JP4195526B2 - 車両駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複数の弾性継手を使用した車両駆動装置に係り、特に、駆動側から従動側に回転駆動力を伝達する機能と、衝撃を緩衝する機能とを備え、弾性継手の構成要素である弾性体継手要素の交換作業の作業性の向上と長寿命化を図った車両駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気車の駆動方式には電気車の車軸にモータを一体に形成し、車軸にモータのロータを組み込んでモータの回転軸をそのまま車軸として直接駆動する方式と、車軸に対してモータを別体に設け、モータの駆動力を何らかの動力伝達手段を介して車軸に伝達して間接的に駆動する方式とがある。図15は前者の車軸を直接駆動する方式の車両駆動装置の例である。
【0003】
同図において、電動機1は車軸2として機能する回転軸と、この回転軸(車軸2)を内包するように設けられ、内部にロータ4とステータ5を備えたフレーム3とから基本的に構成されている。ロータ4は前記車軸2の外周に一体に設けられ、ステータ5はフレーム3の内面に前記ロータ4と所定間隔離間した状態で取り付けられている。また、フレーム3は回転止め7を介して車両の床部6に結合され、軸受8によって回転自在に車軸2を支持している。また、車輪10が嵌着された車軸2は両端部において軸受9を介して床部(台車)6に取り付けられている。なお、符号11は車輪10が転動するレールである。
【0004】
このように構成された車両駆動装置では、床部6を含む図示しない車体の重量により車軸2が曲がることがある。車軸2が曲がると、ロータ4とステータ5間のギャップ12の大きさが一様でなくなり、回転角度により変化することになる。この問題を避けるために、図16の電動機1では、車軸2の周りに中空軸13を設け、この中空軸13の外周部に電動機のロータ4を取り付けた構造をとっている。また、中空軸13と車軸2とは一対の継手14a,14bで連結され、ロータ4の回転力が車軸2に伝わるようになっている。その際、継手14a,14bの内側がそれぞれ中空軸13に接合され、外側がそれぞれ車軸2に接合される。さらに、特開平4−143596号公報に開示されているように振動変位を動的に抑制するために継手14を弾性体で構成し、ダイナミックダンパとして機能させることも行われている。
【0005】
図17は車輪の上下動を絶縁するため、図16の継手14を弾性体で構成し、電動機をダイナミックダンパとして機能させた例を示す図である。電動機をダイナミックダンパとして機能させる方法では、特開昭63−69444号公報記載のように電動機の両側のフランジに弾性体の機能を持たせ、弾性継手を使用しないものもある。また、車軸の曲がりがロータとステータ間のギャップを回転角度により変えてしまうことを避ける方法としては、特開平3−61158号公報に記載されたもののようにロータと車軸の間に嵌挿された円筒の軸方向の中央部分に車軸との間に隙間を設けたものもある。さらに、特開平3−61158号公報に記載されたもののように前記円筒の車軸と接触する部分に弾性体を嵌挿させることによって、車軸の曲がりによってロータとステータ間のギャップが回転角度により変化してしまうことを避け、且つ、電動機をダイナミックダンパーとして機能させるものもある。
【0006】
図18は従来のこの種の産業用弾性継手の例を示す図である。同図において、同心円上にほぼ等間隔に配置した弾性体継手要素16を交互に挟み込むために、駆動側15a(あるいは従動側(15b))の継手要素は円環の内側に突起15a’(あるいは突起15b’)を有し、この円環の内側にある従動側15b(あるいは駆動側(15a))の継手要素は突起を外側に有し、周方向の弾性体継手要素の面圧により回転力を伝達するようになっており、また、衝撃的な上下動に対する緩衝効果をも兼ね備えている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の車両駆動装置の弾性継手15では、減衰効果を得る必要性から弾性体としてゴムが使用されていることから、クリープ変形などの永久変形が大きな問題となっている。ゴムの永久変形による予圧面の面圧の減少を補正することは困難であるため、あらかじめ定められた値以上に予圧面の面圧が減少した場合には弾性体継手要素6を交換する必要がある。