JP4196031B2 - レーザ顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高輝度なレーザを照明用光源として使用する顕微鏡に関し、特に近年微細化の進む半導体を検査するのに有効な高解像度のレーザ顕微鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の顕微鏡用の光源としては、タングステンランプやハロゲンランプが一般的に知られている。タングステンランプやハロゲンランプは通常ケーラー照明と呼ばれる照明系の光源として使用されており、試料に対して全体にムラなく一括で照明できるような構成となっている(以降上記のような照明を一括照明と呼ぶ)。
【0003】
上記照明系にて半導体のように不透明な試料を検査する際には、反射照明あるいは落射照明と呼ばれるような照明系を構成し、照明光路と観察光路とを分岐するために試料と像との間にハーフミラーやハーフプリズムなどの光学部材を挿入し照明光が試料の上からあたるように構成する。
またコンフォーカル顕微鏡のように光源としてレーザを使用するタイプも存在するが、このようなレーザを光源とするような顕微鏡は照明光学系と観察光学系とを一部共用し、また試料への照明も一括に照明するのでなく一点のみを照明し、それをスキャンする事により像を形成するので、上記一括照明とは全く異なった光学システムである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の顕微鏡用光源としては上記のようにケーラー照明のように一括で照明する場合はタングステンランプやハロゲンランプが使用されている。
しかしながら、より高輝度な照明光が要求される場合や半値幅の非常に狭い単一波長が照明光として要求される場合などはタングステンランプやハロゲンランプでは明るさが足りず不十分であった。
【0005】
そこで一括に照明する顕微鏡の照明用光源としてレーザ光源が考えられるが、レーザ光はそのほとんどが直線偏光であるため、試料像を観察する際にいくつかの問題が生じる。例えば、直線偏光で周期パターンを有する試料を照明した場合、周期方向と偏光方向とが一致している場合と、それぞれが直交する場合とでコントラストが異なる。とくに周期が波長オーダーの微細な凹凸からなる周期構造を反射観察する場合に顕著である。これは物体の伝導率がゼロでない場合、偏光方向が周期方向に対し垂直だとパターンに電流が流れて光の電場を打ち消すため、実質的に凹凸構造の溝の内部に光が侵入しにくくなり、その結果凹凸構造を実際よりも浅く感じてしまうことによる。
【0006】
また、直線偏光で「結像」を行う場合、物体面から像面の間の観察系中に、光軸方向に異方性のある光学部材や、位相特性に偏光および入射角依存性のあるビームスプリッタなどが存在していると、偏光起因の非点収差が発生してしまい、偏光方向に依存してベストフォーカス面が変わるという問題も生じる。
そのため高輝度で半値幅の狭い照明光が必要な場合でも、一括照明において光源にレーザを使用する顕微鏡は今まで存在しなかった。
【0007】
またコンフォーカル顕微鏡のような光学システムを構成し、光源としてレーザ光を使用すれば高輝度で半値幅の狭い照明光が欲しいという要求には答えられるが、システム自体が大がかりな物になってしまい、かつ非常に高価なものになってしまう。
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたもので、顕微鏡の光源として高輝度で、かつ半値幅の非常に狭いレーザを一括照明した場合でも、試料の像を鮮明に観察することができる安価な顕微鏡のシステムを得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述のごとき問題を解決するため、請求項1記載の本発明は、直線偏光のレーザ光を発する光源と、前記光源からのレーザ光を試料上の所定領域に一括照射する照明光学系と、前記試料からの光を得るとともに前記試料の像を形成する観察系とを有し、前記照明光学系は、前記光源からの直線偏光のレーザ光を円偏光又はランダム偏光のレーザ光に変換して前記試料に照射するλ/4板を有することを特徴とするレーザ顕微鏡である。
【0009】
請求項2記載の本発明は、直線偏光のレーザ光を発する光源と、前記光源からのレーザ光を試料上の所定領域に一括照射する照明光学系と、前記試料からの光を得るとともに前記試料の像を形成する観察系とを有し、前記照明光学系は、前記光源からの直線偏光のレーザ光を円偏光又はランダム偏光のレーザ光に変換するマルチモードの光ファイバと、前記光ファイバからの光が照射される拡散板を有し、前記拡散板を透過した光を試料に照射することを特徴とするレーザ顕微鏡である。
また、請求項3記載の本発明は、前記λ/4板を透過したレーザ光が入射する位置に拡散板を配置することを特徴とする請求項1に記載のレーザ顕微鏡である。
【0010】
また、請求項4記載の本発明は、前記照明光学系は、試料からの光を前記照明光学系の光路から分離するとともに前記観察系へ導くハーフミラー又はハーフプリズムを備え、前記ハーフミラー又はハーフプリズムと前記光源との間に設けられた拡散板とをさらに有し、前記λ / 4板は、前記光源と前記拡散板との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ顕微鏡である。
【0011】
