JP4180671B2 - タンパク質の調製および回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロテアーゼを用いたプロタンパク質の制御された開裂によるタンパク質の調製および回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生物体において、多数のタンパク質および酵素は不活性な前段階(プロタンパク質(タンパク質前駆体)またはプロ酵素)として細胞の生合成によって生成される。必要であれば、ついでこれらの不活性な前段階は、例えばタンパク質限定分解などにより活性形態に変換される。従って、ヒトの体内でプロトロンビンはプロトロンビナーゼ複合体反応においてプロテアーゼXa因子によりトロンビンに変換される。不活性なX因子は活性Xa因子へ、例えばプロテアーゼIXa因子により変換される。
【0003】
活性化したタンパク質の回収は、臨床応用ならびに診断目的のために重要である。純粋な形態の活性化したタンパク質は、ついで、治療または診断または特異的な抗体の回収のため、例えば、外科的処置におけるトロンビンによる血液凝固などの他のタンパク質加水分解工程を制御するのに使用されうる。
【0004】
例えばヒト血液などの生物体からは、該活性のあるタンパク質は非常に限られた量しか回収することができない。それゆえ、プロタンパク質またはプロ酵素は、たいていイン・ビトロで適当なプロテアーゼの作用により活性化した形態に変換される。このような方法がEP−0 378 798により公知である。この方法によれば、ヒト血漿から得たプロトロンビンが固相担体上で吸着され、ついで該原料はCa2+イオンで処理され、それによって血漿に存在するプロテアーゼと共に、プロトロンビンのトロンビンへの変換が起こる。
【0005】
EP−A−0 565 511に他の方法が記載されており、その好ましい態様によれば、活性化されるべきプロタンパク質が担体上で固定化され、ついで可溶性プロテアーゼにより活性のある酵素へと変換される。この変換を制御できるようにするため、該変換は洗剤またはカオトロピック物質(chaotropic substance)の存在下で行われる。しかしながら、活性化したタンパク質の回収のために、特に、再びプロテアーゼを分離するために精製工程がさらに必要とされる。
【0006】
EP−A−0 541 507によれば、可溶性形態のプロトロンビンは、凝固的に活性な塩をプロトロンビン含有溶液に添加することによってトロンビンに変換される。引き続いて、トロンビンはイオン交換クロマトグラフィーおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーによってさらに精製される。
【0007】
EP−A−0 565 512によれば、トロンビンはプロトロンビン含有溶液を150分間固定化したトリプシンで処理することにより調製される。この場合は固定化した形態におけるプロテアーゼの使用により、活性化の後、該プロテアーゼの一層容易な分離が可能である。
EP−A−0 416 890によれば、組換えヒトプロテインC(rHPC)はガラス製ビーズ上で固定化したトロンビンでの2時間の処理によって活性化される。固定化したトロンビンからの活性化したrHPCの分離は、遠心によって果たされる。
【0008】
プロ酵素またはプロタンパク質の活性化のためにプロテアーゼを使用する場合、タンパク質加水分解工程が活性のある酵素の段階で終了しないという問題に遭遇する。むしろさらなるペプチド結合が、反応過程でプロテアーゼによって加水分解され続け、また、活性化したタンパク質はさらに再び不活性な状態である低分子ペプチドに開裂される(キジール(Kisiel)およびハナハン(Hanahan)、1973、Biochim.Biophys.Acta 329、221−232)。ゆえに、このような方法において、プロトロンビンをトロンビンにトリプシンにより活性化する場合、収率が低いことが知られ、例えばわずか50%にすぎない(キジールおよびハナハン、1973、Biochem.Biophys.Acta 329、221−232)。
【0009】
アルブミンまたはグリシンなどの安定化剤を活性化反応に添加することにより、活性化したタンパク質のさらなる分解を減少させるべく、このような方法を改良する試みがなされている(ランダブル(Landaburu)ら、1961、Am.J.Physiol.201、298−302)。
しかしながら、これらの方法の本質的な欠点は、ゆっくりとした速度であるが、さらにタンパク質断片への分解が起こり、大量の洗剤またはグリセロールなどの添加剤を含有するタンパク質混合物が生成することである。それゆえ、活性化した酵素を精製する複雑な方法が必要である。
タンパク質断片および洗剤またはカオトロピック物質はEP−A−0 565 511により、相対的に複雑なクロマトグラフィー方法により除去された。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、タンパク質の高収率が達成でき、非常に高い比活性および純度を有するタンパク質を単純なやり方で回収することを可能にするプロタンパク質からタンパク質を調製する方法を提供することを目的としている。該方法は特定の出発溶液に限られるものではなく、広範囲の出発溶液に適用できるものである。
