JP4197630B2 - ディジタル電流差動継電器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は送電線を保護対象とするディジタル電流差動保護継電器に関する。
【0002】
【従来の技術】
電力系統における送電線の事故を検出する保護継電器には、保護区間の内外部事故識別能力に優れた電流差動継電器が広く用いられている。従来より送電線保護用の電流差動継電器として用いられてきたものとして、各端子の変流器2次回路間を表示線(パイロットワイヤ)にて結び差動回路を実現する表示線継電器が広く知られている。
【0003】
また近年ではディジタル伝送技術を適用したPCM(パルス符号変調)電流差動継電器も広く適用されている。このPCM電流差動継電器は、各端子において同一時刻にサンプリングしてディジタル化(アナログ・ディジタル変換:A/D変換)を行った電流データを各端子間で相互に伝送しあい、各端子の継電器で同一時刻の電流データ同士を用いて電流差動演算を行うようにしたのもである。
【0004】
PCM電流差動継電器はこれらの処理を実現するために、電流データとサンプリング同期制御用の時間データを含む自継電器のデータを54kbpsの伝送速度でディジタル伝送しており、システムを構成するためにはPCM電流差動継電器の他に、ディジタル通信網および継電器とディジタル通信網との間にインタフェースとしてのキャリアリレー用多重化装置(1.5M CR−MUX)が必要となる。
【0005】
なお、PCM電流差動継電器をアナログ通信網に適用することも可能であるが、この場合は54kbpsのディジタルデータ信号とアナログデータ信号の相互変換を行うP/F(PCM/FDM)変換装置が必要となり、この時変換されるアナログデータ信号の伝送にはG帯域と呼ばれる48kHzもの帯域(周波数60〜108kHz)が必要である。
【0006】
このため、ディジタル通信網の整備が行われていない電気所において、PCM電流差動継電器を新規適用する場合や、表示線継電器からPCM電流差動継電器へシステム更新を行う場合等は、継電器とともにディジタル通信網の構築やキャリアリレー用多重化装置(1.5M CR−MUX)の新規導入も必要となるため、ディジタル通信網を使用せずに既存の表示線を活用してディジタル形の電流差動継電器を適用する構成が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1に記載されている方法は、相手端子の電流を既存の表示線を媒体として自端子まで伝達させ、自端子のディジタル電流差動継電器でこの相手端子電流および自端子電流をサンプリングし、アナログ・ディジタル変換(A/D変換)するように構成するもので、ディジタル通信網の構築や1.5M CR−MUXの導入をすることなくディジタル形の電流差動継電器を適用することが可能である。
【0008】
また、同様に通信線路を適用して相手端子電流を自端子の継電器まで導入して、自端子のディジタル電流差動継電器で相手端子電流および自端子電流をサンプリングし、A/D変換する構成も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
これら先行技術文献で開示されているディジタル電流差動継電器では、相手端子電流をディジタルデータ信号として伝送せずにアナログ波形のまま表示線や通信路を通信媒体として自端子の継電器まで引き込むため、伝送過程で発生する相手端子電流波形の減衰や位相遅れを補正する必要が生じる。そのため、特許文献1ではディジタル演算にて減衰分を補償するように、特許文献2では判定演算部で減衰量および位相遅れを補正するように構成している。
【0010】
また、これらいずれの先行技術文献も表示線や通信路を相手端子電流のアナログ波形伝送に使用するため、PCM電流差動継電器で実現している相手端子電流以外の情報伝送は不可能である。
【0011】
更には、電流差動継電器の設置以降に通信側のシステム更新によってディジタル通信網が構築された場合、これらの電流差動継電器にはデータ送受信装置が備わっていないので、既存の通信媒体を使用し続けるか、あらためてPCM電流差動継電器への更新を行う必要が生じ、前者の場合は通信側にメンテナンス負担をかけることとなり、後者の場合は継電器更新の費用が発生する等、システム効率上好ましくない。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−10477号公報(第3−6頁、図1)
【特許文献2】
