JP4191513B2 - 水素発生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素発生装置、特に、固体高分子型燃料電池に水素燃料を供給する水素発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃料電池はそのエネルギー変換効率の高さ、排出物のクリーン性等から注目され多くの研究がなされている。なかでも、固体高分子型燃料電池(PEFC)は動作温度が低く、エネルギー変換効率が高く、小型化も可能という特徴から、携帯用機器などの移動用電源としても期待されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
島健太郎(発行者)「燃料電池の開発と材料」シーエムシー出版、2002年5月31日、p.15
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、携帯用機器等に搭載されるPEFCでは、PEFCの燃料の輸送、貯蔵が容易であることが望ましい。PEFCの燃料として、例えば、高圧ガスボンベ等の貯蔵タンクに蓄えられた水素が使用されるが、このような場合、厳重な容器が必要とされる。メタノールを直接アノードに供給し発電する方式の直接メタノール型燃料電池(DMFC)の開発も進められているが、メタノールが電解質膜を透過して正極側に達する一種の化学的な短絡現象が生じ、そのためエネルギー効率や正極の性能が低下するという問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の水素発生装置は、内部空間に第1室と第2室とを有する容器と、前記第1室に収容された水蒸気発生源と、前記第2室に収容された水素化物とを含み、前記容器が、第1室と第2室とを仕切る隔壁と、前記隔壁に設けられ前記第1室と前記第2室とを連通する第1の開口と、前記第1の開口を覆うように配置された撥水性の第1の多孔体と、前記隔壁を除く前記第2室を囲う面に形成された第2の開口とを含むことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の水素発生装置の一例を、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施の形態の水素発生装置は、内部空間に第1室2と第2室4とを有する容器11と、第1室2に収容された水蒸気発生源1と、第2室4に収容された水素化物3とを含んでいる。容器11は、第1室2と第2室4とを仕切る隔壁10と、隔壁10に設けられ第1室2と第2室4とを連通する第1の開口5と、第1の開口5を覆うように配置された撥水性の第1の多孔体8と、第1の開口5を開閉自在に覆う開閉部材6と、隔壁10を除く第2室4を囲う面に形成された第2の開口7と、第2の開口7を覆うように配置された第2の多孔体9とを含んでいる。
【0007】
第2室4内に収容された水素化物3は、空気中の水蒸気と反応して水素を発生する性質を有する。そのため、開閉部材6により第1室2と第2室4とが隔てられた状態では、第2室4内の雰囲気は第1室2内の雰囲気よりも乾燥している。
【0008】
図2に示すように、開閉部材6をスライドして第1室2と第2室4とを連通させると、第1室2と第2室4との間に湿度の勾配が生じる。この勾配を打ち消すように、第1室2内の水蒸気発生源1から発生した水蒸気は、第1室2から第2室4に向う方向へと拡散する。第1の開口5を通過する水蒸気は、第1の多孔体8を透過して第2室4へ流入し、水素化物3と反応する。水素化物3が、例えば、水素化ナトリウムである場合には、水素化ナトリウムと水蒸気とが式(1)に示すように加水分解反応して水素を発生する。
【0009】
NaH + H2O → NaOH + H2↑ (1)
このようにして発生した水素は、第2の多孔体9を透過して、第2の開口7から本実施の形態の水素発生装置の外へ放出される。
【0010】
水素化物3は、特に限定されないが、上記水素化ナトリウム、水素化カリウム、および水素化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。これらの水素化物3は、水蒸気と反応して水素を発生し易やすいからである。水素化物3は、平均粒子径が0.05〜3mmの粉末状であることが好ましい。水素化物3が、表面積が大きい粉末状であれば、水蒸気と水素化物3とが反応し易くなり、発生した水素の滞留も抑制されるからである。
【0011】
水蒸気発生源1は、特に限定されず、水、種々の物質が水に溶け込んだ水溶液、種々の物質が水に分散した分散液等が挙げられる。特に、取り扱いが容易な水が好ましい。
【0012】
第1の多孔体8は、第2室4内へ流入する水蒸気の量を制御している。第1の多孔体8の透湿度(水蒸気透過性)は、第1の開口5の大きさ(水蒸気の移動方向と直交する面の面積)等を考慮して適宜決定されるが、上記面積が1〜100mm2である場合に、100〜10000g/m2/dayであることが望ましい。10000g/m2/dayよりも高いと、水蒸気と水素化物との反応が速すぎ、100g/m2/dayよりも低いと、水蒸気と水素化物との反応が遅すぎるからである。透湿度が100〜10000g/m2/dayである第1の多孔体8には、例えば、気孔率が20〜95%、厚みが10〜300μmである膜が好適である。尚、上記透湿度は、JIS Z 0208に準拠して測定した値である。
