JP2001013064A - Hplc用円二色性検出器及び信号処理方法 - Google Patents
Hplc用円二色性検出器及び信号処理方法Info
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Abstract
くしたHPLC用円二色性検出器を提供すること 【解決手段】 フローセル中に溶出される試料の紫外可
視吸光度と円二色性から、光学異性体の存在率を示すデ
ータをg−factorとして外部に出力し、予め求め
ておいた検量線にg−factorを参照することで試
料の光学異性体の存在率を求めることのできるHPLC
用円二色性検出器において、検出器中で算出されるg−
factorのうち、フローセル中に溶出される試料の
紫外可視吸光度が所定基準より大きくない時には、その
部分の測定結果であるg−factorを出力しないよ
うにする。
Description
性検出器に関するもので、より具体的には光学異性体の
存在率を測定するための構造の改良に関する。
有機合成によって得られるが、得られた有機化合物中に
どれくらい光学異性体が存在するのか等を調べる必要が
あるので、従来は光学分割を測定に取り入れて測定して
きた。
離分析を行う際に有効な手法としてHPLC(高速液体
クロマトグラフ)がある。そして、光学分割を行う方法
はキラルな移動相または固定相を用いて、それぞれの光
学異性体を立体構造の差を基に分割した後に検出器で検
出し、得られた信号を波形処理することで面積比などを
求めることで行われる。しかし、光学分割可能なHPL
C用のカラムは立体構造の差が少ない光学異性体を分離
しなくてはならない特殊性から高価であることに加え
て、このようなカラムによる試料の分離に要する時間が
長いという問題がある。
・分析する手法が提案されている。このg−facto
rは、試料から出射された光に基づいて、円二色性(C
D)信号と光吸収信号(吸光度)を求め、CD信号を光
吸収信号で除算したものである。つまり、g−fact
orは、同時にUV吸収と円二色性を測定して試料中の
光学異性体の存在率を求めるときに用いられている値で
あり、求められたg−factorを検量線に対応させ
ると光学異性体の存在率が求まるようになっている。
な物質の円二色性を利用するようにすると、光学分割可
能なHPLC用のカラムを使わずに済む。これは、物質
が示す光吸収が右円偏光と左円偏光に対して異なる現象
を利用すると、通常のHPLC用のカラムで試料を溶出
しても、その試料の右円偏光の吸収力と左円偏光の吸収
力の差に基づいて、光学異性体の存在率が調べられるか
らである。
れる光学異性体の存在率を測定するためには、カラムか
ら溶出された試料をフローセル中に導き、リアルタイム
で測定していく。すると、セル中の試料の含量が時々変
化していくことになるので、セル中の試料の旋光性とU
V吸収力の両方をできるだけ同時に測定していかなくて
はならない。
て、特開昭53―116884号公報に開示された発明
が提案されている。この発明は、光源,モノクロメー
タ,偏光子,変調器,試料槽及び検出器からなる円二色
性分散測定用光学系を有する。そして、それぞれ独立の
電気系を用意して、切り換えスイッチによって光吸収と
円二色性分散を切り換えながら測定をするものである。
高速にスイッチ切替を繰返せば紫外可視光(UV)の吸
収と円二色性の同時測定は可能となるが、現実的には切
替時の過渡現象中は信号が正確には測定できないので、
HPLCの様に(最も早い場合には)数秒でピークが溶
出してしまう状況にはとても適用出来ない。
特開昭54−56484号公報に開示されたg−fac
tor測定装置がある。係る装置は、白色光源、単色
計、偏光子、集光系、円偏光変調器、試料槽、光電変換
素子、信号処理系及び記録計からなる円二色測定装置を
前提とする。そして、上記の偏光子に替えて偏光ビーム
スプリッターを配置して一方の光路は円二色性測定系と
し、他方を標準光束として光電変換して得られる各信号
のうち、円二色性測定系における交流信号と直流信号の
比を求める回路と、円二色性測定系における直流信号と
標準光束による直流信号との比の逆数を対数変換する回
路と、さらにこの両者の比を求める回路を設けることに
より、g−factorを求めるようになっている。
光路に分かれているためHPLCに適用すると2つのフ
ローセルを直列に接続するしかない。そうすると下流側
のフローセルではピークが上流側よりも広がるし、更に
時間差も発生する。どちらの現象もデータ処理で補正す
るのは不可能ではないが溶媒の種類や流量が変われば補
正もやり直す必要があり実用的ではない。
装置があったとしても、さらに問題がある。すなわち、
図1は、試料の紫外可視光の吸光度信号(UV信号)と
円二色性(CD)を測定し、さらにそこから、所定の演
算によりg−factorを計算した結果をプロットし
たものである。
試料の左右円偏光に対する吸収強度の差を数値化した
値、つまり円二色性信号(CD信号)を、UVの吸収強
度を数値化した値で割り算して求められている。従っ
て、同図中のt1〜t2区間に示すように、試料の溶出
が少なくUV吸収が極端に少なかった場合、分母が0に
近くなるので、CD信号の変化に対するg−facto
rの変化量が大きくなる。そして、CD信号側わずかに
+になった時にはg−factorは大きな正値をと
り、逆にCD信号側わずかに−になった時にはg−fa
ctorは大きな負値をとる。よって、CD信号が僅か
に±に振れるだけで、その時のg−factorは正負
に非常に大きく変化してしまう。
torの振幅が大きく、しかも、正負への振れが大きい
とともに、測定結果が見にくくなり、光学分離能力が低
いカラムを用いて簡単な光学分離を行い、R―体の試料
とS−体の試料を分取するのが困難となる。
ら溶出された試料を分取しようとした場合、R−体とS
−体がはっきり分離される場所では試料を問題無く分取
できるものの、両者が完全分離されずにやや混ざり合っ
て溶出されてきてしまう部分がある場合には、この部分
の試料の旋光性は異性体同士で相殺されるため、g−f
actorはゼロ付近の値を取ることになる。すると、
リアルタイムで溶出される試料の分離状態をモニタして
いても、カラムが試料を完全分離したために測定される
g−factorが乱れているのか、不完全分離された
部分の旋光性がたまたま相殺されてg−factorが
乱れているのかと言うことの違いを、表示されるグラフ
からでは判断しにくくなるという問題がある。
もので、その目的とするところは、上記した問題を解決
し、同時に円二色性信号と試料の総量信号を取得するこ
とができ、さらに、その取得した信号に基づいて求める
