光ディスク装置では、レーザの光束を光ディスクに照射し、その反射光を識別することによって情報を読取っている。ここで、光ディスク装置に搭載されている対物レンズ駆動装置は、反射光から得られる制御信号を用いて、対物レンズをメディアの面振れや、偏芯などの動きに追従するように制御することにより、フォーカシング方向と、トラッキング方向に駆動し、メディアの記録面上にスポットが形成するようにされている。
大容量のデータを扱うにあたって、記録,再生も高速に行うことが望まれるため、メディアを高速回転させる必要がある。面振れや、偏芯が存在するメディアを高速回転させた場合、加速度は非常に大きくなり、メディアに対物レンズを精度良く追従させるためには大きな推力を発生できる対物レンズ駆動装置が必要になる。
さらに近年、高密度化のため、小さなスポットを形成することが必要となってきており、この為には対物レンズのNAを大きくするか、レーザの波長を短くすることが考えられる。ここで、NAを大きくしたり、レーザの波長を短くすると、対物レンズの光軸とメディアの垂直度がずれることにより、コマ収差が発生しやすくなり、スポットの品質が劣化する。これによって、記録再生品質が劣化してしまうという問題が生じる。そのため高密度化のためにはメディアと対物レンズの傾きの精度向上が必要となる。
近年では特に精度が厳しくなり、メディアと対物レンズの傾き(チルト)を積極的に補正する機能をもった光ディスク装置が提供されている。チルトを補正する方式はいくつかあるが、対物レンズを含む対物レンズ駆動装置の可動部をメディアの傾きに追従させる方式は低コストで省スペースであり、また可動部が軽量であるため高速なメディアの傾きにも追従させることができるため、補正能力が高い方式である。
以下に従来の対物レンズ駆動装置の例を説明する。
(従来例1)
従来におけるこの種の技術として、各種のものが提案されている。例えば特許文献1に記載されている対物レンズ駆動装置(以下、従来例1と称する)では、図29に示すように、一対の同一構造の支持部材101,102が対物レンズ104の光軸に直交する平面105内に配置されている。各支持部材101,102の一端101a,102a側はレンズホルダ106の2つの側面にそれぞれ固定され、また各支持部材101,102の他端101b,102b側は固定部107に固定されている。各支持部材101,102は、固定部107から延設された第1の棒状部材108,109と、レンズホルダ106から延設され、かつ第1の棒状部材108,109と互いに端部で直角に連結された第2の棒状部材110,111とから構成されている。
対物レンズ104におけるタンジェンシャル回転方向の剛性に関しては、支持部材101,102の一端101a,102a側の方が、支持部材101,102の他端101b,102b側に比べて小さい剛性となるように設定されている。レンズホルダ106には駆動マグネット112,113が固定されており、固定部107に配置されている駆動コイル(フォーカス駆動コイル,トラック駆動コイル,ラジアル駆動コイル,タンジェンシャル駆動コイル)114,115のそれぞれに電流を流すことにより、対物レンズ104を含むレンズホルダ106を4軸方向に駆動することができるようになっている。
このような構成にすることにより、可動部が薄く形成され、対物レンズ主点と可動部の慣性中心と支持中心、そして推力中心を近接させた設計をすることが可能になるなど、レンズホルダ106をフォーカシング方向に駆動したときのタンジェンシャル回転方向へのクロストークを低減することが可能である。したがってチルト動作による並進方向へのクロスアクションを発生しにくい。
しかし、図29に示す従来技術では可動部を薄く構成しているために、駆動部の大きさを十分確保できず,出力加速度が低いと言う問題がある。
また、構造的にフォーカシング動作とタンジェンシャルチルト動作が相互に影響しやすく、フォーカシング動作によりタンジェンシャルチルトが発生するなどが原因で、サーボが不安定になるという問題がある。
(従来例2)
また、特許文献2に記載されている対物レンズ駆動装置(以下、従来例2と称する)では、図30((a)は平面図、(b)は(a)におけるイ−ロ断面図)に示すように、対物レンズホルダ206上ほぼ中央に対物レンズ201を設け、対物レンズホルダ206の側面206aには扁平型のフォーカシング調整用コイル204を2つ並設する。さらに、このフォーカシング調整用コイル204の上に同じく扁平型のトラッキング調整用コイル205を跨設する。そして、前述した対物レンズホルダ206の側面206aの反対側の側面206bにも同様にフォーカシング調整用コイル204およびトラッキング調整用コイル205を設ける。なお、図30(a)中の左上のフォーカシング調整用コイルをF1、図30(a)中の右上のフォーカシング調整用コイルをF2、図30(a)中の左下のフォーカシング調整用コイルをF3、図30(a)中の右下のフォーカシング調整用コイルをF4とする。
前述した構成をもつ光ピックアップアクチュエータをヨーク202に挿入し、同一平面の同じ向きに配した3本ずつ(合計6本)のワイヤ(支持部材)207の一端側を対物レンズホルダ206の互いに対向する側面206c,206dに固定する一方、ワイヤ207の他端側をヨーク202に設けられた固定部208に支持する。支持する位置は、フォーカシング調整用コイル204およびトラッキング調整用コイル205の存在しない対物レンズホルダ206の側面の両側(図30中の上面および下面)のほぼ中央とする。そして、ヨーク202のフォーカシング調整用コイル204に対向する位置にマグネット203(磁束発生手段)をそれぞれ2個ずつ設ける。
従来例2は、棒状弾性支持部材すなわちワイヤ207を同一平面上に配置することにより、タンジェンシャルチルト方向への可動性を良好にしたものである。この従来例2によれば、従来例1に対して可動部にコイルを配置したムービングコイル方式であるため出力加速度を大きくすることが可能である。
しかし、従来例2でもフォーカシング動作したときにタンジェンシャルチルトを発生してしまい動作が不安定になるという問題がある。
(従来例3)