しかし、図18から分かるように車軸2に取り付けられた状態で弾性体継手要素16を交換することは、駆動側継手要素15aと従動側継手要素15bとを車軸の軸方向にずらす必要があるため極めて困難で、実質的には不可能といってよいものであった。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、弾性体継手要素の面圧調節が容易であるとともに、弾性体継手要素の交換期間を長くすることが可能で、保守点検の容易な車両駆動装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の車両駆動装置においては、弾性継手の弾性体継手要素を扇形状にして外側から半径方向に挿入し、くさび効果により前記弾性体継手要素の周方向に所定の予圧を与えることができるようにしたものである。
【0010】
さらに、この車両駆動装置においては、弾性継手の弾性体継手要素を複合材で構成し、この複合材の異方性により走行安定上必要とされる軸に直角及び平行な方向の剛性と軸まわりの捩り剛性を一種類の形状の弾性体継手要素で成立させることができるようにしたものである。
【0011】
また、この車両駆動装置においては、弾性継手の弾性体継手要素は、板状の弾性材の両面に傾斜をつけた金属性ブロックを貼り付けることにより扇形状の弾性体継手要素を構成することもある。
【0012】
また、この車両駆動装置においては、弾性継手の弾性体継手要素の弾性体を複数の金属の板と弾性材の板を交互に張り合わせることにより構成することもできる。
【0013】
また、この車両駆動装置においては、弾性体継手要素の側面にも板状の弾性体を貼り付け、該弾性体の変形によって回転軸に直角な方向の荷重を弾性的に支えることができる構造にすることもできる。
【0014】
具体的は、上記目的を達成するため、第1の手段は、複数の弾性体継手要素を同心円上にほぼ等間隔に配置し、駆動側継手要素と従動側継手要素により該弾性体継手要素を交互に挟み込み、周方向の面圧により回転力を伝達する弾性継手を備え、駆動源から車軸側に動力を伝達して車輪を駆動する車両駆動装置において、前記駆動側継手要素と従動側継手要素がそれぞれボス部から半径方向に延びる複数の駆動力伝達部と駆動力被伝達部とをそれぞれ有し、前記駆動力伝達部と駆動力被伝達部とが交互に位置し、両者間に前記弾性体継手要素が挿入可能な略扇形の空間が形成されるように前記駆動側継手要素と従動側継手要素とを軸方向に並べ、前記扇形の空間に対応した形状に形成された前記弾性体継手要素を外周側から前記空間に挿入し、前記弾性継手の外周側から所定の予圧を付与した状態で前記弾性体継手要素を固定するとともに、前記弾性体継手要素は弾性体からなるブロックの両側に金属からなるブロックを接合して形成され、前記固定の際、前記弾性体継手要素のそれぞれの金属ブロックは、それぞれ駆動側継手要素と従動側継手要素に取り付けられた面圧調整用ボルトによって押し付け用金属ブロックを介して前記扇形の空間の中心方向に押し込まれ、所定の面圧に調整されてから固定されることを特徴とする。
【0015】
第2の手段は、複数の弾性体継手要素を同心円上にほぼ等間隔に配置し、駆動側継手要素と従動側継手要素により該弾性体継手要素を交互に挟み込み、周方向の面圧により回転力を伝達する弾性継手を備え、駆動源から車軸側に動力を伝達して車輪を駆動する車両駆動装置において、前記駆動側継手要素と従動側継手要素がそれぞれボス部から半径方向に延びる複数の駆動力伝達部と駆動力被伝達部とをそれぞれ有し、前記駆動力伝達部と駆動力被伝達部とが交互に位置し、両者間に前記弾性体継手要素が挿入可能な略扇形の空間が形成されるように前記駆動側継手要素と従動側継手要素とを軸方向に並べ、前記扇形の空間に対応した形状に形成された前記弾性体継手要素を外周側から前記空間に挿入し、前記弾性継手の外周側から所定の予圧を付与した状態で前記弾性体継手要素を固定するとともに、前記弾性体継手要素は弾性体からなるブロックの両側に金属からなるブロックを接合して形成され、前記弾性体継手要素の金属からなるブロックには面圧調整用ボルトの挿通孔が穿設され、前記弾性体継手要素は面圧調整用ボルトを介して前記駆動側継手要素及び従動側継手要素の少なくとも一方に固定され、前記空間は前記駆動力伝達部及び駆動力被伝達部と、前記駆動側継手要素と従動側継手要素の前記車軸に平行な方向の端部に設けられたカバー部とによって形成され、前記カバー部に対向する金属製ブロックの端面に板状の弾性体が貼付されていることを特徴とする。
