JP4186189B2 - 光学測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学測定装置に関し、特に円二色性を測定することのできる光学測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
円二色性とは右回り円偏光と左回り円偏光に対して試料が異なる吸収強度を示す性質であり、化学や生物学の分野では物質の構造決定や物質の同定、濃度測定のために利用される。従来の円二色性測定装置は、光弾性変調器によって右回り円偏光と左回り円偏光を作り出す(特許文献1,2)。図8は、従来の円二色性測定装置の概略構成図である。光源71からの出射光は分光器72によって単色光とされ、偏光子73を通して直線偏光とされる。偏光子73によって直線偏光となった光は、光弾性変調器74によって円偏光に変換され、試料Sに照射される。試料Sを透過した円偏光の光は光検出器75により検出される。測定の際には、光弾性変調器74を制御して一定の周期で右回り円偏光と左回り円偏光を交互に作りだし、その周波数に同期した試料透過光の変化分を検出する。この方法によると散乱光などの影響を除去できるため、高精度な測定を行うことができる。
【0003】
この他、二成分の光を空間的に分離して旋光性を測定する装置が特許文献3,4に記載されている。また、特許文献5には、光弾性変調器を試料より後段に設置した円二色性測定装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−133399号公報
【特許文献2】
特開昭51−94986号公報
【特許文献3】
特開平11−258154号公報
【特許文献4】
特開平7−318429号公報
【特許文献5】
特開平6−317518号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、光弾性変調器は、素子自体が高価な上、温度に敏感なため、温度コントローラーを併設する必要がある。加えて、時間的に分離された測定結果から信号を復元するために専用の電子回路が必要となる。従って、光弾性変調器を用いると装置が大型化、高価になる。また、ユーザーによる調整も容易ではない。更に、円偏光を作り出すためには光弾性変調器に適切な駆動電圧を印加する必要がある。しかし、必要な電圧は波長によってまちまちであるため、一度に広い波長範囲の光を円偏光にすることはできない。そのため、広い波長範囲を測定するには波長掃引が必要となり、測定に時間を要する。
【0006】
このように、光弾性変調器を用いた従来の円二色性測定装置には、装置の大型化、大きな温度依存性、時間的に分離して測定し最後に信号を復元させる電子回路が必要、波長の狭帯域性等の問題点があった。また、既存の円二色性装置は装置の自由度が少なく、他の分光装置と組み合わせたり、新しい現象の測定に利用したりするのが困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、小型で安価に製造でき、またユーザーが簡単に調整できる円二色性測定装置を提供することを目的とする。また、本発明は、自由度の大きな円二色測定装置を提供することをも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、試料透過光を広帯域波長板と偏光ビームスプリッタに通すことで、試料位置において右回り円偏光だった成分と左回り偏光だった成分とを試料の後方で空間的に分離して検出し、その差分を測定することで前記目的を達成する。この構成によると、高価な光弾性変調器が不要となるので、装置の小型化、低価格化が可能となる。広帯域波長板としては、フレネルロムやアクロマティック波長板を用いることができる。フレネルロムは、利用できる波長帯域が広く、性能の波長依存性も小さいため、本発明に用いる広帯域波長板として好ましい。
【0009】
測定器としての性能を向上させる一つの方法として偏光ビームスプリッタの精度を高める方法がある。また、装置の調整は試料のない状態で2つの光検出器の出力が同じになるようにソフトウェア上で定数を乗ずればよい。光学系の調整や電子回路の調整は不要となるので専門的な知識を持たないユーザーでも簡単に調整が行えるようになる。
【0010】
