JP4188416B2 - 有意なホルモン活性のないチロキシン類縁体による悪性腫瘍の治療方法 - Google Patents

有意なホルモン活性のないチロキシン類縁体による悪性腫瘍の治療方法 Download PDF

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Description

発明の技術分野
本発明は癌治療に関する。より詳しくは、本発明は、有意なホルモン活性のないチロキシン類縁体、特に、3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチルの、強い、選択的で非毒性抗腫瘍剤としての使用に関する。
発明の背景
悪性腫瘍の成長は、その特異な特性により、近代医薬に厳しい挑戦をしている。これらの特性は、悪性組織の不規則な成長をもたらす。コントロールできない細胞増殖、局所および隔った部分の組織へも侵蝕する能力、分化欠損、検出できる症状の欠乏、および最も特徴的には有効な治療および予防手段がないことである。
癌はどの年令でもまたいかなる器官のいかなる組織でも進行しうる。
癌の原因は明らかにはなっていないが、遺伝子感受性、染色体分裂不全、ウイルス、環境因子、免疫不全等のメカニズムはすべて悪性細胞成長や形質転換に連結している。
抗腫瘍化学療法には、アルキル化剤、プリン拮抗剤、抗腫瘍抗生物質などの数種のグループの薬物が含まれている。アルキル化剤は、細胞タンパク質および核酸をアルキル化して細胞複製を防ぎ、細胞代謝を破壊し、ときに細胞死に到らせる。典型的なアルキル化剤は、ナイトロジェンマスタード、シクロホスファミドおよびクロテムブシルである。アルキル化剤治療に伴う毒性としては、吐き気、嘔吐、脱毛症、出血性膀胱炎、肺線維症および急性白血病の進展が増大する危険などがある。
プリン、ピリミジンおよび葉酸塩アンタゴニストは細胞サイクルおよびフェーズ特異的で、抗腫瘍効果を促進するために、それらは、細胞が細胞複製サイクルおよび複製のDNA合成フェーズにあることが必要である。6−メルカプトプリンや6−チオグアニジン等のプリン拮抗剤はデノボプリン合成やプリンのクレスプ環内相互転化を抑制する。シタラビン、5−フルオロウラシルまたはフロキスリジンなどのピリミジン拮抗剤は、デオキシシチリレートキナーゼやDNAポリメラーゼを阻害することによりDNA合成を抑制する。
メトトレキセートなどの葉酸塩拮抗剤は、細胞内酵素ジヒドロ葉酸リダクターゼと密接に結合し、ピリミジン合成不能の結果、究極的には、細胞死をもたらす。これらの化合物の使用に伴う毒性は脱毛症、脊髄抑制、嘔吐、吐き気、小脳性失調症、その他を含む。
ビンクリスチン、ビンブラスチンまたはポドフイロトキシンエトポシドおよびテニポシドなどの植物アルカロイドは、一般に、有系分裂、DNA合成およびDNA依存性タンパク質合成を抑制する。これらの薬物の毒性は上記のものに類似しており、筋病、脊髄抑制、末梢神経病、嘔吐、吐き気、および脱毛症が含まれる。
ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびアクチノマイシンなどの抗腫瘍抗生物質は、DNAの介在物として作用し、細胞複製を防ぎ、DNA依存性RNAの合成抑制およびDNAポリメラーゼ抑制をもたらす。ブレオマイシンはDNAの分裂の原因となり、マイトマイシンはビフアンクション性アルキル化によりDNA合成を抑制する。これらの抗生物質の毒性は多数にありかつ厳しく、壊死、脊髄抑制、アナフイラキシー反応、食欲欠乏、用量依存性心臓毒性、および肺線維症が含まれる。
癌の化学療法に用いられる他の化合物は、シスプラチンなどの無機イオン、インターフェロンなどの生物学的反応変性剤、酵素およびホルモン類である。これらの化合物はすべて、上記のものに似て、毒性副作用を伴う。
したがって、腫瘍細胞の複製や新生物成長を効果的に阻止または抑制しうる安全で非毒性の化学療法組成物が提供できればきわめて有利である。
さらに、容易に投与できる安全で、有効かつ非毒性の化学療法組成物が提供できればきわめて有利である。
哺乳動物における悪性腫瘍の成長を抑制または減少させうる、安全で、有効、非毒性かつ経口投与可能な有機化合物の発見ならびにそれらの癌治療への使用が望ましく、本発明の目的である。
発明の要旨
本発明は、有意なホルモン活性のないチロキシン類縁体、特に3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(“DIME”)の悪性腫瘍成長の抑制および減少ならびに癌治療への使用に関する。その方法は、一般に、悪性腫瘍の抑制および減少または癌治療に有効な量のチロキシン類縁体を哺乳動物へ投与することを含む。該チロキシン類縁体は、典型的には、有意なホルモン活性を欠くことが特徴である。
特に、本発明は、哺乳動物における悪性腫瘍の治療方法に関し、その方法は、悪性腫瘍の成長抑制に充分な量のチロキシン類縁体を悪性腫瘍を有する哺乳動物に投与することからなり、該チロキシン類縁体は、インビトロでのマイクロチューブタンパク質アセンブリイの初期速度の約35%以上の抑制率、好ましくは約45%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは約90%以上のインビトロによるマイクロチューブタンパク質アセンブリイの初期速度抑制率をもたらす化合物である。
一つの具体例では、本発明の方法に使用しうるチロキシン類縁体は次式:
Figure 0004188416
(式中、Xは、O、S、CH2、カルボキシ、または無し、YはOまたはS、R1はメチルまたはエチル、R2、R3、R4およびR5は、各々独立して、H、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルキニル、ヒドロキシ、C1−C4アルコキシおよびハロゲンから選ばれる基、およびR6、R7、R8およびR9は、各々独立して、H、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルキニル、ヒドロキシ、C1−C4アルコキシ、ハロゲン、NO2およびNH2から選ばれる基である)
で示される化合物およびその医薬上許容される塩である。
他の具体例としては、本発明の方法で用いられるチロキシン類縁体は、次式:
Figure 0004188416
(式中、Xは、O、S、CH2、カルボキシまたは無し、YはOまたはS、R1はメチルまたはエチル、R2、R3、R4およびR5は各々独立して、H、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルキニル、ヒドロキシ、C1−C4アルコキシおよびハロゲンから選ばれる基、およびR7およびR8は、各々独立して、H、C1−C4アルキル、C1−C4アルケニル、C1−C4アルキニル、ヒドロキシ、C1−C4アルコキシ、ハロゲン、NO2およびNH2から選ばれる基である)
で示される化合物およびその医薬上許容される塩である。
本発明の好ましい態様では、チロキシ類縁体は、3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(“DIME”)である。
【図面の簡単な説明】
図1は、E−ras20細胞について4μMDIMEで18〜24時間インキュベートしたのちの細胞形態に対する影響を示す。パネルAは薬物非処理(コントロール)、パネルBは薬物処理、パネルCは薬物処理を示す。パネルAおよびBは150倍拡大、パネルCは300倍拡大である。
図2は、DIME処理E−ras形質転換ウシ内皮細胞の腫瘍発生の消失を示すグラフである。
図3は、マウスにおけるDIMEの血清半減期(大)と経口バイオアベイラビリティを示すグラフである。
図4は、105または106E−ras 20細胞/接種の腫瘍形成に対するDIME前処理(10μM、4日間)の腫瘍発生に対する効果を示す。
図5は、MDA−MB−231細胞のコロニー形成度に対するDIME効果濃度を示す。
図6は、0.0μM(a)、2.00μM(b)、5μM(c)および10μM(d)によるDNA分裂の誘導を示す。E−ras細胞(2×104細胞/cm2)をTUNELアッセイの前にDIMEにて18時間処理した。
図7は、A−549(肺癌)細胞抽出物(2×106細胞に相当)によるDIME(D)およびそのカルボン酸(A)分解産物の薄層クロマトグラフィでの分離を示す。ライン1および2に示す実験では、抽出物のエステラーゼ活性は1μMDIMEと4時間インキュベートする間に生じる。ライン2は125μMBNPPによるエステラーゼ抑制を示す。ライン3および4は、細胞抽出物を1μMDIMEで24時間前インキュベートした自然細胞から調製した以外は、ライン1および2と同じ実験について示したものである。この実験は、エステラーゼがDIMEにより誘引されないことを示す。
図8は、BNPPによるA−59細胞の生育に対するDIMEの抑制作用の増大を示す。
図9は、MDA−MB231細胞に対するDIMEの効果を示すグラフである。初期接種密度は0.05×106/2cm2であった。
図10は、MDA−MB231ヒト乳癌細胞核について行ったフロ−サイトメトリー分析を提示するものであって、18時間薬物に曝したときのDNAのG2成分を有する核が蓄積されたことを示し、Mフェーズのブロックを示す。
図11は、13時間有糸分裂が遅延し、ついで6個の娘細胞に不規則に分割した像を示す。フレーム1は0時間0分、フレーム2は10時間55分、フレーム3は24時間20分、フレーム4は24時間40分、フレーム5は24時間55分、フレーム6は25時間10分、フレーム7は26時間35分、フレーム8は28時間20分を示す。
図12は、MDA−MB231細胞のMフェーズにある時間に対するDIMEの効果を示す。
図13は、DIMEにより誘引された異常細胞分裂の定量分析を示す。
図14は、MDA−MB231細胞のMフェーズに入る速度に対するDIMEの効果を示す。
図15(A、B、C)はDIME処理MDA−MB−231細胞における染色体19DNAのハイブリダイゼーション(中期拡散)を示す。図16Aはコントロール、図16BはDNA染色像、図16Cは1μMDIME5日間処理(中期)の染色体19のハイブリダイゼーションである。
図16(A、B、C)は、MDA−MB−231細胞の有糸分裂紡錘体に対するDIME処理の効果を示す。パネルAはコントロール(薬物なし)、パネルBは1μMDIME18時間処理、パネルCは1μMDIME5日間処理である。
図17は、マイクロチューブアセンブリイの光学テスト(MTPポリメリゼーション)を示す。GTPの濃度は1μM(右側曲線)で、4μMDIMEの効果を左側曲線に示す。他の条件は表13の説明に記載のものと同じであった。
図18は、MTPポリメリゼーションの初期直線速度に対するDIME濃度増加の効果を示す。GTPの濃度は1mMであり、他の条件は表13の説明に記載ものもと同じであった。
図19は、GTP濃度の機能としてのMTPポリメリゼーションの初期直線速度(白丸、薬物なし)に対する1μMDIME(黒丸)の効果のミカエリス−メンテン分析を示す。他の条件は表13説明に記載のものと同じであった。
発明の詳細な説明
定義
ここで用いられる:
「アルキル」とは飽和された分枝鎖、直鎖、あるいは環状炭化水素基を意味する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、シクロブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
「アルケニル」とは不飽和の分枝鎖、直鎖、あるいは環状炭化水素基で、少なくともひとつの炭素−炭素間2重結合を持つ基を意味する。該基は2重結合に対してシス配置およびトランス配置を持つものいずれも包含する。代表的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、シクロプロペニル、ブテニル、イソブテニル、シクロブテニル、t−ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等が挙げられる。
「アルキニル」とは不飽和の分枝鎖、直鎖、あるいは環状炭化水素基で、少なくともひとつの炭素−炭素間3重結合を持つ基を意味する。代表的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
「アルコキシ」とは−OR基を意味し、式中Rは前記のアルキル、アルケニルあるいはアルキニルである。
「ハロゲン」とはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素置換基である。
「哺乳動物」とは動物あるいはヒトを意味する。
「薬理学的に許容される塩」とは、遊離塩基の生物学的効果および特質を保持し、化合物と塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等の無機酸との反応により得られる塩を意味する。薬理学的に許容される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩や、アルカリ土類塩、アンモニウム塩が挙げられる。
「薬作用発生団(Pharmacophore)」とは、受容体により認識される分子団または分子片(あるいは電子密度の分布)の臨界3次元配置を意味する(バーガーズ メディカル ケミストリー アンド ドラッグ デリバリー、第I巻、原理と実践619、第5版、ジョン ウィリー アンド サンズ、ニューヨーク)。
「治療有効量」とは悪性細胞増殖を低下、抑制あるいは退行させる為に効果的な、あるいは癌疾患に伴う症状を改善させる、化合物あるいは組成物の量を意味する。
特有な態様の説明
本発明は、有意なホルモン活性を持たないことを特徴とするチロキシンの類縁体を用いて哺乳動物の悪性腫瘍および癌を治療する方法に関する。好ましくは、本発明は、ホルモン活性を示さないチロキシンのある種の類縁体が、悪性腫瘍増殖の、強力で、選択的で、かつ非毒性の阻害剤であるという、驚くべき発見に幾分かは基づく。好ましいチロキシン類縁体は本明細書ではDIMEと呼ぶ。
甲状腺のアミノ酸であるチロキシン(メルク インデックス、1989、9348:1483)およびチロキシン類縁体は本分野で良く知られている。甲状腺ホルモン、特にチロキシンT3およびT4が2つの異なった生物学的作用を示すことは、文献に記載されている。そのひとつは、細胞代謝に対する作用であり、2つ目は、細胞分化と発展に対する作用である(ジョルゲンセン、1978、甲状腺ホルモンおよび類縁体、II.構造−活性関係、ホルモンプロテインおよびペプチド、第VI巻、107−204頁、C.H.リーら、アカデミック プレス、ニューヨーク)。例えば、チロキシンは甲状腺によるヨードの取込みを抑制し(マネーら、1959、ラット甲状腺によるヨード131の取込みの抑制に関する種々のチロキシン類縁体の効果、内分泌学64:123−125)、おたまじゃくし変態で研究したとおり細胞分化を誘発する(マネーら、1958、ラナ ピピエンス タドポールスの変態に対するあるチロキシン類縁体の化学構造における変化の影響、内分泌学63:20−28)。さらには、チロキシンとある種のチロキシン類縁体は非悪性マウス下垂体甲状腺腫瘍の増殖を低下させる(クマオカら、1960、移植可能なマウス下垂体腫瘍に対するチロキシン類縁体の効果、内分泌学66:32−38;グリンバーグら、1962、マウス下垂体甲状腺腫瘍の研究、V.増殖および分泌に対する種々のチロキシン類縁体の影響、キャンサー リサーチ22:835−841)。チロキシンとチロキシン類縁体の、代謝刺激および細胞分化誘導に要する構造的要件は同一ではない(ジョルゲンセン、1978、甲状腺ホルモンおよび類縁体、II.構造−活性関係、ホルモンプロテインおよびペプチド、第VI巻、150頁、C.H.リーら、アカデミック プレス、ニューヨーク、参照)。例えば、マネーらは、甲状腺ヨード取込みとおたまじゃくし変態の誘発の間には相関関係がないことを発見した(マネーら、1958、ラナ ピピエンス タドポールスの変態に対するあるチロキシン類縁体の化学構造における変化の影響、内分泌学63:20−28)。
上記の観察に基づき、チロキシンT3およびT4で発揮されるいずれの作用(代謝作用あるいは分化作用)を示さないある種のチロキシン類縁体により、確定はできないが、細胞応答が変化あるいは誘発されることが確信された。
化合物
本発明の方法に有用なチロキシン類縁体は一般的に下記の構造式をもつ化合物およびその薬理学的に許容される塩である。
Figure 0004188416
式中、XはO、S、CH2、カルボキシあるいは存在せず;
YはOあるいはS;
1はメチルあるいはエチル;
2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して、H、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルケニル、(C1−C4)アルキニル、水酸基、(C1−C4)アルコキシおよびハロゲンから選ばれる基;および
6、R7、R8およびR9はそれぞれ独立して、H、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルケニル、(C1−C4)アルキニル、水酸基、(C1−C4)アルコキシ、ハロゲン、NO2およびNH2から選ばれる基である。
好ましい態様としては、本発明の方法に有用なチロキシン類縁体の下記の構造式を有する化合物およびその薬理学的に許容される塩である。
Figure 0004188416
式中、XはO、S、CH2、カルボキシあるいは存在せず;
YはOあるいはS;
1はメチルあるいはエチル;