特開2002−78186号公報(第3−5頁、図1)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、既存の通信媒体を使用する場合でも相手端子電流に対して波形伝送による減衰や位相遅れを補正する必要がなく、電流データ以外の情報(ディジタルデータ信号)も伝送することが可能であり、更にディジタル通信網が構築された場合でも何ら変更を加えることなく使用することが可能なディジタル電流差動継電器の出現が待ち望まれていた。
【0014】
本発明は、従来の課題に鑑みて、既存の通信媒体を使用する場合および新たにディジタル通信網が構築された場合でも相手端子電流に対して波形伝送による減衰や位相遅れの補正を行うことなく使用することが可能なディジタル電流差動継電器を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を解決するために、請求項1に係わるディジタル電流差動継電器の発明は、電力系統の送電線を保護対象とし、自端子および相手端子の電流情報を入力して保護区間内部の事故発生有無を検出して所定の出力を行うディジタル電流差動継電器において、自端子の電気量をサンプリング信号に基づきサンプリングしてアナログデータ信号をディジタルデータ信号に変換するアナログ・ディジタル変換手段と、このアナログ・ディジタル変換手段より出力される電気量データをベクトル成分表現に加工する第1の演算手段と、この第1の演算手段から出力される加工後の電流データを含む自端子のディジタルデータ信号を出力する送信手段と、この送信手段から出力されるディジタルデータ信号を所定のアナログデータ信号に変調して通信媒体を介して相手端子の電流差動継電器へ送信する変調手段と、この相手端子の電流差動継電器より通信媒体を介して送信されてくるアナログデータ信号を受信し元のディジタルデータ信号に復調する復調手段と、この復調手段より出力される各端子のディジタルデータ信号を受信する受信手段と、前記送信手段と受信手段より得られる自端子および相手端子の電流データから電流差動演算にて保護区間内部の事故発生の有無を検出する第2の演算手段と、前記サンプリング信号を各端子で同一タイミングとなるように制御するサンプリング同期制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図を通して共通する部分には同一符号を付けて重複する説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用した第1の実施形態を示す構成図である。
【0017】
図1において、1は保護対象となる送電線であり、両端のA、B端子にそれぞれ送電線1に流れる電流(端子電流)IA、IBを変成してia、ibとして出力する変流器(以下、CTという)2a、2bを設置している。3aおよび3bはそれぞれCT2aおよび2bの2次回路に接続され端子電流ia、ibを入力するディジタル電流差動継電器である。
【0018】
4a、4bは端子電流データを端子A、B間で送受信するための通信媒体であり、A端子、B端子にそれぞれ設けた絶縁変圧器5a1および5a2、5b1および5b2を介して前記ディジタル電流差動継電器3a、3bに接続されるように構成されている。
【0019】
ところで、前記ディジタル電流差動継電器3a、3bは以下のように構成されている。なお、ディジタル電流差動継電器3bの構成はディジタル電流差動継電器3aと同一であるのでその表記を省略する。ディジタル電流差動継電器3aは、CT2aから入力した2次電流を継電器内で処理可能な所定の大きさに変換して出力する入力変換器6と、入力変換器6の出力電気量から高調波を除去するアナログフィルタ7と、高調波の除去されたアナログデータ信号をディジタルデータ信号に変換するアナログ・ディジタル変換手段(以下、A/D変換手段という)8と、このA/D変換手段8の出力をベクトル成分表現の電流データに変換する第1の演算手段9と、この第1の演算手段9により得られた電流データを含む自端子の情報を所定の伝送フォーマットに構成して出力する送信手段10と、この送信手段から出力されるディジタルデータ信号を変調し前記絶縁変圧器5a1を介して通信媒体4aに送る変調手段11と、通信媒体4bを通して対向端子Bから送られてきた信号を絶縁変圧器5a2を介して入力し、これを復調して受信手段13に出力する復調手段12と、前記送信手段10から出力された自端子信号および受信手段13から出力された対向端信号を入力して差動保護演算を行う第2の演算手段14と、サンプリング同期制御手段15とから構成されている。
【0020】
次に図1に示す継電器の動作を説明する。ディジタル電流差動継電器3aはCT2aから自端子の電流IAを変成した2次電流iaを取り込み、これを入力変換器6によって処理可能な所定の大きさの電圧レベルに変換し、アナログフィルタ7でサンプリングによる折返し誤差を抑制するための高調波成分除去を行った後、サンプリング同期制御手段15から得られるサンプリング信号に従ってサンプリングを行い、A/D変換手段8にてディジタルデータ信号へと変換する。
