JP4193967B2 - 隔膜型触媒を用いるプロピレンオキシドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直接酸化法によりプロピレンからプロピレンオキシドを製造する方法に関する。さらに詳しくは、隔膜型触媒を備えた反応容器を用いてプロピレンを直接酸化するプロピレンオキシドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロピレンオキシドは、有機化学工業における化合物として重要なものであり、その主な用途としては、プロピレングリコール及びポリプロピレングリコール製造の合成中間体である。このプロピレンオキシドの工業的製法としては、クロロヒドリン法や過酸化物を酸化剤とする間接酸化法(ハルコン法)等が知られており、これらはいずれもプロピレンを出発原料としている。
【0003】
まず、クロロヒドリン法は、水と塩素を反応させて生成した次亜塩素酸(HOCl)にプロピレンを反応させて、α−、β−クロロヒドリン混合物を生成させ、次いで水酸化カルシウムで脱塩化水素反応を行わせてプロピレンオキシドを得る方法である。
【0004】
この製造法におけるプロピレンからプロピレンオキシドへの総括収率は約85%に達し、高収率という利点があるが、その一方で、原料として高価な塩素を使用する上、これが最終的には実質的に価値のない塩化カルシウムになり、その廃水処理に要する費用が高価になる等の欠点がある。
【0005】
一方、塩素を使用せずにプロピレンオキシドを製造する方法として開発されたのがハルコン(Halcon)法であり、エチルベンゼン法とイソブタン法の2つの方法が知られている。これらの方法は、エチルベンゼンを酸化して得られるエチルベンゼンヒドロペルオキシド、または、イソブタンを酸化して得られるt−ブチルヒドロペルオキシドを酸化剤として、モリブデンやタングステン触媒を用いてプロピレンを間接的にエポキシ化することに基づいており、対応するアルコールが併産されることが特徴である。
【0006】
このハルコン法の反応は多段で行われ、エチルベンゼン法の場合、▲1▼エチルベンゼンの酸化、▲2▼プロピレンのエポキシ化および▲3▼α−メチルベンジルアルコールの脱水の3工程よりなる。エチルベンゼンを使用する最も一般的な反応成績は、プロピレン反応率が10%で、プロピレンオキシドの選択率は90%である。この方法では、最後の工程であるα−メチルベンジルアルコールの脱水によりスチレンが大量に併産されるため、プロピレンオキシドの価格がスチレンの需要量に左右され、変動されてしまうという欠点があった。
【0007】
このように、従来のプロピレンオキシドの工業的な製造法は、いずれも多段階の工程かつ複雑な反応系を経由しており、また不要な副生物が生成するという欠点を有していた。よって、より高収率でかつ簡便な製造プロセスの工業化が望まれていた。
【0008】
上記の要望を満足する製造法としては、プロピレンを分子状酸素により直接的に酸化する直接酸化法が最も理想的なものである。最近では、この直接酸化法の試みもいくつか提案されており、例えば、特開平8−283252号公報では、結晶性メタロシリケートに硝酸銀等の硝酸金属塩を担持した触媒を用い、プロピレンを気相酸化してプロピレンオキシドを製造する方法が提案されている。この方法では、プロピレン転化率が1.1〜2.0%で、プロピレンオキシド選択率が50〜57%と比較的高いものであるが、定常状態において触媒活性が維持できないという問題があった。また、特開平9−291084号公報では、上記方法において、該触媒の担体をイオン交換処理することにより活性が維持されるということが開示されているが、この場合には、転化率が0.6%以下と極めて低くなってしまうという問題が生じていた。
【0009】
さらに、特開平11−76820号公報では、チタン含有珪酸塩に金を担持した触媒を用い、水素の共存下にプロピレンを気相酸化してプロピレンオキシドを製造する方法が提案されている。この方法では、プロピレン転化率0.8〜1.7%で、プロピレンオキシドの選択率が89%と極めて高いものである一方、水素を用いることで高温において転化率が低下したり、触媒の経時劣化が起こるなどの問題があった。このように、いずれの製造方法も、触媒性能が不十分なものであって、実用的なプロピレンオキシドの製造方法とは言い難いものであった。
【0010】
また一般的に、直接酸化法によるプロピレンと酸素の反応においては、反応条件が制約され、収率が低いことが問題となる。これは、原料プロピレンと酸素の混合ガスに爆発の危険性があり、これを避けるために低濃度、低転化率で反応を行なわなければならないためである。
【0011】
