JP4199171B2 - 気化器のオートチョーク装置 - Google Patents

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Description

本発明は,エンジンに取り付けられるワックス式の感温部と,この感温部の受熱作動に応じて気化器のチョーク弁を開くように作動する出力部とからなる,気化器のオートチョーク装置の改良に関する。
かゝる気化器のオートチョーク装置は,例えば特許文献1に開示されているように,既に知られている。
実開昭57−182241号公報
一般の気化器では,チョーク弁とその弁軸とが,リリーフばねを介して相対回転可能に連結され,エンジンの暖機運転時,オートチョーク装置がチョーク弁を全閉位置に保持しようとしても,エンジンの吸気負圧が過大になると,その負圧を利用して,チョーク弁をリリーフばねの付勢力に抗して適度に開き,過大負圧を逃がすことにより,気化器の生成混合気の過濃化を防ぐようにしている。
しかしながら,気化器のスロットル弁の開度を自動的に制御するガバナ装置付きのエンジンの場合,冷間始動直後のアイドリング時には,スロットル弁が全開位置からアイドリング開度まで閉じられるため,このスロットル弁は,気化器の吸気道においてチョーク弁より下流側に位置していることから,チョーク弁に作用する吸気負圧が弱くなってチョーク弁の開き不足を来し,気化器の生成混合気が濃厚となる傾向となる。こうしたことは,エンジンのアイドリングを不安定したり,低燃費性を悪化させる要因となる。
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,エンジンの冷間始動後のアイドリング時には,チョーク弁をエンジンの吸気負圧に依存することなく機械的に強制開弁させて,気化器の生成混合気の濃厚化を防ぎ,低燃費で安定したアイドリングを可能にする,気化器のオートチョーク装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために,本発明は,エンジンに取り付けられるワックス式の感温部と,この感温部の受熱作動に応じて,チョーク戻しばねにより閉弁方向に付勢されているチョーク弁を開くように作動する出力部とからなる,気化器のオートチョーク装置において,気化器のスロットル弁に,このスロットル弁をエンジンの停止時に開き,エンジンの運転時に,エンジンの設定回転数に対応した所定開度に制御するガバナ装置を連結すると共に,スロットル弁及びチョーク弁間に,スロットル弁のスロットルレバーに一体に形成されて先端に円弧面を有する駆動アームと,チョーク弁のチョークレバーに一体に形成されて側面に前記駆動アームの円弧面が離間可能に当接する従動アームとで構成されるチョーク強制開弁手段を設け,エンジンの暖気運転中で前記スロットル弁が全開位置からアイドリング開度へ閉弁するときは,前記駆動アームの円弧面で前記従動アームの側面を押動して前記チョーク弁を強制的に開かせ,エンジンの暖気運転中で前記スロットル弁が前記アイドリング開度から開弁するときは,前記駆動アームの円弧面が前記従動アームの側面から後退して,前記チョーク弁の,前記チョーク戻しばねによる閉弁を許容するようにしたことを第1の特徴とする。
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記出力部及びチョーク強制開弁手段を,それらの何れか一方の作動によるチョーク弁の開弁を他方が妨げないように構成したことを第2の特徴とする。
本発明の第1の特徴によれば,エンジンの冷間,停止状態では,オートチョーク装置がチョーク弁の閉弁を許容し,ガバナ装置がスロットル弁を全開状態に保持する。エンジンの冷間始動直後の暖気運転時には,ガバナ装置の作動によりスロットル弁を全開位置からアイドリング開度まで閉じる。このスロットル弁の閉弁過程で,チョーク強制閉弁手段の作動により,スロットルレバーに一体に形成された駆動アームの円弧面でチョークレバーに一体に形成された従動アームの側面を押動してチョーク弁を開かせ,チョーク弁を全閉位置から半開状態に強制的に開放するので,気化器で生成される混合気は,エンジンのアイドリングに適した濃度に調整され,安定したアイドリング状態を確保することができ,またチョーク弁の開き遅れによる低燃費性の悪化を回避することができる。しかも,エンジンの暖機運転中,エンジンに作業機その他の負荷をかけるべく,スロットル弁がアイドリング開度から開弁するときは,駆動アームの前記円弧面が従動アームの側面から後退して,チョーク戻しばねによるチョーク弁の閉弁を許容するので,チョーク弁は再び閉じられる。