【0011】
【発明を解決するための手段】
本発明により、この目的はプロタンパク質含有溶液を、プロテアーゼ、および該プロタンパク質またはその機能的に不活性な分解産物よりも該タンパク質に対して一層高いアフィニティーを有する固相担体に接触させ、該プロテアーゼにより該プロタンパク質をタンパク質加水分解的に開裂させ、生成するタンパク質を該固相担体上に吸着させて選択的に分離することを特徴とする、プロテアーゼを用いたプロタンパク質の制御されたタンパク質加水分解的開裂によるタンパク質の調製および回収方法により達成される。
固定化タンパク質を使用するのが好ましい。本発明の方法は、当該物質を、該溶液から容易に分離できるという利点を提供する。
【0012】
該プロタンパク質含有溶液を、プロタンパク質のタンパク質への開裂を起こすのに十分な接触時間(しかしながら、機能的に不活性な該タンパク質の分解産物が実質的に形成されない時間)プロテアーゼで処理する。
プロテアーゼがプロタンパク質に作用する時間は、生成するタンパク質の品質にとって重要な要因であること、およびあるパラメーターの下でプロテアーゼ/プロタンパク質間の接触を所定時間維持することが所定のタンパク質の調製に重要であることが示されている。接触時間は、プロタンパク質からタンパク質への変換が起こるが、タンパク質の望ましくない分解がもはやさらには起こらず、該プロテアーゼの作用がそれ以前に妨害されるように選択されなければならない。
【0013】
従って、最適な接触時間を決定する重要なパラメーターは、使用するプロテアーゼ、プロタンパク質のプロテアーゼに対する比率および反応温度である。本発明の方法により、どんな当業者も、重要なパラメーターが先行技術から知られていない場合でも、反応が開始される以前に重要なパラメーターを容易に決定し、最適化できるであろう。
特定のタンパク質の調製に最適の接触時間は、別個の実験機構で接触時間を変化させるだけで各場合において決定できる。各場合において、得られた生成物を分析し、引き続いて、所望のタンパク質の最大量およびさらに分解した産物または非開裂のプロタンパク質の最少量が得られる接触時間を所定の接触時間として規定する。
【0014】
この所定の接触時間は、多くのシステムにおいて、本来、システム(プロタンパク質/プロテアーゼ)ごとに異なるであろうが、しかし24時間よりは短いであろう。1秒〜24時間、特には1秒から5時間、より特には1秒〜30分間がプロテアーゼの好ましい作用時間であることがわかった。
本発明によるさらなる手段として、できるだけ正確にプロテアーゼ作用の接触時間を維持し、該タンパク質のさらなる分解を防ぐため、該プロテアーゼ処理の直後に、プロテアーゼにより生成したタンパク質を、プロタンパク質またはその機能的に不活性な分解産物よりも該タンパク質に対して一層高いアフィニティーを有する担体に結合させる。従って、該タンパク質は反応混合物におけるプロテアーゼによるさらなる作用から免れ、タンパク質のさらなる分解はもはや起こることができなくなる。
【0015】
このことは、例えば、プロタンパク質またはプロテアーゼ含有溶液に該タンパク質に対するアフィニティー担体を提供することにより、または2つのクロマトグラフィーカラムを連続して配置し、第1のカラムには(固定化した)プロテアーゼを入れ、第2のカラムには該タンパク質に対する固相担体を入れ、第1のカラムからの溶離液を第2のカラムの上部に直接導入にすることにより可能である。本発明の方法の好ましい態様により、もし該プロテアーゼ処理が定量的でなければ、溶液中に残留する非開裂のプロタンパク質を再びリサイクルプロセスにおいて(固定化した)プロテアーゼに接触させ、開裂させ、生成したタンパク質を選択的な担体に結合させてよい。このことは、例えば、第2の選択的な担体の出口を第1のプロテアーゼ結合カラムと接触させ、結合しなかったプロタンパク質を再び該プロテアーゼの作用を受けやすくすることによって行う。これらの段階は実質的に全部のプロタンパク質がタンパク質に開裂するまで反復されてよい。
【0016】
プロテアーゼ処理工程および吸着工程を連続的に行う好ましい態様に加えて、勿論この方法を不連続的に行うこともでき、その場合、(固定化した)プロテアーゼおよび生成したタンパク質に対して高度に選択的な担体は、一つの同一の容器に入れられ、また、2つの別個の固相担体を使用する場合には、これら2つの別個の固相担体のうちの1つを選択的に除去してよい(例えば、プロテアーゼまたはタンパク質を磁気表面または除去可能な挿入物と結合させることにより)。本発明による方法は勿論、プロテアーゼにより媒体されるプロタンパク質からタンパク質へのすべての変換において使用することができ、プロ酵素から酵素を調製するのに使用するのが好ましい。
【0017】