さらに、直接酸化法の場合、生成したプロピレンオキシドは、原料のプロピレンに比べてより酸化されやすいため、逐次酸化反応による過反応が起こり、目的とする生成物の選択性が低下してしまうという問題があった。この過反応を抑制するためにも、生成物と比較して原料が常に大過剰となるようにしておく必要があった。
【0012】
これらの問題が、直接酸化法の低収率の原因となっており、このため、分子状酸素を用いた直接酸化法によるプロピレンオキシドの製造法は、工業的に実用的な製造法として確立されるには至っていないのが現状であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、分子状酸素を用いた直接酸化法によりプロピレンからプロピレンオキシドを製造する方法において、爆発の危険性を回避し、安全で、かつ、プロピレンオキシドを選択的に高収率で製造する方法の提供をその課題とするものである。
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、触媒の形態を膜状にした隔膜型触媒を用い、これを通過させて活性化した酸素を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、隔膜型触媒を通過し活性化された酸素をプロピレンと反応させることにより、プロピレンを直接酸化することができ、しかもプロピレンと酸素ないしは生成したプロピレンオキシドと酸素の接触を制御し得るため、爆発の危険性を回避するとともに目的生成物の過反応を防止することが可能となり、その結果、選択的に高収率でプロピレンオキシドを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち本発明は、酸素とプロピレンを反応させてプロピレンオキシドを製造する方法において、酸素を隔膜型触媒を通過させることにより活性化し、これをプロピレンと反応させることを特徴とするプロピレンオキシドの製造方法である。
【0016】
また本発明は、反応を、隔膜型触媒により複数の室に区分されてなり、隣接する一方の室には酸素を、他方の室にはプロピレンを流通させることができ、酸素が隔膜型触媒を通過する際に活性化されてプロピレンと反応するよう構成された反応容器を用いて反応を行う、上記のプロピレンオキシドの製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において、プロピレンオキシドは、通過する物質を活性化する隔膜型触媒により活性化された酸素をプロピレンと反応させることにより、一段の反応工程で製造される。
【0018】
本発明において、隔膜型触媒は重要な構成要素であるが、このものは、上記のように通過する物質を活性化する作用を有するものであり、例えば、膜状の多孔質支持体に触媒活性成分を担持せしめることにより構成される。
【0019】
この隔膜型触媒において用いられる触媒活性成分としては、隔膜型触媒を通過する酸素を活性化する金属または金属複合体を挙げることができる。
【0020】
このうち、触媒として有効な金属としては、銀が挙げられる。 また、金属複合体としては、銀と、第一遷移金属、第二遷移金属、第三遷移金属、ランタニド系元素、アクチニド系元素のいずれかの群に属する1種以上の元素との複合体が挙げられる。ここで、第一遷移金属元素は、周期律表第4周期の第4A族から第8A族の元素を意味し、具体的には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト及びニッケルの元素が例示される。また、第二遷移金属元素は、周期律表第5周期の第4A族から第8A族の元素を意味し、具体的には、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム及びパラジウムの元素が例示される。更に、第三遷移金属元素は、周期律表第6周期の第4A族から第8A族の元素を意味し、具体的には、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム及び白金の元素が例示される。
【0021】
さらに、触媒活性を向上させるために、触媒活性成分中に上記の金属または金属複合体と併せて助触媒を添加することができる。この助触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属のいずれかの群に属する元素を挙げることができる。
【0022】