2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立して、H、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルケニル、(C1−C4)アルキニル、水酸基、(C1−C4)アルコキシおよびハロゲンから選ばれる基;および
7およびR8はそれぞれ独立して、H、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルケニル、(C1−C4)アルキニル、水酸基、(C1−C4)アルコキシ、ハロゲン、NO2およびNH2から選ばれる基である。
特に好ましい態様では、チロキシン類縁体は3,5−ジヨード−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(“DIME”)である。
DIMEのようなチロキシン類縁体は文献に開示されている。しかしながら、チロキシンとは異なり、DIMEは有意な代謝あるいは細胞分化活性を示さないと報告されていた(おたまじゃくし変態により測定されたように)(マネーら、1958、ラナ ピピエンス タドポールスの変態に対するあるチロキシン類縁体の化学構造における変化の影響、内分泌学63:20−28;スタシリら、1959、ラットにおけるチロキシン類縁体の抗ゴイトロゲン活性および熱産生活性、内分泌学64:62−82)。例えば、ラットの甲状腺へのヨードの取込みは、チロキシンに比べわずかに(15%)DIMEにより阻害される(マネーら、1959、ラット甲状腺によるヨード131取込みの抑制に対する種々のチロキシン類縁体の効果、内分泌学64:123−125)。さらに、DIMEは非悪性マウス下垂体アデノーマの増殖に対して阻害活性を示さないと報告されている(クマオカら、1960、移植可能なマウス下垂体腫瘍に対するチロキシン類縁体の効果、内分泌学66:32−38;グリンバーグら、1962、マウス下垂体甲状腺腫瘍の研究、V.増殖および分泌に対する種々のチロキシン類縁体の影響、キャンサー リサーチ22:835−841)。悪性細胞に関する研究は報告されていない。
有意なホルモン活性を示さないある種のチロキシン類縁体、特にDIMEは多くの悪性細胞型の増殖を阻害するだけではなく(表3参照)、微小核形成に先立つ腫瘍細胞のアポトーシスも誘発する。これらの細胞増殖抑制活性、細胞破壊活性は構造に敏感である。13の構造類縁体とDIMEの同族体を調べて、メチルエステルおよび4’−メトキシ置換基の軽微な変化により、分子を完全に不活性にすることが示唆される。ところが、DIMEは細胞実験およびインビボ実験でも高度に活性であるが、その4’−プロポキシおよびエチルエステル同族体は完全に不活性である。よって、DIMEは特異な細胞増殖抑制活性および細胞破壊活性を持ち、その結果有意な化学療法能を持つ、分子団あるいは薬作用発生団の臨界配置を規定する。
理論に囚われるつもりはないが、本明細書に記載されるチロキシン類縁体の作用の最も有望な分子モードは細胞サイクル阻害とアポトーシス(細胞消滅)の誘発である。
細胞分裂サイクルを通した真核細胞の発達は第一にサイクリン依存性プロテインキナーゼの活性により調節されている。最高の研究事象は、G2からMフェイズへの転移であり、これはサイクリンBと結合しているcdc2キナーゼにより調節されている(参考のため、ダンフィー、1994、Trends Cell. Biol.4:202-207)。cdc2キナーゼ活性化は、プロテインホスファターゼ2Aにより調節されているリン酸化工程を要する(参考のため、ウエラ アンド ヘニングス、1995、Biochem. J. 311:17-29)。
ここで述べるチロキシン類縁体がインビボおよびインビトロにおいてプロテインホスファターゼ2Aの特異な活性化をおこすことが発見された。インビボでは、プロテインホスファターゼ2Aの活性化はcdc2キナーゼの阻害とMAPキナーゼとトポイソメラーゼIIの脱リン酸化と同時に起こり、よって後者の2酵素を不活性化する。DIMEは代謝作用は示さず、DNA、RNAあるいはタンパク質の生合成回路も阻害しない。このように、最も有望な作用モードとしては、細胞サイクル阻害と、これらの重要な調節タンパク質の脱リン酸化を通したアポトーシスの誘発である。よって、ホスファターゼ2Aの活性化と付随するcdc2キナーゼの阻害は、癌の治療においては重要で強力な治療対象である。
エステル部と4’位の変更は有意にDIMEの作用に有意な影響を与えるようなので、悪性腫瘍増殖を抑制し、癌治療に有用なチロキシン類縁体はDIMEに限定されるものではない。たとえば、DIMEに比べて4’−エトキシ同族体は、ヒト癌細胞に対して約25−30%最大細胞破壊作用を示す(実施例4)。DIMEは、活性を有意に失うことなく、芳香族環位置あるいは架橋酸素を置換することができると期待される。
チロキシンの芳香族環は同じ平面に含まれていないことは知られている(ジョルゲンセン、1978、甲状腺ホルモンおよび類縁体、II.構造−活性関係、ホルモンプロテインおよびペプチド、第VI巻、107−204頁、C.H.リーら、アカデミック プレス、ニューヨーク)。また、チロキシンの2芳香族環の位置は、ホルモン活性の保持割合を変えながら、アルキル、ハロゲン、ニトロおよびアミノを含む様々の置換基で置換され得る(同上)。さらに、環をつなぐエーテル酸素は存在しないか、あるいは同じ平面に芳香族環を位置させない様々な基や原子、例えばメチレン基、カルボキシ基あるいはイオウで、ホルモン活性を有意に失うことなく、置き換えることができる(同上)。よって、DIMEの同様な置換により、DIMEの抗癌作用が有意に損なわれることはないと期待あるいは予測される。
重大なことには、DIMEの2’−クロロ類縁体は、DIMEに比べて、ヒト癌細胞増殖に対して約25%最大阻害活性を示した(実施例5)。
インビトロとインビボでの効力の間には説得力ある相関があるので(実施例2−7参照)、本発明方法に有用な効果的化合物はインビトロスクリーニング試験で便宜上鑑定でき得る。そのような試験により、プロテインホスファターゼ2Aを活性化する特異な化合物の能力を、実施例2−3で述べるようにスクリーニングする。典型的には、本発明方法に有用な化合物は、実施例2あるいは3で述べる方法により測定して、プロテインホスファターゼ2A活性を2あるいは3の因子により増加させるであろう。
そのような実験により、特殊な化合物の、インビトロあるいはインビボでの悪性腫瘍細胞増殖を阻害する、あるいは悪性細胞の発癌性を廃止する能力を、実施例4−6で述べるように、スクリーニングすることができる。一般的には、本発明方法に有用な活性化合物は、実施例4で述べる方法により測定して、約0.5μmから5.0μmの範囲内のI50(対照培養物に比べて、細胞培養物の50%致死を示す化合物の濃度)を示すであろう。
本分野の技術者に認められるであろう、悪性腫瘍細胞培養物およびセルラインの多くが、例えばHL−60、HT−144、E−ras−20、DU−145、MDA−168、MCF−7、855−2およびMDA−MB−231が活性スクリーニングに用いることができるが、これらに限定されるものではない。もちろん、抗腫瘍活性および/または抗癌活性のスクリーニングに、この分野の技術者にとって自明の他のインビトロおよび/またはインビボ試験もまた本発明に有用な効果的チロキシン類縁体の鑑定に用いることができる。
ここで用いる化学式は互変化、あるいは構造異性化の現象を表す。本明細書内の構造図は可能な互変体あるいは構造異性体の一つのみを表すが、本発明はここで述べるように、DIMEと同様の生理学的または薬理学的活性を示すいずれの互変体あるいは構造異性体をも包含するものである。
上記化合物およびその薬理学的に許容される塩の他に、本発明は、可能であれば、その化合物の溶媒和物あるいは非溶媒和物(例えば水和物)をも包含する。
ここに記載の化合物は化学化合物の合成に用いられるいずれの既知の方法により合成することができる。適した方法は代表的な実施例により例示される。必要な出発物質は有機化学の標準的手法により得ることができる。

ここに記載するチロキシン類縁体は広範囲の癌の治療に有用である。そのような癌としては、単なる例示に過ぎずこれらに限定されるものではないが、咽頭癌、大腸癌、直腸癌、すい臓癌、胃がん、肝臓癌、肺がん、乳がん、皮膚癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、膀胱癌などの癌腫;白血病;リンパ腺腫;神経膠腫;網膜芽細胞腫;および肉腫がある。
本発明の好ましい態様としては、癌は固体腫瘍を形成しているもの、例えば、単なる例示に過ぎずこれらに限定されるものではないが、乳癌および前立腺癌である。
医薬製剤および投与方法
本発明に有用なチロキシン類縁体は、治療有効量の、つまり悪性腫瘍増殖を抑制し、あるいは癌疾患に伴う病状を改善するのに有効な量の、化合物そのもの自体、あるいは薬理学的に許容される塩の形で、あるいは、化合物が適当な担体や賦形剤と混合された医薬組成物の形でヒト患者に投与することができる。
投与方法
ここに記載されるチロキシン類縁体およびその医薬組成物は様々な方法で投与できる。適当な投与方法としては、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、あるいは腸管投与があり、筋肉内注射、皮下注射、骨髄内注射を含む非経口投与、髄膜内注射、直接脳内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、あるいは眼球内注射がある。
別法として、全身投与ではなく局所投与で、例えば固体腫瘍に直接注射したり、あるいはしばしばデポ剤や放出制御製剤としても投与できる。
さらには、ターゲット ドラッグ デリバリー システムにより、例えば、腫瘍特異的抗体で被覆したリポソームの形で投与できる。リポソームは腫瘍を標的とし、腫瘍により捕獲される。
好ましい態様としては、ここで述べるチロキシン類縁体およびその薬理学組成物は経口投与が望ましい。
組成物/製剤
ここで述べる医薬組成物は、例えば常法で混合、溶解、顆粒化、糖衣錠化、微粒子化、乳化、カプセル化、エントラップ化、あるいは凍結乾燥工程等の既知の方法で製造される。
本発明によれば用いる医薬組成物は常法により、生理学的に使用できる製剤への活性化合物の工程を容易にする、1つあるいはそれ以上の生理学的に許容される担体および賦形剤を用いて製剤化される。適当な製剤は選んだ投与方法により選択される。注射剤は、本発明の薬剤を水性溶液に、好ましくは生理学的に相溶性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル液、あるいは生理食塩水緩衝液の溶液として製剤化する。経粘膜投与には、障壁が浸透するためにふさわしい浸透剤を製剤中に用いる。そのような浸透剤は一般的に本分野で既知である。
経口投与では、化合物は本分野で既知の薬理学的に許容される担体と混合して容易に製剤化される。そのような担体は化合物が錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等の、治療される患者による経口摂取に適した製剤に製剤されるのを容易にする。経口使用に適した医薬製剤は化合物を固体賦形剤と混合し、時として得られた混合物をすりつぶし、必要であれば、適当な補助剤を加えた後に、顆粒の混合物を錠剤や糖衣核に処理して得られる。適当な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールを含む、糖のような充填剤;トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)等のセルロース製剤がある。もし要すれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、あるいはアルギン酸、あるいはアルギン酸ナトリウムなどのその塩等の崩壊剤を加えてもよい。
糖衣核は適当な被覆剤で調製される。このために、濃縮糖溶液を使うことができ、これは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または2酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒やその混合物を含んでいてもよい。染料あるいは顔料も錠剤や糖衣錠に同定のために、あるいは活性化合物投与量の異なる組み合わせを特徴付けるために加えてもよい。
経口投与に用いることができる医薬製剤はゼラチンでできたプッシュ−フィットカプセル、ゼラチンやグリセロールやソルビトールなどの可塑剤でできた封印された軟カプセルが挙げられる。プッシュ−フィットカプセルは、乳酸等の充填剤や、デンプン等の結合剤、および/またはタルクやステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、あるいは時として安定剤と混合して、活性成分を包含する。軟カプセルでは、活性化合物は適当な液体、例えば脂肪酸、液体パラフィン、液体ポリエチレングリコール等に溶解あるいは懸濁させることができる。さらに、安定剤を加えてもよい。経口投与用のすべての製剤はその投与にふさわしい投与量にすべきである。
口腔内投与の組成物は、常法により製剤されたは錠剤あるいはトローチ剤の形となる。
吸入投与には、本発明のよれば用いる化合物は便宜上、加圧パックやネブライザー等、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、2酸化炭素あるいは他の適当なガス等の適当な推進ガスを用いた、エアゾールスプレー剤として投与される。
加圧されたエアゾールの場合は、投与単位は一定量を放出するバルブを用いることにより決定される。吸入器(インヘーラー、インサフレーター)に用いるゼラチンのカプセルやカートリッジは化合物と乳糖やデンプン等の適当な粉末基剤の粉末混合物を含有して製剤化される。化合物は非経口投与用に丸塊注射やあるいは継続点滴などに製剤化される。注射剤は、例えば、アンプル剤、多投与コンテナー等の単位投与形で、添加保存剤とともに製剤化される。組成物は、油性あるいは水性担体中の懸濁剤、溶液剤、乳化剤の形で製剤化され、懸濁化剤、安定化剤、および/あるいは分散化剤を含んでいてもよい。
非経口投与用医薬製剤としては活性化合物の水溶性の水性溶液が挙げられる。さらには、活性化合物の懸濁剤は適当な油性注射懸濁剤として調製してもよい。適当な脂肪親和性の溶媒あるいは賦形剤はごま油等の脂肪酸、オレイン酸エチルやトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、あるいはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁剤は、その懸濁剤の粘度を増加する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、あるいはデキストラン等を含んでいてもよい。懸濁剤はまた化合物の溶解性を上げてさらに高濃度溶液を可能にする適当な安定剤や試薬を含んでいても良い。
別法としては、活性成分は、使用前には、発熱物質が除去された殺菌された水等の適当な賦形剤と一緒に構成した、粉末状であってもよい。
化合物はまた、ココアバターや他のグリセリド等の、常用の坐剤基剤を含有した、坐剤や保持浣腸などの直腸用組成物に製剤することができる。
前述の製剤に加えて、化合物はまたデポ剤として調製できる。そのような長時間作用する製剤は埋め込み(implantation、例えば皮内あるいは筋肉内)により、あるいは筋肉内注射により投与できる。このようにして、例えば、化合物は適当な重合体あるいは疎水性物質(例えば、許容できる油内乳剤)やイオン交換樹脂と一緒に、あるいは難溶性誘導体、例えば難溶性塩と混合して調製できる。
本発明の疎水性化合物の適当な薬理学的担体はベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相からなる共溶媒系が挙げられる。共溶媒系はVPD共溶媒系である。VPDは3%(w/v)ベンジルアルコール、8%(w/v)非極性界面活性ポリソルベート80、および65%(w/v)ポリエチレングリコール300の無水エタノール溶液である。VPD共溶媒系(VPD:5W)は5%(w/v)デキストロース水溶液で1:1に希釈したVPDから成る。この共溶媒系は疎水性の化合物も良く溶解し、それ自体全身投与において低毒性を示す。当然、共溶媒系の割合は、その溶解性や毒性特質を破壊することなく、かなり変動し得る。さらには、共溶媒系成分の同定は変更する:例えば、他の低毒性非極性界面活性剤をポリソルベート80の代わりに用いることができ;ポリエチレングリコールの断片サイズは変更され得;他の生体適合性ポリマーで、例えばポリビニルピロリドンでポリエチレングリコールを置き換え;および他の糖や多糖類もデキストロースと置き換わることができる。
別法として、疎水性薬理活性化合物の他のデリバリーシステムも用いることができる。リポソームおよび乳剤は疎水性薬剤の輸送担体あるいは賦形剤としてよく知られている。一般的には過大な毒性を犠牲にするけれども、ある種の有機溶媒たとえばジメチルスルホキシドもまた使用できる。さらに、化合物は徐放性システム、たとえば治療薬剤を含有する固体疎水性ポリマーのセミ浸透性マトリックスを用いて投与することもできる。種々のタイプの徐放性物質が確立され、本分野の技術者によく知られている。徐放性カプセルは、その化学的性質に基づいて、化合物を数週間から100日以上まで間放出できる。医薬組成物はまた適当な固体あるいはゲル相担体あるいは賦形剤から成る。そのような担体あるいは賦形剤としては、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のチロキシン類縁体の投与にふさわしい他の製剤は本分野の技術者には自明であり、たとえば、レミントンズ ファーマシューティカル サイエンシス、マック パブリッシング カンパニー、イーストン、PA,最新版に開示のものがある。
