JP4124899B2 - 対物レンズ駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ等の光源から出射される光ビームを光ディスクに集光し、情報を記録再生する光学式記録再生装置等に用いられる対物レンズ駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、LDプレーヤやCDプレーヤ等の光ディスク記録再生装置においては、光学ヘッドから光ディスクへ向けてレーザー光等の光ビームを出射したり、光ディスクからの反射光や透過光を該光学ヘッドで受光することによって、光ディスクの記録面に対する信号の記録や再生を行う。
【0003】
光ヘッドにおいては、光を入出力するための対物レンズを光ディスクに対向配置している。この対物レンズをアクチュエータによって光ディスクの半径方向に移動させることによって、光ディスクのトラックをトレースしている。
【0004】
また、光ディスクの反りを原因とする該光ディスク表面の上下動に応じて対物レンズを上下に移動させて、対物レンズのフォーカス位置を調節したり、光ディスクの偏芯を原因とする対物レンズによるトラッキングのずれを補正したり、光ディスクと対物レンズの相対的な傾き角を調節するために、対物レンズ駆動装置によって対物レンズを移動させている。
【0005】
光学ヘッドから出射された光ビームの光軸が光ディスクの記録面に対して傾いていると光学的な収差が発生し、これが原因となって再生信号のレベルが低下したり、光学ヘッドのフォーカスを制御するフォーカスサーボの駆動信号あるいはトラッキングを制御するトラッキングサーボの駆動信号にオフセットやクロストーク等が発生する。特に、近年に登場したDVD等の高密度光ディスクの記録再生装置においては、光ビームの光軸の傾きが僅かでも発生すると問題になるので、光ビームの光軸を極力高精度に維持することが要望されている。従って、対物レンズ駆動装置においても対物レンズの傾きを高精度で制御する必要がある。
【0006】
図9は、従来の対物レンズ駆動装置の構成を示す斜視図である。また、図10は、図9の装置におけるレンズホルダーを示す斜視図である。
【0007】
図9及び図10において、フォーカシング方向Zは、光ディスクの記録面に対する垂直方向に一致し、トラッキング方向Xは、該光ディスクの半径方向に一致し、接線方向Yは、光ディスクの接線方向であって、フォーカシング方向Z及びトラッキング方向Xに垂直な方向である。
【0008】
レンズホルダー102の中央上部には、対物レンズ103が配置されている。レンズホルダー102の側壁周囲には、フォーカシング方向Zの軸周りに巻回されたフォーカシングコイル106が配置されている。レンズホルダー102の2つの側部には、トラッキング方向Xの軸周りに巻回された1組のトラッキングコイル107が配置され、各トラッキングコイル107間に対物レンズ103が位置決めされている。
【0009】
レンズホルダー102には、4本の弾性支持部材105の一端が接続されている。また、各弾性支持部材105が支持ホルダー104のそれぞれの孔を貫通し、各弾性支持部材105の他端が小プリント基板111に接続されている。
【0010】
固定基台101に支持ホルダー104が固定され、支持ホルダー104にプリント基板111が固定され、固定基台101、支持ホルダー104及び小プリント基板111が一体化されている。4本の弾性支持部材105は、固定基台101に対してレンズホルダー102をフォーカシング方向Z及びトラッキング方向Xに移動可能に片持ち支持する。
【0011】
1組のマグネット108a及び108bは、接線方向Yに磁化方向を持ち、相互に同じ極を対向させて固定基台101に配置されている。各マグネット108a,108b間にレンズホルダー102が位置決めされる。1組の磁性体よりなる磁気遮蔽板109は、トラッキング方向Xに直交した状態でレンズホルダー102の両側に配置され、固定基台101に立設されている。
【0012】
次に、図11A,B,Cを用いて、図9の対物レンズ駆動装置の動作を説明する。図11A〜Cは、図9のレンズホルダー102近傍を簡略化して示す平面図である。
