JP4182920B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents
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すなわち、従来の構成に加えて、発熱源としても働くアクチュエータ駆動用のICチップ(駆動回路)がインクジェットヘッド近傍に設けられることになり、このICチップの設置位置に対応した温度分布がインクジェットヘッド自体に生じるようになった。このため、この温度分布に起因して、ノズルの形成位置の違いにより印字特性に差が生じることが心配されるようになってきた。
そこで、インクジェットヘッドをノズル列単位の領域で見たときに、温度差による印字特性の差が最も大きなICチップに隣接するノズル列に対応した部分と、ICチップから一番離れたノズル列に対応した部分との間に所定の温度差が生じたときのインクの消費量を基準消費量に決める。そして、実際に消費されたインク量が基準消費量よりも多い場合には、次の被記録媒体の印字開始時刻が遅延される。これにより、インクジェットヘッドが自然冷却される。また、実際に消費されたインク量が基準消費量以下の場合には、次の被記録媒体の印字開始時刻は遅延されない。
例えば、コンピュータから送信された印字データに基づいて印字を行うインクジェットプリンタにおいて、印刷用紙(被記録媒体)1枚分、または、1ラスター分、あるいは、複数ラスター分の印字データを1単位とした複数単位の印字データをコンピュータから受信した場合、印刷用紙1枚毎、または、1ラスター毎、あるいは、複数ラスター毎の印字開始時刻が遅延される。
そこで、温度差による最も大きな印字特性の差を正確に示す部位として、ICチップに隣接するノズル列の中央部に位置するノズルに対応した部分と、ICチップから一番離れたノズル列のうちインクが供給される最上流側に位置するノズルに対応した部分との間で、予め基準となる温度差が決められる。さらに、これに対する実際に消費されたインク量に基づいて、1つの被記録媒体の印字を完了するのに必要な所定の印字データ群の印字開始時刻が遅延される。これにより、インクジェットヘッドが自然冷却される。
つまり、実際に1つの被記録媒体の印字を完了するまでに要したインクの消費量と基準消費量とを比較し、その比較結果に基づいて、これに続く次の被記録媒体の印字を完了するために、これに関する所定の印字データ群を構成する単位印字データ毎に一定の遅延時間が加えられる。これにより、インクジェットヘッドが自然冷却される。
つまり、消費量比較手段により計測されたインクの消費量が基準値より多いと判断されたときに、次に印字される被記録媒体のための各印字動作に対して、それぞれ一定の遅延時間が加えられるものであり、より具体的には、加えられる一定の遅延時間は印字消費量と基準消費量との差に比例して長くされる。
つまり、計測されたインクの消費量が基準値より少ないときには、次に印字される被記録媒体のためのいずれの印字動作に対しても遅延時間を加えることなく、印字を完了するのに必要な全印字動作が連続して行われる。
インクジェットヘッドのノズル列に対応した部分間の温度差による印字品質への影響が出ないようにすることができるインクジェットプリンタを実現することができる。
所定の印字データ群が、それぞれが一定時間の印字動作を行うための複数の単位印字データからなる場合に、複数の単位印字データの各印字開始時刻を遅延することができる。
従って、インクジェットヘッド上の温度分布による印字品質への影響を抑制することができる。さらに、この影響を抑制するために、所定の印字データ群に対して遅延時間を与えるものであるが、この印字データ群を構成する単位印字データ毎に分散して遅延時間を加えることになるので、一連の各印字動作が停滞することなく滑らかに行われる。
例えば、コンピュータから送信された印字データに基づいて印字を行うインクジェットプリンタにおいて、印刷用紙(被記録媒体)1枚分、または1ラスター分の印字データを1単位とした複数単位の印字データをコンピュータから受信した場合、印刷用紙1枚毎、または、1ラスター毎、あるいは、複数ラスター毎の印字開始時刻を遅延させることができるため、全体的な印字動作が滑らかになる。
インクジェットヘッド上で生じる温度差が、発熱源としても働くICチップからの放熱の影響を一番強く受ける部位と、一番影響を受けにくい部位との間の温度差であるので、確実にこのような温度差による印字品質への影響が出ないようにすることができるインクジェットプリンタを実現することができる。
