JP6742141B2 - めっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法 - Google Patents

めっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、めっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法に関する。
溶接軽量H形鋼は、熱間圧延鋼帯、冷間圧延鋼帯、又は、めっき鋼帯を利用し、連続した高周波抵抗溶接又は高周波誘導溶接の併用によって成形されたH形鋼である。溶接軽量H形鋼は、主に、プレファブ住宅・構造物の柱・梁等の建築構造材として用いられる。近年、溶接軽量H形鋼は、鉄骨造だけでなく、在来工法の木造住宅における柱・梁などの材料としても用いられており、その需要が拡大している。
近年、溶接軽量H形鋼は、太陽光発電の架台部品に代表されるように、厳しい屋外腐食環境での使用検討が進んでいる。このような環境で溶接軽量H形鋼を使用するに際しては、非めっき鋼材を用いて製造された溶接軽量H形鋼を溶融亜鉛めっきして、耐食性を確保する方法がある。しかしながら、めっき時の熱による形状変化や外注加工コストの問題があり、例えば下記特許文献1に開示されているような、めっき鋼帯を成形しためっき溶接軽量H形鋼の活用が期待される。
特開2003−275814号公報
上記特許文献1に開示されているようなめっき溶接軽量H形鋼は、予めめっき処理の施されためっき鋼帯を利用し、連続した溶接の併用によって成形されるが、フランジに対応する鋼帯とウェブに対応する鋼帯とを溶接する際に発生する熱によって、溶接部のめっき層が失われてしまう。また、フランジに対応する鋼帯をスリットにより製造する場合には、フランジ端面にはめっき層が存在しなくなる。
めっき層が存在しない溶接部や端面は、腐食による損壊が懸念されるため、用途環境に適した防食処理を施すことが重要であり、めっき層が欠落したこれらの部位を適切に補修可能な技術の確立が希求されている。
一般に、耐用年数はめっき付着量に比例すると考えられており、平面部のめっきと同等の耐食性を確保するためには、平面部のめっきと同等のめっき金属成分を同等の付着量で確保することが重要であると考えられる。このような観点で、十分な耐食性を確保する補修技術候補としては、亜鉛系溶射や亜鉛粉末含有塗装(以下、「ジンクリッチ塗装」ともいう。)が考えられる。しかしながら、乾式工程である溶射は、粉塵対策設備が必要であることから、簡便に処理を行うことができない。そこで、上記特許文献1においても、溶接部に対して亜鉛吹き付け塗装が行われる旨が記載されている。
一方、上記特許文献1にも開示されているようなジンクリッチ塗装は、防食処理仕様として、標準的な施工技術が確立されている。すなわち、ジンクリッチ塗装は、多量の金属亜鉛顔料を含み、残部のバインダ成分が非常に少ないため、付着性に欠け、清浄な鋼表面にしか付着しないという問題がある。そのため、ジンクリッチ塗装を施す際には高度な素地調整が要求されており、ブラスト処理が推奨されている。ブラスト処理に代わる素地調整として、酸洗処理や動力工具による素地調整も考えられるが、付着性はブラスト処理よりもやや劣る。また、一般的な塗装の素地調整として使用されるリン酸亜鉛処理もジンクリッチ塗装の付着性を低下させるため、素地調整としては使用することはできない。
上記のような状況にあるにも関わらず、上記特許文献1では、亜鉛吹き付け処理を実施する際の素地調整については、何も言及されていない。
ジンクリッチ塗膜を形成するために、めっき溶接軽量H形鋼の溶接部や端面の素地調整としてブラスト処理を実施する場合には、溶接部や端面の近傍に位置するめっき面もブラスト処理が施されてしまう。特に、端面に対してブラスト処理を実施した場合、少なくとも表側/裏側いずれかのめっき面がブラスト処理の影響を大きく受けてしまう。従って、溶接部や端面の耐食性を高めるためのジンクリッチ塗膜を施すために、溶接部や端面の近傍に位置するめっき面の耐食性が影響を受ける結果となり、ジンクリッチ塗膜の形成に先立つ素地調整として、ブラスト処理を採用することは好ましくないと考えられる。かかる状況から、特にめっき溶接軽量H形鋼の溶接部について、ブラスト処理に代わる素地調整技術が希求されている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、めっき層が欠落している部位の耐食性を、亜鉛粉末含有塗装の密着性を維持しつつ実現することが可能な、めっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討を行った結果、亜鉛粉末含有塗装の素地調整として、めっき層が欠落している部位に対して所定の樹脂を用いて樹脂層を形成することに想到し、以下で詳述するような本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法を完成するに至った。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)鋼帯上に純亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼帯である亜鉛系めっき鋼帯を素材とするウェブ及びフランジと、前記ウェブと前記フランジとが接合された溶接部と、を有するめっき溶接形鋼であって、前記めっき溶接形鋼における前記ウェブと前記フランジとの溶接部にはビードが存在し、当該ビード上には、所定量の亜鉛粉末を含有し、更に、バインダ成分としての無機化合物を含む塗膜層である無機系の塗膜層を有し、前記無機系の塗膜層と前記ビードとの間には、前記無機系の塗膜層の下地層として樹脂層を有し、前記樹脂層は、厚みが2μm超であり、かつ、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する樹脂からなる、めっき溶接形鋼。