【0016】
第3の手段は、第1または第2の手段において、前記弾性体継手要素の前記駆動側継手要素及び従動側継手要素との当接部に、前記弾性体継手要素と前記駆動側継手要素及び従動側継手要素との前記車軸に平行な方向の相対的な変位を規制する規制手段が設けられていることを特徴とする。
【0021】
の手段は、第1ないし第3のいずれかの手段において、前記弾性体がゴムからなることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、前述の従来例と同等な各部及び各実施形態に共通な各部には同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0023】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る車両駆動装置の弾性継手の正面図、図2は図1の弾性継手のA−A断面図であり、この弾性継手は、前記図16における継手14に対応する。なお、図2は図16では右側に位置する継手14aに相当する。
【0024】
この第1実施形態に係る弾性継手100は、駆動側継手要素110と従動側継手要素120と、両継手要素110および120間に挿入された8個の弾性体継手要素130とからなり、このうち弾性体継手要素130は図1に示すように正面視略扇形に形成されている。駆動側継手要素110には、ボス部111から半径方向に90゜間隔で突出した4本の駆動力伝達部112が、また、受動側継手要素120には、同じくボス部121から半径方向に90゜間隔で突出した駆動力被伝達部122がそれぞれ設けられている。また、図2に示すように両ボス部111,121から円周方向にカバー部113,123がそれぞれ設けられている。なお、駆動側継手要素110におけるボス部111、駆動力伝達部112及びカバー部113、ならびに受動側継手要素120におけるボス部121、駆動力伝達部122及びカバー123はそれぞれ一体に形成されている。また、前記ボス部111には前述の中空軸13が挿入されて接合され、前記ボス部121は車軸2に接合される。
【0025】
これらの駆動側継手要素110と従動側継手要素120は、図1に示すように前記駆動力伝達部112と駆動力被伝達部122とがほぼ45゜間隔になるように重ね合わされ、外周側から各駆動力伝達部112と駆動力被伝達部122との間の空間部190に弾性体継手要素130を挿入し、図示しない固定手段によって固定され、弾性継手100が構成される。その際、所定圧で前記弾性継手要素130を固定することによって弾性継手要素130に予圧が付与される。このように所定の与圧が付与された状態で、各弾性体継手要素130は同心円上に中心からほぼ等しい距離の位置に等間隔に配置される。
【0026】
弾性体継手要素130は、図1に示すようにほぼ扇形に形成され、前記空間部190に挿入され、扇形の両側面132a,133aで駆動力伝達部112と駆動力被伝達部122に接触するが、前述の予圧が与えられたとき、前記側面132a,133aにおける面圧が均一になるように前記側面132a,133aの角度が設定されている。言い換えれば、前記空間部190に弾性継手要素130を装着したときに、前記側面132a,133aとこれらの側面に当接する駆動力伝達部112と駆動力被伝達部122とがそれぞれ平行になるように前記側面の角度もしくは傾斜が設定されている。
【0027】
弾性体継手要素130は、上記のような形状に形成されており、上記形状に単一の弾性体によって形成することも可能である(後述の図11参照)。しかし、この実施形態では、複合材によって構成されている。この複合材は緩衝材として機能する方向を勘案して3つの部分からなる。すなわち、円周方向の緩衝材として主に機能する第1のブロック131と、この第1のブロック131の両側に接合され、軸に平行な方向の緩衝材として主に機能する第2及び第3のブロック132,133である。この場合、第1のブロック131と第2及び第3のブロック132,133を使用し、駆動軸の軸回り(円周方向)のねじり剛性に対応する部分と前記軸に平行及び直角な方向の応力に対応する部分とによって弾性材の異方性を考慮して前記弾性体継手要素130の形状とした。この形状では、第1のブロック131は直方体であって、軸回りの動力伝達機能と緩衝機能とを持たせ、第2のブロック132と第3のブロック133とに軸に平行な方向と直角な方向の緩衝機能を主に持たせている。
