JP4194202B2 - 耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法及びその製品 - Google Patents

耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法及びその製品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れた硬化物が得られる液状タイプのフェノールノボラック樹脂の製造法に関する。さらに詳細には、半導体の封止材に適し、特にチップサイズパッケージなどの半導体封止材に適する半導体封止用硬化剤の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子材料用、特に半導体(IC)封止用のエポキシ樹脂としては、耐熱性、電気特性、低吸湿性に優れることから、現状ではオルソクレゾールノボラックのグリシジルエーテルが主として用いられている。このエポキシ樹脂に対する硬化剤としてはフェノールノボラック、各種アミン類、酸無水物が挙げられるが、IC封止用としては、耐熱性、信頼性の面から主にフェノールノボラックが用いられている。
一方、近年、ICのシリコンチップが、ますます高集積化、大型化する反面、パッケージ外形寸法は、小型、薄形化へと変化し、パッケージをプリント配線板(PCB)に取り付ける際の実装方式も、従来のピン挿入方式(DIP)から表面実装方式(SOP,SOJ,QFP、CSP)へ変化してきた。
上記で用いられるフェノールノボラック樹脂は従来半固形もしくは固形で、半固形もしくは固形のエポキシ樹脂、硬化触媒、着色剤、ワックス等と共にドライブレンドしてニーダー等で混練し、封止材料を製造し、半導体をトランスファー成形(160〜170℃)する方式で用いられている。
他方、封止材を流動性のある一液性として常温でポッティング、ディッピング、浸透圧で半導体、ダイオード等を封止する方式も行なわれている。これらは液状のエポキシ樹脂と液状の酸無水物、アミン、アミド等の硬化剤が用いられ、フェノールノボラック硬化剤は半固形もしくは固形フェノールノボラック樹脂又は溶剤に溶解したフェノールノボラック樹脂が用いられている。このような半固形もしくは固形フェノールノボラック樹脂を用いた封止材は、流動性が劣り、溶剤を用いたものは硬化した後、溶媒が封止材中に残存し性能に悪影響を及ぼす。
又、液状タイプのフェノールノボラック樹脂を用いて、無溶媒で封止材を構成することも試みられているが、硬化後の封止材の耐熱性が低い等の問題が発生している。
その改良方法として、熱可塑性樹脂や固形フェノールノボラック樹脂の添加を攪拌混合で行っているが、溶解せずに沈降したり、溶解するものでも、溶解に長時間を要するなどの製造面に問題が生じ、耐熱性や耐湿性の性能も低下して好ましくない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、優れた流動性と耐吸湿性及び耐熱性を発揮する耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法及びそれから得られる製品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、一般式(1)で示される構造を有する液状フェノール樹脂100重量部に対し、芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群より選ばれた化合物の少なくとも1成分3〜80重量部を反応させることを特徴とする50℃での粘度が1000ポイズ以下である耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明で示される液状フェノール樹脂は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。即ち、樹脂骨格成分がフェノールとオルソ位にR1基が炭素数1〜4のアルキル基またはアリル基を持つフェノール化合物からなり、架橋基がメチレン基及び/またはo−ヒドロキシフェニルメチレン基あるいはp−ヒドロキシフェニルメチレン基を含有する液状のフェノール樹脂である。
【化2】
【0006】
本発明で使用する液状フェノール樹脂の製造法は、(A)フェノール、(B)オルソ位に炭素数1〜4のアルキル基又はアリル基を持つフェノール化合物と、(C)ホルムアルデヒド及び/または(D)o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒドを反応させることにより得ることができる。
【0007】
(A)フェノールは通常の市販品が使用される。
(B)オルソ位に炭素数1〜4のアルキル基又はアリル基を持つフェノール化合物としては、オルソクレゾール(o−クレゾール)、オルソエチルフェノール(o−エチルフェノール)、オルソイソプロピルフェノール(o−イソプロピルフェノール)、2−tert−ブチルフェノール、o−sec−ブチルフェノールなどが挙げられる。また、オルソ位にアリル基を持つフェノール化合物としては、オルソアリルフェノール(o−アリルフェノール)が挙げられる。これらのフェノール化合物は単独又は併用して用いることができる。
【0008】
(A)及び(B)化合物の配合割合(B)/((A)+(B))は、モル割合で5〜95モル%、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは10〜80モル%である。5モル%より少ない場合でも液状フェノールノボラック樹脂は得られるが、得られた樹脂の粘度は高くなる傾向がある。95モル%より多くても液状フェノールノボラック樹脂は得られるが、製造コストが高くなる。
【0009】
(C)ホルムアルデヒドは通常市販品が使用され、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン水溶液)、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等を挙げることができるが、安価なホルマリン水溶液が好ましい。ホルムアルデヒドは、液状フェノール樹脂でメチレン基架橋を形成する。
【0010】
(D)o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒドは市販品が使用される。これらの化合物は、o−ヒドロキシフェニルメチレン基架橋またはp−ヒドロキシフェニルメチレン基架橋となり液状フェノールノボラック樹脂を形成する。これらo−ヒドロキシベンズアルデヒド及びp−ヒドロキシベンズアルデヒドは単独でも併用して用いても良い。
【0011】