プロタンパク質のタンパク質加水分解的開裂のためには、多数のプロテアーゼが適当である(例えば、キモトリプシン、ジスパーゼ(dispase)、エンドペプチダーゼArg−C、エンドプロテイナーゼLys−C、エンドプロテイナーゼGlu−C、エンドプロテイナーゼAsp−N、Xa因子、カリクレイン、パパイン、ペプシン、プラスミン、プロナーゼ、プロテイナーゼK、スタフィロコアグラーゼ、ズブチリシンファミリーのセリンプロテアーゼ、例えば、ケキシンタイプ(kexin-type)またはフリンタイプ(furin-type)プロテアーゼまたはズブチリシン、トロンビン、トリプシン(特にヒト、ウシ、ブタ)、節足動物または微生物からのトリプシンタイプのプロテアーゼ、例えばストレプトミセス・グリセウス(Streptomyces griseus)のトリプシンまたは毒へビからのセリンプロテアーゼ(ヘビ毒プロテアーゼ)、例えば、エキス・カリナタスヘビ毒(Echis carinatus Venom)およびオキシウラナス・スクテラタスヘビ毒(Oxyuranus scutellatus Venom)のプロトロンビンアクチベーター;ラッセル・バイパーヘビ毒(Russel's Viper Venom)からのX因子およびV因子のアクチベーター、またはプロテインCアクチベーターアグキストロドンコントルトリックスヘビ毒(agkistrodon contortrix Venom)など)。トリプシン、キモトリプシン、カリクレイン、ジスパーゼ、エンドプロテイナーゼGlu−C、Lys−CまたはAsp−N、フリンまたはXa因子がプロテアーゼとして利用するのに好ましい。勿論、組換えプロテアーゼも使用されてよい。
【0018】
上記のように、該プロテアーゼはプロタンパク質また生成したタンパク質と可溶性形態にて反応することのないよう、固相担体上で固定化されるのが好ましい。該プロテアーゼを固定化するには、特にセルロース、セファロース、デキストラン、アガロース、アクリレートまたはシリケートが天然または合成担体として適切である。
【0019】
日常的な方法により使用できる本発明の好ましい態様により、固定化したプロテアーゼ(プロテアーゼゲル)をガラス製のカラムに詰め、ついでプロタンパク質含有溶液をプロテアーゼゲルを通して濾過する。流速は固定化したプロテアーゼとプロタンパク質の間の所定の接触時間が維持されるよう選択する。
【0020】
この態様により、かような活性化したタンパク質を脱着上清(溶離液)から選択的担体上に直接吸着する。所望のタンパク質の高純度で高収率の回収のため、活性化されていないプロタンパク質は、特異的な担体によって結合されてはならないし、可能であるならば、選択的担体を含むカラムを自由に通過すべきである。さらなる活性化のため、このプロタンパク質含有画分を再び所定の接触時間、プロテアーゼゲルと接触させると、さらにタンパク質が生成され、ついで選択的な担体により該溶液から再び吸着される。プロテアーゼゲル上での制御された連続的な活性化および溶離、ならびに選択的な第2担体上での活性化したタンパク質の即座の吸着により、該プロタンパク質は完全に、活性化したタンパク質がさらにプロテアーゼにより開裂されることなく活性化したタンパク質に変換される。活性化したタンパク質は選択的な担体に蓄積し、引き続き担体から溶出することができる。
【0021】
本発明の方法により調製できる特に好ましいタンパク質は、タンパク質加水分解により血液凝固酵素の不活性な前段階より得た機能的に活性な血液凝固酵素である。本発明により、例えば、トロンビンはプロトロンビン(II因子)から、プロIX因子からIX因子、IX因子からIXa因子、プロフォンビルブラント因子からフォンビルブラント因子、X因子からXa因子、プロテインCから活性化プロテインC、XIII因子からXIIIa因子、V因子からVa因子を調製することができる。
【0022】
本発明の方法において、出発溶液(プロタンパク質含有溶液)は特定の調製した溶液に限られない。しかしながら、好ましいプロタンパク質含有溶液は、特に純粋なタンパク質調製物とすることが可能であるため、精製された形態でのプロタンパク質を含む。
しかしながら、他のタンパク質と混合したプロタンパク質を含有する溶液も、また、本発明の方法に適している。なぜなら、その高い特異性のために、混入タンパク質は本発明の方法の有意の妨害因子ではないからである。
従って、生物由来のプロタンパク質含有溶液、特に血漿または血漿または血漿画分由来の溶液を本発明の方法において使用するのが好ましい。
【0023】
本発明に記載のさらに好ましい態様では、バイオテクノロジーにより調製されたプロタンパク質含有溶液(特に組換え細胞培養から調製した培養上清)を出発物質として使用する。
マトリックスに固定化したヘパリン、固定化したベンズアミジン、固定化したヒルジンまたは断片およびヒルジン誘導体、固定化した各種タンパク質またはペプチド(特に固定化した特異的抗体)は、調製すべきタンパク質または活性状態で、吸着されるべきタンパク質の選択的固相担体として、特に適当である。
【0024】
好ましいタンパク質は選択的にアフィニティー担体から溶離され、その結果、担体に僅かな量でも(特異的または非特異的に)結合する可能性がある他のタンパク質を分離しうる。
