JP4195144B2 - ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム状重合体を含有するゴム変性芳香族ビニル重合体組成物とそのペレット、成形品ならびにその製造法に関する。さらに詳しくは、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、家電製品、通信機器、事務機器などのハウジングや食品容器などの成形材料として有用なゴム変性芳香族ビニル重合体組成物とそのペレット、成形品ならびにその効果的な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレン系樹脂などの芳香族ビニル重合体は、安価であり、かつ剛性や成形性に優れていることから、包装材料や日用雑貨品などの成形材料として、広く用いられている。そして、このポリスチレン系樹脂は、本質的に高い剛性を有するが、耐衝撃性が充分でないため、ゴム変性することにより耐衝撃性を向上させた耐衝撃性ポリスチレン系樹脂が、家電製品や通信機器、事務機器などのハウジングやシャーシーなどの部品の成形材料に用いられている。
【0003】
しかしながら、このようにゴム変性して耐衝撃性を向上させた耐衝撃性ポリスチレン系樹脂は、ゴム変性によって耐衝撃性が向上するのであるが、含有するゴム量を増大させると、ポリスチレン系樹脂が本来有している剛性が低下するという問題がある。
このようなことから、ポリスチレン系樹脂などの芳香族ビニル重合体にゴム成分を含有させて耐衝撃性を向上させるに際して、ゴム成分の含有割合を増やすことなく、芳香族ビニル重合体が本来有している剛性を保持しながら、耐衝撃性を向上させることが要望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、芳香族ビニル重合体へのゴム成分の含有割合を増やすことなく、芳香族ビニル重合体が本来有している剛性を保持しながら、耐衝撃性を向上させたゴム変性芳香族ビニル重合体組成物とそれを素材とする成形品、ならびにその効果的な製造法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため種々検討を重ねた結果、ゴム成分を添加して芳香族ビニル単量体を重合した後の脱気処理を特定条件下に行うことにより、得られるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレット中のトルエン不溶分のスウェリングインデックスおよびこのペレットから成形した成形品中のトルエン不溶分のスウェリングインデックスを特定の値に調節することによって、芳香族ビニル重合体が本来有する剛性を保持しながら、耐衝撃性を向上させることができることを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)ゴム状重合体3〜12重量%と芳香族ビニル重合体88〜97重量%からなるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物であって、該ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造するに際し、重合後の脱気プロセスでの前記組成物の温度Tを190〜250(℃)および滞留時間tを1.5〜3(時間)とし、かつ、滞留時間tと温度Tとの関係が、20≦t×(T−180)≦140で表される関係となる条件下に前記組成物の脱気処理をすることにより得られ、該ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が15〜22であり、かつ、そのペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、該ペレットを220℃で射出成形または200℃で押出成形することにより得られる成形物中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が2以内である、前記ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
(2)メルトフローインデックスが、3.0g/10分以下である前記(1)記載のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
(3)前記(1)または(2)に記載のゴム状重合体が、面積平均粒径1.5〜4μmの分散粒子の形態で存在する、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
(4)芳香族ビニル重合体が、スチレン重合体である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
(5)ゴム状重合体3〜12重量%と芳香族ビニル重合体88〜97重量%からなるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレットであって、該ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレットを製造するに際し、重合後の脱気プロセスでの前記組成物の温度Tを190〜250(℃)および滞留時間tを1.5〜3(時間)とし、かつ、滞留時間tと温度Tとの関係が、20≦t×(T−180)≦140で表される関係となる条件下に前記組成物の脱気処理をすることにより得られ、該ペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が15〜22であり、かつ、そのペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、該ペレットを220℃で射出成形または200℃で押出成形することにより得られる成形物中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が2以内である、前記ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレット。
(6)前記(5)に記載のペレットを成形して得られた成形品であって、該成形品中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、上記ペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が2以内である、前記成形品。