光学異性体の存在率(g−factor)を精度よく測
定でき、その存在率を用いたR―体の試料とS−体の試
料を分取も容易にできるHPLC用円二色性検出器を提
供することにある。
ために、本発明に係るHPLC用円二色性検出器では、
光源から出射された光を変調し、その変調した光の左円
偏光と右円偏光を交互に生成可能な変調手段と、その変
調手段で変調された光の光路上に配置されたフローセル
と、光検知部に前記フローセルの光を受光する光検知手
段と、前記光検知手段の出力から、円二色性を示す信号
を検出する円二色性検出手段と、前記光検知手段の出力
から、前記フローセルにある試料の総量を示す信号(実
施の形態では「UV吸収信号(全体の吸収信号)」に対
応する)を検出する総量検出手段を備え、前記円二色性
検出手段の出力と前記総量検出手段の出力から、前記試
料の光学異性体の存在率(実施の形態では、「g−fa
ctor」に対応する)を示す出力ができる信号処理手
段を備えて構成した(請求項1)。
力に基づいて円二色性を示す信号と、試料の総量を示す
信号とが算出できるので、それら両信号を同時に取得で
きる。その結果、g−factorなどの存在率を精度
よく求めることができる。
の変調した光の左円偏光と右円偏光を交互に生成可能な
変調手段と、その変調手段で変調された光の光路上に配
置されたフローセルと、光検知部に前記フローセルの光
を受光する光検知手段と、前記光検知手段の出力から、
円二色性を示す信号を検出する円二色性検出手段と、前
記光検知手段の出力から、前記フローセルにある試料の
総量を示す信号を検出する総量検出手段を備え、前記円
二色性検出手段の出力と前記総量検出手段の出力から、
前記試料の光学異性体の存在率を示す出力ができる信号
処理手段を備えたHPLC用円二色性検出器において、
前記信号処理手段の出力は、少なくとも前記総量検出手
段の出力に基づく値が所定の基準を超えた場合にのみ出
力されるように構成するとよい(請求項2)。ここで、
「総量検出手段の出力に基づく値」とは、係る出力その
ままの値でも良いし、その出力から求められる値や、g
−factorのようにその出力と他のデータとにより
求められる値等各種の値を含む。そして、「所定の基
準」も、単純にある値としきい値の大小を比較するもの
に限らず、変化率などの他の評価値に変換後に比較する
ようにしてももちろん良い。さらに、「所定の基準を超
えたときのみ出力する」とは、所定の基準を満たさない
場合には、信号処理自体もしないようにしてもよいし、
信号処理(演算処理)は実行するものの、最終的に出力
しない(0とする)ものでも良い。
は、総量を示す信号が0またはきわめて小さい値とな
る。一方、試料が供給されている場合には、存在率に関
係なく総量を示す信号は一定の値をとる。よって係る総
量を示す信号をサーチし、それが所定の基準をこえたと
きのみ存在率を出力することにより、見やすい出力とな
る。
に光学異性体が同量含まれている場合と、単にフローセ
ル中に試料がほとんど含まれていない場合の区別が信号
処理手段の出力からはっきりする。そして、この違い
は、総量検出手段の出力が所定基準の大きさを超えた時
にしか信号処理手段から出力がされないことで区別がつ
く。
一部の放射強度が他の領域に比べて相対的に大きい光源
とすることができる。また、前記光学異性体の存在率を
示す出力としては、例えば前記総量検出手段の出力の大
きさと前記円二色性検出手段の出力の大きさから求まる
ように構成することができる。このように構成すると、
信号処理手段の出力を、円二色性検出手段の出力の大き
さと総量検出手段の出力の大きさの比(割り算処理)で
求めることができるので、信号処理手段の出力は光学異
性体の存在率の分かりやすい出力となる。もちろん、フ
ローセル中に光学異性体が同量含まれている場合と、単
にフローセル中に試料がほとんど含まれていない場合の
区別はよりはっきりするようになる。もちろん、これ以
外の手法をとることもできる。
前提とし、前記総量検出手段の出力の変化が所定基準よ
り大きくなったときをピークの開始点とし、その後、前
記総量検出手段の出力の変化が所定基準より小さくなっ
たらピークの終了点として、前記ピークの開始点と前記
ピークの終了点を基にベースラインを求める機能と、そ
の求めたベースラインに基づいて、前記総量検出手段の
出力を補正する機能を備えるとなおよい(請求項3)。
二色性信号と、試料の総量を示す信号を検出可能なHP
LC用円二色性検出器における信号処理方法であって、
前記総量を示す信号の出力に基づいてベースラインを求
めるステップ、前記求めたベースラインと前記総量検出
手段の出力から真の総量を算出するステップ、前記円二
色性信号と前記真の総量から、前記試料の光学異性体の
存在率を求めるステップを実行するようにした(請求項
4)。
て、一例を示すと、総量を示す信号の出力の変化が所定
基準より大きくなった開始点を検出するステップ、開始
点を検出後、前記総量を示す信号の変化が所定基準より
小さくなったことを検出し、その箇所を終了点とするス
テップを実行し、さらに、前記開始点と前記終了点とを
結ぶことによりベースラインを求めることかできる。
出される試料(溶媒)組成比が時間とともに変化し、試
料の総量(実施の形態では「UV信号」)のベースライ
ンが変化したとしても、そのベースラインの位置を検出
し、そのベースラインに基づいて真の総量を求めること
により、最終的に求める光学異性体の存在率も上記ベー
スラインの変動の影響を受けず、真の値を算出すること
ができる。
二色性検出器の第1の実施の形態を説明する。本形態の
HPLC用円二色性検出器は、所定の光源からの光をH
PLC用のカラムから溶出した試料に照射し紫外可視光
の吸収具合を、吸光度信号(UV吸収信号)や円二色性
信号(CD信号)としてそれぞれ同時に検出し、その検
出情報から試料中の異性体の存在率を求められるように
なっている。
検出器を構成する光学系装置1を示した概略図である。
同図に示すように、光学系装置1は、光源2から出る光
を回折格子3で分光し、分光された所定波長の光をPE
M26にて変調して左右の円偏光を生成し、図外のカラ
ムから溶出しフローセル5に流入された試料に照射させ
る。そして、フローセル5を通過した光を後段のUV・
CD検出装置6の光検知器たるフォトダイオード29に
入力させるようになっている。
ず、光源2は、紫外部に強い輻射強度をもつHgXeラ
ンプまたはHgランプを用いている。係るランプを用い
たのは以下の理由からである。一般に従来の円二色性検
出器は正確な円二色性スペクトル測定を目的として作ら
れているため、光源には放射エネルギーレベルが図3に
