JP4195630B2 - エンジンのデコンプ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン起動時に吸気弁と排気弁との少なくとも一方を強制的に開弁させるエンジンのデコンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
汎用エンジン等のようにエンジンを手動により起動させるものでは、作業者の始動負荷を軽減するために、圧縮行程時等に吸気弁と排気弁との少なくとも一方を強制的に開弁させて、燃焼室を半圧縮状態(デコンプ状態)とするデコンプ装置が併設されているものが多い。
【0003】
又、デコンプ装置には、エンジン起動後のデコンプ状態を自動的に解除する機構を備えているものもある。例えば特許文献1に開示されているデコンプ装置は、エンジン始動後のカム軸の回転により発生する遠心力を利用して、リリースレバーに設けたフライウエイトを開角させ、フライウエイトと一体のリリースカム軸を回動させて、デコンプ状態を自動的に解除させる技術が開示されている。
【0004】
即ち、エンジン停止時及び低回転時においては、リリースカム軸が、カム軸に設けた吸気カム或いは排気カムのベースサークルからボールを突出させて、吸気弁、或いは排気弁のバルブタペットを強制的に開弁させる。一方、エンジン始動後のカム軸の回転数の上昇による遠心力でリリースレバーが回転すると、リリースカム軸がボールの突出動作を解除し、ボールをベースサークルに没入させて、デコンプ状態を自動的に解除する。
【0005】
ところで、リリースカム軸の外周と、カム軸に形成した軸孔の内周との間には、回動を許容するために、ある程度の間隙が確保されている。一方、フライウエイトは、遠心力を発生させるために比較的大きな重量を有しているため、リリースカム軸と軸孔との間に生じるガタつきによりフライウエイトが傾倒し、リリースカム軸の軸芯がブレ易くなり、正常なデコンプ動作、及びデコンプ解除動作に支障が生じる。
【0006】
その対策として、特許文献1では、カム軸の軸端にカバーを装着し、カバーの内面でフライウエイトの回転中心を支持することで、フライウエイトの軸方向の挙動を防止し、デコンプ動作、及びデコンプ解除動作時の回動姿勢を保持するようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−79017号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1の技術では、カム軸の軸端に、カバーを固定するための構造が必要となり、カム軸全体の構造が複雑化する。
【0009】
又、デコンプ装置は、リリースレバーを安定して動作させるために、リリースレバーを閉角方向へ付勢するリターンスプリングや、リリースレバーの開角を規制するストッパ等を備えている。特許文献1では、カム軸の軸端に、リターンスプリングを軸支する軸部、及びストッパ等を設けなければならないため、カム軸の構造がより複雑化する問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、カム軸の構造を複雑化せず、簡素な構造で、リリースレバーの軸方向の挙動を防止し、リリースレバーを常に安定した姿勢に保持することのできるエンジンのデコンプ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明は、エンジンのクランクシャフトと一体に回転するカムスプロケットと、上記カムスプロケットが設けられたカム軸と、上記カム軸の回転に伴う遠心力で開角自在なフライウエイトと該フライウエイトに連動して上記エンジンの排気弁と吸気弁との少なくとも一方を強制的に開弁させるリリースカム軸とを有するリリースレバーと、上記フライウエイトを閉角方向へ付勢するリターンスプリングと、上記リリースカム軸の軸方向の挙動を規制する押えプレートと、を備えたエンジンのデコンプ装置において、上記押えプレートは、上記リリースレバーの開角方向に回動角を規制するストッパ部と、上記リターンスプリングを支持する支持部とが一体に形成され、上記カムスプロケットの上記フライウエイトが配設される側面に穿設された孔に、上記ストッパ部と上記支持部とを挿通することにより、上記押えプレートがその内面を上記リリースカム軸に対設させて取り付けられることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記押えプレートは板金製であり、各辺に曲げ形成したフランジ部で上記ストッパ部と上記支持部とを構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項1記載の発明では、リリースカム軸の軸方向に配設した押えプレートにより、リリースレバーの軸方向の挙動を防止し、リリースレバーを常に安定した姿勢に保持する。ここで、押えプレートに、リリースレバーの開角方向の回動角を規制するストッパ部とリターンスプリングを支持する支持部とを集約したので、カム軸の構造が複雑化せず部品点数の削減が図れる。