(7)ゴム状重合体を3〜12重量%の量で存在させて芳香族ビニル単量体を重合させることによりゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造するに際し、重合後の脱気プロセスでの前記組成物の温度Tを190〜250(℃)および滞留時間tを1.5〜3(時間)とし、かつ、滞留時間t(時間)と温度T(℃)との関係が、20≦t×(T−180)≦140で表される関係となる条件下に、前記組成物の脱気処理をすることによる、組成物のペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が15〜22であるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の製造法。
(8)ゴム状重合体3〜12重量%の量の存在下に、芳香族ビニル単量体を重合させてゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造する重合系または脱揮系前後に、下記一般式(1)で表される化合物を、その濃度が200〜3000ppmとなるように添加して行う前記(7)記載のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の製造法。
【0007】
【化2】
【0008】
〔式(1)中のR1 〜R4 は、炭素数1〜5のアルキル基、R5 は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す〕
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物は、ゴム状重合体3〜12重量%と芳香族ビニル重合体88〜97重量%からなるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物であって、該ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物ペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が、15〜22であり、かつそのペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、該ペレットを成形して得られる成形物中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が、2以内となる特性を有するものである。
【0010】
本発明において用いるゴム状重合体としては、常温においてゴム的性質を示すものであればよく、たとえば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体、アクリルゴム、ニトリルゴム、これらゴムの水素添加物などが挙げられる。これらの中では、ポリブタジエンが特に好ましい。
【0011】
そして、これらゴム状重合体の前記ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物中の含有割合は、3〜12重量%、好ましくは5〜11重量%、さらに好ましくは7〜10重量%である。このゴム状重合体の含有割合が3重量%未満であると、耐衝撃性の向上効果が充分でなく、またゴム状重合体の含有割合が12重量%を超えると、芳香族ビニル重合体が本来有している優れた剛性が低下するようになる。したがって、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の剛性と耐衝撃性のバランスを考慮すると、ゴム状重合体の含有割合は上記範囲内とする必要がある。
【0012】
さらに、このゴム状重合体は、通常、内部にポリスチレンを含む粒子(以下、ゴム状重合体粒子という)としてポリスチレン中に存在している。そこで形成される粒子の面積平均粒径は、1.5〜4μm の範囲となるように調整するのが好ましい。このゴム状重合体粒子の面積平均粒径が1.5μm 未満になると、得られるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の耐衝撃性が充分でなく、また、このゴム状重合体粒子の面積平均粒径が4μm を超えると、得られるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の剛性の低下を招くようになることから、上記数値範囲内の面積平均粒径となるように調整することが好ましい。このゴム状重合体粒子の粒径は、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の製造時の重合反応器における攪拌翼の回転数などの調整によって制御することができる。
【0013】
ここで、このゴム状重合体粒子の面積平均粒径の測定にあたっては、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の試験片について、ゴム部分をオスミウム酸で染色し、超薄切片につき、透過型電子顕微鏡写真を撮影し、ゴム状重合体粒子200個以上について、その粒子の長径(Di)を測定する。そして、面積平均粒径(Ds)は、Ds=Σ(Di)3 /Σ(Di)2 の式により算出する。
【0014】
つぎに、本発明のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物における芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニル単量体を主成分とする単量体を重合または共重合して得られたものである。このような芳香族ビニル単量体としては、たとえばスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどが挙げられるが、スチレンが特に好ましい。これら単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0015】
また、上記芳香族ビニル重合体としては、上記芳香族ビニル単量体の単独重合体や共重合体の他、上記芳香族ビニル単量体と、その他の不飽和化合物との共重合体であってもよい。このような不飽和化合物としては、たとえばアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これら不飽和化合物は1種用いても2種以上用いてもよい。そして、これら不飽和化合物の使用割合は、上記芳香族ビニル単量体に対して50重量%未満とするのが適当である。
【0016】
