JP4183489B2 - マグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法及びマグネシウム及び/又はマグネシウム合金製品 - Google Patents
マグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法及びマグネシウム及び/又はマグネシウム合金製品 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム金属、マグネシウム合金よりなる部材・製品に高い耐食性と塗膜密着性を付与する表面処理方法に関する。更に、高い塗膜密着性と塗装後耐食性を必要とする自動車部材や、上記性能の他に電気伝導性を必要とするテレビ、オーディオ機器等の家電製品や、パソコン、携帯電話等の電子機器のマグネシウム合金製部材にも好適に用いることができる表面処理方法に関する。また、形成される皮膜中には、クロムやマンガン等の人体に有害な元素を含まないので、マグネシウム金属で作製される生体材料の表面処理としても将来有望なものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム金属、マグネシウム合金の化成処理技術として多くの特許、論文、専門書等で公開されている。これらのうち最も一般的なのは、クロメート処理である。クロメート処理は適応できる製品の範囲が広く優れた耐食性と塗膜密着性をマグネシウム製品に付与することができる。しかしながら、化成処理浴及びそれから作製される化成皮膜には、人体及び環境に悪影響を与える6価クロムが含まれている。そのため、クロムを用いない化成処理技術、いわゆるノンクロム化成処理技術の開発が行われており、その結果、リン酸化処理、ジルコニウム系化成処理、マンガン系化成処理が開発され、一部は実用化されている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)。
【0003】
リン酸化処理は、マグネシウム合金の耐食性、塗膜密着性をある程度まで向上させることができるが、不充分な場合が多く、用途はかなり限定される。リン酸化処理を行うと、マグネシウム合金表面に形成される化成皮膜において、水溶性のMgHPO4が形成されるために、充分な防食性を持つ皮膜が形成されがたいことが原因である。また、処理温度や処理時間が長いことも欠点であり、更に、リン酸も土壌富栄養化等の環境汚染の原因とされている。
【0004】
ジルコニウム系化成処理は、マグネシウム合金表面にジルコニウムの水酸化物、酸化物、リン酸化合物を形成し、マグネシウム合金に耐食性、塗膜密着性を付与するものである。しかしながら、クロメート処理と比較すると、未塗装耐食性が若干劣る場合があり、用途によっては充分でないことがある。ジルコニウムは稀少元素でもあり、資源的に乏しく高価である。また、溶液中で安定に存在するためには、フッ素錯イオンとして存在させるのが一般的であり、フッ素の含有を避けることは難しく、環境保全上好ましくない。
【0005】
クロメート処理に匹敵する性能を発揮するのが、マンガン系化成処理である。大別してリン酸系、非リン酸系に大別される。マンガン系化成処理は、ノート型パーソナルコンピューターのマグネシウム合金製筐体では、現在の主流となっている。しかし、マンガンは、6価クロムより規制は厳しくはないが、排出規制物質であることには変わりない。将来、排出規制がより厳しくなれば、その使用も難しくなる。
【0006】
このような問題を改善するため、重金属を使用しない化成処理を行った場合、塗膜密着性、耐食性及び電気抵抗といったマグネシウム合金製品において要求される物性をバランスよく満たすことが困難となる。特に、パソコン等の情報機器や携帯電話の筐体等に使用する場合は、帯電防止等の点からみて、マグネシウム合金表面の電気抵抗を低い抵抗値に保たなければならない。表面に形成される化成処理皮膜が高い電気抵抗を有することは好ましくない。このため、塩水噴霧試験24時間での腐食発生率が5%以下であり、皮膜の電気抵抗値が0.2Ω程度以下であり、かつ塩水噴霧試験120時間で塗膜剥離を起こさない程度の皮膜電気抵抗と耐食性との両立が求められている。
【0007】
更に、マグネシウム合金製品の成形方法によっては、金属表面が離型剤によって汚染されており、これを除去することが困難なため、耐食性、塗膜密着性を付与することが困難な場合もあるが、このような場合であっても、金属表面に充分な耐食性、塗膜密着性を付与することが必要とされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、6価クロム、過マンガン酸イオン、リン酸イオン等の環境・人体に有害な物質を含んでいること、及び、皮膜電気抵抗と耐食性の両立に限界があるという問題点を有している。従って、本発明の目的は、環境や人体に有害なクロムやマンガン等の物質を実質的に含まない処理剤を使用し、しかも、高耐食性、塗膜密着性、高い皮膜電気抵抗性の要求性能を満たした化成処理皮膜を形成することができるマグネシウム金属及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法、及び、このような表面処理方法によって処理されたマグネシウム及び/又はマグネシウム合金製品を提供することである。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−35073号公報(第2頁)
