JP4181715B2 - 周波数シンセサイザ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力基準クロック信号に対して係数倍周波数の高精度(ex.15ppm程度)のクロック信号を出力する周波数シンセサイザに関する。
【0002】
【従来の技術】
図11は、周波数シンセサイザの従来例の概略構成ブロック図を示す。分周回路110は、周波数frの基準クロック信号Krを固定の分周数Nrで分周し、その分周結果を基準信号Rとして位相比較回路112に供給する。制御信号発生回路116は、電圧制御発振器118に駆動制御信号を供給し、電圧制御発振器118は、その駆動制御信号に応じた周波数fvで発振する。周波数fvの出力信号Kvは、外部に出力されると共に、可変分周回路220にも印加される。可変分周回路220は、電圧制御発振器118の出力を分周数Nvで分周し、その分周結果を比較信号Vとして位相比較回路112に供給する。分周数Nvは、分周数設定データDFによって変更自在である。位相比較回路112は、比較信号Vが基準信号Rより遅れた時(又は進んだ時)にアップパルスU(又はダウンパルスD)をチャージポンプ回路114に供給する。チャージポンプ回路114は、アップパルスU又はダウンパルスDから誤差電圧を発生して、制御信号発生回路116に供給する。制御信号発生回路116は、チャージポンプ回路114からの誤差電圧に応じて、比較信号Vが基準信号Rに対して位相が合うような駆動制御信号を生成し、電圧制御発振器118に供給する。
【0003】
図11に示す従来例では、以下の関係が成立する。すなわち、
fv=(Nv/Nr)×fr (1)
この様にして、図11に示す周波数シンセサイザは、基準クロック周波数frを係数倍した周波数fvのクロック信号Kvを出力する。
【0004】
周波数シンセサイザは、周波数可変範囲と周波数設定精度で規定される。例えば、周波数可変範囲:±1500ppm以上、周波数設定精度:15ppm程度とする。この場合、
1/2^16=1/65536=15.25ppm
65536/(65536−128)=+1953ppm
(65536−256)/(65536−128)=−1957ppm
であるので、可変分周回路220は、一例として以下のように設計できる。すなわち、
カウンタビット数 :16ビット
分周数設定データDF:8ビット
分周数範囲 :65280〜65408〜65536
とする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の周波数シンセサイザには以下の課題がある。すなわち、周波数設定精度を上げる場合に可変分周回路の分周数Nvを大きくする必要がある。これは、出力信号Kvの周波数チェック間隔が大きくなることを意味し、電圧制御発振器118は、この場合の様に数万クロックの間、発振周波数を安定に保持できる構成になっている必要がある。数万クロックにわたって周波数安定を維持できる電圧制御発振器118は、汎用LSIプロセスのみでは容易に実現できなかいので、安価に具体化できない。
【0006】
発振周波数を安定に保持するためには更に、電圧制御発振器118のみならず、LSIでは実現できない大容量のコンデンサを使用したチャージポンプ回路114によって電圧制御発振器118の出力を安定化する必要がある。しかし、これにより、アタック/リカバリ能力が犠牲になり、迅速な出力周波数切換えを行うことができず、応用範囲が限定される。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決する周波数シンセサイザを提示することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る周波数シンセサイザは、基準クロック信号の周波数に相関のある周波数の出力信号を発生する周波数シンセサイザであって、前記出力信号の周期を概ね等分割した位相差を持つクロック信号群を発生する可変発振回路と、周波数設定データに従い位相選択制御信号を発生する制御回路と、前記位相選択制御信号に従い、前記クロック信号群から1つのクロック信号を選択し、比較クロック信号として出力する位相選択回路と、前記基準クロック信号と前記比較クロック信号の位相を比較する位相比較回路と、前記位相比較回路の出力に従い前記可変発振回路の発振周波数を制御する周波数制御回路とを具備し、前記位相選択回路は、前記位相選択制御信号の第1の制御信号に従い前記クロック信号群から隣接位相の2つのクロック信号を選択する主位相選択回路と、前記位相選択制御信号の第2の制御信号に従い、前記主位相選択回路により選択された2つのクロック信号の位相差内のクロック位相から1つのクロック信号を選択し、比較クロック信号として出力する副位相選択回路とからなることを特徴とする。