なお、フレネルロムにより作り出される位相差は90度から多少ずれるため(約2度程度)、円二色性の測定結果に円複屈折がノイズとして加わる可能性がある。このような場合は、できるかぎり完全な無偏光光源を用意し、それを直接サンプルに入射し、偏光ビームスプリッタで偏光成分を分離してから分光器で波長を分解するという方法をとればよい。
【0011】
本発明の一態様による光学測定装置は、試料に左右の円偏光成分を等量含む光を照射する光照射部と、試料を透過した右回り円偏光と左回り円偏光を互いに直交する直線偏光に変換する広帯域波長板と、広帯域波長板から出射した互いに直交する直線偏光を分離する偏光分離部と、偏光分離部によって分離された直線偏光をそれぞれ検出する第1及び第2の検出部とを含む。左右の円偏光成分を等量含む光は、例えば偏光子によって直線偏光を作り出すことで生成することができる。
【0012】
照射部は分光器を備えて単色光を発生するものであってよい。このとき第1及び第2の検出部はそれぞれ光検出器とすることができる。また、第1及び第2の光検出器の出力を演算する演算部を備え、制御部によって分光器の出射波長を制御すると共に、制御部から演算部に波長制御情報を出力するように構成すると、波長掃引しながら試料の円二色性スペクトルを取得することができる。
【0013】
あるいは、光照射部は複数の波長を含む直線偏光を発生するものであってもよい。このとき、第1及び第2の検出部はそれぞれマルチチャンネルアナライザを備えるのが好ましい。この構成によると、波長掃引することなく一度に試料の円二色性スペクトルを取得することができる。
【0014】
本発明の他の態様による光学測定装置は、試料を周期的に励起する試料励起部と、試料に単色の直線偏光を照射する光照射部と、試料を透過した右回り円偏光と左回り円偏光を互いに直交する直線偏光に変換する広帯域波長板と、広帯域波長板から出射した互いに直交する直線偏光を分離する偏光分離部と、偏光分離部によって分離された直線偏光をそれぞれ検出する第1及び第2の光検出器と、第1及び第2の光検出部の出力から試料励起部による試料の励起に同期した信号を検出する第1及び第2のロックイン増幅器とを含む。
【0015】
試料励起部は試料に周期的な電圧を印加するもの、あるいは試料に周期的な励起光照射を行うものとすることができる。この場合には、光照射部に光源及び分光器を備え、制御部によって分光器の出射波長を制御するとと共に、第1及び第2のロックイン増幅器の出力を演算する演算部に波長制御情報を供給することにより電場変調円二色性スペクトル、あるいは過渡円二色性スペクトルを取得することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。理解を容易にするために、以下の図において同じ機能を有する部分には同一の符合を付して説明する。
【0017】
図1は、本発明による円二色性測定装置の基本的な構成例を示す概略図である。
ハロゲンランプやキセノンランプ等の光源11からの出射光は、分光器12によって単色光とされ、偏光子13によって直線偏光とされて試料Sに照射される。試料Sは試料保持部に保持されている。試料透過光は、広帯域波長板としてのフレネルロム14に入射される。フレネルロム14は、入射した右回り円偏光と左回り円偏光を互いに直交する直線偏光に変換する作用をする。フレネルロム14から出射した光は、偏光分離部15に入射され、試料位置で右回り円偏光であった成分と左回り円偏光であった成分が分離され、2個の光検出器16a,16bでそれぞれ検出される。光検出器16a,16bの出力は演算部17に入力され、演算部17で演算された結果が表示部19に表示される。分光器12は制御部18によって制御され、所望の波長光が出射される。制御部18は、分光器12を制御すると共に、演算部17に分光器12からの出射波長の情報を供給する。
【0018】
上記構成例では広帯域波長板としてフレネルロムを用いたが、限定的な波長領域では薄型のアクロマティック波長板などを用いることもできる。薄型のアクロマティック波長板の使用は、装置の小型化の点では有利である。しかし、広帯域性を考慮すると、フレネルロムの方が好ましい。
【0019】