示すように紫外部で比較的フラットなXeランプが使用
されてきた。
限り強い信号として取り出すことを目的としたため、H
gランプやHgXeランプを光源として使用した。Hg
Xeランプの放射強度特性は、例えば図3に示すように
なっており、全体として強度が大きいものの、所定の波
長において強いHgの輝線スぺクトルが出現する。従っ
て、これまでこれらのHgXeランプ等は、円二色性ス
ペクトル測定の場合には、その強い輝線の波長の影響を
受け、スペクトルが乱れてしまうという障害があるの
で、実際に使用されておらず、また、使用しようという
考えすらなかった。
輝線スペクトルよりも十分大きくするので輝線スペクト
ルの影響はあまりない。そして、HgXeランプは紫外
領域に特に強いエネルギー分布を示すため、回折格子を
使用した場合に問題となる長波長側の成分が散乱により
迷光として紫外領域の設定波長領域に現れる量を相対的
に小さくすることができる。つまり、後述するように1
枚の回折格子3を用いた光学系でも、迷光の影響は可及
的に抑制できる。
とはなく、Hgランプでもよい。また、重水素ランプの
ように、紫外部での絶対的な放射量は小さくても、紫外
部以外の長波長側領域での放射量がさらに小さいと、迷
光の影響は可及的に抑制される。つまり、本発明でいう
ところの紫外部で強い放射強度をもつランプとは、絶対
量が大きいのはもちろんであるが、それ以外の波長領域
(長波長側)における放射強度に比べて相対的に大きい
場合も含む。
強度が小さくても、本実施の形態では1枚の回折格子3
にて分散光学系が形成されるため、従来のダブルモノク
ロメータなどに比べて光学系内での損失が少なく、フロ
ーセル5に照射される際の光強度は比較的強くできる。
ンズL1で平行光にされ、偏光子9に照射されるように
している。偏光子9は、石英のローションプリズムを使
用している。この石英のローションプリズムは、透過波
長範囲が160〜1000nmと広いが、常光と異常光
間の変位角が1°〜2°と小さい。従って、偏光子9を
光源2に近い位置において異常光と常光が完全に分離す
る様に配置する。
光子9を通過することにより、直線偏光が出射される。
この時、常光と異常光に分離されるが、そのうちの一方
が最終的に回折格子3で波長分散された後、フローセル
5に照射されるようにしている。なお、係る照射される
光が、常光か異常光かは、各光学部品の相対的な位置関
係に基づいて決定される。
回転可能とし、その透過容易軸、つまり、偏光子9から
出射される直線偏光の角度を調整可能としている。具体
的には、光源2から回折格子3に至る光路の途中に、取
り付け板10を配置する。この取り付け板10には、そ
の光路に貫通孔10aを設け軸受け11を構成する。そ
して、偏光子9を両端開口に筒状にしたホルダ12に装
着し、そのホルダ12を軸受け11に回転自在に取り付
ける。
中上端)には、第1ギヤ13が取り付けられている。も
ちろん、第1ギヤ13の中央にも貫通孔が設けられ、光
源2からの光が通過できるようにしている。
ら離れた位置に貫通孔10bを設け、その貫通孔10b
内にベアリング15を装着する。このベアリング15に
回転軸16を挿入し、回転軸16の一端近傍をベアリン
グ15により回転自在に保持させる。
り付け、この第2ギヤ17と第1ギヤ13を連結する。
また、回転軸16の他端は、ベースプレート18に設け
たベアリング19内を貫通させるとともに、その端部に
第1プーリ20が取り付けられる。そして、この第1プ
ーリ20が、ベルト21を介してモータ22の出力軸に
装着された第2プーリ23と連結される。
ルト21を介して回転力が回転軸16に伝達されるの
で、それに追従して第2ギヤ17さらには第1ギヤ13
が回転し、偏光子9も光軸周りに回転する。
でき、任意の角度で停止することのできるものを用いる
と、偏光子9を回転させ、偏光面の調整が簡単になる。
そして、この回転させる際の回転範囲は、±45゜程度
とし、精度は±1゜程度で十分調節可能である。
格子3で波長分散された後、PEM26に入射し、そこ
を通過することにより位相変調されて交互に右円偏光と
左円偏光になる。そして、PEM26から出射された円
偏光が、レンズL2により集光されフローセル5に照射
され、そのフローセル5内を通過した光が、UV・CD
検出装置6の受光部分であるフォトダイオード29に入
力される。
二色性から右円偏光と左円偏光の吸収特性が異なるの
で、フォトダイオード29に受光される光強度が変わ
る。従って、フォトダイオード29から出力される電気
信号に基づいて、UV・CD検出装置6にあるCPU回
路30(図中外)に取り込まれ計算される。
の間にソレノイド31で開閉するシャッター32を設け
ている。このシャッター32により、光源2からの光を
遮光可能としている。
について説明する。まず、フローセル5にH2O等の円
二色性を持たない溶液を流した状態でモータ22を動作
させて偏光子9を回転させる。
視し、円二色性がゼロとなる位置でモータ22の回転を
停止する。この停止したときは、円二色性を持たない試
料について検出結果が、「円二色性が無い」であるの
で、光学系における偏光特性がなく、初期条件が完了し
たことになる。
反射や、窓板等の偏光特性によって、たとえ円二色性を
有しない試料を用いて測定しても、「円二色性が有る」
というような測定結果が得られることがある。つまり、
右円偏光と左円偏光の位相がずれて出力に差が出る場合
である。このように、光学系の偏光特性に基づくための
円二色性の信号出力(出力差)が存在すると、測定精度
の低下を招くので、できるだけゼロに近づける補正を行
いたい。そこで、回折格子3より光源2側に設置した偏
光子9を回転させることにより、補正ができる。
極的に利用し、偏光子9を通過した直線偏光を回折格子
3で波長分散する際に、その直線偏光の対称性を崩す。
そして、この対称性を崩したことに合わせて右円偏光と
左円偏光の位相を意図的にずらすようにする。この位相
のずれ量は、直線偏光が回折格子3に照射される際の角
度位置により異なるので、直線偏光の偏光方向を回転さ
せて回折格子3で波長分散する際に生じる位相のずれ量
を、光学系の偏光特性から生じる右円偏光と左円偏光と
の位相差を逆にすることにより相殺させ、上記のように
補正する。
円偏光と左円偏光の位相が一致した(ずれが零)光であ
る。この光を僅かに偏光特性をもつ回折格子Gを通すと
位相のズレが現れる。PEM26を透過する前に左右円
偏光間の位相がずれているため、PEM変調角が「最初
の位相のズレ角±PEM変調角」となる。これにより変
調位相角の異なる左右楕円偏光となる。フローセル5内
で生じる反射及び窓板の偏光特性がこの変調位相の異な
