地下に埋設した下水管等の既設の埋設管が老朽化する等してこれを新しい埋設管に取り替える場合、従来は、既設の埋設管が埋設されている区域を地上から地下に向けて開削した後、既設の埋設管を新しい埋設管に取り替えて埋め戻す開削工法が多用されていた。こうした開削工法による埋設管の取替え方法は、都市部で交通渋滞をもたらすほか、地盤が緩みやすいという問題があった。
こうした問題を解消するため、地中に埋設されている既設の埋設管を管推進機により掘削して排出し、こうして形成された地下坑内に、新しい新設の埋設管を管推進機により推進して埋設することにより、埋設管を取り替える方法が最近開発されている。こうした埋設管の取替え方法に関する技術としては、これまで種々の技術が提案されている。
しかしながら、こうした従来例の技術のうちの多くの技術は、何れも、新設の埋設管を既設の埋設管の埋設経路と同じ位置に埋設して既設の埋設管と取り替える場合にしか使用することができない。そのため、既設の埋設管の埋設経路を部分的に修正して新設の埋設管を埋設する必要が生じた場合には、こうした要求に応えることができない。また、これらの技術は、既設の埋設管をこれと略同形の新設の埋設管に取り替える場合にしか使用することができない。そのため、当該地域の人口の増加や周辺環境の変化から、新設の埋設管の口径を拡大する要求が生じた場合には、こうした要求に応えることもできない。
種々の従来例の技術のうち、こうした問題を解消できる技術としては、特許文献1に記載の既埋設管の置換工法に係る発明を挙げることができる。この特許文献1に記載の従来の技術は、土の支持力を向上するための充填材を既設の埋設管の内部及び外周部一帯に注入することにより、これら内部及び外周部一帯を略均一で十分な支持力を有する状態にした後、既設の埋設管を管推進機としての掘削機で切削してから、新設の埋設管を推進埋設することにより、既設の埋設管を新設の埋設管と取り替えるようにした工法である。
そこで、この従来の技術やこれに関連する事項を、図13や図14を用いて説明する。図13は、従来の一般的な管推進機の先導体を説明するための縦断面図、図14は、特許文献1に記載の従来の技術に係る既埋設管の置換工法を説明するための縦断面図である。なお、図13には、後の説明の便のため、管推進機の一般的な使用態様とは異なり、既設の埋設管1内に充填材3を充填した後、既設の埋設管1を先導体10により掘削している状態を図示している。
これらの図において、1は単位長さに製作されすでに地中の埋設されている既設の埋設管、3はこの既設の埋設管1内に充填されて固化時に強度を有する充填材、10は前部にカッターヘッド13を有し後部に新設の埋設管11を連結して地中を掘進する先導体、11は単位長さに製作され新たに地中に埋設される新設の埋設管、12は先導体10やこの後部に連結された新設の埋設管11を推進する元押し装置、13は先導体10に設けられ回転駆動されて前方の地山を掘削するカッターヘッド、20は地山、21は発進立坑、22は到達立坑である。
管推進機は、大別すると、地中を掘進する先導体10と、発進立坑21に設置され先導体10や新設の埋設管11を推進する元押し装置12とで構成され、カッターヘッド13で地山を掘削しつつ先導体10や埋設管11を元押し装置12で推進することにより新設の埋設管11を地中に埋設する。この管推進機を使用して管推進工法を実施するときには、図示しない排土管や埋設管11が先導体10の後端に連結され、適宜継ぎ足される。埋設管1,11は、1〜2.43m程度の単位長さを有し、互いに嵌め合わせて接続することができるようになっている。
図13には、既設の埋設管1の内部にだけ充填材3を充填した後、こうした管推進機を使用して既設の埋設管1やその周辺をカッターヘッド13により掘削している状態を示している。既設の埋設管1の内部への充填材の充填は、埋設管1の外周部への充填とは異なり、発進立坑21側や到達立坑22側から比較的容易に行えるので、図13には、充填材3を既設の埋設管1の内部にだけ充填する例を示している。なお、カッターヘッド13での掘削対象となる既設の埋設管1は、鉄筋コンクリート製であるので、カッターヘッド13には、ローラビット13aを取り付けている。
図14には、管推進機を使用して特許文献1に記載の従来の技術を実施しているときの実施態様の一例を図示している。この従来の技術では、充填材を既設の埋設管1の内部及び外周部の双方に充填するが、その場合、ここに示す例では、充填材3を、注入の容易な発進立坑21側や到達立坑22側から既設の埋設管1内に注入することにより、同埋設管1の内部を通じてその外周部(地山20)に充填するようにしいている。そのため、既設の埋設管1の管壁には、管内に充填した充填材3を埋設管1の外周部に送り出すための貫通孔1aを埋設管1の上部や下部等に多数設けている。