【0010】
【特許文献2】
特開平7−126858号公報(第2頁)
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、マグネシウム及び/又はマグネシウム合金を0.001〜10質量%の炭酸塩化合物を含む化成処理水溶液(A)によって処理することを特徴とするマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法である。
【0012】
上記化成処理水溶液(A)は、更に、塗膜密着促進剤を含むものであり、上記塗膜密着促進剤は、0.01〜1質量%のトリアジンチオール化合物、シランカップリング剤及びポリアリルアミンの群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0013】
上記マグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法は、更に、上記化成処理水溶液(A)によって処理されたマグネシウム及び/又はマグネシウム合金を第2の塗膜密着促進剤を含む化成処理水溶液(B)によって処理するものであり、上記第2の塗膜密着促進剤は、トリアジンチオール化合物、シランカップリング剤及びポリアリルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
上記トリアジンチオール化合物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−(ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、及び、2−(フェニルアミノ)−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジンからなる群から選ばれる少なくとも1の化合物であることが好ましい。
【0015】
上記シランカップリング剤は、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリクロロシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリクロロシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、及び、3−アミノプロピルメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1のアミノシラン化合物であることが好ましい。
【0016】
上記塗膜密着促進剤は、トリアジンチオール化合物であり、上記第2の塗膜密着促進剤は、ポリアリルアミンであることが好ましい。
【0017】
上記表面処理を行う前に、脱脂、酸洗、脱スマット処理を行い、表面に存在する汚染物、偏析物を除去するものであることが好ましい。
本発明はまた、上記マグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法によって処理されたことを特徴とするマグネシウム及び/又はマグネシウム合金製品でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法は、重金属を実質的に含有しない処理剤を使用する表面処理方法である。すなわち、従来のマグネシウム金属、マグネシウム合金の表面処理方法で使用されていたクロム、マンガン、ジルコニウム、チタン等の重金属化合物を実質的に含有しない処理剤を使用して、マグネシウム金属、マグネシウム合金の表面処理を行う方法である。
【0019】
上記マグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法において、処理剤が重金属を実質的に含有しないとは、意図的に重金属イオンを加えていないことであり、処理剤中において重金属が機能を発揮するほど含まれてないことを意味する。
【0020】
本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法により処理されるマグネシウム金属及びマグネシウム合金は、圧延、ダイキャスト法やチクソモールド法等により作製されるマグネシウム金属やマグネシウム合金である。マグネシウム金属は、生体材料として有望であり、AZ31合金、99.9%の純マグネシウム金属が経済的な観点から将来多く用いられると思われる。本発明は、マグネシウム合金にも用いることができる。更に好適に用いられる合金は、AZ91、AZ31、AM60、AM50等である。ここで、表記のAZやAMは添加されている金属元素を示す。Aはアルミニウムであり、Mはマンガン、Zは亜鉛である。これら表記に続く数字は、これら添加元素の添加濃度を表しており、例えば、AZ91であれば、アルミニウムが9%であり、亜鉛が1%であることを示している。Mが0とはMnの含有量が1%未満という意味である。特に、AZ91、AM60等のアルミニウムを5%以上含有する合金に好適に用いられる。
【0021】