これらの触媒活性成分を担持する多孔質支持体としては、触媒の活性成分を均一に分散・担持でき、酸化反応触媒等の担体として有効なものであり、かつ、膜状に成形可能であって、原料とするガス状反応成分(例えば分子状酸素)を一方から他方に透過できるものであれば特に制限されことなく種々の多孔質支持体を利用することができる。このような多孔質支持体の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア及びジルコニアから選ばれる酸化物多孔体や、これらの酸化物多孔体の2種以上の複合体、あるいはゼオライトの多孔体を挙げることができる。
【0023】
また、上記の多孔体を直接用いるほか、ガス透過性を適度に抑制し、小さくするために、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、水熱合成等の方法により、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト等を膜状の金属多孔体や多孔質の無機材料(セラミックス等)上に担持したものを多孔質支持体として用いることもできる。
【0024】
これらの多孔体の細孔径は、目的とする反応の種類や条件に応じて選択されるが、一般に0.5nm〜10μmのものが適当であり、0.5nm〜1μmのものが好ましい。また、多孔体の比表面積は、一般に2〜1,000m2 /gのものが適用可能である。
【0025】
以上の多孔質支持体は、基本的に膜状であり、膜の厚さは50μm〜5mmのものが使用可能であるが、機械的強度及び透過抵抗の面から100〜500μmのものが好ましい。また、多孔質支持体の形状は、一般に膜がチューブ状、あるいはプレート状の形状をなすものが好適である。該形状の多孔体は、例えば特公平5−66343号(特許1850556号)に記載の方法を用いることにより得ることができる。
【0026】
なお、上記の多孔質支持体の膜の厚さ、細孔径及び比表面積は、多孔体の製造、あるいは触媒調製時の条件によって制御することができ、反応条件によって適宜選択される。
【0027】
上記多孔質支持体に触媒活性成分を担持する方法としては、通常の酸化反応触媒の調製に用いられる方法、例えば含浸法、沈殿法、イオン交換法、蒸着法、水熱合成法等を用いることができる。また、これらに加えCVD法(化学蒸着法)、PVD法(物理蒸着法)、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティングなども適用できる。多孔質支持体上に担持される触媒活性成分の含有量は、触媒活性を行うために有効な量であれば特に限定されるものではなく、触媒活性成分や多孔質支持体の種類や反応条件によって適宜設定される。
【0028】
本発明方法によるプロピレンオキシドを製造する場合の反応条件として、一般に反応温度は−200〜900℃の範囲、好ましくは−10〜600℃の範囲である。また、反応圧力は0.1〜150kg/cm2 の範囲、好ましくは0.5〜50kg/cm2 の範囲である。
【0029】
本発明において使用される原料は、酸素とプロピレンである。このうち、酸素の供給源としては、空気、純酸素、オゾンガスまたはこれらの混合ガスを用いることができる。また、プロピレンの供給源としては、純プロピレンを用いるのがよいが、メタン、エタン、プロパン等の炭化水素を不純物として含んでいてもよい。また、これらの原料を反応容器に供給する際には、反応の希釈剤として、窒素、水蒸気、ヘリウム、二酸化炭素、メタン等を用いることができる。
【0030】
これら酸素とプロピレンは、酸素濃度を2%以上、好ましくは5〜50%、またプロピレン濃度を5%以上、好ましくは10〜80%の濃度範囲で反応容器に供給され、隔膜型触媒を間に挟んで流通させることが好ましい。この供給ガスの流通方向は、正方向または逆方法のいずれでもよく、また、一方の供給ガスは出口を閉じて静止状態として、もう一方の供給ガスのみを流通させてもよい。各供給ガスの流通速度は、供給ガス中の原料成分の濃度、反応容器及び隔膜型触媒の形態や大きさによって適宜決定される。
【0031】
以上説明した本発明方法を実施するために使用される反応容器は、酸素が隔膜型触媒を通過することによって活性化され、これがプロピレンと反応して酸化反応が進行するようであれば、その構成は特に制限はない。
【0032】
例えば、本発明方法を有利に実施することのできる反応容器としては、その基本的な構造として、反応容器を複数の室に区分する隔膜型触媒が設けられており、区分されてできた隣接する一方の室には、上記隔膜型触媒により活性化されるべき物質、即ち酸素が流通可能とされており、区分されてできた隣接する他方の室には、上記活性化さた物質と反応すべき化合物、すなわちプロピレンが流通可能とされており、活性化されるべき物質(酸素)が隔膜型触媒を通過する際に活性化され、反応すべき化合物と反応するよう構成されている容器を挙げることができる。
【0033】
以下、より具体的に本発明方法の実施において有効に利用される反応容器(以下、「隔膜型反応器」と略する場合がある)の例を図面と共に説明する。