【0028】
図1の最上部の弾性体継手要素130を例にとると、第2のブロック132は左側の側面132aが駆動側継手要素110の駆動力伝達部112の側面に当接し、図に示すように第2のブロック132の車軸2と平行の方向の端部に相当する端面132bは駆動側継手要素110のカバー部113の内面にそれぞれ当接している。一方、第3のブロック133は右側の側面133aが従動側継手要素120の駆動力被伝達部122の側面に当接し、第3のブロック133の端面133bは従動側継手要素120のカバー部123の内面にそれぞれ当接している。これによって、軸(中空軸13)の円周方向については第1のブロック131の弾性体が回転駆動力を伝達すると共に緩衝材として機能し、軸に直交する方向(半径方向)及び軸に平行な方向については第2及び第3のブロック132,133の弾性体が緩衝材として機能する。その他、特に説明しない各部は前述の従来例と同等に構成されている。なお、第1ないし第3のブロック131,132,133に使用される弾性体としては例えば弾性を有する合成樹脂材や合成ゴムなどが好適である。特に、合成ゴムでは、異方性を含む種々の特性をある程度コントロールすることができるので、荷重や振動のサイクルなどを考慮して最適な特性のものを得ることが可能である。
【0029】
以上のように構成することによって弾性体継手要素100の傾斜した側面に均一に所定の予圧を与えことができるとともに、回転力の伝達及び衝撃的な上下動に対する緩衝作用を行うことが可能になる。
【0030】
<第2の実施形態>
図3ないし図5は本発明の第2の実施形態に係る車両駆動装置の弾性継手を説明するためのもので、図3は弾性継手の要部断面拡大図、図4は図3を外周部から軸方向に見た図、図5は弾性継手要素の斜視図である。
【0031】
この実施形態は、弾性継手100の駆動側継手要素110及び従動側継手要素120の駆動力伝達部111及び駆動力被伝達部121の円周面に面圧調節用ボルト穴114,124を設け、該ボルト穴114,124に螺合させた面圧調節用ボルト140により押し付け用金属ブロック141を固定し、この金属ブロック141によって弾性体継手要素130に所望の予圧を与えるように構成したものである。また、この実施形態における弾性体継手要素130は、図5の斜視図から分かるように第1ないし第3のブロック131,132,133は、第1のブロック131は弾性体、第2及び第3のブロック132,133は金属によってそれぞれ形成されている。なお、第2及び第3のブロック132,133の駆動側継手要素110の駆動力伝達部111や従動側継手要素111の駆動力被伝達部121に当接する当接部132c,133cは脚状に突出させ、上部は押し付け用金属ブロック141の下面によって半径方向に平均的に押し付けられるように隣接する弾性体継手要素130の前記金属ブロック141の被押し付け面が平面状になるような角度の傾斜面132d,133dに形成されている。
【0032】
また、第2及び第3のブロック132,133の端面には、前記駆動側継手要素110のカバー部113や従動側継手要素120のカバー部123との間で緩衝作用を行わせるための弾性体132e,133eが図5に示すように貼付されている。なお、このように弾性体132eを貼付した状態で、前記金属ブロック141によって所定圧で弾性継手100をセットした状態は図4に示すようになる。
【0033】
このように構成すると、面圧調整用ボルト140による押し付け用金属性ブロック141からの押し付け力によって第2及び第3のブロック132,133の当接部132c,133cと駆動力伝達部112及び駆動力被伝達部122との間で接触面の法線方向の圧力が等しい状態で所望の予圧を弾性体継手要素130に付与することができる。また前記金属ブロック141によって、弾性継手要素130の第1のブロック131と第2及び第3のブロック132,133とが接触する部分の半径方向の相対変位が生じないように固定することにより、第1のブロック131の弾性体のせん断変形により、半径方向の荷重を弾性的に支えることができる。さらに、第2及び第3のブロック132,133の端面にも板状の弾性体132e,133eを貼り付け、これらの弾性体132e,133eの変形によって回転軸に平行な方向の大きな荷重を弾性的に支えることができるとともに、緩衝機能を十分に果たすことができる。
【0034】
