2、および穴部83の径R2の間に、R1≒R2<rin<rout<r2が成立する必要がある。また、補強部材3は、貫通孔部21の内側面に固着するために圧縮変形される必要があるため、補強部材3の高さh3は、木材2の肉厚h2よりも大きくなければならない(h3>h2)。なお、このステップS4における補強部材3の圧縮率は、圧縮工程(ステップS2)における木材1の圧縮率と同程度(0.50〜0.70)であればより好ましい。
図12は、ステップS4によって得られた圧縮木製品の構成を示す斜視図である。同図に示す圧縮木製品4は、木材2に対して補強部材3が固着した状態、すなわち木材2と補強部材3とが一体化した状態を示している。木材2の繊維方向L2と補強部材3の繊維方向L3とは補強部材3の略全周にわたって交差している。しかも、補強部材3のみについていえば、その肉厚方向(径方向)と繊維方向L3とが直交しているため強度が最も高い状態にある。これにより、木材2に貫通孔部21が形成され、その貫通孔部21の縁端部で木材2の繊維が切断されることによって強度的な問題が生じたとしても、補強部材3によって補強することができるので、圧縮木製品4の強度を向上させることができる。特に、本実施の形態においては、補強部材3が木材から成るため、同様の補強部材を金属や合成樹脂によって形成する場合と比較して、母材をなす木材2の経年変化に追従して木材2の割れ等を防止することも可能となる。
上述した構成を有する圧縮木製品4は、例えばカメラを外装するカバー部材として使用することができる。この場合、補強部材3の中空部分からはレンズが出入する。
以上説明した本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法によれば、母材をなす第1の木材を圧縮して所定の3次元形状を形成する圧縮工程と、前記圧縮工程で圧縮した木材に対し該木材の肉厚方向に貫通する貫通孔部を形成する貫通孔部形成工程と、前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に、繊維飽和点以上の含水率を有する状態にある第2の木材から成る補強部材を取り付ける補強部材取付工程と、を含むことにより、母材をなす木材に対しその木材の肉厚方向に貫通する孔部が形成されている場合、その貫通孔部を補強するととともに、木材の経年変化にも対応して割れ等の劣化を防止することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、母材をなす木材を別の木材によって補強することにより、一段と製品ごとの個体差が生じる結果となり、意匠的な観点から見ても個性溢れる製品を提供することが可能となる。
図13は、本実施の形態の第1変形例に係る圧縮木製品の補強部材と木材との取付構造を示す部分断面図である。同図に示す圧縮木製品5の場合、木材6の貫通孔部161の内縁部は、先端が内側へ向けて尖った断面形状をなしている。このため補強部材3は、圧縮されることによって徐々に貫通孔部161へと食い込んでいき、一段と確実に木材と補強部材との固着を実現することができる。なお、貫通孔部の内縁部を波打ち形状としても同様の効果を得ることができる。
図14は、本実施の形態の第2変形例に係る圧縮木製品の補強部材と木材との取付構造を示す部分断面図である。同図に示す圧縮木製品7の場合、圧縮後も補強部材8の高さが木材2の高さよりも高く、貫通孔部21と噛み合った状態になっており、上述した第1変形例と同様に、一段と確実な木材と補強部材との固着を実現している。
図15は、本実施の形態の第3変形例に係る圧縮木製品の補強部材と木材との取付構造を示す部分断面図である。同図に示す圧縮木製品9の場合、補強部材10の内側面の断面がテーパ形状をなしており、内側にいくにつれて圧縮率が高くなっている。このため、補強部材10の最も肉薄の部分の強度を向上させることができる。
なお、図13〜15にそれぞれ示した補強部材と木材との取付構造を組み合わせることによってさまざまなバリエーションが得ることができる。その際に使用する金型の形状が、補強部材と木材との取付構造に応じて適宜設計変更されることはいうまでもない。