マグネシウム金属やマグネシウム合金を加工する場合には、機械油や離型剤が用いられる。特に、ダイキャストやチクソモールドで作製する場合、離型剤が金属又は合金表面だけでなく、金属又は合金内部20〜30μm、ときにはそれより内部にまで残存する場合がある。このため、従来の表面処理方法では塗装後耐食性、塗膜密着性が不充分であるが、本発明の表面処理方法は、このようなマグネシウム金属やマグネシウム合金に対しても充分な耐食性、塗膜密着性を付与することができるものである。
【0022】
本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法(以下、表面処理方法ともいう。)は、マグネシウム及び/又はマグネシウム合金を0.001〜10質量%の炭酸塩化合物を含む化成処理水溶液(A)によって処理するものである。
【0023】
上記表面処理方法の特徴は、炭酸イオンを含む水溶液、又は、炭酸イオンと塗膜密着促進剤とを含む水溶液によって、マグネシウム金属及び/又はマグネシウム合金を処理することにある。塗膜密着促進剤を含まない場合の処理法の化学的な重要なポイントは、マグネシウム金属やマグネシウム合金が安定なアルカリ性溶液中、例えば、1質量%のK2(CO3)溶液で、溶液のpHは11.5(測定して確認)程度において、反応液を高温に保ち酸化物皮膜若しくは水酸化物皮膜、両者の混合皮膜の生成を促進させること、炭酸イオンとの反応により炭酸マグネシウムを生成させることである。
【0024】
上記炭酸イオンの供給源としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩化合物が挙げられる。溶解度、コストを考慮すれば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムの使用が好ましい。この場合の炭酸塩化合物の濃度は、0.001〜10質量%であり、使用する炭酸塩化合物が示す溶解度の限度の範囲で使用することができる。好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。0.001質量%未満であると、充分な耐食性、皮膜電気抵抗値が得られずまた、10質量%を超えても、それ以上の効果の向上は認められず、経済的に好ましくない。
【0025】
上記化成処理水溶液(A)によるマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の処理方法は、特に限定されず、例えば、スプレー、浸漬等の公知の方法によって被処理物表面と化成処理水溶液(A)を接触させることによって行うことができる。パソコン筐体、携帯電話筐体、自動車部材・部品、その他複雑な形状をした製品の処理に好適に用いることができる点から、浸漬法による処理であることが好ましい。
【0026】
上記表面処理方法において、化成処理浴の温度は特に限定されず、通常50℃以上であれば良いが、好ましくは60〜90℃の範囲であり、より好ましくは80〜90℃である。50℃未満の温度では、酸化皮膜形成が不充分となり、良好な性能を示さないので不適である。90℃を超えると、溶液の蒸発、熱源の確保等無駄なことが多いだけでなく、特別な性能の向上も認められないので好ましくない。
【0027】
上記表面処理方法において、処理時間は1〜5分間であることが好ましい。1分未満であると、酸化皮膜形成が不充分となり、良好な性能を示さないので不適である。5分を超えると、溶液の蒸発、熱源の確保等無駄なことが多いだけでなく、特別な性能の向上も認められないので好ましくない。3〜5分間であることがより好ましい。
【0028】
上記表面処理方法は、上記炭酸塩化合物単独での処理でも充分な塗膜密着性が得られるが、更に、塗膜密着促進剤を添加すると、より強固な塗膜密着性をマグネシウム金属やマグネシウム合金に付与することができる。特に、除去し難い離型剤を使用している場合や、湯流れが悪く組織がポーラスである等、品質の悪いマグネシウム鋳造品にも、耐食性・塗膜密着性を付与することができる
【0029】
上記表面処理方法において使用する塗膜密着促進剤としては、末端にアミノ基を持つシランカップ剤、トリアジンチオール化合物、ポリアリルアミンの使用が好適である。
【0030】
上記シランカップリング剤としては、例えば、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリクロロシラン、N−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリクロロシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−アミノプロピルメトキシシラン等のアミノシラン化合物を挙げることができる。
【0031】
上記トリアジンチオール化合物は、トリアジン環とチオール基の両方を有する化合物である。特に、チオール置換の1,3,5−トリアジンが好ましい。また上記トリアジンチオール化合物は、トリアジン環の一部がアルキルアミノ置換したものであってもよい。上記トリアジンチオール化合物としては、例えば、1,3,5−トリアジン−2,4,6トリチオール、2−(ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−(フェニルアミノ)−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。
【0032】
上記ポリアリルアミンは、下記一般式(1)
【0033】