光学素子の角度については、偏光子12とフレネルロム14は水平に配置し、偏光分離部15は45度傾けて設置する。ここで水平とは偏光子12の側辺とフレネルロム14の側辺が平行になる角度を意味し、機能的には偏光子12から出た直線偏光が直線偏光のままフレネルロム14から出る配置を指す。一方、45度傾けるとはフレネルロム14の側辺に対し、偏光ビームスプリッタ15の側辺が45度傾いていることを意味し、機能的にはフレネルロム14から出た直線偏光が二等分されて16a,16bの光検出器に達するような配置を言う。
【0020】
測定にあたっては、試料Sがない状態で2つの光検出器16a,16bの出力が同じ値を示すように装置を調整する。例えば、演算部17において2つの光検出器16a,16bの出力に適当な定数をかけて同じ値となるように校正する。このようにして校正された光検出器16aの出力をA、光検出器16bの出力をBとするとき、(A−B)/(A+B)を演算することにより、その測定波長における試料の円二色性を評価できる。広帯域波長板、特にフレネルロムの特性は広い波長領域で波長に依存しない。従って、制御部18で分光器12を制御して波長掃引しながら各波長において光検出器16a,16bの出力から(A−B)/(A+B)を演算することにより、試料Sの円二色性スペクトルを迅速に測定することができる。測定結果は表示部19に表示される。
【0021】
図2は、フレネルロムの原理を説明する図である。光が2つの媒質の界面で全反射するとき、P偏光とS偏光では異なる位相シフトを受ける。この位相シフトは2つの媒質(今の場合、ガラスと空気)の屈折率比と入射角にしか依存せず、直接的には波長に依存しないため、広い範囲の波長にわたって一定の位相差を作り出せる。フレネルロムでは2回の全反射により90度の位相差を生むように設計されているため、光の進行方向を変えることなく偏光状態を制御することができる。こうして、波長に依存することなく、直線偏光を円偏光に、逆に円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0022】
図3は偏光分離部の説明図であり、図3(a)は一般的な偏光ビームスプリッタ、図3(b)は本発明の円二色性測定装置に組み込まれる偏光分離部の説明図である。
【0023】
本発明の装置に組み込まれる偏光分離部には、縦偏光と横偏光の光を正確に分離することが求められる。しかし市販の偏光子や、図3(a)に示す一般の偏光ビームスプリッタ21では、透過側(P偏光)も反射側(S偏光)もどちらも偏光純度は100%ではなく、また他成分の混合比率も等しくない。そこで、図3(b)に示すように、複数の偏光ビームスプリッタ22〜24を組み合わせ、どちらの偏光光も一回の反射と一回の透過を経て光検出器へ達するようにするのが好ましい。図の例では、偏光ビームスプリッタ22を透過した横偏光の光はもう一度偏光ビームスプリッタ23で反射させて取り出す。また、偏光ビームスプリッタ22で反射した縦偏光の光は、別の偏光ビームスプリッタ24を透過させてから取り出す。このようにすると偏光純度が高くなり、散乱などによる光の減衰率も等しくなるためS/Nの向上が期待できる。
【0024】
偏光分離部に複数の偏光ビームスプリッタを組み合わせたものを用いたことによる影響を補償するための装置調整は、試料のない状態で2つの光検出器の出力が同じになるように、ソフトウェア上で定数を乗ずることで行われる。光学系の調整や電子回路の調整は不要となるので、専門的な知識を持たないユーザーでも簡単に調整が行えるようになる。なお、カルサイトを用いた偏光子、偏光ビームスプリッタは、カルサイトの旋光性のために縦偏光と横偏光が混ざる可能性がある。従って、偏光子や偏光ビームスプリッタの材料としては、BK7や溶融石英のような光学不活性な素材を用いるのがよい。
【0025】
本発明によると、光弾性変調器を用いることによる制約から解放されるので、円二色性測定装置を他の分光装置と組み合わせたり、新しい現象を測定するための装置の拡張も容易に行える。
【0026】
例えば、円二色性測定と吸光光度測定との組み合わせである。一般に円二色性スペクトルは吸収スペクトルと比較して初めて意味を持つ。これまでは円二色性スペクトルの測定と吸収スペクトルの測定には別々の装置を用意する必要があり、測定が煩雑になると共に測定の間に試料が劣化する危険性もあった。本発明の原理を用いれば、吸光度計の検出器の一部を広帯域波長板や偏光ビームスプリッタに置き換えるだけで、吸収スペクトルと円二色性スペクトルを同一の装置でしかも同時に測定することが可能となる。