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を詳述してきたが、本発明はその一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。図16は、本発明の別な実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品の構成の一部を示す図である。同図に示す圧縮木製品11は、木材2と同様の外観形状をなし、その主板部に長方形の断面を有する貫通孔部121が形成された木材12と、貫通孔部121の内縁部のうち、木材12の繊維方向L12と直交する辺(2箇所)に沿って固着された2本の棒状の補強部材13とを備える。補強部材13の繊維方向L13は、補強部材13の長手方向に略沿うとともに木材12の繊維方向L12と略直交している。このようにして、母材をなす木材12の繊維が切断された部分を補強部材13によって補うことにより、上記一実施の形態と同様の効果を得ることができる。
この例からも明らかなように、貫通孔部の断面形状は、円(や長方形)に限定されるわけではなく、その他の断面形状を有する貫通孔部に対しても本発明を適用することが可能である。
また、本発明において、補強部材の木材への取付前の形状は、必ずしも取付相手である貫通孔部と同じ形状である必要はない。換言すると、補強部材の初期形状は、補強部材取付工程によって補強部材と貫通孔部との隙間が埋まって密着させることができる形状であれば十分である。
さらに、本発明において、補強部材取付工程で使用する金型の少なくとも一方に木材の炭化温度(350℃程度)よりも高い温度まで加熱する機構を具備させてもよい。かかる機構を金型に具備させることにより、その金型を加熱して第1の木材の少なくとも一方の表面を炭化することができ、工数を増やすことなく、第1の木材の表面の一部に導電性を付与することが可能となる。したがって、電子機器(デジタルカメラ、携帯電話、PHSまたはPDA等の携帯型通信端末、携帯型オーディオ装置、ICレコーダ、携帯型テレビ、携帯型ラジオ、各種家電製品のリモコン、デジタルビデオ等)の外装体のように、電磁波を遮蔽する性質が求められる圧縮木製品を製造する上で好適な圧縮木製品の製造方法を提供することができる。
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
1、2、6、12 木材
1a、2a 主板部
1b、1c、2b、2c 側板部
1ab 曲面
3、8、10、13 補強部材
4、5、7、9、11 圧縮木製品
21、121、161 貫通孔部
51、61、71、81 金型
52、72 凸部
62、82 凹部
73 突起部
83 穴部
100 無垢材
G 木目
L、L2、L3、L12、L13 繊維方向
1a、2a 主板部
1b、1c、2b、2c 側板部
1ab 曲面
3、8、10、13 補強部材
4、5、7、9、11 圧縮木製品
21、121、161 貫通孔部
51、61、71、81 金型
52、72 凸部
62、82 凹部
73 突起部
83 穴部
100 無垢材
G 木目
L、L2、L3、L12、L13 繊維方向
Claims (5)
- 母材をなす第1の木材を圧縮して所定の3次元形状を形成する圧縮工程と、
前記圧縮工程で圧縮した木材に対し該木材の肉厚方向に貫通する貫通孔部を形成する貫通孔部形成工程と、
前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に、繊維飽和点以上の含水率を有する状態にある第2の木材から成る補強部材を取り付ける補強部材取付工程と、
を含むことを特徴とする圧縮木製品の製造方法。 - 前記補強部材取付工程において前記貫通孔部の内縁部の少なくとも一部に取り付けられた前記補強部材としての前記第2の木材の繊維方向と、前記貫通孔部の内縁部付近の前記第1の木材の繊維方向とは交差することを特徴とする請求項1記載の圧縮木製品の製造方法。
- 前記第2の木材は略円筒形状をなし、略円環状の表面の周回方向に略沿った繊維方向を有することを特徴とする請求項2記載の圧縮木製品の製造方法。
- 前記補強部材取付工程は、大気中で一対の金型によって前記第1および第2の木材を狭持して圧縮力を加えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の圧縮木製品の製造方法。
- 前記圧縮工程における前記第1の木材の圧縮率は、前記補強部材取付工程における前記第2の木材の圧縮率と略同一であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の圧縮木製品の製造方法。
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