その他、特に説明しない各部は前述の従来例及び第1の実施形態と同等に構成され、同等に機能する。
【0035】
<第3の実施形態>
図6及び図7は第3の実施形態に係る車両駆動装置の弾性継手を説明するためのもので、図6は弾性継手の要部を示す斜視図、図7は弾性継手要素の正面図である。
【0036】
この実施形態は、第2の実施形態における弾性継手要素130の第1のブロック131を、面圧調節用ボルト穴135を設けた金属性ブロック131−1と、この両側に弾性体131−2,131−3を張り付けた3ブロックからなる弾性要素に置換し、前記ボルト穴135にボルト140を挿入して駆動側継手要素110もしくは受動側継手要素120のボス部111,121に螺合させ、弾性継手要素130に対して駆動力伝達部112及び駆動力被伝達部122との間に所望の予圧を得ることができるようにしたものである。
【0037】
その際、図6に示すように駆動力伝達部112と駆動力被伝達部122に溝112a,122aを設け、第2及び第3のブロック132,133の側部132s,133sを挿入して両者が車軸2と平行な方向に相対的に変位を生じないように位置決めを図ると、弾性体からなるブロック131−2,131−3のせん断変形によって車軸2に平行な方向の荷重を弾性的に支持することもできる。
【0038】
このように構成すると、ボルト140によって弾性継手要素130の交換と予圧の調整が弾性継手100の円周方向から自由に行え、回転駆動力の伝達及び緩衝だけでなく軸に平行な方向の荷重の支持機能と緩衝機能を弾性板からなる弾性体ブロックによって確実に得ることができる。
【0039】
その他、特に説明しない各部は前述の従来例、第1及び第2の実施形態と同等に構成され、同等に機能する。
【0040】
<第4の実施形態>
図8ないし図10は第4の実施形態に係る車両駆動装置の弾性継手を説明するためのもので、図8は弾性継手の要部を示す斜視図、図9は弾性継手要素の正面図、図10は弾性継手要素を組み込んだ弾性継手の要部を示す断面図である。
【0041】
この実施形態は、図5に示した第2の実施形態における金属製の第2及び第3のブロック132,133に第3の実施形態と同様のボルト穴136,137を穿設し、このボルト穴136,137にそれぞれボルト140を挿入して図10に示すように駆動側継手要素110もしくは受動側継手要素120のボス部111,121に螺合させ、2本のボルト140によって弾性継手要素130に対して駆動力伝達部112及び駆動力被伝達部122との間に所望の予圧を得ることができるようにしたものである。このように構成すると、駆動力伝達部112に対する予圧と、駆動力被伝達部122に対する予圧とをそれぞれ別個に独立して調整することが可能となり、より精度の高い設定が可能になる。
【0042】
その他、特に説明しない各部は前述の従来例、第1ないし第3の実施形態と同等に構成され、同等に機能する。
【0043】
<その他の実施形態>
図11ないし図14は本発明の他の実施形態に係る弾性体継手要素の実施例の正面図または正面断面図である。図11の弾性体継手要素130では扇形状の弾性体継手要素の全てを弾性体で構成している。
【0044】
図12の弾性体継手要素130では扇形状の弾性体131(第1のブロックに対応)の両端に金属性の板132,133(第2及び第3のブロックに対応)貼り付けてある。
【0045】
図13では第2の実施形態と同様に板状の弾性体131(第1のブロックに対応)の両端にテーパを持った金属製のブロック132,133(第2及び第3のブロックに対応)が貼り付けられて扇形状の弾性体を構成している。
【0046】
図14は図13の実施形態における弾性体からなる第1のブロック131を3層の弾性板層131gと2層の金属板層131mとを交互に積層して一体で弾性を有するブロックとしたものである。
【0047】
なお、図11ないし図14に図示した実施形態に係る弾性体継手要素130では、第2の実施形態のような押し付け用金属ブロック141などの押さえ手段を介して駆動側継手要素110と従動側継手要素120との間に保持され、また、所望の予圧を得るように構成される。
【0048】
このような形式の弾性体継手要素130によって、同様に平均化された予圧を付与することが可能であるとともに、弾性継手100の外周側から取り付け、取り外し、あるいは予圧の調整が容易に行える。
【0049】
