JP4193624B2 - 耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体およびその製造方法 - Google Patents

耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼を代表とするFe−Cr系合金を素材とする電気機器、精密加工機器、自動車、建材などの機械器具や部品などの構造体であって、成形や組立てによって、隙間部が形成されている場合に、その隙間部の耐食性と塗膜密着性が向上した構造体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼を代表とするFe−Cr系合金(以下、単にFe−Cr系合金と称す)は、防食性能に優れているので各種の耐食性を要求される用途、特に美観や意匠性、メインテナンスフリーといった特徴を最大限に活かす様々な用途に広く使用されてきた。しかし、現実の使用環境においては、耐食性が必ずしも十分とは言い難く、特に隙間部、溶接部、異種金属との接合部など(以下、単に隙間部と称す)に腐食が発生し、進展することが明らかになった。
【0003】
例えば、板を2枚溶接した時に形成される板と板、またボルト止めを行った時に形成されるボルト(金具)と母材との隙間などの耐食性は必ずしも満足できるものではなかった。このような隙間部は自動車、建材をはじめほとんどの構造体で形成される。従来はこれらの耐食性が最も劣る部位、すなわち隙間部に合わせてFe−Cr系合金の銘柄を選定するため、隙間部以外の部位や腐食環境にない用途で過剰品質となる場合があった。
【0004】
ステンレス鋼の特に隙間部の耐食性を向上させる方法として、隙間部にステンレス鋼より卑な金属(ステンレス鋼よりイオンになりやすい金属)を挟んだり、施工後に隙間となる部位に予めステンレス鋼より卑な金属箔を貼り付けたり、卑な金属を含む塗料を塗布する提案がされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、金属箔を貼り付けるのは、作業工程が増え、部材数が増加するので、実際的ではなく、塗料を塗布する方がより簡便である。そこで、本発明者は、該公報に記載される実施例に従って、市販のジンクリッチ塗料(金属亜鉛粉を含有する塗料)を試験片の隙間部およびその周辺部に塗布してその耐食性を評価したところ、試験片を腐食環境に曝す実験では、耐食性の向上が認められたものの、該塗料を現実の構造体に塗布して、構造体をさらに加工したり、あるいは運搬した後には、従来と同じような錆が発生し、耐食性の向上が認められないことを発見した。
【0006】
また、加工後に隙間部にジンクリッチ塗料を塗布しても、長期間の使用により塗膜から亜鉛が溶出すると、塗膜が多孔質(スケルトン状)になり、その中に海塩粒子、雨水などが浸透し、腐食の発生を一層増進させるだけではなく、塗膜剥離をも引起し、美観を損なうことを新たに発見した。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−72985号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、現実の使用環境においても、Fe−Cr系合金構造体の、特に隙間部における腐食を十分に防止し、腐食による構造体の強度低下がなく、長期間の使用に耐え得るように耐食性を向上させ、さらには、塗料を塗布した塗装部、特に隙間部の美観と防食塗膜の密着性を向上させたFe−Cr系合金構造体とその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、クロムを6質量%以上25質量%以下含有するFe−Cr系合金構造体の隙間部を有する表面の不動態被膜に、鉄より卑な金属粉を含有し、乾燥塗膜に占める該金属粉の含有量が20体積%以上60体積%未満で、かつ乾燥膜厚が5μm以上100μm未満の防食塗膜を有することを特徴とする耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体である。
【0010】
前記Fe−Cr系合金構造体においては、前記金属粉の平均粒子径が3μm以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、クロムを6質量%以上25質量%以下含有するFe−Cr系合金構造体の隙間部を有する表面の不動態被膜に、鉄より卑な金属粉を含有する塗料を、乾燥膜厚で5μm以上100μm未満で、かつ乾燥塗膜に占める金属粉の含有量が20体積%以上60体積%未満となるように塗布して、防食塗膜を形成することを特徴とする耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体の製造方法である。
