JP4186609B2 - ガスバリヤー材及びそれを用いた積層構造体 - Google Patents

ガスバリヤー材及びそれを用いた積層構造体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐湿熱性、特に高湿度下における耐酸素透過性に優れたガスバリヤー材及びこのガスバリヤー材を用いた積層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、包装容器としては、金属缶、ガラスビン、各種プラスチック容器等が使用されているが、容器内に残留する酸素や容器壁を透過する酸素による内容物の変質やフレーバー低下が問題となっている。
【0003】
特に、金属缶やガラスビンでは容器壁を通しての酸素透過がゼロであり、容器内に残留する酸素のみが問題であるのに対して、プラスチック容器の場合には器壁を通しての酸素透過が無視し得ないオーダーで生じ、内容品の保存性の点で問題となっている。
【0004】
これを防止するために、プラスチック容器では容器壁を積層構造とし、その内の少なくとも一層として、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の耐酸素透過性を有する樹脂を用いることが行われている。
【0005】
容器内の酸素を除去するために、脱酸素剤の使用も古くから行われており、これを容器壁に適用した例としては、特公昭62−1824号公報の発明があり、これによると、酸素透過性を有する樹脂に鉄粉などの還元性物質を主剤とする脱酸素剤を配合して成る層と、酸素ガス遮断性を有する層とを積層して、包装用積層構造体とする。
【0006】
本発明者等の提案に係る特開平1−278344号公報には、20℃及び0%RHでの酸素透過係数が10−12cc・cm/cm・sec・cmHg以下で且つ20℃及び100%RHでの水分吸着量が0.5%以上であるガスバリヤー性熱可塑性樹脂に遷移金属の有機金属錯体を配合した樹脂組成物を中間層とし、該中間層の両側に耐湿性可塑性樹脂の層を設けた積層構造体から成ることを特徴とするプラスチック積層容器が記載されている。
【0007】
特表平2−500846号公報には、ポリマーから成り酸素捕集特性を有する組成物または該組成物の層を含有する包装用障壁において、組成物が酸化可能有機成分の金属触媒酸化により酸素を捕集することを特徴とする包装用障壁が記載されており、酸化可能有機成分としては、ポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドが使用されることも記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ガスバリヤー性に優れた樹脂、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、低湿度条件下では極めて優れた酸素遮断性を示すものの、高湿度条件下では酸素に対する透過性が極めて大きくなるという問題を有している。
一方、内容物の保存性を向上させるために、上記ガスバリヤー性樹脂は、湯殺菌、ボイル殺菌、レトルト殺菌等の加熱殺菌包装技法と組み合わせて用いる場合が多いが、この加熱殺菌時にはエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は高湿条件下に置かれるため、酸素透過性の大きい状態となるばかりではなく、EVOHが有する保水性のために、殺菌終了後も酸素透過性の大きい状態が続き、所定のガスバリヤー性が得られないのである。
【0009】
エチレン−ビニルアルコール共重合体が有する高い酸素バリヤー性は、この共重合体が有する程度の高い水素結合を有することによるものである。しかしながら、水酸基に基づく水素結合によるバリヤー効果は、水分(湿度)が高度に作用する条件では、緩む傾向にあり、この性質は本質的なものであって、これを改善することは容易ではない。
【0010】
本発明者らは、遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体に配合すると、優れた加工性を保持しながら、この共重合体の湿熱時における酸素透過係数を顕著に改善しうることを見出した。
即ち、本発明の目的は、優れた加工性を保持しながら、湿熱時における酸素透過係数を低い値に抑制したエチレン−ビニルアルコール共重合体系のガスバリヤー材を提供するにある。
本発明の他の目的は、上記ガスバリヤー材の層を備えた積層構造体を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物からなる、30℃−80%RHにおける酸素透過係数が、5×10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下であることを特徴とするガスバリヤー材が提供される。
また、本発明によれば、遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物からなるガスバリヤー材を用いた積層構造体において、30℃−80%RHにおける積層構造体の酸素透過量が2cc/m/day/atm以下であることを特徴とする積層構造体が提供される。
本発明のガスバリヤー材及び積層構造体においては、カルボン酸基乃至カルボン酸無水物基を有する共役ジオレフィン系重合体を、エチレン−ビニルアルコール共重合体に1重量%以上、且つ下記式(1)を満足する範囲で配合することが好ましい。
酸価×配合量≦800 ‥(1)