【0013】
図11Aにおいて、各マグネット108a,108bの磁界中にあるフォーカシングコイル106に電流を流すと、フォーカシングコイル106にフォーカシング方向Zの力が作用し、レンズホルダー102がフォーカシング方向Z(紙面に対して垂直方向)に移動する。このとき、図10に示す様にフォーカシングコイル106の対向する2辺106aに作用する力Faの方向とフォーカシングコイル106の他の2辺106b,106cに作用する各力Fb,Fcの方向が逆向きになるものの、各辺106aの方が他の各辺106b,106cよりも各マグネット108a,108bに近く、各辺106aに交差する磁束が他の各辺106b,106cに交差する磁束よりも多いので、各辺106aに作用する力Faの方が他の各辺106b,106cに作用する各力Fb,Fcよりも強い。このため、レンズホルダー102がフォーカシングコイル106の各辺106aに作用する力Faの方向に移動する。
【0014】
同様に図11Bにおいて、各マグネット108a,108bの磁界中にあるトラッキングコイル107に電流を流すと、トラッキングコイル107にトラッキング方向X(紙面に対して垂直方向)の力が作用し、レンズホルダー102がトラッキング方向Xに移動する。このとき、トラッキングコイル107の対向する2辺107aに作用する力の方向とトラッキングコイル107の他の2辺107bに作用する力の方向が逆向きになるものの、各辺107aの方が他の各辺107bよりも各マグネット108a,108bに近いので、各辺107aに作用する力の方が他の各辺107bに作用する力よりも強い。このため、レンズホルダー102がトラッキングコイル107の各辺107aに作用する力の方向に移動する。
【0015】
ところで、図11Aに示す様にレンズホルダー102をトラッキング方向Xに移動していない状態では、フォーカシングコイル106の各辺106b,106cに作用する各力Fb,Fcが同一であり、レンズホルダー102をフォーカシング方向に移動しても、レンズホルダー102に傾きが発生しない。
【0016】
しかしながら、図11Cに示す様にレンズホルダー102をトラッキング方向Xに移動した状態では、レンズホルダー102をフォーカシング方向に移動すると、各辺106b,106cに作用する各力Fb,Fcに差違が生じるため、レンズホルダー102に傾きが発生する。
【0017】
図11Cに示す様にレンズホルダー102がトラッキング方向Xに移動している状態では、部分拡大図Dに示すフォーカシングコイル106の辺106bに対する磁束Bbの角度と、部分拡大図Eに示す辺106cに対する磁束Bcの角度が相互に異なる。従って、磁束Bbのうちの辺106bに直交するベクトル成分Bybの大きさと、磁束Bcのうちの辺106cに直交するベクトル成分Bycの大きさが異なり、|Byb|<|Byc|となる。このため、フォーカシングコイル106に電流を流すと、辺106bの力Fbと辺106cの力Fcに差違が生じ、Fb<Fcとなる。これらの力の差Fb−Fcによって、レンズホルダー102が接線方向Yの軸周りに回転し、対物レンズ103に傾きが生じる。
【0018】
フォーカシングコイル106のトラッキング方向Xの移動距離が長い程、辺106bに対する磁束Bbの角度と辺106cに対する磁束Bcの角度の差が大きくなり、各力Fb,Fcの差が大きくなって、対物レンズ103の傾きが大きくなる。
【0019】
このような対物レンズ103の傾きは、フォーカシングコイル106の各辺106b,106cに対するそれぞれの磁束Bb,Bcの角度が異なるためであり、各マグネット108a,108bから磁気遮蔽板109に至る範囲で、各マグネット108a,108bの磁束が大きく曲がっていることを原因とする。
【0020】