【0014】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、押えプレートを板金製とし、各辺に曲げ形成したフランジ部でストッパ部と支持部とを構成したので、構造の簡素化が実現できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1はデコンプ装置の正面図、図2は図1の一部断面左側面図、図3は図1のIII-III矢視断面図、図4はリリースカム軸がタペットをリフトアップした状態の図2のIV-IV断面図、図5はカムスプロケットにリリースレバーを軸支した状態の側面図、図6は図5の一部断面左側面図、図7は押えプレートとリターンスプリングとリリースレバーの分解斜視図である。
【0016】
図中の符号1はカム軸で、カム軸1の両端が、図示しないシリンダヘッドに軸受け等を介して回動自在に支持されている。又、カム軸1に吸気弁用或いは排気弁用の弁カム2が設けられ、弁カム2に吸気弁或いは排気弁を開閉動作させるバルブタペット3が摺接されている。
【0017】
又、カム軸1の弁カム2に隣接する部位にカムスプロケット4が形成されている。カムスプロケット4は、図示しないクランクシャフトと一体に回動するクランクスプロケットにチェーンを介して連設されている。尚、カムスプロケット4に代えてカムギヤが設けられていても良い。カム軸1にカムギヤが設けられている場合は、例えばカム軸1の両端をクランクケースに軸受けを介して支持させると共に、カムギヤをクランク軸に設けたクランクギヤに直接あるいはアイドラギヤを介して噛合させる。カムスプロケット4とカムギヤとは機能的には同一であるため、以下の説明では、カムスプロケット4はカムギヤを含めた概念として説明する。
【0018】
カムスプロケット4にデコンプ装置5が設置されている。デコンプ装置5は、リリースレバー6、リターンスプリング7、押えプレート8を備えている。又、カムスプロケット4に、リリースレバー6のリリースカム軸6aを回動自在に支持するリリースカム軸孔4a、リリースレバー6の開角を規制するストッパを取付けるストッパ孔4b、リターンスプリング7を支持する部材を取付けるスプリング支持孔4c、リターンスプリング7の一端を掛止するスプリング掛止孔4dが各々穿設されている。尚、カムスプロケット4は従来と同様のものが採用されており、従って、各孔4a〜4dは従来のものと同じ位置に穿設されている。
【0019】
リリースレバー6のリリースカム軸6aの基端側にフライウエイト6bが形成され、又先端側に切欠き部6cが形成されている。リリースカム軸6aはリリースカム軸孔4aに回動自在に挿通支持されており、その先端部が弁カム2のベースサークル2aに形成された凹部2bに延出され、凹部2bにリリースカム軸6aの切欠き部6cが臨まされる。
【0020】
切欠き部6cはリリースカム軸6aの回動に従って指向方向が移動される。即ち、切欠き部6cがベースサークル2aの接線と略直行する方向へ指向した状態では、切欠き部6cが凹部2b内に没入される。又、その状態から、リリースカム軸6aの回動により切欠き部6cの傾斜角度が大きくなると、図4に示すように、リリースカム軸6aの外周がベースサークル2aから突出される。リリースカム軸6aがベースサークル2aから突出された状態では、ベースサークル2a上を相対摺動するバルブタペット3がリフトアップされ、吸気弁或いは排気弁が強制的に開弁される。又、リリースレバー6のフライウエイト6bは、カムスプロケット4の弁カム2と反対側の側面に対設されている。
【0021】
押えプレート8は、カムスプロケット4のフライウエイト6bが配設されている側面に対設されている。図7に示すように、押えプレート8は平板を曲げ加工して形成した板金製であり、押えプレート8の上部に、カムスプロケット4の側面に突出するボス4eの上縁部に当接する当接縁部8aが形成されている。
【0022】
又、押えプレート8の外周の、ストッパ孔4b、及びスプリング支持孔4cに対応する各辺に、ストッパ部としての第1のフランジ部8bと支持部としての第2のフランジ部8cとが各々曲げ形成されている。更に、当接縁部8aの略反対側に位置する辺、及び第2のフランジ部8cが形成されている辺に、補強用の第3、第4のフランジ部8d,8eが各々曲げ形成されている。
【0023】