【0009】
【実施例】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。基準クロック信号Krが、一般的なアップパルスU及びダウンパルスDを発生する位相比較回路10に入力する。もちろん、基準クロック信号Krは、元クロック信号を便宜に分周又は逓倍されたものでもよい。位相比較回路10は、基準クロック信号Krと後述する比較信号Kvとの間で位相を比較し、その位相関係に応じてアップパルスU又はダウンパルスDを出力する。位相比較回路10の出力パルスは、これも一般的なチャージポンプ回路12に入力し、チャージポンプ回路12は、位相比較回路10からのアップパルスU及びダウンパルスDに応じた誤差電圧を発生し、制御信号発生回路14に供給する。制御信号発生回路14は、チャージポンプ回路12からの誤差電圧に応じた制御電圧Vc1を発生し、多相クロック可変発振器16に供給する。多相クロック可変発振器16の詳細は後述する。位相比較回路10、チャージポンプ回路12及び制御信号発生回路14は、ごく一般的な性能のものからなる。
【0011】
多相クロック可変発振器16は、制御電圧Vc1に応じた周波数で発振し、その発振周波数を8等分したタイミングの多相クロック信号K0〜K7を主位相選択回路18に出力する。多相クロック可変発振器16のクロック信号K7が、本実施例の出力信号CKとして外部に出力される。
【0012】
主位相選択回路18は、制御論理回路22からの位相選択信号S1に応じて多相クロック信号K0〜K7から2つの主選択クロックKA,KBを選択し、副位相選択回路20に出力する。副位相選択回路20は、制御論理回路22からの位相選択信号S2に応じて主選択クロック信号KA,KBの一方を選択し、上述の比較信号Kvとして位相比較回路10に供給すると共に、制御論理回路22にクロック信号として供給する。制御論理回路22には周波数設定データDFが入力されており、制御論理回路22は、周波数設定データDFに応じて位相選択信号S1,S2により主位相選択回路18及び副位相選択回路20を制御する。
【0013】
図2は、多相クロック可変発振器16の概略構成ブロック図を示す。それぞれ同じ構成の差動遅延回路30,32,34,36がリング状に接続されている。ただし、差動遅延回路36の出力差動信号は差動遅延回路30の入力に、正極/負極を互いに違えて接続されている。これにより、発振回路が形成される。
【0014】
差動遅延回路30〜36のCMOS回路構成例を図3に示す。駆動電圧Vdが電界効果トランジスタ(FET)50,52のゲートに印加される。FET52のドレイン電流I1は、互いにソースを接続したFET54,46から供給される。FET54のゲートには正極信号Piが印加され、FET56のゲートには負極信号Niが入力される。FET50のドレインは、ゲート・ドレイン間を短絡したFET58,60のドレイン及びFET62のゲートに接続する。FET60,62は、電流I2を出力する。FET60,62のドレインは、それぞれFET54,56のドレインに接続する。FET60,62のドレインはまた、ゲート・ドレイン間を短絡したFET64,66のソースに接続し、正極信号Po及び負極信号Noを出力する。
【0015】
I2=I1/2にしておくと、Po及びNoの各遷移期間では電流I2によって充放電が行われる。電流I2は駆動電圧Vdによって決定されるので、これにより入出力遅延時間を制御できる。従って、各差動遅延回路30〜34の遅延時間は、発振周期Tvの1/8となる。発振周波数fvは、制御電圧Vc1を差動遅延回路30〜36の各制御電圧Vdとすることで制御できる。
【0016】
差動遅延回路30〜36の各差動出力信号は、差動バッファ38〜44を介して、それぞれ1/8周期ずつ位相の異なる多相クロック信号K0〜K7として出力される。
【0017】