この様な対物レンズの傾きを解消するため、各種の方法が提案されている。例えば特開平7−240031号公報には、対向ヨークの上端部をマグネットの上端部より高くすることにより、フォーカシング方向及びトラッキング方向への移動量に比例したモーメントをレンズホルダーに発生させ、レンズホルダーの移動方向及び移動量に関わりなく、重心並びに支持中心と駆動中心とのずれを原因とするレンズホルダーのモーメントを常に打ち消し、これによって対物レンズの傾きをなくし、光学的な収差及び焦点ずれを抑制し、情報の正確な記録再生を可能にするという技術が開示されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
この様に図9の対物レンズ駆動装置においては、レンズホルダー102をトラッキング方向Xに移動した状態では、レンズホルダー102をフォーカシング方向Zに移動すると、各辺106b,106cに作用する各力Fb,Fcに差違が生じ、レンズホルダー102に傾きが発生する。しかも、トラッキング方向Xでのフォーカシングコイル106の移動距離が長い程、対物レンズ103の傾きが大きくなる。
【0022】
この結果、対物レンズ103により光ディスクの記録面に集光されたスポットに光学的な収差が発生したり、該記録面に対する焦点の位置ずれが発生し、該記録面に信号を正確に記録することができなったり、該記録面からの再生信号が劣化した。
【0023】
また、上記特開平7−240031号公報においては、対向ヨークがレンズホルダーを貫通するため、レンズホルダーの形状が拡大し、レンズホルダーの重量が増大する。レンズホルダーの重量が増大すると、光ディスクの記録面のぶれや偏心に追従するためのレンズホルダーの加速度感度が低下したり、コイルとレンズホルダーの接触面に過大な負荷が加わり、コイルからレンズホルダーへの力の伝達効率が悪くなり、対物レンズの周波数応答特性が悪化する。
【0024】
また、対向ヨークと背面ヨークを下方で連結し、かつ対向ヨークと背面ヨークをマグネットより高くするため、フォーカシング方向の寸法が増大し小型化、薄型化が非常に困難である。
【0025】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、フォーカシング方向への移動時に対物レンズが傾かず、また対物レンズの周波数応答特性が良好な対物レンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記従来の課題を解決するために、本発明の対物レンズ駆動装置は、光ディスクに対向配置され、該光ディスクに対して垂直方向の光軸を有する対物レンズと、前記対物レンズを保持するホルダー部と、前記ホルダー部を少なくとも前記垂直方向及び前記光ディスクのラジアル方向に移動可能に支持する支持部と、前記ホルダー部に設けられ、前記垂直方向の軸周りに巻回されたフォーカシングコイルと、前記フォーカシングコイルのタンジェンシャル方向に沿った辺とラジアル方向に沿った辺とで横切るように磁束を発生させる磁界発生部とを備え、前記磁界発生部は、前記光ディスクのタンジェンシャル方向に沿って配列され、相互に対向する一対の磁石を備え、前記フォーカシングコイルは、前記各磁石間に配置され、前記各磁石の磁界の強さを相互に異ならせることによって、前記フォーカシングコイルの前記タンジェンシャル方向に沿った辺と横切る場所においてほぼ直線状の磁束を形成する。
【0028】
1実施形態では、前記各磁石の長さを前記光ディスクのラジアル方向で異ならせることによって、該各磁石の磁界の強さを相互に異ならせている。
【0029】
1実施形態では、前記各磁石の一方の外側面を覆う第1壁、及び該各磁石間のスペース両側を覆う第2壁と第3壁からなる磁性体を更に備え、該磁性体の該第1壁、該第2壁及び該第3壁を一体化している。
【0030】
1実施形態では、前記磁性体は、前記各磁石の一方の位置決め、及び該各磁石間のスペース両側の電磁シールドを共に果たす。
【0033】
1実施形態では、前記各磁石の厚みを前記光ディスクのタンジェンシャル方向で異ならせることによって、該各磁石の磁界の強さを相互に異ならせている。
【0034】
1実施形態では、前記各磁石は、相互に異なるそれぞれの磁気特性の材質からなる。
【0035】