また本発明の第2の特徴によれば,前記出力部及びチョーク強制開弁手段は,互いに干渉することなくチョーク弁を的確に開弁制御することができる。
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る汎用エンジンの一部を縦断した正面図,図2は図1の要部拡大図,図3は図2の3−3線断面図,図4は図2の4−4線断面図,図5は図2の5−5線断面図,図6は図2の6−6線断面図,図7は図6に対応した,オートチョーク装置の作用説明図,図8はオートチョーク装置の別の作用説明図,図9はオートチョーク装置の更に別の作用説明図,図10は図6中のオートチョーク装置における感温部の拡大図,図11は図10に対応する作用説明図,図12はガバナ装置の概略側面図,図13はチョーク強制開弁手段周辺部の側面,図14は図14に対応した,チョーク強制開弁手段の作用説明図,図15はチョーク強制開弁手段の別の作用説明図,図16はチョーク強制開弁手段の更に別の作用説明図である。
先ず,図1〜図3において,符号Eは,各種作業機の動力源となる4サイクルエンジンを示す。このエンジンEは,鉛直方向に配置されるクランク軸1を支持するクランクケース2と,このクランクケース2から水平方向に突出した,シリンダボア3aを有するシリンダブロック3と,このシリンダブロック3の外端部に一体に形成されたシリンダヘッド4とを備えており,シリンダヘッド4には,吸気弁7i及び排気弁7eによりそれぞれ開閉される吸気ポート6i及び排気ポート6eと,吸気弁7i及び排気弁7eを作動する動弁機構8を収容する動弁室9とが設けられる。この動弁室9を閉鎖するヘッドカバー5がシリンダヘッド4の端面に接合される。
吸気ポート6i及び排気ポート6eの外端は,シリンダヘッド4の互いに反対方向を向いた一側面と他側面とにそれぞれ開口し,その一側面には,吸気ポート6iに連通する吸気道11を備えた気化器Cが板状の断熱部材10を挟んで複数の通しボルト12により接合される。断熱部材10は,断熱性に優れたフェノール樹脂等の熱硬化性合成樹脂製であり,これによってエンジンEから気化器Cへの熱伝導が抑えられる。シリンダヘッド4の他側面には,排気ポート6eに連通する排気マフラ14が取り付けられる。またエンジンEの上部には,燃料タンク17とリコイル式スタータ15とが配設される。尚,図1中,符号16は,シリンダヘッド4に螺着された点火プラグを示す。
図2及び図4に示すように,気化器Cには,その吸気道11の上流側に連なるエアクリーナ13が取り付けられる。気化器Cの吸気道11には,その上流側にチョーク弁19,下流側にスロットル弁20が設けられ,またこの両弁19,20間で開口する燃料ノズル(図示せず)が設けられる。チョーク弁19及びスロットル弁20は,何れも気化器Cに回転自在に支承される弁軸19a,20aにそれぞれ支持されるバタフライ型である。
図4において,チョーク弁19の弁軸19aは,吸気道11の中心線から一側にオフセットして配置され,チョーク弁19は,その全閉状態では,チョーク弁19の回転半径の大きい側が,その回転半径の小さい側より吸気道11の下流側に来るように吸気道11の中心軸線に対して傾斜するようになっている。上記弁軸19aの,気化器C外側に突出した外端部にはチョークレバー22が取り付けられ,このチョークレバー22は,弁軸19aに相対回転可能に嵌合される中空円筒状をなしており,その内部において,公知のリリーフばね(図示せず)を介して弁軸19aと連結される。チョーク弁19の全開及び全閉位置は,チョークレバー22が気化器Cの外側壁に設けられるストッパ(図示せず)に当接することで規定される。
而して,チョーク弁19の全閉若しくは小開度時,エンジンEの吸気負圧が所定値を超えると,チョーク弁19の回転半径の大きい側に作用する吸気負圧による回転モーメントと,チョーク弁19の回転半径の小さい側に作用する吸気負圧による回転モーメントとの差が上記リリーフばねによる回転モーメントとバランスするところまで,チョーク弁19を開くようになっている。