る楕円偏光を変調位相角の等しい楕円偏光または円偏光
に戻すように作用することで偽円二色性が完全に除去さ
れるものと考えられる。
力信号を正確に測定しCPUに呼び込むため、本形態で
は、レンズL1と偏光子9の間にシャッター32を挿入
して光を遮断した状態での出力信号を読み込み、その出
力信号のベースラインを求める。次いでシャッター32
を開いた状態で測定し、その出力信号が上記のベースラ
インと同じになる様に偏光子9を回転する。
うにしているが、手動で回転させるようにしてもよい。
また、直線偏光の偏光方向と回折格子3の相対角度が変
更できればよいので、本形態のように偏光子9を回転さ
せるのではなく、回折格子3をその法線方向を中心とし
て回転させるようにしてもよい。但し、偏光子9を回転
させる方が機構並びに制御が簡単で好ましい。
続され、その光学系装置1から出力される光を受光して
得られる信号(CD信号やUV吸収信号(吸光度)が混
在している)に対して信号処理を得るUV・CD検出装
置6のうち、CD信号とUV信号を得るための信号処理
回路47の部分を主に示している。
ンズL1で集光され透過軸が回転可能な偏光子9に進
む。偏光子9を透過した光は回折格子3に入射し、そこ
において回折された光のうち決められた波長の光だけ次
のPEM26に向かう。PEM26で位相変調された光
はフローセル5を透過しフォトダイオード29に進む。
このフローセル5までが光学系装置1である。
なるフォトダイオード29で光信号は電気信号に変換さ
れ、後段のUV・CD検出装置6に至る。なお、回折格
子3は、モータ35の出力を受けて回転し、測定中はあ
る設定された波長の光がフォトダイオード29に入るよ
うに作動する。すなわち、フォトダイオード29には、
波長を固定した状態での時間変化に伴う出力変化を検出
するようになる。
信号は、第1アンプ36で増設された後第1差動アンプ
37の入力と第1サンプルホルド回路38に与えられ
る。サンプルホルド回路38では直線偏光の変調時間に
同期する信号がサンプルホルドされ、この第1サンプル
ホルド回路38の出力は、積分回路39に与えられ、こ
こで積分される。この積分回路39の出力Vdが、フォ
トダイオード29から出力される検出信号のうち、直線
偏光時の信号つまり後に詳述するUV吸収信号に対応す
るものである。そしてこの積分回路39の出力が、上記
差動アンプ37の入力に与えられる。
は、直流信号を除去した交流信号(PEM変調周波数)
となる。この交流信号は第2アンプ40で約百倍以上に
増幅され次の第2サンプルホルド回路41に与えられる
とともに第3サンプルホルド回路42にも与えられる。
42では、右円偏光と左円偏光の変調時間に同期する信
号がサンプルホルドされ、第2差動アンプ43にて両サ
ンプルホルド回路41,42の出力の差、つまり、右円
偏光と左円偏光の差信号VD IFFが第2作動アンプ4
3で得られる。この差信号VDIFFと、積分回路39
の出力がインタフェース44を介してCPU30に与え
られる。
DIFFを、積分回路39の出力である直流信号Vdで
割り算し、係数を掛ける演算を行いCD信号を算出す
る。それと同時に、直流信号VdをCPU30でLOG
変換してUV吸収信号も算出する。なおこれらの算出結
果はインタフェース44でD/A変換され、出力端子4
6に出力される。なお、この直流信号Vdは、同期信号
の周期(約20μsec)に比べればゆっくりとした変
化となり、係る意味で直流信号と称している。よって、
厳密に時間的に一定ではない。
同期してサンプルホルドされた信号であるので正確には
直線偏光の強度でありそのLOG変換されたものは、直
線偏光の吸収を算出することになるので、普通の分光器
による吸収信号と同じように利用できる。これにより本
実施の形態ではCD信号と同時にUV吸収信号の測定が
可能である。
1同期パルス発生器(SP1)の出力によって第1サン
プルホルド回路38の同期信号として供給され、右円偏
光の同期信号は第2同期パルス発生器(SP2)の出力
によって第2サンプルホルド回路41に同期信号として
供給され、左円偏光の同期信号は第3同期パルス発生器
(SP3)の出力によって第3サンプルホルド回路42
の同期信号として供給される。
周期は約20μsecでパルス幅は約600nsecが
使用されている。各サンプルホルド回路は、600ns
ecの間に信号値を取り込むようになっている。
の各サンプルホルドがどのようなタイミングで行われる
かを具体的に示してある。図5に示されている波形は、
フォトダイオード29に入力された光が電気信号に変換
された様子を示している。つまり、最大電圧をV1とし
最低電圧をV2とする交流信号であり、その交流信号に
直流電圧Vdが重畳された電圧波形となっている。
6aにより制御されている。したがって、PEM26を
通過した光の偏光状態が、右円偏光,左円偏光並びに直
線偏光がどれになっているかは、PEMドライバ26a
がわかる。したがって、そのPEMドライバ26aから
の制御信号に基づいて、直線偏光となるタイミングで第
1同期パルス発生器(SP1)から直線偏光の同期信号
が出力され、右円偏光となるタイミングで第2同期パル
ス発生器(SP2)から右円偏光の同期信号が出力さ
れ、左円偏光となるタイミングで第3同期パルス発生器
(SP3)から左円偏光の同期信号が出力される。この
各同期信号が発生した時に各サンプルホルド回路に入力
された電圧値が保持される。
る各地点A〜Dの出力波形は、図6,図7のようにな
る。すなわち、図6(a)は、右円偏光の同期信号が第
2サンプルホルド回路41に与えられることで、電圧V
1が右円偏光信号としてサンプルホルドされた様子が示
してある。つまり、この図は図4中B点における信号波
形である。
が第3サンプルホルド回路42に与えられることで、電
圧V2が左円偏光信号としてサンプルホルドされた様子
が示してある。つまり、この図は図4中C点における信
号波形である。
ド回路38でサンプルホルドされたUV吸収信号を示し
ている。つまり、この図は図4中A点における信号波形
である。さらに、図7(b)は、第2差動アンプ43で
得られる右円偏光と左円偏光の差信号VDIFF、すな
わち円二色性信号を示している。つまり、この図は図4
中D点における信号波形である。
動回路であるPEMドライバ26aの出力に基づいて、
フォトダイオード(光検知器)29の出力信号から、左
右の円偏光時及び直線偏光時のタイミングで信号を取り
出すことができる。そして、その様に取り出した左右円
偏光時の信号差からCD信号を取り出し、直線偏光時の
信号がUV信号を取り出すことができる。そして、これ
らの各信号は、単一の光検出器で受光した信号に基づい