本発明によれば、磁界発生部は、垂直方向に直行する方向でフォーカシングコイルに交差する磁束をほぼ直線状に発生している。従って、トラッキング方向(垂直方向に直行する方向)にフォーカシングコイルが直線移動しても、フォーカシングコイルに対する磁束の角度が変化しない。このため、フォーカシングコイルに一定電流を流した状態では、トラッキング方向でのフォーカシングコイルの位置にかかわらず、フォーカシングコイルに作用する垂直方向の力が変化しない。これによって、トラッキング方向の移動に伴う対物レンズの傾きが防止される。また、ホルダー部を小型化することができ、対物レンズの周波数応答特性の向上を図ることができる。更に、不要な垂直方向の力が発生するフォーカシングコイルの部位においては、直線状の磁束を斜めに交差させれば、該不要な垂直方向の力を弱めることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明の対物レンズ駆動装置の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1の装置におけるレンズホルダーを示す斜視図である。
【0038】
図1及び図2において、フォーカシング方向Zは、光ディスク21の記録面に対する垂直方向に一致し、トラッキング方向Xは、該光ディスク21の半径方向に一致し、接線方向Yは、光ディスク21の接線方向であって、フォーカシング方向Z及びトラッキング方向Xに垂直な方向である。
【0039】
レンズホルダー2の中央上部には、対物レンズ3が配置されている。レンズホルダー2の側壁周囲には、フォーカシング方向Zの軸周りに巻回されたフォーカシングコイル6が配置されている。レンズホルダー2の2つの側部には、トラッキング方向Xの軸周りに巻回された1組のトラッキングコイル7が配置され、各トラッキングコイル7間に対物レンズ3が位置決めされている。
【0040】
レンズホルダー2には、4本の弾性支持部材5の一端が接続されている。また、各弾性支持部材5が支持ホルダー4のそれぞれの孔(図示せず)を貫通し、各弾性支持部材5の他端が小プリント基板12に接続されている。
【0041】
固定基台1に支持ホルダー4が固定され、支持ホルダー4に小プリント基板12が固定され、固定基台1、支持ホルダー4及び小プリント基板12が一体化されている。4本の弾性支持部材5は、固定基台1に対してレンズホルダー2をフォーカシング方向Z及びトラッキング方向Xに移動可能に片持ち支持する。
【0042】
第1マグネット8は、接線方向Yに磁化方向を持ち、一方の磁極面をレンズホルダー2に向けている。第1マグネット保持部材10は、磁性体からなり、第1マグネット8の他方の磁極面に接した状態で第1マグネット8を支持する。第1マグネット保持部材10は、支持ホルダー4によって支持される。
【0043】
第2マグネット9は、接線方向Yに磁化方向を持ち、一方の磁極面をレンズホルダー2に向けている。第2マグネット保持部材11は、磁性体からなり、第2マグネット9の他方の磁極面に接した状態で第2マグネット9を支持する。第2マグネット保持部材11は、固定基台1に固定される。
【0044】
第2マグネット保持部材11は、フォーカシング方向から見て略U字型に形成されており、第1及び第2マグネット8,9間のスペース両側を覆っている。第2マグネット保持部材11は、磁性体であるから、第1及び第2マグネット8,9間のスペース両側を電磁シールドする役目を果たす。これは、第1及び第2マグネット8,9の磁界が光ディスク記録再生装置の他の部位に与える影響を阻止すると共に、光ディスク記録再生装置のモータ等の磁界が第1及び第2マグネット8,9間のスペースの磁界に与える影響を阻止するためである。
【0045】
第2マグネット9は、第1マグネット8よりもトラッキング方向Xに長く、その両端が第2マグネット保持部材11に接している。第1及び第2マグネット8,9の相互に対向する各磁極面は同じ極を持ち、該各磁極面間にレンズホルダー2が配置されている。
【0046】
次に、図3A,B,Cを用いて、図1の対物レンズ駆動装置の動作を説明する。図3A〜Cは、図1のレンズホルダー2近傍を簡略化して示す平面図である。