また、特許文献3に記載されている対物レンズ駆動装置(以下、従来例3と称する)では、図31に示すように、光学系の対物レンズ301は対物レンズホルダ302に周囲を固定されて保持されている。対物レンズホルダ302のディスク周方向(y方向)側面にはフォーカスコイル303a,303bとトラッキングコイル304a,304b,304c,304dが対向して固着されている。さらに前記対物レンズホルダ302のディスク径方向(x方向)側面にはチルトコイル305a,305b,305c,305dが対向して固着されている。8本の平行な直線状の支持材306a,306b,306c,306d,306e,306f,306g,306hは、一端を前記対物レンズホルダ302の側面に、他端は基台307の支持材固定部308a,308bに固着され、可動部をフォーカス方向A、トラッキング方向B、傾き方向Cの3方向に移動および傾動可能に支持している。この基台307は光学ピックアップ本体315の上部に取り付けられy方向に一対、x方向に二対U字型ヨークがある。y方向U字型ヨーク309a,309bにはフォーカス、トラッキング駆動用のy方向磁石310a,310bが装着され、x方向U字型ヨーク311a,311b,311c,311dにはチルト駆動用のx方向磁石312a,312b,312c,312dが装着され各々磁気回路を形成している。前記対物レンズホルダ302上面x方向には傾き検出器313a,313bが取り付けられ、前記対物レンズ301から放出され光ディスクに集光され反射される光のうち前記対物レンズ301に戻らない回折光を受光できるようになっている。
従来例3では対物レンズ保持部材のタンジェンシャル方向において、両側を支持することで安定な支持をすることができる。ただし、従来例3ではラジアル方向のチルト動作は可能であるが、タンジェンシャルチルト方向の回転剛性が非常に高く、タンジェンシャルチルト動作ができない。
(従来例4)
また、特許文献4に記載されている対物レンズ駆動装置(以下、従来例4と称する)では、図32に示すように、対物レンズ422を略中央に保持するレンズホルダ423は駆動用コイルの巻線ボビンを兼用しており、このレンズホルダ423の外周壁に第1の巻線溝部423aが形成されて対物レンズ422の光軸を中心としてフォーカスコイル(図示せず)が巻装され、一方向に相対する両外側壁にはそれぞれ一対の巻線枠部423b1,423b2および423b3,423b4が所要間隔を置いて形成されてトラッキングコイル425が2つに分別巻きされて巻装されている。また、このレンズホルダ423にはトラッキングコイル425の巻装側の両外側壁にそれぞれ平行してヨーク孔が形成されている。
このように構成されるレンズホルダ423には、サスペンション取付け部材(以下、サス取付け部材という)427が一体化されている。このサス取付け部材427には、レンズホルダ423のトラッキングコイル425の巻装側の両外側壁と直交する方向に相対する両外側壁に対応して、それぞれ一対の取付けブロック427b1,427b2および427b3,427b4が所要の間隙を隔てて立上げ形成されている。
このようにレンズホルダ423と一体化されるサス取付け部材427に弾性支持部材としてのサスペンション部材429(429b1,429b2および429b3,429b4)が取り付けられている。従来例4におけるサスペンション部材429は平面的に形成されてレンズホルダ423を両側より支持するように構成されている。
従来例4は、棒状弾性支持部材の軸方向の引張り圧縮力をクランク部で吸収するようにすることでフォーカシング、トラッキングオフセット時の低域感度の低下を少なくしたものである。しかし、従来例4ではワイヤの長さを十分に確保することができず、対物レンズ駆動装置全体の大きさも大きくなりやすいという問題がある。
(従来例5)
図33は従来例5としての対物レンズ駆動装置を示す斜視図であり、対物レンズ1を保持する対物レンズ保持部材2はタンジェンシャル方向を長手方向とするワイヤばね5a,5bによって弾性的に支持されている。ワイヤばね5a,5bは、フォーカシング方向に間隔を隔て、対物レンズ1の光軸を中心としてタンジェンシャル方向およびラジアル方向それぞれに対称に、かつ略平行に各々の平面上に4本ずつ、合計8本が配置され、ワイヤばね5a,5bの固定部材6側の端部は、ベース部材7に取り付けられている固定部材6に一部が固定されているE字形状をした弾性基板9に半田付けされている。
従来例5はタンジェンシャル動作時に発生する棒状弾性支持部材の軸方向の引張り圧縮力を、棒状弾性支持部材の固定部側端部を弾性基板に固定することにより吸収し、可動しやすくしたものである。
しかし、従来例5でもタンジェンシャルチルト方向の可動性を十分に確保するのは難しく、また弾性基板部のばらつきの影響を受けやすいため、タンジェンシャルチルト方向の駆動感度の管理が難しいという問題があった。
(従来例6)
図34は従来例6としての対物レンズ駆動装置を示す斜視図であり、対物レンズ1を保持する対物レンズ保持部材2は、タンジェンシャル方向を長手方向とするワイヤばね5によって弾性的に支持されている。ワイヤばね5は、フォーカシング方向に垂直な略1つの平面上において、対物レンズ1の光軸を中心としてタンジェンシャル方向およびラジアル方向の両側に4本ずつ合計8本が平行に配設されている。ワイヤばね5の固定部材6側における固定端部は、ワイヤばね5の軸方向に可撓性を有して微動するようになっている弾性基板9に半田固定することにより可動性を向上させている。
従来例6は、8本の棒状弾性支持部材を同一平面状に配置することでタンジェンシャル動作時に棒状弾性支持部材の軸方向の引張り圧縮力を発生しないようにしている。このような構造にすることで、ラジアルチルト方向と同程度の可動性を得ることができる。ちなみにラジアルチルト方向とタンジェンシャルチルト方向の一次共振周波数は、フォーカス,トラック方向の倍程度になる。
従来例6は可動部を両側から支持していることにより、フォーカシング駆動時に発生するモーメントが両側でキャンセルされ、理論上はタンジェンシャルチルトが発生しない。この反面、フォーカシング動作やトラッキング動作などで棒状弾性支持部材が撓むことによる軸方向の変動が規制されるため、フォーカス,トラック方向のオフセット時に低域の感度が低下することが問題となる。低域の感度が低下するのは軸方向の変動が規制されるためにばね定数が増加することが原因であるため、当然一次共振周波数も変動してしまう。