チョークレバー22には,これをチョーク弁19の閉じ側に付勢するチョーク戻しばね21が接続される。またチョークレバー22には,チョーク弁19の開度をエンジンEの温度変化に応じて自動的に制御するオートチョーク装置Aが対置される。
このオートチョーク装置Aについて,図2〜図11を参照しながら説明する。
先ず図2〜図6において,オートチョーク装置Aは,エンジンEのシリンダヘッド4,特に吸気ポート6i周りから受熱する感温部25と,この感温部25及び前記チョークレバー22間を連結して感温部25の受熱作動をチョークレバー22に,チョーク弁19の開き方向の動きとして伝達する出力部26とから構成される。感温部25は,吸気ポート6iの周壁4aと,この周壁4aの上部から起立する囲壁4b(図2及び図3参照)とでシリンダヘッド4に形成される収容室27に配置される円筒状のハウジング30を有する。収容室27は,吸気ポート6iと同様に一端を入口としてシリンダヘッド4の一側面に開口し,シリンダヘッド4の中心に向かう反対側の端部は閉塞している。また収容室27の一側は,囲壁4bの成形性及び感温部25の組み付け性を考慮して適当に開放されている。
上記ハウジング30は,熱伝導性に優れた金属,例えばAl製で底部30a′を有するカップ状の第1部分30aと,断熱性に優れた合成樹脂,例えばフェノール樹脂製で第1部分30aの開放端に印籠嵌合してビス45(図2参照)により結合される円筒状の第2部分30bとで構成される。その第2部分30bは,シリンダヘッド4及び気化器C間に介装される前記断熱部材10に一体に連設され,したがって,ハウジング30は,専用の取り付け部材を設けることなくシリンダヘッド4に取り付けられることになる。
第1部分30aは,その底部30a′を収容室27の奥側即ちシリンダヘッド4の中心部(高温部)に向けると共に,その底部30a′及び周壁を収容室27の内面に接触若しくは微小間隙を存して対向させるように配置される。第2部分30bは収容室27の入口側,即ちシリンダヘッド4の中心から離れる側に配置される。
感温部25は,図10に示すように,熱伝導性に優れたAl等の金属製で有底の可動シリンダ31と,この可動シリンダ31の開放端にかしめ結合してガイド部材32と,このガイド部材32に摺動可能に支承されて,それを貫通する棒状の固定ピストン33と,可動シリンダ31内で固定ピストン33を覆いながら,開放端を可動シリンダ31及びガイド部材32間に液密に挟持される弾性袋34と,この弾性袋34を覆うようにして可動シリンダ31内に封入されるワックス35とを備えており,固定ピストン33の外端をハウジング30の第1部分30aの底部30a′内面に当接させた状態で,可動シリンダ31はハウジング30の第1部分30a内に摺動可能に嵌合される。
而して,ワックス35は,加熱されると膨張して弾性袋34を絞るように圧縮することで固定ピストン33をガイド部材32の外方に押し出そうとするが,第1部分30aの底部30a′内面に外端を当接した固定ピストン33は移動不能であるから,その反作用により,可動シリンダ31が第1部分30a内を,その底部30a′から離れる矢印F方向(図11参照)に前進することになる。
可動シリンダ31の外周面は,ガイド部材32と反対側の半部が小径になっており,この小径部31aにディスタンスカラー36が嵌合され,このディスタンスカラー36に当接するリテーナ37と,断熱部材10との間に,ディスタンスカラー36を介して可動シリンダ31を固定ピストン33の外端側に付勢するコイル状の戻しばね38が縮設される。したがって,リテーナ37は,ディスタンスカラー36と戻しばね38とで挟持される。
図5及び図6に示すように,前記出力部26は,断熱部材10を貫通して一端部43aを前記リテーナ37に連結するロッド43と,断熱部材10に一体に形成されたブラケット10aの両側面に共通の枢軸40を介して支持されて個別に回動し得る第1及び第2レバー41,42とを備え,第1レバー41にロッド43のL字状に屈曲した他端部43bが連結され,可動シリンダ31の前進Fに伴なうロッド43の軸方向移動により第1レバー41を図6で矢印R方向に回動させるようになっている。ロッド43のリテーナ37への連結は,ロッド43の一端の膨大端部43aをリテーナ37と可動シリンダ31の端面とで挟持することにより行われる。