【0047】
まず、図3Aから明らかな様に第2マグネット9が第1マグネット8よりもトラッキング方向Xに長く、第2マグネット9の両端が第2マグネット保持部材11の各側壁11a,11bに接している。長さの違いから第2マグネット9の磁力が第1マグネット8の磁力よりも強く、このために第2マグネット9の磁束が該第2マグネット9から第2マグネット保持部材11の各側壁11a,11bへと略直線状に形成されると共に、第1マグネット8の磁束が第2マグネット保持部材11の各側壁11a,11bへと屈曲して形成されている。また、第2マグネット9の磁束密度が第1マグネット8の磁束密度よりも高くなっている。
【0048】
さて、図3Aにおいて、第1及び第2マグネット8,9の磁界中にあるフォーカシングコイル6に電流を流すと、フォーカシングコイル6にフォーカシング方向Zの力が作用し、レンズホルダー2がフォーカシング方向Z(紙面に対して垂直方向)に移動する。このとき、図2に示す様にフォーカシングコイル6の対向する2辺6aに作用する力Faの方向とフォーカシングコイル6の他の2辺6b,6cに作用する各力Fb,Fcの方向が逆向きになるものの、各辺6aの方が他の各辺6b,6cよりも第1及び第2マグネット8,9に近いので、各辺6aに作用する力Faの方が他の各辺6b,6cに作用する各力Fb,Fcよりも強い。このため、レンズホルダー2がフォーカシングコイル6の各辺6aに作用した力Faの方向に移動する。
【0049】
また、図3C中の部分拡大図D,Eに示す様に第2マグネット9の磁束Bb,Bcがフォーカシングコイル6の各辺6b,6cに対して斜めに交差するので、磁束Bbのうちの辺6bに直交するベクトル成分Bybと磁束Bcのうちの辺6cに直交するベクトル成分Bycが小さくなり、辺6bの力Fbと辺6cの力Fcも小さくなる。このため、各力Fb,Fcによって相殺される力Faの比率が小さくなり、レンズホルダー2を各辺6aに作用した力Faの方向に効率的に移動することができる。
【0050】
図3Bにおいて、第1及び第2マグネット8,9の磁界中にあるトラッキングコイル7に電流を流すと、トラッキングコイル7にトラッキング方向X(紙面に対して垂直方向)の力が作用し、レンズホルダー2がトラッキング方向Xに移動する。このとき、トラッキングコイル7の対向する2辺7aに作用する力の方向とトラッキングコイル7の他の2辺7bに作用する力の方向が逆向きになるものの、各辺7aの方が他の各辺7bよりも第1及び第2マグネット8,9に近いので、各辺7aに作用する力の方が他の各辺7bに作用する力よりも強い。このため、レンズホルダー2がトラッキングコイル7の各辺7aに作用した力の方向に移動する。
【0051】
次に、図3Cに示す様にレンズホルダー2がトラッキング方向Xに移動している状態で、更にフォーカシングコイル6に電流を流して、レンズホルダー2をフォーカシング方向Zの方向に移動させる。
【0052】
従来は、図11C中の部分拡大図D,Eに示す様にフォーカシングコイル106の各辺106b,106cに対するそれぞれの磁束Bb,Bcの角度が相互に異なるので、フォーカシングコイル106に接線方向Yの軸周りの回転力が加わり、対物レンズ103が傾いた。
【0053】
これに対して本実施形態では、先に述べた様に第2マグネット9の磁束が該第2マグネット9から第2マグネット保持部材11の各側壁11a,11bへと略直線状に形成されているので、図3中の部分拡大図Dに示すフォーカシングコイル6の辺6bに対する磁束Bbの角度と部分拡大図Eに示す辺6cに対する磁束Bcの角度間に殆ど差がなく、該各角度がほぼ一致する。従って、磁束Bbのうちの辺6bに直交するベクトル成分Bybの大きさと、磁束Bcのうちの辺6cに直交するベクトル成分Bycの大きさがほぼ一致し、|Byb|=|Byc|となる。
【0054】
このため、フォーカシングコイル6に電流を流すと、辺6bの力Fbと辺6cの力Fcが均衡し、レンズホルダー2が接線方向Yの軸周りに回転することなく、対物レンズ3がフォーカシング方向Zに並行移動する。
【0055】
