JP4189584B2 - ばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ - Google Patents
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Description
上記の電気自動車および電動ブレーキでは、車両のタイヤ近傍の、いわゆるばね下に搭載される電装部品、特にモータへ、ばね上側の車体から給電する必要がある。
前述の小型電気自動車においては、これら電装部品は電線で車体側と直接結ばれているが、普通の乗用車などでは、乗り心地の観点からサスペンションのストロークも長く、モータ容量も大きいため電線も太くなる。
従って、電線の繰り返したわみの結果、疲労により電線が切れてしまう可能性がある。
この問題の解決方法として、例えばばね上に第1のコイル、ばね下に第2のコイルを設け、両者の間で電磁誘導により非接触で電力を送る、つまりトランスを形成してばね上ばね下間で電力を供給する技術が知られている(特許文献1参照)。
またショックアブソーバの外側とか、サスペンションリンクの途中などに新たに追加して取り付ける構成のため、サスペンションを構成する部品との干渉の可能性があり、取り付けにくいという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するために周辺部材との干渉の恐れなく、電力伝達の効率の良好なばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバを提供することを目的とする。
また、ショックアブソーバの内部に第1と第2のコイルを組み込むので、他部品との干渉が発生しない。
内外2重に配置された内筒10及び外筒11は、上端部及び下端部がエンドキャップ12及びベースバルブ13により互いに連結され、外筒11の下端部はエンドカバー14により液密に閉じられ、内筒10、外筒11の間の環状空間のリザーバ室18の上部に低圧の気体が封入されている。リザーバ室18とベースバルブ13の下側の空間Pとは連通孔16でつながっている。
図示を省略するが、ピストンロッド20の上端部は、車両のばね上側部材つまり車体側の部材に取り付けられ、外筒11またはエンドカバー14は、車両のばね下側部材つまり車輪側の部材に取り付けられる。
また、ピストン17の側面には内筒10の内周面に摺動するシール25aを有している。
なお、図1にはベースバルブ13とピストン17の詳細構造を省略して、それぞれの本体部分のみを示してある。
また、リザーバ室18の上部に封入された低圧の気体は、ショックアブソーバの伸縮時に、内筒10内のピストンロッド20の体積の変化分を吸収するためのものである。
リバウンドストッパ23は、内筒10内でのピストン17の伸び側の最大ストローク(変位)を規制する鍔状のもので、ピストン17から所定の距離上方の位置に設けられている。
さらに、コイル1がリバウンドストッパ23とピストン17の間のピストンロッド20の外周面に、上方から見て例えば反時計回りに巻き回され、モールド樹脂4aで覆われ固定されている。中心穴21は、ピストンロッド20の中心部に、その上端からコイル1の下端まで達するように開けられている。
また、中心穴21も、ハーネス6a、6bを通した上で、樹脂などを充填し、ショックアブソーバの作動油が漏れ出ないように密封されている。
図2は図1のA−A部断面図である。導磁リング5aの外径は、内筒10との間にわずかな間隙を有し接触しない程度である。導磁リング5aは、ピストン17が下室R1と上室R2の間で作動油を流通させるとき、作動油を通過させる通路となる切り欠き部35を外周部に有する。
また、内筒10は、コイル2の下端に対応して、内周面から外周面に通じる連絡穴34を有する。
コイル2の下端に接続したハーネス7aが、連絡穴34とリザーバ室18を経由してエンドキャップ12の下端に至る。コイル2の上端にハーネス7bが接続し、エンドキャップ12の下端に至る。ハーネス7a、7bは、それぞれエンドキャップ12の下端面から外筒11の外周面に連絡する引き出し穴33A、33Bを経て外部に引き出され、ばね下側の電装品に接続する。
引き出し穴33A、33B、連絡穴34は、液密にモールド樹脂4bで密封されている。
エンドキャップ12のすぐ下側に、軟磁性材料でできた環状の導磁リング5bを配置する。導磁リング5bの外周部分は内筒10の内周面に当接し、内径はピストンロッド20の外径よりわずかに大きく、ピストンロッド20の外周面と間隙を持つ。
なお、本実施例において軟磁性材料とは例えば電磁ステンレス、珪素鋼などである。ハーネス6a、6b、7a、7bは外周を絶縁材で被覆された導体である。
以上の構成により軟磁性材料で構成されたピストンロッド20、導磁リング5b、内筒10、導磁リング5aにより、図3に矢印で示すように同心のコイル1、2の中心部とコイル1、2の外側を巡る閉じた磁束経路が形成される。
導磁リング5a、5bは内筒10とピストンロッド20中を軸方向に通る磁束を、誘導して結び合わせる働きをする。導磁リング5aの外周部と内筒10の内周面との間隙、および導磁リング5bの内径の周縁部とピストンロッド20の外周面との間隙部分は、わずかであり、ここでの磁束の漏れは少ない。