第1及び第2レバー41,42は,両者の回動方向に沿って離間可能に当接する当接部41a,42aを有しており,これら当接部41a,42aは,第1レバー41が第2レバー42に対して矢印R方向に相対回動するとき,互いに離間するようになっている。また第1及び第2レバー41,42にはばね係止部41b,42bが設けられており,これらばね係止部41b,42bに,両レバー41,42を上記当接部41a,42aの当接方向に付勢する連結ばね44の両端が係止される。
第2レバー42には,前記チョークレバー22の受動ピン22aに作動的に対向する作動アーム42cが一体に形成されており,第2レバー42が矢印R方向に回動すると,作動アーム42cがチョークレバー22をチョーク弁19の開き方向に回動するようになっている。
図12において,スロットル弁20を自動的に開閉制御するガバナ装置Gについて説明する。スロットル弁20の弁軸20aの外端部にはスロットルレバー23が固着され,このスロットルレバー23には,エンジンEに支持した回転支軸51の外端に固着されるガバナレバー52の長腕部52aがリンク53を介して連結される。またガバナレバー52には,エンジンE等に支持されてアイドリング位置から全負荷位置までの範囲を回動し得る出力制御レバー56がガバナばね54を介して連結される。ガバナばね54は,スロットル弁20を常時開き方向に付勢するもので,そのばね荷重は,出力制御レバー56をアイドリング位置から全負荷位置の方向へ,又はそれと反対の方向へ回動することにより,増減設定される。
さらにガバナレバー52の短腕部52bには,エンジンEのクランク軸1により駆動される公知の遠心ガバナ55の出力軸55aが連接され,エンジンEの回転数の増加に応じて増大する遠心ガバナ55の出力が短腕部52bにスロットル弁20の閉じ方向に作用するようになっている。
したがって,エンジンEの運転停止状態では,ガバナばね54の設定荷重によりスロットルレバー50は,スロットル弁20の閉じ位置Cに保持されるが,エンジンEの運転中は,遠心ガバナ55の出力によるガバナレバー52のモーメントと,ガバナばね54の設定荷重によるガバナレバー52のモーメントとの釣り合いによってスロットル弁20の開度が自動制御されることになる。
また図2及び図13に示すように,スロットルレバー50には先端に円弧面59aを有する駆動アーム59が一体に形成され,この駆動アーム59に対応する従動アーム60がチョークレバー33に一体に形成され,チョーク弁19の全閉状態にあるとき,スロットル弁20が全開からアイドリング開度に回動されると,駆動アーム59の円弧面59aが従動アーム60の側面をチョーク弁19の開き方向に押圧するようになっている。これら駆動アーム59及び従動アーム60によって本発明のチョーク強制開弁手段58が構成される。
次に,この実施例の作用について説明する。
エンジンEの冷間,停止状態では,図10に示すように,感温部25のワックス35は収縮状態にあるので,可動シリンダ31は,戻しばね38の弾発力によりハウジング30の第1部分30aの底部30a′に近接した後退位置に保持されている。これに伴ない,図6に示すように,出力部26の第2レバー42の作動アーム42cはチョークレバー22から離れた位置に保持されるので,チョークレバー22は,チョーク戻しばね21の付勢力でチョーク弁19の閉じ位置に保持される。
一方,スロットル弁20は,遠心ガバナ55の不作動状態により,ガバナばね54により全開状態に保持される(図13参照)。このとき,出力制御レバー56がアイドリング位置にセットされると,ガバナばね54の荷重は最小又はゼロに設定されるようになっている。
したがって,エンジンEを始動すべく,リコイルスタータ15を作動して,クランク軸1をクランキングすれば,気化器Cにおいて,チョーク弁19より下流の吸気道11に大なる負圧が発生して,その箇所に開口する燃料ノズルから比較的多量の燃料が噴出し,吸気道11で生成される混合気を濃厚にするので,エンジンEをスムーズに始動することができる。