また、請求項5記載の本発明は、前記照明光学系は、試料からの光を前記照明光学系の光路から分離するとともに前記観察系へ導く偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタと前記光源との間に設けられた拡散板とをさらに有し、前記λ/4板は、前記試料と前記偏光ビームスプリッタとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ顕微鏡である。
また、請求項6記載の本発明は、前記照明光学系は、試料からの光を前記照明光学系の光路から分離するとともに前記観察系へ導くハーフミラー又はハーフプリズムを備え、前記拡散板は前記ハーフミラー又はハーフプリズムと前記光ファイバとの間に設けられ、前記光ファイバは、前記光源と前記拡散板との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ顕微鏡である。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のレーザ顕微鏡における第1実施形態の概略構成を示す図である。
レーザ光源1は、直線偏光のレーザ光を射出する。本実施形態におけるレーザ光源は、例えば266nmの極紫外域の波長のレーザ光を射出する。このレーザ光は、顕微鏡本体(不図示)内に設けられた照明光学系の光路に導かれる。そして、λ/4板2によって円偏光に変換され、拡散板3によって拡散される。この拡散板3はモータ4によって光路に垂直な面内で回転される。拡散板3を透過した光は、リレー光学系5、開口絞り6、視野絞り7を介してハーフミラー8に入射する。
【0013】
ハーフミラー8によって反射したレーザ光は、対物レンズ9を介して試料10上の所定領域に一括照射される。本実施形態の照明光学系(2、3、5、6、7、8、9)は、試料10に対してケーラー照明を達成するように構成されている。
試料10からの反射光は、ハーフミラー8を透過して結像レンズ11によって集光され、紫外域に感度を有するCCDカメラの撮像素子12上に結像される。撮像素子によって撮像された試料の像は、不図示のモニタに表示される。
【0014】
本実施形態において、λ/4板2は、顕微鏡本体内に配置されているが、光源1のユニット内部に配置し、円偏光のレーザ光を顕微鏡本体に伝達するような構成にしても良い。また、光源として極紫外域のレーザ光を射出するレーザ光源を用いたが、この波長に限定されるものではなく、可視域のレーザ光を発する光源であっても良い。
【0015】
以上のような構成によって、試料10に対する照明光は円偏光となり、例えば試料上の観察視野内に周期パターンがどのような方向に延びていても、その方向によってコントラストが異なることはなく、観察視野全面において鮮明な試料像を得ることができる。また、拡散板3を回転させることにより、スペックルパターンを移動させて消すことが可能となり、より鮮明な試料像を得ることができる。尚、拡散板3を光路に垂直な面内で往復運動させるような構成であっても同様の効果を得ることができる。
【0016】
また、拡散板3の手前側(光源側)にλ/4板4を配置しているため、完全に軸対象な偏光が拡散板に入射するので、拡散板通過後もほぼ軸対象に偏光が分布する異が期待できる。これにより、観察系を構成する光学部材の偏光起因によって非点収差が発生することがなく、偏光方向に依存してベストフォーカス面が変わるという問題も生じない。
【0017】
図2は本発明のレーザ顕微鏡における第2実施形態の概略構成を示す図である。本実施形態は、先の第1実施形態における変換部材としてのλ/4板2を光ファイバに置き換えたものであり、それ以外の構成は全く同じである。図2において、図1に示す部材と同一の部材には同じ符号を付しており、その説明は省略する。
【0018】
光源1からのレーザ光は光ファイバ20を介して顕微鏡本体(不図示)に伝達され、照明光学系の光路に導かれる。光ファイバ20から射出されたレーザ光は、ランダム偏光となって拡散板3に照射される。拡散板3を透過した光は試料に照射され、試料の像はCCDカメラの撮像素子によって撮像される。照明光学系を構成する光学素子(3,5,6,7,8,9)と、観察系を構成する素子(9、8、11、12)とは、いずれも顕微鏡本体内に配置されている。
【0019】
本実施形態における光ファイバ20は、マルチモードの光ファイバである。マルチモードの光ファイバの方がシングルモード光ファイバに比べて偏光状態を乱すため望ましい。
上述のごとき第2実施形態によっても、試料に照射される照明光は照明光学系の一番手前側でランダム偏光となり、先の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0020】
次に第3実施形態を図3を用いて説明する。図3において、図1に示す部材と同一の部材には同じ符号を付しており、その詳しい説明は省略する。
レーザ光源1からのレーザ光は、拡散板3によって拡散される。拡散板3を透過した光は、リレー光学系5、開口絞り6、視野絞り7を介して偏光ビームスプリッタ30に入射する。偏光ビームスプリッタ30は、レーザ光の偏光方向の光のみを反射するように構成されている。従って、レーザ光源1からのレーザ光は、ほとんど全てが偏光ビームスプリッタ30によって反射される。
【0021】
偏光ビームスプリッタ30で反射したレーザ光は、λ/4板31によって円偏光に変換され、対物レンズ9を介して試料10上の所定領域に一括照射される。