夾雑する可能性のある感染物質、特にヒトの病原ウイルスを不活性化するために、本発明の方法の範囲内で従来公知のウイルス不活性化手段をさらに併用してもよい。
【0025】
本発明の他の態様では、プロタンパク質からのタンパク質の調製、好ましくはプロ酵素からの活性化した酵素の調製(特に活性化II因子、活性化V因子、活性化VII因子、活性化VIII因子、IX因子、活性化IX因子、活性化X因子、活性化XIII因子、フォンビルブラント因子、プロテインC)に本発明の方法を使用する。
その高純度および高比活性のため、本発明の方法によって得られるタンパク質含有フラクションは医薬製剤の調製に適しており、その溶離タンパク質は出発材料として常法により製剤化される。従って、さらに別の本発明の態様は、本発明の方法により調製した高純度のタンパク質、特に、IIa因子、Va因子、VIIa因子、VIIIa因子、IX因子、IXa因子、Xa因子、XIIIa因子、活性化プロテインCおよび/またはフォンビルブラント因子、および1以上の生理学的に許容し得る担体および/または他の医薬添加剤からなる医薬組成物を提供する。
【0026】
得られるタンパク質のための選択的な固相担体の選択は、本発明の方法において非常に重要である。固定化したヒルジンおよびポリペプチドおよびそれらの断片は、特に好ましい担体であることがわかった(特に、IIa因子の調製に適する)。
従って、本発明は、固体表面に固定化されているヒルジンおよびポリペプチドおよびそれらのペプチド断片または誘導体にも関する。該タンパク質のC末端領域からのヒルジン由来でトロンビン結合部位を有するペプチドは、この結合において特に適当であることがわかった。本発明により、選択されたペプチドはイオウまたはアミノ基を介して担体に好適に結合する。
【0027】
本発明の特別な態様によれば、血漿からの精製したヒトII因子(プロトロンビン、スタゴ・ダイアグノスティカ(Stago Diagnostica)および精製した組換えII因子(ファルクナー(Falkner,F.G)ら、Thromb.Haemost.(1992)、68、119−124)、II因子含有タンパク質混合物(ファルクナーら、Thromb.Haemost.(1992)、68、119−124)および精製したX因子(ベーリンガー・マンハイム)をプロタンパク質含有溶液として使用する。固定化したトリプシンおよび固定化したXa因子の両方が、その場合、プロテアーゼとして好ましく使用される。
【0028】
本発明のさらに別の態様では、本発明方法により調製される固相担体に吸着されるタンパク質を含むタンパク質複合体、特に、固相担体、好ましくはヒルジンまたは断片またはヒルジン誘導体を含む固相担体に、吸着されたトロンビンを含有するトロンビン複合体、を提供する。
【0029】
さらに本発明の別の態様は、本発明の方法に適した、好ましくは一工程での使用に適した、プロテアーゼを含有する容器(I)および固相担体を含有する容器(II)(ここで(I)および(II)は直結している)からなる装置を提供する。
容器(I)および(II)が各々カラムであり、(I)の末端部が(II)の頭部に連結し、そして任意に(II)の末端部が(I)の頭部に連結しているものが好ましい。
【0030】
以下に、実施例および図面によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
図1は、実施例1に記載のトリプシンによる組換えII因子(rFII)のタンパク質加水分解産物の電気泳動分析を示す。
図2は、流速(ml/分)でのU/mlにおける生成したrFIIaの活性の依存性を示す。
図3〜11は、実施例2〜10に記載のFIIのFIIaへの活性化の電気泳動の結果を示す。
図12は、実施例11に記載のFXのFXaへの活性化の電気泳動アッセイを示す。
【0031】
【実施例】
実施例:
活性の測定:
IIa因子(FIIa)の活性の測定は、50mM トリス−HClバッファー、(pH8.0、300mM NaCl、0.5% アルブミン、7.5mM EDTA)中で37℃で光度分析法により行った。FIIa特異的色素原基質AcOH−H−D−CHG−Ala−Arg−pNA(ペンタファーム(Pentapharm)から入手)を0.2mMの濃度で基質として使用した。酵素加水分解により基質から放出されたパラニトロアニリン(pNA)を、405nmで時間経過に従って光度測定した。FIIa濃度標準(イムノAGの)を使用することにより、該サンプルの活性を基質の加水分解の速度から算定した。
【0032】
Xa因子(FXa)の活性の測定は、50mM トリス−HClバッファー(pH7.8、0.5% アルブミン)中で37℃で光度分析にて行った。FXa特異的色素原基質Bz−Ile−Glu(ピペリジル)−Gly−Arg−pNA(クロモジェニックス(Chromogenix)から入手)を0.3mMの濃度で基質として使用した。酵素加水分解により基質から放出されたpNAを、405nmで時間経過に従って光度測定した。FXa濃度標準(イムノAGの)を使用することにより、該サンプルの活性を基質の加水分解の速度から算定した。