1つの被記録媒体の印字を完了したときに、この印字で発生した熱により、次の被記録媒体の印字結果に対して温度差に対応した影響を与える可能性があったとしても、インクジェットヘッドを冷却するために滞ることなく、この被記録媒体に関する一連の印字動作が連続して行われる。さらに、これに続き次の被記録媒体を印字するときにも、これに関連した印字データ群を構成する単位印字データ毎に分散して遅延時間が加えられることになるので、一連の各印字動作が滞ることなく滑らかに行われる。そのため、先の印字で生じた熱の影響が、次の被記録媒体の印字実行時にまで及ぶことを抑制することができるとともに、常に滑らかな印字動作ができるインクジェットプリンタを実現することができる。
1つの被記録媒体の印字に要したインク消費量が、印字品質に悪い影響を与えるような消費量となったときに、確実に次の複数の単位印字データの各印字開始時刻を遅延させることができるため、インクジェットヘッドのノズル列に対応した部分、またはその部分よりも小さい部分間における温度差による印字品質への影響が出ないようにすることができるインクジェットプリンタを実現することができる。
印字消費量と基準消費量との差に比例して遅延時間を長くすることができる。
従って、上記差の大きさに関係なく設定する遅延時間を一律に設定する場合のように、差が小さいにもかかわらず遅延時間が長くなってしまい、次の印字開始時刻が無駄に遅くなることがない。あるいは、差が大きいにも係わらず相対的に遅延時間が短くなってしまい、先の印字で生じた熱の影響を次の被記録媒体の印字時に及ぶことを十分に抑制することができなくなることもない。すなわち、先の印字時に生じた熱に対して、次の印字時に必要十分な遅延時間を加えることでその影響を確実に抑制することができるインクジェットプリンタを実現することができる。
印字消費量が基準消費量より少ないときは、不必要な遅延時間を加えることなく、複数の印字動作を連続的に繰り返して次の1つの被記録媒体の印字を完了することができる。
例えば複数の被記録媒体を連続印字する場合に、印字消費量が基準消費量より多い被記録媒体と少ない被記録媒体とが混在しているときに、印字消費量が基準消費量より多い被記録媒体に合わせて各被記録媒体を印字する毎に遅延時間を設定すると、全体の印字時間が長くなってしまうが、印字消費量が基準消費量より少ないときは遅延時間を設定しないで複数の印字動作を連続的に繰り返すことができる。そのため、全体の印字時間を短縮可能なインクジェットプリンタを実現することができる。
(インクジェットプリンタの主要構成)
最初に、インクジェットプリンタの主要構成について図1を参照して説明する。図1はインクジェットプリンタの主要構成を示す平面説明図である。
インクジェットプリンタ1の内部には、2本のガイド軸6,7が設けられており、そのガイド軸6,7には、キャリッジを兼用するヘッドホルダ9が取付けられている。ヘッドホルダ9には、印刷用紙Pへインクを吐出して印刷を行うインクジェットヘッド30が保持されている。ヘッドホルダ9は、キャリッジモータ10により回転する無端ベルト11に取付けられており、キャリッジモータ10の駆動により、ガイド軸6,7に沿って往復移動する。
また、インクジェットプリンタ1には、イエローインクが収容されたインクタンク5aと、マゼンタインクが収容されたインクタンク5bと、シアンインクが収容されたインクタンク5cと、ブラックインクが収容されたインクタンク5dとが備えられている。各インクタンク5a〜5dは、それぞれ可撓性のチューブ14a、14b、14c、14dによってチューブジョイント20と接続されている。さらに、ヘッドホルダ9の移動方向の左端には、フラッシングのときにノズルから吐出された不良インクを吸収する吸収部材3が設けられている。ヘッドホルダ9の移動方向の右端には、パージングのときにノズルから不良インクを吸引するパージ装置2が設けられており、そのパージ装置2の左方には、ノズル面に付着したインクを払拭するワイパ4が設けられている。
次に、ヘッドホルダの主要構造について図2および図3を参照して説明する。
図2はヘッドホルダからバッファタンクおよびヒートシンクを取り外した状態を示す斜視図であり、図3は図2を左側面から透視した説明図である。