(従来例7)
また、特許文献5に記載されている対物レンズ駆動装置(以下、従来例7と称する)では、図35,図36に示すように、トラッキング方向に離間したフォーカシング推力を逆方向に(もしくは差分で)発生させることでチルト駆動のモーメントを発生させるための2つのフォーカス方向推力発生部分をタンジェンシャル方向において異なる面に配置することで、フォーカス駆動コイル有効長を長くし推力特性を向上させているものである。
なお、図35において、501は対物レンズ、502はレンズホルダ、503は第1のプリントコイル、503aは第1のフォーカシングコイル部、503bは第1のトラッキングコイル部、504は第2のプリントコイル、504aは第2のフォーカシングコイル部、504bは第2のトラッキングコイル部、505は第1のマグネット、506は第2のマグネット、507は端子板、508はワイヤー、509はヨーク、510はベース、511はサスホルダ、512は基板を示す。また、図36において、521,522は第1,第2のボビン、523,524は第1,第2のフォーカシングコイル、525,526は第1,第2のマグネット、527,528は第1,第2のトラッキングコイル、529,530は対向ヨークを示す。
しかし、従来例7は、可動部をそのタンジェンシャル方向における片側からのみ支持しているため、磁気回路をトラッキング方向に拡大しようとすると弾性支持部材と干渉してしまい、さらなる推力の増加をすることが困難であった。
またチルト駆動のモーメントは、トラッキング方向およびタンジェンシャル方向の両方向に離間したフォーカシング推力を逆方向に(もしくは差分で)発生させることで得ているため、ラジアルチルト駆動と同時にタンジェンシャルチルト方向にも変動してしまう(ラジアルチルト駆動からタンジェンシャルチルト方向へのクロスアクション)。このクロスアクションは、ラジアルチルト動作を行う3軸対物レンズ駆動装置であれば、低周波数領域のみに限り、チルト剛性をラジアルチルト方向に対してタンジェンシャルチルト方向に十分に大きくすることで低減することができるが、ラジアルチルト動作およびタンジェンシャルチルト動作を行う4軸対物レンズ駆動装置では、タンジェンシャル方向の可動性も必要であるため、タンジェンシャルチルト方向の剛性も小さくする必要があるため問題となってしまう。
特開平10−275354号公報
実用新案登録第2579715号公報
特開平6−162540号公報
特開2000−163774号公報
特開2002−150584号公報
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の参考例1を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図、図2は図1に示す参考例1の対物レンズ駆動装置の可動部の斜視図であり、1は対物レンズ、2は対物レンズ1を中央上部に設置した可動部である対物レンズ保持部材、3(3a,3b)は対物レンズ保持部材2に保持されているフォーカスコイル、4は対物レンズ保持部材2に保持されているトラックコイル、5(5a〜5d)は対物レンズ保持部材2を保持する可動部支持体を構成する複数本(図示した例では8本であるが、奥側のものは他部材により隠れるため図示されない)の棒状弾性支持部材であるワイヤばね、6はタンジェンシャル方向に対向させて配置した固定部材、7はベース部材、8は駆動コイルであるフォーカスコイル3およびトラックコイル4に対向設置された駆動用磁石、9は可撓性を有する弾性基板である。
対物レンズ1を保持する対物レンズ保持部材2はタンジェンシャル方向を長手方向とするワイヤばね5によって固定部材6に対して弾性的に支持されている。このワイヤばね5はフォーカシング方向に垂直な略1つの平面上、かつ、対物レンズ1の光軸を中心としてタンジェンシャル方向およびラジアル方向の両側に4本ずつ合計8本が平行に配置されている。また、ワイヤばね5の固定部側の一端部はワイヤばね5の軸方向に微動可能な弾性基板9に固定されている。
対物レンズ保持部材2におけるトラッキング方向両側面にそれぞれ支持突部2a,2bが突設しており、この支持突部2a,2bは可動部中心の両側に配置されている。一方の支持突部2aには2つの貫通孔が穿設されており、一方の弾性基板9に一端部が固定されているワイヤばね5a,5bは、一方の支持突部2aの2つの貫通孔を通って、他端部が一方の弾性基板9から遠い支持突部2bに固定される。同様に、他方の弾性基板9に一端部が固定されているワイヤばね5c,5dは、支持突部2aの2つの貫通孔を通って、他端部が支持突部2bに固定される。
ここでワイヤばね5の長さは、固定部材6側固定端部と可動部重心とのタンジェンシャル方向における距離よりも長く構成されている。そのため、タンジェンシャル方向において可動部の両側に配置されているワイヤばね5は互いにトラッキング方向にオフセットされた位置に配置されており、ワイヤばね5同士の干渉がないようになっている。
図2は可動部の斜視図であり、対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向両側面の中央にはそれぞれトラックコイル4が装着されており、トラックコイル4に対してトラッキング方向両側にフォーカスコイル3およびラジアルチルトコイル10が装着されている。なお、フォーカスコイル3とラジアルチルトコイル10とは重ねて装着される。なお、対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向の一方の側面に設けたフォーカスコイル3を、フォーカスコイル3aと称し、他方の側面に設けたフォーカスコイル3を、フォーカスコイル3bと称することにする。このように、対物レンズ保持部材2に、フォーカスコイル3a、フォーカスコイル3b、トラックコイル4、ラジアルチルトコイル10の4系統の駆動コイルが装着されて可動部が構成される。
前記ベース7は磁性体であり、一部を折り曲げることによりヨークを形成している。このヨークに固定された駆動用磁石8は対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向両側に配置されており、フォーカスコイル3,トラックコイル4,ラジアルチルトコイル10に磁束が貫くように磁気回路が形成されている。