【化1】
【0034】
で表わされる重合体である。上記一般式(1)中、重合度nは、下限10、上限1200の範囲内であることが好ましい。重合度が低すぎると、塗膜密着性の効果が得られない場合があり、重合度が高すぎると、浴安定が悪いという問題がある。上記ポリアリルアミンとしては、日東紡社製PAAシリーズ(PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−15、PAA−15B、PAA−10C、PAA−H−10C)等の市販のものを使用することができる。
【0035】
上記表面処理方法に使用することができる塗膜密着促進剤としては、これ等にかぎらず、アルカリ性雰囲気で安定であり、塗膜密着に有効な官能基を持ち、本化成処理皮膜に吸着可能な有機分子なら使用することができる。
上記塗膜密着促進剤を使用する濃度は0.01〜1質量%が良く、0.01質量%未満では効果が弱くなり好ましくない。一方1質量%を超えても、効果の増大が認められず、経済的に好ましくない。上記塗膜密着促進剤を使用する場合の処理浴中の炭酸塩の濃度は、先の炭酸塩処理の場合と同様であり、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%で使用できる。また、上記塗膜密着促進剤を使用する場合の化成処理浴の温度は40℃以上であればよく、好ましくは60〜90℃、より好ましくは60〜80℃であれば良い。
【0036】
本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法は、先ず、上述したように、マグネシウム及び/又はマグネシウム合金を0.001〜10質量%の炭酸塩化合物を含む化成処理水溶液(A)によって処理した後に、第2の塗膜密着促進剤を含む化成処理水溶液(B)によって処理するものであることが好ましい。
【0037】
化成処理水溶液(A)で処理することによって、金属表面に炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物の混合物皮膜が形成され、これによって耐食性能を得ることができ、上記化成処理水溶液(B)によって更に処理を行うことによって、耐食性及び塗膜密着性をより向上させることができる。化成処理水溶液(B)によって更に処理を行うことによって、上記マグネシウム化合物の混合物皮膜上に、上記塗膜密着促進剤及び第2の塗膜密着促進剤とからなる有機分子吸着層が形成され、上記有機分子吸着層によって、更に耐食性が改善され、同時に塗膜とマグネシウム金属、マグネシウム合金表面との密着性が向上するものと推察される。また、上記マグネシウム化合物の混合物皮膜は、分子レベルの非常に薄い皮膜であるため、マグネシウム金属やマグネシウム合金の導電性を著しく損なうことなく、耐食性及び塗膜密着性を付与することができる。
【0038】
上記化成処理水溶液(B)で更に処理することにより、上記化成処理水溶液(A)で処理するだけでは、充分な化成処理を行うことが困難であるような被処理物、例えば、より強固に離型剤が付着しているような特に品質の悪いマグネシウム鋳造品にも、充分な化成処理を行うことができる。
【0039】
上記化成処理水溶液(B)で更に処理する場合、上記化成処理水溶液(A)は、pHが10以上であることが好ましい。上記範囲内とすることによって、炭酸塩による化成処理反応が効率よく生じ、効率のよい化成処理を行うことができる。上記pHは、11以上であることがより好ましい。また、pHの上限は特に限定されるものではないが、13以下であることが好ましい。
【0040】
上記化成処理水溶液(B)で更に処理する場合、上記化成処理水溶液(A)は、pHを上記範囲内のものとするために、pH調整剤として塩基性化合物を含有するものであってもよい。上記塩基性化合物としては特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を挙げることができる。
【0041】
上記第2の塗膜密着促進剤は、トリアジンチオール化合物、シランカップリング剤及びポリアリルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。上記第2の塗膜密着促進剤として使用することができるトリアジン化合物、シランカップリング剤、ポリアリルアミンとしては特に限定されず、例えば、塗膜密着促進剤に使用することができるとして上述した化合物を挙げることができる。
【0042】
上記第2の塗膜密着促進剤としてトリアジンチオール化合物を使用する場合、上記トリアジンチオール化合物の含有量は、化成処理水溶液(B)に対して下限10ppm、上限10000ppmの範囲内であることが好ましい。10ppm未満であると、充分な耐食性が得られない場合があり、10000ppmを超えても、それ以上の効果の向上は認められず、経済的に好ましくない。上記下限は、100ppmであることがより好ましく、500ppmであることが更に好ましい。上記上限は、5000ppmであることがより好ましく、2000ppmであることが更に好ましい。
【0043】