有効投与量
本発明での使用に適した医薬組成物としては、活性成分を治療有効量含有している組成物が挙げられる。有効量の決定は、特にここに示す詳細な開示により、十分本分野の技術者の能力範囲である。
本発明の方法に用いるどの化合物にとっても、治療有効投与量は細胞培養物試験から初期に計算できる。たとえば、投与量は、細胞培養物で決定したI50(つまり、試験化合物の細胞培養物の50%致死濃度)または細胞培養物で決定したI100(つまり、試験化合物の細胞培養物の100%致死濃度)を包む循環濃度範囲が得られる動物モデルで公式化できる。そのような情報はヒトにおける有効投与量をさらに正確に決定するために用いることができる。初期投与量はまた本明細書記載のチロキシン類縁体の細胞培養物試験での有効性をビンクリスチンなどの既知の抗癌剤の有効性と比較して、公式化できる。この方法では、初期投与量は細胞培養物試験で得たチロキシン類縁体と既知の抗癌剤の有効濃度の割合に、その既知抗癌剤の有効投与量を掛けて得ることができる。例えば、チロキシン類縁体が細胞培養物試験でビンクリスチンより2倍有効であれば(つまり、I50 DIMEが同様の試験でI50 ビンクリスチンの半分と同等である)、そのチロキシン類縁体の初期有効投与量はビンクリスチンの既知投与量の2分の1となる。これらの初期ガイドラインを用いて、本分野の通常の技術者はヒトにおける有効投与量を決定できるであろう。
初期投与量はまたインビボデータからも見積もることができる。例えば、1日1回胃管栄養法での、1週間に5日、32日間250mg/kg投与により、ヌードマウスの乳癌異種移植片(MDA−MB−231)の増殖が有意に抑制された(実施例7.3参照)。実験により、DIMEが血清中約2−2.5時間の半減期(t1/2)を持ち、87%の生物学的利用能を投与毎に示すことが判明した(実施例7.2参照)。本分野の技術者であれば、このデータを基にしてヒトへの投与を容易に最適化できるであろう。
投与量およびその間隔は、治療効果を保持できるのに十分な活性化合物の血漿内濃度を維持するように、個々に調節する。通常の患者では、経口投与量は約50−2000mg/kg/日の範囲であり、一般的には、約250−1000mg/kg/日、好ましくは、約500−700mg/kg/日、最も好ましくは、約350−550mg/kg/日の間である。好ましくは、治療有効血清濃度は一日複数回の投与により得られるであろう。
局所投与あるいは選択的摂取の場合、薬剤の有効局所濃度は血漿濃度には関係がない。本分野の技術者であれば、過度の試験の必要なく治療有効局所投与量を最適化できるであろう。
投与される組成物の量は、もちろん、治療される対象、その体重、疾病の重篤度、投与方法および処方した内科医の判断に依存するであろう。
化学療法は腫瘍が検知されている間、あるいはそれが検知されなくなってからも、断続的に繰り返すことができる。さらに、その明らかな非毒性(下記説明)により、治療は単独で行われるか、あるいは他の抗癌剤あるいは他の薬剤、例えばAZT、抗炎症剤、抗生物質、ステロイド剤、ビタミン剤等と一緒になって行われる。
ここで述べるチロキシン類縁体と他の薬剤との起こり得る相乗作用は期待され、予想される。さらに、多数のチロキシン類縁体間の相乗作用もまた期待され、予想される。
毒性
ここで述べるチロキシン類縁体の毒性および治療有効性は標準的薬理学的手法により、細胞培養物あるいは実験動物において、例えば、LD50(総数の50%致死投与量)やED50(総数の50%治療有効投与量)を決定することにより、決定できる。毒性量と治療有効量の間の投与量割合は治療係数といい、LD50とED50の割合で表すことができる。高い治療係数を示す化合物が望ましい。これらの細胞培養物試験と動物実験から得たデータはヒトでの使用において非毒性である投与量範囲を公式化するために用いることができる。そのような化合物の投与量は、わずかな毒性あるいは全く毒性を示さないED50を含む循環濃度範囲内に好ましくは収まる。投与量は、用いる投与形および投与方法により、この範囲内で変化することができる。厳格な製剤、投与方法および投与量は個々の内科医により患者の状態を加味して選択され得る(例えば、フィングルら、1975、ザ ファーマコロジカル ベイシス オブ セラピュティックス、第1章、1頁)。
ここに開示のチロキシン類縁体を癌の治療に用いる利点のなかのひとつは、毒性が無いことである。たとえば、1g/kgを12−15日間毎日経口投与しても、ヌードマウスにおいて悪影響はなかった(実施例7.1参照)。DIMEの動脈内半減期(t1/2)は約2−2.5時間であるので、ここで開示のチロキシン類縁体の連日投与で悪影響が無いということは、予測できる。
前記の発明、下記の実施例は、本発明を実施例により例示するためのものであり、これらに限定されるものではない。
実施例1:化合物の合成
14個のチロキシン類縁体を合成し、精製し、特定した。各合成化合物の構造および選択的物性の概要は下記表1に示す。
Figure 0004188416
1.1 3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物1)
3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物1)を、ボロウスら、1949、チロキシンおよび関連物質の合成、第1部、チロシンおよびその誘導体の合成、およびチロキシンへの新経路、J. Chem. Soc. 1949(補足第1版):S185-S190に記載の方法により調製し、95%エタノールから再結晶した。融点:153−155℃。
質量分析:FAB、m/z(比存在度):510(M+、100)、479(4.5)、384(4.5)。M+ピークの高度分解データ:C151224として、理論値、509.882513;実測値、509.882960(偏差=−0.9ppm)。
1H NMRスペクトル(DMSO−d6)(TMSに対するδ(ppm)値):3.719(3H、一重線)、3.876(3H、一重線)、6.693(2H、二重線、J=9.45Hzおよび精巧な分裂)、6.845(2H、二重線、H=9.36Hzおよび精巧な分裂)、8.390(2H、一重線)
1.2 3,5−ジヨード−4−(4’−エトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物2)
3,5−ジヨード−4−(4’−エトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物2)をボロウスら、1949、チロキシンおよび関連物質の合成、第1部、チロシンおよびその誘導体の合成、およびチロキシンへの新経路、J. Chem. Soc. 1949(補足第1版):S185-S190に記載の一般的方法により調製した。
1.2.1 3,5−ジニトロ−4−(4’−エトキシフェノキシ)安息香酸メチル
常温下50mlフラスコ中で、4−エトキシ−フェノール(アルドリッチ)1492mg(10.8ミリモル)を2.0M水酸化カリウム水溶液5.50mlと攪拌し、4−エトキシフェノレートカリウム塩を得た。4−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸メチル(ウルマン、1909、Annalen der Chemie, 366:92-93:購入元:スペクトラム ケミカル カンパニー、ガーデナ、CA)2606mg(10.0ミリモル)を加え、混合物を還流下で1時間加熱し、氷浴中で冷却し、ゴム状塊の生成物が沈澱した。冷1.0M水酸化カリウム水溶液20mlを加え、続けて冷却して、生成物を固化させた。黄橙色の固体を潰し、吸引濾過にて集め、水洗後乾燥した。得られた物質3.08gを熱95%エタノール50mlで再結晶して3,5−ジニトロ−4−(4’−エトキシフェノキシ)安息香酸メチル2.56g(70.6%収率)を得た。融点:101−103℃。
質量分析(EI):M+ピークの高度分解データ:C161428として、理論値、362.075016;実測値、362.074793(偏差=−0.6ppm)。
1.2.2 3,5−ジヨード−4−(4’−エトキシフェノキシ)安息香酸メチル
3,5−ジニトロ−4−(4’−エトキシフェノキシ)安息香酸メチルの一部724.4mg(2.00ミリモル)を氷酢酸50mlに溶解し、10%パラジウム炭素触媒(アルドリッチ)200mgとパールモデル4561ミニ反応器中で混合し、水素ガス(43psi)を充填し、反応完了による圧力降下(6分、最終16psi)まで、素早く常温で攪拌した。混合物を直ちにセライトベットで濾過して、触媒を除き、ロータリーエバポレーター内で酢酸溶媒を除去して、粗3,5−ジアミン誘導体の褐色の油性残渣を得た。粗ジアミンを氷酢酸6.0mlに溶解し、3分間かけて攪拌下氷冷した硝酸ナトリウム345mg(5ミリモル)の濃硫酸3.5ml溶液に添加してテトラ化した。氷浴温度で30分間攪拌後、粘稠性混合物を高速攪拌下の沃化カリウム3.0gの蒸留水2.5ml溶液に常温でピペットで滴下した。暗色の混合物を30分間攪拌し、最後に70℃まで5分間加熱した。混合物を酢酸エチル100mlに注ぎ、水50mlを加えた。2相に分かれた混合物を分液ロートに移し、さらに酢酸エチル50mlと水50mlを追加し、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機(酢酸エチル)層を水各50mlで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチルを蒸留して除き、暗色タール状の残渣を得た。
この粗生成物をアセトン8mlに溶解し、調製薄層クロマトグラフィープレート(5枚、ワットマン、シリカゲル、1000μm層、20cmX20cm、蛍光指示薬)で精製した。プレートをn−ヘキサン:酢酸エチル:酢酸(3:1:0.8、v/v/v)で展開した。紫外線光下で目に見える生成物帯(Rf=0.84)を各プレートから集め、一緒にし、シリカゲル(焼結ガラスロート内にある)から酢酸エチルで溶出した(3X50ml)。酢酸エチルを除いて、オフホワイトの固体を得、これを95%エタノール10mlから再結晶した。収率:白色結晶の2生成を集めて275mg(ジニトロ前駆体2ミリモルを基にして26%)。融点:123−125℃。
質量分析:EI、m/z(比存在度):524(M+、100)、496(16.7)、310(9.1)、242(6.1)、211(7.6)、155(6.1)、M+ピークの高度分解データ:C161424として、理論値、523.898163;実測値、523.898737(偏差=−1.1ppm)。
1H NMRスペクトル(DMSO−d6)(TMSに対するδ(ppm)値):1.303(3H、三重線、J=6.94Hz)、3.877(3H、一重線)、3.971(2H、四重線、J=6.95Hz)、6.678(2H、二重線、J=8.98Hzおよび精巧な分裂)、6.879(2H、二重線、H=9.06Hzおよび精巧な分裂)、8.389(2H、一重線)
1.3 3,5−ジヨード−4−(4’−n−プロポキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物3)
3,5−ジヨード−4−(4’−n−プロポキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物3)を実施例1.2と同様にして調製した。ジニトロ前駆体は4−n−プロポキシ−フェノレートカリウム塩(市販の4−n−プロポキシフェノールより調製)水溶液を4−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸メチルで処理して合成した。ジニトロ生成物をH2/Pd(C)で還元して、ジアミン誘導体とし、それをついでNaNO2/H2SO4でテトラ化し、沃化カリウムとの反応によりジヨード生成物に変換した(サンドマイヤー反応)。精製を調製TLCで行い、結晶化した。
1.4 3,5−ジヨード−4−(4’−n−ブトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物4)
3,5−ジヨード−4−(4’−n−ブトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物4)を実施例1.2と同様にして調製した。ジニトロ前駆体を4−n−ブトキシフェノレートカリウム塩(市販の4−n−ブトキシフェノールより調製)水溶液を4−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸メチルで処理して合成した。ジニトロ生成物をH2/Pd(C)で還元して、ジアミン誘導体とし、それをついでNaNO2/H2SO4でテトラ化し、沃化カリウムとの反応によりジヨード生成物に変換した(サンドメイヤー反応)。精製を調製TLCで行い、結晶化した。
1.5 3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸エチル(化合物5)
3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸エチル(化合物5)を3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)ベンゾイルクロリドを経由して合成した。後者はボロウスら、1949、J. Chem. Soc. 1949:S185-S190に記載されている。このように、10mlフラスコ中で、3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸99.2mg(0.200ミリモル)を3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)ベンゾイルクロリドに変換した。過剰の塩化チオニルを真空除去後、無水エタノール5.0mlを攪拌下加え、混合物を5分間70℃まで加熱した。過剰のエタノールを除き、乾燥残渣を熱95%エタノール4.0mlに溶解し、得られたエステル生成物を冷蔵庫(3℃)内で結晶化した。収率:淡黄褐色結晶55.8mg(53%)。融点:96−98℃。
質量分析(EI):M+ピークの高度分解データ:C161424として、理論値、523.898163;実測値、523.898202(偏差=−0.1ppm)。
1H NMRスペクトル(DMSO−d6)(TMSに対するδ(ppm)値):1.336(3H、三重線、J=7.19Hz)、3.717(3H、一重線)、4.336(2H、四重線、J=7.06Hz)、6.695(2H、二重線、J=9.34Hzおよび精巧な分裂)、6.895(2H、二重線、H=9.20および精巧な分裂)、8.389(2H、一重線)
1.6 3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸(化合物6)
3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸(化合物6)をボロウスら、1949、J. Chem. Soc. 1949:S185-S190に記載の方法に従って合成した。
1.7 3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)ベンズアミド(化合物7)
3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)ベンズアミド(化合物7)を、化合物1をアミド化して合成した。125mlフラスコ内で、3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物1)100mg(0.196ミリモル)を無水メタノール60mlに溶解した。無水アンモニアガスを溶液中に緩和な速度で常温で5分間吹き込んだ。栓つきフラスコ内で1時間静置後、アンモニアガス処理を繰り返し(5分間)、ついで混合物を48時間栓つきフラスコ内で静置した。メタノール/アンモニアをロータリーエバポレーターで除き、乾燥残渣をメタノール:水(7:3v/v)30mlに溶解し、冷蔵庫(3℃)内で結晶化した。収率:淡黄褐色の結晶58.3mg(60%収率)。融点:207−209℃。
質量分析(FAB):M+ピークの高度分解データ:C14112NO3として、理論値、494.882847;実測値、494.881880(偏差=2.0ppm)。
1H NMRスペクトル(DMSO−d6)(TMSに対するδ(ppm)値):3.716(3H、一重線)、6.682(2H、二重線、J=8.93Hz)、6.895(2H、二重線、H=8.99Hz)、7.528(1H、一重線)、8.113(1H、一重線)、8.402(2H、一重線)
1.8 3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)−N−メチルベンズアミド(化合物8)
3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)−N−メチルベンズアミド(化合物8)を3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)ベンゾイルクロリドを経由して合成した(実施例1.5参照)。酸クロリドは過剰のメチルアミンとテトラヒドロフラン中常温で反応させ(1時間)、メチルアミン−塩酸塩沈澱を濾過して除き、溶媒を留去して、生成物を95%エタノールで結晶化した。
1.9 3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)−N,N−ジメチルベンズアミド(化合物9)