先に述べた様に第1マグネット8の磁束が第2マグネット保持部材11の各側壁11a,11bへと屈曲して形成されているため、第1マグネット8の磁束については、フォーカシングコイル6の辺6bに対する磁束の角度と辺6cに対する磁束の角度間に差違が生じ、フォーカシングコイル6に電流を流したときには該各角度の差違に応じて辺6bの力と辺6cの力に差違が生じる。しかしながら、第2マグネット9の磁束密度が第1マグネット8の磁束密度よりも高いため、第1マグネット8の磁束に基づく該各力の差違は、第2マグネット9の磁束に基づく各力Fb,Fcと比較して十分に小さく、光ディスク21に対する信号の記録及び再生に悪影響を及ぼす程に対物レンズ3を傾けるものではない。
【0056】
この様に本実施形態においては、長さの違いから第2マグネット9の磁力が第1マグネット8の磁力よりも強く、第2マグネット9の磁束が略直線状に形成され、フォーカシングコイル6の各辺6b,6cに対して斜めに交差するので、該各辺6b,6cの各力Fb,Fcが小さくなり、フォーカシングコイル6の各辺6aの力Faの損失を低減することができ、レンズホルダー2を力Faの方向に効率的に移動することができる。また、レンズホルダー2がトラッキング方向Xに移動しても、フォーカシングコイル6の辺6bに対する磁束Bbの角度と辺6cに対する磁束Bcの角度間に殆ど差が生じないので、レンズホルダー2がフォーカシング方向Zに移動しても対物レンズ3が傾かずに済む。また、レンズホルダー2を小型軽量化して、光ディスク21の面ぶれや偏心などに追従するためのレンズホルダー2の加速度感度の向上を図ることができ、光ディスク記録再生装置の高倍速化や低消費電力化を図ることができる。また、磁気回路が簡単なため対物レンズ駆動装置の小型化や低コスト化が可能である。
【0057】
図4は、フォーカシングコイルの変形例を示している。図4において、フォーカシングコイル6Aは、各辺6aが平行であって、各辺6b,6cが斜めに傾いた略台形状であって、該フォーカシングコイル6A並びに対物レンズ3の略中央を通るトラッキング方向Xの軸x1に対して非対称である。この場合、第2マグネット9の磁束が各辺6b,6cに対して更に斜めに傾くので、部分拡大図Dに示す磁束Bbのうちの辺6bに直交するベクトル成分Bybと部分拡大図Eに示す磁束Bcのうちの辺6cに直交するベクトル成分Bycが更に小さくなり、辺6bの力Fbと辺6cの力Fcが更に小さくなる。この結果、レンズホルダー2を各辺6aに作用した力Faの方向に更に効率的に移動することができる。また、辺6bの力Fbと辺6cの力Fcが共に小さくなれば、力Fbと力Fcの差も小さくなるので、対物レンズ3の傾きが更に抑制される。
【0058】
図5は、トラッキングコイルの変形例を示している。図5において、トラッキングコイル7Aは、各辺7aが平行であって、各辺7bが斜めに傾いた略台形状であって、該トラッキングコイル7A並びに対物レンズ3の略中央を通るフォーカシング方向Zの軸z1に対して非対称である。この場合、第2マグネット9の磁束が各辺7bに対して更に斜めに傾くので、図4のフォーカシングコイル6Aと同様に、各辺7bに直交する磁束のベクトル成分が小さくなり、各辺7bの力Fbが小さくなる。この結果、レンズホルダー2を各辺7aに作用した力Faの方向に更に効率的に移動することができる。
【0059】
図6は、第1及び第2マグネットの変形例を示している。図6において、第1マグネット8Aと第2マグネット9Aは、トラッキング方向Xの長さが相互に一致し、接線方向Yの厚さが相互に異なり、第2マグネット9Aの方が厚い。この厚みの違いから第2マグネット9Aの磁力が第1マグネット8Aの磁力よりも強く、このために第2マグネット9Aの磁束が該第2マグネット9Aから第2マグネット保持部材11の各側壁11a,11bへと略直線状に形成される。
【0060】
また、第1マグネットと第2マグネットの形状及び寸法を同一にし、第1及び第2マグネットとして、相互に異なるそれぞれの磁気特性の材質のものを適用しても構わない。例えば、第2マグネットを保磁力の大きな希土類鉄磁石から形成すると共に、第1マグネットを保磁力の小さなフェライトマグネットから形成し、第1及び第2マグネット間に磁力の差違を設定しても構わない。