【0012】
前記Fe−Cr系合金構造体の製造方法において、前記金属粉の平均粒子径が3μm以下であるのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明は、鉄より卑な金属粉(鉄よりイオン化しやすい金属粉、または鉄よりも標準電極電位が低い金属粉:以下、犠牲防食金属粉とも称す)を含有する塗料による犠牲防食効果を損なわず、しかも該塗料により形成された防食塗膜を有するFe−Cr系合金構造体を加工または運搬した場合にも、錆が特に発生しやすい隙間部における錆の発生を防止するとともに、長期間使用後の塗膜密着性、塗装部の美観向上を、防食乾燥塗膜中の金属粉の体積含有量を規定し、かつ塗膜の膜厚を規定することによって達成するものである。
【0014】
本発明が対象とする構造体を構成するFe−Cr系合金は、Cr含有量が6質量%以上25質量%以下であることを必須とする。Cr含有量が6質量%未満であると屋内、屋外の大気環境で使用された場合でも、赤錆の発生が著しく、隙間部での十分な耐食性確保が難しい。
Cr含有量が25質量%超であるとFe−Cr系合金そのものの耐食性が向上し、犠牲防食のための金属粉を含有した防食塗料を塗布する意味が薄れる。好ましいCr含有量は11〜20質量%である。
【0015】
Cr以外の成分の含有は特に制限されず、加工性、強度、その他の目的に応じて、C、Si、Mn、Ni、Cu、Mo、W、Nb、Ti、Zr、V、B、Al、Nなどの元素を適宜添加することができる。特にMoは耐食性の向上に有効であり、含有量は0質量%以上3.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以上2.0質量%以下である。
【0016】
本発明の構造体は、前記のようなFe−Cr系合金の部材によって、成形または組立ててなるものであり、その構造、形状、大きさなどに拘らない。例えば、1枚のFe−Cr系合金板を曲げ回してその端部同士を溶接、かしめ、ボルト締めなどによって接合したもの、あるいはFe−Cr系合金板をプレス成形した部品を複数個組合わせて溶接、かしめ、ボルト締めなどの手段で一体化したものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明者は、Fe−Cr系合金で構成された構造体の隙間部の腐食の防止には、前記先行技術に開示されているように、亜鉛等の鉄より卑な金属粉の持つ犠牲防食性能を利用することが有効であると考えた。しかし、前述したように、例えば市販の普通鋼用の亜鉛を含有するジンクリッチ塗料を塗布した場合には、実際の使用環境において、特に加工や運搬の際に、飛び石のような外傷を受けた場合や、振動によりボルトなどのつなぎ部が収縮するような力を受けた場合に、塗膜が部分的に剥離し、十分な防食機能が発揮されない。
また、長期間にわたる実際の使用環境において、塗膜中の金属粉がほとんど失われた場合、塗膜が多孔質(スケルトン状)になり、しかもそこに海塩粒子や雨水、塵埃が入り込み、隙間部の腐食により耐食性を低下させるばかりか、塗膜密着性、美観を損なうことになる。
【0018】
すなわち、本発明者は、従来の普通鋼用に開発、実用化されているジンクリッチ塗料に代表される犠牲防食を活用した塗料を、Fe−Cr系合金用に改良し、その改良塗料を塗布して防食塗膜を形成したFe−Cr系合金の加工や運搬などを実際の使用環境で使用して、錆や汚れ、塗膜密着性の低下を招く現象を詳細に調査したところ、犠牲防食効果を有する防食塗膜が、構造体外部からの衝撃や摩擦、あるいは振動によって剥離することに加え、犠牲防食効果を発揮する金属粉が溶出した後に塗膜中に形成された、多孔質な塗膜が防食機能の低下、塗膜密着性の低下、塗装部の美観低下の原因であることを究明した。
【0019】
普通鋼の防食機能に優れる市販のジンクリッチ塗料は、亜鉛の犠牲防食機能を活用した塗料であり、防食機能を維持するために、乾燥塗膜の亜鉛含有量が体積で、おおむね60%超の割合になるように使用される。この塗料をステンレス鋼に代表されるFe−Cr系合金に塗布した場合、普通鋼に比べ、密着性が低く、特に飛び石(チッピング)などによる密着性の低下が顕著であった。