【0027】
図4は、吸光光度計の機能をも有する本発明の円二色性測定装置の構成例を示す図である。
【0028】
一般的な吸光光度計では分光器から出る光を2つに分け、一方を参照用試料に透過させ、他方を試料に通過させて、その透過光強度の比を測定する。図4に示した円二色性測定装置は、分光器12と偏光子13の間にハーフミラー31を挿入して光路を分割する。ハーフミラー31によって反射された光は反射ミラー32で光路を曲げられ、偏光子33を通って直線偏光とされた後、参照試料Rに入射する。参照試料Rは参照試料保持部に保持されている。参照試料Rを透過した光は光検出器16cで検出され、参照試料Rの吸光度が測定される。偏光子33は、試料Sへの照射光と参照試料Rへの照射光の条件を同じにするために、参照試料Rの前に配置したものである。試料Sの直後には、広帯域波長板14と偏光分離部15が配置され、偏光分離部15によって分離された互いに直交する直線偏光を光検出器16a,16bで検出することで、試料透過光の右回り円偏光成分と左回り円偏光成分の強度を測定する。
【0029】
光検出器16cによって検出された参照試料Rの透過光強度をCとするとき、演算部17では、(A−B)/(A+B)を演算することで、その測定波長における試料の円二色性を評価でき、log(C/(A+B))を演算することで、その測定波長における試料の吸光度を評価できる。制御部18で分光器12を制御して波長掃引しながら、各波長において光検出器16a,16b,16cの出力から(A−B)/(A+B)及びlog(C/(A+B))を演算することにより、試料Sの円二色性スペクトルと吸収スペクトルを同時にかつ迅速に測定することができる。
【0030】
他の例として電場変調円二色性測定と過渡円二色性測定について説明する。既存の円二色性測定装置では、光弾性変調器を交流電圧で駆動し、検出器からの信号を復調して測定信号を得ていた(この手法は位相敏感法またはロックイン検出法と呼ばれる)。本発明の円二色性測定装置では光弾性変調器が不要となるため、このロックイン検出法を他の用途に活用することができる。電場変調円二色性測定では試料に印加する交流電圧に同期した信号を検出することにより、過渡円二色性測定では励起光のオン・オフに同期した信号を検出することにより、電界または励起光により誘起された円二色性を観測することができる。
【0031】
図5は、電場変調円二色性測定のための装置構成例を示す図である。この測定装置は、電場変調分光法と呼ばれる印加電圧による試料の光学特性の変化を測定する分光法と円二色測定法を組み合わせた測定装置である。
【0032】
試料Sには、交流電源41から電極42,43を介して一定周波数の交流電圧が印加される。光検出器16a,16bの出力はロックイン増幅器44a,44bに入力される。ロックイン増幅器44a,44bの参照入力には、交流電源41からの信号が入力され、試料印加電圧に同期した信号が検出される。ロックイン増幅器44a,44bの検出出力は演算部17に入力される。演算部17では、2つの光検出器16a,16bのロックイン出力A,Bから(A−B)/(A+B)を演算することにより、電界によって励起された試料の円二色性を測定することができる。制御部18で分光器12を制御して波長掃引しながら、2つの光検出器16a,16bのロックイン出力A,Bをもとに(A−B)/(A+B)を演算することにより、電場変調円二色性スペクトルを測定することができる。測定結果は表示部19に表示される。
【0033】
図6は、過渡吸収測定と呼ばれる強い励起光による光学特性の変化を測定する分光法と円二色測定法とを組み合わせた測定装置の構成例を示す図である。
【0034】
試料Sには、レーザ光源51からの励起レーザ光と、分光器12及び偏光子13を通った測定光が照射される。励起レーザ光は、一定周期でオン・オフ制御されて試料Sに照射される。励起レーザ光のオン・オフ制御は、図示の例では制御部18の制御下にあるチョッパー駆動部52によってチョッパー53を駆動することにより行っているが、制御部18がレーザ光源51を一定周期でパルス駆動することによりオン・オフ制御してもよい。
【0035】