【0061】
更に、第1マグネットと第2マグネットの磁化方向を変更することによって、マグネットの直線状の磁束がフォーカシングコイル6の各辺6b,6cに交差する様にしても構わない。
【0062】
また、トラッキングコイル7は、トラッキング方向Xの軸周りに巻回され、レンズホルダー2に直接巻回されているが、マグネットの磁化方向の軸周りに巻回されたリング状のコイルを、マグネットに対向するレンズホルダー2の端面に固定しても、レンズホルダー2をトラッキング方向に移動させることができる。
【0063】
図7はレンズホルダー2及びフォーカシングコイル6の断面を示し、図7中のAは部分拡大図である。図7に示す様に、フォーカシングコイル6が巻回されたレンズホルダー2の側壁に多数の溝2aを形成している。これらの溝2aの内周面は、フォーカシングコイル6の線材の外周と略同等の曲率を有し、該各溝2aにフォーカシングコイル6の線材が入り、フォーカシングコイル6とレンズホルダー2との接触面積が拡大される。これによって、レンズホルダー2とフォーカシングコイル6が相互に確実に固定され、フォーカシングコイル6に作用した力Faがレンズホルダー2に正確に伝達される。この結果、フォーカシングコイル6に流れる駆動電流に応答して、対物レンズ3が正確に変位し、かつ該変位の位相特性が安定し、外乱等の影響を受け難くなる。
【0064】
図8A,Bは、レンズホルダー2及びフォーカシングコイル6の断面を示している。
【0065】
図8A,Bに示す様に、フォーカシングコイル6が巻回されるレンズホルダー2の側壁2bを凹状に形成する。これによってマグネットの磁束密度の高い領域にフォーカシングコイル6を密集させることができる。この結果、レンズホルダー2を移動させるための力Faを効率よく発生することができ、レンズホルダー2の加速度感度を向上させることができ、光ディスク記録再生装置の高倍速化や低消費電力化を図ることができる。
【0066】
トラッキングコイルが巻回される側壁に多数の溝を形成したり、該側壁を凹状に形成しても、フォーカシングコイルと同様の効果を得ることができる。
【0067】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、多様に変形することができる。例えば、4本の弾性支持部材よってレンズホルダーを支持しているが、レンズホルダーと固定基台間に複数の板バネを平行に掛け渡して、レンズホルダーを移動可能に支持したり、他の機構によってレンズホルダーを移動可能に支持しても良い。フォーカシングコイルに交差する磁力線を直線状にするために、マグネットの形状や配置位置、マグネットの磁力、及びマグネットの磁化方向等を適宜に組み合わせて設定しても構わない。
【0068】
【発明の効果】
以上説明した様に本発明によれば、磁界発生部は、垂直方向に直行する方向でフォーカシングコイルのタンジェンシャル方向に沿った辺と横切る場所において磁束をほぼ直線状に発生している。従って、トラッキング方向(垂直方向に直行する方向)にフォーカシングコイルが直線移動しても、フォーカシングコイルに対する磁束の角度が変化しない。このため、フォーカシングコイルに一定電流を流した状態では、トラッキング方向でのフォーカシングコイルの位置にかかわらず、フォーカシングコイルに作用する垂直方向の力が変化しない。これによって、トラッキング方向の移動に伴う対物レンズの傾きが防止される。この結果、対物レンズにより光ディスクの記録面に集光されたスポットに光学的な収差が発生せずに済み、該記録面に対する焦点の位置ずれが発生せず、該記録面に信号を正確に記録することができ、信号を該記録面から正確に再生することができる。
【0069】
また、不要な垂直方向の力が発生するフォーカシングコイルの部位においては、直線状の磁束を斜めに交差させることにより、該不要な垂直方向の力を弱めることができる。
【0070】