て算出するものであり、CD信号とUV信号を簡易かつ
正確に同時に取り出すことができる。
つものが多くUV吸収端の位置近傍にCD信号が強く現
れることが多い。このためCD信号を探す最初の目標は
UV吸収を測定してUV吸収の強い波長位置でCD信号
を測定することが行われている。それ故本形態のように
一台の装置でUV吸収信号とCD信号が同時に測定でき
ることは限られた空間の有効利用の面だけでなく装置の
コスト低減の面で大変効果が大きい。
号が同時に測定できることから、このUV・CD検出装
置6では、光学系装置1の出力を基に試料中に含まれる
光学異性体の存在率を示す出力をg−factorとし
て求めることができる。
UV信号で除算すれば良いので、第2差動アンプ43の
出力(VDIFF)を積分回路39の出力(VD)で割
ることにより求められる。そして、本形態では、さらに
UV信号を監視しながら、一定期間のみ上記g−fac
torの算出処理をするようにしている。そして、係る
処理を行うためのUV・CD検出装置6の具体的な処理
回路の一例を示すと、以下のようになる。
ハードウエア構成の一例を示している。同図に示すよう
に光学系装置1の出力はフォトダイオード29で電気信
号に変換された後、上記第1サンプルホルド回路38,
第2サンプルホルド回路41,第3サンプルホルド回路
42等を含む信号処理回路系47にて、UV吸収信号と
CD信号に分けて取り出される。
(A/D変換部44a)によってA/D変換されてそれ
ぞれデジタル信号としてCPU30に入力される。CP
U30は、入力された信号を基に、g−factorを
求める所定の計算処理を行い、算出された情報はインタ
フェース44(D/A変換部44b)によってD/A変
換されて、アナログ信号としてUV・CD検出装置6の
外部へ出力端子46を経由して出力される。
めの信号やデータ処理のための設定値は、キーボード4
8を介してCPU30に与えられ、また、それらの入力
状況はディスプレイであるLCD49に表示され確認で
きるようになっている。
どの各種の処理は、ROM30aに格納されたプログラ
ムに基づき、CPU30が演算処理する際のワークエリ
アとしてRAM30bを適宜用いながら実行する。
rの演算処理は、以下のようにして求められ、リアルタ
イムでアナログまたはデジタル信号でUV・CD検出装
置6の外部に出力されるようになっている。すなわち、
g−factorは、次式の演算で得られる。 g−factor=δAU/AU …(1) ここで、δAU=A(L)−A(R) …(2) A(L):左円偏光に対するUV吸収 A(R):右円偏光に対するUV吸収 AU :直線偏光に対するUV吸収 δAUとCD信号との関係は、下記の式(2)で定義さ
れる。ここでCDは偏光の楕円率を角度で表現したもの
である。
すると、式(1),(2)から下記式(3)のようにな
る。
orは、インタフェース44によりD/A変換してアナ
ログ信号として出力すると同時に、RS―232C等の
デジタル信号としても出力する。
の基本処理アルゴリズムである。ところで、本実施の形
態では、UV吸収信号が一定の値(しきい値)以上にな
ったときのみg−factorの計算処理を実行するよ
うになっている。すなわち、CPU30は、図9に示す
ような処理を実行するようになっている。
(ST1)。この初期設定は、g−factorの計算
処理を開始するしきい値を設定する。実際には、キーボ
ード48から与えられた数値をしきい値としてセットす
るようになる。そして、このしきい値の入力処理は、例
えば図10に示すようなLCD49の表示メッセージに
したがって処理することができる。同図には、LCD4
9に示される表示の一部を示した。もちろんこれ以外の
表示が出力されていても構わない。
ESHOLD」の表示は、g−factorの計算を開
始するにおいて、UV信号にどれくらいのしきい値を設
けるかの設定場面の表示である。この例では、初期値し
て「0.05」が設定されている。同図の0.05の表
示をキーボード48上の[EDIT/ENTER]キーに
より点滅させ編集を開始する。
する。この点滅中に、「数値キー」を用いてg−fac
torの計算を開始するに最適と思われるUV信号を設
定する。同図(c)のように、数値キーにて入力が完成
したら、再度[EDIT/ENTER]キーにて登録す
る。同図には、一例としてしきい値を0.08AUとし
た。
ば、実際の計測に移行する。すなわち、信号処理回路4
7からは、順次リアルタイムでUV信号,CD信号の元
となるデータが送られてくるので、それら両信号を取得
する(ST2)。そして、取得したUV信号の値と初期
設定でセットしたしきい値とを比較し(ST3)、UV
信号の方が大きい場合にはステップ4に進み、UV信
号,CD信号に基づいて上記した演算式にしたがいg−
factorを算出し、UV信号がしきい値以下の場合
には、ステップ5に進みg−factorを0にする。
ットされたg−factorと、UV信号,CD信号を
関連付けて格納する(ST6)。なお、両信号の格納
は、ステップ2でデータを取得した際に行ってももちろ
ん良い。そして、上記したステップ2からステップ6の
処理を測定が終了するまで繰り返し実行する(ST
7)。
の一時記憶は、例えばRAM30bを用いて実行するこ
とになる。なお、ステップ6で格納したデータは、外部
モニタに出力表示されたり、プリンタ・プロッターにプ
リントアウトされたりしてユーザーに視覚的に理解させ
ることができるようになる。また、取得あるいは算出し
た各種のデータは、別途記憶装置に記憶させることもで
きる。
側では格納せず、順次出力し外部記憶装置に記憶させた
り、表示・プリントアウトなどをするようにしてももち
ろん良い。
果の一例を図11に示す。図11は、図1に示した実験
結果に対して本発明の処理を行った結果を示している。
すなわち、g−factorの演算開始のしきい値を
0.15AUにセットし、取得したUV信号,CD信号
とそれに基づいて求めたg−factorを、記録・表
示したものである。図中の横軸は試料の溶出開始時から
の時間経過を示す。
ると、フローセル5中に試料が所定量以上溶出されてか
らの間(19.6<t<20.8)のg−factor
のみがステップ4を実行して算出され、それ以外の区間
はステップ5によりg−factorが0となる。
V吸収信号に0.15AUのしきい値を設け、この値を
超えるようなUV吸収信号がCPU30に入力された場
合のみg−factorを算出するようにすると、測定
結果に含まれるノイズの除去率が大幅に上がるのがわか
る。
factorを求める演算式の分母が、0或いはほぼ0