【0033】
天然のII因子および組換えII因子(FII/rFII)およびFIIa/rFIIaの各々のタンパク質の測定は、280nmでの吸着を各々13.8および17.9の吸光係数(1%、1cm)を使用することにより吸光度を測定して行った(ヒューマン・プロテイン・データ(Human Protein Data)、編、ヘバーリ(A.Haeberli)による、VCH ベインハイム(Weinheim)、ニュヨーク、1992)。
【0034】
FX因子およびFXa因子の各々のタンパク質の測定は、280nmでの吸着を12.4の吸光係数(1%、1cm)を使用することにより吸光度を測定して行った(ヒューマン・プロテイン・データ、編、ヘバーリによる、VCH ベインハイム、ニュヨーク、1992)。
タンパク質混合物のタンパク質濃度の測定は、バイオラド(Bio Rad)からの市販されているシステムを利用して、ブラッドフォード(Bradford)法(M.Bradford)、Anal.Biochem.72(1976)、248−254)により行った。
【0035】
実施例1
プロトロンビンのトロンビンへのプロテアーゼおよびプロタンパク質間の接触時間に依存する固定化したトリプシンによる活性化
組換えプロトロンビン(組換えII因子、rFII)4mlを0.5mg/ml(活性I.U.FII/ml)の濃度で、20mM トリス−HClバッファー(pH8.0、150mM NaCl)中で、0.1mlの固定化したトリプシン−アガロースゲル(シグマ(Sigma)、USA;80ユニットのトリプシン/ml ゲル)と混合し、室温で撹拌した。サンプルを1分および5分後に採取し、組換えトロンビン(組換えII因子、rFIIa)の内容物に関してアッセイした(データに関しては表1を参照)。
【0036】
【表1】
【0037】
得たサンプルをそのタンパク質組成について変成電気泳動の方法でアッセイした(ラエミリ(Laemili)、Nature,Vol.227:680−685(1970))。結果を図1に示し、レーンaには分子量マーカー、レーンbに1分のトリプシン消化およびレーンcに5分のトリプシン消化を示している。
【0038】
これらの結果から、トリプシン消化によりrFIIはrFIIaへと変換したことがわかる。4I.U./mlの活性にてトリプシンをrFIIに作用させると、僅か1分後に、500I.U./mlの活性を有するrFIIaが形成した。しかし5分の作用時間では、rFIIaの検出可能な活性は非常に低かった。電気泳動によれば、僅か1分のrFIIへのトリプシン作用によって、70000〜20000の分子量(Daで)を有するタンパク質混合物が生じ、そのタンパク質は大部分31000〜36000の分子量を有するものであった。トロンビンは電気泳動で33000の分子質量を有することが知られており、従って、形成した31000−36000の分子質量を有するタンパク質はトロンビンであると推定される。しかしながら、非活性化rFII(分子量70000)の残留物もまたなお存在している。しかし、rFIIをトリプシンで5分間インキュベートすると、低分子のペプチドだけが電気泳動で検出された。これはトリプシンによるrFIIの消化が殆ど完全に行われ、rFIIaの蓄積がないことを示唆している。
【0039】
実施例2
固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化
ガラス製カラム(直径1cm)を0.1mlのトリプシン−アガロ−スゲルで充填した;これはゲルの高さ1.25mmに対応する。rFIIをこのトリプシン−アガロースゲルを通して多様な流速で流出した。rFIIを0.5mg/ml(3.5 I.U./ml)で、20mM トリス−HClバッファー(pH8.0、150mM NaCl)中で分解した。rFII溶液のゲルを通る流速は0.05ml/分から1.0ml/分の間で変化させた。個々の溶離液についてトロンビン活性(図2参照)および電気泳動によるタンパク質組成(図3参照)を調べた。該流速およびトリプシン−アガロースゲルカラムの規模(容量、ゲル0.1ml;カラムの直径、1cm)、層の厚さ、1.25mm)に基づいて、rFIIと固定化トリプシンとの平均接触時間を、流速1.0ml/分、0.6ml/分、0.4ml/分、0.2ml/分、0.1ml/分、0.05ml/分において各々、6秒、10秒、15秒、30秒、60秒および120秒とした。
【0040】
図3に示された電気泳動のレーンは以下のサンプルと共にローディングした(loaded):
a:rFII;
b:流速1ml/分;
c:流速0.6ml/分;
d:流速0.4ml/分;
e:流速0.2ml/分;
f:流速0.1ml/分;
g:流速0.05ml/分;
h:分子量マーカー。
これらの結果から、トリプシン消化によるrFIIからのrFIIaの形成は流速すなわち、rFIIと固定化トリプシンとの間の接触時間に非常に多大に依存するとことがわかる。
【0041】