但し、酸価はKOHmg/g、配合量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を100とした場合の共役ジオレフィン系重合体の重量%である。
【0012】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明によれば、遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体に配合する。これにより、この共重合体の湿熱時における酸素透過係数を顕著に改善することができる。
【0013】
後述する実施例を参照されたい。
エチレン含有量が32モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムの30℃−0%RHにおける酸素透過係数は10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下であるが、30℃−80%RHの高湿度条件下では、酸素透過係数が1.5×10−13cc・cm/cm/sec/cmHgに増大することが認められる。
【0014】
これに対して、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体に遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを配合したフィルムは、30℃−80%RHにおいて、10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下の酸素透過係数を示すのであって、高湿度条件下における酸素透過係数が少なくとも約1桁低い値に抑制されているのである。
【0015】
本発明で用いる共役ジオレフィン系重合体は酸乃至酸無水物で変性されていることが重要である。即ち、共役ジオレフィン系重合体はエチレン−ビニルアルコール共重合体との相溶性に乏しく、強いて混練してもゲル状となり、均一なフィルムとすることができないが、この共役ジオレフィン系重合体を酸乃至酸無水物で予め変性しておくことにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体との均一な混練及び製膜が可能となる。
【0016】
上記共役ジオレフィン系重合体は酸化可能なものであり、しかも遷移金属触媒との組み合わせでエチレン−ビニルアルコール共重合体に配合することが重要である。本発明に用いるガスバリヤー材における酸素透過の抑制は、共役ジオレフィン系重合体の酸化による酸素吸収に基づくものと考えられるが、高湿度条件下において前述した低い酸素透過係数、即ち30℃−80%RHにおける酸素透過係数が、10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下に抑制されることは予想外の知見である。
【0017】
本発明の積層構造体は、上記ガスバリヤー材を他の樹脂層等の基材に積層することにより形成される。この積層構造体も、勿論高湿度条件下における酸素バリヤー性に優れており、30℃−80%RHにおける酸素透過量が、2cc/m/day/atm以下であるという特徴を有している。
【0018】
本発明では、カルボン酸基乃至カルボン酸無水物基を有する共役ジオレフィン重合体を、前記式(1)を満足する範囲で、エチレン−ビニルアルコール共重合体に配合することが好ましい。
共役ジオレフィン系重合体の配合量が1重量%を下回ると酸素バリヤー性が不足し、酸価×配合量の積の値が、800を上回ると、樹脂組成物の製膜が困難となる。
【0019】
[エチレン−ビニルアルコール共重合体]
本発明では、酸素や香気成分に対するバリヤー性に特に優れた樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いる。エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、それ自体公知の任意のものを用いることができるが、例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。
このエチレン−ビニルアルコール共重合体ケン化物は、フイルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フェノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して 0.01dL/g 以上、特に0.05 dL/g 以上の粘度を有することが望ましい。
【0020】
[共役ジオレフィン系重合体]
本発明では、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体に、酸乃至酸無水物で変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体を配合する。
かかる共役ジオレフィン系重合体としては、炭素原子数4〜20の共役ジエンから誘導された単位を含むオリゴマー乃至ポリマーが好適に使用される。これらの単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが適している。
本発明の共役ジオレフィン系重合体は共役ジオレフィンのみからなっていることが好ましいが、勿論本発明は非共役ジエンや他のオレフィンがコモノマーとして存在することを否定するものではない。
【0021】
重合体中における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよく、要は酸化可能なものであればよい。
【0022】