となるので、g−factorの値は正又は負の大きな
値をとる。しかも、演算式の分子であるCD信号の変化
に対するg−factorの変化量も非常に大きいもの
となる。さらに、UV吸収がない、つまり試料がほとん
ど供給されていない状態では、ノイズその他の要因か
ら、CD信号は、0附近で正負に小刻みに揺れる。その
結果、g−factorは、高周波数で正負に切り替わ
り、しかも、振幅が大きくなる。一方、ある程度以上の
UV吸収があると、分母も正の所定の大きさの値となる
ので、CD信号の変化に対するg−factorの変化
量も小さくなり、適正な測定が可能となる。
い値より大きい場合にg−factorを算出するよう
にしたが、本発明はこれに限ることはなく、算出自体は
常時行うようにし、モニタ・プリンタなどの外部装置に
出力(表示・プリントアウト等)したり、最終的に測定
結果を記憶保持する際に、UV信号がしきい値未満のg
−factorは無視する(0とみなす)ようにしても
よい。
変化率(時間方向への差分値)を求め、その値が一定値
以上大きいときには、g−factorの出力を行わな
いという方法もある。この場合には、g−factor
の時間変化率を設定する手段を前述したしきい値の設定
と同様な設定画面を設けて設定し、g−factorが
求まるたびに時間変化率の計算を行い、その結果とg−
factor変化率設定値とを比較することでg−fa
ctorの出力を行うかどうかを判定してもよい。
検出器の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態
は、基本的に第1の実施の形態と同様の構成であり、異
なる点は、g−factorの算出方法である。そし
て、第1の実施の形態の場合には、リアルタイムでg−
factorの算出が可能であるため、CPU30とし
ても低速及びまたはメモリー容量も少ないものを用いて
実行可能となる。これに対し、本実施の形態では、測定
開始から測定終了時までのクロマトグラム全体を記憶
し、それらに対してデータ処理をする必要がある。そこ
で、CPU30として係る演算処理を可能とする高速で
メモリー容量も多いものを実装するようにしても良い
し、或いは、図8に示したように出力端子46に外部の
データ処理するためのコンピュータ(パソコンやHPL
C用のデータ処理装置等)を接続し、そのコンピュータ
にデータ処理をさせるようにしても良い。
収信号の出力をゼロとすると、その後フローセルに試料
がなくなったときのUV吸収信号の出力も0となるはず
であるが、実際には0とならないことが多々ある。
る。すなわち、クロマトグラムは、ミクロ的に観察すれ
ば必ず時間的に上下にドリフトしている。通常のクロマ
トグラム間演算であれば無視できるドリフトであって
も、微小信号であるCD信号の大きさを示す値とUV吸
収信号の大きさを示す値を割り算する場合には、その精
度に影響を与える。
るグラジェント溶出などでは、UV吸収信号のベースラ
インが変化し、ある時点のUV吸収信号をゼロとして
も、時間とともにゼロ点はずれてしまう。
フ等にプロットすると、ピーク成分の寄与による部分と
溶媒組成の変化による部分が加算されたUV吸収信号の
大きさは真のUV吸収信号の大きさより大きくなり、そ
の結果、g−factorは小さくなってしまう。
吸収の差に基づく値であるので、外気温の変化、セル内
の圧力変化、溶媒組成により変化といった外的要因は相
殺される。しかも、左円偏光と右円偏光に基づく信号
は、厳密には同時ではないが、左右円偏光を切り替える
変調周期は20μsec程度となり、クロマトグラムの
変化は、秒オーダーであるので実質的に左右円偏光の出
力は同時のものとみなせる。その結果、上記ドリフト又
はベースライン変化という現象はほとんど現れない。こ
のため、信号が外的要因によりドリフト又はベースライ
ン変化することによる補正は、UV吸収信号のみ行うこ
とで、所定の精度が確保できる。
信号が上記要因によりドリフト又はベースライン変化し
たときに、算出されるg−factorは時間の経過と
ともに歪んでしまい真の値が得られなくなる。つまり、
本来、光学分割されないカラムから溶出される試料中の
異性体の存在率は一定であるので、試料の溶出中のg−
factorの値も一定となる。しかし、図12を見る
と、時間経過に伴いg−factorの値も変化してお
り、歪んでいるのがわかる。
のピークの裾に当たる両端をピークの開始・終了点と
し、この2点間を結ぶ線をベースラインとし、UV吸収
信号の大きさをベースラインを基準にした大きさとす
る。また、本形態ではこのようにUV信号のみ補正する
ようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、CD信
号も補正するようにしても良い。
UV信号とCD信号からg−factorを算出するこ
とになる。なお、係る算出処理は、代入する値が上記の
ように補正後の真のUV信号となる以外は第1の実施の
形態と同様であるのでその詳細な説明を省略する。次に
具体例をあげつつ本形態をさらに詳述する。
とにより、ピークの開始点・終了点を正確に求め、さら
に、その得られた開始点と終了点を結んだ線(ベースラ
インB)からUV吸収信号の波形までの高さを求め、こ
の高さの大きさとCD信号の大きさよりg−facto
rを求めた図である。
るUV吸収信号を前述した波形処理を行うことで、ピー
クスタートPSやピークエンドPEは簡単に求まる。続
いて、その2点を通過する直線をベースラインBとして
求め、ベースラインBからのUV吸収信号の高さからg
−factorを求める。すると、同図中に示すよう
に、ドリフトによる影響のないg−factorが得ら
れるのがわかる。
ドの算出方法としては、例えば図14に示すような波形
処理をすることにより求めることができる。すなわち、
まず最初にピークスタートPSを決める。この決め方
は、信号の時間方向への微分値(差分値)ΔUVを求め
ることで、そのピークの傾き(信号量/時間)を算出
し、その値が一定値を超えたらピークスタートPSとす
る。
量が「0」となる位置、すなわちピークトップPTを検
出し、このピークトップPT検出後は、一定の傾き以下
になったらピークエンドPEとする方式を採ることがで
きる。なお、同図に示すように、ピークスタートPSの
しきい値T1とピークエンドPEのしきい値T2を設定
することで、ピークスタート・エンドを判定するように
してもよく、その他各種の方法が採れる。
時間における波形の高さ(応答量)を求める具体的な方
法を示す図である。同図に示すように、UV吸収信号と
CD信号は、同時測定であるので、得られるUV吸収信