図2に示す構成の可変発振器16は、CMOSプロセスで容易にLSI内に形成できる。
【0018】
主位相選択回路18の動作を説明する。主位相選択回路18は、位相選択信号S1に応じて8つの状態を取り得る。図4は、各状態における出力信号KA,KBの対応表を示す。ここでは、信号KA及びKBは、差動クロック信号とする。特徴的には、信号KA及びKBがともに2状態番号で出力クロックが変化せず続く状態番号でクロック番号が2つ変化する。また、位相選択信号S1によって、
状態0→状態7、状態0→状態7
状態0←状態7、状態0←状態7
というように順次的に状態が遷移する。
【0019】
副位相選択回路20の構成及び動作を説明する。図5は、副位相選択回路20の概略構成ブロック図を示す。主位相選択回路18からの差動クロック信号KA,KBは、選択回路70a〜70hに入力する。制御論理回路22からの位相選択信号S2は各1ビットの信号S2a〜S2hからなる。各選択回路70a〜70hは、それぞれ信号S2a〜S2hがLレベルのときクロックKAを選択し、HレベルのときクロックKBを選択する。選択回路70a〜70hの出力はそれぞれ、差動遅延回路72a〜72hに入力する。差動遅延回路72a〜72hは例えば、図3に示す構成と同じ構成からなる。制御電圧Vdは可変発振器16に印加される制御電圧Vc1と同じ電圧でよい。これにより、新たに制御回路を設ける必要が無くなる。
【0020】
差動遅延回路72a〜72hの各差動出力端子は互いに接続されており、差動バッファ74が、これらの共通接続の出力を比較クロック信号Kvとして出力する。比較クロック信号Kvは、図6(a)及び(b)に示すように、A〜E及びa〜eの10個の状態を具備し、その何れか1つが、位相選択信号S2a〜S2hによって設定される。図6(a)は、クロックKBがクロックKAより遅れている場合の状態を示し、図6(b)は、クロックKBがクロックKAより進んでる場合の状態を示す。
【0021】
図7(a)は、差動遅延回路72a〜72hの出力結線点の、一方の差動信号波形を示す。状態A又はaは最も位相の進んだ状態であり、遷移領域(期間t0〜t2及び期間t4〜t6)に電流8×I2で充放電する。寄生容量もおおよそ8倍になっているので、電圧上昇及び下降速度は、可変発振器16内の差動遅延回路出力信号のそれとほぼ等しく、遷移時間はクロック周期Tvの1/4程度になる。状態B又はbでは、期間t0〜t1及びt4〜t5に充放電電流が(7−1)×I2=6×I2であり、それ以後、しきい値電圧Vthを超えて電圧遷移が終了するまで、充放電電流は8×I2である。
【0022】
状態C又はcでは、期間t0〜t1及びt4〜t5に充放電電流が(6−2)×I2=4×I2であり、それ以後、しきい値電圧Vthを超えて電圧遷移が終了するまで、充放電電流は8×I2である。状態D又はdでは、期間t0〜t1及びt4〜t5に充放電電流が(5−3)×I2=2×I2であり、それ以後、しきい値電圧Vthを超えて電圧遷移が終了するまで、充放電電流は8×I2である。状態E又はeは最も位相の遅れた状態であり、遷移領域(期間t1〜t3及び期間t5〜t7)に電流8×I2で充放電し、状態A及びaに比べて1/8Tvだけ、位相が遅れる。
【0023】
以上の動作により、各状態の遷移領域における充放電波形は、図7(a)に示すようになり、状態A(a)〜E(e)は、それぞれ1/32Tvずつ位相のずれた(すなわち、位相を等分割した)クロック信号を出力する。
【0024】
図7(b)は、差動遅延回路72a〜72hの出力結線点の寄生容量が可変発振器16よりレイアウト上で相対的に50%程度大きくなった場合の、各状態における動作波形を示す。このような場合でも、位相等分割動作は満足され、以上に説明した動作を確実に実現できていることがわかる。差動遅延回路の遅延時間を0.5ns以下で安定に動作させることは難しく、クロック周波数が200MHzを超えると、8を超える多相クロック信号を出力する可変発振器16を実現できない。
【0025】
副位相選択回路20により、可変発振器16で実現できない微細クロック位相を論理的な補間処理で容易に実現できる。
【0026】
次に、プリスケーラ動作を説明する。まず、周波数シンセサイザの仕様を従来例と同じく以下のように設定する。すなわち、周波数可変範囲を±1500ppm以上とし、周波数設定精度を15ppm程度とする。