駆動用磁石8は、図3に示すように、トラッキング方向における略中央において、フォーカシング方向の着磁境界線aにより分割着磁されている。着磁境界線aの両側はさらに、駆動用磁石8のメディア側端面に垂直なフォーカシング方向の着磁境界線bと、駆動用磁石8のトラッキング方向の側面に垂直な着磁境界線cによりL字状に分割着磁されている。
フォーカスコイル3aおよびフォーカスコイル3bはタンジェンシャル方向を軸として巻回されており、駆動用磁石8の着磁境界線aのトラッキング方向における両側に配置されている。フォーカスコイル3の2箇所のトラッキング方向に電流が流れる部分はそれぞれ着磁境界線cのフォーカシング方向における両側に配置され、フォーカシング方向に電流が流れる部分は着磁境界線cをまたいで配置されている。
トラックコイル4はタンジェンシャル方向を軸として巻回され、駆動用磁石8に対向し、トラッキング方向に電流が流れる部分が着磁境界線aをまたいでいる。ラジアルチルトコイル10はタンジェンシャル方向を軸として巻回され、着磁境界線aの両側に配置されている。メディア側のトラッキング方向に電流が流れる部分が駆動用磁石8の着磁境界線cをまたぎ、着磁境界線aから遠い側のフォーカシング方向に電流が流れる部分が着磁境界線cをまたいでいる。
そして、フォーカスコイル3aおよびフォーカスコイル3bに同等の電流を流すことにより可動部をフォーカシング方向に駆動することができる。また、フォーカスコイル3aとフォーカスコイル3bに流す電流に差を与えることによりタンジェンシャルチルト方向に駆動することが可能である。また、トラックコイル4に電流を流すことによりトラッキング方向、およびラジアルチルトコイル10に電流を流すことによりラジアルチルトコイル方向に駆動することができる。なお、ワイヤばね5が8本あるのはこれら4つの駆動コイルに電流を供給するためでもある。
参考例1においては、ワイヤばね5の長さを、従来例5や従来例6に対して長くすることで、フォーカシング,トラッキングなどで発生するワイヤの撓みによるワイヤの軸方向の変動を小さくすることができる。例えば、従来例4で8mm程度であるのに対し、参考例1ではワイヤばね5を12mm程度にすることが可能なので、図4(a)のグラフに示すように、フォーカシング方向への移動量が0.6mmの時、軸方向の変動は27.1μmから18.0μmに低減できることになる。これによって、フォーカシング,トラッキング時の低域の感度低下を抑えることが可能である。フォーカシング動作時のワイヤばね5の撓み変形の様子は図4(b)のようになっている。
図5は本発明の参考例2を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図5において、図1に示す参考例1における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
参考例2は、参考例1の対物レンズ保持部材2における支持突部2bをなくし、かつ支持突部2aの貫通孔をなくし、一方の弾性基板9に固定されているワイヤばね5の一端を弾性基板9に平行に並べて固定し、他端を一方の支持突部2aに固定し、他方の弾性基板9に固定されているワイヤばね5は、他端部を他方の支持突部2aに固定したものである。
このように、可動部のトラッキング方向において両側に配置されるワイヤばね5は、両側それぞれがタンジェンシャル方向において異なる方向の固定部材6に固定されており、ワイヤばね5はフォーカシング方向に略垂直な1つの平面上、かつ、対物レンズ1の光軸を中心として対角位置に4本ずつ合計8本が平行に配置されている。ここでワイヤばね5の長さは、固定部材6側固定端部と可動部重心とのタンジェンシャル方向における距離よりも長く構成されている。
このように構成することにより、参考例1と同じようにワイヤばね5を長くすることができるので、参考例1と同様の効果が得られる。
さらに参考例2では、参考例1のように、隣接するワイヤばね5が互いにタンジェンシャル方向両側から配置されていないので、ワイヤばね5が干渉しにくく、可動部のレイアウトを容易にすることが可能である。
また、参考例2ではフォーカシング,トラッキング動作による、ワイヤばね5の軸方向の変動を可動部が回転することにより吸収することができる。すなわち、可動部が、図6(a)に示すノーマル位置の場合からフォーカスオフセットした場合には、図6(b)に示すように、ワイヤばね5がタンジェンシャル方向に変動し、ワイヤばね5の固定部側端部から可動部端部までの距離が撓み分だけ短くなり、その結果、可動部の隅の移動分だけ可動部を光軸中心に回転するようになる。これによって、フォーカシング,トラッキング時の低域の感度低下を小さくすることができる。このときの可動部の回転は光軸中心で回転するため、スポットの位置は変動せず、スポットの位置の変動に伴う問題の発生を防止できる。
図7は参考例2の変形例を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図7において、図5に示す部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
この変形例は、図5に示す参考例2の対物レンズ保持部材2における支持突部2aを、対物レンズ保持部材2からタンジェンシャル方向に延在する延在部とワイヤばね5の固定部からなる略L字状の部材とし、固定部の位置が、図5に示す固定部の位置よりも可動部中心に対してさらに遠くなるように構成したものである。
このように構成したことにより、ワイヤばね5の可動部側端部をタンジェンシャル方向に突出させることによってさらにワイヤの長さを長くすることが可能である。この場合、支持突部2aの突出分だけ可動部が大きくなってしまうが、軽量になるように形成することで、高次共振に及ぼす悪影響を小さくすることができる。
図8は本発明の参考例3を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図8において、図2に示す参考例1における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