号やCD信号は同一時間の信号が連続的に並んでいるこ
とになる。よって、双方の同一時間におけるベースライ
ンBからの高さ(応答量)を求めて、g−factor
を算出することができる。なお、本実施の形態では、C
D信号については補正を行っていないので、その応答量
は横軸からの高さとしている。例えば、同図に示すよう
に、t1〜t7のそれぞれの時間のUV吸収信号やCD
信号の応答量を求め、この応答量をそれぞれ以下のよう
に定義する。
は、第1の実施の形態と同様にして、UV吸収信号やC
D信号の応答量を基に以下のように表される。
とによりベースラインによる補正後のg−factor
を求めることができる。なお、上記したUV吸収信号の
応答量やCD信号の応答量の求め方の別な方法として
は、例えば、双方の同一時間における各ベースラインか
らの高さをそれぞれ所定時間内で積分し、その積分量を
それぞれの応答量としてもよい。つまり、面積比によっ
てもg−factorを求めることができる。
た試料の分析例を示す。試料にはCD特性を持つfla
vanoneを用い、そのg−factorを求めるこ
とによりR−体,S−体の割合(存在比)を求めた。図
16は、分析条件を示している。
oneの割合(存在比)を分析したクロマトグラムを示
した。どの図中にも試料のUV吸収信号とCD信号の両
方の信号を示してある。
は、flavanoneのR−体/S−体の割合を10
0/0,80/20,60/40,50/50とした試
料の測定結果がこの順番で示している。また、図18
(a),(b),(c)には、R−体/S−体の割合を
40/60,20/80,0/100とした試料の測定
結果が順番に示してある。なお、試料はflavano
neのR−体,S−体のそれぞれの純品を用意し、それ
らを計量して混合し作成したものであり、試料の総量は
全て同じである。
体/S−体の混合の割合が100/0から50/50に
なるようにR−体の割合が減ってくると、CD信号のピ
ークは小さくなっていくのがわかる。特に、R−体/S
−体の試料が等量となる50/50の試料においては、
CD信号のピークが完全に消滅している。
いるように、S−体が占める割合の方がR−体の割合よ
りも増えてくると、CD信号のピークはR−体の割合が
多かった時と対象的なピークを示すようになっている。
もちろん、全ての測定において、UV吸収信号のピーク
位置及び高さは同じである。
混合したflavanone試料のピークトップ付近の
g−factorを求めた結果である。この結果は、す
でに述べた、UV吸収信号をベースラインを用いて補正
する処理方法により求めている。
体/S−体の混合が等量の場合を境に、R−体の占める
割合が多い時とS−体の占める割合が多い時の様子が対
称となることから、g−factorのグラフの形状も
R−体/S−体の混合が等量の場合を境に対称的な形状
となっているのが解かる。
neの割合(存在比)を分析したクロマトグラムを基に
作成したg−factorの検量線である。この検量線
は、横軸に割合、縦軸にg−factorの大きさを示
したものである。そして、未知の試料のg−facto
rが求まれば、この検量線を参照することにより、その
試料中の光学異性体の存在率を求めることができるよう
になる。
を具体的に求めた例を説明する。図21は、R−体/S
−体の存在比が1/99の試料と51/49の試料と、
4種類の存在比未知試料UNK1〜UNK4を測定した
結果を示している。
のg−factorを測定し、図20の検量線より求め
た存在比は0.92/99.08であった。また、同じ
試料を光学分割カラムを使用してR−体/S−体を分離
した後、ピーク面積を求めて存在比を求めた結果が1.
98/98.02であった。
ctorにより求めた値が51.08/48.92であ
り、光学分割カラムを使用して測定した場合が51.7
5/48.25であった。この結果からわかるように、
UV吸収信号のベースラインを補正してg−facto
rを求めて光学異性体の存在率を調べるほうが、光学分
割カラムを用いて光学異性体の存在率を調べるよりも精
度よく分析しているといえる。
定した結果も、g−factorを測定し光学異性体の
存在率を調べる場合と、光学分割カラムを用いて光学異
性体の存在率を調べる場合で測定結果が異なっている
が、g−factorを求めて光学異性体の存在率を調
べた結果の方が信頼性が高いといえる。
が、99/1の試料を分析したクロマトグラムを示す。
図22は、光学分割カラムを用いR−体とS−体を分離
した時のクロマトグラムであり、図23は、通常のカラ
ムで試料を溶出しg−factorを求めた場合のクロ
マトグラムである。
全分離できていると、R−体の偏光性を示す信号とは別
にS−体の偏光性を示す信号がグラフ上で確認できる程
度正側と負側に示されているのがわかる。
体が一緒に溶出してしまい不分離の場合には、CD信号
は、片側(この場合は正側)にしか現れない。このよう
な場合でも、g−factorを測定し、存在率を求め
ることができる。なお、同図(b)中1番目のピーク
は、試料のピークではなく、試料を溶かした溶媒のピー
クである。
用いて試料を溶出し、リアルタイムでg−factor
を求めた様子を示した。同図には、UV吸収信号やCD
信号も併せて示している。
頂上に付近にCD信号の正負のピークができている。C
D信号のピークの各頂上付近では、試料が光学的に高純
度で分離されていることを示しているので、この位置で
溶出されてきた試料を他と区別して分取すると高純度な
R−体またはS−体の試料が得られる。
分離はできないのでR−体とS−体の試料が混ざって溶
出される領域がある。すなわち、R−体とS−体のそれ
ぞれのUV吸収信号のピークの裾が重なる付近であり、
特にCD信号がゼロの場所ではR−体とS−体の試料が
等量溶出されている場所である。そして、高純度にR −
体またはS−体の試料が溶出されている領域では、g−
factorは+あるいは−で一定値を示し、純度が低
下してR−体とS−体が混ざり合うとともにg−fac
torはゼロに近づく。
−体またはS−体の試料を分取するのであれば、g−f
actorをリアルタイムでモニタし、g−facto
rが+あるいは−のどちらか一方を示す試料だけを分取
すれば、高純度な試料が得られる。
torが大きく変化すると見にくくなり、分取時のモニ
タとして利用できなくなる。一方、本発明の様にUV吸
収信号にしきい値を設け、一定値以上の大きさの信号が
あった時のみg−factorが表示されるようにする
と、正負に大きく揺れることもなく、真のg−fact
oが上手く行くようになる。
体とL−体の試料を分離した時のg−factorを示