(2)前記鉄よりも卑な導電性金属片は、亜鉛、又は、アルミニウムの少なくとも何れか一方を含む、(1)に記載のめっき溶接形鋼。
(3)前記鉄よりも卑な導電性金属片の含有量は、前記樹脂層の固形分の全体質量に対して、5〜50%である、(1)又は(2)に記載のめっき溶接形鋼。
(4)前記無機系の塗膜層は、70質量%以上の亜鉛粉末を少なくとも含有するジンクリッチ塗膜である、(1)〜(3)の何れか1つに記載のめっき溶接形鋼。
(5)前記無機系の塗膜層の厚みは、5〜200μmである、(1)〜(4)の何れか1つに記載のめっき溶接形鋼。
(6)前記無機系の塗膜層と前記ビードとの間の樹脂層の厚みは、3〜30μmである、(1)〜(5)の何れか1つに記載のめっき溶接形鋼。
)前記亜鉛合金系めっき層の成分は、質量%で、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Si、Zn−6%Al−3%Mg、Zn−55%Al、又は、Zn−1〜3%Al−1〜3%Mgの何れかである、(1)〜(6)の何れか1つに記載のめっき溶接形鋼。
)前記めっき溶接形鋼は、前記ウェブを介して一対の前記フランジが対向するように配置されているめっき溶接H形鋼である、(1)〜()の何れか一つに記載のめっき溶接形鋼。
鋼帯上に純亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼帯である亜鉛系めっき鋼帯を連続的に溶接してウェブ及びフランジが形成されためっき溶接形鋼の製造方法であって、前記めっき溶接形鋼における前記ウェブと前記フランジとの溶接部に存在し、前記溶接によって形成されるビード上に、厚みが2μm超であり、かつ、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する樹脂層を形成し、当該樹脂層上に、所定量の亜鉛粉末を含有し、更に、バインダ成分としての無機化合物を含む塗膜層である無機系の塗膜層を形成する、めっき溶接形鋼の製造方法。
以上説明したように本発明によれば、めっき層が欠落している部位(特に、溶接部)の耐食性を、亜鉛粉末含有塗装の密着性を維持しつつ実現することが可能である。
本発明の実施形態に係るめっき溶接形鋼の構造を模式的に示した説明図である。 同実施形態にめっき溶接形鋼の溶接部の構造を拡大して示した説明図である。 同実施形態に係るめっき溶接形鋼の端面の構造を拡大して示した説明図である。 めっき溶接形鋼の層構造の確認方法について説明するための説明図である。 めっき溶接形鋼の層構造の確認方法について説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(めっき溶接形鋼について)
以下では、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施形態に係るめっき溶接軽量形鋼(以下、単に、「めっき溶接形鋼」ともいう。)について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るめっき溶接形鋼の構造を模式的に示した説明図である。図2は、本実施形態にめっき溶接形鋼の溶接部の構造を拡大して示した説明図である。図3は、本実施形態に係るめっき溶接形鋼の端面の構造を拡大して示した説明図である。
<めっき溶接形鋼の全体的な構造について>
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の全体的な構造について、詳細に説明する。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1に関し、以下では、めっき溶接H形鋼を例に挙げて説明を行うものとする。めっき溶接軽量形鋼1は、例えば、亜鉛系めっき鋼帯を巻き取ったコイルを巻き戻し所定幅にスリットしてフランジ用鋼帯としたものと、亜鉛系めっき鋼帯を巻き取ったコイルを巻き戻してウェブ用鋼帯としたものと、を当接させた状態で、高周波抵抗溶接や高周波誘導溶接等によって連続的に溶接することで、製造される。
このようにして製造されるめっき溶接形鋼1は、図1に模式的に示したように、互いに対向するように設けられた2つのフランジ3と、2つのフランジ3を連結するウェブ5と、から構成されている。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1において、フランジ3又はウェブ5の幅及び厚みについては、特に限定されるものではない。例えば、めっき溶接形鋼1は、典型的なめっき溶接H形鋼として、
フランジ3:幅75mm〜125mm、厚み3.2mm〜6.0mm
ウェブ5:高さ100mm〜300mm、厚み3.2mm〜4.5mm
程度の大きさである。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、先だって説明したように、フランジ3となる亜鉛系めっき鋼帯と、ウェブ5となる亜鉛系めっき鋼帯とが、溶接処理によって連結される。従って、フランジ3とウェブ5との連結部には、図1に模式的に示したように、溶接部7が形成される。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、原材料として亜鉛系めっき鋼帯が用いられるため、母材となる鋼板(以下、単に、「母材鋼板」ともいう。)11の表層には、亜鉛系めっき層13が形成されている。しかしながら、上記の溶接処理によって発生する熱により、溶接部7には、亜鉛系めっき層13が存在していない。また、フランジ3の端面9においても、亜鉛系めっき層13が存在していないことが多い。