本発明の共役ジオレフィン系重合体は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基等で変性されていることが重要である。これらの官能基を導入するのに用いられる単量体としては、上記の官能基を有するエチレン系不飽和単量体が挙げられる。
【0023】
これらの単量体としては、不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体を用いるのが望ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0024】
共役ジオレフィン系重合体の酸変性は、共役ジオレフィン系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸またはその誘導体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述した共役ジオレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体とをランダム共重合させることによっても製造することができる。
【0025】
本発明の目的に特に好適な酸変性共役ジオレフィン系重合体は、不飽和カルボン酸乃至その誘導体を、酸価が5KOHmg/g以上となる量で含有していることが好ましい。
不飽和カルボン酸乃至その誘導体の含有量が上記の範囲にあると、酸変性共役ジオレフィン系重合体のエチレン−ビニルアルコール共重合体への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。
【0026】
本発明に用いる共役ジオレフィン系重合体は、酸乃至酸無水物変性された状態で液状樹脂であることが好ましい。ムーニー粘度ML1+4(100℃)が10乃至250の範囲にあることが酸素吸収性樹脂組成物の加工性の点で好ましい。
【0027】
[遷移金属触媒]
本発明に用いる遷移金属触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの金属成分の内でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、本発明の目的に特に適したものである。
【0028】
遷移金属触媒は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩或いは有機酸塩或いは錯塩の形で一般に使用される。
無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
一方有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などが挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3−シクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることが出来る。
【0029】
[樹脂組成物]
本発明においては、カルボン酸基乃至カルボン酸無水物基を有する共役ジオレフィン系重合体を、エチレン−ビニルアルコール共重合体に1重量%以上、且つ下記式(1)を満足する範囲で配合することが好ましい。
酸価×配合量≦800 ‥(1)
但し、酸価はKOHmg/g、配合量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を100とした場合の共役ジオレフィン系重合体の重量%である。
また、この樹脂組成物においては、遷移金属触媒が、遷移金属量として100乃至1000ppm、特に200乃至500ppmの量で含有されていることが好ましい。
【0030】
酸乃至酸無水物変性共役ジオレフィン系重合体の量が上記範囲を下回ると、上記範囲内にある場合に比して、酸素バリヤー性が不十分となる傾向があり、一方共役ジオレフィン系重合体の量が上記範囲を上回ると、ガスバリヤー材の成形が困難となる傾向がある。
また、遷移金属触媒の量が上記範囲を下回ると、上記範囲内にある場合に比して、ガスバリヤー性が低下する傾向があり、一方この量が上記範囲を上回ると、樹脂組成物の混練成形時における劣化傾向が増大するので、やはり好ましくない。
【0031】
遷移金属触媒及び酸乃至酸無水物変性共役ジオレフィン系重合体をエチレン−ビニルアルコール共重合体に配合するには、種々の手段を用いることができる。この配合には、格別の順序はなく、任意の順序でブレンドを行ってよい。
【0032】
しかしながら、上記各成分のブレンドを均一に行い、しかも使用前における無駄な酸化を可及的に防止するためには、遷移金属触媒はエチレン−ビニルアルコール共重合体に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うために、一般に遷移金属触媒を有機溶媒に溶解し、この溶液と粉末或いは粒状のエチレン−ビニルアルコール共重合体とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下に乾燥するのがよい。
【0033】
一方、酸乃至酸無水物変性共役ジオレフィン系重合体は、上記遷移金属触媒を担持させたエチレン−ビニルアルコール共重合体にメルトブレンドにより配合するのがよく、こうすることにより、遷移金属触媒と酸乃至酸無水物変性共役ジオレフィン系重合体との副反応や前反応を防止することができる。
【0034】
遷移金属触媒を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができ、一般に遷移金属触媒の濃度が5乃至90重量%となるような濃度で用いるのがよい。