(C)ホルムアルデヒドと(D)o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒドの配合割合(D)/((C)+(D))は、モル割合で70モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは5〜50モル%である。70モル%より多い場合では、得られた樹脂の粘度が高く、25℃で半固形もしくは固体となる。
【0012】
本発明で使用する液状フェノール樹脂のフェノール化合物((A)+(B))と架橋基となる化合物((C)+(D))の配合割合については、通常、フェノール化合物は架橋基となる化合物に対し、3倍モル以上であればよい。好ましくは5〜10倍モルである。3倍モルより少ないと、架橋が進み、得られる樹脂が半固形もしくは固形となる。余りに多すぎると、未反応の原料が多くなり経済的でない。
【0013】
液状フェノール樹脂の製造は、通常次のようにして行なわれる。即ち、上記の(A)フェノール、(B)のフェノール化合物、(C)のホルムアルデヒド及び(D)のo−ヒドロキシベンズアルデヒドあるいはp−ヒドロキシベンズアルデヒドの架橋剤、及び合成触媒を所定の配合割合で一括して反応器に仕込み、所定の温度で所定の反応率まで反応した後、未反応成分の除去工程を経て目的物の液状フェノール樹脂を得る。
特殊な製造法としては、フェノールあるいは一つのフェノール化合物と一つの架橋剤及び合成触媒とで前もってプレ反応させた後、それぞれを併せて反応させて目的とする液状フェノール樹脂を得ることも可能である。
【0014】
このとき、合成触媒としては、酸が用いられ蓚酸、パラトルエンスルホン酸、ジメチル硫酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸を使用することができる。触媒の使用量は、(A)+(B)のフェノール化合物に対し0.01〜1重量%の範囲で選択し使用される。少ないと反応速度が遅く、多すぎると反応が急激に進行して反応を制御することが困難となる場合がある。
【0015】
反応温度は、使用する化合物の配合割合にもよるが、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃、より好ましくは80〜180℃である。あまり低いと重合が進まず、余りに高いと反応の制御が難しくなり、液状フェノール樹脂を得ることが困難となる。
【0016】
反応時間は、反応温度にもよるが、通常は10時間以内である。
【0017】
反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、若干の加圧ないし減圧下でも行うことができる。
【0018】
反応後、未反応フェノール化合物等は、通常、減圧下で除去することにより液状フェノール樹脂を得ることができる。
【0019】
本発明で使用される液状フェノール樹脂は、25℃で液体状態を呈するものであり、25℃で粘度が500ポイズ(500Ps)以下、好ましくは400Ps以下、より好ましくは350Ps以下である。また、25℃での下限の粘度は好ましくは1以上、より好ましくは5以上である。あまりに低い粘度の液状フェノール樹脂は、現状では入手が困難である。平均重合度nについては特に限定されるものではないが、nが3以下である液状フェノール樹脂を使用するのが好ましい。本発明での液状フェノール樹脂は、2量体だけでも使用することができるので平均重合度nは0以上である。好ましくは0.3以上である。
【0020】
本発明の液状フェノール樹脂中で反応させる化合物は、芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体並びに芳香族ジアミンのモノマーから選ばれた化合物の少なくとも1成分であり、次の化合物が挙げられる。
本発明に用いられる芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体は、一般式(2)で示される化合物である。
【化3】
(HOOC)23(COOH)2 一般式(2)
ただし、式中のR3は、次式の芳香環骨格を示す。
本発明に用いられる芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体の具体例としては、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ピロメリット酸、またはそれらの酸二無水物やその誘導体を挙げることができる。ここでその誘導体とは、炭素数1〜4の脂肪族アルコールとのエステル化物を挙げることができる。好ましくは、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体であり、より好ましくは、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。これらは単独でも併用しても特に問題はない。
【0021】
芳香族ジアミンは、一般式(3)で示される化合物である。
【化4】
NH2−R4−NH2 一般式(3)
ただし、式中のR4は、次式の芳香環骨格を示す。
ここで、式中のXは次の構造式を示し、
YはO、S、SO2、炭素原子数0〜6個のアルキル基を示す。
この発明に用いられる芳香族ジアミンは、芳香環を2個以上有するものが適当である。芳香環1個のジアミン成分であると液状フェノール成分に対する溶解性が低下して好ましくない。また、芳香族以外のジアミンを使用すれば耐熱性が低下して好ましくない。
一般式(3)で示される芳香族ジアミン成分の具体的種類としては、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン[1,4,3-APB]、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン[1,3,3-APB]、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン[1,3,4-APB]、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン[BAPP]、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル[4,4'-DDE]、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル[3,3'-DDE]、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフォン、2,2-ビス(4-アミノフェニル) ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル] ヘキサフルオロプロパン、ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、4,4'-ジアミノジフェニルメタンなどのジアミンを挙げることができる。好ましくは2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン[BAPP]、ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォンであり、より好ましくは、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン[BAPP]である。