本発明のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物は、前記ゴム状重合体の特定量の存在下に、上記芳香族ビニル単量体などを重合あるいは共重合させた後、後述の脱気処理をすることにより得られる。このようにして得られる本発明のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物ペレットは、ゴム状重合体3〜12重量%と芳香族ビニル重合体88〜97重量%からなり、これに含まれるトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が15〜22であり、かつ、そのペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、該ペレットを成形して得られる成形物中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が、2以内となる特性を有していることが必要である。
【0017】
ここで、このスウェリングインデックスの測定方法については、上記組成物のペレット3gを精秤し、これをトルエン150ミリリットルに溶解した後、遠心分離によって、ゴム成分を含むトルエン不溶分を沈降させ、デカンテーションによって上澄液を捨てる。そして、残渣にトルエン150ミリリットルを加えて攪拌した後、再度遠心分離を行い、さらに再度のデカンテーションにより上澄液を捨て、膨潤ゲル重量(Ws)を求める。ついで、この膨潤ゲルを乾燥し、乾燥ゲル重量(Wg)を求める。ここで、スウェリングインデックス=(Ws)/(Wg)として、上記組成物のペレットのスウェリングインデックスを算出することができる。
【0018】
上記ペレットのスウェリングインデックスの値が15未満であると、上記組成物の衝撃強度の向上効果が充分に得られず、またこのスウェリングインデックスの値が22を超える場合にも、上記組成物の衝撃強度の向上効果が充分に得られない。また、上記ペレットのスウェリングインデックスの値と、このペレットを用いて成形した成形品スウェリングインデックスの値との差が、2を超える場合には、その成形品の衝撃強度が低下する。
【0019】
つぎに、このゴム変性芳香族ビニル重合体組成物ペレットを用いて、各種の成形法により、成形品を形成する。このペレットを用いて成形するにあたっては、射出成形、プレス成形、押出成形および押出成形によって得られたシートの真空成形や圧空成形などの成形法によるのが適している。
この場合の成形条件は、特に制約はなく、この組成物に含まれるゴム状重合体の種類や含有割合、芳香族ビニル重合体の種類とその物性を考慮して選択すればよい。
【0020】
このようにして得られる本発明のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物から成形される成形品は、ゴム状重合体3〜12重量%と芳香族ビニル重合体88〜97重量%からなるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物で構成され、この成形品中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、原料ペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が、2以内となる特性を有するものとなる。
【0021】
そして、このような特性を有する成形品は、その成形素材におけるゴム成分の含有割合を従来の成形素材の場合よりも低減しても、充分に高い耐衝撃性を発現する特性を示すのである。このように、ゴム成分の含有割合を低減することができるので、その成形品はポリスチレンをはじめとする芳香族ビニル重合体が本来的に有している高い剛性を保持することができるのである。
【0022】
つぎに、本発明のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造する方法については、前記ゴム状重合体3〜12重量%の存在下に、芳香族ビニル単量体を重合あるいは共重合させた後、特定の処理条件の下に脱気処理をすることによって、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を得ることができる。
上記の重合または共重合は、公知の塊状重合または塊状−懸濁重合法に従って実施すればよく、とくに塊状重合が好ましい。この場合、得られるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の200℃、荷重5kgにおけるメルトフローインデックスが、3.0g/10分以下となるように、重合度を調節することが望ましい。このメルトフローインデックスの値が、3.0g/10分を超えるものでは、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の衝撃強度の向上効果が充分に得られないことがある。
【0023】
このようにして重合または共重合した後のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の脱気処理は、脱気プロセスにおける該組成物の温度Tを190〜250℃とし、かつ、滞留時間をt(時間)とし、脱気プロセス中の重合体組成物の温度をT(℃)としたときの両者の関係が、20≦t×(T−180)≦140となるようにする。このような条件下に脱気処理を行うことによって、上記のとおりの特性を有するゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を得ることができる。
【0024】
この脱気プロセス中の重合体組成物の温度Tは、190〜250℃の範囲内において脱気処理を行うが、これは、温度Tが250℃よりも高いとペレットを成形したときのペレット中のトルエン不溶分のスウェリングインデックスの値の低下が大きくなり、またこの温度Tを190℃未満とすると脱気プロセスの運転が困難になるからである。また、滞留時間tは0.5〜3時間とするのが適切である。そして、上記関係式のt×(T−180)の値が、20未満である条件下に脱気処理を行うと、得られるペレット中のトルエン不溶分のスウェリングインデックスの値が22よりも高くなり、また、140を超える条件下に脱気処理を行うと、得られるペレット中のトルエン不溶分のスウェリングインデックスの値が15未満となり、いずれの場合にも得られるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物ペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が前記範囲から外れたものになる。
【0025】