上記第2の塗膜密着促進剤としてアミノシラン化合物を使用する場合、上記アミノシラン化合物の含有量は、化成処理水溶液(B)に対して下限10ppm、上限10000ppmの範囲内であることが好ましい。10ppm未満であると、充分な耐食性が得られない場合があり、10000ppmを超えても、それ以上の効果の向上は認められず、経済的に好ましくない。上記下限は、100ppmであることがより好ましく、500ppmであることが更に好ましい。上記上限は、5000ppmであることがより好ましく、2000ppmであることが更に好ましい。
【0044】
上記第2の塗膜密着促進剤としてポリアリルアミンを使用する場合、上記ポリアリルアミンの含有量は、化成処理水溶液(B)に対して下限50ppm、上限10000ppmの範囲内であることが好ましい。50ppm未満であると、充分な耐食性が得られない場合があり、10000ppmを超えても、それ以上の効果の向上は認められず、経済的に好ましくない。上記下限は、100ppmであることがより好ましく、500ppmであることが更に好ましい。上記上限は、5000ppmであることがより好ましく、3000ppmであることが更に好ましい。
【0045】
上記第2の塗膜密着促進剤は、上記塗膜密着促進剤と同一の化合物であってもよいが、相違するものであるほうが、塗膜密着促進効果が良好なものとなるため、より好ましい。
【0046】
上記塗膜密着促進剤と上記第2の塗膜密着促進剤の組み合わせとしては、塗膜密着促進剤がトリアジンチオール化合物で第2の塗膜密着促進剤がアミノシラン化合物又はポリアリルアミンである組み合わせ、塗膜密着促進剤がアミノシラン化合物で第2の塗膜密着促進剤がポリアリルアミンである組み合わせが密着性向上の観点からみて好ましい。なかでも、塗膜密着促進剤がトリアジンチオール化合物で第2の塗膜密着促進剤がポリアリルアミンである組み合わせが最も好ましい。
【0047】
上記化成処理水溶液(B)による処理方法は、特に限定されず、スプレー、浸漬等の公知の方法によって被処理物と化成処理水溶液(B)を接触させることによって行うことができる。第2の化成処理反応を効率よく行うために、化成処理水溶液(B)の温度は、下限40℃、上限80℃の範囲内であることが好ましい。40℃未満の温度では、皮膜形成が不充分となり、良好な性能を示さないので不適である。80℃を超えると、溶液の蒸発、熱源の確保等無駄なことが多いだけでなく、特別な性能の向上も認められないので好ましくない。上記下限は、50℃であることがより好ましく、上記上限は、60℃であることがより好ましい。
【0048】
本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法においては、より効率よく処理を施すために、上記表面処理を行う前に、脱脂、酸洗、脱スマット処理の工程を行うことがより好ましい。例えば、被処理物において、離型剤が被処理物表面だけでなく、内部にまで残存するような場合は、被処理物表面から、これら機械油や離型剤を除去する必要がある。このように、機械油や金型の離型剤で激しく汚染されたマグネシウム金属、マグネシウム合金を処理する場合、その離型剤除去工程は、被処理物の汚染の程度によって工程や条件が多少異なるが、脱脂→水洗→酸エッチング→水洗→脱スマット→水洗で行われるのが一般的である。
【0049】
上記脱脂工程では、界面活性剤を含んだアルカリ性脱脂剤の水溶液が用いられるのが一般的である。この工程は表面にゆるく付着した機械油や離型剤の除去を目的として行う。使用する脱脂剤は特に限定されるものではない。汚染の程度が小さい場合は、この脱脂だけで充分な場合もあるが、不充分な場合がほとんどであり、一般的には酸エッチングが行われる。
【0050】
上記酸エッチング工程の目的は、金属、合金表面の不均一な酸化物層、被処理物表面に付着している機械油と、金属、合金内部にまで進入した離型剤を金属、合金の溶解により除去することである。これらの除去が不充分であると、充分な耐食性と塗膜密着性を付与できないおそれがある。また、完全に除去する必要はないものの離型剤の除去が著しく不充分であると、これも耐食性と塗膜密着性に悪影響を及ぼすおそれがある。特に離型剤での汚染の激しい場合には、この工程は必須であり、重要である。
【0051】
上記酸エッチング工程に使用する酸としては、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸の他に、シュウ酸、酢酸等の有機酸が使用できる。酸エッチング溶液中の酸濃度は、0.1〜5g/lが良く、より好ましくは0.3〜1g/lである。0.1g/l未満では、マグネシウム溶解によるpH上昇のため、溶液の交換頻度が多くなるので好ましくない。5g/lを超えると、マグネシウム金属、マグネシウム合金の溶解が著しく起こり、激しい水素発生がおこる。そのため、金属、合金表面ヘダメージを与えることがあり不適である。また、カルボン酸やリン酸を5g/lを超える濃度で使用すると、表面にシュウ酸塩やリン酸塩が析出して、充分な離型剤除去が行えないことがある。これら酸は、シュウ酸や硝酸のように、単独で使用して効果のあるものもあるが、一般的には、2種類以上の混酸として使用するのが好ましい。例えば、硫酸と硝酸、リン酸とケイフッ化水素酸等が好適に使用できる。
【0052】
上記脱スマット工程は、KOHやNaOHのアルカリ性化合物を主成分とする水溶液が好適に使用できるが、これらに制限されるものではない。酸エッチングで表面に付着した生成物の除去、金属、合金表面に偏折したアルミニウムの除去とそのアルミニウム近傍に付着している離型剤の除去等を目的として行われる。