【0034】
図1は、隔膜型反応器の一例の縦断面図を示す図面である。図中、1は酸素流通部、2はプロピレンの滞留部、3は隔膜型触媒、4はプロピレンの導入口、5は反応生成物の出口、6は酸素の導入口、7は酸素の排出口、8は外側筒、9は内側筒をそれぞれ示している。
【0035】
図1に示す反応容器は、気相反応用の2重管式反応器であり、外側筒8と内側筒9の間の空間が酸素流通部1を形成し、その一部または大部分が隔膜型触媒3で構成されている内側筒9がプロピレンの滞留部2を形成する。
【0036】
酸素は、酸素の導入口6から酸素流通部1に導入され、酸素の排出口7から排出される。一方、プロピレンは、プロピレンの導入口4からプロピレン滞留部2に導入される。
【0037】
酸素流通部1中の酸素の一部は、隔膜型触媒3で活性化され、当該触媒を通過してプロピレン滞留部2中でプロピレンと反応し、プロピレンオキシドを生成する。生成したプロピレンオキシドと、残存したプロピレンは、反応生成物の出口5から取り出される。
【0038】
なお、上記図1で示した反応容器には、一般には反応容器を覆う加熱装置や冷却装置、あるいは内部の温度や圧力を測定するための計器等が設置されるが、ここでは省略している。
【0039】
以上説明した本発明の製造方法によれば、簡便にプロピレンを分子状酸素を用いて直接酸化することができ、しかもプロピレンおよび酸素の接触を自由に制御し得るため、爆発の危険性を回避するとともに目的生成物の過反応を防止することができ、その結果、選択的に高収率でプロピレンオキシドを製造することができる。
【0040】
また、本発明の製造方法では、反応ガス濃度を高くすることもでき、かつ、供給される反応ガス濃度が高い場合において、より高い選択率でプロピレンオキシドを製造することができる。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0042】
なお、以下の実施例において、生成物および残った原料プロピレンの分析はガスクロマトグラフ法で行った。ここで、%はモル濃度を表す。
【0043】
参 考 例 1
隔膜型触媒の製造:
まず、特許1850556号の実施例1記載の方法に従い、多孔体膜として用いるチューブを製造した。すなわち、0.3μmのα−アルミナ粉末を用いて、外径約2.0mm、内径約1.6mm、細孔径0.2μmのα−アルミナ製の多孔質チューブを製造した。水銀圧入法で測定したその比表面積は2m2 /gで、気孔率は43vol%であった。
【0044】
次いで、酢酸銀18.05g、マレイン酸銀17.96gを29wt%アンモニア水28.32gに溶解させた溶液と、27wt%の酢酸ストロンチウム溶液17.46gを混合し、生成した固体と液体をろ過により分離した。得られた固体から2.6gを分取し、ろ液45.59g、イオン交換水14.95gと混合した。この液体にα−アルミナチューブを浸漬し、68℃で1時間保持した。このα−アルミナチューブを窒素雰囲気下、68℃で一晩乾燥した後、空気中で230℃、さらに3%酸素を含むCO2 気流中で40分焼成した。反応前には、水素気流中で150℃、1時間前処理を行った。
【0045】
得られた銀担持多孔体膜に担持された銀及びストロンチウムの担持量を、蛍光X線分析法にて測定したところ、それぞれ9.6wt%、0.63wt%であった。
【0046】
実 施 例 1
プロピレンオキシドの製造:
参考例1で製造した銀担持多孔体膜を隔膜型触媒として使用して、図1の同様の反応容器を用いてプロピレンの酸化反応を行った。即ち、図1の酸素流通部1(容積193ml)に、酸素導入口6より窒素及び酸素を、それぞれ20ml/min、5ml/minの供給速度で導入した。一方、プロピレンの滞留部2(容積0.76ml)には、窒素、プロピレンおよび水蒸気を、それぞれ20ml/min、5ml/min、2.5ml/minの供給速度で導入した。反応器を加熱し、反応温度220℃で反応させたところ、プロピレン転化率4.4%で、プロピレンオキシドの選択率が32%の結果が得られた。
【0047】
上記の結果より、本発明の隔膜型触媒を用いる方法は、従来技術と同等以上の転化率のもとに、選択的にプロピレンオキシドが得られることが確認できた。
【0048】
実 施 例 2:
プロピレンオキシドの製造:
実施例1と同様の反応を酸素濃度を変えて行った。即ち、酸素流通部1に、酸素導入口6より窒素及び酸素を、それぞれ20ml/min、2.5ml/minの供給速度で導入した。一方、プロピレンの滞留部2には、窒素、プロピレンおよび水蒸気を、それぞれ20ml/min、5ml/min、2.5ml/minの供給速度で導入した。反応器を加熱し、反応温度220℃で反応させたところ、プロピレン転化率1.3%で、プロピレンオキシド選択率34%であった。