試料透過光は、フレネルロム14などの広帯域波長板に入射され、試料位置での右回り円偏光と左回り円偏光は互いに直交する直線偏光に変換され、偏光分離部15によって分離されて2個の光検出器16a,16bでそれぞれ検出される。光検出器16a,16bの出力は、参照信号としてチョッパー駆動部52からのチョッパー駆動信号が入力されているロックイン増幅器44a,44bに入力され、励起レーザ光のオン・オフと同期して変化する検出信号強度が検出され、演算部17に入力される。演算部17では、2つの光検出器16a,16bのロックイン出力A,Bから(A−B)/(A+B)を演算することにより、レーザ光照射によって励起された試料の円二色性を測定することができる。制御部18で分光器12を制御して波長掃引しながら、2つの光検出器16a,16bのロックイン出力A,Bをもとに(A−B)/(A+B)を演算することにより、そのスペクトルを測定することができる。測定結果は表示部19に表示される。
【0036】
電界によって励起された試料の円二色性も、光照射によって励起された試料の円二色性も、信号強度が微弱なため、測定可能な試料はある程度限定されるが、これらの方法により、光学活性材料のより詳細な測定を行うことが可能となる。
【0037】
図7は、本発明の他の例である時間分解能を有する円二色性測定装置の構成例を示す概略図である。この円二色性測定装置は、試料へ広帯域の波長光(例えば白色光)を入射させ、検出器の位置でマルチチャンネルアナライザにより波長分解と時間分解を同時に行うことで、その後の数値処理により時間分解の円二色性スペクトル測定を可能とするものである。これは光弾性変調器の狭帯域性がなくなったために可能となる測定法である。
【0038】
白色光源11からの光は偏光子13を通って一定方向の直線偏光とされた後、試料Sに入射する。試料透過光はフレネルロム14などの広帯域波長板に入射され、試料位置での右回り円偏光と左回り円偏光は互いに直交する直線偏光に変換され、偏光分離部15に入射する。偏光分離部15によって分離された互いに直交する方向の偏光光は2組のマルチチャンネルアナライザ61a,61bでそれぞれ検出される。マルチチャンネルアナライザとは回折格子と撮像素子(CCD)が一体化された分光装置で、波長分解と多波長での光検出を同時に行うことのできる装置である。この装置では所望の波長範囲のスペクトル測定を約0.1秒程度で行うことが可能である。マルチチャンネルアナライザ61a,61bの出力は演算部17に入射され、演算部17では各波長に対してマルチチャンネルアナライザ61aの出力Aとマルチチャンネルアナライザ61bの出力Bをもとに(A−B)/(A+B)を演算することにより、各波長における試料の円二色性を一度に測定することができる。演算結果は表示部19に出力され、表示される。
【0039】
図7に示した円二色性測定装置では、偏光分離部15の直後に2組のマルチチャンネルアナライザ61a,61bを設置し、光源11の光は分光器を通さずに直接偏光子13へ入射させる。偏光子13、フレネルロム14、偏光分離部15ともに400nmから2μm程度までの範囲にわたって波長依存性がないため、このような分光が可能となる。この方法により、従来のように分光器によって波長掃引する必要がないため、0.1秒程度の時間分解能で円二色性測定が可能となり、例えば合成過程の円二色性の変化などを追跡することが可能となる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によると、小型で調整が容易であり、自由度の大きな円二色測定装置が得られる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による円二色性測定装置の基本的な構成例を示す概略図。
【図2】フレネルロムの原理を説明する図。
【図3】偏光分離部の説明図。
【図4】吸光度計の機能をも有する本発明の円二色性測定装置の構成例を示す図。
【図5】電場変調円二色性測定法のための装置構成例を示す図。
【図6】過渡吸収測定法と円二色測定法とを組み合わせた測定装置の構成例を示す図。
【図7】時間分解能を有する円二色性測定装置の構成例を示す概略図。
【図8】従来の円二色性測定装置の概略構成図。
【符号の説明】
11:光源、12:分光器、13:偏光子、14:フレネルロム、15:偏光分離部、16a,16b:光検出器、17:演算部、18:制御部、19:表示部、21〜24:偏光ビームスプリッタ、31:ハーフミラー、32:反射ミラー、33:偏光子、41:交流電源、42,43:電極、44a,44b:ロックイン増幅器、51:レーザ光源、52:チョッパー駆動部、53:チョッパー、61a,61b:マルチチャンネルアナライザ