従って、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1において、フランジ3とウェブ5との連結部分とその近傍の領域であり、かつ、亜鉛系めっき層13が存在していない部分を、溶接部7として考えることができる。また、フランジ3となる亜鉛系めっき鋼帯と、ウェブ5となる亜鉛系めっき鋼帯とは、圧接されながら溶接処理が施されるため、溶接直後には、ビード15が発生する。本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、溶接後にビード15をローラ等によって押しつぶすことで成形処理が施されており、ビード15は、図1に模式的に示したように、側面から見た形状が略三角形状となっている。従って、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1において、ビード15が略三角形状となって存在している部分を、溶接部7として考えることができる。
なお、ビード15は、主に、母材鋼板11の成分や酸化鉄を主成分とするスケールから構成されており、亜鉛系めっき層13の成分等が含有されることもある。
ここで、母材鋼板11については、特に限定されるものではなく、通常、亜鉛系めっき鋼板の原板として使用される鋼板を適宜利用することが可能である。この原板の製造法、材質等も特に限定されるものではなく、通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造されるものを利用すればよい。
また、亜鉛系めっき層13の種類についても、特に限定されるものではなく、溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっき等といった、公知の亜鉛系めっき処理を利用して、本実施形態に係る亜鉛系めっき層13を形成することが可能である。また、めっき成分についても特に限定されるものではなく、純亜鉛めっきであってもよいし、亜鉛合金系めっきであってもよい。亜鉛合金系めっきの成分としては、例えば、質量%で、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Si、Zn−6%Al−3%Mg、Zn−55%Al、又は、Zn−1〜3%Al−1〜3%Mg等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、上記のような亜鉛系めっき層13の形成された亜鉛系めっき鋼板を原材料として用いることで、亜鉛の犠牲防食能によって、形鋼全体としての耐食性を担保することが可能となる。
なお、亜鉛系めっき層13の厚みや付着量については、特に限定されるものではなく、めっき溶接形鋼1の要求性能やコスト等に応じて適宜設定すればよい。例えば、亜鉛系めっき層13は、片面当たり1μm〜80μmの厚み、より好ましくは片面当たり20μm程度の厚みで、母材鋼板11の表面に形成されていればよい。亜鉛系めっき層13の厚みが1μm未満である場合には、亜鉛の犠牲防食能を具現化することが困難となるため、好ましくない。また、亜鉛系めっき層13の厚みが80μm超過となる場合には、経済的なコストが増加するため、好ましくない。また、亜鉛系めっき層13の付着量は、片面当たりの金属Zn量で、例えば、7g/m〜560g/mとすることが好ましい。
また、亜鉛系めっき層13の上層には、各種の化成処理皮膜層等の公知の後処理層(図示せず。)が形成されていてもよい。ここで、後処理層の一例である化成処理皮膜層は、ジルコニウムと有機酸とを含む皮膜であることが好ましい。
<溶接部の構造について>
続いて、図2を参照しながら、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7の構造について、具体的に説明する。
先だって説明したように、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、フランジ3とウェブ5とを溶接により連結する際に、母材鋼板11の表面上に形成されている亜鉛系めっき層13が除去されてしまう。そのため、かかる溶接部7の耐食性は、亜鉛系めっき層13が形成されている部分と比べて低下してしまう。
そこで、本発明者は、ジンクリッチ塗装処理に先立つ素地調整処理としてブラスト処理を行うことなく、溶接部7に対してジンクリッチ塗装を実施するための方法を鋭意検討した。その結果、本発明者は、図2に示したように、溶接部7に存在するビード15の表面に対して、所定量の亜鉛粉末を含有する無機系の塗膜層(すなわち、無機系ジンクリッチ塗膜層)103を形成することに想到した。また、本発明者は、溶接部7における無機系の塗膜層103の密着性を更に向上させるために、ビード15と無機系の塗膜層103との間に、更に、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する樹脂層101を形成することが好ましいことに想到した。