【0021】
ディジタルデータ信号に変換された自端子の電流データは、第1の演算手段9にて各サンプリング時点での瞬時値表現から所定のサンプリングタイミングを基準としたベクトル成分表現へデータ変換を行い送信用電流データとする。ベクトル成分表現は、電流をある直交座標系でのベクトルとして扱いそのX軸成分とY軸成分の二量で表現するもので、例えば直交座標系として複素数平面を用いた場合は、「電気学会大学講座 電気回路論」(電気学会発行)の第3章交流回路の複素計算法(第45頁)以降に記載されている複素数表現のように表すものである。なお、ベクトル成分表現へのデータ変換方法は微分・積分演算やフーリエ変換等があるが、ここではその具体的手法は問わない。
【0022】
送信手段10では前記第1の演算手段から得られた電流データ、前記サンプリング同期制御手段15から出力される同期制御用のデータおよび自継電器の情報を所定の伝送フォーマットに構成し、所定の伝送速度で出力する。ここで、所定の伝送速度としては音声級回線での伝送が可能なものとし、例えば9600bps等が選択されているものとする。
【0023】
このような伝送速度を選択すると、PCM電流差動継電器に対して伝送周期の長周期化やデータ量の削減による伝送容量の低減が必要となるが、変調手段11および復調手段12に国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU−T)によるVシリーズ勧告(電話網上のデータ通信)にて規定されているモデムを使用したアナログ通信ネットワーク利用のデータ通信を行うことができる。例えば通信速度が9600bpsである場合は、ITU−T V.29の「ポイント・ツー・ポイント4線式専用回線用9600bpsモデム」を使用することできる。
【0024】
これにより表示線や通信線等を使用した通信が可能となり、送信手段10から出力された自端子のディジタルデータ信号は、変調手段11にて音声帯域(3.4kHz)のアナログデータ信号への変調を行い、絶縁変圧器5a1を介して通信媒体4aへ送出される。また、復調手段12では相手端子のディジタル電流差動継電器3bから絶縁変圧器5b2を介して通信媒体4bへ出力されたアナログデータ信号を絶縁変圧器5a2を介して受信し、ディジタルデータ信号に復調する。
【0025】
このようにして、ディジタル電流差動継電器3aおよび3bは互いにデータ通信を行うことができる。受信手段13は、復調されたディジタルデータ信号の不良チェックを行うとともにデータに含まれる相手端子の電流データを第2の演算手段14へ、そして同期制御データをサンプリング同期制御手段15にそれぞれ出力する。この結果、第2の演算手段15は送信手段10から得られる自端子の電流データと受信手段13から得られる相手端子の電流データを用いて電流差動演算を行うことにより、保護対象である送電線1に内部事故が発生しているか否かを判定する。
【0026】
電流差動演算による事故検出は、自端子と相手端子の電流のベクトル和にて差電流を求めた後、当該差電流の振幅値を算出し、その大きさから事故発生有無を判定するものであることは周知の通りである。ここで代表的な振幅値演算法は、大浦好文監修による「保護リレーシステム工学」電気学会発行、第111頁、表5.2等に記載されているように、所定の周期でサンプリングされた過去数サンプリング分の瞬時値データから求めるものであるが、本実施の形態では音声級回線での伝送が可能な伝送速度を選択するために、その必要に応じて伝送周期の長周期化が行われるので、必ずしも伝送周期が上記文献の振幅値演算法に必要な所定のサンプリング周期を満足するとは限らない。このため、本実施の形態では、次のように振幅値演算を実施する。
【0027】
第2の演算手段14に入力される送信手段10からの自端子電流データと受信手段13からの相手端子電流データは、事前に第1の演算手段にてベクトル成分表現に変換された二量から成っている。ベクトルの足し算はその成分同士の足し算から得られるのは周知の通りであり、第2の演算手段は入力された自端子および相手端子電流データの成分同士の和から差電流のベクトル成分表現である二量を算出する。算出した差電流のベクトル成分表現の二量は互いに直交するものであるから、三平方の定理に従い、二乗和の演算後その平方根をとることで差電流の振幅値を算出することができる。
【0028】
以上により、任意の伝送周期に送られてきた相手端子電流データとそれに対応する自端子電流データのみで、過去のデータを使用することなく、差電流の振幅値を求めることができる。
【0029】