試料10からの反射光は、再びλ/4板31を透過することにより、照明光の直線偏光の方向に直交する方向の直線偏光となる。従って、試料からの反射光はほとんど全てが偏光ビームスプリッタ30を透過し、結像レンズ11によって集光され、CCDカメラの撮像素子12上に結像される。撮像素子によって撮像された試料の像は、不図示のモニタに表示される。
【0022】
上述のごとき第3実施形態により、先の第1、第2実施形態に比べて光のロスが少ない。従って、同じ光量のレーザ光を使用した時には明るい観察像を得ることが可能になり、また、同じ明るさの観察像を得ようとした時には出力の小さなレーザ光源を使用することができる。
また、試料10に対する照明光は円偏光となり、例えば試料上の観察視野内に周期パターンがどのような方向に延びていても、その方向によってコントラストが異なることはなく、観察視野全面において鮮明な試料像を得ることができる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、顕微鏡の光源として高輝度で、かつ半値幅の非常に狭いレーザを反射照明で一括に照明した場合でも、試料の像を鮮明に観察することができる安価な顕微鏡のシステムを得ることができる。また、例えば試料上の観察視野内に周期パターンがどのような方向に延びていても、その方向によってコントラストが異なることはなく、観察視野全面において鮮明な試料像を得ることができる。
【0024】
また、請求項4記載の本発明によれば、拡散板の手前側(光源側)に変換部材を配置しているため、観察系を構成する光学部材の偏光起因によって非点収差が発生することがなく、偏光方向に依存してベストフォーカス面が変わるという問題も生じない。
また、請求項5記載の本発明によれば、光のロスが少なく、同じ光量のレーザ光を使用した時には明るい観察像を得ることが可能になり、また、同じ明るさの観察像を得ようとした時には出力の小さなレーザ光源を使用することができる。
【0025】
さらに、請求項6記載の本発明によれば、拡散板を回転又は往復運動させることにより、スペックルパターンを移動させて消すことが可能となり、より鮮明な試料像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザ顕微鏡における第1実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】本発明のレーザ顕微鏡における第2実施形態の概略構成を示す図である。
【図3】本発明のレーザ顕微鏡における第3実施形態の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
1・・・レーザ光源
2、31・・・λ/4板
3・・・拡散板
4・・・モータ
5・・・リレーレンズ系
6・・・開口絞り
7・・・視野絞り
8・・・ハーフミラー
9・・・対物レンズ
10・・・試料
11・・・結像レンズ
12・・・撮像素子
20・・・光ファイバ
30・・・偏光ビームスプリッタ

Claims (6)

  1. 直線偏光のレーザ光を発する光源と、前記光源からのレーザ光を試料上の所定領域に一括照射する照明光学系と、前記試料からの光を得るとともに前記試料の像を形成する観察系とを有し、前記照明光学系は、前記光源からの直線偏光のレーザ光を円偏光又はランダム偏光のレーザ光に変換して前記試料に照射するλ/4板を有することを特徴とするレーザ顕微鏡。
  2. 直線偏光のレーザ光を発する光源と、前記光源からのレーザ光を試料上の所定領域に一括照射する照明光学系と、前記試料からの光を得るとともに前記試料の像を形成する観察系とを有し、前記照明光学系は、前記光源からの直線偏光のレーザ光を円偏光又はランダム偏光のレーザ光に変換するマルチモードの光ファイバと、前記光ファイバからの光が照射される拡散板を有し、前記拡散板を透過した光を試料に照射することを特徴とするレーザ顕微鏡。
  3. 前記λ/4板を透過したレーザ光が入射する位置に拡散板を配置することを特徴とする請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
  4. 前記照明光学系は、試料からの光を前記照明光学系の光路から分離するとともに前記観察系へ導くハーフミラー又はハーフプリズムを備え、前記ハーフミラー又はハーフプリズムと前記光源との間に設けられた拡散板とをさらに有し、前記λ / 4板は、前記光源と前記拡散板との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
  5. 前記照明光学系は、試料からの光を前記照明光学系の光路から分離するとともに前記観察系へ導く偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタと前記光源との間に設けられた拡散板とをさらに有し、前記λ/4板は、前記試料と前記偏光ビームスプリッタとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ顕微鏡。
  6. 前記照明光学系は、試料からの光を前記照明光学系の光路から分離するとともに前記観察系へ導くハーフミラー又はハーフプリズムを備え、前記拡散板は前記ハーフミラー又はハーフプリズムと前記光ファイバとの間に設けられ、前記光ファイバは、前記光源と前記拡散板との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ顕微鏡である。
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