図14には、この貫通孔1aから埋設管1の外周部に送り出された充填材3を、埋設管1の内部に充填した充填材3と共に図示しているとともに、こうして地盤改良された既設の埋設管1付近の地山20を先導体10で掘削し始めたときの状態を示している。なお、充填材3は、地上から注入することもできるが、その場合には、場所的制約のある地上から既設の埋設管1に充填材の注入装置により多数の貫通孔1aを穿設するという困難な作業を要し実際上は困難である。すなわち、充填材3を既設の埋設管1の内部に充填できるように埋設管1の上部に多数の貫通孔1aを明けることを要するほか、充填材3を埋設管1の下側の外周部に充填できるように埋設管1の下部にも多数の貫通孔1aを明けることことが必要となり、多大の時間と費用を要するだけではなく、技術的にも困難が伴う。
この従来の技術は、既設の埋設管1の内部及び外周部一帯を充填材3の注入により略均一な支持力を有する状態に地盤改良してから同埋設管1やその周辺を掘削するようにしているので、充填材3の注入を理想的な状態で行えれば、既設の埋設管1が周辺の地山に一体的に固定されて、掘削中の埋設管1がカッターヘッド13の掘削力により変位するようなことはない。また、このように既設の埋設管1の周辺を均質な強度に地盤改良するようにしているので、既設の埋設管1の埋設経路や口径に左右されることなく、所望の口径の新設の埋設管11を、設定した所望の経路に従って埋設することが可能となる。
特開平9ー210249号公報(第2−3頁、図1−6)
ところで、地中に埋設されている下水管等の管は、隣り合う既設の埋設管1を互いに嵌合して接続しているが、その場合、埋設管1同士が若干相対変位できるように両者の嵌合部分に隙間を設けるようにしているので、接続された埋設管1同士は、互いに自由に回転することができる。そのため、隣り合う既設の埋設管1を互いに回転しないように一体化してから埋設管1をカッターヘッド13で掘削しないと、掘削中の埋設管1が図13に矢印で示すようにカッターヘッド13と共に回転(供回り)して円滑に掘削することができなくなる。そして、一旦こうした供回りが発生すると、この供回りを解消する術がないために、先導体10は、やがて掘進不能になる。
この点について特許文献1に記載の従来の技術をみると、この従来の技術では、各既設の埋設管1の内部及び外周部一帯に充填材3を充填して埋設管1の供回りを抑止する方法が採られている。しかしながら、この従来の技術では、各埋設管1の供回りが個々の埋設管と充填材3との接着力及び個々の埋設管と地山との摩擦力により抑止されることとなるので、順次掘削される埋設管1の何れかが、例えば硬い地山20の掘削時にこれらの接着力及び摩擦力に打ち勝つような回転掘削反力をカッターヘッド13から受けたときには、その埋設管1に供回りが発生して、先導体10が掘進不能になる危惧がある。
また、そのような方法により埋設管1の供回を抑止するにしても、充填材3を、常に意図した通りに望ましい状態で充填できるとは限らず、特に既設の埋設管1の外周部については、充填材3が不均一に充填される可能性が大きい。すなわち、地山20は、大小様々な空隙や硬軟各様の土質が混在する等それ自体均質ではないので、例えば、空隙の多い地山領域では、充填材3がこの地山領域に偏って充填され、また、地下水の湧出する地山領域では、充填材3が地下水で希釈されて強度が低下して本来の機能を発揮することができなくなる。
この出願の発明は、こうした従来の技術にみられる問題を解決するために創作されたものであって、その技術課題は、既設の埋設管の掘削時に掘削中の既設の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを確実に抑止することができる埋設管の取替え方法及びその方法の実施に使用する埋設管取替え用の管内周壁加工装置を提供することにある。
前記の技術課題を達成するため、埋設管の取替え方法に係るこの出願の第1番目の発明及び第2番目の発明では、それぞれ次の1)及び2)の方法を採用し、この出願の埋設管取替え用の管内周壁加工装置の発明では、次の3)のように構成した。
1)前部にカッターヘッドを有し後部に埋設管が連結される先導体を備え、先導体や埋設管を推進しつつカッターヘッドで地山を掘削することにより埋設管を地中に埋設する管推進機を使用して、既設の埋設管をカッターヘッドで掘削しつつ新設の埋設管を埋設して埋設管を取り替える埋設管の取替え方法において、
複数の既設の埋設管の各内周壁に、充填材を埋め込むことができる有底の凹部を加工した後、発進立坑側及び到達立坑側の少なくとも一方から複数の既設の埋設管内に充填材を充填してこれを前記凹部に埋め込むようにし、これにより、これらの既設の埋設管同士を互いに回転しないように一体化して、カッターヘッドによる既設の埋設管の掘削時に掘削中の既設の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを抑止するようにした。
2)前部にカッターヘッドを有し後部に埋設管が連結される先導体を備え、先導体や埋設管を推進しつつカッターヘッドで地山を掘削することにより埋設管を地中に埋設する管推進機を使用して、既設の埋設管をカッターヘッドで掘削しつつ新設の埋設管を埋設して埋設管を取り替える埋設管の取替え方法において、