各フランジ部8b,8d,8eは、同じ高さに形成されている。押えプレート8の内面から各フランジ部8b,8d,8eの下端までの曲げ高さは、ボス4eのカムスプロケット4からの突出高さとほぼ同一に設定されている。又、図6に示すように、ボス4eの突出高さは、リリースレバー6に設けたリリースカム軸6aの基端側の、カムスプロケット4の側面からの突出量よりも若干高く設定されている。
【0024】
図1、図2に示すように、押えプレート8をカムスプロケット4の側面に装着すると、押えプレート8の内面に、リリースカム軸6aの基端が対設され、リリースカム軸6aの軸方向の挙動(軸方向への移動、及び傾倒)が規制される。
【0025】
又、第1のフランジ部8bの下端に舌片8fが延出されている。舌片8f、及び第2のフランジ部8cは、カムスプロケット4に穿設されている各孔4b,4cに挿通されるもので、その幅は、各孔4b,4cの直径と略同一か、或いはやや狭く形成されている。又、第2のフランジ部8cの高さは、他のフランジ部8b(或いは8d,8e)の高さと、カムスプロケット4の板厚と、曲げ代部8hを加算した値に設定されている。又、舌片8fはカムスプロケット4の板厚とほぼ同じ長さに形成されており、舌片8fに曲げ代部8gが連続形成されている。
【0026】
押えプレート8の第1のフランジ部8bに連続する舌片8fと、第2のフランジ部8cとを、カムスプロケット4に穿設されている各孔4b,4cに挿通すると、各フランジ部8b,8d,8eの下端がカムスプロケット4の側面に当接して、押えプレート8の高さが固定される。又、図1、図2に示すように、押えプレート8をカムスプロケット4の側面に取付けた状態では、押えプレート8の内面がリリースカム軸6aの基端に微小間隙を開けて対設する。
【0027】
又、押えプレート8の第2のフランジ部8cに、リターンスプリング7のコイル部が挿通される。リターンスプリング7の一端7aが、リリースレバー6に設けたフライウエイト6bの基部に当接され、他端7bがカムスプロケット4の側面に穿設されているスプリング掛止孔4dに係入される。リリースレバー6はリターンスプリング7からの付勢力により、閉角方向へ常時付勢される。
【0028】
図1に示すように、フライウエイト6bがリターンスプリング7の付勢力を受けて閉角状態にあるとき、フライウエイト6bの内面がボス4eの外周に当接して、閉角状態が維持される。このとき、リリースカム軸6aに形成した切欠き部6cは、図2、図4に示すように、ベースサークル2aに対して略直交する方向に指向されて、リリースカム軸6aがベースサークル2aから突出されている。従って、この状態で、バルブタペット3がベースサークル2a上を相対摺動すると、バルブタペット3がリフトアップされ、吸気弁或いは排気弁が強制的に開弁されて、デコンプ状態(半圧縮状態)となる。
【0029】
又、フライウエイト6bがエンジン運転に伴うカム軸1の回転による遠心力によってリターンスプリング7の付勢力に抗して開角すると、図1に一点鎖線で示すように、フライウエイト6bの背面が、押えプレート8の第1のフランジ部8bの側端に当接して、開角方向の開度が規制される。又、このときリリースカム軸6aに形成した切欠き部6cは、ベースサークル2aに形成した凹部2b内に没入される。
【0030】
次に、作用について説明する。先ず、デコンプ装置5の組立て手順について説明する。
図5、図6に示すように、リリースレバー6のリリースカム軸6aを、カムスプロケット4に穿設されているリリースカム軸孔4aに挿通し、先端側を、弁カム2のベースサークル2aに形成されている凹部2bに臨ませる。
【0031】
次いで、押えプレート8に曲げ形成されている第2のフランジ部8cにリターンスプリング7のコイル部を挿通し、その状態で、押えプレート8に曲げ形成されている第1のフランジ部8bの先端の舌片8f、及び第2のフランジ部8c(図7参照)を、カムスプロケット4に穿設されているストッパ孔4b、スプリング支持孔4cに挿通する。
【0032】
そして、第2のフランジ部8c、及び舌片8fに連続して形成されている曲げ代部8g,8hを、カムスプロケット4の背面(弁カム2が配設されている側の面)から突出させて折り曲げる。
【0033】
すると、押えプレート8に曲げ形成されている各フランジ部8b,8d,8eの下端がカムスプロケット4の側面に当接すると共に、当接縁部8aがカムスプロケット4に突設したボス4eの上縁部に当接して、押えプレート8を位置決め固定する。その結果、図2に示すように、リリーレバー6に設けたリリースカム軸6aの基端に対して、微小間隙を開けて押えプレート8の内面が対設されて、リリースカム軸6aの軸方向への挙動が防止される。
【0034】