図3に示すように、ヘッドホルダ9の底部には、インクジェットヘッド30が、そのノズル面31aをヘッドホルダ9の外側に露出するようにして設置されており、インクジェットヘッド30の上部には、インクジェットヘッド30へ供給するインクを貯留するバッファタンク40が設置されている。バッファタンク40の端部には、図2に示すように、インクをこのバッファタンク40に供給するためのチューブジョイント20が接続されている。図3に示すようにバッファタンク40の下面にはインク流出口40aが設けられており、インクジェットヘッド30の上面に設けられたインク供給口30aとシール部材90を介して接続されている。
ICチップ80に電気的に接続されたフラットケーブル70は、側面部材60bとヘッドホルダ9の側壁との間に形成された隙間を介して引き出され、回路基板84上に設けられたコネクタ85に電気的に接続されている。コネクタ85は、CPU57(図4)を有する制御回路と電気的に接続されている。
図9(A)に示すように、インクジェットヘッド30は、全体として矩形状の外形を有している。そのノズル面31aには、複数のノズルが配列して形成されており、複数のノズル列を構成している。図中の左側から、イエローインクを吐出する複数のノズルが配列されたイエローインク用ノズル列33aと、マゼンタインク用のノズル列33bと、シアンインク用のノズル列33cと、ブラックインク用のノズル列33dとが所定の間隔を介して順に隣接配置されている。また、各ノズル列に対してインクが供給される上流側には、それぞれのノズル列に対応した位置に、バッファタンク40からのインクが流入し各ノズル列に対応するインクをそれぞれ供給するインク供給口30a〜30dが設けられている。
インクジェットヘッド30は、図9(B)に示すように、流路が形成されているキャビティ部31と、その上面に固定された圧電アクチュエータ32とから構成されている。このうち、キャビティ部31の内部には、インクが充填される複数のキャビティが備えられており、キャビティ部31の下面に形成されたノズル面31aには複数のノズルが開口している。各ノズルは、対応するキャビティにそれぞれ連通しており、これにより、ノズル列33a〜33dの上流側に形成されたインク供給口30a〜30dから、キャビティを介して個別のノズルに至る一連の流路が形成されている。圧電アクチュエータ32を駆動することにより、これらのノズルからインクが吐出されることになる。この圧電アクチュエータ32は、フラットケーブル70によって、インクジェットヘッド30に隣接配置されているICチップ80と電気的に接続されている。
次に、インクジェットプリンタ1の制御系の主要構成について、それをブロックで示す図4を参照して説明する。
インクジェットプリンタ1は、CPU57およびゲートアレイ(G/A)42を備える。CPU57は、ICチップ80の駆動回路80aへの印字動作指令、後述する印字制御、フラッシング、パージングなどのメンテナンス指令の出力などの印字に必要な主な制御を実行する。ゲートアレイ42は、ホストコンピュータ71から送信された印字データをインターフェース(I/F)41を介して受信し、印字データの展開の制御を行う。CPU57およびゲートアレイ42には、後述する印字制御を実行するためのコンピュータプログラム、基準消費用などのデータが記憶されているROM43と、ゲートアレイ42がホストコンピュータ71から受信した印字データを一時的に記憶するためのRAM44とが接続されている。
次に、本願発明者が行った実験内容について図5を参照して説明する。
図5は印字デューティと、インクジェットヘッドのノズル面における特定の2点間の温度差との関係についての実験結果を示すグラフである。本実験では、この2点として、図9(A)に示す領域E3と領域E4とを選んだ。このうち、領域E3は、インクジェットヘッド30に隣接するICチップ80に一番近いノズル列33aの中央部に位置するノズルに対応した部位である。一方、領域E4は、ICチップ80から一番遠いノズル列33dのうちインクが供給される最上流側に位置するノズルに対応した部位である。