複数の既設の埋設管の各内周壁に嵌合用の凹部を加工し、次いで、既設の埋設管の内周壁に突設するための突設部材を嵌合用の凹部に嵌合して突設した後、発進立坑側及び到達立坑側の少なくとも一方から複数の既設の埋設管内に充填材を充填して突設部材を充填材内に埋没させ、これにより、これらの既設の埋設管同士を互いに回転しないように一体化して、カッターヘッドによる既設の埋設管の掘削時に掘削中の既設の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを抑止するようにした。
3)前記1)又は2)の埋設管の取替え方法において複数の既設の埋設管の各内周壁に凹部を加工するための埋設管取替え用の管内周壁加工装置を構成する場合に、
既設の埋設管の内周壁に押し付け力を付与して駆動することにより同内周壁に凹部を加工する工具と、この工具が取り付けられる管内周壁加工装置本体と、この管内周壁加工装置本体に設置され既設の埋設管の内周壁の加工時に同埋設管の内周壁に当接させて前記押し付け力の反力を受け得るようにする反力受け部材と、管内周壁加工装置本体に付設されこれを既設の埋設管内で移動可能にする移動手段とを設けて構成した。
前記1)の方法を採用した埋設管の取替え方法に係るこの出願の第1番目の発明では、複数の既設の埋設管内に充填材を充填して、これらの埋設管の各内周壁に加工した有底の凹部にこの充填材を埋め込むようにしている。それゆえ、充填材は、管外周側への充填材の逃げ口のない埋設管に充填されることとなり、従来の技術のように、埋設管内に充填される充填材が多数の貫通孔から地山側に流出する恐れはない。そのため、充填材を複数の既設の埋設管の内部に均一かつ密に充填することが可能となり、その当然の結果として、これらの既設の埋設管と充填材との結合力が高められて、各既設の埋設管同士の相対回転が行われにくくなる。
こうしたことに加えて、複数の埋設管の各内周壁に加工した凹部に充填材を埋め込むようにしたことにより、これらの既設の埋設管同士を互いに回転させないように確りと一体化させることができる。そのため、既設の埋設管の掘削時に、カッターヘッドの回転に伴って、掘削中の埋設管に回転力が作用しても、前記凹部に充填した充填材の剪断抵抗により、掘削中の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを抑止することができる。以上のことから、本発明に係る埋設管の取替え方法では、既設の埋設管の掘削時に掘削中の既設の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを確実に抑止することができる。
前記2)の方法を採用した埋設管の取替え方法に係るこの出願の第2番目の発明では、嵌合用の凹部に突設部材を嵌合した、管外周側への充填材の逃げ口のない複数の既設の埋設管に充填材を充填するようにしている。それゆえ、前記第1番目の発明と同様、複数の既設の埋設管内に充填される充填材が地山側に流出する恐れはないので、充填材をこれらの埋設管の内部に均一かつ密に充填することが可能となり、その結果、複数の既設の既設の埋設管と充填材との結合力が高められて、各既設の埋設管同士の相対回転が行われにくくなる。
こうしたことに加えて、複数の既設の埋設管の各内周壁に加工した嵌合用の凹部に突設部材を嵌合して突設し、この突設した突設部材を充填材内に埋没させるようにしたことにより、これらの既設の埋設管同士を互いに回転させないように確りと一体化させることができる。そのため、既設の埋設管の掘削時に、カッターヘッドの回転に伴って、掘削中の埋設管に回転力が作用しても、充填材内に埋没した突設部材がその回転力に対抗して、掘削中の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを抑止することができる。以上の結果、本発明に係る埋設管の取替え方法においても、既設の埋設管の掘削時に掘削中の既設の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを確実に抑止することができる。
前記3)のように構成したこの出願の埋設管取替え用の管内周壁加工装置の発明では、反力受け部材を既設の埋設管の内周壁に当接させるとともに、既設の埋設管の内周壁の加工部に工具を押し付けて駆動し、このとき生じる押し付け力の反力を反力受け部材で受けながら前記内周壁の加工部に工具で凹部を形成する。その際、凹部を長溝状のものに加工する場合等、凹部の加工形態によっては、管内周壁加工装置本体を移動手段により適宜移動しながら凹部を加工する。次いで、この凹部が形成された既設の埋設管と隣り合う次の既設の埋設管にも、同様にの手法により凹部を形成するが、その際、凹部を断続的な穴状のものに加工する場合等、管内周壁加工装置本体を次の既設の埋設管の加工開始位置に移動させる必要があるときには、管内周壁加工装置本体を移動手段により移動する。本発明に係る埋設管取替え用の管内周壁加工装置は、こうした過程を必要回数繰り返すことにより、前記1)又は2)の埋設管の取替え方法の実施に必要な凹部を複数の既設の埋設管の各内周壁に加工する。