コイル1を流れる電流が減少を始めると、コイル2に発生する誘起電圧も逆向きになる。
このように、コイル1の発生させる磁束が時間的に変化したとき、コイル2にその変化率に応じた誘起電圧が効率的に生じ、ばね下側の電装品にハーネス7a、7bを介して電力が供給される。
本実施例におけるピストンロッド20は本発明のロッド部材を、内筒10は円筒部材を構成する。また、コイル1は本発明の第1のコイルに、コイル2は第2のコイルに、導磁リング5aは第1の導磁リングに、導磁リング5bは第2の導磁リングに対応する。
また、ショックアブソーバの伸縮に対してハーネスが撓むことがない構成となっているので、ばね上ばね下間の伸び縮みがあっても、その間のハーネスの撓み疲労が発生せず、電力供給用のハーネスの破損が防止できる。さらに前輪のストラット形式サスペンションに適用した場合は、転舵に伴うハーネスの撓みをも無くすことが可能である。
図4は本発明の第2の実施例のツインチューブ式ショックアブソーバの縦断面図である。図4において第1の実施例と同じ構成に付いては同一の符号を付して示し、説明を省略する。
本実施例では外筒11’は、軟磁性材料で構成され、内筒10’は非磁性材料で構成されている。第2のコイルであるコイル2’は、第1の実施例の場合の内筒の内周面ではなく、外筒11’のエンドキャップ12側の内周面に、モールド樹脂4bで覆われ固定されている。
コイル2’の両端はハーネス7a、7bの一端に接続し、ハーネス7a、7bはエンドキャップ12の下端に至り、さらにエンドキャップ12の下端面から外筒11’の外周面に連絡する引き出し穴33Aを経て外部に引き出され、ばね下側の電装品に接続する。引き出し穴33Aは、液密にモールド樹脂4bで密封されている。
導磁リング8は、内周面が内筒10’の外周面に接し、外周部が外筒11’の内周面に接する。
図5に図4のB−B部断面図を示す。導磁リング8は外周部に、軸方に延びる複数の溝8aを有し、外筒11’の内周面との間で連通孔を形成する。
また、エンドキャップ12全体を軟磁性材料で構成する。
なお、本実施例においても、軟磁性材料とは例えば電磁ステンレス、珪素鋼などである。
以上の構成により、軟磁性材料で構成されたピストンロッド20、導磁リング5b、エンドキャップ12、外筒11’、導磁リング8、導磁リング5aにより、図6に矢印で示すように同心のコイル1、2’の中心部とコイル1、2’の外側を巡る、閉じた磁束経路を構成する。
導磁リング5aと導磁リング8、導磁リング5bとエンドキャップ12とは、外筒11’とピストンロッド20中を軸方向に通る磁束を誘導して結び合わせる働きをする。
導磁リング5aの外周部と導磁リング8の内周面との間隙、および導磁リング5bの内径の周縁部とピストンロッド20の外周面との間隙部分は、わずかであり、ここでの磁束の漏れは少ない。
また、ばね上ばね下間の伸び縮みがあっても、その間のハーネスの撓み疲労が発生せず、電力供給用のハーネスの破損が防止できる。
なお、本実施例において導磁リング5bを省略しても良い。また、ピストン17を軟磁性材料で構成する場合は、導磁リング5aを省略しても良い。
第2の実施例と異なる点は、内筒が軸方向に上部内筒10a’と下部内筒10b’とで構成されていることと、車両が静止状態で前輪の操舵状態が中央、つまり中立状態のときコイル1が位置する軸方向位置(以下、中立位置と呼称する)に対応する軸方向位置にコイル2’を配置したことである。
例えば上部内筒10a’は非電磁性のステンレス鋼、下部内筒10b’は電磁ステンレス鋼とし、両者は溶接で接続される。
導磁リング5bの下面からリバウンドストッパ23の上面までの距離L1と、上部内筒10a’と下部内筒10b’の区切れ目から導磁リング5aの上面までの距離L2は同じにする。また、導磁リング8の上端は、モールド樹脂4bの下端より下で、溝8aの上端で作動油の流通を確保できる位置までである。導磁リング8の下端はピストンロッド20が縮み側に最大ストローク時の位置に対応する位置であり、ベースバルブ13近傍までである。
図8に示すように、導磁リング5aが、コイル2’の位置する軸方向位置範囲内に入っても導磁リング8と、下部内筒10b’、導磁リング5b、エンドキャップ12とによって外筒11’とピストンロッド20の磁束が径方向に誘引されて結び合わされる。仮想線(図中、2点鎖線で示す)のようなコイル1の外周側でコイル2’の内周側を通る磁束が生じないので、第1、第2の実施例のようにコイル2または2’をエンドキャップ12側に寄せて配置する必要がない。
本変形例の上部内筒10a’は本発明の非磁性内筒部材に、下部内筒10b’は磁性内筒部材に対応する。
また、車載状態中立位置のときコイル1とコイル2’が同一軸方向位置に同心で重なるので、時間的に走行中最も多い状態で効率の良い給電ができる。
また、第1の実施例において、外筒11、エンドキャップ12を軟磁性材料とし、さらに導磁リング5aが伸縮時に位置する軸方向領域のリザーバ室18に第2の実施例の導磁リング8を配置固定することとしても良い。
この場合、内筒10と外筒11の両方を磁束経路とするので、コイル1、2の外側の磁束の経路断面積を大きくすることになり、磁束飽和を緩和し、電磁誘導による電力授受の効率が向上する。
さらに、第2の実施例またはその変形例において、コイル2’を外筒11’の内周面にモールド固定したが、代わりに内筒10’の外周面にモールド固定しても良い。