3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)−N,N−ジメチルベンズアミド(化合物9)を3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)ベンゾイルクロリドを経由して合成した(実施例1.5参照)。酸クロリドは過剰のメチルアミンとテトラヒドロフラン中常温で反応させ(1時間)、メチルアミン−塩酸塩沈澱を濾過して除き、溶媒を留去して、生成物を無水エタノールで結晶化した。
1.10 3,5−ジヨード−4−(4’−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物10)
3,5−ジヨード−4−(4’−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物10)を実施例1.2と同様にして合成した。ジニトロ前駆体は、ボロウスら、1949、チロキシン関連物質の合成、第2部、ジニトロジフェニルエーテル類の合成、J. Chem. Soc. 1949(補足第1版):S190-S199に記載のように、4−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸塩をヒドロキノンのピリジン溶液と反応させて合成した。
1.11 3,5−ジヨード−4−フェノキシ安息香酸メチル(化合物11)
3,5−ジヨード−4−フェノキシ安息香酸メチル(化合物11)を実施例1.2と同様にして合成した。ジニトロ前駆体は、フェノレートカリウム塩水溶液(市販のフェノールから調製)を4−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸メチルと反応させて合成した。ジニトロ生成物はH2/Pd(C)で還元して、ジアミン誘導体とし、それをNaNO2/H2SO4でテトラ化し、沃化カリウムと反応させてジヨード生成物に変換した(サンドマイヤー反応)。調製TLCで精製して、結晶化した。
1.12 3,5−ジヨード−4−(4’−ヨードフェノキシ)安息香酸メチル(化合物12)
3,5−ジヨード−4−(4’−ヨードフェノキシ)安息香酸メチル(化合物12)を実施例1.2と同様にして合成した。ジニトロ前駆体のヨード置換基はそのもの自体がH2/Pd(C)により還元に不安定なので、ヨード−ジニトロ前駆体は鉄粉で酢酸/95%エタノール中でヨード−ジアミンに還元した(例えば、ゲミルら、1956、3−ヨード−、3,3’−ジヨード−および3,3’−ジヨード−5−ブロモチロキシン、J. Am. Chem. Soc. 78:2434-2436参照)。ヨード−ジアミン体はついでテトラ化し、サンドマイヤー反応を用いてトリヨード生成物に変換した。調製TLCで精製後、生成物(融点:139−141℃)をエタノールから結晶化した。
質量分析(EI):M+ピークの高度分解データ:C14933として、理論値、605.768600;実測値、605.767839(偏差=1.3ppm)。
1H NMRスペクトル(DMSO−d6)(TMSに対するδ(ppm)値):3.879(3H、一重線)、6.628(2H、二重線、J=8.97Hzおよび精巧な分裂)、7.670(2H、二重線、J=9.12Hzおよび精巧な分裂)、8.396(2H、一重線)
1.13 3,5−ジヨード−4−(3’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物13)
3,5−ジヨード−4−(3’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物13)を実施例1.2と同様にして合成した。ジニトロ前駆体は、3−メトキシフェノレートカリウム塩(市販の3−メトキシフェノールから調製)水溶液を4−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸メチルで処理して合成した。ジニトロ生成物をH2/Pd(C)で還元して、ジアミン誘導体とし、それをついでNaNO2/H2SO4でテトラ化し、沃化カリウムと反応させてジヨード生成物に変換した(サンドマイヤー反応)。調製TLCで精製して、結晶化した。
1.14 3,5−ジヨード−4−(2’−クロロ−4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物14)
3,5−ジヨード−4−(2’−クロロ−4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(化合物14)を実施例1.2に記載した一般的方法により合成した。しかし、ジニトロ前駆体の還元は別法により行った。
1.14.1 3,5−ジニトロ−4−(2’−クロロ−4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル
ジニトロ前駆体は、実施例1.2.1の記載に従って、2−クロロ−4−メトキシフェノール(アルドリッチ ケミカル カンパニー、ミルウォーキー、WI)を2−クロロ−4−メトキシフェノレート酸カリウム塩として、4−クロロ−3,5−ジニトロ安息香酸メチルと反応させて合成した。3,5−ジニトロ−4−(2’−クロロ−4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル生成物(66%収率)をエタノールから結晶化して橙色の結晶を得た。融点:116−119℃。
質量分析(EI):M+ピークの高度分解データ:C1511ClN28として、理論値、382.020393;実測値、382.020187(偏差=0.5ppm)。
1.14.2 3,5−ジヨード−4−(2’−クロロ−4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル
ジニトロ前駆体の2’−クロロ置換基はH2/Pd(C)による還元に不安定なので、前駆体は、実施例1.12と同様に、鉄粉を用いて酢酸/95%エタノール中で2’−クロロジアミンに還元した。つまり、250mlフラスコ内で、3,5−ジニトロ−4−(2’−クロロ−4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル765.5mg(2.00ミリモル)を氷酢酸35mlと95%エタノール35mlに溶解し、溶液を70℃まで加熱し、鉄粉2.00gを加えた。混合物を温浴(70℃)中で激しく渦巻き攪拌した。3分間渦巻攪拌後、混合物は褐色となった。渦巻攪拌を70℃で35分間継続した。混合物を分液ロートに移し、水250mlと酢酸エチル250mlを加え、生成物を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル相を静置(3時間)して水相から分離した。抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して、酢酸エチルをロータリーエバポレーターで除いて粗3,5−ジアミノ生成物を固化して得た。
この粗ジアミノ生成物を直ちに氷酢酸6.0mlに溶解し、テトラ化し、サンドマイヤー反応を経由して3,5−ジヨード−4−(2’−クロロ−4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチルに、実施例1.2と同様にして、変換した。調製薄層クロマトグラフィー(Rf=0.70)で実施例1.2の記載のとおり精製し、精製物を95%エタノールで結晶化してオフホワイト結晶250.8mg(収率:23%)を得た。融点:132−134℃。
質量分析:EI、m/z(比存在度):546(34)、545(16)、544(M+、100)、418(6)、382(6)。M+ピークの高度分解データ:C1511ClI24として、理論値、543.843541;実測値、543.843424(偏差=0.2ppm)。
1H NMRスペクトル(DMSO−d6)(TMSに対するδ(ppm)値):3.747(3H、一重線)、3.881(3H、一重線)、6.328(1H、二重線、J=8.97Hz)、6.780(1H、二重線の二重線、J=9.10HzおよびJ=2.95Hz)、7.195(1H、二重線、J=3.02Hz)、8.400(2H、一重線)
1.14 他の化合物
ここで述べる追加のチロキシン類縁体は上記合成法を用い、適当な出発物質から合成でき、これは有機化学分野の技術者に容易に自明である。追加のガイドラインが文献に見つけられ、例えば、特にボロウスら、1949、チロキシンおよび関連物質の合成、第1部、チロシンおよびその誘導体の合成、およびチロキシンへの新経路、J. Chem. Soc. 1949(補足第1版):S185-S190;ボロウスら、1949、チロキシンおよび関連物質の合成、第2部、ジニトロジフェニルエーテル類の合成、J. Chem. Soc. 1949(補足第1版):S190-S199;クレイトンら、1951、チロキシンおよび関連物質の合成、第3部、あるハロゲノ−およびニトロ−ジフェニルエーテル類の合成、J. Chem. Soc. 1951:2467-2473;ゲミルら、1956、3−ヨード−、3,3’−ジヨード−および3,3’−ジヨード−5−ブロモチロキシン、J. Am. Chem. Soc. 78:2434-2436;メルザーら、1957、チロキシン類縁体、J. Org. Chem. 22:1577-1581;クロウダーら、1958、ビスベンジルイソキノリノン類、第2部、5−(2−アミノエチル)−4’−カルボキシ−2,3−ジメトキシジフェニルエーテルの合成、J. Chem. Soc. 1958:2142-2149;ジョルゲンセン、1978、甲状腺ホルモンおよび類縁体、I.合成、物性、および理論的計算、ホルモンプロテインおよびペプチド、第VI巻、57−105頁、C.H.リーら、アカデミック プレス、ニューヨーク(およびその中で引用されている参考文献);ジョルゲンセン、1978、甲状腺ホルモンおよび類縁体、II.構造−活性関係、ホルモンプロテインおよびペプチド、第VI巻、107−204頁、C.H.リーら、アカデミック プレス、ニューヨークがある。
実施例2: 精製タンパクホスファターゼ2Aの活性化
表1に同定する通り、化合物1および3をタンパクホスホターゼ2A活性化について試験した。
2.1 32 P-標識ヒストンH1基質の製造
ヒストンH1を標準プロトコールに従い、タンパクキナーゼC(Upstateバイオテクノロジー社、レイクプラシド、NY)を用いて、容量100μL中ホスホリル化した。別方法として、ヒストンH1をp13-Sucアガロース技術(SmytheおよびNewport、1992年、“Coupling of Mitosis to the Complection of S Phase in Xenopus Occurs via Modulation of the Tyrosine Kinase that Phosphorylates p34cdc2”Cell 68:787-797)を用いて単離後、4-8期の急速に増殖したMytilus Edulis胚から精製したp34cdc2キナーゼでホスホリル化した。
2.2 ホスファターゼアッセイ
精製タンパクホスファターゼ2A(125ng;Upstate Biotechnology社、レイクプラシド、NY;ウツイ等、1983年、J.Biol.Chem. 258:10455-10463)をチロキシン類縁体(50μM)で緩衝液(20mMモプス(Mops)もしくはトリス(Tris)、pH7.5、1mM MgCl2、60μMβ−メルカプトエタノール)中、10分間、23℃でプレインキュベートした。反応量は総計20μLであった。32P-標識ヒストンH1基質(10μg、105cpm)を加え、脱ホスホリル化反応を5分間、23℃で進行させ、その後レムリ(Laemmli)緩衝液(2μL)を加えることで反応を停止した。未処理のタンパクホスファターゼ2A(125ng)を含有した同一の反応を、対照実験として行なった。
ホスホリル化および脱ホスホリル化ヒストンH1をゲル電気泳動(12% SDS-PAGE)で分離し、該ホスホリル化ヒストンH1含有バンドを切り出して32P活性をシンチレーションカウンターでアッセイした。
2.3 結果
5分内の脱ホスホリル化の速度は、該脱ホスホリル化反応の初期速度(Vinit)の指標となる。化合物1および3のVinitを下記表2に挙げる。
Figure 0004188416
該結果は、DIME(化合物1)とのタンパクホスファターゼ2Aの短時間(10分)のプレインキュベーションはヒストンH1脱ホスホリル化のVinitの2倍以上であると示している。4’-プロポキシ同族体はタンパクホスファターゼ2Aを活性化しない。該データはDIME薬作用発生団の構造の末端における些細な変化(例えばメトキシとメチルエステル基)でさえも活性に重大な影響を及ぼすことを示唆している。該データはインビトロでの悪性細胞アッセイにおいて観察されるタンパクホスファターゼ2Aの活性(実施例3を参照)およびマウスで観察されるインビボの抗癌効力(実施例4および6を参照)と強い相関がある。
実施例3: 腫瘍細胞培養におけるタンパクホスファターゼ2Aの活性
化合物1〜13をインビトロで悪性腫瘍細胞培養におけるタンパクホスファターゼ2A活性について、バウアー(Bauer)ら(Bauer et al, 1996、“Modification of Growth Related Enzymatic Pathways and Apparent Loss of Tumorigenicity of a Ras-Transformed Bovine Endothelial Cell Line by Treatment with 5-Iodo-6-Amino-1,2-Benzopyrone(INH2BP)”, International J. of Oncology 8:239-252)に記載のプロトコールにしたがって試験を行なった。DIME(化合物1)による活性の結果を表3にまとめる。他の全ての化合物は効果がなかった。
Figure 0004188416
該結果は、DIME(50μM)はタンパクホスファターゼ2AをE-ras形質転換ウシ内皮細胞およびDU-145細胞の両方の場合において、少なくとも二倍活性化することを示している。
実施例4: ヒト癌細胞における細胞破壊作用
化合物1〜13の細胞破壊作用をインビトロで七個のヒト癌セルラインについて試験を行なった。DIME(化合物1)は活性が最大であり、エトキシ誘導体(化合物2)の場合はその最大活性の25-30%であった。
4.1 実験プロトコール
七個のヒトセルラインをアメリカン・ティシュウ・カルチュア・コレクション(American Tissue Culture Collection、Rockville、MD)より得、推奨されている成育培地で維持した。該細胞を容器(2cm2)内に密度:2x104細胞/cm2で接種した。接種と同時に、様々な濃度の化合物1〜13をその培地に加えた。
培養を72時間、37℃(5% CO2雰囲気下)でインキュベートした。インキュベート後、細胞をトリプシンで剥離し、血球計数器で計数した。
4.2 結果
DIME(化合物1)は活性が最大であり、エトキシ類縁体(化合物2)の場合はその最大活性の25-30%であった。試験を行なった他の全ての類縁体(化合物3〜13)は完全に不活性であった。
DIME(化合物1)の実験結果を以下の表4にまとめた。対照と比較して、I100とは視覚認識可能な細胞が残存していないときの濃度を;I50とは視覚認識可能な細胞が50%残存しているときの濃度を意味する。
Figure 0004188416
実施例5: 腫瘍細胞の成長の抑制
化合物1および14について、MDA-MD-231癌細胞の成長における抑制について試験を行なった。化合物14はDIME(化合物1)と比較して、その約25%の阻害活性を示した。
5.1 実験プロトコール
MDA-MD-231ヒト癌細胞をアメリカン・ティシュウ・カルチュア・コレクションから得、推奨される成育培地で維持した。該細胞を様々な濃度の化合物1および14の存在下、三日間、37℃で成長させた。
5.2 結果
実験結果を以下の表5にまとめた。
Figure 0004188416
DIMEの2’-クロロ類縁体(化合物14)はDIME(化合物1)と比較して、その約25%の阻害活性を示した。
実施例6: E-ras形質転換ウシ内皮細胞における腫瘍形成性の欠失
DIME(化合物1)の形態学上の作用を、高腫瘍形成性のE-ras形質転換ウシ内皮細胞系において試験を行なった。
6.1 実験プロトコール
E-ras形質転換ウシ内皮細胞(Bauer等、1996、Intl. J. Oncology 8:239-252)をDIME(10μM)に三日間被曝した。該DIME処理した細胞(105もしくは106細胞/100μL)をヌードマウスに皮下注射し、続いて腫瘍を25日間進行させた。
6.2 結果
図1に示す通り、E-ras形質転換ウシ内皮細胞をDIME(10μM)へ三日間被曝させると、腫瘍形成性の損失と同時に、大量の小核化(micronucleation)を誘引する。図2に例示する通り、非処理細胞に被曝させた動物で、腫瘍が成長し(上部の曲線)、25日で腫瘍により死亡した。注射前にDIME(10μM)に被曝させた細胞はほとんど完全に腫瘍形成が止った(下部の曲線)。インビボで薬治療を行なわなくとも、3ヶ月後でさえ、腫瘍は現れなかった。
実施例7: インビボ実験
以下の実施例は、マウスにヒト乳癌異種移植片を行った場合の、DIMEの無毒性、バイオアベイラビリティー、血清半減期(t1/2)およびインビボ効力を示す。
7.1 毒性
十匹の裸マウスに14C-標識DIME(化合物1)を1日経口投与量(1.0g/kg、0.1mL/コーン油)にて12〜15日間投与した。該処理期間中、いずれのマウスにおいても有害な影響は観察されなかった。
7.2 血清半減期(t 1/2 )およびバイオアベイラビリティー