【0027】
制御論理回路22は、n又はn−1(但し、n=512)だけ、比較クロック信号Kvをカウントし、かつ動作周期を128期間に分割する可変分周回路を具備する。本実施例では、プリスケーラ動作は、主位相選択回路18、副位相選択回路20及び制御論理回路22の連携で行われる。図8、図9及び図10を参照して、本実施例のプリスケーラ動作を説明する。
【0028】
1)fv=frにする場合
この場合、周波数設定データDFを00hにする。制御論理回路22は、位相選択信号S1,S2を強制的に固定する。これにより、比較クロック信号Kvは一定位相となり、図1に示す回路は、基準クロック周波数frと等しいクロック周波数fvを出力する単なるPLL回路として動作する。
【0029】
2)fv=fr+△fにする場合(但し、△fは最小周波数変移である。)
この場合、周波数設定データDFを81hする。図8に示すように、制御論理回路22は、主位相選択回路18の状態0の時にのみ可変分周回路にnカウント動作を1回とn−1カウント動作を15回、行わせ、状態1〜7では、nカウント動作のみを16回、行わせる。可変分周回路のキャリー信号Cが位相選択信号S1,S2を決定する。
【0030】
図9は、fv>frの場合の動作を示す。ものである。図9(a)は、主位相選択回路18及び副位相選択回路20の動作状態を示し、図9(b)は比較クロック信号Kvの位相変化を示す。主位相選択回路18が状態0で、かつ副位相選択回路20が状態eの時に動作を開始し、キャリー信号Cが4回(n−1カウント動作1回とnカウント動作が3回)が発生すると、位相選択信号S2により副位相選択回路20を状態Bにする。この時、比較クロック信号Kvの位相は、360度/32だけ遅れる。次にキャリー信号Cが4回(nカウント動作が4回)発生すると、位相選択信号S2が副位相選択回路20を状態Cにする。この時、比較クロック信号Kvの位相は、360度/32だけ更に遅れる。これらの動作をあと2回繰り返すと、副位相選択回路20が状態Eになり、比較クロック信号Kvの位相が当初より45度だけ遅れる。この時、更に主位相選択回路18は、位相選択信号S1により状態1に遷移し、クロックKAはK0からK2に変化する。副位相選択回路20は状態Eになっており、クロックKvの出力位相はクロックKAの位相変化に影響されない。しかも、主位相選択回路18の状態変化は、511(512)クロック期間内で行われる場合、このプリスケーラ動作に影響しない。
【0031】
次にキャリー信号Cが4回(nカウント動作が4回)発生すると、副位相選択回路20は、位相選択信号S2によって状態bになり、比較クロック信号Kvの位相は360度/32だけ遅れる。更に3回この動作を繰り返すと、副位相選択回路4が状態eになる。この時、位相選択信号S1により、主位相選択回路18は状態2に遷移し、クロックKBはK1からK3に変化する。副位相選択回路20は状態eになっており、比較クロック信号Kvの出力位相は、クロックKBの位相変化に影響されない。以後、この動作を繰り返すことによって、65535クロック周期(n×127+(n−1)×1)で、比較クロック信号Kvの位相が360度、遅れる。これは、可変発振器16の出力信号K0〜K7の位相が、基準クロック信号Krに対してこの期間で360度進むことを意味する。
【0032】
等価的に、出力周波数fvは、基準周波数frに対して下式で示すように高くなる。すなわち、
従って、最小周波数変移△fは、所望値である基準クロック周波数frの15ppm程度になる。
【0033】
本実施例では、比較クロック信号Kvが360度/32だけ、位相ジャンプするので、可変発振器16の出力信号のジッタが懸念される。しかし、チャージポンプ回路12おける容量素子によって位相ジャンプが連続なものに補正されるので、通常のチャージポンプ回路で実用上問題の無い1/100周期以下のジッタ量に抑制される。副位相選択回路20は、説明を簡単にするために補間量を1/4にしたが、1/8程度にする構成は容易であり、その場合、更にジッタ量を抑制できる。
【0034】
3)fv=fr+k×△fにする場合