している。このように完全分離できるタイプでもg−f
actorを精度良く求めることができる。
円二色性検出器では、請求項1のような構成にすること
で、同時に円二色性信号と試料の総量信号を取得するこ
とができ、高精度な測定ができる。さらに本発明では左
円偏光と右円偏光の間に生じる直線偏光のタイミングを
とらえてUV測定を行っているので、1つのセルで測定
できる。
が所定量以上フローセル中に溶出されてこないと、検出
手段は検出結果を出力しないので、特に、フローセル中
に光学異性体が同量含まれている場合と、単にフローセ
ル中に試料がほとんど含まれていない場合の区別がはっ
きりし、光学異性体の存在率を示す測定結果が見やすく
なる。つまり、試料が溶出されていない区間での存在率
の大きな変動がない。さらに、取得した2つの信号に基
づいて求める光学異性体の存在率(g−factor)
を精度よく測定でき、その存在率を用いたR―体の試料
とS−体の試料を分取も容易にできる。
項4のように構成すると、総量測定手段の出力やその出
力を積分した大きさは、フローセル中に試料が溶出され
ている時といない時では区別がつきやすいので、光学異
性体の存在率を示す測定結果が見やすい出力をするHP
LC用円二色性検出器となる。
図である。
の実施の形態にある光学系部分の構成を示した断面図で
ある。
ある。
の実施の形態の構成を示したアナログ処理系のブロック
回路図である。
た図である。
器の第1の実施の形態にある受光部に入力される信号の
うち右偏光性のS/Hした信号を示した波形図である。
(b)は本発明に係るHPLC用円二色性検出器の第1
の実施の形態にある受光部に入力される信号のうち左偏
光性のS/Hした信号を示した波形図である。
器の第1の実施の形態にある受光部に入力される信号の
うちUV吸収S/Hした信号を示した波形図である。
(b)は本発明に係るHPLC用円二色性検出器の第1
の実施の形態にある受光部に入力される信号のうちCD
信号を示した波形図である。
の実施の形態で行われる信号の処理過程を説明するため
のブロック回路図である。
ートである。
の1)である。(b)は、初期設定画面の一例を示す図
(その2)である。(c)は、初期設定画面の一例を示
す図(その3)である。
1の実施の形態からの出力を示す図である。
ける補正前のg−factorを示す図である。
ける補正後のg−factorを示す図である。
スタートとピークエンドを検出するアルゴリズムを説明
する図である。
ける補正後のg−factorの算出アルゴリズムを説
明する図である。
2の実施の形態が測定する試料の測定条件を示した図で
ある。
0の時のCD信号とUV信号を示す図である。(b)は
R−体,S−体の存在比が80/20の時のCD信号と
UV信号を示す図である。(c)はR−体,S−体の存
在比が60/40の時のCD信号とUV信号を示す図で
ある。(d)はR−体,S−体の存在比が50/50の
時のCD信号とUV信号を示す図である。
0の時のCD信号とUV信号を示す図である。(b)は
R−体,S−体の存在比が20/80の時のCD信号と
UV信号を示す図である。(c)はR−体,S−体の存
在比が0/100の時のCD信号とUV信号を示す図で
ある。
クトップ付近を拡大してg−factorを並びて示し
た図である。
2の実施の形態の出力に適用する検量線である。
法でそれぞれ存在比を求めた実験結果である。
ラムである。
グラムである。
2の実施の形態が非光学分離カラムが溶出する試料を分
析したときの出力を示す図である。
2の実施の形態が光学分離カラムが溶出する試料を分析
したときの出力を示す図である。
量検出手段,円二色性検出手段) 26 PEM(変調手段) 29 フォトダイオード(光検知部) 30 CPU(信号処理手段) 38 第1サンプルホルド回路(総量検出手段) 39 積分回路(総量検出手段) 41 第2サンプルホルド回路(円二色性検出手段) 42 第3サンプルホルド回路(円二色性検出手段) 43 第2差動アンプ(円二色性検出手段) 47 信号処理回路系(総量検出手段,円二色性検出手
段) 51 パーソナルコンピュータ(信号処理手段)
Claims (4)
- 【請求項1】 光源から出射された光を変調し、その変
調した光の左円偏光と右円偏光を交互に生成可能な変調
手段と、その変調手段で変調された光の光路上に配置さ
れたフローセルと、光検知部に前記フローセルの光を受
光する光検知手段と、 前記光検知手段の出力から、円二色性を示す信号を検出
する円二色性検出手段と、 前記光検知手段の出力から、前記フローセルにある試料
の総量を示す信号を検出する総量検出手段を備え、 前記円二色性検出手段の出力と前記総量検出手段の出力
から、前記試料の光学異性体の存在率を示す出力ができ
る信号処理手段を備えたHPLC用円二色性検出器。 - 【請求項2】 光源から出射された光を変調し、その変
調した光の左円偏光と右円偏光を交互に生成可能な変調
手段と、その変調手段で変調された光の光路上に配置さ
れたフローセルと、光検知部に前記フローセルの光を受
光する光検知手段と、 前記光検知手段の出力から、円二色性を示す信号を検出
する円二色性検出手段と、 前記光検知手段の出力から、前記フローセルにある試料
の総量を示す信号を検出する総量検出手段を備え、 前記円二色性検出手段の出力と前記総量検出手段の出力
から、前記試料の光学異性体の存在率を示す出力ができ
る信号処理手段を備えたHPLC用円二色性検出器であ
って、 前記信号処理手段の出力は、少なくとも前記総量検出手
段の出力に基づく値が所定の基準を超えた場合にのみ出
力されるようにしたことを特徴とするHPLC用円二色
性検出器。 - 【請求項3】 前記総量検出手段の出力の変化が所定基
準より大きくなったときをピークの開始点とし、その
後、前記総量検出手段の出力の変化が所定基準より小さ
くなったらピークの終了点として、前記ピークの開始点
と前記ピークの終了点を基にベースラインを求める機能
と、 その求めたベースラインに基づいて、前記総量検出手段
の出力を補正する機能を備えたことを特徴とする請求項
1または2に記載のHPLC用円二色性検出器。 - 【請求項4】 円二色性信号と、試料の総量を示す信号
を検出可能なHPLC用円二色性検出器における信号処
理方法であって、 前記総量を示す信号の出力に基づいてベースラインを求
めるステップ、 前記求めたベースラインと前記総量検出手段の出力から
真の総量を算出するステップ、 前記円二色性信号と前記真の総量から、前記試料の光学
異性体の存在率を求めるステップを実行する信号処理方
法。
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