以下の説明から明らかなように、埋設管の取替え方法に係るこの出願の第1番目の発明及び第2番目の発明では、それぞれ、「課題を解決するための手段」の項に示した1)及び2)の方法を採用しているので、両発明によれば、既設の埋設管の掘削時にこの埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを確実に抑止することができる埋設管の取替え方法を得ることができる。その結果、既設の埋設管の掘削時に、埋設管を円滑に掘削することができなくなったり、先導体が掘進不能になったりするようなことはない。また、これらの何れの発明も、充填材は、既設の埋設管の内部にだけ充填すれば済み、従来の技術のように埋設管の外周部に充填する必要はないので、充填材の消費量を従来の技術よりも少なくすることができて、埋設管の取替え経費を低減することができる。さらに、充填材の充填は、このように既設の埋設管の内部にだけ行えばよいので、充填材を発進立坑側及び到達立坑側の少なくとも一方から埋設管内に充填することによりその充填を容易に行うことができる。
特に、この出願の第2番目の発明では、カッターヘッドの回転に伴って埋設管に作用する回転力に対し、第1番目の発明のように、埋設管の凹部に充填した充填材の剪断抵抗により対抗するのではなく、充填材内に埋没した突設部材により対抗するので、充填材の強度を弱めることが可能となって、埋設管を掘削するときの掘削負荷を低減することができる。第1番目の発明及び第2番目の発明に係る埋設管の取替え方法を実施する場合に、特に、特許請求の範囲の請求項3に記載のように実施すれば、既設の埋設管の取替え距離が短い場合や埋設管の掘削が到達立坑の近くまで進展して未掘削の埋設管の全長が短くなった場合のように、既設の埋設管の外周面と地山との間の摩擦抵抗が少ない場合でも、掘削中の埋設管がカッターヘッドと共に回転するのを確実に抑止することができる。
この出願の埋設管取替え用の管内周壁加工装置の発明では、この出願の第1番目の発明及び第2番目の発明に係る埋設管の取替え方法の実施に必要な凹部を、手狭な既設の埋設管内に人が入らないでも、その内周壁に加工することができる。そのため、人が入れないような小口径の既設の埋設管でも、こうした凹部を加工することができ、また、人が入れるような口径の既設の埋設管であっても、手狭な埋設管内での人力による作業を行わなくても済み、埋設管への凹部の加工作業を効率的に行うことができる。
以下、図1乃至図12に基づいて、この出願の埋設管の取替え方法及び埋設管取替え用の管内周壁加工装置の発明を実施するための望ましい形態を説明する。
以下に述べるこの出願の第1番目の発明及び第2番目に係る埋設管の取替え方法は、すでに述べた従来の技術と同様、前部にカッターヘッド13を有し後部に新設の埋設管11が連結される先導体10を備え、先導体10や埋設管11を推進しつつカッターヘッド13で地山を掘削することにより埋設管11を地中に埋設する管推進機を使用して、既設の埋設管1をカッターヘッド13で掘削しつつ新設の埋設管11を埋設して埋設管を取り替えるようにしたものである。また、この出願の発明に係る埋設管取替え用の管内周壁加工装置は、この出願の第1番目の発明及び第2番目に係る埋設管の取替え方法の実施に直接使用する既設の埋設管の内周壁の加工装置である。
まず、図1乃至図10に基づいて、この出願の埋設管の取替え方法の第1番目の発明及びこの出願の埋設管取替え用の管内周壁加工装置の発明を実施するための望ましい実施の形態について具体的に説明する。
図1は、この出願の第1番目の発明に係る埋設管の取替え方法を実施するときの第1の態様を示す縦断面図、図2は、この出願の第1番目の発明に係る埋設管の取替え方法の実施に使用する埋設管取替え用の管内周壁加工装置を示す縦断面図、図3は、図2の横断面図、図4は、図1における既設の埋設管の内部を拡大して示す斜視図、図5は、図1における既設の埋設管の前端部付近を拡大して示す正面図、図6は、図1における既設の埋設管の前端部付近を拡大して示す縦断面図、図7は、図6のA−A線断面図、図8は、この出願の第1番目の発明に係る埋設管の取替え方法を実施するときの第2の態様を説明するための既設の埋設管の横断面図、図9は、この出願の第1番目の発明に係る埋設管の取替え方法を実施するときの第3の態様を説明するための既設の埋設管の内部を示す斜視図、図10は、図9の既設の埋設管の横断面図である。
これらの図おいて既述の図13及び図14と同一の符号を付けた部分は、これら図13及び図14と同等の部分を表すので、詳述しない。
