JP4198296B2 - オイルダンパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、柱梁構造の骨組に取付けられてブレース母材と協働して建築物や土木構造物の制振を行うのに適する制振用オイルダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
柱梁構造の骨組にブレース母材とオイルダンパとで直列に接続したブレースを対角線に配設することにより建築物や土木構造物の制振を行う制振装置として、例えば、実用新案登録第2601439号公報に開示されたものが開発されている。
【0003】
この制振装置は、図5に示すように鉄骨柱1,1に対して鉄骨梁2,2を上下平行に架設して柱梁構造の骨組Aを構成し、この骨組Aに対してブレース母材3とオイルダンパ4とを直列に接続したブレース5,5を対角線状に組付けたものである。
【0004】
オイルダンパ4は図6に示すようにシリンダ6と、シリンダ6内にピストン7を介して移動自在に挿入したピストンロッド8と、シリンダ6内にピストン7で区画されたロッド側油室9及び反ロッド側油室10と、二つの油室9,10を接続するバイパス11と、バイパス11内に設けられて圧縮時に作動油の流れを許容する逆止弁12とからなるものである。
【0005】
上記従来の制振装置によれば、骨組Aが地震等により引張方向と圧縮方向の交番荷重を受けた場合でもオイルダンパ4が効き、建築物等の柱梁構造の骨組Aの変形が阻止される。
【0006】
即ち、地震や強風等の揺れによる矢印X方向の引張力がブレース5にそれぞれ作用したときは、ピストンロッド8が伸長しょうとするが逆止弁12によって作動油の作動が阻止されるため引張力に対して強固な抵抗力が発生する。逆に同じブレース5に対して矢印Y方向の圧縮力が作用したときは、逆止弁12が作動油の流動を許容し、オイルダンパ4が収縮するためブレース母材3の座屈が防止され、これによりブレース5の降伏による振動エネルギの吸収が効果的になされ、骨組の変形が防止される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のオイルダンパを使用した制振構造には次のような問題点があり、その改善が要望されている。
【0008】
即ち、第1に、シリンダ6のピストン前後の油室9,10をつなぐバイパス11に逆止弁12を設けただけのため、シリンダ6には殆ど減衰能力がないので構造物に付加減衰を与えることができない。そのために、ブレース5に発生する応力が降伏点に達することによる履歴減衰しか期待できないと言う問題点があった。
【0009】
第2に、ブレース5に発生する応力が降伏点に達するということは、構造耐力が低下するということであるため、一度降伏点に達した後に再度地震等による大きな外力を受けた際には、外力に抵抗して構造が持ちこたえることが出来ずに、建物が損傷又は倒壊するという危険性があるので、大きな外力を受けた後にはブレース5を交換する必要が有ると言う問題点があった。
【0010】
第3に、シリンダ6にはピストンロッド8を引き込む力がないので、骨組Aのコーナとブレース母材3にダンパ4を結合させるには、結合部で中折れさせないためにボルト・ナット等により強固に結合する必要があるが、ブレース母材3の製作精度により必ずしもシリンダ6の軸芯と取付部の軸芯が一致しないことからピストンロッド8に曲げ力が掛かり、長期に亘って設置した場合にはパッキンからの油漏れにつながる恐れがあると言う問題点があった。
【0011】