図5は、A4サイズの印刷用紙を600×300dpiの解像度で印刷用紙1枚毎の印字完了時間を同じにして、印字デューティ50%、120%、200%でそれぞれ連続印字した場合の上記温度差を測定した結果を示している。この実験での印字デューティとは、1つの色のインクを用いて印刷用紙Pを最大数のドットで印字した場合(いわゆるベタ塗り)を100としたときに、実際に印字されたドット数の割合のことをいう。印字デューティ120%とは、1枚の印刷用紙Pを印字完了するのに要する時間を印字デューティ100%時と同じにして、ベタ塗りした上にさらに20%分上塗りした場合であり、同様に、印字デューティ200%とは、ベタ塗りの上にさらにベタ塗りした場合(例えば、赤ベタの上にさらにもう1回赤ベタを重ねた場合)である。また、各ドットは、同じ量のインク液滴により形成されており、図5は1つのドットを15plで形成した場合を示している。なお、本実験では、約30秒で1枚の印字を完了している。
上記の実験より、印字デューティ165%以上で印字する場合は、所定のタイミングで連続印字を中断することによりインクジェットヘッドを冷却し、温度差が限界温度差5゜Cを超えないようにすればよいことが分かった。また、印字デューティによって温度差が異なるため、印字デューティ毎に印字の中断時間を変えることが望ましいことが分かった。
次に、上述の実験結果を利用して本願発明を具体化するためにCPU57が実行する印字制御の流れについて、それを示す図6のフローチャートを参照して説明する。
なお、以下の説明において、印字消費量とは、印刷用紙1枚の印字を完了したときに実際に消費したインク量をいい、基準消費量とは、限界温度差ΔT(=5゜C)に対応するインク消費量をいう。また、遅延時間とは、次の印刷用紙の印字開始時刻を遅延させる時間をいう。
CPU57は、インクジェットプリンタ1の電源が投入された直後か否かを判断し(ステップ(以下、Sと略す)2)、電源投入直後であると判断した場合は(S2:Yes)、初期設定を行う(S4)。また、電源投入直後ではないと判断した場合は(S2:No)、ホストコンピュータ71から印字データ群を受信する処理を行う(S6)。印字データ群は、それぞれが一定時間の印字動作を行うための複数のラスターデータからなる。続いてCPU57は、遅延時間が設定されているか否かを判断し(S8)、設定されていないと判断した場合は(S8:No)、印字を実行する(S16)。続いて印刷用紙1枚の印字を終了したか否かを判断し(S18)、終了したと判断した場合は(S18:Yes)、印字消費量Cを演算する(S20)。
例えば、A4サイズの印刷用紙1枚を印刷するために駆動信号波形A,B,Cをそれぞれ106回アクチュエータに印加したとすると、印字消費量C=(30pl+15pl+5pl)×106=50×106pl=5×10−2mlとなる。
また、CPU57は、D=0以外の遅延時間が設定されていると判断した場合は(S8:Yes)、その遅延時間を計測するタイマが作動中であるか否かを判断し(S10)、作動中ではないと判断した場合は(S10:No)、タイマのカウントをスタートさせる(S12)。続いて、タイマがタイムアップしたか否かを判断し(S14)、タイムアップしていないと判断した場合は(S14:No)、次の処理へ移行する。つまり、タイムアップするまで次の処理およびS2〜S14を繰り返し実行する。
そして、タイムアップすると(S14:Yes)、次の印刷用紙の印字を開始し(S16)、前述のようにS18〜S26を実行する。つまり、S24において設定された遅延時間後毎に、次の印刷用紙1枚分の印字データ群(複数のラスターデータ)に基づく各印字動作を行う。
(1)上記最良の形態のような構成では、熱源となるICチップ80やその熱を放熱するためのヒートシンク60がノズル列33aに隣接配置されているので、ICチップ80に近いこのノズル列33aと一番離れているノズル列33dとの間で温度差を生じる。さらに、インクが流れることで熱が移動することを考えると、図9(A)において、領域E3と領域E4との間で一番大きな温度差が生じることになる。これに対応した印字品質への影響が心配されるところであるが、上記最良の形態のインクジェットプリンタ1を使用すれば、印字消費量が基準消費量を超えた場合は、次の印刷用紙の印字開始時刻を遅延させることにより、インクジェットヘッド30を自然冷却することができる。
従って、インクジェットヘッド30のうちICチップ80に最も近いノズル列の中央部に対応した部分の温度と、ICチップ80から一番離れたノズル列のうちインクが供給される最上流側に位置するノズルに対応した部分の温度との差による印字品質への影響が出ないようにすることができるインクジェットプリンタを実現することができる。また、印字開始時刻の遅延は、印刷用紙1枚単位で行うため、印刷用紙1枚分の印字途中で印字が中断することがない。