本実施の形態に係る埋設管の取替え方法は、複数の既設の埋設管1の各内周壁に、充填材3を埋め込むことができる有底の凹部2を加工した後、発進立坑21側及び到達立坑22側の少なくとも一方から複数の既設の埋設管1内に充填材3を充填してこれを凹部2に埋め込むようにしたものである。こうした方法を実施すると、先導体10を掘進させることにより、既設の埋設管1をカッターヘッド13で掘削するときに、複数の既設の埋設管1同士が互いに回転しないように一体化するため、掘削中の埋設管1がカッターヘッド13と共に回転して供回りするのを抑止することができる。本埋設管の取替え方法では、こうした方法を基本技術にした上で、図5乃至図7等に基づいて後に詳述する、「到達立坑22間近の既設の埋設管1の前端部を到達立坑22の壁部22aに対して回転不能に固定する方法」を補助技術として併用している。
こうした埋設管の取替え方法を実施するため、充填材3を埋設管1の内部に充填する場合に、ここに示す例では、図1に示すように、発進立坑21から到達立坑22に至る一連の多数の既設の埋設管1の全てに一度に充填している。しかしながら、発進立坑21から到達立坑22に至る一連の既設の埋設管1の距離が長いときには、幾度かに分けて充填材3を充填するようにしてもよい。すなわち、充填材3を、一連の埋設管1内にある程度長い距離だけ充填して凹部2に埋め込むようにした後、この距離分、先導体10を掘進させて埋設管1を掘削し、しかる後、再度、ある程度長い距離だけ充填材3を充填して先導体10を掘進させ、こうして先導体10の掘進が進展する都度、一連の埋設管1内に充填材3を所定距離だけ充填するようにすることもできる。
充填材3を一連の既設の埋設管1に一度に充填するときには、発進立坑21側及び到達立坑22側の一方から充填してもよいし、双方から充填するようにしてよい。一方、充填材3を幾度かに分けて充填するときには、発進立坑21側から充填する。充填材3を既設の埋設管1に充填すると、充填材3は、埋設管1の内周壁に形成した凹部2に入り込み固化する。そうすると、埋設管1に回転力を加えても、凹部2に充填されて固化した充填材3の剪断抵抗が埋設管1の回転力に抗する。本埋設管の取替え方法では、こうした充填材3の働きにより既設の埋設管1の供回りを抑止するため、充填材3は、カッターヘッド13による掘削時に埋設管1に加わる回転トルクに対抗でき、かつ、カッターヘッド13で掘削可能な強度のものを選定する。こうした充填材3としては、例えば、セメントミルクやセメント・ベントナイト等の固化時に強度のでるものを使用する。
複数の既設の埋設管1の内周壁に加工する凹部2は、図1及び図4に示す例では、横断面V字状をなす底の深い長溝状のものであり、複数の既設の埋設管1にわたって一筋形成している。また、図8に示す例では、図1及び図4に示す例よりも底の浅い長溝状のものであり、こうした凹部2を複数の既設の埋設管1にわたって周方向に間断なく多数形成している。図9及び図10に示す例では、有底穴状の凹部2を複数の既設の埋設管1のそれぞれの接続部に一つずつ形成している。本埋設管の取替え方法を実施するときには、凹部2は、複数の既設の埋設管1のそれぞれの内周壁の管嵌合部(管の接続部)に最低でも一個所は形成されるようにする。この凹部2は、埋設管1の内部に充填した充填材3を、埋設管1の外周側に流出させないように埋め込むことができる底のある構造であれば、その構造は問わない。
こうした凹部2を複数の既設の埋設管1の各内周壁に加工するための埋設管取替え用の管内周壁加工装置を図2及び図3に基づいて説明する。この図2及び図3に示す例は、図4に示す長溝状の凹部2を加工するための加工装置の例である。
図2及び図3において、30はカッタ31が取り付けられる管内周壁加工装置本体、31は既設の埋設管1の内周壁に押し付け力を付与して回転駆動することにより同内周壁に長溝状の凹部2を加工する工具としての丸鋸状のカッタ、32はカッタ31を回転可能に支持するカッタ支持ロッド、33は管内周壁加工装置本体30を既設の埋設管1内で移動可能にするための移動手段をなすタイヤによる車輪、34は管内周壁加工装置本体30に設置され既設の埋設管1の内周壁の加工時に埋設管1の内周壁に当接させてカッタ31の前記押し付け力の反力を受ける反力受け部材としての反力ソリ、35はこの反力ソリ34をスプリング36と協働して上下動可能に支持する反力ソリ支持ロッド、36は管内周壁加工装置本体30と反力ソリ34との間に介在させて反力ソリ34を上方に付勢するスプリング、37はカッタ支持ロッド32のブラケット32a側の枢支部を支点にしてこのカッタ支持ロッド32を上下方向に揺動させるように動作するアームである。
管内周壁加工装置本体30内には、車輪33を回転駆動して同装置本体30を自走できるようにするためのモータが内蔵されている。ここに示す例では、管内周壁加工装置本体30を既設の埋設管1内で移動可能にするための移動手段を、このようにモータと車輪33とにより構成している。なお、こうしたモータを設けずに、管内周壁加工装置本体30を到達立坑22側からワイヤで牽引して移動させることができるように移動手段を構成してもよい。カッタ31は、図3に示すように、回転駆動することにより横断面V字状の溝を形成できるような形状をなしており、図示しないモータにより回転駆動される。反力ソリ34は、図3に図示のごとく既設の埋設管1の内周壁と円弧状の線で部分接触することができるように上面を球面状に形成している。こうした形状に形成することにより、カッタ31の押し付け力の反力を確りと受けつつ管内周壁加工装置本体30の移動時の埋設管1の内周壁との摩擦抵抗を低減することができる。