エンジンEが始動されると,遠心ガバナ55がクランク軸1の回転数に対応した出力を発生し,この出力によるガバナレバー52のモーメントと,ガバナばね54の最小荷重によるガバナレバー52のモーメントとが釣り合うところまでガバナレバー52が回動して,スロットル弁20を自動的にアイドリング開度まで閉じるので,スロットルレバー23と一体の駆動アーム59の円弧面59aがチョークレバー22と一体の従動アーム60の側面をチョーク戻しばね21の付勢力に抗して押動することで,図14及び図15に示すように,チョーク弁19は全閉位置から半開状態に強制的に開放される。その際,チョークレバー22の受動ピン22aは,オートチョーク装置Aにおける出力部26の第2レバー42から単に遠ざかるのみであるから,出力部26は,駆動アーム59によるチョーク弁19の強制開弁には全く干渉しない。かくして,吸気道11で生成される混合気は,エンジンEのアイドリングに適した濃度に調整され,安定したアイドリング状態を確保することができ,またチョーク弁19の開き遅れによる低燃費性の悪化を回避することができる。
エンジンEの暖機運転中,エンジンEに作業機その他の負荷をかけるべく,出力制御レバー56をアイドリング位置から適当な負荷位置に回動すれば,それに応じてガバナばね54の荷重が増加することで,このガバナばね54の荷重と遠心ガバナ55の出力とが均衡するときのスロットル弁20の開度は増加する。このスロットル弁20の開度増加により,駆動アーム59は,従動アーム60に対して後退することになるが,チョークレバー22の従動アーム60は,チョーク戻しばね21の付勢力をもって駆動アーム59の円弧面59aの後退に追従するので,チョーク弁19は再び閉じられる。その結果,吸気道11の下流に発生する吸気負圧が所定値を越えると,前述のように,チョーク弁19の回転半径の大きい側に作用する吸気負圧による回転モーメントと,チョーク弁19の回転半径の小さい側に作用する吸気負圧による回転モーメントとの差がチョークレバー22内のリリーフばねによる回転モーメントとバランスするところまで,チョーク弁19を開くので,吸気道11で生成される混合気の過濃化を防ぎ,良好な暖機運転状態を保証する。
エンジンEの暖機運転の進行に伴ない,シリンダヘッド4の温度が上昇してくると,吸気ポート6iに近接した収容室27内の感温部25は収容室27の内壁から加熱され,可動シリンダ31内のワックス35の熱膨張により,前述のように,弾性袋34が絞られて固定ピストン33を押し出そうとする反作用で可動シリンダ31が戻しばね38の弾発力に抗して矢印F方向に前進していき,この可動シリンダ31の前進は,ロッド43を介して第1レバー41を矢印R方向に回動する。この第1レバー41と第2レバー42は,当初,連結ばね44の付勢力により互いに当接部41a,42aを当接させた連結状態にあるので,図7に示すように,第2レバー42も第1レバー41と一体となって回動して,作動アーム42cがチョーク戻しばね21の付勢力に抗して受動ピン22a即ちチョークレバー22を,チョーク弁19の開き方向に回動するようになる。
したがって,チョーク弁19の開度は,収容室27の温度上昇に応じて増加しいくので,エンジンEの暖機運転の進行に応じて吸気道11内の燃料ノズル上の負圧を低下させ,燃料ノズルの燃料噴出量を減少させ,吸気道11で生成される混合気の空燃比を適正に補正することができる。そして,エンジンEの暖機運転が終了する頃には,収容室27内の温度が充分に高まって,図8に示すように,チョーク弁19を全開状態に制御することになる。
この間,図16に示すように,チョーク弁19の開弁に伴ない従動アーム60は,スロットルレバー23の駆動アーム59から離れていき,駆動アーム59の干渉を全く受けないので,チョーク弁19は的確に開弁することができる。