更に、第2の演算手段14における電流差動演算を正しく成立させるためには、ディジタル電流差動継電器3a、3bで別々にサンプリングおよびディジタル化される電流データの同時性が求められるが、本実施の形態では既出の特許文献1および2で示されているディジタル形の電流差動継電器での電流波形の伝達とは異なり、データの伝送を行うので電流データ以外の情報伝達も可能であり、前述の通りサンプリング同期制御用のデータを互いに伝送しあうことで、サンプリング同期制御手段15において公知のサンプリング同期方法を実現することができる。
【0030】
公知のサンプリング同期方法としては、例えば、特許1540325号公報に記載の方法がある。なお、公知のサンプリング同期方法の多くは自端子から相手端子への伝送にかかる時間と相手端子から自端子への伝送にかかる時間、すなわち上りと下りの伝送遅延時間が等しいという前提のもとに成立するものである。
【0031】
本実施の形態では、通信媒体での伝送遅延時間に加え、変調手段11および復調手段12における変復調時間が必要となる。復調手段12では初期設定の段階で回線の特性に適した振幅特性や遅延特性に設定が行われるため、変復調時間は回線の伝送品質に依存する部分があるが、通信媒体4a、4bに同質のものを同一経路で設置することで、通信媒体での遅延時間が等しくなる。また、これにより通信媒体4a、4bの伝送品質も略同等となることから自端子および相手端子の復調手段12での設定が等しくなるので、本実施の形態の構成においても上りと下りの伝送遅延時間が等しくなる。これにより前述の通り、サンプリング同期制御ができるものである。
【0032】
以上述べたように、本実施の形態によれば、アナログ通信ネットワーク利用のデータ通信が可能であるので、既存の通信媒体を使用したデータ伝送が実現でき、相手端子電流に対して波形伝送による減衰や位相遅れの補正をする必要がなく、かつ、電流データ以外の情報も伝送することが可能なディジタル電流差動継電器を提供することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図2は本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用した第2の実施形態を示す構成図である。
本実施の形態は第1の実施の形態における通信媒体4a、4bをディジタル通信網17に置き換え、更に絶縁変圧器5a1〜5b2を1.5M多重化装置(1.5M MUX)16a、16bに置き換えたものであり、その他の部分は同じ構成・機能である。
【0034】
図2において、1.5M多重化装置(1.5M MUX)16a、16bはディジタル通信網17とのインタフェースとなる部分であり、音声帯域のアナログデータ信号または64kbpsのディジタルデータ信号24チャンネル分を多重化し、1.544Mbpsのディジタル1次群信号に変換する。
【0035】
ここで、ディジタルデータ信号による受け渡しの場合は、多重化のために1.5M多重化装置側のタイミングに合わせる必要があるので、電流差動継電器側から見ると送受信のタイミングが変動し、サンプリング同期制御の前提条件となる上りと下りの遅延時間が同一とならない場合がある。
【0036】
PCM電流差動継電器では、前述の通り、上りと下りの伝送遅延時間が等しくないとサンプリング同期制御が実現できないのでこの影響が無視できないことと、伝送速度が54kbpsと非標準であることから、専用インタフェースであるキャリアリレー用多重化装置(1.5M CR−MUX)を必要としているが、本実施の形態では、変調手段11にて音声帯域のアナログデータ信号に変調して送出する。そのため、アナログデータ信号による受け渡しとなり、この場合は任意のタイミングで入力されるアナログデータ信号を1.5M多重化装置が自身のタイミングでサンプリング・ディジタル化を行った上で多重化を行うため、電流差動継電器が送受信のタイミングを合わせる必要はなく、上りと下りの遅延時間に差違を生じさせるようなことがない。これにより、本実施の形態において、正しくサンプリング同期制御を行うことができる。
【0037】
以上述べたように、本実施の形態によれば、ディジタル通信網が構築された場合であっても第1の実施の形態で示したディジタル電流差動継電器3a、3bに変更を加えることなく使用することが可能なディジタル電流差動継電器を提供することができる。
【0038】
また、ディジタル通信網は構築されているが、PCM電流差動継電器が導入されてない電気所である場合、新たに専用インタフェースであるキャリアリレー用多重化装置(1.5M CR−MUX)の導入をすることなく、既存の1.5M多重化装置(1.5M MUX)の音声チャンネルを使用することが可能であるので、既存の通信媒体を使用したデータ伝送が可能となり、相手端子電流に対して波形伝送による減衰や位相遅れの補正をする必要がなく、かつ、電流データ以外の情報も伝送することが可能なディジタル電流差動継電器を提供することができる。