【0020】
本発明者は、防食塗膜とFe−Cr系合金との密着性、塗装部の汚れ、および防食機能について検討したところ、元々普通鋼の防食塗料として開発された市販の犠牲防食塗料は、普通鋼よりは耐食性に優れているFe−Cr系合金に対して、少なくとも耐食性に関しては品質過剰であり、犠牲防食金属粉の含有量を相当低減させても防食機能の低下に影響がないこと、また市販の普通鋼用塗料をFe−Cr系合金に塗布した時に生じる密着性不良も十分改良し得ることを知見した。
【0021】
Fe−Cr系合金の場合は、普通鋼の場合の該金属粉の含有量より少なくなるように、犠牲防食塗料を塗布したとしても、すなわち、塗膜全体の乾燥時の体積に対して犠牲防食金属粉の含有量を20体積%以上60体積%未満になるように塗布しても、Fe−Cr系合金に対して優れた防食機能と十分な密着性、汚れ防止性を付与できることを知見した。犠牲防食金属粉の含有量の好適量は防食塗膜中で30体積%以上50体積%以下、最適量は35体積%以上45体積%以下になるような量である。犠牲防食金属粉の含有量を体積%で前記の範囲に規定するのは、塗料中の樹脂と犠牲防食金属粉の粒子の割合がFe−Cr系合金の場合、普通鋼に比べ劣る密着性を、耐食性を損なわずに、確保するためである。なお、乾燥塗膜中の犠牲防食金属粉の含有量は、塗布後の乾燥塗膜の断面を顕微鏡(倍率400倍)で、各5視野観察し、コンピュータによる画像処理により求めた数値(体積%)であり、各実施例で求めた、5視野の体積%を算術平均して求めたものである。
【0022】
本発明において使用される鉄より卑な代表的な金属は、亜鉛、アルミニウム、それらの混合物または合金であり、好ましいのは犠牲防食機能が大きい亜鉛である。
【0023】
本発明において使用される犠牲防食金属粉の平均粒子径は好ましくは3μm以下である。犠牲防食金属粉の平均粒子径が3μmを超えると、塗膜が薄い場合には、塗膜密着性が低下する。また犠牲防食金属粉は塗膜中に微細に均一分散していた方が、該金属粉の犠牲防食性能が向上するとともに、曝露後の塗膜密着性が向上する傾向があり好ましい。塗膜密着性の点からも金属粉の平均粒子径が3μm以下、特に1.5μm以上2.5μm以下であるのが好ましい。
なお、犠牲防食金属粉の粒子径は、1個の金属粒子の最大粒子径と最小粒子径を測定し、これを加算して2で除した数値である。平均粒子径は、塗布後の乾燥塗膜の断面を顕微鏡(倍率400倍)で、5視野観察し、視野中の全ての各金属粉の粒子径を前記の方法により求め、これらの粒子径を算術平均して求めた数値である。
【0024】
本発明において、防食塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で5μm以上100μm未満とする。膜厚が5μm未満であると、犠牲防食金属粉の含有量の増加に伴い、密着性を確保することが難しくなる。また犠牲防食能力は単位面積あたりの犠牲防食金属粉の含有量に依存するが、膜厚が5μm未満であると必要量の犠牲防食金属粉を塗膜中に確保することができない。一方、膜厚が100μm以上であると、品質過剰になるとともに、塗膜の乾燥時間が長くなり、作業効率が低下する上、塗膜密着性も悪化する。より好ましい膜厚は20μm以上50μm以下の場合である。
なお、乾燥膜厚は、塗布後の乾燥塗膜の断面を顕微鏡(倍率400倍)で、5視野観察し、各視野において3箇所の膜厚を求め、各視野の3箇所の膜厚の算術平均値を計算し、さらに5視野の膜厚の算術平均値を求めて得た平均膜厚である。
【0025】
なお、本発明において使用される犠牲防食塗料には、犠牲防食金属粉以外の成分を添加することができる。しかし、その添加成分は特に限定されず、従来の犠牲防食塗料などと同様に、塗料の分散または塗膜の乾燥、硬化、諸物性の改良などのための成分、例えば、バインダー、乾燥剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤などの添加剤、溶剤または希釈剤などが添加される。
なお、塗料中に犠牲防食金属粉を安定して懸濁させるために添加する分散剤や乳化剤の添加量は、従来の犠牲防食塗料の場合の添加量より少量にすることができる。
【0026】