また、本発明のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造する方法として、前記ゴム状重合体3〜12重量%の存在下に、芳香族ビニル単量体を重合あるいは共重合させる工程、またはこの重合あるいは共重合の後の脱気処理の工程において、前記一般式(1)で表される化合物を添加して、架橋を防止する方法を併用することができる。この化合物は、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造するいずれの工程で添加してもよいのであるが、上記脱気処理工程の前後の残留モノマーの少ないところで添加するのが最も効果的である。
【0026】
前記一般式(1)で表される化合物は、この式中のR1 〜R5 が様々なアルキル基または水素原子で置換された化合物を用いることができるが、特に好適な化合物としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)メチルフェニルアクリレートが挙げられる。
【0027】
つぎに、この化合物の添加割合は、その濃度が200〜3000ppmとなるようにする。この濃度が200ppm未満であると、その添加効果が充分に発現されず、また3000ppmを超えて添加しても、それ以上の効果が得られるというものではない。
このようにして得られるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物には、各種の添加剤を配合することができる。例えば、酸化防止剤としては、フェノール系やリン系のものが好適であり、これらは単独でも2種以上のものを併用してもよい。また、可塑剤としては、流動パラフィンが好ましい。そして、離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムが好適に用いられる。さらに、外部潤滑剤としては、エチレンビスステアリルアミドが好ましく、このほか必要に応じて、難燃剤や着色剤など公知の添加剤を配合してもよい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
スチレンの重合装置として、完全混合槽型反応器2基と塔型反応器2基およびフラッシュドラム2基を直列に配置したものを用いた。このスチレンの重合装置に、ゴム状重合体として、ポリブタジエン〔宇部興産社製;BR−15HB〕を9重量%含有するスチレンを導入して、その転化率が約90%となるまでスチレンの重合を行った。
【0029】
スチレンの重合後のフラッシュドラムにおける脱気処理は、10mmHgの減圧下に、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物の温度を230℃とし、処理時間を1.5時間に設定して実施した。したがって、この場合のt×(T−180)の値は、75であった。
ついで、このゴム変性ポリスチレン樹脂組成物をストランド状に押出して切断し、ペレットを得た。ここで得られたゴム変性ポリスチレン樹脂組成物のメルトフローインデックスは、2.6g/10分であった。また、このゴム変性ポリスチレン樹脂組成物中のゴム量は、9.9重量%であった。さらに、このペレットについて、前記の方法で測定したスウェリングインデックスの値は、18.0であった。
【0030】
つぎに、このペレットを用いて、220℃において射出成形し、得られた試験片につき、JIS K 7110に準拠して、アイゾット衝撃強度の測定をした。この結果、この射出成形品のアイゾット衝撃強度は、16.4KJ/m2 であった。また、この射出成形品について測定したスウェリングインデックスの値は、17.6であり、上記ペレットのスウェリングインデックスの値との差は、0.4であった。
【0031】
さらに、このペレットを用いて200℃において押出成形し、厚さ0.5mmのシートを得た。そして、このシートから試験片を取り出し、デュポン衝撃強度を測定した。また、このシートについて測定したスウェリングインデックスの値は、17.5であった。
これら評価結果をまとめて第1表に示す。なお、第1表中には、スウェリングインデックスをSIと表示し、樹脂組成物ペレットとその成形品とのスウェリングインデックスの差をΔSIと表示した。
【0032】
〔実施例2〕
ゴム状重合体として、実施例1と同じポリブタジエンを用い、その含有割合が7.7重量%であるものを用いた他は、実施例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をし、その結果を第1表に示す。
【0033】
〔実施例3〕
ゴム状重合体粒子の面積平均粒径が3.5μm となるように調整した他は、実施例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をし、その結果を第1表に示す。
【0034】
〔実施例4〕
ゴム状重合体粒子の面積平均粒径が1.8μm となるように調整し、かつ、脱気処理時の樹脂組成物の温度を210℃とした他は、実施例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をし、その結果を第1表に示す。
【0035】
〔実施例5〕
ゴム状重合体として、実施例1と同じポリブタジエンを用い、その含有割合を7.7重量%とし、重合条件を変更してメルトインデックスの値が4.5g/10分となるようにした他は、実施例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をし、その結果を第1表に示す。
【0036】
〔実施例6〕
ゴム状重合体粒子の面積平均粒径が1.0μm となるように調整するとともに、その含有割合を10.0重量%とした他は、実施例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をし、その結果を第1表に示す。
【0037】
〔実施例7〕
ゴム状重合体粒子の面積平均粒径が5.0μm となるように調整した他は、実施例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をし、その結果を第1表に示す。
【0038】
〔実施例8〕
脱気処理の直前に、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物に、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)メチルフェニルアクリレート〔住友化学工業社製;スミライザーGS〕を、その濃度が1000重量ppmとなるように添加してから脱気処理を行った他は、実施例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をし、その結果を第1表に示す。