そこで、本発明の目的はブレース母材に直列に接続して柱梁構造物の骨組に結合した時、地震等の外力により構造物が振動してブレースに引張り力が発生する方向には、ピストンロッドの伸び方向に減衰力を発生させて建物に付加減衰を与えることができ、構造物の振動方向が逆転してブレースに圧縮力が発生する方向には、ピストンロッドが抵抗無く縮小してブレースに圧縮力を発生させず、更にピストンロッドの縮み方向に力を発生させることにより、骨組とブレースに対する結合がピン結合可能になり、ピストンロッドに曲げ力が加えられることのない伸び方向片効きの制振用オイルダンパを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、シリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンはシリンダ内にロッド側油室のみを区画し、ロッド側油室は伸側油路と圧側油路を介してアキュムレータに接続され、伸側油路にはロッド側油室からアキュムレータに向けて作動油の流れを許容する調圧弁を開閉自在に設け、圧側油路にはアキュムレータからロッド側油室に向けて作動油の流れを許容する逆止弁を開閉自在に設け、上記アキュムレータに蓄圧された圧力を上記ピストンに作用させてピストンロッドを常時縮み方向に附勢している伸び方向片効きのオイルダンパであることを特徴とするものである。
【0013】
この場合、アキュムレータと伸側油路と圧側油路とがシリンダの外部に配設されていても良い。
【0014】
同じく、ピストンにピストンロッドと反対側にチューブを連設し、このチューブ内にフリーピストンで区画されたアキュムレータを設け、当該アキュムレータをピストンに設けた伸側油路と圧側油路を介してロッド側油室に接続させてもよい。
【0015】
上記各手段において、アキュムレータに外部から作動油を給油する給油用油路が接続されているのが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図4にもとづいて説明する。
【0017】
本発明のオイルダンパの基本形態は図1の基本回路に示すように、シリンダ20内にピストン21を介してピストンロッド23が移動自在に挿入され、ピストン21はシリンダ20内にロッド側油室23のみを区画し、ロッド側油室23は伸側油路25と圧側油路26を介してアキュムレータ24に接続され、伸側油路25にはロッド側油室23からアキュムレータ24に向けて作動油の流れを許容する調圧弁28を開閉自在に設け、圧側油路26にはアキュムレータ24からロッド側油室23に向けて作動油の流れを許容する逆止弁29を開閉自在に設けたものである。
そして、このオイルダンパは、伸び作動時に上記調圧弁28で減衰力を発生させる伸び方向片効きオイルダンパであり、且つ上記アキュムレータ24に蓄圧された圧力を圧側油路26とロッド側油室23を介して上記ピストン21に作用させてピストンロッド22を常時縮み方向に附勢しているものである。
【0018】
伸側油路25と圧側油路26は共通の油路27から並列に分岐しても良く、又はそれぞれ独立して直接ロッド側油室23とアキュムレータ24に並列に接続してもよい。尚、油路27には給油用油路30が接続され、アキュムレータ24に外部から作動油が供給できるようになっている。
【0019】
上記オイルダンパは例えばピストンロッド22の外端をブラケットを介して図5に示すような柱梁構造の骨組Aのコーナに結合され、同じくシリンダ20の外端をブラケットを介してブレース母材3の端部に直列に接続して建築物又は土木構造物の制振用ブレースとして使用される。但し一般的なオイルダンパとして単独で使用することもできる。
【0020】
上記アキュムレータ24、伸側及び圧側油路25,26、調圧弁28、逆止弁29はシリンダ20の外部に設けても良く、あるいはシリンダ20とピストン21とピストンロッド22内に組付けても良い。
【0021】
図2は、これらの各部材をシリンダ内に組込んだオイルダンパの一実施の形態を示す。
【0022】
以下、このオイルダンパの構造を詳細に説明する。
【0023】
シリンダ20内にピストン21を介してピストンロッド22が移動自在に挿入され、ピストン21はシリンダ20内にロッド側油室23を区画している。
【0024】
ピストンロッド22は外端のブラケット31を介して例えば図5に示す骨組Aのコーナに結合され、シリンダ20の外端は同じくブラケット32を介して図5に示すブレース母材3の端部に直列に結合される。
【0025】
ピストン21にはピストンロッド22と反対側にチューブ33を結合し、チューブ33内にはピストン21とフリーピストン34とでアキュムレータ24が区画されている。
【0026】