カッタ支持ロッド32は、図3に示すようにカッタ31の両側にそれぞれ配置して一対設置している。これら一対のカッタ支持ロッド32は、上端部を、ブラケット32aを介して管内周壁加工装置本体30に回動可能に軸着している。また、一対のカッタ支持ロッド32の下端部には、それぞれブラケット32bを固着して、カッタ31をこれら一対のブラケット32bに回転可能に軸支している。一対のカッタ支持ロッド32の各中間部には、ブラケット32cを介してアーム37がそれぞれ軸着されている。管内周壁加工装置本体30内には、アーム37を変位させるように駆動するための油圧シリンダ等の駆動装置が内蔵されている。そして、この駆動装置でアーム37を変位させることにより、一対のカッタ支持ロッド32を、ブラケット32a側の同支持ロッド32の軸着部を中心に上下方向に揺動させてカッタ31に前記の押し付け力を付与させたり、その押し付け力の付与を解除させたりすることができるように構成されている。
こうした構造を備えた埋設管取替え用の管内周壁加工装置により既設の埋設管1に凹部2を加工するときには、反力ソリ34をスプリング36で押し付けるようにして埋設管1の内周壁に当接させるとともに、アーム37を変位させてカッタ支持ロッド32を下方に揺動させる。そうすると、カッタ31は、埋設管1の内周壁の加工部である同内周壁の底部に押し付けられ、その際に生じる押し付け力の反力は、反力ソリ34で受けられる。そして、これと並行してカッタ31を回転駆動すると、埋設管1の内周壁の底部に凹部2が形成され、その際、車輪33を回転駆動して管内周壁加工装置本体30を漸次前進させると、その内周壁の下部に溝状の凹部2が形成される。
こうして管内周壁加工装置本体30を前進させながら既設の埋設管1に溝状の凹部2を形成して最初の埋設管1の加工を終了すると、管内周壁加工装置本体30は、この埋設管1と隣り合う第2の既設の埋設管1の後端付近まで移動するので、この第2の既設の埋設管1の内周壁にも、同様の方法によりカッタ31で凹部2を形成する。本埋設管取替え用の管内周壁加工装置は、こうした過程を必要回数繰り返すことにより、前述した埋設管の取替え方法の実施に必要な凹部2を複数の既設の埋設管1の各内周壁に加工する。
下水管等の既設の埋設管1には、人が入れないような小口径の管が多いため、埋設管1内に作業員が入って凹部2を加工することができない場合が多々ある。また、既設の埋設管1が人が入れるような管の場合でも、手狭な埋設管1内に作業員が入って凹部2を加工するには、多大の労力と時間を要する。これに対し、本埋設管取替え用の管内周壁加工装置を使用すると、既設の埋設管1内に人が入らないでも、凹部2をその内周壁に機械的に加工することができるので、人が入れないような小口径の既設の埋設管1でも、凹部2を加工することができ、更には凹部2の加工作業を効率的に行うことができる。
埋設管取替え用の管内周壁加工装置について、既設の埋設管1に長溝状の凹部2を加工する装置を例にして述べたが、図9及び図10に図示の有底穴状の凹部2を加工する装置を構成する場合には、図2及び図3の管内周壁加工装置において、カッタ31をドリルに換え、このドリルを埋設管1の内周壁の法線方向に押し付け得るように改変する等、この管内周壁加工装置の基本的な構造を変えることなく構成することができる。要するに、有底穴状の凹部2等の種々の凹部2を複数の埋設管1の内周壁に加工する管内周壁加工装置は、既設の埋設管1の内周壁に押し付け力を付与して駆動することによりこの内周壁に凹部を加工する工具と、この工具が取り付けられる管内周壁加工装置本体30と、この管内周壁加工装置本体30に設置され埋設管1の内周壁の加工時にこの内周壁に当接させて前記押し付け力の反力を受け得るようにする反力受け部材34と、管内周壁加工装置本体30に付設されこれを埋設管1内で移動可能にする車輪33及びモータ等の移動手段とを設けることにより、図2及び図3の管内周壁加工装置に準じて構成することができる。
以上、第1番目の発明の埋設管の取替え方法に係る基本技術とこの基本技術の実施に使用する埋設管取替え用の管内周壁加工装置とに関する実施の形態について述べたが、以下に、この基本技術の作用効果について説明する。
以上述べた埋設管の取替え方法にあっては、複数の既設の埋設管1内に充填材3を充填して、これらの埋設管1の各内周壁に加工した有底の凹部2にこの充填材3を埋め込むようにしている。それゆえ、充填材3は、管外周側への充填材3の逃げ口のない埋設管1に充填されることとなり、従来の技術のように、埋設管1内に充填される充填材3が多数の貫通孔1aから管周辺の地山20の大きな空隙に浸入する等、地山20側に流出することはない。そのため、充填材3を複数の既設の埋設管1の内部に均一かつ密に充填することが可能となり、その当然の結果として、これらの既設の埋設管1と充填材3との結合力が高められて、各既設の埋設管1同士の相対回転が行われにくくなる。