(2)また、印字消費量が基準消費量を超えていない場合は、次の印刷用紙の印字開始時刻は遅延されないため、印字消費量が基準消費量を超える印刷用紙と超えない印刷用紙とが混在している場合に、一律に各印刷用紙の印字開始時刻が遅延されることがないので、複数枚連続印刷する場合の全体の印字時間を短縮することができる。
(1)次に、この発明の他の実施形態について図8を参照して説明する。図8は、この実施形態のインクジェットプリンタに備えられたCPUが実行する印字制御の流れの一部を省略して示すフローチャートである。この実施形態のインクジェットプリンタは、印字消費量が基準消費量を超えている場合に印字消費量に対応して遅延時間を設定できることを特徴とする。なお、この実施形態のインクジェットプリンタは、印字制御の一部を除いて前述の最良の形態で説明したインクジェットプリンタ1と同じ構成および機能であるため、その部分の説明を省略し、同じ構成については同じ符号を使用する。また、以下の説明では、基準消費量は、C1,C2,C3の順に多くなり、遅延時間は、D1,D2,D3の順に長くなる。本実施の形態において、これら基準消費量C1、C2、C3および遅延時間D1、D2、D3を決めるに当たって、インクジェットヘッド上の温度差と1枚の印刷用紙の印字を完了するのに必要な時間(印字完了時間)とはともに印字消費量に比例するという実験結果に基づいて具体的に決めている。すなわち、C1=0.8ml、C2=0.96ml、C3=1.12mlとした。さらに、印字消費量CがC1より少ない時の印字完了時間を30secとし、これに対して、D1=6sec、D2=12secとした。D3については、印字動作への遅延は、D2と同じ12secとし、印字を開始する前に1回のパージ動作を行うことで、実効的に遅延時間をD2より長く設定した。
インクジェットヘッド30上の温度差は、連続印字を継続することで大きくなっていくが、その時の印字消費量に対応する温度差に収束していき、その値は印字消費量に比例することがわかった。600×300dpiの解像度の場合、前述のように、0.8mlの消費量で温度差が5゜Cとなった。そこで、本実施の形態では、遅延時間の設定を見直す温度として、印字特性に対して影響が認められるようになる5゜Cを基本とし、1゜C刻みで設定する遅延時間を見直すことにした。したがって、C1=0.8mlが温度差5゜C時に相当し、C2=0.96mlが温度差6゜C時に相当し、C3=1.12mlが温度差7゜C時に相当している。
ところで、このような温度差を生じる原因は、アクチュエータを駆動することで消費される電力に関連するといえ、単位となるインク液滴量をc0とし、印字完了時間をtとすると、この時間内にこの単位量のインクを吐出するのに必要とされた電力は、(cV/t)・Vと表すことができる。ただし、ここでのcはアクチュエータの有する静電容量、Vはアクチュエータを駆動する電圧である。これより、印字消費量をCとすると、これに対する消費電力wはw=(cV/t)・V・C/c0となる。ここで、温度差5゜Cを与える印字消費量(基準消費量)をC1(=C)とし、このときの印字完了時間を改めてt5とおくと、消費量C1時の消費電力w5はw5=(cV/t5)・V・C1/c0となる。
以下に、本実施の形態に関する具体的な動作手順を、図8のフローチャートに従って説明する。
従って、印字消費量の程度に関係なく最大の印字消費量に合わせて一律に遅延時間を設定した場合のように、印字消費量が少ないにもかかわらず遅延時間が長くなり、印字開始時刻が無駄に遅くなってしまうことがない。あるいは、印字消費量と基準消費量との差が大きいにも係わらず相対的に遅延時間が短くなってしまい、先の印字で生じた熱の影響を次の被記録媒体の印字時に及ぶことを十分に抑制することができなくなることもない。すなわち、先の印字時に生じた熱に対して、次の印字時に必要十分な遅延を加えるので、印字効率を高めることができる。
この印字制御を実行するインクジェットプリンタを使用すれば、インクジェットヘッド30のうちICチップ80に最も近いノズル列に対応した部分の温度と、ICチップ80から一番離れたノズル列に対応した部分の温度との差による印字品質への影響が出ないようにすることができるインクジェットプリンタを実現することができる。