その後,シリンダヘッド4の温度が更に上昇し,収容室27の温度も高まると,ワックス35の更なる熱膨張により,可動シリンダ31が過剰に前進して,ロッド43を介して第1レバー41を矢印R方向に更に回動するが,第2レバー42は,全開位置のチョークレバー22により,それ以上の回動を阻止されているから,図9に示すように,第1レバー41のみが連結ばね44を伸ばしながら矢印R方向に回動して,第1レバー41の当接部41aが第2レバー42の当接部42aから離間していく。したがって,感温部25の可動シリンダ31のオーバーストローク作動は,連結ばね44の伸びに吸収される。このことは,オートチョーク装置Aからチョーク弁19までの各部には,連結ばね44のセット荷重以上の荷重が作用しないことを意味し,これによって各部における過大応力の発生を回避し,各部の耐久性を確保し得る。しかも相互に回動し得る第1及び第2レバー41,42は,共通の枢軸40を介してブラケット10aに取り付けられるので,出力部26の部品点数を減らし,構造の簡素化を図ることができる。
その後,エンジンEの運転を停止した場合,エンジンEの高温状態が続いている限り,収容室27内も高温状態が続くので,感温部25は可動シリンダ31を前進させた状態を維持して,出力部26を介してチョーク弁19を開き状態に保持する。したがって,この状態では,チョークレバー22の従動アーム60は,スロットルレバー23の駆動アーム59から大きく離れているから,ガバナばね54の荷重によるスロットル弁20の全開位置への復帰を何等妨げない。而して,高温状態のエンジンEの再始動時には,チョーク弁19の開き状態を確保して,混合気の過濃化を防ぎ,再始動性を良好にすることができる。
エンジンEが運転停止後,冷却した場合には,感温部25では,ワックス35の熱収縮と,戻しばね38の作用により可動シリンダ31が後退するので,出力部26は,チョーク戻しばね21による,チョーク弁19閉じ方向へのチョークレバー22の回動を許容する。
ところで,エンジンEの運転中,シリンダヘッド4の吸気ポート6iの周辺部は,常に吸気ポート6iを流れる吸気により冷却されるので,エンジンEの負荷変動に殆ど影響されることなく,暖機運転の進行に対応した温度特性を持つことができ,したがって吸気ポート6iに近接して配置された感温部25は,エンジンEの負荷変動に拘らず,暖機運転の進行に的確に対応した作動を生じて,チョーク弁19の開度を常に適正に制御することができ,エンジンEの燃費特性及びエミッション特性の向上に寄与し得る。
特に,感温部25が,吸気ポート6iの周壁4aと,この周壁4aの一側から起立する囲壁4bとでシリンダヘッド4に形成される収容室27に配置される場合には,囲壁4bの長さの選定により収容室27の感温部25との対向面積を適当に設定することにより,エンジンEの暖機運転の進行に対する感温部25の作動特性を調整することが可能となる。
また感温部25の有底のハウジング30においては,シリンダヘッド4の中心寄りの底部30a′のシリンダヘッド4からの受熱が最も多く,その底部30a′の内面に固定ピストン33を当接させ,ワックス35を封入した可動シリンダ31は,ワックス35の熱膨張に応じて前記底部30a′から離れるF方向にハウジング30内を前進するので,可動シリンダ31内のワックス35のハウジング30からの受熱は,エンジンEの暖機運転開始直後に多く,暖機運転の進行に伴い減少することになる。
特に,ハウジング30は,前記底部30a′を有する熱伝導性の高い金属製の第1部分30aと,前記底部30a′と反対側の断熱性の高い第2部分30bとで構成されるので,ワックス35の受熱特性の上記傾向を一層強めることができる。即ち,可動シリンダ31は,前進時,その一部を断熱性の高い第2部分30b側に移すことになり,ワックス35の受熱は一層減少する。その結果,エンジンEの暖機運転開始直後,可動シリンダ31内のワックス35は,ハウジング30の第1部分から速やかに受熱して膨張を開始し,チョーク弁19の開弁を早めて混合気の過濃化を効果的に抑えることができる。また暖機運転の進行に伴ない可動シリンダ31がハウジング30の第1部分30aから第2部分30b側に移行するので,可動シリンダ31内のワックス35のハウジング30からの受熱を,暖機運転の進行に伴い効果的に減少することができ,したがってチョーク弁19の開弁速度を,暖機運転終了に近づくにつれて的確に遅くして,より安定した暖機運転を継続することができる。また暖機運転終了後はワックス35の受熱が更に少なくなるから,ワックス35の過熱劣化防止に一層寄与し得る。