バインダーとしては、一般的なアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などやこれらの樹脂の組合わせなどが用いられる。また、無機バインダーとして、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、ケイ酸ソーダなどを用いてもよい。好ましいのはエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂である。塗膜の密着性、耐食性の観点から、特に好ましいのはエポキシ樹脂である。
バインダーの添加量は樹脂の種類、乾燥剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤などの添加剤との兼ね合いで用途、要求特性により適宜決定すればよい。
【0027】
犠牲防食塗料の塗布の方法は、スプレー塗装、刷毛塗り、塗料中への浸漬など、特に限定されない。構造体の生産ラインに合わせて適宜選択すればよい。
犠牲防食塗料は、硬化剤の種類によって、常温硬化型と加熱硬化型がある。常温硬化型の場合は、塗布後、常温放置する。また、加熱硬化型の場合は、加熱して乾燥(焼付け)する。その結果、バインダーと犠牲防食金属粉および添加剤からなる硬化膜、すなわち、耐食性に優れる防食塗膜が形成される。
【0028】
本発明においては、犠牲防食金属粉を含有する防食塗膜をFe−Cr系合金構造体表面に形成するが、その形成範囲は構造体に形成された隙間部を全て含む範囲であれば、構造体の局部の面であっても、一面であっても全面であっても構わない。前記塗膜によって防食性を高める必要があるのは隙間部であるから、その部分が最低限被覆されていれば、Fe−Cr系合金構造体全体の耐食性も十分である。
【0029】
【実施例】
(例1〜51)
表1に示す4成分を含有するFe−Cr系合金の冷延焼鈍板(板厚0.8mm)を図1に示すようなL字形(幅80mm、長辺150mm、短辺50mm)にプレス加工し、試験片2枚の短辺から構成される面(幅80mm、短辺50mm)を突き合わせ、突き合わせ面の上部から20mmの点を中心としてシーム溶接(シーム溶接部7)して試験片1を調製した。この試験片1の全面に、表2に示す平均粒子径の亜鉛を表2に示す割合で含有する防食塗料(バインダーはエポキシ樹脂、硬化剤は常温硬化型硬化剤)を、表2に示す平均乾燥膜厚になるようにスプレー塗布した。1.0時間放置し乾燥して、塗膜を硬化させた。亜鉛粒子の粒子径、乾燥膜厚、乾燥塗膜中の亜鉛粉の含有量(体積%)は、前述の測定方法により求めた。
【0030】
次に試験片2枚の端面を突き合わせた部分2に、隙間部を形成するために、図1に示すようにプラスチッククリップ3を被せた。
試験片1の表面外側に、JIS B7729およびJIS B7777に規定されたエリクセン試験機と試験方法に準拠し、直径10mm、高さ8mmのポンチを使用して、図1に示すような円形ドーム加工を施し、ドーム状張り出し(エリクセン部)4を設けた。
【0031】
試験片1の表面外側に、図1に示すように、長さ60mm、幅80mmの矩形の中に描いた長さ115mmの対角線上に、両端から25mmだけ空けて、クロスカットを入れた。クロスカット部5の長さは65mmである。
試験片1の表面外側に垂直に、玄武岩7号(砕石)100gを、室温、圧力7kgf/cm2 で当てて、図1に示すように、飛び石による傷(チッピング)を付けるグラベロ部6を設けた。なお、グラベロ部6の形成は、ASTM D3170に準じた装置を用いて実施した。
【0032】
試験片1の耐食性は、隙間部2(プラスチッククリップ3)、エリクセン部4、クロスカット部5およびグラベロ部6における塩水噴霧試験(SST)により評価した。SSTはJIS Z 2371に準じて実施した。SSTの試験時間は6000時間である。錆発生状況を目視で観察し、下記のような5段階表示した。表2に結果を示した。
1: 錆なし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・合格、
2: 軽微なしみ錆(直径1mm以下の点錆)・・・・合格、
3: しみ錆(直径1mmを超える点錆)・・・・・・合格、
4: 軽微な赤錆(直径1mm以下の点錆)・・・・・不合格、
5: 赤錆(直径1mmを超える点錆)・・・・・・・不合格。
【0033】
また、耐食性評価後の試験片の塗膜密着性は、クロスカット部、グラベロ部に市販のセロファンテープを貼付けた後、該テープを剥離したときの状況からA〜Cの3ランクで評価した。表2に結果を示した。
A: 剥離なし・・・・・・・・・・・・・・・・・・合格、
B: 部分剥離・・・・・・・・・・・・・・・・・・不合格、