【0039】
(第3の実施の形態)
図3は本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用して保護システムを構築する一つの例を表した模式図である。
図3(a)は表示線継電器18a1、18a2、18b1、18b2により送電線保護システムを構成している様子を示す図である。
【0040】
表示線継電器18a1および18b1は短絡保護用の表示線継電器であって絶縁変圧器5a1、5b1を介して表示線19aに接続して差動回路を構成し、また18a2および18b2は地絡保護用の表示線継電器であって同様に絶縁変圧器5a2、5b2を介して表示線19bに接続して差動回路を構成している。
【0041】
図3(b)は前記短絡保護用の表示線継電器18a1および18b1、地絡保護用の表示線継電器18a2および18b2を、本発明によるディジタル電流差動継電器3a、3bへ取り替えを行った状態を示す図である。
【0042】
本実施の形態では、既設の表示線19a、19bを通信媒体として使用することが可能であるので、新たな通信設備を敷設する必要がなく、安価なシステム更新が可能である。
【0043】
図3(c)は通信側の設備更新によりディジタル通信網17が構築された場合を示す図である。
この場合、ディジタル電流差動継電器3a、3bは何ら変更を加えることなく、1.5M多重化装置16a、16bを介してディジタル通信網17側に移行することが可能であり、ディジタル通信網17に対応した継電器へ再度取り替える必要や専用の多重化装置の設置を不要とし、また表示線19a、19bは何にも使用しないことから廃止可能となり、通信担当部門において表示線19a、19bとディジタル通信網17の両方をメンテナンスする必要もない。
【0044】
以上述べたように、本実施の形態によれば、表示線継電器による送電線保護システムを継電器側、通信側と段階的に、一時的に使用する設備もなく更新することができ、更新時に非常に効率良くシステムを構成することが可能なディジタル電流差動継電器を提供することができる。
【0045】
(第4の実施の形態)
図4は本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用して保護システムを構築する他の例を表した模式図である。
図4(a)は電流差動方式以外の例えば距離継電器等の保護継電器20a、20bにより送電線保護システムを構成している様子を示す図である。
【0046】
この保護継電方式の場合、保護継電器20aおよび20bは端子電流データの伝送を必要としないが、このような場合でも各端子の電気所において保安電話等の設置目的に通信線21を敷設しているのが一般的である。また通常通信線は多芯であり、未使用の予備線があることが期待できる。
【0047】
図4(b)は保護継電器20aおよび20bを本発明によるディジタル電流差動継電器3a、3bへ取り替えを行った場合を示す図である。
既設の通信線21の予備線をそのまま通信媒体として使用することが可能であるので、新たな通信設備を敷設する必要がなく、安価なシステム更新が可能である。
【0048】
図4(c)は通信側の設備追加によりディジタル通信網17が構築された場合を示す図である。
ディジタル電流差動継電器3a、3bは何ら変更を加えることなく、1.5M多重化装置16a、16bを介してディジタル通信網17側に移行することが可能であり、ディジタル通信網17に対応した継電器へ再度取り替える必要や専用の多重化装置の設置は不要である。
【0049】
(変形例)
(1)以上述べた各実施の形態では、通信媒体として表示線(パイロットワイヤ)や通信線等のアナログ通信網を使用する場合、自端子から相手端子への通信路と相手端子から自端子への通信路に別々の線路を割り当てるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、自端子から相手端子への通信に使用する周波数帯と相手端子から自端子への通信に使用する周波数帯を異なるようにし、かつ、通信方向により異なる周波数帯を使用することにより生じる伝送遅延時間の差を予め測定や計算して固定値としてディジタル電流差動継電器に入力しておくことでサンプリング同期制御手段での補正を可能とし、同一の線路を使用して通信を行うことも可能である。
【0050】