【0035】
エチレン−ビニルアルコール共重合体、酸乃至酸無水物変性共役ジオレフィン系重合体及び遷移金属触媒の混合、及びその後の保存は、組成物の前段階での酸化が生じないように、非酸化性雰囲気中で行うのがよい。この目的に減圧下或いは窒素気流中での混合或いは乾燥が好ましい。
この混合及び/または乾燥は、ベント式或いは乾燥機付の押出機や射出機を用いて、成形工程の前段階で行うことができる。
【0036】
本発明の最も好適な態様では、サイドフィードを備えた二軸押出機を用い、遷移金属触媒をまぶしたエチレン−ビニルアルコール共重合体を予め溶融混練し、この溶融混練物中に酸乃至酸無水物変性共役ジオレフィン系重合体を液状で供給して、両者の一様な混練を達成する。
上記2軸押出機を用いる混練方式では、混練を低い温度及び圧力で行うことが可能であり、ゲル等の発生を防止しながら、均一な混練物を得ることができる。
【0037】
本発明で用いるガスバリヤー材には、一般に必要ではないが、所望によりそれ自体公知の活性化剤を配合することができる。活性化剤の適当な例は、これに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン・メタクリル酸共重合体、各種アイオノマー等の水酸基及び/またはカルボキシル基含有重合体である。
これらの水酸基及び/またはカルボキシル基含有重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部当たり30重量部以下、特に0.01乃至10重量部の量で配合することができる。
【0038】
本発明に用いる酸素吸収層には、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂乃至ゴム、等の公知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合できる。
例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系のもの、およびそれらの混合系が一般に用いられる。滑剤の添加量は、熱可塑性基準で50乃至1000ppmの範囲が適当である。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、メルトブレンド後には、エチレン−ビニルアルコール共重合体が連続相(マトリックス)及び共役ジオレフィン系重合体が分散相として存在している。
【0040】
[積層構造体]
本発明では、上記ガスバリヤー材の少なくとも1層を、必要により他の樹脂層の少なくとも1層と組み合わせて、カップ、トレイ、ボトル、チューブ容器、パウチ等の形のプラスチック積層構造体とする。
一般に、ガスバリヤー層は、容器などの外表面に露出しないように容器などの外表面よりも内側に設けるのが好ましく、また内容物との直接的な接触を避ける目的で、容器などの内表面より外側に設けるのが好ましい。かくして、積層の樹脂容器の少なくとも1個の中間層として、ガスバリヤー材層を設けるのが望ましい。
【0041】
積層構成の容器の場合、ガスバリヤー層と組み合わせる他の樹脂層としては、オレフィン系樹脂や熱可塑性ポリエステル樹脂などの耐湿性樹脂や他のガスバリヤー性樹脂等が挙げられる。
オレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、或いはこれらの共重合ポリエステル、更にはこれらのブレンド物等が挙げられる。
更にまた、バリヤー性樹脂の他の例としては、環状オレフィン系共重合体(COC)、特にエチレンと環状オレフィンとの共重合体、特に三井化学社製のAPEL等を用いることができる。
【0042】
容器積層構造の適当な例は、酸素バリヤー性樹脂組成物の層(以下単に酸素バリヤー層と呼ぶ)をOBRとして表して、次の通りである。また、どちらの層を内面側にするかは、目的によって自由に選択することができる。
二層構造:PET/OBR、PE/OBR、PP/OBR、
三層構造:PE/OBR/PET、PET/OBR/PET、PE/OBR/PP、EVOH/OBR/PET、PE/OBR/COC、
四層構造:PE/PET/OBR/PET、PE/OBR/EVOH/PET、PET/OBR/EVOH/PET、PE/OBR/EVOH/COC、
五層構造:PET/OBR/PET/OBR/PET、PE/PET/OBR/EVOH/PET、PET/OBR/EVOH/COC/PET、PET/OBR/PET/COC/PET、PE/OBR/EVOH/COC/PET、
六層構造:PET/OBR/PET/OBR/EVOH/PET、PE/PET/OBR/COC/EVOH/PET、PET/OBR/EVOH/PET/COC/PET、
七層構造:PET/OBR/COC/PET/EVOH/OBR/PET、
などである。
【0043】
上記積層構造体の製造に当たって、各樹脂層間に必要により接着剤樹脂を介在させることもできる。
このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1乃至700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、特に10乃至500meq /100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。接着剤樹脂の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフイン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフイン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合熱可塑性等の1種又は2種以上の組合せである。これらの樹脂は、同時押出或いはサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。