【0053】
上記表面処理方法によって処理されたマグネシウム金属、マグネシウム合金製品は、携帯電話、パソコンの筐体、蓋材等に好適に使用することができる。このようなマグネシウム合金製品も、本発明の一つである。
【0054】
本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法は、マグネシウム及び/又はマグネシウム合金を0.001〜10質量%の炭酸塩化合物を含む化成処理水溶液(A)によって処理するものであることから、マグネシウム化合物の混合物からなる皮膜をマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面に形成させることができ、優れた耐食性、塗膜密着性、導電性を付与することができる。また、上記化成処理水溶液(A)が更に、塗膜密着促進剤を含むものであり場合には、耐食性及び塗膜密着性をより向上させることができる。
【0055】
また、上記表面処理方法が更に、第2の塗膜密着促進剤を含む化成処理水溶液(B)によって処理するものである場合には、マグネシウム化合物の混合物からなる皮膜を形成させ、更に、水溶性有機分子吸着層が形成させることができるものである。従って、上記マグネシウム化合物の混合物皮膜によってより高い耐食性を付与することができ、水溶性有機分子吸着層によって更に耐食性を良好なものとするとともに、高い塗膜密着性を付与することができる。これにより、上記化成処理水溶液(A)では充分に化成処理することが困難な品質の悪いマグネシウム金属、マグネシウム合金に対しても充分に化成処理することができる。また、形成されたマグネシウム化合物の混合物皮膜は、分子レベルの非常に薄い皮膜であるため、処理されたマグネシウム金属、マグネシウム合金表面の電気抵抗値は、高くなりすぎることがない。即ち、更に、化成処理水溶液(B)で化成処理する方法であっても、より優れた耐食性、塗膜密着性及び導電性を付与することができる。
【0056】
【実施例】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0057】
参考例1
板厚2mmのチクソモールディング製マグネシウム合金AZ91D試験板を、以下に示した条件で脱脂、水洗、酸エッチング、水洗、脱スマット、水洗、化成処理、水洗、を行い、乾燥した後、粉体塗装を行った。水洗は、水道水シャワーで行い、他の各工程は、全てディップ方式で処理を行った。乾燥は電気乾燥機で100℃、20分間行った。
(A)脱脂
処理液:1質量%マグダインSF100クリーナー(日本ペイント社製)
処理温度:50℃
処理時間:2分間
(B)酸エッチング
処理液:1vol%マグダインSF400酸エッチング(日本ペイント社製)
処理温度:50℃
処理時間:10分間
(C)脱スマット
処理液:5vol%マグダインSF300アルカリエッチング
処理温度:60℃
処理時間:5分
(D)化成処理
処理液:1質量%炭酸カリウム水溶液
pH:11.5
処理温度:80℃
処理時間:5分
得られた試験板を用いて、下記方法で、未塗装耐食性、化成皮膜電気抵抗、塗装後耐食性、塗膜密着性を評価し結果を表1に示した。
【0058】
未塗装耐食性
塩水噴霧試験:試験片に5%食塩水を35℃で噴霧し、48時間経過後の腐食部分の占有率を目視で評価した。
化成皮膜電気抵抗
表面抵抗測定装置EP−T360(キーエンス社製)を用いて2探針法で、化成皮膜の9ヶ所を測定して、最大値と最小値を除いた7点の値の平均値を電気抵抗値とした。
塗装後耐食性
試験板にマグダインPD−E(エポキシ系粉体塗料、日本ペイント社製)を乾燥膜厚40μmとなるように塗装し、160℃、20分間焼き付けて塗装板を作成した。これに金属製カッターで素地までのクロスカットを入れ、塩水噴霧試験にかけ、120時間後にクロスカット部に粘着テープを圧着して剥離したときの塗膜剥離幅で評価した。
塗膜密着性
(1)粉体塗装した試験板を120時間塩水噴霧試験にかけ、その後取り出した試験板に1mm間隔の碁盤目を100個作り、粘着テープを貼り付けて剥離した。残存した碁盤目の数を測定し評価した。
(2)粉体塗装した試験板を50℃の温水に120時間浸漬する。その後取り出した試験板に1mm間隔の碁盤目を100個作り、粘着テープを貼り付けて剥離した。残存した碁盤目の数を測定し評価した。
【0059】
参考例2
参考例1における化成処理剤を0.1質量%炭酸カリウム水溶液に変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。また、板厚2mmのチクソモールディング製マグネシウム合金AZ91D試験板の代わりに、塗膜密着性、耐食性の劣る合金である板厚1mmのダイキャスト製マグネシウム合金AZ91D試験板を使用した以外は、参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで、それぞれ参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0060】
参考例3
参考例1における処理温度を60℃に変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0061】
参考例4