従って、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7では、その断面構成は、図2に示したように、下地である母材鋼板11が存在し、母材鋼板11上にFeを主成分として含有するビード15が存在し、かかるビード15上に、無機系の塗膜層103(以下、単に、「無機系塗膜層103」ともいう。)が存在する構成となっている。また、図2に示したように、ビード15の表面と無機系塗膜層103との間には、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する樹脂層101が存在することが更に好ましい。
上記のような層構成とすることで、亜鉛系めっき層13が存在していない溶接部7であっても、無機系塗膜層103に多量に含有される亜鉛の犠牲防食能により、ビード15の耐食性が担保されることとなる。
<端面の構造について>
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の端面9の構造について、具体的に説明する。
先だって説明したように、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、その製造過程に起因して、端面9についても亜鉛系めっき層13が存在せず、母材鋼板11が露出していることが多い。従って、かかる端面9の耐食性は、亜鉛系めっき層13が形成されている部分と比べて低下してしまう。
そこで、かかる端面9においても、図3に示したように、母材鋼板11上に、まず、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する樹脂層101が形成され、かかる樹脂層101の表面に、所定量の亜鉛粉末を含有する無機系塗膜層(すなわち、無機系ジンクリッチ塗膜層)103が形成されることが好ましい。
上記のような層構成とすることで、端面9に亜鉛系めっき層13が存在していない場合であっても、無機系塗膜層103に多量に含有される亜鉛の犠牲防食能により、端面9における母材鋼板11の耐食性が担保されることとなる。
<樹脂層101について>
続いて、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9に形成される樹脂層101について、詳細に説明する。
本実施形態に係る樹脂層101は、当該樹脂層101の下層に位置する鋼成分と、上層に位置する塗膜層103との間の密着性を担保するために形成される下地塗膜層であり、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する。
樹脂層101を形成する樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、又は、ウレタン系樹脂を含有する樹脂を用いることが好ましい。ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂のように、下層に位置する鋼との密着性に特に優れる樹脂を利用することで、塗膜層103と鋼成分との間の密着性を更に向上させることが可能となる。
エポキシ系樹脂の具体例としては、例えば2液系エポキシ樹脂の、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂であるDIC製EPICLON(登録商標) 840や850シリーズを挙げることができる。薄膜を塗布するには低粘度であることが有利であり、このような低粘度のエポキシ系樹脂として、EXA−850CRPが例示できる。
また、更なるエポキシ系樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂の水酸基やエポキシ基等の官能基をエステル化したエポキシエステル樹脂として、例えばDIC製WATERSOL(登録商標)シリーズを挙げることができる。これらエポキシエステル樹脂は、塗料形態としては1液型エポキシ樹脂塗料のため、塗装の際に塗料を混合する必要がなく、工程的にも好適である。
ウレタン系樹脂の具体例としては、例えば、湿気硬化型、ラッカー型、油変性型のウレタン樹脂を挙げることができる。このようなウレタン系樹脂として、例えば、DIC製のウレタン樹脂BURNOCK(登録商標)シリーズが例示できる。
上記のような樹脂を少なくとも1種類用いて形成される樹脂層101の厚みは、2μm超とする。樹脂層101の厚みが2μm以下である場合には、下層に位置する鋼成分と無機系塗膜層103との間の密着性、及び、無機系塗膜層103が形成されるまでの耐食性を確保することが困難となるため、好ましくない。かかる樹脂層101の厚みは、より好ましくは、3μm以上である。更には、樹脂層101の厚みを5μm以上とすることで、より確実に密着性を担保しつつ、無機系塗装層103が塗装されるまでの耐食性を確保し、かつ、無機系塗膜層103と鋼成分との間の導電性を維持することが可能となる。
一方、樹脂層101の厚みが30μm超過である場合には、樹脂層101の厚みが厚くなりすぎ、無機系塗膜層103と鋼成分との間の電気的な接続が実現できず、導電性が低下して無機系塗膜層103の犠牲防食能を確実に具現化することが困難となる場合がある。従って、かかる樹脂層101の厚みは、30μm以下とすることが好ましい。
なお、上記の厚みは、樹脂層101を形成する際と同様の成膜条件を利用して、樹脂層101を形成するための樹脂液を平板上に塗装した場合に、平板上に実現される厚みである。