また、予じめ形成されたガスバリヤー性樹脂フイルムと耐湿性樹脂フイルムとの接着積層には、イソシアネート系或いはエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂も使用される。
【0044】
本発明の積層構造体から成る積層容器において、酸素吸収層の厚みは、特に制限はないが、一般に3乃至100μm、特に5乃至50μmの範囲にあるのが好ましい。即ち、酸素吸収層の厚みがある範囲よりも薄くなると酸素吸収性能が劣り、またある範囲よりも厚くなっても酸素吸収性の点では格別の利点がなく、樹脂量が増大するなど経済性の点、材料の可撓性や柔軟性が低下するなどの容器特性の点では不利となるからである。
【0045】
本発明の積層構造体から成る積層容器において、全体の厚みは、用途によっても相違するが、一般に30乃至7000μm、特に50乃至5000μmの範囲にあるのがよく、一方酸素バリヤー性中間層の厚みは、全体の厚みの0.5乃至95%、特に1乃至50%の厚みとするのが適当である。
【0046】
本発明の積層構造体から成る積層容器は、前述したガスバリヤー材を用いる点を除けば、それ自体公知の方法で製造が可能である。
例えば、フィルム、シート或いはチューブの成形は、前記樹脂組成物を押出機で溶融混練した後、T−ダイ、サーキュラーダイ(リングダイ)等を通して所定の形状に押出すことにより行われ、T−ダイ法フィルム、インフレーションフィルム等が得られる。Tダイフィルムはこれを二軸延伸することにより、二軸延伸フィルムが形成される。
また、前記樹脂組成物を射出機で溶融混練した後、射出金型中に射出することにより、容器や容器製造用のプリフォームを製造する。
更に、前記樹脂組成物を、押出機を通して一定の溶融樹脂塊に押し出し、これを金型で圧縮成形することにより、容器や容器製造用のプリフォームを製造する。
成形物は、フイルム、シート、ボトル乃至チューブ形成用パリソン乃至はパイプ、ボトル乃至チューブ成形用プリフォーム等の形をとり得る。
パリソン、パイプ或いはプリフォームからのボトルの形成は、押出物を一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易に行われる。
また、パイプ乃至はプリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
更に、また、フイルム乃至シートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器やフィルム乃至シートからなる蓋材が得られる。
【0047】
フィルム等の包装材料は、種々の形態の包装袋として用いることができ、その製袋は、それ自体公知の製袋法で行うことができ、三方或いは四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋などが挙げられるが、この例に限定されない。
【0048】
積層押出成形体の製造には、それ自体公知の共押出成形法を用いることができ、例えば樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、積層多重ダイを用いる以外は上記と同様にして押し出し成形を行えばよい。
また、積層射出成形体の製造には、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、共射出法や逐次射出法により積層射出成形体を製造することができる。
更に、積層フィルムや積層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって積層フィルムあるいはシートを製造することもできる。
【0049】
本発明の積層構造体から成る積層容器は、酸素による内容物の香味低下を防止しうる容器として有用である。
充填できる内容物としては、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品等、その他では医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品などが挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0050】
【実施例】
本発明を次の例により更に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものでない。
【0051】
[酸価の測定]
試料を適当な溶媒に完全に溶解した後、アルコール性0.1N−KOH溶液で滴定して全酸価を求めた。
[分子量の測定]
試料をクロロホルムに溶解し、光散乱検出器、屈折検出器、粘度検出器を備えた検出システム(TriSEC 302TDA 検出器:旭テクネイオン(株))を接続したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(カラム:TSK G5000HHR+4000HHR:東ソー(株))を用いて、数平均分子量及び重量平均分子量を測定した。
【0052】
[酸素透過性能の測定]