またハウジング30を,底部30a′を有する熱良導性の第1部分30aと,この第1部分の,前記底部30a′と反対側に結合される,断熱性の第2部分30bとで構成したことで,エンジンEの発生する熱は,主として第1部分30aを介して可動シリンダ31内のワックス35に伝達することになり,第1部分30aのみの形状及び配置の選定により,感温部25の特性を変えることができ,エンジンEの多機種への対応が容易である。
しかも断熱性の高い第2部分30bと,出力部26の第1レバー41を軸支するブラケット10aとは,シリンダヘッド4及び気化器C間に介裝される断熱部材10を利用して,それに一体に成形したので,専用の支持部材を用いることなく,感温部25のハウジング30及びブラケット10aをシリンダヘッド4に支持することができ,したがって部品点数の削減により簡素化し,オートチョーク装置Aのコスト低減に寄与し得る。
尚,本発明は前記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,可動シリンダ31を固定シリンダとしてハウジング30の第1部分30aの底部30a′に当接させ,固定ピストン33を可動ピストンとしてリテーナ37又はロッド43に連結して,ワックス35の熱膨張時,ピストン33を前進させるようにすることもできる。
本発明に係る汎用エンジンの一部を縦断した正面図。 図1の要部拡大図。 図2の3−3線断面図。 図2の4−4線断面図。 図2の5−5線断面図。 図2の6−6線断面図。 図6に対応した,オートチョーク装置の作用説明図。 オートチョーク装置の別の作用説明図。 オートチョーク装置の更に別の作用説明図。 図6中のオートチョーク装置における感温部の拡大図。 図10に対応する作用説明図。 ガバナ装置の概略側面図。 チョーク強制開弁手段周辺部の側面。 図14に対応した,チョーク強制開弁手段の作用説明図。 チョーク強制開弁手段の別の作用説明図。 チョーク強制開弁手段の更に別の作用説明図。
符号の説明
A・・・・・オートチョーク装置
C・・・・・気化器
E・・・・・エンジン
G・・・・・ガバナ装置
19・・・・チョーク弁
20・・・・スロットル弁
21・・・・チョーク戻しばね
22・・・・チョークレバー
25・・・・感温部
26・・・・出力部
50・・・・スロットルレバー
58・・・・チョーク強制開弁手段
59・・・・駆動アーム
59a・・・円弧面
60・・・・従動アーム

Claims (2)

  1. エンジン(E)に取り付けられるワックス式の感温部(25)と,この感温部(25)の受熱作動に応じて,チョーク戻しばね(21)により閉弁方向に付勢されているチョーク弁(19)を開くように作動する出力部(26)とからなる,気化器のオートチョーク装置において,
    気化器(C)のスロットル弁(20)に,このスロットル弁(20)をエンジン(E)の停止時に開き,エンジン(E)の運転時に,エンジン(E)の設定回転数に対応した所定開度に制御するガバナ装置(G)を連結すると共に,スロットル弁(20)及びチョーク弁(19)間に,スロットル弁(20)のスロットルレバー(50)に一体に形成されて先端に円弧面(59a)を有する駆動アーム(59)と,チョーク弁(19)のチョークレバー(22)に一体に形成されて側面に前記駆動アーム(59)の円弧面(59a)が離間可能に当接する従動アーム(60)とで構成されるチョーク強制開弁手段(58)を設け
    エンジン(E)の暖気運転中で前記スロットル弁(20)が全開位置からアイドリング開度へ閉弁するときは,前記駆動アーム(59)の円弧面(59a)で前記従動アーム(60)の側面を押動して前記チョーク弁(19)を強制的に開かせ,
    エンジン(E)の暖気運転中で前記スロットル弁(20)が前記アイドリング開度から開弁するときは,前記駆動アーム(59)の円弧面(59a)が前記従動アーム(60)の側面から後退して,前記チョーク弁(19)の,前記チョーク戻しばね(21)による閉弁を許容するようにしたことを特徴とする,気化器のオートチョーク装置。
  2. 請求項1記載の気化器のオートチョーク装置において,
    前記出力部(26)及びチョーク強制開弁手段(58)を,それらの何れか一方の作動によるチョーク弁(19)の開弁を他方が妨げないように構成したことを特徴とする,気化器のオートチョーク装置。
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