参考例1における化成処理剤を飽和炭酸カルシウム水溶液(濃度:0.0014質量%)に変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0062】
参考例5
参考例1における化成処理剤を5質量%炭酸カリウム水溶液に変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0063】
参考例6
塗膜密着性、耐食性の劣る合金である板厚1mmのダイキャスト製マグネシウム合金AZ91D試験板を下記に示す化成処理浴に浸漬して試験板を作製した。次いで参考例1と同様に評価して得られた結果を表1に記載した。なお、工程及び化成処理以外の条件は参考例1と同様にした。
(A)化成処理:1質量%のK2CO3と0.1%の1,3,5−トリアジン−2,4,6トリチオールの水溶液
pH:11.5
処理温度:80℃
処理時間:2分
【0064】
参考例7
参考例6における化成処理浴のトリアジンチオールの濃度を1質量%に変更した以外は、参考例6と同様にして試験板を作製した。次いで、参考例1と同様に評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0065】
参考例8
参考例6における化成処理浴のトリアジンチオールの濃度を0.01%に変更した以外は、参考例6と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様に評価し得られた結果を表1に記載した。
【0066】
参考例9
参考例6における化成処理浴の温度を60℃に変更した以外は、参考例6と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様に評価し得られた結果を表1に記載した。
【0067】
参考例10
参考例6における化成処理浴を1質量%K2CO3と0.1質量%のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン水溶液に変更した以外は、参考例6と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様に評価し得られた結果を表1に記載した。
【0068】
比較例1
参考例1における化成処理を市販のリン酸マンガン処理剤マグダインSF572(日本ペイント社製)の20%水溶液を使用し50℃2分間浸漬処理することに変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0069】
比較例2
参考例1における化成処理を、市販のリン酸ジルコン処理剤アルサーフ440(日本ペイント社製)の5%水溶液を使用し50℃2分間浸漬処理することに変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0070】
比較例3
参考例1における化成処理に変えてイオン交換水で80℃2分間浸漬処理することに変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0071】
比較例4
参考例1における化成処理剤を1質量%水酸化カリウム水溶液に変更した以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。次いで参考例1と同様にして評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0072】
比較例5
参考例6における化成処理浴の炭酸カリウムを水酸化カリウムに変更した以外は、参考例6と同様に試験板を作製した。次いで、参考例1と同様に評価し、得られた結果を表1に記載した。
【0073】
【表1】
【0074】
以上の結果により、本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法を行ったものは、マグネシウム合金基材に対して優れた耐食性と塗膜密着性及び導電性を示した。処理剤として0.1質量%炭酸カリウム水溶液を使用した場合(参考例2)においては、板厚2mmのチクソモールディング製マグネシウム合金AZ91D試験板に対する処理性能に比べて、板厚1mmのダイキャスト製マグネシウム合金AZ91D試験板に対する処理性能が若干劣るものであったが、処理剤にトリアジンチオール化合物、アミノシラン化合物を更に含ませることによって(参考例6〜10)、処理性能が改善されることが明らかとなった。
【0075】
実施例6
チクソモールディング製マグネシウム合金試験板(参考例6で使用された試験板より汚染がひどく、化成処理が困難である試験板)によって得られたパソコン用筐体を、以下に示した条件で、脱脂、水洗、酸エッチング、水洗、脱スマット、水洗、第1の化成処理、水洗、第2の化成処理、水洗を行い、乾燥した後、粉体塗装工程(工程例1)を行った。水洗は、水道水シャワーで行い、他の各工程は、全てディップ方式で処理を行った。乾燥は電気乾燥機で100℃、20分間行った。なお、被処理物として使用した上記パソコン用筐体は、離型剤汚染程度が高く、除去が困難であり、耐食性、塗膜密着性の付与が困難なものであった。
(A)脱脂
参考例1と同様にして行った。
(B)酸エッチング
参考例1と同様にして行った。
(C)脱スマット
参考例1と同様にして行った。
(D)第1の化成処理