酸素透過係数測定装置(OX−TRAN:モダンコントロール社)を使用した。サンプルが透過セルの面積(面積50cmの円形)に満たない場合には、以下の方法を用いた。厚さ50μmのアルミ箔に厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤で貼り付けた積層体を10cm角に切り出し、中央に直径25または50mmの孔を開けた。この積層体のポリエチレンテレフタレートフィルムを孔の部分まで剥がし、前記開孔部を塞ぐように測定したい試料を粘着剤に貼りつけた。この時、気泡が測定試料と粘着剤の間に入らないように十分注意した。次いで、剥がしたポリエチレンテレフタレートフィルムを気泡が入らないように注意してかぶせることで、前記開孔部に被測定試料をつけたホルダーを作製した。このホルダーを前記OX−TRANに装着し、酸素透過量を求め、測定試料の面積補正を行うことで、酸素透過量乃至酸素透過係数を求めた。
酸素透過性能の測定は、30℃−80%RHの条件下において、OX−TRANの片側のセルに純酸素、もう一方のセルに窒素ガス(1%水素ガス配合)を流して行った。
【0053】
[実施例1]
32モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット(EP−F101B:(株)クラレ)とコバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICANATE5000:大日本インキ化学工業(株))をタンブラーで混合し、コバルト量で350ppmのネオデカン酸コバルトをエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット表面に均一に付着させた。
次いで、出口部分にT−ダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、低真空ベントを引きながら、液体フィーダーにより、数平均分子量5900、重量平均分子量69000、酸価148KOHmg/gの無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(BN−1015、日本曹達(株))を、コバルトを付着させたエチレン−ビニルアルコール共重合体970重量部に対して30重量部となるように滴下し、成形温度200℃で厚さ20μmの単層フィルムを作製した。作製したフィルムの無水マレイン酸変性ポリブタジエンの配合量は3wt%、酸価×配合量は444であった。
作製したフィルムを酸素透過係数測定装置(OX−TRAN 2/20:モダンコントロール社)に装着し、30℃−80%RHの条件で、片側のセルを純酸素にして、酸素透過量OTRを測定し、その値より酸素透過係数を算出した。酸素透過係数は、10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下であり、高湿度下においてもベースのエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べ、格段に優れたバリヤー性を示していた。
【0054】
[実施例2]
32モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット(EP−F101B:(株)クラレ)とコバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICANATE5000:大日本インキ化学工業(株))をタンブラーで混合し、コバルト量で350ppmのネオデカン酸コバルトをエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット表面に均一に付着させた。
次いで、出口部分にT−ダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、低真空ベントを引きながら、液体フィーダーにより、数平均分子量5800、重量平均分子量41000、酸価40KOHmg/gの無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(M−2000−20、日本石油化学(株))を、コバルトを付着させたエチレン−ビニールアルコール共重合体950重量部に対して50重量部となるように滴下し、成形温度200℃で厚さ20μmの単層フィルムを作製した。作製したフィルムの無水マレイン酸変性ポリブタジエンの配合量は5wt%、酸価×配合量は200であった。
作製したフィルムを酸素透過係数測定装置(OX−TRAN 2/20:モダンコントロール社)に装着し、30℃−80%RHの条件で、片側のセルを純酸素にして、酸素透過量OTRを測定し、その値より酸素透過係数を算出した。酸素透過係数は、10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下であり、高湿度下においてもベースのエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べ、格段に優れたバリヤー性を示していた。
【0055】
[実施例3]
44モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット(EP−E105B:(株)クラレ)とコバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICANATE5000:大日本インキ化学工業(株))をタンブラーで混合し、コバルト量で350ppmのネオデカン酸コバルトをエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット表面に均一に付着させた。