【0049】
実 施 例 3:
プロピレンオキシドの製造:
実施例1と同様の反応をプロピレン濃度を変えて行った。即ち、酸素流通部1に、酸素導入口6より窒素及び酸素を、それぞれ20ml/min、5ml/minの供給速度で導入した。一方、プロピレンの滞留部2には、窒素、プロピレンおよび水蒸気を、それぞれ15ml/min、10ml/min、6.2ml/minの供給速度で導入した。反応器を加熱し、反応温度220℃で反応させたところ、プロピレン転化率1.7%で、プロピレンオキシド選択率44%であった。
【0050】
上記の結果より、本発明の製造方法は、反応容器にプロピレン濃度の高いガスを導入でき、かつ、供給されるプロピレンの濃度が高い場合において、より高い選択率でプロピレンオキシドが得られることが確認できた。
【0051】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、簡便にプロピレンを分子状酸素を用いて直接酸化することができ、しかもプロピレンおよび酸素の接触を自由に制御し得るため、爆発の危険性を回避するとともに目的生成物の過反応を防止することができ、その結果、選択的に高収率でプロピレンオキシドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の気相反応用の隔膜型反応容器の一例の縦断面図を示す図面である。
【符号の説明】
1 … … 酸素流通部
2 … … プロピレン滞留部
3 … … 隔膜型触媒
4 … … プロピレン導入口
5 … … 反応生成物の出口
6 …… 酸素の導入口
7 …… 酸素の排出口
8 …… 外側筒
9 …… 内側筒
以 上
Claims (10)
- 酸素をプロピレンと反応させてプロピレンオキシドを製造する方法において、分子状酸素を、アルミナの膜状の多孔質支持体に触媒活性成分を担持した、ガス状反応成分を透過できる隔膜型触媒を通過させることにより活性化し、これをプロピレンと反応させることを特徴とするプロピレンオキシドの製造方法。
- 反応を、隔膜型触媒により複数の室に区分されてなり、隣接する一方の室には酸素を、他方の室にはプロピレンを流通させることができ、酸素が隔膜型触媒を通過する際に活性化されてプロピレンと反応するよう構成された反応容器を用いて行うことを特徴とする請求項第1項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 反応容器が、一つの隔膜型触媒により、二つの室に区分された反応容器である請求項第2項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 担持された触媒活性成分が銀である請求項第1項ないし第3項のいずれかの項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 担持された触媒活性成分が、銀と、第一遷移金属、第二遷移金属、第三遷移金属、ランタニド系元素、アクチニド系元素のいずれかの群に属する1種以上の元素との複合体である請求項第1項ないし第3項のいずれかの項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 触媒活性成分が、さらに助触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属のいずれかの群に属する1種以上の元素を含む請求項第1項ないし第5項のいずれかの項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 膜状の多孔質支持体が、細孔径0.5nm〜10μmのものである請求項第1項ないし第6項のいずれかの項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 膜状の多孔質支持体が、比表面積2〜1,000m2/gのものである請求項第1項ないし第7項のいずれかの項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 膜状の多孔質支持体が、膜の厚さが50μm〜5mmのものである請求項第1項ないし第8項のいずれかの項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
- 反応に用いられている酸素源が、空気、純酸素ガス、オゾンガスまたはこれらの混合ガスである請求項第1項ないし第9項のいずれかの項記載のプロピレンオキシドの製造方法。
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