(2)前述した各実施の形態では、保護対象として2端子の送電線を保護する場合について述べたが、3端子以上の多端子送電線を保護する場合にも、前述同様に適用実施できるものである。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、本実施の形態によればアナログ通信ネットワーク利用のデータ通信が可能であるので、既存の通信媒体を使用したデータ伝送が実現でき、相手端子電流に対して波形伝送による減衰や位相遅れの補正をする必要がなく、かつ、電流データ以外のディジタルデータ信号も伝送することが可能なディジタル電流差動継電器を提供することができる。
【0052】
また、電流差動方式以外の保護継電器による送電線保護システムから、保護区間の内外部事故識別能力に優れた電流差動方式に変更する際に、継電器側、通信側と段階的に、一時的に使用する設備もなく更新することができ、非常に効率良くシステムを構成することが可能なディジタル電流差動継電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用した第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用した第2の実施の形態を示す構成図。
【図3】本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用して保護システムを構築する第1の方法を表した模式図で、(a)は従来の保護継電システムの構成図、(b)は保護継電器を更新した状態の構成図(c)は保護継電器および通信媒体をともに更新した状態の構成図。
【図4】本発明によるディジタル電流差動継電器を2端子送電線系統に適用して保護システムを構築する第2の方法を表した模式図で、(a)は従来の保護継電システムの構成図、(b)は保護継電器を更新した状態の構成図(c)は保護継電器および通信媒体をともに更新した状態の構成図。
【符号の説明】
1…送電線、2a,2b…変流器(CT)、3a,3b…ディジタル電流差動継電器、4a,4b…通信媒体、5a1,5a2,5a3,5b1,5b2,5b3…絶縁変圧器、6…入力変換器、7…アナログフィルタ、8…アナログ・ディジタル変換手段、9…第1の演算手段、10…送信手段、11…変調手段、12…復調手段、13…受信手段、14…第2の演算手段、15…サンプリング同期制御手段、16a,16b…1.5M多重化装置(1.5M MUX)、17…ディジタル通信網、18a1,18a2,18b1,18b2…表示線継電器、19a,19b…表示線、20a,20b…電流差動方式以外の保護継電器、21…通信線、22a,22b…保安電話。
Claims (4)
- 電力系統の送電線を保護対象とし、自端子および相手端子の電流情報を入力して保護区間内部の事故発生有無を検出して所定の出力を行うディジタル電流差動継電器において、
自端子の電気量をサンプリング信号に基づきサンプリングしてアナログデータ信号をディジタルデータ信号に変換するアナログ・ディジタル変換手段と、
このアナログ・ディジタル変換手段より出力される電気量データをベクトル成分表現に加工する第1の演算手段と、
この第1の演算手段から出力される加工後の電流データを含む自端子のディジタルデータ信号を出力する送信手段と、
この送信手段から出力されるディジタルデータ信号を所定のアナログデータ信号に変調して通信媒体を介して相手端子の電流差動継電器へ送信する変調手段と、
この相手端子の電流差動継電器より通信媒体を介して送信されてくるアナログデータ信号を受信し元のディジタルデータ信号に復調する復調手段と、
この復調手段より出力されたディジタルデータ信号を受信する受信手段と、
前記送信手段と受信手段より得られる自端子および相手端子の電流データから電流差動演算にて保護区間内部の事故発生の有無を検出する第2の演算手段と、
前記サンプリング信号を各端子で同一タイミングとなるように制御するサンプリング同期制御手段と、
を備えたことを特徴とするディジタル電流差動継電器。 - 前記通信媒体として通信線を用いることを特徴とする請求項1記載のディジタル電流差動継電器。
- 前記通信媒体としてディジタル通信網を用い、前記電流差動継電器とディジタル通信網との間にアナログデータ信号またはディジタルデータ信号を多重化し、ディジタル1次群信号に変換するインタフェースで受け渡しを行うことを特徴とする請求項1記載のディジタル電流差動継電器。
- 既存のアナログ通信媒体とディジタル通信網の両者を使用できるように構成したこと特徴とする請求項3記載のディジタル電流差動継電器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003203947A JP4197630B2 (ja) | 2003-07-30 | 2003-07-30 | ディジタル電流差動継電器 |
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