次いで、出口部分にT−ダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、低真空ベントを引きながら、液体フィーダーにより、数平均分子量5900、重量平均分子量69000、酸価148KOHmg/gの無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(BN−1015、日本曹達(株))を、コバルトを付着させたエチレン−ビニルアルコール共重合体946重量部に対して54重量部となるように滴下し、厚さ50μmの単層フィルムを作製した。作製したフィルムの無水マレイン酸変性ポリブタジエンの配合量は5.4wt%、酸価×配合量は800であった。
作製したフィルムを酸素透過係数測定装置(OX−TRAN 2/20:モダンコントロール社)に装着し、30℃−80%RHの条件で、片側のセルを純酸素にして、酸素透過量OTRを測定し、その値より酸素透過係数を算出した。酸素透過係数は、10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下であり、高湿度下においてもベースのエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べ、格段に優れたバリヤー性を示していた。
【0056】
[実施例4]
無水マレイン酸変性ポリブタジエンを、コバルトを付着させたエチレン−ビニルアルコール共重合体990重量部に対して10重量部となるように滴下する以外は、実施例2と同様にしてフィルムを作製した。フィルム中の無水マレイン酸変性ポリブタジエンの配合量は、1wt%、酸価×配合量は40であった。
得られたフィルムの30℃−80%RHの酸素透過係数は、4×10−14cc・cm/cm/sec/cmHgであり、高湿度下においてもベースのエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べ、格段に優れたバリヤー性を示していた。
【0057】
[実施例5]
32モル%のエチレンを共重合したエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット(EP−F101B:(株)クラレ)とコバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICANATE5000:大日本インキ化学工業(株))をタンブラーで混合し、コバルト量で350ppmのネオデカン酸コバルトをエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレット表面に均一に付着させた。
次いで、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、低真空ベントを引きながら、液体フィーダーにより、数平均分子量5800、重量平均分子量41000、酸価40KOHmg/gの無水マレイン酸変性液状ポリブタジエン(M−2000−20、日本石油化学(株))を、コバルトを付着させたエチレン−ビニルアルコール共重合体950重量部に対して50重量部となるように滴下し、成形温度200℃でストランドを引き、ペレットを作製した。ペレット中の無水マレイン酸変性ポリブタジエンの配合量は5wt%、酸価×配合量は200であった。
作製したペレットをガスバリヤー層とする厚さ1.2mmの3種5層の積層シート(PP/接着剤/ガスバリヤー層/接着剤/PP:550μm/20μm/60μm/20μm/550μm)を作製した。この積層シートを用いて固相成形法により、H/D比(高さ/口径比)が0.8の丸形カップを成形した。カップの最薄肉部分の厚さは0.36mmであった。この最薄肉部分周辺を切り出し、酸素透過係数測定装置(OX−TRAN:モダンコントロール社)により、30℃−80%RHにおける酸素透過量を測定した結果、0.2cc/m/day/atmであった。
【0058】
[実施例6]
実施例5で作製したペレットを用いて、ダイレクトブロー成形法により、3種5層のマヨネーズボトル形状の積層ボトル(LDPE/接着剤/ガスバリヤー層/接着剤/LDPE)を作製した。積層ボトル中の各樹脂の重量比は、LDPEが92重量%、接着剤が4重量%、ガスバリヤー層が4重量%となるように設定した。ボトル胴部の最薄肉部分の厚みは0.31mmであった。この積層ボトルの胴部最薄肉部分周辺を切り出し、酸素透過係数測定装置(OX−TRAN:モダンコントロール社)により、30℃−80%RHにおける酸素透過量を測定した結果、0.5cc/m/day/atmであった。
【0059】
[実施例7]
実施例2で作製したフィルムに接着剤を介して片面に厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、他の片面に厚さ50μmの未延伸ランダムポリプロピレンフィルムを積層し、ポリプロピレンカップ用の蓋材を作製した。酸素透過係数測定装置(OX−TRAN:モダンコントロール社)により、この蓋材用積層体の30℃−80%RHにおける酸素透過量を測定した結果、0.1cc/m/day/atmであった。
また、この蓋材を窒素置換したバキュームグローブボックス中で蒸留水1ccを入れた内容積85ccのスチール箔積層カップ状容器のハイレトフレックス(HR78−105 東洋製罐(株))にヒートシールした。この容器を、レトルト釜中で熱水等圧条件により85℃−30分間ボイル処理し、処理後30℃―80%RHの雰囲気下に保存し、1日後の透過酸素量をガスクロマトグラフィー(GC−3BT:島津製作所(株)、検出器:TCD(60℃)、カラム:モレキュラーシーブ5A(100℃)、キャリアーガス:アルゴン)により測定した結果、容器内に透過した酸素量は、0.013cc/カップであった。このように本発明の樹脂組成物を用いた積層構造体は、ボイル処理のような過酷な条件下においても優れたガスバリヤー性を示した。