フリーピストン34はチューブ33内に移動自在に挿入され、チューブ33の端部にはスプリングシート35が設けられ、フリーピストン34はこのスプリングシート35との間に介装したスプリング36でピストン方向に付勢されている。スプリング36はスプリングシート35から起立するガイド37で案内され、座屈の発生を防止している。
【0027】
ピストンロッド22と反対側のシリンダ20内は大気室38となっており、シリンダ20に形成した孔39を介して大気に連通している。但し、作動ストロークが短く、空気の圧縮抵抗がオイルダンパ自体の伸縮作動に大きく影響しない場合には、この孔39は無くてもよい。
【0028】
ピストン21には複数の圧側油路26が形成されてロッド側油室23とアキュムレータ24とを接続し、圧側油路26の出口端にはスプリング40で閉じ方向に付勢された逆止弁29が開閉自在に設けられている。
【0029】
ピストン21の内部にはロッド側油室23をアキュムレータ33に接続する伸側油路25たる縦孔25aと横孔25bとが形成され、縦孔25aの小径部にはポペット型の弁体からなる調圧弁28が開閉自在に設けられている
【0030】
調圧弁28は多孔のスプリングシート41との間に介装されたスプリング42で常時閉じ方向に付勢され、ロッド側油室23の内圧が上昇した時そのパイロット圧でスプリング42に抗して開くようになっている。縦孔25aは調圧弁28の下流においてスプリングシート41に形成した孔を介してアキュムレータ24に連通している。
【0031】
ピストンロッド22の先端にはプラグ43が取付けられ、このプラグ43には給油口44が設けられ、この給油口44は縦孔25aを介してそれぞれロッド側油室23とアキュムレータ33に作動油が供給されるようになっている。
【0032】
図1,図2に示すオイルダンパが例えば従来の図5に示すようにブレース母材3に直接に結合してブレース5を構成し、これを柱梁構造の骨組Aにクロスして対角線状に配置した場合、オイルダンパの作動によりすぐれた制振効果を発揮する。
【0033】
図5に示すように地震,強風等で外力が骨組Aにかかり、矢印X方向に引張力が作用するとオイルダンパのピストンロッド22が伸長し、矢印Y方向の圧縮力が作用した時ピストンロッド22は圧縮する。
【0034】
以下作動を詳しく述べると、伸び方向作動時は、ロッド側油室23内の作動油がピストン21により圧縮されつつ、調圧弁28を連通してアキュムレータ24に移動する。作動油が調圧弁28を連通する際の抵抗が、オイルダンパとしての減衰力となる。
【0035】
また、アキュムレータ24には作動油が蓄圧されているため、ピストン21の受圧面積×蓄圧された圧力の力がピストンロッド22の縮み方向に掛っている。このため、縮み方向作動時は圧縮外力に抵抗することなく、且つ瞬時に縮み作動に移行する。
【0036】
伸側油路25に調圧弁28を設けたことにより、図4に示す第1勾配aの減衰力(ピストン速度に比例して低効力が増す)を得ることができ、地震等の外力により生じる構造物の振動エネルギを効率良く熱エネルギに変換して消散できるために、構造物に減衰力を付加することができ、構造物の振動を効率よく低減することができるようになる。
【0037】
調圧弁28のリリーフ機能により、ロッド側油室23内の圧力が設定圧より上昇した場合に、作動油の通過抵抗を低くしてアキュムレータ24側に逃がすことにより、図4に示す第2勾配bの減衰力を持つことができるため、ブレース母材3に発生する応力が降伏点を越えないようにすることができる。このことにより、地震などにより大きな外力を受けた後にも、構造物の耐力低下を招かないため部材交換などが不要になる。
【0038】
アキュムレータ24に圧力を蓄圧するので、常にピストンロッド22を引き込む方向に力が発生しているため、ブラケット31,32が常に軸方向に引張られているからこのブラケット31,32における結合部での中折れを生じさせることなくオイルダンパと構造物及びブレース母材3をピン結合することもできる。このことにより、オイルダンパのピストンロッド22の取付部の自由度が上がり、ピストンロッド22に曲げ力を生じさせる心配が無くなる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、次の効果がある。