マウスに14C-標識DIME(化合物1、126mg/kg)を経口的に服用させた。服用後、15および30分並びに1、2、4、6、8および24時間で採血した。血液の一部(50μL)を液体シンチレーションカウンターでアッセイし、データをミクログラム当量/mLとして表した。血中濃度のデータをRSTRIP方法(Micromath、ソルトレイク市、UT)によって分析した。
比較マウス群には、14C-標識DIME(24.5mg/kg)を静脈内服用させ、10、20および30分並びに1、2、4、6および8時間に採血した。
7.2.1 結果
14C−標識DIME(mg当量/mL)の血清レベルを図3に示す。血中濃度-時間曲線下の領域は経口経路(データは丸で表す)については665.28μg-時間/mL、並びに静脈内経路(データは四角で表す)については156μg-時間/mLであった。経口投与したDMIEのバイオアベイラビリティーを常法(比率×服用量)を用いて該データより計算したところ83%であった。DIMEの半減期(t1/2)は約2〜2.5時間であった。
7.3 インビボ効力
無胸腺(athymic)マウス(例えば、ヌードマウス)におけるヒト腫瘍の異種移植片としての成長能により、ヒトの腫瘍の治療における生理学的応答を研究するためのインビボモデルとして利用できる。無胸腺マウスへヒトの腫瘍を異種移植するのに最初に成功(RygaardおよびPovlsen、1969年、Acta Pathol. Microbial Scand. 77:758-760)して以来、多くの異なるヒト腫瘍セルライン(例えば、乳、肺、泌尿生殖器、消化管、頭および首、グリア芽腫、骨および悪性黒色腫)が、ヌードマウスへの移植および成長に成功してきた。ヒト乳腫瘍セルライン、例えばMCF-7、ZR75-1およびMDA-MB-231はヌードマウスでの皮下移植として確立している(Warri等、1991年、Intl. J. Cancer 49:616-23;Ozzello & Sordat、1980年、“Behaviour of Tumors Produced by Transplantation of Human Mammary Cell Lines in Athymic Nude Mice”Eur. J. Cancer 16:553-559;Osbourne等、1985年、Cancer Res. 45:584-590;Siebert等、1983年、Cancer Res. 43:2223-2239)。
本実験で、ヌードマウスでのMDA-MB-231異種移植片の抑制について行なう。
7.3.1 実験プロトコール
MDA-MD-231(ヒト乳癌)細胞をアメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション(American Type Culture Collection;Rockville、MD)から得、推奨される成育培地で維持した。20匹のヌードマウスそれぞれに、MDA-MB-231細胞(106細胞/100μL)を皮下接種した。十匹からなる一群には、DIMEを1日1回摂食(250mg/kg、10mL/kg/コーン油)させるによって、5日/週、計32日間投与した。他の群(対照)のマウス10匹には、同一の服用スケジュールにしたがって、ベヒクルだけを投与した。腫瘍をベルニエカリパス(Vernier caliper;副尺)を用いて週2回、測定し、毎回、平均腫瘍容積を求めた。
非対、両側t-検定(unpaired two-tailed t-test)を用いて両群の比較を行ない、その結果を分散分析にて分析した。
7.3.2 結果
処理および未処理のマウスについて、接種後、14、21、28および32日での腫瘍質量を表6にまとめた。
Figure 0004188416
該データは、最適化していない処理方式の下でさえも、DIMEが悪性腫瘍の成長の減少に大きな影響を及ぼすことを示している。
7.4 インビボ効力
本明細書記載の他のチロキシン類縁体について、上記に記載の通りの試験を行なった。これらのアッセイによれば、これらの類縁体が活性を示すことが期待される。
実施例8: 処方
以下の実施例は、本発明のチロキシン類縁体を哺乳動物、特にヒトの患者に投与するための典型的な処方を例示するものであるが、これらに限定されるものではない。該実施例はDIMEの処方例で示すが、本明細書に記載のチロキシン類縁体のいずれも以下の実施例で付与されると同様に処方することができると理解すべきである。
8.1 錠剤の処方
活性成分(60mg)を含有する各錠剤を以下の通りに調製される。
Figure 0004188416
活性成分、スターチおよびセルロースを45番メッシュの米国シーブ(U.S.sieve)のふるいにかけ、徹底的に混合する。ポリビニルピロリドンの溶液を生じた粉末と混合し、次いで14番メッシュの米国シーブのふるいにかける。該顆粒を50〜60℃で乾燥し、18番メッシュの米国シーブのふるいにかける。次いで、前もって60番メッシュの米国シーブのふるいにかけた、カルボキシメチルスターチナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを該顆粒に加え、混合後、打錠機で打錠して、各150mg重量の錠剤を得る。
錠剤は湿式顆粒、続いて圧縮により、表1に載せた成分から製造可能である。
8.2 ゼラチンカプセル剤
硬(hard)ゼラチンカプセル剤を、以下の成分を用いて製造する。
Figure 0004188416
上記の成分を混合し、460mg含量にて硬ゼラチンカプセル剤に充てんした。
8.3 エアゾル用溶液
以下の成分を含有したエアゾル用溶液を製造する。
Figure 0004188416
活性化合物をエタノールと混合し、該混合物をプロペラント22の一部に加え、−30℃に冷却、充てん装置に移す。次いで、その必要量をステンレス製容器に加え、残りのプロペラントで希釈する。次いで、その容器にバルブユニットを装着する。
8.4 坐剤
活性成分(225mg)を含有した各坐剤を以下の通りにして調剤する。
Figure 0004188416
該活性成分を60番メッシュの米国シーブのふるいにかけ、前もって必要最小熱にて溶融させた飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁する。次いで、該混合物を2g容量の坐薬型に注ぎ、冷却する。
8.5 懸濁液
5mL用量当り薬物50mgを含む懸濁液を以下の通りにして調剤する。
Figure 0004188416
該活性成分を45番メッシュの米国シーブのふるいにかけ、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびシロップと混合して円滑なペーストを調製する。安息香酸溶液、フレーバーおよび数種の発色剤をいくらかの水で希釈し、攪拌しながら加える。次いで、十分な水を加えて所定の容量にする。
実施例9:
6-アミノ-1,2-ベンゾピレンの5位におけるH原子をヨウ素原子に置換することは、本化合物のpADPRT抑制能、抗HIV活性および抗腫瘍作用を大いに増大させる。Cole等、1991年、“Inhibition of HIV-1 IIIb Replication in AA-2 Cells in Culture by Two Ligands of Poly(ADP-Ribose)Polymerase:6-Amino-1,2-benzopyrone and 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone”Biochem Biophys. Res. Commun. 180:504-514;Bauer等、1996年、“Modification of Growth Related Enzymatic Pathways and Apparent Loss of Tumorigenicity of a ras-Transformed Bovine Endothelial Cell Line by Treatment with 5-iodo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP)”Intl. J. Oncol. 8:239-252。ある芳香分子におけるヨウ素置換の数の増減が分子の薬理作用学上の性質の修飾を可能とするかどうかといった、疑問が持ちあがる。この疑問へのアプローチとして、我々は甲状腺ホルモン類縁体等の公知のジヨード化合物の細胞作用を初めて分析した。
甲状腺ホルモン類縁体の代謝または変態学上の効果というものはその化学構造に依存することが確立されている。Jorgensen, E.、1978年、“Thyroid Hormones and Analogs. II. Structure-Activity Relationships:In Hormone Protein and Peptides”VI巻、Li CH(ed.). Academic Press,ニューヨーク、p.108-203。ホルモン的に不活性な3,5-ジヨード-4-(4-メトキシフェノキシ)安息香酸メチル(DIME)は1949年に最初に製造された(Borrows等、1949年、“The Synthesis of thyroxine and Related Substances. Part I. The Preparation of Tyrosine and Some of its Derivatives, and a New Route to Thyroxine”、J. Chem. Soc. Suppl.発行番号1:S185-S190)が、この物質の重要な代謝または変態学上の作用は報告されていない。Money等、1958、“The Effect of Change in Chemical Structure of Some Thyroxine Analogues on the Metamorphosis of Rana pipiens Tadpoles”、Endocrinology 63:20-28;Stasili等、1959年、“Antigoitrogenic and Calorigenic Activities of Thyroxine Analogues in Rats”、Endocrinology 64:62-82;Money等、1959年、“The Effect of Various Thyroxine Analogues on Suppression of 131I Uptake by the Rat Thyroid”、Endocrinology 64:123-125;クマオカ等、1960年、“The Effect of Thyroxine Analogues on a Transplantable Mouse Pituitary Tumor”、Endocrinology 66:32-38;Grinberg等、1962年、“Studies with Mouse Pituitary Thyrotropic Tumors. V. Effect of Various Thyroxine Analogs on Growth and Secretion”、Cancer Res, 22:835-841。本発明者らの初期の研究においては、DIMEは細胞培養およびインビボの両方において、強力な腫瘍破壊薬であることが分かっている。Kun等、1996年、“Induction of Tumor Apotosis by methyl-3,5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)”、Abstract番号102、Int. J. Oncol. 9:補遺829;Zhen.等、1997年、“Induction of Metaphase Block and Endoreduplication in Human Cancer Cells by 3,5-diiodo-4(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)、Abstract,Amer.Assoc.Cancer Res., Symposium on Cell Signaling and Cancer Synthesis and testing of structual homologs and analogs of DIME、これらは側鎖の置換基が異なるだけであり、米国特許出願番号08/655,267、1996年、6月4日出願、“Method of Treating Malignant Tumors with Thyroxine Analogs having No Significant Hormonal Activity”)には、DIMEの腫瘍破壊性活性に対する構造的な特異性が描写されている。
その後の研究ではDIMEとその類縁体17との構造−作用の比較を示しており、細胞レベルでのDIME自身の腫瘍破壊性作用を記載している。DIMEでの薬物代謝および細胞採り込みアッセイはインビボでの動物に対して毒性がないことの理由を示している。DIMEの作用の形式をサイトメトリー分析および生化学機構を逐次研究していく。
表1の化合物1-4および10-18の製造における置換フェノールは、アルドリッチ ケミカル社(Milwaukee、WI、USA)から得た。4-クロロ-3,5-ジニトロ安息香酸メチル、Ullmann F、1909年、“die 4-chlor-3,5-dinitrobenzoesaure”Annalen der Chemie 36:92-93;は4-クロロ-3,5-ジニトロ安息香酸(アルドリッチ)から製造した。
9.1 一般製造
各置換フェノール(フェノールカリウム塩として)を4-クロロ-3,5-ジニトロ安息香酸メチルと反応させ、4-クロロ-3,5-ジニトロ-4-(置換フェノキシ)安息香酸メチルを得、次いで相当する3,5-ジアミンに還元し、サンドマイヤー(Sandmeyer)反応により目的の3,5-ジヨード化合物に変換した。Kun等、1996年、“Induction of Tumor Apotosis by methyl-3,5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)”、Abstract番号102、Int. J. Oncol. 9:補遺829。一般に、還元反応は触媒的水素化反応によるものであるが、R1もしくはR3がハロゲン原子(化合物12および14)の場合、還元反応は脱ハロゲン化反応を避けるために、酢酸/エタノール中、鉄粉により行なった。Kun等、1996年、“Induction of Tumor Apotosis by Methyl-3,5-Diiodo-4-(4’-Methoxyphenoxy)Benzoate(DIME)”、Abstract番号102、Int. J. Oncol. 9:補遺829。精製は、一般に、プレパラティブ薄層クロマトグラフィーおよび結晶化で行なわれる。表7中のR2がメトキシ以外の化合物の場合(つまり、化合物5〜9)、更なる製造反応を要する。化合物6は化合物1の塩基による加水分解で製造される。(Borrows等、1949年、“The Synthesis of Tyroxine and Related Substances. Part.I. The Preparation of Tyrosine and some of its Derivatives, and a New Route to Thyroxine”、J. Chem. Soc.補遺.発行番号1:S185-S190)。化合物5、8および9は6の酸クロリド(Borrows等、1949年、“The Synthesis of Thyroxine and Related Substances. Part.I. The Preparation of Tyrosine and some of its Derivatives, and a New Route to Thyroxine”、J. Chem. Soc.補遺.発行番号1:S185-S190)を、それぞれ無水エタノール、メチルアミンおよびジメチルアミンとを反応させて製造される。Kun等、1996年、“Induction of Tumor Apotosis by methyl-3,5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)Benzoate(DIME)”、Abstract番号102、Int. J. Oncol. 9:補遺829。化合物7は、無水メタノール中、1とアンモニアを反応させることにより得た。公知のカルボン酸6を除いて、全ての化合物を融点および高分解能質量分析(表7)により同定した。1H-NMRスペクトルを化合物1〜14について測定し、全ての場合において満足する結果を得た。
Figure 0004188416
9.2 化合物1の製造
化合物1(DIME)の製造は、先の文献(Borrows等、1949年、“The Synthesis of Tyroxine and Related Substances. Part.I. The Preparation of Tyrosine and Some of its Derivatives, and a New Route to Thyroxine”、J. Chem. Soc. 補遺.発行番号1:S185-S190)に記載の方法によって行なった。m.p., 153-155℃。基礎的なスペクトル測定は、これまで報告されておらず、以下の通りである。エタノール中のUV吸収スペクトル、τ最大(ε):289nm(4.20x103),232nm(3.08x104),213nm(2.48x104)。マススペクトル:FAB、m/z(相対強度):510(M+,100)、479(4.5)、384(4.5)。高分解能データ(M+ピーク、C15H12I2O4):理論値、509.882513;実測値、509.882960(偏差=-0.9ppm)。1H-NMRスペクトル(DMSO-d6、TMSに対するδ(ppm)値):3.719(3H、一重線)、3.876(3H、一重線),6.693(2H、二重線、J=9.45Hz、分裂良)、6.845(2H、二重線、J=9.36Hz、分裂良)、8.390(2H、一重線)。