【0060】
[比較例1]
共役ジオレフィン共重合体を配合しないこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。フィルムの30℃−80%RHにおける酸素透過係数は、1.5×10−13cc・cm/cm/sec/cmHgであった。
【0061】
[比較例2]
共役ジオレフィン共重合体を配合しないこと以外は実施例3と同様にしてフィルムを作製した。フィルムの30℃−80%RHにおける酸素透過係数は、2.2×10−13cc・cm/cm/sec/cmHgであった。
【0062】
[比較例3]
無水マレイン酸変性ポリブタジエンを、コバルトを付着させたエチレン−ビニルアルコール共重合体942重量部に対して58重量部となるように滴下する以外は、実施例3と同様にフィルムの作製を行ったが、樹脂組成物の粘度が異常に高く、吐出が均一にできずフィルムが作製できなかった。この樹脂組成物の、無水マレイン酸変性ポリブタジエンの配合量は5.8wt%、酸価×配合量は858であった。
【0063】
[比較例4]
無水マレイン酸変性ポリブタジエンを、コバルトを付着させたエチレン−ビニルアルコール共重合体993重量部に対して7重量部となるように滴下する以外は、実施例2と同様にフィルムを作製した。無水マレイン酸変性ポリブタジエンの配合量が0.7wt%と本発明の範囲より低く、得られたフィルムの酸素透過係数は、9.5×10−14cc・cm/cm/sec/cmHgであった。
【0064】
[比較例5]
末端水酸基変性ポリイソプレン(poly ip:出光石油化学(株))を使用する以外は、実施例2と同様にしてフィルムの作製を行ったが、本発明と変性された官能基が異なるため、ゲルが多く均一なフィルムにならなかった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0065】
【表1】
Figure 0004186609
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを、エチレン−ビニルアルコール共重合体に配合することにより、優れた加工性を保持しながら、この共重合体の湿熱時における酸素透過係数を顕著に改善することができる。
即ち、本発明のガスバリヤー材では、30℃−80%RHにおける酸素透過係数を、5×10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下に保持することができる。
また、上記ガスバリヤー材を備えた本発明の積層構造体では、30℃−80%RHにおける酸素透過量を、2cc/m/day/atm以下に抑制することができる。
さらに、本発明のガスバリヤー材及び積層構造体においては、カルボン酸乃至カルボン酸無水物基を有する共役ジオレフィン系重合体を、エチレン−ビニルアルコール共重合体に1重量%以上、且つ下記式(1)を満足する範囲で、すなわち、酸価×配合量≦800‥(1)(但し、酸価はKOHmg/g、配合量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を100とした場合の共役ジオレフィン系重合体の重量%)で配合することにより、優れた分散性を実現し、優れた加工性を保持しながら、この共重合体の湿熱時における酸素透過係数を顕著に改善することができる。

Claims (4)

  1. 遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物からなる、30℃−80%RHにおける酸素透過係数が、5×10−14cc・cm/cm/sec/cmHg以下であることを特徴とするガスバリヤー材。
  2. カルボン酸基乃至カルボン酸無水物基を有する共役ジオレフィン系重合体を、エチレン−ビニルアルコール共重合体に1重量%以上、且つ下記式(1)を満足する範囲で配合したことを特徴とする請求項1に記載のガスバリヤー材。
    酸価×配合量≦800 ‥(1)
    但し、酸価はKOHmg/g、配合量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を100とした場合の共役ジオレフィン系重合体の重量%。
  3. 遷移金属触媒と酸乃至酸無水物により変性された酸化可能な共役ジオレフィン系重合体とを含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物からなるガスバリヤー材を用いた積層構造体において、30℃−80%RHにおける積層構造体の酸素透過量が2cc/m/day/atm以下であることを特徴とする積層構造体。
  4. カルボン酸基乃至カルボン酸無水物基を有する共役ジオレフィン系重合体を、エチレン−ビニルアルコール共重合体に1重量%以上、且つ下記式(1)を満足する範囲で配合したことを特徴とする請求項3に記載の積層構造体
    酸価×配合量≦800 ‥(1)
    但し、酸価はKOHmg/g、配合量は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を100とした場合の共役ジオレフィン系重合体の重量%。
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