【0022】
芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体並びに芳香族ジアミンのモノマーはから選ばれた1成分をそれぞれ単独で使用する場合には、液状フェノール樹脂100重量部に対し、3〜80重量部、好ましくは5〜60重量部、より好ましくは10〜40重量部である。モノマー成分の使用量が余りに少ないと耐熱性が不十分となる。余りに多いとゲル化や半固形もしくは固形となりやすい。
【0023】
芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体並びに芳香族ジアミンのモノマーを同時に使用するときは、芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体と芳香族ジアミンのモノマー成分の使用モル比rが0.0<r≦0.94及び1.06≦r≦2.0の範囲にあることが好ましい。ただし、r=[芳香族ジアミン成分のモル数]/[芳香族テトラカルボン酸ないしはその誘導体のモル数]である。rが0.94を超え、1.06未満であるとイミド化合物の分子量が高分子量化するため液状フェノール樹脂への溶解性が低下し、一部ゲル化し、好ましくない。また、rが2.0を超えると合成した耐熱性液状フェノール樹脂溶液の着色が強く、また、得られる重合物の信頼性の面で好ましくない。
【0024】
芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体並びに芳香族ジアミンのモノマーを同時に使用するときの使用量は、液状フェノール樹脂100重量部に対し、3〜80重量部、好ましくは5〜60重量部、より好ましくは10〜40重量部である。モノマー成分の使用量が余りに少ないと耐熱性が不十分となる。余りに多いとゲル化や半固形もしくは固形となりやすい。
【0025】
一般式(1)で示される液状フェノール樹脂中での芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体並びに芳香族ジアミンのモノマー成分から選ばれた化合物の少なくとも1成分を反応する方法は、通常の公知の方法で行われる。
即ち、一定量の液状フェノール樹脂中に目的量の芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体並びに芳香族ジアミンのモノマー成分から選ばれた化合物の少なくとも1成分を添加し、所定の温度・圧力で反応させればよい。この時、非極性溶媒を混合して使用しても良い。トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30重量%以下であることが好ましい。非極性溶媒の割合が余りに多いと、液状フェノール樹脂の溶解力が低下しポリアミック酸が析出することがある。
【0026】
反応温度は、使用する化合物の配合割合にもよるが、通常30〜250℃、好ましくは40〜230℃、より好ましくは50〜200℃である。あまり低いと重合が進まず、余りに高いと反応の制御が難しくなり、耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を得ることが困難となる。
【0027】
反応時間は、反応温度にもよるが、通常は10時間以内である。
【0028】
反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、若干の加圧ないし減圧下でも行うことができる。
【0029】
本発明において得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、液状状態であり、試料約1gをE型粘度計((株)トキメック製)を使用し50℃で測定した値が、1000Ps以下、好ましくは500Ps以下、より好ましくは250Ps以下である。下限値については、その粘度が小さければ小さいほどよいが、本発明で使用する液状フェノール樹脂の50℃での粘度と同じかそれより大きい値である。好ましくは1Ps以上である。
【0030】
次に、得られる耐熱性液状フェノールノボラック樹脂のエポキシ樹脂としての用途として、硬化剤について説明する。
この耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、フェノール性の水酸基を有しているので、通常のフェノールノボラック樹脂と同様に、エポキシ樹脂の硬化剤として用いることができる。この耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いたエポキシ樹脂の硬化物は、低吸水性及び耐熱性に優れる。
【0031】
この場合に用いるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール類にエポキシ基を付与したビスフェノールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック樹脂及び臭素化フェノールノボラック樹脂等のフェノールノボラック系の樹脂にエポキシ基を付与したノボラック型エポキシ樹脂、ジフェニルメタンジアミンテトラグリシジルエーテルやシクロヘキサンジアミンテトラグリシジルエーテル等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ化SBRやエポキシ化大豆油等の脂肪族エポキシ樹脂、4,4’−ジヒドロキシビフェニルや3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類にエポキシ基を付与したジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等の多環芳香族型エポキシ樹脂等を挙げることができ、ノボラック型エポキシ樹脂、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び多環芳香族型エポキシ樹脂が好ましく、ノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0032】