9.3 化合物7の製造
化合物7(3,5-ジニトロ-4-(4’-メトキシフェノキシ)ベンズアミド)の製造は、化合物1(100mg、0.196mmol)/無水メタノール(60ml)溶液に、常温にて、5分間、アンモニアをバブルさせることで成功した。密栓したフラスコ内で1時間放置後、該混合物を再度アンモニアで処理し、次いで48時間密栓下放置した。メタノール/アンモニアを回転蒸発させ、該乾燥残渣を温メタノール/水(7:3v/v、30ml)に溶解し、冷蔵庫内で冷却(3℃)して結晶化した。淡黄色結晶(収量:58.3mg(60%)、m.p.207-209℃。マススペクトル(FAB):高分解能データ(M+ピーク、C14H11I2NO3):理論値、494.882847;実測値、494.881880(偏差=2.0ppm)。1H-NMRスペクトル(DMSO-d6、TMSに対するδ(ppm)値):3.716(3H、一重線)、6.682(2H、二重線、J=8.93Hz、分裂良)、6.895(2H、二重線、J=8.99Hz、分裂良)、7.528(1H、一重線)、8.113(1H、一重線)、8.402(2H、一重線)。
9.4 細胞培養
E-ras20細胞をバウエル(Bauer)ら、1996、”Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-indo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP)”Intl. J. Oncol. :239−252で報告されたように培養した;HT-144(黒色腫)、DU-145(前立腺癌)、HeLa(子宮頸癌)、HL60(前骨髄球白血病)、MDA-MB-231(乳癌)、SK-Br-3(乳癌)、T47D(導管性乳癌)、A559(肺癌)をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、(ロックビル、メリーランド(Rockville、MD))から入手し、ついで処方された培地で培養した。DIMEの効果を1cm2あたり2×104細胞の開始細胞密度で培養物で試験し、DIMEの細胞増殖(トリパン・ブルー排除によって同定された完全な細胞)への効果の比較を、薬剤添加の72時間後に血球測定におけるトリプシン化後、接細胞のカウンティングによってアッセイした。
9.5 E-ras20細胞の腫瘍原性
無胸腺ヌードマウスのE-ras20 Cellsの腫瘍原性を以前に記載したようにアッセイした。バウエルら、1996、”Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-indo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP)”Intl. J. Oncol. :239−252。イン・ビボでのDIMEの抗腫瘍原性作用を、106MDA-MB-231細胞を接種した無胸腺マウスで腫瘍原性アッセイにおけるようにアッセイした。皮下腫瘍が現れる約10〜14日に、DIME懸濁液(1日1回)のp.o.投与からなるDIEM治療を開始し、ついで、クン(Kun)らが報告したように(1996、”Induction of tumor apotosis by methyl-3,5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)”、Abstract No. 102、Intl. J. Oncol. 9:Supplement829)、28〜32日間続けた。
9.6 コロニー形成の定量化に関するアッセイ
コロニー形成の定量化に関するアッセイをビデアー(Vidair)ら、1986、”Evaluation of a Role for Intracellular Na+, K+, Ca2+ and Mg2+ in hyperthermic cell killing”、Radiation Res. 105:187−200に報告されたように行った。
9.7 DIME−セファロースアフィニティーカラム
EAH-セファロース(ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー、米国)(2.0g湿)を水で洗浄し、ついで溶媒を60%DMF(水溶液)中に交換した。湿ケーキ(wet cake)をDIME(化合物6)(60mg)および10倍過剰量のN,N1-ジシクロヘキシカルボジイミド(シグマ(Sigma))のカルボン酸誘導体含有60%DMF(1.0ml)に再懸濁し、ついでその懸濁液を16時間周辺温度で緩やかに回転させた。ついでそのセファロースビーズを燒結ガラスフィルター(sintered glass filter)上に回収し、引き続いてDMF、ジオキサン、DMF、DMF水溶液(66%、50%および33%)で洗浄し、ついで最終的に水で洗浄した。置換ビーズのUV吸光度スペクトルに基づくと、DIME基の内容物は湿ケーキ(damp cake)1mlあたり1〜2μモルの範囲にあった。
9.8 14 C]−DIMEの代謝
(a)1.0mlのホモジナイゼーションバッファー(50ml Tris(pH7.4))、400mM NaCl、10mM MgCl2、1mM EDTA、0.5%NP-40、0.5mM PMSF)における組織0.2gを含むマウス組織ホモジネート(脳、腎臓、肝臓、肺)各々を20μM[14C]-DIME(10.55mCi/ミリモル)を含む1.0mlのMESバッファー(100mM pH6.5)と混合し、ついでその混合物を37℃で4時間インキュベートした。ついで、各チューブに続いて酢酸エチル(1.5ml)、硫酸アンモニウム(900mg)および60%の過塩素酸(160μl)を加え、添加後にボルテックスした。10分間静置した後、相分離をベンチトップ遠心(benchtop centrifugation)により増強した。上層(酢酸エチル)を除去し、下のアリコートおよび中間相物質を第2回目の酢酸エチル(1.5ml)で抽出した。酢酸エチル抽出物(混合した)は、もともとのインキュベートされた液(ca. 4×105cpm)に存在する総cpmの90%より多い量を含む。その抽出物をN2気流を用いて蒸発乾固させ、代表的な残渣を酢酸エチル(100μl)にとり、ついでアリコート(10μl)を分析用シリカゲルTLCプレート(ワットマン(Whatman PE SILG/UV)フレキシブル・プレート、250μm厚、10cm×20cm)上に滴下し、ついで3:1:0.8v:v:v n-ヘキサン/酢酸エチル/エタノールで現像した。[14C]−DIMEを標準的な参照物として含む分析的なバンドをオートラジオグラフィーで可視化した。さらなる標準的な参照物(非放射性DIMEおよびそのカルボン酸類縁体)をUV光下でプレート上にて可視化した。(b)。培養物中の細胞内の[14C]−DIMEの代謝:細胞(各試験において2−5×106)を[14C]−DIMEとインキュベートして、ついでホモジナイズしついで(a)同様に代謝物に関してアッセイした。
9.9 DIMEの細胞内濃度
9.6cm2ウェルにおける単層培養物(3ml培地)を[14C]−DIME(10.55mCi/ミリモル)に24時間暴露し、ついで未標識DIME含有1ml培地で7回洗浄した。その細胞を4% Na2CO3および0.2M NaOHに溶解し、ついで放射活性をシンチレーションカウンティングにより測定した。細胞容量をヘマトクリットにより決定し、未標識DIMEで処理した対等なウェルから細胞をカウンティングした。
9.10 DNAカットのアッセイ
アポトーシスに関するシグナルとしてのDNA切断に関するアッセイは、アッセイキット製造者(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)、インディアナポリス、インディアナ、米国、カタログ番号第168−4817)により具体化されているように、ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼdUTPニックエンドラベリング(Terminal deoxynucleotidyl transferase dUTP nick end labelling)(TUNEL)を介した反応であった。
9.11 結果
カルボキシル−エステラーゼインヒビタービス[p−ニトロフェニル]ホスフェート(BNPP)、ヘイマン(Heymann)ら、1068、”Inhibition of phenacetin and acetanilide-induced methemoglobinemia in the rat by the carboxyl esterase inhibitor of bis[p-nitrophenyl]phosphate”、Biochem. Pharmacol. 18:801−811をシグマ(Sigma)から入手した。
DIMEおよびそのホモログおよび類縁体の構造特異性を表7および表8での試験によってアッセイすることができる。本発明者らはDIMEの17の新規構造類縁体を調整し、ついでいくつかの一般的な結論を導き出すのに十分であるような化合物(表8)中の10個の抗腫瘍活性を比較した。選択された生物学的アッセイは、ヌードマウスにおけるE-ras細胞のイン・ビボ腫瘍原性に関する該薬剤の抗腫瘍原性作用の決定であった(バウエルら、1996、”Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-indo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP)”Intl. J. Oncol. :239−252)。E-ras20細胞(105または106)を10μM DIMEまたはその類縁体と4日間インキュベートし、ついで105および106細胞をヌードマウス(1試験当たり5匹)に皮下接種し、ついで腫瘍形成の割合を直接腫瘍容積測定(2、参照)によって定量した。DIME自身に関して示すように(図4)、腫瘍形成は完全に終結した。同じ抗腫瘍原性試験を9つのDIME類縁体で行い、ついでDIMEの効果を100%(25日で腫瘍の大きさを比較する)して、抗腫瘍有効性をDIME活性のパーセンテージとして計算した。E-ras20細胞が相対的にヒト腫瘍よりDIMEに感受性が低く、それゆえこれらの結果はDIME類縁体の比較の基準としてのみ機能するものであるということに注目すべきである。表8にまとめられた結果は、R1およびR2における置換は抗腫瘍効果を決定するということを示す。この効果は特にR1CH3O、Eto、n-Pro、R1におけるnBuOを比較する際に厳格であり、そのことは「チロキシン様」コア構造自身の結合ではない側鎖パラメーターが薬理学的特異性を付与するようであることを示唆している。
この結論はDIME-セファロース(Sepharose)アフィニティーカラムにより予備的タンパク質結合実験によって確証されている。このアフィニティーカラムにおいてDIMEはR2でのマトリクスに共有結合し、それゆえこのDIME誘導体は、表8における結果の類推から、DIMEより殺腫瘍活性が有意に低いであろう(クンら、米国特許出願番号08/655,267、1996年6月4日出願、”Method of treating malignant tumors with thyroxine analogs having no significant hormonal activity”(参照のため本明細書に開示を包含する)を参照)。さらにこのカラムを通した細胞抽出物の濾過は、アフィニティーマトリクスに結合するタンパク質を生じる;吸着したタンパク質をチューブリンと同定した。DIMEのタンパク質結合を、以前にバウエルら、1996、”Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-indo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP)”Intl. J. Oncol. :239−252にて報告したようなセントリコン方法によって決定した。109〜1010のスカッチャード・プロット(Scatchard plot)KD価から計算された値を、細胞抽出物中に存在するタンパク質(BSAでさえも)とともに得て、そのことは多様なタンパク質とのDIMEの推定疎水結合を示す。DIME-セファロースアフィニティーカラムにでの結果に基づき、本発明者らはこの結合をDIMEの「コア」構造によるものとした。
Figure 0004188416
無胸腺マウスにおけるE-ras20細胞のイン・ビボの腫瘍原性に及ぼすDIME類縁体の有効性を100としているDIME(化合物1)のそれと比較して25日での腫瘍の減少の大きさを決定する。DIMEまたはその類縁体(表7)での予備処理をs.c.接種の前の4日間10μMで行った。a表7において割り当てられるのと同様。
DIME類縁体の相対的な活性を表8から推定することができるが、しかしながら本実験は、DIME類縁体の一層詳細な分析に適している実験系を定義するためにDIME自身の細胞致死性作用に主として焦点を当てた。DIME(図1)の抗腫瘍原性作用をイン・ビボ状態へ拡張すると、ヌードマウスへのDIMEの投与が0.25〜1.0g/Kgのos当たりの1日投与量によって25〜35日で70〜85%の腫瘍の退行を生じることを示した(クンら、1996、”Induction of tumor apotosis by methyl-3,5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)”、Abstract No. 102、Intl. J. Oncol. 9:supplemenmt 829)。これらの大用量は以下に記載する理由に関して全く注目することができる毒性を産生しなかった。0.25g/Kgおよび1.0g/Kg DIMEが同じ抗腫瘍効果を有するので、用量応答性の関係が明らかではなかった。このパラドックスは、議論したように、イン・ビボでの腫瘍細胞内への選択的な薬剤取り込みによって説明されてよい。
本実験において、本発明者らは細胞殺害の分析の顕微鏡的方法に焦点を絞った。図5に例示するように、MDA-MB-231細胞のコロニー形成能力は10日間で1〜2μMの範囲の濃度でのDIMEによって深く消滅した。DIMEを細胞との8時間インキュベーション終了前に除去した場合、細胞殺害を妨害し、薬剤誘発性の形態上の変化が完全に逆になる。1〜10μM DIMEで前もってインキュベーションした後、8時間までDIMEなしで洗浄した細胞を崩壊することによって、正常細胞増殖および複製の再開始となる。8時間の薬剤処理後に、なお未知である細胞死に導く不可逆的な経路を生み出す重要な事象の本質は、さらに実験の課題である。しかしながら、DIMEによって誘発される究極的な細胞死の容易に検出可能である原因の1つは、図6に例示するように薬剤濃度依存性のDNA破壊である。
DIMEの際立った性質は、イン・ビボにおける腫瘍に関する明らかな選択性である。本発明は薬剤代謝および細胞DIME取り込みテストを行い、この特性をさらに特徴づける。バウエルら、1996、”Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-indo-6-amino-1,2-benzopyrone(INH2BP)”Intl. J. Oncol. :239−252に記載されるような条件下での培養物中の細胞の[14DIMEとのインキュベーションは、インキュベーションの間に加えられた細胞外の(2参照)同濃度で存在する非放射性DIMEを含むPBSで細胞から洗い落とせない形態への薬剤の細胞内取り込みとなる。薬剤取り込みの速度は、少量のDIME-感受性細胞(表9)に比較して、DIMEによって最も容易に殺害される細胞内(例えば、MDA-MP-231)で有意に高い。本発明者らは、接触阻害の喪失を示し、かつ複製時間が迅速である(12時間vs形質転換していない表現型の54時間)、正常腎臓細胞CV-1細胞の形質転換した表現型を開発した。表9に示すように、概して腫瘍原性形質転換細胞は、形質転換していない細胞(CV-1)またはDIMEによる殺害に感受性が低い細胞(例えばE-ras20)より一層迅速にDIMEを取り込んだ。確立されたセルラインは致死的危機を経験し、従って、厳密ではないが生理学的操作細胞および本発明者らの薬剤取り込み結果およびイン・ビボでの明らかなDIME毒性の欠如は、完全な動物における正常細胞が全くDIMEを取り込まないかまたは取り込んでも非常にわずかであることを示唆する。一方、表10において例示するように、正常マウスの組織のホモジネートは積極的にDIMEを代謝(脱エステル化)する。「DIMEエステラーゼ」活性の最高の割合は脳のホモジネートにおいて起こる。
Figure 0004188416
Figure 0004188416
DIMEの薬剤代謝および殺腫瘍性作用の相関はまた、ヒト肺腫瘍細胞(A-549)での実験において示されている。図4に示すように、A-549細胞はDIMEにおいてエステル結合(R2)を容易に開裂する一方、ビス[p-ニトロフェニル]ホスフェートでのエステラーゼ活性の阻害は(ヘイマンら、1068、”Inhibition of Phenacetin and Acetanilide-Induced Methemoglobinemia in the Rat by the Carboxyl Esterase Inhibitor of bis[p-nitrophenyl]Phosphate”、Biochem. Pharmacol. 18:801−811)、図Vに見られるように、A-549細胞に関してDIMEによって殺害する一層有効な細胞を生じる。第3日において、50%の細胞阻害を引き起こすDIME濃度で発現される多用な腫瘍細胞へのDIMEの細胞増殖阻害作用の比較は、表11にまとめられる。MDA-MB-231細胞に関する最終濃度0.5、1.0および2.0μMのDIMEの作用の時間経過を図6に例示する。