(4)前記各実施形態の印字制御では、印刷用紙1枚単位で印字消費量を演算し、その印字消費量が基準消費量を超えている場合に遅延時間を設定したが、1ラスターまたは複数ラスター単位で印字消費量を演算し、その印字消費量が基準消費量を超えている場合に遅延時間を設定する印字制御を用いることもできる。つまり、印字データ群が、それぞれが一定時間の印字動作を行うための複数の単位印字データからなる場合において、複数の単位印字データの各印字開始時刻を遅延することもできる。
この印字制御を用いれば、インクジェットヘッドの各ノズル列に対応した複数の部分のうち、ICチップに隣接するノズル列に対応した部分の温度と、ICチップから一番離れたノズル列に対応した部分の温度との差が印字品質に与える悪い影響が出ないように1ラスターまたは複数ラスター単位で制御することができる。なお、この印字制御を実行するインクジェットプリンタが、請求項2に記載のインクジェットプリンタの1つに対応する。
これを、図10を用いて説明する。この図10は、CPUが実行する印字制御の流れの一部を省略して示すフローチャートである。すなわち、この実施形態のインクジェットプリンタは、印字制御の一部を除いて先に説明した実施形態、とりわけ、他の実施形態と同じ構成および機能であるので、その部分の説明を省略し、同じ構成については同じ符号を使用する。
CPU57が、図7に示したS2〜S18を実行し、印刷用紙1枚の印刷を終了した後に、印字消費量Cを演算する(S20)。さらに、3つの基準消費量C1、C2およびC3と印字消費量Cとを比較し、場合分けされた両消費量の大小関係に基づいて、それぞれ遅延時間D1〜D3やD=0を設定する点は共通している。ここで、本実施形態では、図10に示すように、設定された遅延時間を1つの印刷用紙の印刷を終了するのに必要な各ラスターに対して均等に配分するステップS39、S40あるいはS41がさらに加えられている。すなわち、実際に1つの印刷用紙の印字を完了するまでに要したインクの消費量と基準消費量とを比較し、その比較結果に基づいて、これに続く次の印刷用紙の印字を完了するために、これに関する所定の印字データ群を構成する単位印字データ(1ラスターに対応したデータ)毎に一定の遅延時間が加えられている。これにより、1つの印刷用紙の印字を完了したときに、この印字で発生した熱により、次の印刷用紙の印字結果に対して温度差に対応した影響を与える可能性があったとしても、インクジェットヘッドを冷却するために滞ることなく、この印刷用紙に関する一連の印字動作が連続して行われる。さらに、これに続き次の印刷用紙を印字するときにも、これに関連した印字データ群を構成する単位印字データ毎に分散して遅延時間が加えられることになるので、一連の各印字動作が停滞することなく滑らかに行われる。
なお、この場合、設定された遅延時間の配分処理は、複数ラスターに対応したデータ毎に行っても良い。
例えば、印字消費量を演算するときに、温度差との関係に用いた印字条件の種類に応じて、演算された印字消費量に重み付けをすることができる。また、環境温度など、時間経過と共に変化する印字条件を用いる場合は、その変化の度合いに対応して上記重み付けの度合いを変更することもできる。
このように、印字消費量を演算する際に印字条件を加味することにより、印字開始の遅延時間および遅延の開始のタイミングをより一層正確なものにすることができるため、不必要な遅延による印字時間の長時間化(印字速度の低下)を招くおそれがない。
(7)この発明は、圧電素子などの電気機械変換素子を利用した圧電アクチュエータの他、電気熱変換素子を利用したアクチュエータを駆動源とするインクジェットプリンタにも適用することができる。また、インクジェットヘッド上にインクカートリッジを備えたタイプのインクジェットプリンタ、または、スキャナー機能またはコピー機能を備えたインクジェットプリンタ、あるいは、インクジェットヘッドが移動しない方式のインクジェットプリンタにも適用することができる。
圧電アクチュエータ32が請求項1のアクチュエータに対応し、印刷用紙Pが被記録媒体に対応する。また、CPU57が制御手段に対応する。
そして、CPU57が実行する印字制御(図6)のS20が消費量演算手段として機能し、S22およびS24が制御手段として機能する。また、S24が請求項5の遅延時間設定手段として機能する。さらに、CPU57が実行する印字制御(図8)の28〜S38が請求項6に記載の遅延時間設定手段として機能する。