Claims (13)
- 試料に左右の円偏光成分を等量含む光を照射する光照射部と、
試料を透過した右回り円偏光と左回り円偏光を互いに直交する直線偏光に変換する広帯域波長板と、
前記広帯域波長板から出射した互いに直交する直線偏光を分離する偏光分離部と、
前記偏光分離部によって分離された直線偏光をそれぞれ検出する第1及び第2の検出部とを含むことを特徴とする光学測定装置。 - 請求項1記載の光学測定装置において、偏光子によって直線偏光を作り出すことにより左右の円偏光成分を等量にすることを特徴とする光学測定装置。
- 請求項1又は2記載の光学測定装置において、前記光照射部は分光器を備えて単色光を発生し、前記第1及び第2の検出部はそれぞれ光検出器を備えることを特徴とする光学測定装置。
- 請求項3記載の光学測定装置において、制御部と、前記第1及び第2の光検出器の出力を演算する演算部とを備え、前記制御部は前記分光器の出射波長を制御するとと共に前記演算部に波長制御情報を出力することを特徴とする光学測定装置。
- 請求項1又は2記載の光学測定装置において、前記光照射部は複数の波長を含む直線偏光を発生し、前記第1及び第2の検出部はそれぞれマルチチャンネルアナライザを備えることを特徴とする光学測定装置。
- 光源と、
前記光源からの光を分光して単色光を出射する分光器と、
前記分光器からの出射光を測定光と参照光とに分割する光分割器と、
前記測定光の光路上に配置された第1の偏光子と、
前記第1の偏光子を通った直線偏光が照射される試料を保持する試料保持部と、
前記試料保持部に保持された試料を透過した右回り円偏光と左回り円偏光を互いに直交する直線偏光に変換する広帯域波長板と、
前記広帯域波長板から出射した互いに直交する直線偏光を分離する偏光分離部と、
前記偏光分離部によって分離された直線偏光をそれぞれ検出する第1及び第2の光検出器と、
前記参照光の光路上に配置された第2の偏光子と、
前記第2の偏光子を通った直線偏光が照射される参照試料を保持する参照試料保持部と、
前記参照試料を透過した光を検出する第3の光検出器と
を含むことを特徴とする光学測定装置。 - 請求項6記載の光学測定装置において、制御部と、前記第1及び第2の光検出器の出力を演算する演算部とを備え、前記制御部は前記分光器の出射波長を制御するとと共に前記演算部に波長制御情報を出力することを特徴とする光学測定装置。
- 試料を周期的に励起する試料励起部と、
試料に単色の直線偏光を照射する光照射部と、
試料を透過した右回り円偏光と左回り円偏光を互いに直交する直線偏光に変換する広帯域波長板と、
前記広帯域波長板から出射した互いに直交する直線偏光を分離する偏光分離部と、
前記偏光分離部によって分離された直線偏光をそれぞれ検出する第1及び第2の光検出器と、
前記第1及び第2の光検出部の出力から前記試料励起部による試料の励起に同期した信号を検出する第1及び第2のロックイン増幅器とを含むことを特徴とする光学測定装置。 - 請求項8記載の光学測定装置において、前記試料励起部は試料に周期的な電圧を印加することを特徴とする光学測定装置。
- 請求項8記載の光学測定装置において、前記試料励起部は試料に周期的な励起光照射を行うことを特徴とする光学測定装置。
- 請求項8,9又は10記載の光学測定装置において、制御部と、前記第1及び第2のロックイン増幅器の出力を演算する演算部とを備え、前記光照射部は光源及び前記光源からの光を分光して単色光を出射する分光器を有し、前記制御部は前記分光器の出射波長を制御するとと共に前記演算部に波長制御情報を出力することを特徴とする光学測定装置。
- 請求項1〜11のいずれか1項記載の光学測定装置において、前記広帯域波長板としてフレネルロムを用いることを特徴とする光学測定装置。
- 請求項1〜12のいずれか1項記載の光学測定装置において、前記偏光分離部は複数の偏光ビームスプリッタの組み合わせからなり、横偏光も縦偏光も1回の反射と1回の透過を経て出射させるものであることを特徴とする光学測定装置。
Priority Applications (1)
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