本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いてエポキシ樹脂硬化物を得るには、例えば、特開平8−143648号公報記載の方法に準じて、本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の水酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基とのモル比が概ね当量となるように、本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂と前記エポキシ樹脂とを混合してエポキシ樹脂組成物とし、これを100〜250℃程度で加熱する。この際に、エポキシ樹脂組成物中には、硬化を促進するために一般的に用いられる硬化促進剤、例えば、N−メチルイミダゾール、トリエチルアミンやトリフェニルフォスフィン等が添加されているのが好ましい。また、必要に応じて、充填剤、カップリング剤、難燃剤、易滑剤、離型剤、可塑剤、着色剤、増粘剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0033】
本発明で得られる耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は、優れた流動性、硬化特性を発揮し、低吸水性で耐熱性に優れた樹脂である。そのため、有機材料及び無機材料の結合剤やエポキシ樹脂の硬化剤として使用できる。
【0034】
その用途としては、電気及び電子産業用、電子部品の封止材、積層板材料用のエポキシ樹脂の硬化剤として好適に用いられ、主に半導体の封止材に適し、時に、チップサイズパッケージなどの半導体封止材に適する。
【0035】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部は重量部を示す。
【0036】
参考例1
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量2000容量部のガラス製フラスコにフェノール282部(3モル)、o−アリルフェノール402部(3モル)、42%ホルマリン51.6部(0.72モル)及び蓚酸6部を三つ口フラスコに入れ、100℃で5h反応させた後160℃まで昇温して脱水した後、40torrの減圧下で未反応成分を除去した。得られた液状フェノール樹脂の粘度は19Ps(25℃)であり、平均重合度nは1.4であった。温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量500容量部のガラス製フラスコに上記で合成した液状フェノール樹脂を100部を入れ、次に2,3,3´、4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)6.1部(20.8ミリモル)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)4.3部(10.4ミリモル)を仕込み、窒素気流中で50℃の温度で溶解させた後、1時間攪拌して、その後、この溶液にキシレンを50部添加し200℃に昇温して3時間還流下に攪拌して反応水とキシレンを完全に除去した後、均一に相溶している耐熱性液状フェノールノボラック樹脂のポリマー溶液が得られた。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の粘度は8Ps(50℃)であった。さらに、得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂80重量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル−エポキシ社製Ep828:エポキシ当量189g/eq)100重量部及びトリフェニルフォスフィン1重量部を25℃で均一混合後(25℃での流動性の目安)、150℃、1分間加熱した後、金型(150×70×4mm)に注入後、150℃で5時間、さらに180℃で3時間恒温槽で硬化させテストピースを作成した。このようにして得られたテストピースの硬化特性を表3に示した。
ここで、得られた液体フェノール樹脂、耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の特性及びテストピースの硬化特性の評価方法は以下の通りである。
(1)平均重合度(n)GPC測定装置(東ソー社製HLC−802A型)を用い、分子量分布を測定して平均重合度nを算出した。
(2)粘度測定JIS K6909に準じてE型粘度計((株)トキメック社製)で測定した。
(3)OH当量の測定試料2〜3gを無水酢酸1.25gでアセチル化し、アセチル化後の酢酸を水酸化カリウムで滴定し、OH当量を求めた。(アセチル化法)
(4)吸水率JIS K6911に準じて、試験片(直径50±1mm、厚さ3±1mm)を成形し、100℃の熱水中に24h浸した後、前後の重量変化より求めた。
(5)Tg(ガラス転位温度)の測定熱機械分析法(TMA法)により求めた。
(6)曲げ強度及びヤング率JIS K6911に準じて測定した。
【0037】
参考例2
参考例1において、液状フェノール樹脂を100部を入れ、次に2,3,3´、4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)24.4部(83ミリモル)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)17.1部(42ミリモル)の仕込み以外は参考例1と同様に合成した。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の粘度は125Ps(50℃)であった。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は参考例1に準じてテストピースを作成した。このようにして得られたテストピースの硬化特性を表3に示した。
【0038】
実施例
参考例1において、液状フェノール樹脂を100部を入れ、次に2,3,3´、4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)10部(34ミリモル)のみを仕込んだ以外は参考例1と同様に合成した。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の粘度は6Ps(50℃)であった。得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂は参考例1に準じてテストピースを作成した。このようにして得られたテストピースの硬化特性を表3に示した。
【0039】
比較例1
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量1000容量部のガラス製フ