以上のように本実施の形態によれば、弾性継手の外周側から所定の予圧を付与した状態で弾性体継手要素を固定したので、クリープ変形などの永久変形による弾性体継手要素の予圧の減少を調節することが容易にでき、保守点検が容易になる。また、予圧による面圧が平均化するので、弾性体継手要素の交換期間を延長することが可能になる。さらに、弾性継手を分解することなく弾性継手の外周側から弾性体継手要素を交換することができるので、交換作業が簡単で作業時間を大幅に削減することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、駆動側継手要素と従動側継手要素にボルト螺合用の穴を設け、弾性体継手要素を押さえ部材を介してボルトにより固定するので、予圧調整が簡単に行え、保守点検作業が容易になる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、弾性体継手要素の駆動側継手要素及び従動側継手要素との当接部に、弾性体固定継手と駆動側継手要素及び従動側継手要素との軸に平行な方向の相対的な変位を規制する規制手段を設けたので、軸に方向な平行の荷重を弾性体のせん断変形によって弾性的に支持することができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、弾性体継手要素は弾性体からなるブロックとボルトの挿通孔が穿設された金属からなるブロックとを接合して形成され、弾性体継手要素はボルトを介して駆動側継手要素及び従動側継手要素の少なくとも一方に固定されているので、予圧調整が簡単に行え、保守点検作業が容易になる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、カバー部に対向する金属製ブロックの端面に板状の弾性体が貼付されているので、軸に平行な方向の荷重変動を前記弾性体によって吸収することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、弾性継手要素に使用する弾性体をゴムで構成したので、異方性を含む種々の特性をある程度コントロールすることが可能となり、荷重や振動のサイクル等を考慮して最適な特性の弾性継手を備えた車両駆動装置を提供することができる。
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、弾性体継手要素の面圧調節が容易であるとともに、弾性体継手要素の交換期間を長くすることが可能で、保守点検の容易な車両駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両駆動装置の弾性継手全体の正面断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る弾性継手の予圧調節機構を説明するための車両駆動装置の要部拡大断面図である。
【図4】図3の予圧調整機構を示す車両駆動装置の要部平面図である。
【図5】図3の弾性継手の弾性体継手要素全体を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る弾性継手の予圧調整機構を説明するための車両駆動装置の要部を示す斜視図である。
【図7】図6の弾性継手の弾性体継手要素の断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る弾性継手の予圧調整機構を説明するための車両駆動装置の要部を示す斜視図である。
【図9】図7の弾性継手の弾性体継手要素の断面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る弾性継手の予圧調整機構を説明するための車両駆動装置の要部断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る弾性継手の弾性体継手要素の正面図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係る弾性継手の弾性体継手要素の正面図である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係る弾性継手の弾性体継手要素の正面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係る弾性継手の弾性体継手要素の正面図である。
【図15】電気車の車軸に直接駆動する電動機の概略を説明する断面図である。