また、かかる樹脂層101を溶接部7に対して形成する際には、ビード15の表面に主に存在するスケールやビード15そのものに対して、樹脂層101を形成するための樹脂液が浸透していくことが好ましい。樹脂層101がビード15に浸透していくことで、塗膜層103の密着性を更に向上させることが可能となる。そのためには、樹脂層101の形成に用いられる樹脂の粘性やぬれ性が所定の条件を満たすことが好ましい。具体的には、樹脂層101の形成に用いる樹脂の粘性は、3.0Pa・s以下であることが好ましく、0.5〜0.7Pa・s程度であることが、更に好ましい。また、ぬれ性は、接触角が90度以下であることが好ましい。
また、かかる樹脂層101には、上層である無機系塗膜層103の犠牲防食性を発揮させるために、鉄よりも卑な導電性の金属片が含有される。樹脂層101に含有しうる導電性金属片の種類としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、銅、銀、ニッケル等が挙げられる。しかしながら、鉄よりも貴な金属である銅、銀、ニッケルは、耐食性を低下させる懸念がある。そこで、本実施形態に係る樹脂層101では、導電性金属片として、鉄よりも卑な金属である亜鉛、又は、アルミニウムが含有される。かかる導電性金属片としては、電気伝導率が高いアルミニウムが、最も好適である。導電性金属片の形状は、粒状やリーフィングタイプ、ノンリーフィングタイプのいずれも適用可能である。導電性金属片のサイズは、樹脂層101の厚みの関係から、粒径30μm以下が望ましい。このとき、リーフィングタイプの導電性金属片を使用すると、樹脂層101を薄く塗装したとしても、導電性金属片が配向することで、塗装面の平滑を保つことができる。導電性金属片の含有量は、多い方が好ましいが、固形分濃度として(すなわち、樹脂層101の固形分の全体質量に対して)5〜50%であることが好ましい。導電性金属片の含有量は、更に好ましくは、8〜30%である。なお、上記の導電性金属片として、亜鉛及びアルミニウムを併用してもよい。また、上記導電性金属片の効果を妨げない程度であれば、上記の金属以外の他の金属が含まれていてもよい。
なお、本実施形態に係る樹脂層101は、図1〜図3に模式的に示したように、亜鉛系めっき層13の表面にも存在していてもよいが、樹脂層101と亜鉛系めっき層13との間の密着性を考慮すると、亜鉛系めっき層13上に樹脂層101が重畳している部分の広さは、出来る限り小さくすることが好ましい。
かかる樹脂層101の形成方法は、特に限定されるものではなく、樹脂層101の形成に用いる樹脂を適切な溶媒に分散させた上で、溶接部7や端面9の表面に樹脂液をスプレー塗装することで形成することができる。また、所定付着量となるようにロールやガス吹き付けにより付着量を制御したり、ロールコータ等で樹脂液を塗布したりすればよい。
また、乾燥方法やプレキュア方法についても、分散媒を揮発させることが可能な方法であれば、特定の方法に限定されるものではなく、例えば、80℃程度の温度で60秒程度加熱するなどのような、公知の処理を実施すればよい。
<無機系塗膜層103について>
続いて、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9に形成される無機系塗膜層103について、詳細に説明する。
上記のようなビード15の上部(好ましくは、上記のような樹脂層101の上層)には、所定量の亜鉛粉末を含有する無機系塗膜層(無機系ジンクリッチ塗膜層)103が形成される。かかる無機系塗膜層103を形成することで、溶接部7や端面9等といった亜鉛系めっき層13が存在しない部分についても、耐食性を向上させることが可能となる。
かかる無機系塗膜層103は、所定量の亜鉛粉末と、バインダ成分と、を少なくとも含む無機系ジンクリッチ塗料を用いて形成される。ジンクリッチ塗料は、用いる溶媒に応じて、水系ジンクリッチ塗料と、溶剤系ジンクリッチ塗料と、に大別され、用いるバインダ成分の種別に応じて、有機系ジンクリッチ塗料と、無機系ジンクリッチ塗料と、に大別される。本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、無機系塗膜層103を形成するジンクリッチ塗料として、溶剤系無機ジンクリッチ塗料を用いることが好ましい。
無機系塗膜層103を形成するために用いられる無機系ジンクリッチ塗料には、主成分として、不揮発成分の全体に対して70質量%以上の亜鉛粉末が含有されていることが好ましい。ここで、無機系ジンクリッチ塗料に含まれる亜鉛粉末の含有量が、無機系塗膜層103に含有される亜鉛粉末の含有量となる。上記のような含有量の亜鉛粉末が含有されていることで、無機系塗膜層103は、優れた犠牲防食能を具現化することが可能となる。無機系ジンクリッチ塗料に含有される亜鉛粉末の含有量は、より好ましくは、80質量%〜99質量%である。
また、かかる無機系ジンクリッチ塗料には、亜鉛粉末が50質量%以上含有されてさえいれば、その他に、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、鉄、ニッケル等の元素が更に含有されていてもよい。これらの元素の含有量については、特に限定するものではないが、例えば、5質量%〜50質量%とすることが好ましい。
また、無機系ジンクリッチ塗料に含有されている亜鉛粉末の平均粒径は、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.1μm〜50μmであることがより好ましい。また、亜鉛粉末の形状は、特に限定されるものではなく、球状、棒状、塊状、針状等、任意の形状であってよいし、ブレンドすることもできる。なお、亜鉛粉末の平均粒径は、動的光散乱法、誘導回折格子法、レーザー回折・散乱法等の公知の方法を利用して測定することが可能である。
ジンクリッチ塗料に含有されているバインダ成分としては、上記のように、無機バインダ成分を利用することが可能である。