この参考例3は、ワイヤばね5を略L字状に構成し、図5に示す参考例2の固定部材6,6を対物レンズ1の光軸に対して対角位置に配置し、ワイヤばね5の一端部を固定部材6,6の側面部に固定し、他端部を支持突部2aを固定したものである。
ここで、複数のワイヤばね5は、対物レンズ保持部材2の側面近傍ではタンジェンシャル方向を長手方向としているが、可動部のタンジェンシャル方向両側に配置される磁気回路のトラッキング方向における固定部端部側において、略90度屈曲し、固定部材6に取り付けられている。
このように構成することにより、ワイヤばね5の長さをさらに長くすることができるため、フォーカシング,トラッキング動作時の低域感度の低下を防ぐことができる。さらに、図8に示すように、ワイヤばね5は磁気回路を囲むように屈曲されているため、対物レンズ駆動装置を小型化することが可能である。さらに、可動部が、図9(a)に示すノーマル位置の場合からフォーカスオフセットした場合には、図9(b)に示すように可動部の回転は光軸中心で回転するため、スポットの位置は変動せず、スポットの位置の変動に伴う問題の発生を防止できる。
図10は参考例3の変形例1を説明するための対物レンズ駆動装置の要部を示す説明図である。なお、図10において、図8,図9に示す部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
図8に示す構成によれば、ワイヤばね5の軸方向がトラッキング方向の部分では、フォーカシング,トラッキング動作時にトラッキング方向に変動が生じる。このとき図9(a)に示すようにタンジェンシャル方向両側のワイヤばね5が配置されていると、フォーカシング,トラッキング動作を妨げてしまうことになる。
そこで、図10(a)に示すように可動部のタンジェンシャル方向両側のワイヤばねをトラッキング方向において同一の方向に屈曲させることにより、図10(b)に示すようにワイヤばね5のトラッキング方向への変動が同一方向に発生するので、フォーカシング,トラッキング動作による低域感度の低下を防ぐことが可能になる。
図11は本発明の実施形態を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図11において、図9,図10に示す部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
図9に示す構成では、内側のワイヤばね5と外側のワイヤばね5で長さが異なるため、ワイヤばね5の変位量が各ワイヤばね5において若干異なり、ワイヤばね5の配置間隔が狭い場合には隣接したワイヤばね5同士で干渉する可能性もある。
図11に示す本実施形態は、固定部材6の側面を斜面とし、ワイヤばね5の固定端部をずらすことにより、ワイヤばね5の長さを等しくしたものである。
このように構成したことにより、フォーカシング,トラッキング動作による軸方向への変動が隣接したワイヤばね5同士で干渉しないようにすることが可能になる。
図12は本発明の参考例4を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図12において、図1に示す参考例1における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
対物レンズ1を保持する対物レンズ保持部材2はタンジェンシャル方向を長手方向とするワイヤばね5によって固定部材6に対して弾性的に支持されている。このワイヤばね5は対物レンズ1の光軸を中心として一方のみの対角方向に配置されており、フォーカシング方向に離間した2つの平面上に2本ずつ合計4本が平行に配置されている。
対物レンズ保持部材2におけるトラッキング方向両側面にそれぞれ支持突部2c,2dが突設しており、この支持突部2c,2dは可動部中心の両側でかつ対物レンズ1の光軸に対して対称位置に配置されている。支持突部2cは対物レンズ1の光軸を含むトラッキング方向の平面上に配置されており、支持突部2dは対物レンズ保持部材2におけるタンジェンシャル方向両側面と同一面となるように形成されている。そして、支持突部2cにワイヤばね5の端部が接続される。
対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向における両側側面にはフォーカスコイル3およびトラックコイル4が取り付けられている。これらのコイルに対向して駆動用磁石8が配置されている。
ここで可動部をフォーカシング方向からみると、対物レンズ保持部材2の一方の対角方向にワイヤばね5が配置されているが、他方の対角部分である、ワイヤばね5の長手方向延長上にはフォーカスコイル3が配置されている。
駆動用磁石8は、図13に示すように、フォーカシング方向の着磁境界線a,bと、着磁境界線bに連結してL字型を形成するトラッキング方向の着磁境界線cによって分割着磁されている。着磁境界線bは、対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向における両側側面において支持突部2dを含まない領域の中央に対向する部位に配置されており、着磁境界線cは支持突部2dが延在する方向に延びている。さらに、着磁境界線aは着磁境界線bの隣に配置されている。そして、着磁境界線cに対向してフォーカスコイル3が配置され、着磁境界線aに対向してトラックコイル4が配置される。
図14はフォーカスコイル部磁石幅が5mmの場合と6mmの場合とにおける駆動感度を示すものである。加速度電流感度(m/s2/A)は駆動電流に対する出力加速度、加速度電圧感度(m/s2/V)は駆動電圧に対する出力感度をあらわすものである。フォーカスコイル3の有効部を長くすることによる駆動感度の改善具合を仮に計算してみると図14に示すように、感度が高くなっていることがわかる。
このようにすることで、トラッキング方向に磁気回路を広げることができるため(図12の磁気回路拡大分)、推力特性を向上させることが可能である。
また、従来例7のように可動部を片側からのみ支持しているワイヤばね支持方式の対物レンズ駆動装置においてはトラッキング方向に並ぶワイヤばねの間に磁気回路もしくはモータ部分を入れ込まなければならないために十分な推力特性を得ることが難しい場合がある。それに対して、ワイヤばね5の可動部側固定端部は可動部のタンジェンシャル方向略中心近傍に配置されている。このようにすることで、従来例7で固定端部を結ぶ軸を中心として回転しやすかった問題をなくすることができる。