【0013】
第1の多孔体8は、撥水性を有する材料を含んでいる。多量の水蒸気発生源1と水素化物3との反応は激しく危険を伴うからである。第1の多孔体8の材料は、耐熱性を有する材料を含んでいることが好ましい。水蒸気と水素化物3とが反応すると第2室4内が局所的に高熱となるからである。水素以外の反応生成物がアルカリ性の物質である場合、第1の多孔体8は耐アルカリ性に優れた材料を含んでいることが好ましい。撥水性、耐熱性、および耐アルカリ性に優れた材料として、例えば、フッ素樹脂多孔体が好ましいが、特に、高気孔率で精度の良い多孔化が容易にできるポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)多孔体を含むことが好ましい。
【0014】
第1の多孔体8は、PTFE多孔体単体であってもよいが、図1および図2に示すように、PTFE多孔体8aに積層された第1の通気性支持材8bをさらに含んでいてもよい。第1の通気性支持材8bは、材質、構造、形態について特に限定されないが、PTFE多孔体8aより透湿度が高い材料、例えば、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)、その他の多孔質材料を用いることが好ましい。特に、強度、柔軟性、作業性の点からは不織布が好ましい。第1の通気性支持材8bの材料について特に制限はなく、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、芳香族ポリアミド、あるいはこれらの複合材などを用いることができる。
【0015】
第1の多孔体8は、第1の開口5の第2室4側に配置されていることが好ましい。水蒸気発生源1との接触を少なくして、水蒸気発生源1による浮きや剥がれを抑制できるからである。また、第1の多孔体8の一方の面が、耐熱性、および耐アルカリ性に優れたPTFE多孔体の一方の面から形成されており、そのPTFE多孔体8a(一方の面)を第2室4側に向けて第1の多孔体8を配置することが好ましい。
【0016】
第1の多孔体8の水蒸気発生源1と接する面には、撥水性を高めるために、撥水処理を施してもよい。撥水処理は、表面張力の小さな物質を表面に塗布し、乾燥後、キュアすることにより行うことができる。撥水剤としては、第1の多孔体8よりも低い表面張力の被膜を形成できれば特に限定されないが、パーフルオロアルキル基を有する高分子が好適である。このような高分子としては、例えば、「フロラード」(住友スリーエム製)、「スコッチガード」(住友スリーエム製)、「テックスガード」(ダイキン工業製)、「ユニダイン」(ダイキン工業製)、「アサヒガード」(旭硝子製)など(すべて商品名)を利用してもよい。撥液剤の塗布は、含浸、スプレーなどにより行えばよい。
【0017】
第2の多孔体9は、水素化物3と水素以外の反応生成物とを第2室4内に保持するとともに、水素発生装置の外へ排出する水素の量を制御している。第2の多孔体9の通気度は、第2の開口7の大きさ(水素の移動方向と直交する面の面積)等を考慮して適宜決定されるが、例えば、上記面積が10〜100mm2である場合に、JIS L 1096に準拠して測定された値(フラジール通気度)が1〜100cm3/cm2・secであることが好ましい。
【0018】
第2の多孔体9の材料は、第1の多孔体8の場合と同様の理由から、耐熱性、および耐アルカリ性に優れた材料を含んでいることが望ましく、フッ素樹脂多孔体、特には、PTFE多孔体を含んでいることが好ましい。第1の多孔体8と同様、第2の多孔体9は、PTFE多孔体単体であっても良いし、図1および図2に示すように、PTFE多孔体9aに積層された第2の通気性支持材9bをさらに含んでいてもよい。第2の多孔体9の一方の面は、耐熱性、および耐アルカリ性に優れたPTFE多孔体9aの一方の面から形成されており、そのPTFE多孔体9a(一方の面)を第2室4側に向けて第2の多孔体9を配置することが好ましい。
【0019】
第1室2および第2室4を構成する容器の材質は、特に限定されないが、軽量で携帯性に優れた樹脂が好ましい。例えば、水素以外の反応生成物がアルカリ性物質である場合、アルカリ性物質に侵されにくいポリプロピレン等が好ましい。
【0020】
開閉部材6は、水蒸気発生源1と水素化物3とを隔てるものであるため、透湿度が極めて低い材料から形成される必要がある。例えば、金属、ポリエステル、ポリオレフィン、フッ素樹脂等から形成されていることが好ましい。樹脂成形物の表面が金属箔によって覆われたものや、金属箔と樹脂成形物とを積層した積層体であってもよい。
【0021】
第1室2および第2室4の容積についても特に制限はない。収容される水蒸気発生源1および水素化物3の量は、目的とする総水素発生量から決定される。
【0022】
第1室2および第2室4を構成する容器11の形状についても特に制限はなく、立方体、直方体、円筒体、その他異型であってもよい。
【0023】