無機バインダ成分としては、テトラアルコキシシリケート、アルキルトリアルコキシシリケート、ジアルキルジアルコキシシリケート等や、これらシリケートの部分縮合体及び/又はこれらシリケートを水及び酸触媒の存在下で縮合反応させた加水分解縮合体等といった、ケイ素を含有する無機バインダ樹脂を利用することができる。
ここで、テトラアルコキシシリケートとしては、例えば、テトラメトキシシリケート、テトラエトキシシリケート、テトラプロポキシシリケート、テトライソプロポキシシリケート、テトラブトキシシリケート、テトライソブトキシシリケート等を挙げることができる。また、アルキルトリアルコキシシリケートとしては、例えば、メチルトリメトキシシリケート、メチルトリエトキシシリケート、メチルトリプロポキシシリケート、エチルトリメトキシシリケート、エチルトリエトキシシリケート等を挙げることができる。また、ジアルキルジアルコキシシリケートとしては、例えば、ジメチルジメトキシシリケート、ジメチルジエトキシシリケート、ジエチルジメトキシシリケート、ジエチルジエトキシシリケート等を挙げることができる。これらのシリケート化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記シリケート化合物に対して、水分散型コロイダルシリカ、溶剤分散型コロイダルシリカ等のコロイダルシリカを併用してもよい。
また、無機バインダ成分として、必要に応じて、ケイ素以外の金属アルコキシド、金属コロイド、ポリビニルアルコール樹脂等の成分を添加してもよい。
なお、無機系塗膜層103の形成に用いられる無機系ジンクリッチ塗料には、必要に応じて、通常の体質顔料、防錆顔料、着色顔料等を塗膜の緻密性を損なわない程度で添加してもよい。体質顔料としては、例えば、シリカ粉、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、シリカバルーン等を挙げることができ、防錆顔料及び着色顔料としては、例えば、酸化チタン、リン化鉄、雲母状酸化鉄、シアナミド鉛、ジンククロメート、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、メタホウ酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、ベンガラ、シアニン系着色顔料、カーボンブラック、ルチル粉末、ジルコン粉末等を挙げることができる。
また、無機系塗膜層103の形成に用いられる無機系ジンクリッチ塗料には、更に必要に応じて、沈降防止剤、タレ止め剤、湿潤剤、反応促進剤、付着性付与剤等の通常の塗料用添加剤を適宜添加されていてもよい。
以上説明したような無機系ジンクリッチ塗料を用いて形成される無機系塗膜層103の厚みは、母材鋼板11に形成されている亜鉛系めっき層13の厚みの約2倍程度とすることが好ましい。無機系塗膜層103の厚みを、亜鉛系めっき層13の厚みの約2倍程度とすることで、無機系塗膜層103が、亜鉛系めっき層13とほぼ同程度の耐食性を実現することが可能となる。
かかる無機系塗膜層103の厚みは、より詳細には、5μm〜200μmとすることが好ましい。無機系塗膜層103の厚みが5μm未満である場合には、十分な犠牲防食能を具現化することが困難となる場合がある。また、無機系塗膜層103の厚みが200μm超過である場合には、コスト的な観点から好ましくない。かかる無機系塗膜層103の厚みは、より好ましくは、10μm〜150μmであり、更に好ましくは、20μm〜100μmである。
また、上記のような無機系塗膜層103の厚みを付着量で表わした場合、その付着量は、金属Zn量換算で、18g/m〜700g/mであることが好ましく、35g/m〜700g/mであることがより好ましく、70g/m〜700g/mであることが更に好ましい。
なお、本実施形態に係る無機系塗膜層103は、図1〜図3に模式的に示したように、亜鉛系めっき層13上にも存在していてもよいが、亜鉛系めっき層13との間の密着性を考慮すると、亜鉛系めっき層13上に無機系塗膜層103が重畳している部分の広さは、出来る限り小さくすることが好ましい。
かかる無機系塗膜層103の形成方法についても、特に限定されるものではなく、溶接部7や端面9における樹脂層101の表面に対して、上記のような無機系ジンクリッチ塗料をスプレー塗装することで形成することができる。また、所定付着量となるようにロールやガス吹き付けにより付着量を制御したり、ロールコータ等で無機系ジンクリッチ塗料を塗布したりすればよい。無機系ジンクリッチ塗料を塗布した後、乾燥させることで、無機系塗膜層103が形成される。
<測定方法等について>
続いて、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9における樹脂層101及び無機系塗膜層103に関する各種の測定方法について、簡単に言及する。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9に形成される樹脂層101及び無機系塗膜層103の存在は、製造されためっき溶接形鋼から切り出したサンプルの断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて観察することで確認することができる。また、SEMによる断面観察を実施することで、無機系塗膜層103を形成するための素地調整として、ブラスト処理が行われていないことも、あわせて確認することができる。また、SEMによる断面観察を実施することで、樹脂層101の厚みや、無機系塗膜層103の厚みを計測することが可能となる。