この場合、周波数設定データDFを256−kにする。主位相選択回路18、副位相選択回路20及び制御論理回路22による比較クロック信号Kvの位相遅延動作は、上述のケースと同様に図9に示した通りである。単に、制御論理回路22における可変分周回路のk回の(n−1)カウント動作を128回のキャリー発生期間に割り振る点が異なるだけである。ただし、(n−1)カウント動作期間をできる限り均等に割り振ると、比較クロック信号Kvの位相遷移特性が直線的になり、出力CKの周波数安定度を最良にできる。動作周期は(65536−k)×Tvになるので、この動作周期で出力周波数を設定する。出力周波数fvは、下式で示されるように、
周波数設定データDFがFFhの時、最大出力周波数になる。すなわち、
この時の基準クロック周波数frに対する周波数変移は、1900ppm程度であり、上述の条件を満足する。
【0035】
4)fv=fr−△fにする場合
この場合、周波数設定データDFを01hにする。制御論理回路22は、図8に示すように、主位相選択回路18が状態0の時のみ、可変分周回路にnカウント動作を1回とn−1カウント動作を15回、行わせ、状態1〜7ではnカウント動作のみを16回行わせる。可変分周回路のキャリー信号Cにより位相選択信号S1,S2が決定される。
【0036】
図10は、fv>frの場合の動作を示す。図10(a)は、主位相選択回路18及び副位相選択回路20の各動作状態を示し、図10(b)は比較クロック信号Kvの位相変化を示す。主位相選択回路18が状態0で、かつ副位相選択回路20が状態aの時に動作を開始し、キャリー信号Cが4回(n−1カウント動作を1回と、nカウント動作を3回)発生すると、位相選択信号S2により、副位相選択回路20は状態Dになる。この時、比較クロック信号Kvの位相は、360度/32だけ進む。
【0037】
次にキャリー信号Cが4回(nカウント動作が4回)発生すると、副位相選択回路20は、位相選択信号S2より状態Cになる。比較クロック信号Kvの位相は、360度/32だけ更に進む。この動作をあと2回繰り返すと、副位相選択回路20が状態Aになり、比較クロック信号Kvの位相が45度だけ当初より進む。この時、更に位相選択信号S2により主位相選択回路18は状態7に遷移し、クロックKBはK1からK7に変化する。副位相選択回路20は状態Aになっており、比較クロック信号Kvの位相は何らクロックKBの位相変化に影響されない。しかも、主位相選択回路18の状態変化は、511(512)クロック期間内で行われれば、このプリスケーラ動作に影響しない。
【0038】
次にキャリー信号Cが4回(nカウント動作が4回)発生すると、副位相選択回路20は、位相選択信号S2によって状態dになり、比較クロック信号Kvの位相は360度/32だけ進む。更に3回この動作を繰り返すと、副位相選択回路20は状態aになる。位相選択信号S1が主位相選択回路18を状態6に遷移させ、クロックKAはK0からK6に変化する。この時、副位相選択回路4は状態aになっており、比較クロック信号Kvの出力位相は何らクロックKAの位相変化に影響されない。以後、この動作を繰り返すことによって、65535クロック周期(n×127+(n−1)×1)で、比較クロック信号Kvの位相が360度進む。これは、可変発振器16の出力信号K0〜K7の位相が、基準クロック信号krに対してこの期間で360度、遅れることを意味する。
【0039】
出力周波数fvは等価的に、基準周波数frに対して下式で示すように低くなる。すなわち、
従って、最小周波数変移△fは、所望値である基準クロック周波数frの15ppm程度になる。
【0040】
5)fv=fr−k×△fにする場合
この場合、周波数設定データDFを256−kにする。主位相選択回路18、副位相選択回路20及び制御論理回路22による比較クロック信号Kvの位相遅延動作は、図9に示す通りである。単に、制御論理回路22における可変分周回路のk回の(n−1)カウント動作を128回のキャリー発生期間に割り振る点が異なるだけである。ただし、(n−1)カウント動作期間をできる限り均等に割り振ると、比較クロック信号Kvの位相遷移特性が直線的になり、出力信号CKの周波数安定度を最良にできる。動作周期は(65536−k)×Tvになるので、この動作周期で出力周波数を設定する。出力周波数fvは、下式で示すように、
である。周波数設定データDFがFFhの時、最小出力周波数になり、
である。この時の基準クロック周波数frに対する周波数変移は、1900ppm程度であり、上述の条件を満足する。