こうしたことに加えて、複数の既設の埋設管1の各内周壁の凹部2に充填材3を埋め込むようにしたことにより、これらの埋設管1同士を相対回転させないように確りと一体化させることができる。そのため、既設の埋設管1の掘削時に、カッターヘッド13の回転に伴って掘削中の埋設管1に回転力が作用しても、凹部2に充填した充填材3の剪断抵抗により、埋設管1がカッターヘッド13と共に回転するのを抑止することができる。以上のことから、本埋設管の取替え方法では、既設の埋設管1の掘削時に掘削中の埋設管1がカッターヘッド13と共に回転して供回りするのを確実に抑止することができる。その結果、既設の埋設管1の掘削時に、埋設管1を円滑に掘削することができなくなったり、先導体10が掘進不能になったりするようなことはない。
また、埋設管1の供回りを抑止する場合、充填材3は、既設の埋設管1の内部にだけ充填すれば済み、従来の技術のように既設の埋設管1の外周部に充填する必要はないので、充填材3の消費量を従来の技術よりも少なくすることができて、埋設管の取替え経費を低減することができる。さらに、充填材3の充填は、このように既設の埋設管1の内部にだけ行えばよいので、充填材3を発進立坑21側及び到達立坑22側の少なくとも一方から埋設管1内に充填することによりその充填を容易に行うことができる。
ところで、この埋設管の取替え方法は、充填材3が充填された一連の複数の既設の埋設管1を互いに回転させないように一体化させて、この一体状態にある埋設管1の全体の長さを長くし、これにより、埋設管1の外周面と地山20との間の摩擦抵抗を増加させて埋設管1の供回りを抑止しようとするものである。したがって、一体状態にある埋設管1の全長をある程度長くしないと、一体化された一連の埋設管1がその内部の充填材3と一体となって回転して、地山20内でローリングする危惧がある。そのため、ここに示す例では、こうした危惧を解消するための供回り防止部材40を使用した工法を、以上述べた基本技術に対して補助技術として併用している。
そこで、図1及び図5乃至図7に基づき、この供回り防止部材40を使用した工法について説明する。
これらの図において、40は到達立坑22間近の既設の埋設管1の前端部を到達立坑22の壁部22aに対して回転不能に固定するための供回り防止部材、41は既設の埋設管1に充填する充填材3の中に埋没させて充填材3のローリングを抑止するための横断面十字状の羽根、42はこの羽根41が突設され到達立坑22の壁部22aに固定される正面視十字状のベースプレート、43はこのベースプレート42に設けたボルト孔に装着してベースプレート42を到達立坑22の壁部22aに螺着するためのボルトである。
回転防止部材40は、羽根41とベースプレート42とで構成され、これを使用するときには、羽根41を到達立坑22間近の既設の埋設管1の内部に挿入した上で、ベースプレート42を到達立坑22の壁部22aにボルト43で固定する。そして、既設の埋設管1内に充填材3を充填して羽根41を埋設管1内の充填材3の中に埋没させると、羽根41は、埋設管1が充填材3と共に供回りしようとするときに、充填材3を介して埋設管1の供回りに抵抗してその供回りを抑止する。この回転防止部材40は、既設の埋設管1の埋設距離が短い場合や埋設管1の掘削が進展して未掘削の埋設管1の全長が短くなった場合のように既設の埋設管1の外周面と地山20との間の摩擦抵抗が少ない作業条件の下で使用するのに好適である。このような場合にこれを使用すると、こうした埋設管1の供回が生じやすい作業条件の下で、その供回りを確実に抑止することができる。
最後に、図11及び図12に基づき、この出願の埋設管の取替え方法の第2番目の発明を実施するための望ましい実施の形態について具体的に説明する。
図11は、この出願の第2番目の発明に係る埋設管の取替え方法を実施するときの一態様を説明するための既設の埋設管の内部を示す斜視図、図12は、内部に充填材が充填された状態にある図11の既設の埋設管の横断面図である。これらの図おいて既述の図と同一の符号を付けた部分は、同図と同等の部分を表すので、詳述しない。
本実施の形態に係る埋設管の取替え方法は、複数の既設の埋設管1の各内周壁に嵌合用の凹部2’を加工し、次いで、既設の埋設管1の内周壁に突設するための突設部材5を嵌合用の凹部2’に嵌合して突設した後、発進立坑21側及び到達立坑22側の少なくとも一方から複数の既設の埋設管1内に充填材3を充填して突設部材5を充填材3内に埋没させるようにしたものである。こうした方法を実施すると、先導体10を掘進させることにより、既設の埋設管1をカッターヘッド13で掘削するときに、複数の既設の埋設管1同士が互いに回転しないように一体化するため、掘削中の埋設管1がカッターヘッド13と共に回転して供回りするのを抑止することができる。