ラスコにフェノール94部(1モル)、o−アリルフェノール134部(1モル)、42%ホルマリン17.2部(0.24モル)及び蓚酸2部を三つ口フラスコに入れ、100℃で5h反応させた後、160℃まで昇温して脱水し、40torrの減圧下で未反応成分を除去した。得られた液状フェノール樹脂の粘度は19Ps(25℃)であり、平均重合度nは1.4であった。
次に、この液状フェノール樹脂76重量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル−エポキシ社製Ep828:エポキシ当量189g/eq)100重量部及びトリフェニルフォスフィン1重量部を25℃で均一混合後(25℃での流動性の目安)、150℃、1分間熱処理させた後、金型(150×70×4mm)に注入後、150℃で5時間、さらに180℃で3時間恒温槽で硬化させテストピースを作成した。このようにして得られたテストピースの硬化特性を表3に示した。
【0040】
比較例2
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量1000容量部のガラス製フ
ラスコにフェノール94部(1モル)、o−アリルフェノール134部(1モル)、42%ホルマリン17.2部(0.24モル)及び蓚酸2部を三つ口フラスコに入れ、100℃で5h反応させた後160℃まで昇温して脱水した後、40torrの減圧下で未反応成分を除去した。得られた液状フェノールノボラック樹脂の粘度は21Ps(25℃)であり、平均重合度nは1.4であった。
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量500容量部のガラス製フラスコに上記で合成した液状フェノール樹脂を100部を入れ、次に2,3,3'、4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)58.2部(197ミリモル)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)40.5部(98.7ミリモル)を仕込み、窒素気流中で50℃の温度で溶解させた後、1時間攪拌して、その後、この溶液にキシレンを50部添加し200℃に昇温して3時間還流下に攪拌して反応水とキシレンを完全に除去した。
その後、この溶液を室温に戻す時、ゲル化した。
【0041】
比較例3
温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた容量500容量部のガラス製フラスコに2,3,3'、4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)58.8部(200ミリモル)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)41.1部(100ミリモル)及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)300部を仕込み、窒素気流中で50℃の温度で溶解させた後、1時間攪拌して、その後、この溶液にキシレンを50部添加し200℃に昇温して3時間還流下に攪拌して反応水を除去した後、イミド化合物が24重量%で均一に溶解しているポリマー溶液が得られた。次に、室温に戻したポリマー液を加圧濾過してイオン交換水を使用して析出・洗浄させてイミド化合物を回収した。200℃で5時間乾燥して粉末状の酸末端イミド化合物92部(収率95%、イミド化率:実質的に100%、n=1)が得られた。
容量500容量部のガラス製フラスコに、上記、実施例1で製造した液状フェノール樹脂100部に、上記で製造したイミド化合物40部を添加し、窒素気流下、150℃で24時間攪拌したが、一部が未溶解で残り均一な液状にならなかった。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】
以上、詳述した通り本発明の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製法は、エポキシ樹脂等の硬化剤として優れた流動性、吸湿特性、耐熱性を発揮する樹脂硬化物の製造法を提供する。また、得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂はその特性を有し、優れた硬化剤として使用できる。

Claims (6)

  1. 一般式(1)で示される構造を有する液状フェノール樹脂100重量部に対し、芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体からなる群より選ばれた化合物の少なくとも1成分3〜80重量部を反応させることを特徴とする50℃での粘度が1000ポイズ以下である耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法。
    (ただし、式中のRは、水素原子、炭素原子数1〜4個のアルキル基、アリル基を示し、式中のRは、
    を示し、nは整数を示す。)
  2. 芳香族テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸二無水物及びその誘導体が2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物ないしはその誘導体である請求項1に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法。
  3. 一般式(1)で示される構造を有する液状フェノール樹脂の構成が、
    (A)フェノール、(B)オルソ位に炭素原子数1〜4のアルキル基又はアリル基を持つフェノール化合物と
    (C)ホルムアルデヒド及び/または(D)o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドエキシベンズアルデヒドを含有する請求項1または2に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法。
  4. (A)及び(B)化合物の配合割合(B)/((A)+(B))が、5〜95モル%であり、
    (C)と(D)の配合割合(D)/((C)+(D))が70モル%以下である請求項3に記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂の製造法。
  5. 請求項1から4いずれか1項で得られた耐熱性液状フェノールノボラック樹脂。
  6. 請求項5記載の耐熱性液状フェノールノボラック樹脂からなる封止材。
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