【0040】
(1) 各請求項の発明によれば、伸側油路に調圧弁を設けているのでピストン速度に比例した減衰力を得ることができる。この為、柱梁構造の骨組にブレースとして適用した時地震等の外力により生じる構造物の振動エネルギーを効率良く熱エネルギーに変換して消散できるため、構造物に減衰力を付加して構造物の振動を高率よく低減することができる。
【0041】
(2) 同じく、ロッド側油室の内圧が所定以上に上昇するとこの内圧で調圧弁がリリーフ機能で大きく開き、ロッド側油室の作動油の抵抗を低くしてアキュムレータに逃がすと共に更なる減衰力を調圧弁で発生する。この為ブレース母材に結合して骨組のブレースとして使用した時、ブレース母材に発生する応力が降伏点を越えないようにすることができる。このことにより地震などにより大きな外力を受けた後にも構造物の耐久低下を招かないためブレース部材の交換などが不要になる。
【0042】
(3) 同じく、アキュムレータには常に圧が蓄圧されているため、この圧が常にピストンロッドを圧縮方向に付勢することができる。従ってブレース母材に結合して骨組のブレースとして使用した時オイルダンパの両端におけるブレース母材と骨組に対するブラケット等の結合部が軸方向に引張られており、この結合部が中折れするのが防止され、これにより結合部としてはピン結合その他どのような構造のものても使用できる。従ってオイルダンパの取付け部の自由度が上がり、ピストンロッドに曲げ力を生じさせる心配もなくなる。
【0043】
(4) 請求項2の発明によれば、アキュムレータ等がシリンダの外部に配設していることによりオイルダンパの設計の自由度が増す。
【0044】
(5) 請求項3の発明によれば、アキュムレータ等の全ての部材がシリンダ内に組込まれているので、構造がコンパクトで設置スペースの影響を受けないですむ。
【0045】
(6) 請求項4の発明によれば、作動油が漏れてもその都度作動油を供給でき、常に一定した減衰力特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオイルダンパの基本的な回路である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るオイルダンパの縦断正面図である。
【図3】図1のオイルダンパの一部拡大断面図である。
【図4】オイルダンパの減衰力特性を示すグラフである。
【図5】従来の柱梁構造の骨組とブレースの略示正面図である。
【図6】従来のオイルダンパの縦断正面図である。
【符号の説明】
20 シリンダ
21 ピストン
22 ピストンロッド
23 伸側油路
24 アキュムレータ
25 伸側油路
26 圧側油路
28 調圧弁
29 逆止弁
30 給油用油路
33 チューブ
34 フリーピストン
Claims (4)
- シリンダ内にピストンを介してピストンロッドが移動自在に挿入され、ピストンはシリンダ内にロッド側油室のみを区画し、ロッド側油室は伸側油路と圧側油路を介してアキュムレータに接続され、伸側油路にはロッド側油室からアキュムレータに向けて作動油の流れを許容する調圧弁を開閉自在に設け、圧側油路にはアキュムレータからロッド側油室に向けて作動油の流れを許容する逆止弁を開閉自在に設け、上記アキュムレータに蓄圧された圧力を上記ピストンに作用させてピストンロッドを常時縮み方向に附勢している伸び方向片効きのオイルダンパ。
- アキュムレータと伸側油路と圧側油路とがシリンダの外部に配設されている請求項1のオイルダンパ。
- ピストンにピストンロッドと反対側にチューブを連設し、このチューブ内にフリーピストンで区画されたアキュムレータを設け、当該アキュムレータをピストンに設けた伸側油路と圧側油路を介してロッド側油室に接続させている請求項1のオイルダンパ。
- アキュムレータに外部から作動油を給油する給油用油路が接続されている請求項1、2又は3のオイルダンパ。
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