処理液:1質量%炭酸カリウム、100ppm1,3,5−トリアジン−2,4,6−チオールの水溶液
pH:11.5
処理温度:80℃
処理時間:2分間
(E)第2の化成処理
処理液:2000ppmポリアリルアミン(日東紡社製、PAA−5、n=87.7)水溶液
処理温度:60℃
処理時間:2分間
得られた試験板を用いて、下記方法で、未塗装耐食性、化成皮膜電気抵抗、塗装後耐食性、塗膜密着性を評価し結果を表2に示した。
【0076】
未塗装耐食性
塩水噴霧試験:試験片に5%食塩水を35℃で8時間連続噴霧し、その後の耐食性をレーティングナンバー法で評価した。
化成皮膜電気抵抗
参考例1と同様の方法で評価した。
塗装後耐食性
参考例1と同様の方法で評価した。
塗膜密着性
(1)上記塗装後耐食性の試験方法と同様の方法で粉体塗装した試験板を72時間塩水噴霧試験にかけ、その後取り出した試験板に1mm間隔の碁盤目を100個作り、粘着テープを貼り付けて剥離した。残存した碁盤目の数を測定し評価した。
(2)上記塗装後耐食性の試験方法と同様の方法で粉体塗装した試験板を50℃のイオン交換水に72時間浸漬する。その後取り出した試験板に1mm間隔の碁盤目を100個作り、粘着テープを貼り付けて剥離した。残存した碁盤目の数を測定し評価した。
【0077】
実施例7、参考例11〜13
表2に示した処方を有する化成処理水溶液(A)及び化成処理水溶液(B)を用いて、表2に示した条件で実施例6と同様にマグネシウム合金の表面処理を行った。結果を表2に示す。なお、実施例7、参考例11〜12は、実施例6における工程例1ではなく、脱脂、水洗、酸エッチング、水洗、第1の化成処理、水洗、第2の化成処理、水洗を行い、乾燥した後、粉体塗装工程(工程例2)で行った。また、参考例13は、参考例6と同様の方法により処理を行った。
【0078】
【表2】
【0079】
表2の結果から明らかなように、本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法(更に、第2の化成処理液で処理する方法)によって処理されたマグネシウム合金は、耐食性、塗膜密着性及び導電性の性質に優れているものであった。処理剤として1質量%炭酸カリウム、100ppm1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールの水溶液を使用した場合(参考例13)においては、板厚1mmのダイキャスト製マグネシウム合金AZ91D試験板に対する処理性能に比べて、チクソモールディング製マグネシウム合金試験板(参考例6で使用された試験板より汚染がひどく、化成処理が困難である試験板)に対する処理性能が若干劣るものであったが、更にポリアリルアミンを含む化成処理水溶液(B)で処理することにより(実施例6)、処理性能が改善されることが明らかとなった。
【0080】
【発明の効果】
本発明のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法は、クロムやマンガン等の有害な物質を用いることなく、マグネシウム金属、マグネシウム合金にリン酸マンガン処理と同等以上の耐食性と塗膜密着性を付与することができ、かつ皮膜電気抵抗値との両立をも可能にした。これにより、環境保全や人体の影響を大幅に低減することができる。また、既存のクロメート処理設備、マンガン系化成処理設備をそのまま転用できるため、あらたな設備投資の必要もない。また、浸漬法による処理である場合には、パソコン筐体、携帯電話筐体、自動車部材・部品、その他複雑な形状をした製品の処理にも好適に用いることができる。
Claims (3)
- マグネシウム及び/又はマグネシウム合金を0.001〜10質量%の炭酸塩化合物を含む化成処理水溶液(A)によって浸漬法により処理し、更に、化成処理水溶液(A)によって処理されたマグネシウム及び/又はマグネシウム合金を第2の塗膜密着促進剤を含む化成処理水溶液(B)によって処理するものであり、
前記化成処理水溶液(A)は、更に、塗膜密着促進剤を0.01〜1質量%含み且つリン酸イオンを含まないものであり、前記塗膜密着促進剤は、トリアジンチオール化合物であり、
前記炭酸塩化合物は、炭酸カリウムであり、
前記第2の塗膜密着促進剤は、ポリアリルアミンである
ことを特徴とするマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法。 - トリアジンチオール化合物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−(ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、及び、2−(フェニルアミノ)−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジンからなる群から選ばれる少なくとも1の化合物である請求項1記載のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法。
- 前記表面処理を行う前に、脱脂、酸洗、脱スマット処理を行い、表面に存在する汚染物、偏析物を除去することを特徴とする請求項1又は2記載のマグネシウム及び/又はマグネシウム合金の表面処理方法。
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