また、第1の実施例をシングルチューブ式ショックアブソーバに適用することも出来る。
2、2’ コイル(第2のコイル)
4a、4b モールド樹脂
5a 導磁リング(第1の導磁リング)
5b 導磁リング(第2の導磁リング)
6a、6b ハーネス
7a、7b ハーネス
8 導磁リング(第3の導磁リング)
8a 溝
10、10’ 内筒
10a’ 上部内筒(非磁性内筒部材)
10b’ 下部内筒(磁性内筒部材)
11、11’ 外筒
12 エンドキャップ
13 ベースバルブ
14 エンドカバー
15 オイルシール
16 連通孔
17 ピストン
18 リザーバ室
20 ピストンロッド
21 中心穴
23 リバウンドストッパ
24 貫通穴
25a、25b シール
32、34 連絡穴
33A、33B 引き出し穴
35 切り欠き部
Claims (8)
- ロッド部材と、前記ロッド部材の一端を液密に摺動可能に収容した円筒部材とが、その一方が車両のばね上部材、他方がばね下部材に固定され、相対変位することにより減衰力を発生させるショックアブソーバにおいて、
前記ロッド部材の外周面に固定される第1のコイルと、
前記円筒部材の内側に固定される第2のコイルとを有し、
前記ロッド部材と前記円筒部材はそれぞれ軟磁性材料で構成され、
前記ロッド部材には、前記一端側の端部と前記第1のコイルとの間に、前記円筒部材側へ径方向に延びる環状の軟磁性材料の第1の導磁リングが取り付けられ、
前記円筒部材は、前記ロッド部材が貫通する部分にエンドキャップを有し、該エンドキャップの内側には前記ロッド部材側に径方向に延びる環状の軟磁性材料の第2の導磁リングが取り付けられ、
前記第1および第2の導磁リングを通して、前記ロッド部材と前記円筒部材中の軸方向の磁束を径方向に誘引して、
前記第1と第2の2つのコイル間で電磁誘導によって電力の授受を行うことを特徴とするばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。 - 前記第1のコイルは、その外径が前記第2のコイルの内径より小さく、
前記2つのコイルは、それぞれ同心状に巻かれ、前記第1のコイルが間隙をもって前記第2のコイルの内側をスライド可能な構成とすることを特徴とする請求項1に記載のばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。 - 内外2重に配置された内筒と外筒を有するツインチューブ式ショックアブソーバにおいて、前記内筒が前記円筒部材であることを特徴とする請求項1また2に記載のばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。
- 内外2重に配置された内筒と外筒を有するツインチューブ式ショックアブソーバにおいて、前記外筒が前記円筒部材であり、前記第2のコイルは、前記内筒と前記外筒の間に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。
- 前記内筒は、非磁性材料で構成された非磁性内筒部材と、軟磁性材料で構成された磁性内筒部材とを、同軸に接続してなり、前記エンドキャップ側に前記非磁性円筒部材が配置されることを特徴とする請求項4に記載のばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。
- 前記内筒と前記外筒の環状空間の前記エンドキャップと反対側に、軟磁性材料の第3の導磁リングを設け、
前記ロッド部材と前記外筒部材中の軸方向の磁束を径方向に誘引可能に配置することを特徴とする請求項3から5のいずれか1に記載のばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。 - 前記内筒と前記外筒の環状空間の前記エンドキャップと反対側に、軟磁性材料の第3の導磁リングを設け、
前記ロッド部材と前記外筒部材中の軸方向の磁束を径方向に誘引可能に配置し、
前記第2のコイルは、ショックアブソーバを車載したときの中立状態において前記第1のコイルと対向する軸方向位置に設けることを特徴とする請求項5に記載のばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。 - 前記ロッド部材は、前記ロッド部材の取り付け端に開口し軸方向に延びて前記第1のコイルの下端に至る中心穴を備え、
該中心穴は前記第1のコイルの端子位置で前記ロッド部材の外周面に連絡穴を通じて開口し、
前記第1のコイルの端子線は、前記連絡穴と中心穴を経て前記ロッド部材の取り付け端に引き出され、
前記円筒部材は、前記エンドキャップ側に引き出し穴を備え、
前記第2のコイルの端子線は、前記引き出し穴から外部に引き出され、
前記第1のコイルは前記ロッド部材に、前記第2のコイルは前記円筒部材に、それぞれ樹脂でモールド固定され、
該樹脂は、前記連絡穴部分、および前記引き出し穴部分までも覆っていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1に記載のばね上ばね下間の給電機能を備えたショックアブソーバ。
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