Figure 0004188416
DIMEは、完全な動物において増殖する腫瘍細胞を除いて、イン・ビボで全く巨視的に観察された毒性を持たないようであるので、独特の殺腫瘍性分子である。薬剤取り込みアッセイから、DIMEによる細胞殺害に対して感受性のある細胞が最も薬剤を渇望して取り込むことが明らかであるようである。培養物中で増殖する非腫瘍細胞の複製はまた、DIMEによってさまざまな程度に阻害され(示さず)、一方、薬剤はイン・ビボで毒素を示さない。それゆえ、多分、細胞培養物中の細胞のDIMEの透過性がイン・ビボで機能している細胞と異なっていることがありそうである。この明らかな腫瘍の特異性に関する理由は、培養物中で増殖した細胞のある−未知である−細胞膜特性と動物組織、さらなる調査の被験体において増殖した細胞間の差異に依存してもよい。細胞培養物中で増殖した細胞(腫瘍および腫瘍でない細胞の両方)およびイン・ビボ細胞操作がされない細胞間のこの明らかなDIMEに対する透過性差異は、クンら、1996、”Induction of tumor apotosis by methyl-3,5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)”、Abstract No. 102、Intl. J. Oncol. 9:supplemenmt 829)のように、イン・ビボ増殖する腫瘍細胞に関して維持されない。というのは、イン・ビボではDIME投与によって殺害されるからである(クンら、1996、”Induction of tumor apotosis by methyl-3,5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)”、Abstract No. 102、Intl. J. Oncol. 9:supplemenmt 829)。イン・ビボ(0.25−1.0g/kg)でのDIMEの投与は、細胞培養物(0.5−2.0μM)で得られた細胞外殺腫瘍性濃度を多大に越え、そのことは、イン・ビボでの腫瘍細胞が、イン・ビボ投与DIMEの少量を取り込むかも知れず、ついでイン・ビボで増殖している腫瘍細胞は、細胞培養物、すなわち、培養物中の腫瘍細胞において類似の薬剤取り込みをイン・ビボにて示しており、同様にDIMEに対して感受性を保有しているようである。イン・ビボの腫瘍細胞膜と細胞培養物中で増殖するセルラインに対する類似性は、腫瘍細胞の新規特性であるようであり、さらに分析を必要とする。腫瘍におけるDIME透過性に関する明らかなイン・ビボ選択性に加えて、腫瘍細胞は、A-549細胞(肺癌)を除いて、検出可能な程度のDIMEエステラーゼ活性を一般的には全く保有せず(示さず)、正常細胞とは異なっている。
実施例10:細胞および核形態へのDIME作用
以下は癌の広範囲を治療することにおいてチロキシン類縁体を使用する広い概念を考慮するさらなる証拠を提供する。本発明者らは、DIMEが細胞培養およびイン・ビボにおける腫瘍細胞において細胞死の強力な誘発剤であると報告した。選択的な腫瘍致死作用は、この薬剤のイン・ビボでの腫瘍細胞への選択的な透過によって最も説明されやすい(メンデレエフ(Mendeleyev)ら、1997、”Structural Specificity and Tumoricidal Action of Methyl-3,5-Diiodo-4-(4’-Methoxyphenoxy)Benzoate(DIME)”、Intl. J. Oncol.、印刷中)。本明細書で記載されたように、1〜4DIMEに対する腫瘍細胞の暴露は、細胞学上の変化およびDIMEのいくつかの作用の生化学的部位の関与を推定する有糸分裂阻害を生じる。生化学的レベルでの部位の分析以前に、血球計算方法によるDIME作用の最初の細胞様式の定義は重要である。本実施例は細胞および核形態へのDIMEの作用および有糸分裂を通しての進歩に関与している。
10.1 顕微鏡的形態学
E-ras細胞の顕微鏡的形態学を、前出のメンデレエフら、1997、”Structural Specificity and Tumoricidal Action of Methyl-3,5-Diiodo-4-(4’-Methoxyphenoxy)Benzoate(DIME)”、Intl. J. Oncol.、印刷中;バウエルら、1996、”Modification of growth related enzymatic pathways and apparent loss of tumorigenicity of a ras-transformed bovine endothelial cell line by treatment with 5-indo-6-amino-1,2-benzopyrone(INHBP)”によって報告された技術により試験した。
10.2 Mフェーズ可視化のための調製
MDA-MB-231セルラインをATCC(ロックビル、メリーランド、米国)から入手し、細胞を10%FCSを補った最少不可欠培地−α中で37℃にてT-75フラスコ中で培養した。コントロールとして、DIMEを受けないもので0.1μg/mlコルセミドを中期阻害細胞の回収および細胞スプレッドの調製前に4時間培養物に加えた。DIMEおよびコルセミドの影響はMフェーズにおける細胞サイクル阻害に関して区別不可能であり、それゆえ、DIMEの影響を試験する場合には、コルセミドは中期スプレッドには全く加えなかった。細胞(107)を0.025%トリプシンで5分T-75トリプシン化から単離し、ついで遠心分離によって沈殿させ、ついで37℃で10分間75mM KClの10mlに再懸濁させ、維持し、再度沈殿させて、ついでメタノール酢酸の引き続く4つの変化で10mlメタノール酢酸に固定した。最終細胞懸濁液(100μl)のアリコートをエタノール清浄スライドに滴下し、風乾した。
10.3 イン・サイチュ・ハイブリダイゼーション
ヒト染色体特異的プローブをONCOR(ゲイザーズバーグ、メリーランド、米国)によって製造した。ピンケル(Pinkel)ら、1986、”Cytogentic Analysis Using Quantitative High-Sensitivity Fluorescence Hybridization”、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.83:2934−2938によって記載された手法の修飾によってハイブリダイゼーションを達成した。スライドにマウントした細胞をペプシン(0.01N HClの20μg/ml)で、37℃で10分間処理し、ついで70%、85%および100%エタノール系列にて脱水し、ついでDNAを70%ホルムアミド中に浸し、2×標準塩型クエン酸(saline citrate)(IXSSCは0.5M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)中に70℃で2分間浸して変性させ、ついで上記のようにエタノール系列で脱水した。総量10μl中のハイブリダイゼーション混合物は50%ホルムアミド、2×SSC、10%デキストランサルフェート、0.5μgニシン精子DNAおよび1〜5μgのプロテイナーゼK処理したヒト胎盤DNAからなる。ニシン精子DNAおよびヒト胎盤DNAの両者はそれ以前に、200〜600bpの断片に超音波処理し、〜40gのジゴキシゲニン化したプローブDNA(70℃で5分間変性させた)を加え、ついで37℃で1時間インキュベートした。この混合物を固定した細胞を含むスライドに乗せ、カバースリップをかけ、37℃で2〜3日間インキュベートした。ハイブリダイゼーションが完了した後、そのスライドを3回50%ホルムアミド、2×SSC、pH7.0を代えて洗浄し(3×5分)、PNバッファー(0.1M NaH2PO4および0.1M NaHPO4、0.1%NONIDET P-40、pH8.0よりなる)で45℃にて2回洗浄し、ついでPNMバッファー(固体を除去すべく遠心した後の0.02%窒化ナトリウムを含む5%無脂肪乾燥ミルク溶液)中の5μg/mlの抗ジゴキシゲニンFITC、2μg/mlウサギ抗ヒツジFITC(ベーリンガーマンハイム)で室温で20分間処理し、各インキュベーションの後にPNバッファー中で3分間2回洗浄し、アンチフェード溶液(ベクター・ラブズ(Vector labs)、バーリンゲーム、カリフォルニア、米国)中で0.4μM D API(4,6−ジアミノ−2−フェニルインドール)でDNAを染色した。そのスライドを複数バンド通過フィルター(クロマ・テクノロジー(Chroma Technology)、ブラットレボロ(Brattleboro)、バーモント、米国)を備えたセイス蛍光顕微鏡(Aeiss fluorecence microscope)で各々の核におけるFISHシグナルの数を決定するために調査した。
10.4 時間衰退ビデオ顕微鏡
密封したT-25組織培養フラスコ中で細胞を、逆相コントラスト顕微鏡を囲むよう設計された温度調節インキュベーションチャンバーに静置した。そのチャンバーを周辺室温光から遮蔽した。5分ごとに12秒顕微鏡の電源を入れ、その間にコンピックス、インク(Compix, Inc.)(マーズ、ペンシルベニア、米国)から入手したイメージングシステムによりイメージを捕らえた。イメージシークエンスを同社のソフトウェアで分析した。
10.5 フローサイトメトリー
異なる処理にさらした細胞をコンフルエンス間で増殖させ、トリプシン化し、ついでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。核分析に関して、細胞をビンデロフクエン酸細胞バッファー:シュークロース250mM、リン酸三ナトリウム、2H2O 40mM、1000ml溶液pH7.6中のDEMSO 50ml中に固定した。血液から得た正常ヒトリンパ球をコントロールとして使用した。各細胞サンプルおよびコントロールを血球計算計でカウントし、ついで細胞濃度を2×106細胞/mlに合わせた。総量2ml中の各セルラインから200万細胞を新鮮PBSで洗浄し、37℃で30分間200μg/mlのRNAアーゼで処理し、10μg/mlのプロピジウムイオジド(propidium iodide)で45分間染色した。プローサイトメトリー分析を、488nmに合わせた風冷アルゴンレーザーを備えたFACScanベンチトップフローサイトメーター(ベクトン−ディッキンソン(Becton-Dickinson)、サン・ホセ、カリフォルニア、米国)上で行った。分析および記録保管のための6つのパラメーターリスト様式として20000事象を回収した。2つの散光(light scater)パラメーター(順方向および横側)、プロピジウムイオジド蛍光を575/26nmおよび上記620nmで測定し、ついで蛍光のパルス幅および面積による一対の差異を1024データチャンネル分析で獲得した。獲得閾値を上記のチャンネル100でプロピジウムイオジド陽性事象でセットした。小破片を排除するためのゲート通過を、大きな塊および細胞ダブレットを獲得後に行った。
10.6 イムノサイトメトリー
細胞をメタノール中で−20℃で5分間固定した。第1抗体はマウスモノクローナル抗βチューブリン(アマシャム(Amersham))であり、第2抗体はヤギから得て、フルオレセインイソチオシアネートにコンジュゲートしたものである(カッペル(Cappel)、ダーハム(Durham)、ノースカロライナ、米国)から)。核のDNAを0.05μg/mlの4’−6−ジアミドノ−2−フェニルインドール(DAPI)中で10分間インキュベートすることによって染色した。染色した細胞をゼイス40×Plan-Neofluarまたはニコン(Nikon)60×PlanApo目的物で見られた。有糸分裂期における細胞の分類に関して、前記および中期を合わせて1つのカテゴリーに入れるが、それは前期の後期と中期の区別が困難であるからである。
10.7 結果
4μM DIMEで18〜24時間でE-ras20細胞のインキュベーション後の細胞形態への影響は図10に例示されている。腫瘍細胞を特に300倍拡大率で可視化すると、多数の微小核が出現した。これらの細胞学的変化の性質をさらに調べた。MDA-MB 231ヒト乳癌細胞核について行ったフローサイトメトリー分析(図11)は18時間の薬剤暴露によりG2DNA内容物を有する核が蓄積され、それによってMフェーズ阻害を示唆することを示した。
上記の観察により、DIMEにさらした細胞における有糸分裂に入る動力学を調べるよう促進される。IμM DIMEを含む培地でインキュベートし、ついで材料と方法に記載したように時間衰退ビデオ顕微鏡によって調べた。図12は、不規則な6娘細胞の分裂が続く有糸分裂における13時間の遅延を例示するイメージを示す。対照的に、コントロール細胞は、有糸分裂において、約0.5時間の遅延があり(図13を参照)かついつでも正確に2娘細胞を生じるように分裂する(データ示さず)。
時間衰退ビデオ顕微鏡により上記の不規則な細胞分裂から生じる娘細胞の運命をモニターさせることができる。1μM DIMEの存在下で見られる有糸分裂の20%は、融合した(表12)娘細胞を産生し、頻繁に図10に見られる型の大きな多核化された細胞を産生した。コントロール細胞はそのような分裂後の融合を示さなかった。
Figure 0004188416
1μM DIMEの存在下で起こる細胞分裂を調べて、各有糸分裂から生じる娘細胞の数を定量的に決定した(図14)。娘細胞の数は有糸分裂事象1つあたり1〜6の範囲に存在する。対照的に、コントロール細胞はいつも(33/33)分裂して2娘細胞を産生する。従って、上記の有糸分裂における薬剤誘発性の長期の遅延は、非常に異常な細胞分裂パターンがそれに続くものである。
図15は1μM DIME中でインキュベートし、ついでコントロール細胞が有糸分裂に入る時の速度を示す。その曲線はほとんど一致しており、そのことはDIMEが細胞が間期を横切る時の速度に影響を及ぼさないことを示している。対照的に、各細胞が有糸分裂にかかる平均時間は、薬剤によって20倍より多く増加する(図13)。丸い形態においてDIMEによって阻害される細胞は、実際に有糸分裂中に存在することがその濃縮し拡大したクロマチン(図16)および異常な有糸分裂紡錘体型(図17)によって確認された。
中期核のイン・サイチュハイブリダイゼーションによる染色体分析を染色体1、2、7、11および19に特異的なプローブで行った。それらはすべて同じ結果を生じ、それゆえ、染色体19のみが例示されている。代表的な結果は図16A、BおよびCにおいて染色体19に関して示されている。すべてのケースにおいてMDA-MB-231(ヒト乳癌)細胞を使用した。図16Aは染色体19に関してのイン・サイチュ・ハイブリダイゼーションを示す。1μM DIMEに18時間さらすと全く検出可能な影響はなく、それゆえ、図16Aおよび16Bは両方コントロールおよび薬剤処理細胞を表す。図16Bは、染色体19に関して染色される一方、クロマチンに関してのDNA染色の一致を示す(DAPI)。しかしながら、細胞の5日間の薬剤暴露(1μM DIME)はいくつかの細胞における中期クロマチンの多大な蓄積を誘発し、約40の染色体19シグナル、および100を越える染色体(図16C)で誘発される。たとえこの薬剤処理が結局細胞を殺害したとしても、染色体破壊の証拠は得られていない(メンデレエフら、1997、”Structural Specificity and Tumoricidal Action of Methyl-3,5-Diiodo-4-(4’-Methoxyphenoxy)Benzoate(DIME)”、Intl. J. Oncol. 10:689−695。
1μM DIMEに18時間さらした後の有糸分裂紡錘体型の構造を図17に示す。図17Aは、薬剤処理していないMDA-MB-231癌細胞におけるチューブリン染色した有糸分裂紡錘体型である。図17Bは顕著な異常チューブリン分布からなる18時間の薬剤暴露後の変化である。これらのマルチセントリン構造(multicentrinc structure)は、18日間の1μM DIME暴露後にかなり強調される。その細胞のマルチセントリン分布(図17Bおよび17C)は、ミッチソン(Mitchison)ら、1984、”Microtubule Assembly Nucleated by Isolated Centrosomes”Nature 312:232−237に示すように、イン・ビトロにおいて付加された中心体によるチューブリンの核形成に類似であるようである。しかしながら、本発明者らは免疫蛍光により中心体の異常数を検出することができず(データ示さず)、従って、18時間のDIME(1μM)処理の後の明らかなマルチセントリックな核形成は、中心体に直接関連していないかもしれない。これらの写真は1μM DIMEがチューブリン脱重合を誘発するかまたは再重合を阻害するかを推定することができない。
予備実験(データ示さず)において、本発明者らは免疫細胞学上の技術によってある紡錘体関連タンパク質の行動をもまた研究した。Cdc-2キナーゼは1μM DIMEの不在下で紡錘体に関連していないが、細胞を薬剤に18時間暴露し、cdc-2-キナーゼ-紡錘体結合を証明した。薬剤処理は、中心体タンパク質ペリセントリン(pericentrin)に対する抗血清による染色パターンを変化させなかったが、それはたった2つの焦点が見られたのみであるからであった。サイクリンB-微小管−紡錘体結合は変化しないままである。しかしながら、薬剤はなおサイクリンBと結合した紡錘体極中心の異常な構築を誘発した。プロテインホスファターゼ2a(pp2a)-紡錘体型結合はちょうどペリセントリンまたはサイクリンBのものと同様に薬剤処理によって影響を受けなかった(1μM DIME、18時間)。