【図16】電気車の車軸に直接駆動する電動機の例を説明する半断面図である。
【図17】電動機と弾性継手によりダイナミックダンパの機能を持たせることを示す概略説明図である。
【図18】従来例に係る産業用に使用されている弾性継手の概略構造を示す半断面図である。
【符号の説明】
1 電動機
2 車軸
3 中空軸
4 車輪
100 弾性継手
110 駆動側継手要素
111 ボス部
112 駆動力伝達部
112a 溝
113 カバー部
114 面圧調整用ボルト穴
120 従動側継手要素
121 ボス部
122 駆動力被伝達部
122a 溝
123 カバー部
124 面圧調整用ボルト穴
130 弾性体継手要素
131 第1のブロック
132 第2のブロック
132s 側面部
133 第3のブロック
133s 側面部
135,136,137 ボルト孔
140 ボルト
141 押し付け用金属ブロック
190 空間部

Claims (4)

  1. 複数の弾性体継手要素を同心円上にほぼ等間隔に配置し、駆動側継手要素と従動側継手要素により該弾性体継手要素を交互に挟み込み、周方向の面圧により回転力を伝達する弾性継手を備え、駆動源から車軸側に動力を伝達して車輪を駆動する車両駆動装置において、
    前記駆動側継手要素と従動側継手要素がそれぞれボス部から半径方向に延びる複数の駆動力伝達部と駆動力被伝達部とをそれぞれ有し、
    前記駆動力伝達部と駆動力被伝達部とが交互に位置し、両者間に前記弾性体継手要素が挿入可能な略扇形の空間が形成されるように前記駆動側継手要素と従動側継手要素とを軸方向に並べ、
    前記扇形の空間に対応した形状に形成された前記弾性体継手要素を外周側から前記空間に挿入し、前記弾性継手の外周側から所定の予圧を付与した状態で前記弾性体継手要素を固定するとともに、
    前記弾性体継手要素は弾性体からなるブロックの両側に金属からなるブロックを接合して形成され、前記固定の際、前記弾性体継手要素のそれぞれの金属ブロックは、それぞれ駆動側継手要素と従動側継手要素に取り付けられた面圧調整用ボルトによって押し付け用金属ブロックを介して前記扇形の空間の中心方向に押し込まれ、所定の面圧に調整されてから固定されることを特徴とする車両駆動装置。
  2. 複数の弾性体継手要素を同心円上にほぼ等間隔に配置し、駆動側継手要素と従動側継手要素により該弾性体継手要素を交互に挟み込み、周方向の面圧により回転力を伝達する弾性継手を備え、駆動源から車軸側に動力を伝達して車輪を駆動する車両駆動装置において、
    前記駆動側継手要素と従動側継手要素がそれぞれボス部から半径方向に延びる複数の駆動力伝達部と駆動力被伝達部とをそれぞれ有し、
    前記駆動力伝達部と駆動力被伝達部とが交互に位置し、両者間に前記弾性体継手要素が挿入可能な略扇形の空間が形成されるように前記駆動側継手要素と従動側継手要素とを軸方向に並べ、
    前記扇形の空間に対応した形状に形成された前記弾性体継手要素を外周側から前記空間に挿入し、前記弾性継手の外周側から所定の予圧を付与した状態で前記弾性体継手要素を固定するとともに、
    前記弾性体継手要素は弾性体からなるブロックの両側に金属からなるブロックを接合して形成され、
    前記弾性体継手要素の金属からなるブロックには面圧調整用ボルトの挿通孔が穿設され、
    前記弾性体継手要素は面圧調整用ボルトを介して前記駆動側継手要素及び従動側継手要素の少なくとも一方に固定され、
    前記空間は前記駆動力伝達部及び駆動力被伝達部と、前記駆動側継手要素と従動側継手要素の前記車軸に平行な方向の端部に設けられたカバー部とによって形成され、
    前記カバー部に対向する金属製ブロックの端面に板状の弾性体が貼付されていることを特徴とする車両駆動装置。
  3. 前記弾性体継手要素の前記駆動側継手要素及び従動側継手要素との当接部に、前記弾性体継手要素と前記駆動側継手要素及び従動側継手要素との前記車軸に平行な方向の相対的な変位を規制する規制手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の記載の車両駆動装置。
  4. 前記弾性体がゴムからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両駆動装置。
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