30 インクジェットヘッド
31 キャビティ部
32 圧電アクチュエータ(アクチュエータ)
40 バッファタンク
57 CPU(制御手段)
P 印刷用紙(被記録媒体)
Claims (7)
- アクチュエータの駆動により被記録媒体へインクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列を複数列有するインクジェットヘッドと、前記ノズル列の近傍であって、最も外側の両ノズル列の一方のノズル列の外方に設けられており、前記アクチュエータへ印字データに基づいて駆動信号を出力する駆動回路を有するICチップとを備えて、前記駆動信号の出力タイミングに合わせて前記ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタであって、
所定期間における印字動作を行うための印字データ群に応じて前記インクジェットヘッドから吐出された前記インクの消費量を演算する消費量演算手段と、
所定の間隔で前記インクジェットヘッドが前記印字データ群に応じて前記インクを吐出し続けることによる前記ICチップの発熱により、前記ICチップに隣接するノズル列に対応した前記インクジェットヘッドの部分と、前記ICチップから一番離れたノズル列に対応した前記インクジェットヘッドの部分との間に所定の温度差が生じたときのインクの消費量を基準消費量にして、前記消費量演算手段により演算された前記消費量が前記基準消費量よりも多い場合には、次の前記被記録媒体の印字開始時刻を遅延するとともに、前記消費量が前記基準消費量以下の場合には、次の前記被記録媒体の印字開始時刻を遅延しない制御手段とを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。 - 前記印字データ群は、それぞれが前記所定期間の印字動作を行うための複数の単位印字データからなり、
前記制御手段は、
前記複数の単位印字データの各印字開始時刻を遅延することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記所定の温度差は、
前記ICチップが隣接するノズル列の中央部に位置するノズルに対応した前記インクジェットヘッドの部分の温度と、前記ICチップから一番離れたノズル列のうちインクが供給される最上流側に位置するノズルに対応したインクジェットヘッドの部分の温度との差であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記所定期間毎の前記単位印字データに基づく印字動作を繰り返すことで、実際に1つの被記録媒体の印字を完了するまでに前記消費量演算手段により演算されたインクの消費量を印字消費量としたとき、
前記制御手段は、
前記基準消費量と前記印字消費量とを比較することで、次の被記録媒体を印字するために、次の前記複数の単位印字データの各印字開始時刻に対してそれぞれ一定の遅延時間を設定する遅延時間設定手段を備え、
前記遅延時間設定手段により設定された一定の遅延時間後毎に、前記次の単位印字データに基づく各印字動作を行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記遅延時間設定手段は、
前記基準消費量と前記印字消費量とを比較する消費量比較手段を備え、前記消費量比較手段により、前記印字消費量が前記基準消費量より多いと判断されたときに、前記一定の遅延時間を設定することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記遅延時間設定手段は、
前記消費量比較手段により、前記印字消費量が前記基準消費量より多いと判断されたときに、前記印字消費量と前記基準消費量との差に比例して前記設定される遅延時間を長くすることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットプリンタ。 - 前記制御手段は、
前記消費量比較手段により、前記印字消費量が前記基準消費量より少ないと判断されたときに、複数の前記印字動作を連続的に繰り返して、1つの被記録媒体の印字を完了することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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