これらの予備実験はさらに細胞生物学研究の基礎を含む。予備実験において、タンパク質紡錘体型結合におけるホスファターゼの可能な役割もまた試験した。18時間のオカダ酸をさらに100nM添加してさらすと、cdc-2-キナーゼ-およびpp2a-紡錘体結合のみを廃止し、そのことは、プロテインホスファターゼの関与を示唆する(データ示さず)。
これらの結果は、薬剤被爆18〜24時間後の1μM DIMEの初期効果と薬剤処理5日後に生じる染色体数における同所に見られる後期効果の両者間で区別されるようである。しかしながら、後期事象は単に、おそらくDIMEのある細胞部位への結合によって開始される細胞応答のカスケードを反映しているのみでろう。初期事象は細胞学上の変化、特に多核形成した細胞の出現を表す。微小核の形成は、無動原体染色体断片が動原体および微小管紡錘体接触の不在により後期に極に対して、核移動を経験させることができない失敗よりなる放射性傷害が起こることはよく知られている(ベッドフォード(Bedford,J.S.)、1991、”Sublethal Damage, Potentially Lethal Damage, and Chromosomal Aberration in Mammalian Cells Exposed to Ionizing Radiation”、J. Ratiation Oncol. Biol. Phys. 21:1457−1469。時間衰退実験はビンブラスチンサルフェートもまた中期の阻害された多核細胞を誘発し(キルシャン(Kirshan)、1968、”Time Lapse and Induces by Vinblastine Surfacte in Earl’s L Cells”J. Nat’l. Cancer Institute 41:581−595)、それはビンカアルカロイドもまた動物において重篤な毒性効果を示すがDIMEは示さないということは除いて、本明細書に示す結果を思い出させる(図10)。プロテインホスファターゼ2a(PP2a)の過剰発現もまた多核形成を誘発し(ウェラ(Wera)ら、1995、”Deregulation of Transitional Control of the 65kDa Regulatory Subunit(PR65 Alpha)of Protein Phosphatase 2A leads to Multinucleated Cells”、J. Biol. Chem. 270:21374−21381)、これは明らかに、この複雑なプロセス(多核形成)の発達メカニズムがおそらくは結合した多様な酵素活性を含むことを示唆する。これらの結果はDIME細胞(1.c.1)におけるpp2aの活性化を、すなわちこの酵素へのDIMEの直接的影響のためにおそらく起こる影響を示す。DIME作用の様式における多様な細胞内酵素の参加は別個の生化学的報告のテーマである。
DIMEによって誘発される最も容易に観察できる細胞現象の1つは、Mフェーズにおける阻害(図11および13)であり、DIMEによって置換されることができる、特にコルセミドまたはビンカアルカロイド作用に非常に類似である。DIMEの後期効果(5日)は、染色体1、2、7、11および19に対してのプローブでのDNA−蛍光ハイブリダイゼーションによって例示されるように、染色体の蓄積の結果であり、細胞分裂の失敗のためである。その2本鎖DNAにおける切断(図12、メンデレエフら、1997、”Structural Specificity and Tumoricidal Action of Methyl-3,5-Diiodo-4-(4’-Methoxyphenoxy)Benzoate(DIME)”、Intl. J. Oncol. 10:689−695)は、癌細胞とDIMEの相互作用の下流の結果であり、ポリ(ADP-リボース)グリコヒドロアーゼ(参照文献1、脚注I)の間接的な活性化によりDIME処理した細胞における脱ポリADP-リボシル化であるDNAエンドヌクレアーゼのアップレギュレーションを恐らくは最も反映する。エンドヌクレアーゼ活性化は、DIMEによるプログラム化された細胞死の唯一単独の刺激ではないかもしれない。というのは多様な分子メカニズムが、アポトーシスにつながることがよく知られているからである(ウェルツ(Wertz)ら、1996、”Diverse Molecular Provocation of Programmed Cell Death”、TIBS 21:359−364。
DIME処理細胞における異常な有糸分裂紡錘体の発達は、チューブリン系へのDIMEの細胞作用を開始することを指摘し、細胞質分裂におけるきわめて重要な役割を果たすことはよく知られている(ムレイ(Murray)ら、1993、”The Cell Cycle:An Introduction.”、オックスフォード・ユニバーシティー・プレス(Oxford University Press)、ニューヨーク)。
DIMEは「ホルモンとして不活性」である甲状腺ホルモン類縁体であるので、甲状腺ホルモンの代謝前駆体(または異化産物)が「抗腫瘍性」校正(proof reading)レギュレーターとして機能し、生理学的分化的維持における役割を果たすか否かの興味深い問題が生じる。殺腫瘍性作用を有する甲状腺ホルモン代謝物に関する調査は保証されているようである。
実施例11:チューブリン重合への効果
以下の実験において、ホルモンとして不活性な甲状腺ホルモン類縁体であるDIMEは、1〜5μM濃度で光学試験により決定されるようにMTPのGTP-依存重合を阻害する。この阻害はGTPの濃度に批評的に依存している。DIMEの濃度とGTP間の定量的な相関関係はMTP重合の線形速度の状況下で、後にミカエリス−メンテン(Michaelis-Menten)動力学および阻害は「混合」タイプを描き、そこではGTPについてはKmおよびUmaxを同時に変化させる。DIMEの化学的類縁体は、イン・ビボでの抗腫瘍原性作用と類似であり、MTP重合を阻害する。MTP部位はDIMEの初期細胞応答部位の1つである。
ヒト乳癌細胞(MDA-MB-231)の1μM DIMEへの被爆は薬剤処理8時間内に異常な紡錘体構造を誘発し、従って、推定DIME-微小管−タンパク質(MTP)相互作用はその薬剤に対する初期細胞応答性の要素であるようである(ゼン(Zehn)ら、1997、”Cellular Analysis of the mode of action of methyl-3-5-diiodo-4-(4’-methoxyphenoxy)benzoate(DIME)on tumor cells”、Intl. J. Oncol.)。異常な紡錘体構造は、微小管形成中心の要素または未定義系と連続または同時のDIME-MTPの相互作用または作用の結果であり得る。イン・サイチュでのMTP系の時間依存性定量性分析は、開始速度測定に不適であるので、本発明者らは、DIMEとMTPとの相互作用の定量性分析に関するモデルとして神経細管のイン・ビトロであのアセンブリーシステムを適合させた。ガスキン(Gaskin)ら、1974、”Turbidimetric studies of the in vitro assembly and diassembly of porcine neurotubles”、J. Mol. Biol. 89:737−758;およびキルシュナー(Kirschner)ら、1974、”Microtubles from mammalian brain:some properties of their depolymerization products amd a proposed mechanism of assembly and disassembly”、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 71:1159−1163;この系はイン・ビトロでのMTPアセンブリーの動力学的アッセイに適したシステムである。MTPアセンブリーの時間経過は開始および増殖および終結工程の開始確認時間経過からなる(ガスキンら、1974、”Turbidimetric studies of the in vitro assembly and diassembly of porcine neurotubles”、J. Mol. Biol. 89:737−758)。定義された状況下での増殖速度は、力学的分析を行うのに十分線形であり、DIMEおよびGTPに関する評価ができる。本発明者らが本明細書中で示すように、DIMEによるMTPアセンブリーの阻害はイン・ビボでの殺腫瘍性を阻害するか、または細胞複製または最終的な細胞死を誘発するのに必要とされる薬剤濃度の範囲と同範囲で起こる;メンデレエフら、1997、”Structural Specificity and Tumoricidal Action of Methyl-3,5-Diiodo-4-(4’-Methoxyphenoxy)Benzoate(DIME)”、Intl. J. Oncol. 10:689−695および上記表8;それゆえ、DIME-MTP相互作用は明らかに多面的細胞メカニズムの最もありそうな要素である。
11.1 微小管タンパク質(MTP)の単離
MTPの調製および重合のための光学試験にはガスキンら、1974、”Turbidimetric studies of the in vitro assembly and diassembly of porcine neurotubles”、J. Mol. Biol. 89:737−758;チワリ(Tiwari)ら、1993、”A pH and temperature-dependent cycling method that doubles the yield of microtubline protein”、Anal. Biochem. 215:96−103に公開された方法を採用した。ウシまたはウザギ脳を100mM Pipes/K+(pH7.4)、4mM EGTA、1mM MgCl2、0.5mM DTTおよび0.1mM PMSFを含む等量の氷冷バッファー中でホモジナイズし、ついで39,000g、4℃で1時間遠心した。上清にDMSO(最終濃度8%)およびGTP(最終濃度1mM)を加え、37℃で30分間インキュベートした。ペレットを氷上で15分間インキュベートし、その後氷冷したPEMバッファー(100mM Pipes/K+(pH6.9)、1mM EGTA、1mM MgCl2)中に再懸濁した。この温重合および冷重合サイクルをもう一度繰り返し、再度懸濁したモノマーMTP(タンパク質8〜10mg/ml)を光学試験重合動力に関して試験した。ウサギまたはウシの脳の両者とも同じMTP調製物を産生した。
光学試験の構成は図面および表12の説明に記載している。重合反応を100μlのMTP溶液の添加によって開始し(0.8−1.0mgタンパク質に等量)、ついで350nmの吸光度での増加の線形の速度が続き、ついで温度安定性的にコントロールしたキュベットホルダーを備えたパーキン−エルマー552ダ二重分光光度計において37℃で(図1参照)記録した。
11.2 結果と議論
MTPの重合に関する光学アッセイの正確さを図18に例示する。実験条件はGTP濃度が1mM(右の曲線)であり、DIMEが4μM(左の曲線)で存在することを除いては、表7の説明に付与されるのと同様であった。MTP重合の速度が線形様式で続行することは明らかであり、従って、バーン(Berne, B.)、1974、”Interpretation of light scattering from long rods”、J. Mol. Biol. 89:755−758によって定義される最大の重合速度の条件が実現するようである。それゆえ、多様な薬剤の存在下での線形速度とアクチベーター濃度との比較によって、[DIME]と[GTP]の定量的相関決定するのが可能である。1mM GTP濃度でDIMEの濃度が増加することが、MTP重合を進行的に阻害する(図18)。
図20に示すように、1μM DIMEの阻害は定量的に[GTP]と相関があり、かつ二重逆プロットは「混合」タイプ阻害を産生する(ディクソン(Dixon)ら、1964、Enzymes、pp. 234-237、Academic Press, Inc.、ニューヨーク)。VmaxおよびKm値の両方は、6.7μM〜14μMの50%Km GTPにより変化を受け、一方、Vmaxは50%に近いものにより減少させられる。混合した阻害の最も単純な解釈はブリッグス−ハルデーン(Briggs-Haldane)等式(7参照)に基づき、K2、すなわちEおよびP(保護)に対する分離[ES]は、KmおよびVmaxの両方を修飾するのに直接影響される。K2の厳密な性質は現在十分であり、どこでも報告されるべき業績があるが、その決定にはGTP加水分解の反応産物の分析を必要としている。アロステリック修飾もまた類似の結果を達成するかもしれない(ディクソン(Dixon)ら、1964、Enzymes、pp. 234-237、Academic Press, Inc.、ニューヨーク)。本実験の目的はDIMEとそのタンパク質の類縁体のMTP重合に関する有効性の比較(表12参照)およびサイトファトロジック(cytophathologic)プロセスでの(例えばイン・ビボでの腫瘍原性の阻害)と結果を相関付けることである。
DIMEの化学的構造とMTP重合(表13)への作用およびそのイン・ビボ腫瘍原性への阻害能力(表8との比較またはメンデレエフ、上記)のある類縁体のうちの7つとの間に明らかな相関がある。例えば、CH3OからのR1のEtOおよびn-BuOへの置換はMTP重合の阻害を進行的に消滅させ、ほとんど正確に抗腫瘍原性効果を減少させるのに類似である(表8との比較またはメンデレエフ、上記)。他方、メチルエステルからのR2におけるのカルボン酸への置換は、完全にMTPへの阻害効果を廃止するが、抗腫瘍原性作用の半分のみがE-ras20細胞で廃止された(表8または図5またはメンデレエフら、上記)。このような定量性の相違が細胞型に特異的な変異体を反映している可能性がある
Figure 0004188416
MTP重合の阻害は非常に複雑な細胞の結果を保有するかもしれない。細胞質分裂において、この阻害はチューブリンの収縮力によって妨害されるかもしれず、細胞分裂に不可欠である開裂溝の形成を妨害するかもしれない(バートン(Bruton)ら、1997、”Traction forces of cytokinesis measured with optionally modified elastic substrate”、Nature 385:450−454。MTP重合の阻害はこの薬剤の生化学的部位と相関があるべきである。メンデレエフら;上記と比較して、DIMEはpp2-アーゼを直接活性化し、それゆえ、この効果を有糸分裂関連現象と調整する必要がある。例えば、pp2-アーゼはG2/Mの推移を調節するかもしれず、かつpp2-アーゼはまた潜在的な腫瘍遺伝子であり、腫瘍形成を促進するのを阻害すると最近報告された(カワベ(Kawabe)ら、1997、”HOXII interacts with protein phosphatase pp2a and pp1 and disrupts G2/M cell cycle check point”、Nature 385:454−45)。DIMEによるpp2-アーゼの活性化は腫瘍形成に対する拮抗作用的である可能性がある。
これらの実験に基づき、DIMEなどのチロキシン型類縁体はガン細胞の有糸分裂を阻害することができると見られ得る。本発明はこれらの技術の使用、および細胞ソーター、染色体ブロッティングまたは細胞中のDNAの他の分析の使用により、そのような化合物の迅速なスクリーニングを提供する。
前記の明細書は、当業者が本発明を実施可能たるに十分であるとみなされる。本発明を実施するためになされる製薬分野または関連分野の当業者に明らかである多様な修飾は、以下の請求の範囲内から逸脱しないと当然考えられるべきである。

Claims (8)

  1. 式:
    Figure 0004188416
    (式中、
    1 はメチルまたはエチルであり;
    2 、R 3 、R 4 およびR 5 は各々独立して、Hおよび(C 1 −C 4 )アルキルからなる群から選ばれ;
    7 およびR 8 は各々独立して、Hおよび(C 1 −C 4 )アルキルからなる群から選ばれる)
    で示される有意なホルモン活性を有しないチロキシン類縁体またはその薬理学的に許容される塩の治療有効量を含有する、哺乳動物の悪性腫瘍の治療のための医薬組成物。
  2. 1 はメチルである、請求項1記載の医薬組成物。
  3. チロキシン類縁体が3,5−ジヨード−4−(4’−メトキシフェノキシ)安息香酸メチルである、請求項2記載の医薬組成物。
  4. 1 はエチルである、請求項1記載の医薬組成物。
  5. チロキシン類縁体が3,5−ジヨード−4−(4’−エトキシフェノキシ)安息香酸メチルである、請求項4記載の医薬組成物。
  6. 悪性腫瘍の増殖を抑制しおよび/または退行させるのに充分な量で投与する、請求項1記載の医薬組成物。
  7. 悪性腫瘍が癌腫および肉腫からなる群から選ばれる、請求項6記載の医薬組成物。
  8. チロキシン類縁体を経口または静脈内で投与する、請求項1記載の医薬組成物。
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