【0041】
本実施例では、目標出力周波数を決定する位相比較動作を出力信号周期毎に行うことができるので、チャージポンプ回路12及び可変発振器16等のPLL構成回路ブロックに一般的なPLL構成回路をそのまま使用できる。
【0042】
本実施例では、プリスケーラ動作の向上を意図して副位相選択回路20を設けているが、これが無くてもプリスケーラ動作を実現できることは明らかである。副位相選択回路20を設けない場合には、チャージポンプ回路12内の容量値を大きくするなどして、制御位相のジャンプを抑圧する必要がある。
【0043】
可変発振器16が、直接、多相クロックを発生したが、単相出力の可変発振回路17の出力を、遅延回路を縦続接続したディレーチェーン回路に供給し、同様の多相クロック信号を生成するようにしてもよい。
【0044】
本実施例では、位相選択信号S1,S2を発生する制御論理回路22に比較クロック信号Kvを入力したが、位相選択信号S1,S2にはタイミング上の制約が小さいので、クロックK0〜K7,KA,KBを制御論理回路22に入力するようにしてもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解できるように、本発明によれば、目標の出力信号周波数を制御する位相比較動作を出力信号の周期毎に行うことができる。しかも、この位相比較動作は、目標の周波数設定精度に関係しないので、一般のPLLの可変発振回路及びチャージポンプ回路を使用して容易に高精度な周波数シンセサイザを実現でき、LSI化が可能になり安価に具体化できる。周波数設定精度の向上に対して、周波数制御動作におけるアタック/リカバリ能力を損なわないので、迅速な出力周波数切換えが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】 可変発振器16の概略構成ブロック図である。
【図3】 差動遅延回路30〜36の概略構成ブロック図である。
【図4】 主位相選択回路18の動作対応表である。
【図5】 副位相選択回路20の概略構成ブロック図である。
【図6】 副位相選択回路20の動作対応表である。
【図7】 副位相選択回路20の波形図である。
【図8】 本実施例のプリスケーラ動作の説明表である。
【図9】 本実施例のプリスケーラ動作における第1状態を示す図である。
【図10】 本実施例のプリスケーラ動作における第2状態を示す図である。
【図11】 従来例の概略構成ブロック図である。
【符号の説明】
10:位相比較回路
12:チャージポンプ回路
14:制御信号発生回路
16:多相クロック可変発振器
18:主位相選択回路
20:副位相選択回路
22:制御論理回路
30,32,34,36:差動遅延回路
38,40,42,44:差動バッファ
50,52,54,56,58,60,62,64,66:電界効果トランジスタ
70a〜70h:選択回路
72a〜72h:差動遅延回路
74:差動バッファ
110:分周回路
112:位相比較回路
114:チャージポンプ回路
116:制御信号発生回路
118:電圧制御発振器
Claims (1)
- 基準クロック信号の周波数に相関のある周波数の出力信号を発生する周波数シンセサイザであって、
前記出力信号の周期を概ね等分割した位相差を持つクロック信号群を発生する可変発振回路と、
周波数設定データに従い位相選択制御信号を発生する制御回路と、
前記位相選択制御信号に従い、前記クロック信号群から1つのクロック信号を選択し、比較クロック信号として出力する位相選択回路と、
前記基準クロック信号と前記比較クロック信号の位相を比較する位相比較回路と、
前記位相比較回路の出力に従い前記可変発振回路の発振周波数を制御する周波数制御回路
とを具備し、
前記位相選択回路は、前記位相選択制御信号の第1の制御信号に従い前記クロック信号群から隣接位相の2つのクロック信号を選択する主位相選択回路と、前記位相選択制御信号の第2の制御信号に従い、前記主位相選択回路により選択された2つのクロック信号の位相差内のクロック位相から1つのクロック信号を選択し、比較クロック信号として出力する副位相選択回路とからなる
ことを特徴とする周波数シンセサイザ。
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