なお、ビード15(又は、ビード15を構成するスケール)の形状が不均一な場合は、樹脂層101が均一塗膜層となっていない場合も考えられる。この場合は、無機系塗膜層103を塗装するまでの間の耐食性確保の観点から、溶接ビード15の直上において樹脂層101の膜厚が最も薄い箇所を選択し、かかる箇所での膜厚を樹脂層101の厚みとする。
具体的な確認方法としては、例えば、以下のような方法を挙げることができる。
ここでは、より具体的な例として、亜鉛系めっき鋼帯を素材とするウェブ及びフランジとを接合しためっき溶接形鋼の、ブラスト処理をせずスケールを有したままの溶接部に対し、膜厚が約10μmとなるようにリーフィングタイプのアルミニウム金属片を含むエポキシ樹脂を塗装した。その後、かかるエポキシ樹脂上に、粒状の亜鉛粉末を含有した無機系ジンクリッチ塗装を施した。
切り出したサンプルの表面を保護するために、表面を速乾性の塗料で保護し、その後、埋め込み用樹脂に埋め込んだ。凝固後、断面をバフ研磨仕上げとした。その後、チャージアップ防止のためC蒸着を施した。SEM観察した結果を、以下の図4Aに示す。図4Aに示したSEM写真の倍率は、20倍である。
図4Aから明らかなように、めっき溶接形鋼の溶接ビード部上層には、薄い樹脂層が観察された。更に、樹脂層の上層には、無機系塗膜層としてジンクリッチ塗膜層が観察された。また、ジンクリッチ塗膜層の上層には、保護のために実施した樹脂塗装層が確認された。
図4Bに、溶接ビード部の中央を倍率500倍でSEM観察した結果を示す。
図4Bから明らかなように、めっき溶接形鋼の溶接ビード部上層には、薄いスケール層が観察され、更に、スケールの上層には、樹脂層が観察されており、樹脂層の膜厚が評価可能であった。このように、ジンクリッチ塗装の前に施した樹脂層の存在が確認されたとともに、スケールの存在も確認され、ブラスト処理が行われていないことも確認された。
また、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の端面9についても、上記と同様にして観察用のサンプルを作製し、その断面をSEM観察することで、樹脂層101の厚みや、無機系塗膜層103の厚みを計測することが可能となる。
以上、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9における樹脂層101及び塗膜層103に関する各種の測定方法について、簡単に説明した。
この他、意匠性の観点から、めっき溶接形鋼の溶接部7や、溶接部7及びその周辺や、溶接部7を含むめっき溶接形鋼1の全体に、顔料を含む塗料を用いて塗装を施すことができる。めっき層が欠落した溶接部7やその周辺に対して塗膜層103を形成した場合、ジンクリッチ塗膜層は光沢が低いため、用途によっては補修塗装箇所が目立ち、意匠性が損なわれることがある。少なくともジンクリッチ塗膜層(塗膜層103)に対して、アルミニウムなどの金属片を顔料として含むエポキシ系塗料等をスプレー等で塗布することで、めっき層が欠落していない健全部と同様のメタリック調の外観に仕上げることが可能となる。
なお、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1として、めっき溶接H形鋼を例に挙げて説明を行ったが、本発明に係るめっき溶接形鋼は、めっき溶接H形鋼に限定されるものではない。本発明に係るめっき溶接形鋼は、例えば、溶接T形鋼、溶接溝形鋼、溶接コラム又は溶接異形形鋼等であってもよい。
以下では、実施例を示しながら、本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法について、具体的に説明する。なお、以下に示した実施例は、本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法のあくまでも一例にすぎず、本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法が下記の例に限定されるものではない。
以下では、一般的な亜鉛系めっき鋼帯を用いて製造されためっき溶接H形鋼を利用し、かかるめっき溶接H形鋼のウェブとフランジとの溶接部に対して、以下のような処理を実施した。なお、用いた亜鉛系めっき鋼帯に形成されている亜鉛合金系めっき層の成分は、質量%で、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Siである。また、以下で用いためっき溶接H形鋼の溶接部には、母材鋼板の成分や酸化鉄を主成分とするスケールから構成されたビードが存在していることを確認している。
なお、実施例で用いためっき成分は、上記のようにZn−11%Al−3%Mg−0.2%Siであるが、本発明が対象としている部位は溶接部であり、また、めっきが消失してスケールが存在していることが特徴であるため、めっき種については、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Siに限定されるものではない。以下に示す実施例では、上記亜鉛合金めっき以外に、純亜鉛めっき層を有する亜鉛めっき鋼帯も使用して、検証を行っている。
上記めっき溶接H形鋼を、ウェブの中央で切断し、T形の試験片とした。この試験片の溶接ビード部及び端部に関して、樹脂層及び塗膜層を形成した。
上記樹脂層の形成に際し、エポキシ樹脂として1液型エポキシ樹脂塗料を用い、導電性金属片を所定量混合して、樹脂膜厚が表1に記載した値となるようにスプレーで塗布を行った後、乾燥させた。