更に、ホルダー部を小型化することができるため、対物レンズの周波数応答特性の向上を図ったり、光ディスクの面ぶれや偏心などに追従するためのホルダー部の加速度感度の向上を図ったり、光ディスク記録再生装置の高倍速化や低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対物レンズ駆動装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の装置におけるレンズホルダーに作用する力を示す斜視図である。
【図3A】図1の装置におけるフォーカスコイル近傍を簡略化して示す平面図である。
【図3B】図1の装置におけるトラッキングコイル近傍を簡略化して示す側面図である。
【図3C】図1の装置におけるフォーカスコイルが移動した状態を示す平面図である。
【図4】図1の装置におけるフォーカシングコイルの変形例を示す平面図である。
【図5】図1の装置におけるトラッキングコイルの変形例を示す平面図である。
【図6】図1の装置における第1及び第2マグネットの変形例を示す平面図である。
【図7】図1の装置におけるレンズホルダー及びフォーカシングコイルの変形例を示す断面図である。
【図8A】図1の装置におけるレンズホルダー及びフォーカシングコイルの他の変形例を示す断面図である。
【図8B】図1の装置におけるレンズホルダー及びフォーカシングコイルの別の変形例を示す断面図である。
【図9】従来の対物レンズ駆動装置の構成を示す斜視図である。
【図10】図9の装置におけるレンズホルダーに作用する力を示す斜視図である。
【図11A】図9の装置におけるフォーカスコイル近傍を簡略化して示す平面図である。
【図11B】図9の装置におけるトラッキングコイル近傍を簡略化して示す側面図である。
【図11C】図9の装置におけるフォーカスコイルが移動した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 固定基台
2 レンズホルダー
3 対物レンズ
4 支持ホルダー
5 弾性支持部材
6 フォーカシングコイル
7 トラッキングコイル
8 第1マグネット
9 第2マグネット
10 第1マグネット保持部材
11 第2マグネット保持部材
12 小プリント基板
Claims (6)
- 光ディスクに対向配置され、該光ディスクに対して垂直方向の光軸を有する対物レンズと、
前記対物レンズを保持するホルダー部と、
前記ホルダー部を少なくとも前記垂直方向及び前記光ディスクのラジアル方向に移動可能に支持する支持部と、
前記ホルダー部に設けられ、前記垂直方向の軸周りに巻回されたフォーカシングコイルと、
前記フォーカシングコイルのタンジェンシャル方向に沿った辺とラジアル方向に沿った辺とで横切るように磁束を発生させる磁界発生部とを備え、
前記磁界発生部は、前記光ディスクのタンジェンシャル方向に沿って配列され、相互に対向する一対の磁石を備え、
前記フォーカシングコイルは、前記各磁石間に配置され、
前記各磁石の磁界の強さを相互に異ならせることによって、前記フォーカシングコイルの前記タンジェンシャル方向に沿った辺と横切る場所においてほぼ直線状の磁束を形成する、対物レンズ駆動装置。 - 前記各磁石の長さを前記光ディスクのラジアル方向で異ならせることによって、該各磁石の磁界の強さを相互に異ならせた請求項1に記載の対物レンズ駆動装置。
- 前記各磁石の一方の外側面を覆う第1壁、及び該各磁石間のスペース両側を覆う第2壁と第3壁からなる磁性体を更に備え、該磁性体の該第1壁、該第2壁及び該第3壁を一体化した請求項1に記載の対物レンズ駆動装置。
- 前記磁性体は、前記各磁石の一方の位置決め、及び該各磁石間のスペース両側の電磁シールドを共に果たす請求項3に記載の対物レンズ駆動装置。
- 前記各磁石の厚みを前記光ディスクのタンジェンシャル方向で異ならせることによって、該各磁石の磁界の強さを相互に異ならせた請求項1に記載の対物レンズ駆動装置。
- 前記各磁石は、相互に異なるそれぞれの磁気特性の材質からなる請求項1に記載の対物レンズ駆動装置。
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