図15は本発明の参考例5を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図12に示す参考例4における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
参考例4がフォーカス,トラック動作のみの2軸対物レンズ駆動装置であったのに対し、参考例5はラジアルチルト方向にも動作可能な3軸対物レンズ駆動装置としたものであり、対物レンズ1を保持する対物レンズ保持部材2はタンジェンシャル方向を長手方向とし、フォーカシング方向に離間した3つの平面上に配置された6本のワイヤばね5によって固定部材6に対して弾性的に支持されている。
その他の構成は参考例4と同一であり、磁気回路がトラッキング方向に長く確保できるため、効率の良いフォーカス駆動モータを構成することが可能となっている。
図16はラジアルチルト差動駆動の駆動力および方向を示す斜視図である。参考例5は、トラッキング方向に離間したフォーカシング推力を逆方向に(もしくは差分で)発生させることでチルト駆動のモーメントを発生させるための2つのフォーカスコイル3,3をタンジェンシャル方向において異なる面に配置することにより、有効長を長くし、推力特性を向上させるものである。したがって、従来例1に対して磁気回路をトラッキング方向に拡大できるため、推力の向上が可能である。
なお、フォーカシング駆動とラジアルチルト駆動を独立で行う場合には、図17,図18に示すように、フォーカスコイル3にラジアルチルトコイル10を重ねて配置し、可動部のタンジェンシャル方向両側側面に逆方向のフォーカシング推力が発生するように構成すればよい。
このように支持ばねの延長上にチルト方向推力発生部(=フォーカシング方向推力発生部)を設け、トラッキング方向に離して配置することにより、作用半径が増大し、大きなトルク(トルクT=作用半径R×推力F)を発生することが可能である。
ところで、参考例5では、チルト方向推力発生部はタンジェンシャル方向にも離間しているため、タンジェンシャル方向のトルクも発生してしまうことが問題となる。そのため、フォーカシング駆動,トラッキング駆動,ラジアルチルト駆動が可能な3軸対物レンズ駆動装置に適用する場合にはこれを避けるために、タンジェンシャルチルト方向の支持剛性をラジアルチルト方向の剛性よりも十分大きくしておく必要がある。そこで、参考例3では、可動部の対角位置に配置されているワイヤばね5はすべてフォーカシング方向に離間して配置してある。
ただし、ラジアルチルト方向にあまり高速で駆動すると、タンジェンシャルチルト方向へのクロスアクションが大きくなってしまう。したがって、参考例5は、ラジアルチルト方向の低周波領域の補正を行うだけであれば、有効な構成である。
また、参考例5を4軸対物レンズ駆動装置とすることも考えられるが、ラジアルチルト方向からタンジェンシャルチルト方向へのクロスアクションが大きいため、タンジェンシャル方向の可動性がよくなるように支持系を変更しても4軸対物レンズ駆動装置としての利用は困難である。
図19は本発明の参考例6を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図12に示す参考例4における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
対物レンズ保持部材2は、タンジェンシャル方向を長手方向とし、フォーカシング方向1つの平面上に配置された8本のワイヤばね5によって固定部材6に対して弾性的に支持されている。
ワイヤばね5はフォーカシング方向からみて、略四角形上の対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向において両側4本ずつ、かつ、ただ一つの対角方向に配置されている。そして、他方の対角部分であるワイヤばね5の長手方向延長上側には支持突部2d,2dが延在しており、トラックコイル4が配置されている。さらに、対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向における両側側面にはフォーカスコイル3が1つずつ取り付けられており、このフォーカスコイル3に重ねて2つのラジアルチルトコイル10,10が可動部中心の両側でかつトラッキング方向に並べて取り付けられている。なお、図19に示す構成によれば、対物レンズ保持部材2、ラジアルチルトコイル10,10、フォーカスコイル3の順で配置されている。そして、これらのコイル3,4,10に対向して駆動用磁石8が配置されている。
駆動用磁石8は、図21に示すように、トラッキング方向の着磁境界線aとフォーカシング方向の着磁境界線bからなるL字状着磁境界線により分割着磁されている。また、着磁境界線a,bの側方はフォーカシング方向の着磁境界線cによって分割着磁されている。そして、駆動用磁石8を配設したとき、着磁境界線bは対物レンズ保持部材2における支持突部2dの付け根の部分に対向し、着磁境界線cは支持突部2dに対向する。
可動部および駆動用磁石8を配設したとき、図21に示すように、駆動用磁石8のフォーカシング方向略中央付近のトラッキング方向の着磁境界線aの両側で互いに反対方向に着磁されている。フォーカスコイル3およびラジアルチルトコイル10は略四角形状をなしており、着磁境界線aを挟むように配置される。特に、ラジアルチルトコイル10は可動部中心のトラッキング方向の両側でかつフォーカスコイル3に重ねて配置されている。フォーカスコイル3およびラジアルチルトコイル10のトラッキング方向に伸びる二辺はそれぞれ互いに反対方向の磁束を有する部分にくるように配置される。フォーカスコイル3およびラジアルチルトコイル10に電流を供給することによりフォーカス推力を発生させることができる。トラッキング駆動はフォーカス駆動の構成をそのまま90度回転させた構成である。
なお、以下、前記各コイル3,4,10と駆動用磁石8とからなる磁気回路において、特に、フォーカシング方向に推力を発生させる部分、すなわちフォーカスコイル4およびラジアルチルトコイル10と駆動用磁石8とによる推力発生部分を、フォーカシング方向推力発生部と称することにする。