次いで、リターンスプリング7の一端7aを、リリースレバー6に設けたフライウエイト6bの背面に掛止し、他端7bを、カムスプロケット4に穿設されているスプリング掛止孔4dに係入する。すると、リリースレバー6がリターンスプリング7の付勢力により閉角方向へ回動し、フライウエイト6bの内面がボス4eの外周に当接して、最小閉角状態が維持される。
【0035】
尚、このようにして組立てられたデコンプ装置5を用いた始動時のデコンプ動作は、従来のものと同様であるため説明を省略する。
【0036】
一方、エンジン始動後のカム軸1の回転数の上昇により、リリースレバー6に設けたフライウエイト6bに作用する遠心力が増大すると、フライウエイト6bがリターンスプリング7の付勢力に抗して開角する。その後、フライウエイト6bの背面が、押えプレート8に曲げ形成されている第1のフランジ部8bの側端に当接して、開角方向の開度が規制される。このとき、リリースカム軸6aに形成した切欠き部6cが、弁カム2のベースサークル2aに形成されている凹部2bに没入されて、デコンプが解除される。
【0037】
このとき、リリースカム軸6aの基端に、押えプレート8の内面が微小間隙を介して対設しているので、リリースカム軸6aの軸方向の挙動が防止され、安定した姿勢を保持することができる。
【0038】
本形態によれば、1つの押えプレート8に、リリースレバー6の開角を規制するストッパ、リターンスプリング7を支持する支点、及びリリースレバー7の軸方向の挙動を防止する機能を集約したので、部品点数の削減を図ることができる。又、リリースレバー7の軸方向の挙動を防止したので、リリースレバー7の姿勢が安定し、信頼性が向上する。
【0039】
更に、押えプレート8は、平板を曲げ形成しただけの簡単な構造であるため、製造が容易で、製品コストの低減を図ることができる。又、押えプレート8は曲げ代部8g,8hを折曲げて、カムスプロケット4に固定するようにしたので、組立てが容易となり、製造コストの低減を図ることができる。更に、カムスプロケット4に穿設されている各部品、或いは部位を保持する孔4a〜4dは、従来のものをそのまま使用しているため、カムスプロケット4の仕様を変更する必要が無く、高い汎用性を得ることができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、リリースカム軸の軸方向に配設した押えプレートにより、リリースレバーの軸方向の挙動を防止して、リリースレバーを常に安定した姿勢に保持することができる。そして、押えプレートに、リリースレバーの開角方向の回動角を規制するストッパ部とリターンスプリングを支持する支持部とを集約したので、カム軸の構造が複雑化せず部品点数の削減が図れ、簡素な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】デコンプ装置の正面図
【図2】図1の一部断面左側面図
【図3】図1のIII-III矢視断面図
【図4】リリースカム軸がタペットをリフトアップした状態の図2のIV-IV断面図
【図5】カムスプロケットにリリースレバーを軸支した状態の側面図
【図6】図5の一部断面左側面図
【図7】プレートとリターンスプリングとリリースレバーの分解斜視図
【符号の説明】
1 カム軸
5 デコンプ装置
6 リリースレバー
6a リリースカム軸
6b フライウエイト
7 リターンスプリング
8 押えプレート
8b 第1のフランジ部(ストッパ部)
8c 第2のフランジ部(支持部)
Claims (2)
- エンジンのクランクシャフトと一体に回転するカムスプロケットと、
上記カムスプロケットが設けられたカム軸と、
上記カム軸の回転に伴う遠心力で開角自在なフライウエイトと該フライウエイトに連動して上記エンジンの排気弁と吸気弁との少なくとも一方を強制的に開弁させるリリースカム軸とを有するリリースレバーと、
上記フライウエイトを閉角方向へ付勢するリターンスプリングと、
上記リリースカム軸の軸方向の挙動を規制する押えプレートと、
を備えたエンジンのデコンプ装置において、
上記押えプレートは、上記リリースレバーの開角方向に回動角を規制するストッパ部と、上記リターンスプリングを支持する支持部とが一体に形成され、
上記カムスプロケットの上記フライウエイトが配設される側面に穿設された孔に、上記ストッパ部と上記支持部とを挿通することにより、上記押えプレートがその内面を上記リリースカム軸に対設させて取り付けられる
ことを特徴とするエンジンのデコンプ装置。 - 上記押えプレートは板金製であり、各辺に曲げ形成したフランジ部で上記ストッパ部と上記支持部とを構成した
ことを特徴とする請求項1記載のエンジンのデコンプ装置。
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