rFIIaの最高の活性は0.4ml/分で得られた。一層速い流速(0.6ml/分および1ml/分)で、rFIIaの収率は再び減少した。電気泳動はこれらの流速で、全部ではないが、rFIIがトリプシンによりrFIIaにタンパク質分解的に変換されたことを示している。一層ゆっくりとした流速(0.05ml/分から0.2ml/分)で、rFIIaの量は再び減少する。該電気泳動アッセイは僅かな量の活性のあるトロンビンはrFIIと固定化トリプシン間の接触時間が増加すると蓄積し、流速が減少すると不活性の低分子のペプチドの形態となることを示している。
【0042】
実施例3
固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびヒルジン−チオールセファロ−ス上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収
4000抗トロンビンユニット(ATU)のヒルジン(ペンタファームから入手)を還元し、ついで仕様書に従って、それらを活性化したチオール−セファロース(ファルマシア(Pharmacia)1mlに結合させた。ヒルジン−チオールセファロース(HTS)をガラス製カラム(直径1cm)に充填した。
固定化したトリプシン−アガロースゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりHTSカラムの入り口と直接連結させた。HTSカラムの出口は弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー、pH8.0で平衡化した。
【0043】
rFIIを0.4mg/ml(活性:3.5 I.U./ml)で、4mlの20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.8ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにHTSカラムに導かれ、HTSカラムの通過後、ポンプによりTAGカラムおよびHTSカラムを通って2回目のくみ出しをされた。引き続き、HTSカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、500mM NaCl)(0.5M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、HTSカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、1.5M KSCN)(1.5M KSCN溶離液)で溶離した。
活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表2に実施例3からのrFII活性の結果を列挙する。
【0044】
【表2】
【0045】
図4は記載した活性化の電気泳動アッセイを示し、レーンaには出発物質(rFII)レーンbには1.5M KSCN溶離液(rFIIa)およびレーンcには分離している分子量マーカーを示している。
該結果は、実施例3に記載した方法によりrFIIが効率良くrFIIaに変換したことを示す。形成したrFIIaはHTSカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000でHTSカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記の方法により、1I.U.のrFIIから150I.U.以上の純度のrFIIaが得られた。これは実質的に定量的な変換に対応する。
【0046】
実施例4
固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびチオール−ペプチド−チオールセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収。
アミノ酸配列NH2−Cys−Lys−Pro−Gln−Ser−His−Asn−Asp−Gly−Asp−Phe−Glu−Glu−Ile−Pro−Glu−Glu−Tyr−Leu−Gln−COOHを有する20mgのペプチド(チオールペプチド、TP)を、仕様書に従って、活性化したチオールセファロ−ス(ファルマシア(Pharmacia)1mlに結合させた。チオール−ペプチド−チオ−ルセファロ−ス(TPTS)をガラス製カラム(直径1cm)に充填した。
固定化したトリプシン−アガロースゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりTPTSカラムの入り口と直接連結させた。TPTSカラムの出口は弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mMトリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化した。
【0047】