図20はフォーカシング方向推力発生部分の磁気回路に対する位置を示す平面図である。各コイル3,4,10および駆動用磁石8によって構成される駆動モータ部分は、図20に示すように、対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向における両側側面に配置されている。ワイヤばね5の延長上にはトラックコイル4および駆動用磁石8からなる磁気回路が配置されており、これら2つの磁気回路は可動部のタンジェンシャル方向両側のトラッキング方向にオフセットして配置されている。
そのため、磁気回路をタンジェンシャル方向からみたとき、図20に示すように、重なる部分とそうでない部分が存在することになる。
ここで、駆動用磁石8の磁束密度分布の不均一や、各コイル3,4,10の形状のばらつき、磁気回路のギャップの不均一等の要因により、各コイル3,4,10で発生する推力にばらつきが生じる。推力ばらつきがある場合に各コイルが可動部の中心に対して端の方にあると作用半径が大きいために、フォーカシング動作を行った時に、非常に大きなトルクを発生し、チルトしてしまうことになる。
フォーカシング方向の推力を、チルト動作を行うことのできる対物レンズ駆動装置として利用する場合、トラッキング方向の異なる位置でフォーカシング推力を反対方向に発生させることでラジアルチルト動作を行い、タンジェンシャル方向で異なる位置でフォーカシング推力を反対方向に発生させることによってタンジェンシャルチルト動作を行うことができる。
ただし、ラジアルチルト動作を行うためのフォーカシング推力がタンジェンシャル方向の異なる位置にあると、タンジェンシャルチルト方向のクロスアクションを発生する。同様にタンジェンシャル動作を行うためのフォーカシング推力がトラッキング方向の異なる位置にあると、ラジアルチルト方向にクロスアクションが発生してしまう。
一方、可動部の中央に対物レンズが配置されている対物レンズ駆動装置においては、駆動部は可動部のタンジェンシャル方向の両側側面に配置されている。すなわち、もともとフォーカシング推力発生部はタンジェンシャル方向には異なる位置に配置されていることになる。
このような構成においてクロスアクションを発生しない構成とするためにはチルトモーメントを発生させるためのフォーカシング駆動力を可動部中心に対してトラッキング方向に対称に配置する必要がある。
そこで参考例6では、可動部を対角方向で支持することで磁気回路が拡大できた分およびオフセットしてしまった分を除き、可動部のタンジェンシャル方向両側に配置される磁気回路が、タンジェンシャル方向で重なる部分をフォーカシング推力発生部としたものである。
図22は参考例6における対物レンズ保持手段にかかる駆動力および方向を示す斜視図である。
フォーカシング方向に駆動力を発生するフォーカスコイル3はトラッキング方向一つの巻回軸で構成され、可動部のタンジェンシャル方向両側に1つずつ配置されている。参考例6では、従来例6や参考例2に対してフォーカスコイル3の有効長(駆動コイルのトラッキング方向の辺の長さ)を大きくとることが可能であるので推力特性を向上させることが可能である。
従来例6や参考例2のようにトラッキング方向に分割し4連で有効長が短い場合と、分割しないで2連で有効長が長い場合とで駆動感度を仮に計算してみると図23のようになる。加速度電流感度(m/s2/A)は駆動電流に対する出力加速度、加速度電圧感度(m/s2/V)は駆動電圧に対する出力感度をあらわすものである。図23に示すように分割しないで2連で有効長が長い場合の方が、良い感度が得られることがわかる。
タンジェンシャルチルト駆動は、タンジェンシャル方向両側の2つのフォーカスコイル3,3の推力の差によって駆動している。すなわち、タンジェンシャル方向両側別系統のフォーカシング方向駆動力を発生する駆動コイルが配置されている。
差動駆動方式はフォーカス駆動信号とタンジェンシャルチルト駆動信号とから2系統の駆動コイルに必要な駆動信号を生成する必要があるため、制御回路としては複雑になってしまうが、コイル構成としては簡単であるため、対物レンズ駆動装置の組付け性、およびコストの改善には有効である。
またフォーカシング推力発生部も可動部中心に配置されているため、フォーカシング駆動によるラジアルチルト方向へのクロスアクションも小さい構成であるといえる。
ラジアルチルト方向駆動力を発生するラジアルチルトコイル10はトラッキング方向に2つ並んで配置されている。トラッキング方向に並ぶ2つのラジアルチルトコイル10,10ではフォーカシング方向略反対方向の駆動力を発生させている。これを可動部のタンジェンシャル方向両側に配置している。
参考例6のラジアルチルト駆動モータの感度は参考例5に対しては比較的小さい。これは作用半径が小さいからであるが、ラジアルチルト動作でタンジェンシャルチルト方向へのクロスアクションを発生しないようにするためには参考例6のようにする方が好ましい。参考例6では理論上(ばらつきを除外すれば)ラジアルチルト駆動によるタンジェンシャルチルト方向へのクロスアクションを発生することはない。
このように、フォーカスコイル3とは別にラジアルチルトコイル10を配置することでフォーカシング駆動とラジアルチルト駆動を独立して駆動、制御することができる。
図24は参考例6の変形例1の要部構成および対物レンズ保持手段にかかる駆動力および方向を示す斜視図である。図24に示す変形例1は図22に示す構成において、フォーカスコイル3とラジアルチルトコイル10,10の配置を逆にした以外は、同じ構成であるが、変形例1においてはラジアルチルトコイル10,10をフォーカシング駆動およびラジアルチルト駆動に用い、タンジェンシャルチルト駆動を2つのフォーカスコイル3,3の推力差によって行うものである。
すなわち、フォーカシング方向に駆動力を発生する別系統の駆動コイル(ラジアルチルトコイル10)が、トラッキング方向に2つ並んで配置されており、この駆動コイルはタンジェンシャル方向両側側面に配置されており、タンジェンシャル方向に見て重なる部分で同一の推力を発生するようになっている。この2つのフォーカシング方向の駆動コイルの推力の和によりフォーカシング動作を行い、両者の駆動力の差によりラジアルチルト動作を行うものである。