複数の既設の埋設管1の内周壁に加工する嵌合用の凹部2’は、図4に図示の既述の凹部2と同様、横断面V字状をなす底の深い長溝状のものであり、複数の既設の埋設管1にわたって一筋形成している。したがって、この凹部2’は、図2及び図3に図示の既述の埋設管取替え用の管内周壁加工装置により加工することができる。第2番目の発明に係る埋設管の取替え方法の場合には、凹部2’は、突設部材5を嵌合するためのものであるので、必ずしも有底のものである必要はなく、前記の管内周壁加工装置で凹部2’を更に深く加工してスリット状のものにしてもよい。突設部材5は、こうした嵌合用の凹部2’に嵌合させることができる横断面V字状の嵌合部を有して長尺の棒状体をなし、この嵌合部を嵌合用の凹部2’に嵌合したときに既設の埋設管1の内周壁から一部突出するように形成されている。この突設部材5は、カッターヘッド13による掘削時に埋設管1に加わる回転トルクに対抗でき、かつ、カッターヘッド13で掘削可能な強度のものを選定し、例えば、硬質の合成樹脂で製作する。
施工現場において突設部材5を複数の既設の埋設管1の凹部2’に嵌合するときには、例えば、発進立坑21及び到達立坑22の一方を作業の拠点にして、長尺の突設部材5を凹部2’に嵌め込みながら既設の埋設管1の奥に順次押し込んでゆく。また、長尺の突設部材5を発進立坑21及び到達立坑22の双方からそれぞれ凹部2’に嵌め込んでゆき、埋設管1の奥の方で合体させて一本化こともできる。こうした作業が終了した後、既設の埋設管1内に充填材3を充填するが、埋設管1への充填材3の充填は、すでに述べた方法と同様の方法で行えばよい。充填材3は、第1番目の発明の方法と同様、固化時に強度のでるものを使用するが、後述するように、第1番目の発明の方法で用いる充填材3よりも強度の弱いものを使用することもできる。この埋設管の取替え方法を実施するときには、前述した供回り防止部材40を必要に応じて使用することができる。
本実施の形態に係る埋設管の取替え方法では、凹部2と同様の有底の凹部2’に突設部材5が嵌合された、管外周側への充填材3の逃げ口のない複数の既設の埋設管1に充填材を充填するようにしているので、第1番目の発明に係る方法と同様、埋設管1内に充填される充填材3が地山20側に流出することはない。そのため、充填材3を複数の既設の埋設管1の内部に均一かつ密に充填することが可能となり、その結果、これらの既設の埋設管1と充填材3との結合力が高められて、各既設の埋設管1同士の相対回転が行われくくなる。ここに示す例では、嵌合用の凹部2’を有底のものにしているが、この凹部2’を底のないスリット状のものに形成しても、凹部2’は、突設部材5を嵌合することにより閉塞されて、複数の既設の埋設管1には、充填材3の逃げ口ができないので、同様の作用効果を奏する。
こうしたことに加えて、複数の埋設管1の各内周壁に加工した嵌合用の凹部2’に突設部材5を嵌合して突設し、この突設した突設部材5を充填材3内に埋没させるようにしたことにより、これらの既設の埋設管1同士を互いに回転させないように確りと一体化させることができる。そのため、既設の埋設管1の掘削時に、カッターヘッド13の回転に伴って、掘削中の埋設管1に回転力が作用しても、充填材3内に埋没した突設部材5がその回転力に対抗して、掘削中の埋設管1がカッターヘッド13と共に供回りするのを抑止することができる。
以上のことから、本埋設管の取替え方法においても、既設の埋設管1の掘削時に掘削中の埋設管1がカッターヘッド13と共に回転するのを確実に抑止することができる。本埋設管の取替え方法は、こうした効果を含めて、前述した第1番目の発明に係る埋設管の取替え方法が奏する効果と同様の効果を奏する。加えて、掘削中の埋設管1に作用する回転力に対し、第1番目の発明に係る埋設管の取替え方法のように、埋設管1の凹部2に充填した充填材3の剪断抵抗により対抗するのではなく、充填材3内に埋没した突設部材5により対抗するので、充填材3の強度を弱めることが可能となって、埋設管1を掘削するときの掘削負荷を低減することができる。本埋設管の取替え方法では、仮に、突設部材5が凹部2’から外れている個所が一部にあたとしても、この個所の凹部2’には、埋設管1に充填させる充填材3が充填されて第1番目の発明に係る埋設管の取替え方法と同様のメカニズムにより供回り抑止機能を発揮するので、格別支障は生じない。
本埋設管の取替え方法は、すでに述べた第1番目の発明に係る種々の態様の埋設管の取替え方法と併用することができ、例えば、埋設管1の埋設区間のうちのカーブの多い区間では1番目の発明に係る方法を実施し、直線区間では本埋設管の取替え方法を実施するというように、それぞれの方法に適した用法で併用することにより、埋設管の取替えを適切に行うことができる。特に、第1番目の発明に係る図4の埋設管の取替え方法では、本埋設管の取替え方法と同様の形状の長溝状の凹部2を形成するので、両方法を併用すると、一つの埋設管取替え用の管内周壁加工装置を共用して長溝状の凹部2や凹部2’を形成することができ、作業の段取りを複雑化させることなく、埋設管の取替えを効率的に行うことができる。