C: 全面剥離・・・・・・・・・・・・・・・・・・不合格。
【0034】
例1、16および29は、防食塗膜の亜鉛体積含有量が20%を下回り、耐食性が不十分であり、不合格である(比較例)。
例6〜7、21〜22、34〜35は、亜鉛の体積含有量が60% 以上であり、SST評価後の塗膜密着性が低下し、塗膜が剥離するので不合格である(比較例)。
【0035】
例8および23は、いずれも防食塗料を塗布してない無垢材であり、耐食性が不十分であり、不合格である(参考例)。
例36および37は、Cr含有量が6.0%未満の比較鋼(No.4)であるため、防食塗料を適正範囲内で塗布しても、耐食性が不十分であり、不合格である(比較例)。
例12〜13および27〜28は、いずれも膜厚が100μmを超えるため、エリクセン試験、グラベロ試験において、容易に塗膜が剥離し、耐食性が低下し、不合格である(比較例)。
【0036】
一方、例2〜5、9〜11、14〜15、17〜20、24〜26および30〜33は、いずれも本発明の条件(クロム含有量、亜鉛粒子径、亜鉛体積含有量、膜厚)を満たし、隙間部、エリクセン部、グラベロ部、クロスカット部のいずれにおいても高い耐食性を発現し、エリクセン試験やグラベロ試験において塗膜剥離が生じることがないので、合格である(実施例)。
【0037】
図2に、表2の例1〜7(いずれも表1の鋼1を使用)における、防食塗膜のグラベロ部の防食塗膜密着性と防食塗膜中の亜鉛体積含有量との関係を示した。図2より、亜鉛体積含有量が少ない場合に、該塗膜密着性が良好なことが明白である。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、Fe−Cr系合金構造体の隙間部の耐食性と防食塗膜密着性を著しく向上することができるので、強度低下がなく、長期間の使用に耐え、美観に優れた構造体を得ることができる。また、従来、隙間部腐食がネックとなって、高価なCrやMoを多量に含有したFe−Cr系合金構造体に比べ、CrやMoの含有量の削減が可能となり、構造体の製造コストを著しく低減することができるという効果も有する。
【0039】
【表1】
Figure 0004193624
【0040】
【表2】
Figure 0004193624
【0041】
【表3】
Figure 0004193624
【0042】
【表4】
Figure 0004193624

【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) L字形試験片のグラベロ試験などの試験状況を示す立面図と、(b)平面図(裏面図)。
【図2】 塗膜密着性と防食塗膜中の亜鉛体積含有量との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1: L字形試験片
2: 隙間部
3: プラスチッククリップ
4: エリクセン部
5: クロスカット部
6: グラベロ部(チッピング部)
7: シーム溶接部

Claims (4)

  1. クロムを6質量%以上25質量%以下含有するFe−Cr系合金構造体の隙間部を有する表面の不動態被膜に、鉄より卑な金属粉を含有し、乾燥塗膜に占める該金属粉の含有量が20体積%以上60体積%未満で、かつ乾燥膜厚が5μm以上100μm未満の防食塗膜を有することを特徴とする耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体。
  2. 前記金属粉の平均粒子径が3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体。
  3. クロムを6質量%以上25質量%以下含有するFe−Cr系合金構造体の隙間部を有する表面の不動態被膜に、鉄より卑な金属粉を含有する塗料を、乾燥膜厚で5μm以上100μm未満で、かつ乾燥塗膜に占める金属粉の含有量が20体積%以上60体積%未満となるように塗布して、防食塗膜を形成することを特徴とする耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体の製造方法。
  4. 前記金属粉の平均粒子径が3μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の耐食性と密着性に優れたFe−Cr系合金構造体の製造方法。
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