開閉部材6は、図1および図2に示した例では、スライドすることにより第1室2と第2室4とを連通させることができるシャッターであるが、これに制限されるものではなく、第1の開口5を開閉自在に覆うことができるものであれば、どのような形態をしていてもよい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の水素発生装置の一例をさらに詳細に説明する。
【0025】
まず、PP(日本ポリケム社製、「ノバテックPP」、融点163℃)を用いて、図1に示す構造の容器を作製した。開閉部材6には、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレンからなる3層の積層物を用いた。第1室2の容積は10cm3、第2室4の容積は8cm3、第1の開口5内の直径は5mm(面積:19.6mm2)、第2の開口7内の直径は5mm(面積:19.6mm2)とした。第1の開口5を覆うように第1の多孔体8を、第2の開口7を覆うように第2の多孔体9を配置した。第1の多孔体8には、透湿度が7000g/m2/dayであるPTFE多孔体(厚さ50μm、気孔率80%)を、第2の多孔体9には、通気度(フラジール通気度)が10cm3/cm2・secであるPTFE多孔体(厚さ15μm、平均孔径3μm)を用いた。第1室2には水30mLを、第2室4には水素化カルシウム粉末(平均粒子径1mm)50gを封入した。
【0026】
開閉部材6をスライドして第1室2と第2室4とを連通させると、水から発生した水蒸気が第1の多孔体8を透過して第2室4へ流入し、水素化カルシウム粉末と反応して水素を発生した。総水素発生量は28Lであった。
【0027】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明では、小型で携帯可能であり、携帯用機器等に搭載される燃料電池の水素供給源として適した水素発生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の水素発生装置の一例を示す断面図
【図2】 図1に示した水素発生装置において、第1室と第2室とが連通した状態を説明する図
【符号の説明】
1 水蒸気発生源
2 第1室
3 水素化物
4 第2室
5 第1の開口
6 開閉部材
7 第2の開口
8 第1の多孔体
9 第2の多孔体
8a,9a PTFE多孔体
8b 第1の通気性支持材
9b 第2の通気性支持材
10 隔壁
11 容器

Claims (15)

  1. 内部空間に第1室と第2室とを有する容器と、前記第1室に収容された水蒸気発生源と、前記第2室に収容された水素化物とを含み、前記容器が、第1室と第2室とを仕切る隔壁と、前記隔壁に設けられ前記第1室と前記第2室とを連通する第1の開口と、前記第1の開口を覆うように配置された撥水性の第1の多孔体と、前記隔壁を除く前記第2室を囲う面に形成された第2の開口とを含むことを特徴とする水素発生装置。
  2. 前記容器が、前記第1の開口を開閉自在に覆う開閉部材をさらに含む請求項1に記載の水素発生装置。
  3. 前記第1の多孔体の透湿度が、100〜10000g/m2/dayである請求項1または2に記載の水素発生装置。
  4. 前記第1の多孔体が、フッ素樹脂多孔体を含む請求項1〜3のいずれかの項に記載の水素発生装置。
  5. 前記第1の多孔体が、前記フッ素樹脂多孔体に積層された第1の通気性支持材をさらに含む請求項4に記載の水素発生装置。
  6. 前記フッ素樹脂多孔体が、ポリテトラフルオロエチレン多孔体である請求項4または5に記載の水素発生装置。
  7. 前記第1の多孔体は、一方の面が前記ポリテトラフルオロエチレン多孔体であり、前記一方の面が前記第2室に向けて配置されている請求項6に記載の水素発生装置。
  8. 前記容器が、前記第2の開口を覆うように配置された第2の多孔体をさらに含む請求項1から7のいずれかの項に記載の水素発生装置。
  9. 前記第2の多孔体の、JIS L 1096に準拠して測定された通気度が1〜100cm3/cm2・secである請求項8に記載の水素発生装置。
  10. 前記第2の多孔体は、フッ素樹脂多孔体を含む請求項8または9に記載の水素発生装置。
  11. 前記第2の多孔体が、前記フッ素樹脂多孔体に積層された第2の通気性支持材をさらに含む請求項10に記載の水素発生装置。
  12. 前記フッ素樹脂多孔体が、ポリテトラフルオロエチレン多孔体である請求項10または11に記載の水素発生装置。
  13. 前記第2の多孔体は、一方の面が前記ポリテトラフルオロエチレン多孔体であり、前記一方の面が前記第2室に向けて配置されている請求項12に記載の水素発生装置。
  14. 前記水素化物が、水素化ナトリウム、水素化カリウムおよび水素化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜13のいずれかの項に記載の水素発生装置。
  15. 前記水素化物は、平均粒子径が0.05〜3mmの粉末状である請求項1〜14のいずれかの項に記載の水素発生装置。
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