その後、無機ジンクリッチ塗装を、塗膜層厚みが表1に記載した値となるようにスプレーで塗装して、塗膜層を形成させた。この際、ジンクリッチ塗装処理に先立つ素地調整処理として、ブラスト処理は行っていない。なお、塗膜層に用いた無機ジンクリッチペイントは、神東塗料株式会社製の一液型無機系ジンクリッチプライマー塗料(商品名:シントーウェルド#1000)を用いた。この一液型無機塗料は、亜鉛粉末を85〜90質量%含有するジンクリッチ塗料である。
また、各試料について、溶接部の断面を上記の方法に則してSEMによって観察し、樹脂層及び塗膜層の厚みを確認した。
以上のようにして得られた各試料に対して、一次防錆性、塗膜層密着性、及び、耐食性という3つの観点から評価を行った。評価方法は、以下の通りである。なお、一次防錆性は、無機ジンクリッチ塗装を行う前に評価した。
一次防錆性は、塗膜層にきずを付与することなく、JIS H8502に記載された中性塩水噴霧サイクル試験に供することで評価し、赤錆発生時間が9サイクル以上であったものを合格とし、表1には「○」を記載した。また、赤錆発生時間が9サイクル未満であったものは不合格とし、表1には「×」を記載した。
塗膜層密着性は、カッターナイフで2mmの碁盤目傷を付与した後、市販のセロハンテープ(商品名:セロテープ(登録商標))を用いて剥離試験を行った。1/2マス以上塗膜層が残存したマス目の数密度で評価し、80/100以上を合格とし、表1には「○」を記載した。また、上記数密度が79/100以下であったものは不合格とし、表1には「×」を記載した。
耐食性は、塗膜層にきずを付与することなく、JIS H8502に記載された中性塩水噴霧サイクル試験に供することで評価し、赤錆発生時間が45サイクル以上であったものを合格とし、表1には「○」を記載した。また、赤錆発生時間が45サイクル未満であったものは不合格とし、表1には「×」を記載した。
上記表1から明らかなように、本発明例に対応する試料は、素地調整処理であるブラスト処理を行わなくとも、優れた一次防錆性、塗膜層密着性及び耐食性を示すことが明らかとなった。一方で、比較例に対応する試料は、優れた塗膜層密着性と耐食性とを実現することが出来なかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 めっき溶接形鋼(めっき溶接軽量形鋼)
3 フランジ
5 ウェブ
7 溶接部
9 端面
11 母材鋼板
13 亜鉛系めっき層
15 ビード
101 樹脂層
103 無機系塗膜層(無機系ジンクリッチ塗膜層)

Claims (9)

  1. 鋼帯上に純亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼帯である亜鉛系めっき鋼帯を素材とするウェブ及びフランジと、前記ウェブと前記フランジとが接合された溶接部と、を有するめっき溶接形鋼であって、
    前記めっき溶接形鋼における前記ウェブと前記フランジとの溶接部にはビードが存在し、当該ビード上には、所定量の亜鉛粉末とを含有し、更に、バインダ成分としての無機化合物を含む塗膜層である無機系の塗膜層を有し、
    前記無機系の塗膜層と前記ビードとの間には、前記無機系の塗膜層の下地層として樹脂層を有し、
    前記樹脂層は、厚みが2μm超であり、かつ、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する樹脂からなる、めっき溶接形鋼。
  2. 前記鉄よりも卑な導電性金属片は、亜鉛、又は、アルミニウムの少なくとも何れか一方を含む、請求項1に記載のめっき溶接形鋼。
  3. 前記鉄よりも卑な導電性金属片の含有量は、前記樹脂層の固形分の全体質量に対して、5〜50%である、請求項1又は2に記載のめっき溶接形鋼。
  4. 前記無機系の塗膜層は、70質量%以上の亜鉛粉末を少なくとも含有するジンクリッチ塗膜である、請求項1〜3の何れか1項に記載のめっき溶接形鋼。
  5. 前記無機系の塗膜層の厚みは、5〜200μmである、請求項1〜4の何れか1項に記載のめっき溶接形鋼。
  6. 前記無機系の塗膜層と前記ビードとの間の樹脂層の厚みは、3〜30μmである、請求項1〜5の何れか1項に記載のめっき溶接形鋼。
  7. 前記亜鉛合金系めっき層の成分は、質量%で、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Si、Zn−6%Al−3%Mg、Zn−55%Al、又は、Zn−1〜3%Al−1〜3%Mgの何れかである、請求項1〜6の何れか1項に記載のめっき溶接形鋼。
  8. 前記めっき溶接形鋼は、前記ウェブを介して一対の前記フランジが対向するように配置されているめっき溶接H形鋼である、請求項1〜の何れか1項に記載のめっき溶接形鋼。
  9. 鋼帯上に純亜鉛めっき層又は亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼帯である亜鉛系めっき鋼帯を連続的に溶接してウェブ及びフランジが形成されためっき溶接形鋼の製造方法であって、
    前記めっき溶接形鋼における前記ウェブと前記フランジとの溶接部に存在し、前記溶接によって形成されるビード上に、厚みが2μm超であり、かつ、鉄よりも卑な導電性金属片を含有する樹脂層を形成し、当該樹脂層上に、所定量の亜鉛粉末を含有し、更に、バインダ成分としての無機化合物を含む塗膜層である無機系の塗膜層を形成する、めっき溶接形鋼の製造方法。
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