【0039】
〔比較例1〕
スチレンの重合装置として実施例1と同一装置を用い、実施例1と同じ原料を用いてスチレンの重合を行った。
スチレンの重合完了後のフラッシュドラムにおける脱気処理は、10mmHgの減圧下に、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物の温度を250℃とし、処理時間を2.5時間に設定して実施した。したがって、この場合のt×(T−180)の値は、175であった。
ここで得られたゴム変性ポリスチレン樹脂組成物のメルトフローインデックスは、2.5g/10分であった。
得られたゴム変性ポリスチレン樹脂組成物ついて、実施例1と同様に諸物性の評価をした。その結果を第2表に示す。なお、第2表中での表示の仕方は、第1表の場合と同様である。
【0040】
〔比較例2〕
脱気処理時の樹脂組成物の温度を270℃とし、かつ、処理時間を0.5時間となるようにした他は、比較例1と同様にした。
得られたゴム変性ポリスチレン樹脂組成物ついて、実施例1と同様に諸物性の評価をした。その結果を第2表に示す。
【0041】
〔比較例3〕
脱気処理時の樹脂組成物の温度を200℃とし、かつ、処理時間を0.5時間となるようにした他は、比較例1と同様にした。
得られたゴム変性ポリスチレン樹脂組成物ついて、実施例1と同様に諸物性の評価をした。その結果を第2表に示す。
【0042】
〔比較例4〕
ゴム状重合体の含有割合を2.4重量%としたものを用いた他は、比較例1と同様にして、ゴム変性ポリスチレン樹脂組成物を得た。
ついで、実施例1と同様に諸物性の評価をした。その結果を第2表に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、芳香族ビニル重合体へのゴム成分の含有割合を増やすことなく、芳香族ビニル重合体が本来有している剛性を保持しながら、耐衝撃性を向上させたゴム変性芳香族ビニル重合体組成物と、そのペレットを成形してなる剛性と耐衝撃性の共に優れた成形品、ならびに上記組成物を効果的に製造する方法を提供することができる。
Claims (8)
- ゴム状重合体3〜12重量%と芳香族ビニル重合体88〜97重量%からなるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物であって、該ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造するに際し、重合後の脱気プロセスでの前記組成物の温度Tを190〜250(℃)および滞留時間tを1.5〜3(時間)とし、かつ、滞留時間tと温度Tとの関係が、20≦t×(T−180)≦140で表される関係となる条件下に前記組成物の脱気処理をすることにより得られ、該ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が15〜22であり、かつ、そのペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、該ペレットを220℃で射出成形または200℃で押出成形することにより得られる成形物中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が2以内である、前記ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
- メルトフローインデックスが、3.0g/10分以下である請求項1に記載のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
- 請求項1または2に記載のゴム状重合体が、面積平均粒径1.5〜4μmの分散粒子の形態で存在する、ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
- 芳香族ビニル重合体が、スチレン重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム変性芳香族ビニル重合体組成物。
- ゴム状重合体3〜12重量%と芳香族ビニル重合体88〜97重量%からなるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレットであって、該ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレットを製造するに際し、重合後の脱気プロセスでの前記組成物の温度Tを190〜250(℃)および滞留時間tを1.5〜3(時間)とし、かつ、滞留時間tと温度Tとの関係が、20≦t×(T−180)≦140で表される関係となる条件下に前記組成物の脱気処理をすることにより得られ、該ペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が15〜22であり、かつ、そのペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、該ペレットを220℃で射出成形または200℃で押出成形することにより得られる成形物中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が2以内である、前記ゴム変性芳香族ビニル重合体組成物のペレット。
- 請求項5に記載のペレットを成形して得られた成形品であって、該成形品中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値と、上記ペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値との差が2以内である、前記成形品。
- ゴム状重合体を3〜12重量%の量で存在させて芳香族ビニル単量体を重合させることによりゴム変性芳香族ビニル重合体組成物を製造するに際し、重合後の脱気プロセスでの前記組成物の温度Tを190〜250(℃)および滞留時間tを1.5〜3(時間)とし、かつ、滞留時間t(時間)と温度T(℃)との関係が、20≦t×(T−180)≦140で表される関係となる条件下に、前記組成物の脱気処理をすることによる、組成物のペレット中のトルエン不溶分の25℃におけるスウェリングインデックスの値が15〜22であるゴム変性芳香族ビニル重合体組成物の製造法。
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