ただし、この構成ではフォーカス駆動コイルを二対(ラジアルチルトコイル10,10)で構成することになるため、有効長が小さくなり効率的ではない。
タンジェンシャルチルト駆動は、可動部のタンジェンシャル方向両側のフォーカスコイル3,3にフォーカシング方向反対に推力を発生するようにして独立に駆動している。
図25は参考例6の変形例2の要部構成および対物レンズ保持手段にかかる駆動力および方向を示す斜視図である。図25に示す変形例2は図22に示す構成と基本的には同じであるが、ラジアルチルト駆動およびタンジェンシャルチルト駆動がともに独立駆動である点で異なる。
フォーカシング方向駆動力を発生するフォーカスコイル3は可動部のタンジェンシャル方向両側で別系統の駆動コイルである。また、タンジェンシャル方向に並ぶ2つのフォーカスコイル3,3はフォーカシング方向略反対方向の駆動力を発生させている。
ラジアルチルト方向駆動力を発生するラジアルチルトコイル10,10はトラッキング方向に2つ並んで配置されている。ラジアルチルトコイル10,10ではフォーカシング方向略反対方向の駆動力を発生させている。ラジアルチルトコイル10,10は可動部のタンジェンシャル方向両側に配置されている。
以上、チルト動作を行うためのモータ構成をいくつか説明したが、要求特性にもっとも合うように上述した構成を組合せて4軸駆動対物レンズ駆動装置を構成すれば良い。
このように、参考例5に対して参考例6はフォーカシング駆動によるチルト方向へのクロスアクションを小さくすることが可能である。また、ラジアルチルト駆動によるタンジェンシャルチルト方向へのクロスアクションが小さくすることが可能である。さらに、クロスアクションを低減することによりタンジェンシャルチルト方向の支持剛性を小さくしてもよくなるので、可動性を向上させ、タンジェンシャルチルト方向の駆動を行うことで、4軸対物レンズ駆動装置を構成したものである。
図26は本発明の参考例7を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図である。なお、図19に示す参考例6における部材と同一の部材、または同一機能の部材については同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
参考例7は、ワイヤばね5の長手方向延長上の磁気回路部分を閉磁路にしたものである。
このように構成したことにより、ワイヤばね5の長手方向延長上の磁気回路部分の磁束密度を著しく増加させることができるので、効率よく推力を増加させることができる。
図27は本発明の実施形態の対物レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置を説明するための概略構成図であって、31は光源、32はコリメートレンズ、33はビームスプリッタ、34は立上げミラー、35は集光レンズ、36はシリンドリカルレンズ、37は受光光学手段としての受光素子、38は光ディスクであって、39が前記実施形態の対物レンズ駆動装置である。
光源31から出射した拡散光は、コリメートレンズ32によって略平行光になる。その後、ビームスプリッタ33を通り、立上げミラー34により折り曲げられる。立上げミラー34によって折り曲げられた平行光は対物レンズ駆動装置39の対物レンズ1に入射し、光ディスク38上に光スポットSを形成する。光ディスク38からの光スポットSの反射光は、ビームスプリッタ33によって偏向されて、集光レンズ35とシリンドリカルレンズ36を通った後、受光素子37に入射する。
このように、光ディスク38上の光スポットSの反射光が受光素子37に入射するように配置しておく。受光素子37で得られた信号を基にして、演算処理部などの対物レンズ制御手段(図示せず)によって制御信号を生成し、対物レンズ駆動装置39に出力することにより、フォーカスコイル,トラックコイルを駆動し、光ディスク38に対して対物レンズ1を追従させることにより光ディスク38に記録された情報を再生することができる。さらに、図示しないチルトセンサにより光ディスク28の傾きを検出し、それに応じた電流を対物レンズ駆動装置39のチルトコイル(図示せず)に流すことにより、光ディスク38に対して対物レンズ1を傾斜させてチルト補正を行う。
ここで、対物レンズ駆動装置39は前記実施形態の構成の対物レンズ駆動装置であって、既述したように、この対物レンズ駆動装置39を用いることによって、面ぶれ,偏心,反りの大きな光ディスク38を高速に回転させた場合でも、対物レンズ1を光ディスク38に対して追従させることが可能になる。すなわち良好な信号を高速で記録再生することができる。
図28(a)は前記実施形態の対物レンズ駆動装置を備えた図27の光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置を説明するための概略構成を示す平面図、図28(b)は図28(a)の光ディスク装置の正面図であり、40は図27にて説明した光ピックアップ装置であって、光ピックアップ装置40は、光源31,コリメートレンズ32,シリンドリカルレンズ36,受光素子37,対物レンズ駆動装置39などから構成されている。
さらに、41は光ディスク装置の筐体、42は防振ゴム、43は光ディスク38の回転駆動手段であるスピンドルモータ、44はシークレール、45はピックアップモジュールベースであって、光ディスク装置の筐体41に防振ゴム42を介してピックアップモジュールベース45が設置されている。ピックアップモジュールベース45には光ディスク38を回転駆動させるスピンドルモータ43が設置されている。また、ピックアップモジュールベース45に取り付けられたシークレール44には光ピックアップ装置40が搭載されている。光ピックアップ装置40は、図示しないシークモータなどからなるピックアップ駆動手段によってシークレール44上を光ディスク28の半径方向に移動駆動される。
ここで図27,図28に示す光ディスク装置に搭載されている光ピックアップ装置40は既述した対物レンズ駆動装置を搭載した構成の光ピックアップ装置であって、面ぶれ,偏心,反りの大きな光ディスク38を高速に回転させた場合でも、対物レンズ1を光ディスク38に対して追従させることが可能である。したがって、本光ディスク装置は記録/再生を良好に、しかも高速に行うことが可能になる。