rFIIを0.4mg/ml(活性:3.5 I.U./ml)で、4mlの20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.8ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにTPTSカラムに導かれ、TPTSカラムの通過後、弁によりTAGカラムおよびTPTSカラムを通って2回目のくみ出しをされた。引き続き、TPTSカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、500mM NaCl)(0.5M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、TPTSカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、1.5M KSCN)(1.5M KSCN溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表3に得られたrFII活性化の結果を列挙する。
【0048】
【表3】
【0049】
図5は固定化トリプシンによる組換えrFIIのrFIIaへの活性化およびチオール−ペプチド−チオールセファロ−ス上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収の電気泳動アッセイを示し、レーンaには分子量マーカー、レ−ンbには出発物質(rFII)およびレーンcにはアプライした1.5M KSCN溶離液(rFIIa)を示している。
該結果は、記載した方法によりrFIIが効率良くrFIIaに変換したことを示す。形成したrFIIaはTPTSカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000で、TPTSカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記方法により、1I.U.のrFIIから150I.U.以上の純度のrFIIaが得られた。
【0050】
実施例5
固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収。
アミノ酸配列NH2−Lys−Pro−Gly−Pro−Gly−Ser−His−Ala−Asp−Gly−Asp−Phe−Glu−Glu−Ile−Pro−Glu−Glu−Tyr−Leu−COOHを有する20mgのペプチド(アミノペプチド、AP)を、仕様書に従って、活性化したCHセファロ−ス(ファルマシア)1mlに結合させた。アミン−ペプチド−CHセファロ−ス(APCHS)をガラス製カラム(直径1cm)に充填した。固定化したトリプシン−アガロ−スゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりAPCHSカラムの入り口と直接連結させた。APCHSカラムの出口は弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化した。
【0051】
rFIIを0.4mg/ml(活性:3.5 I.U./ml)で、4mlの20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.8ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにAPCHSカラムに導かれ、APTSカラムの通過後、TAGカラムおよびAPCHSカラムを通ってポンプにより2回目のくみ出しをされた。引き続き、APCHSカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、500mM NaCl)(0.5M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、APCHSカラムを50mM クエン酸バッファー(pH6.5、1.5M KSCN)(1.5M KSCN溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表4に得られたrFII活性化の結果を列挙する。
【0052】
【表4】
【0053】
図6は固定化トリプシンによるrFIIのrFIIaへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロ−ス上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収の電気泳動分析を示し、レーンaには分子量マーカー、レ−ンbには出発物質(rFII)およびレーンcには分離した1.5M KSCN溶離液(rFIIa)を示している。
該結果は、実施例5に記載した方法によりrFIIが効率良くrFIIaに変換されたことを示す。形成したrFIIaはAPCHSカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000で、APCHSカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記の方法により、1I.U.のrFIIから150I.U.以上の純度のrFIIaが得られた。
【0054】
実施例6
固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収。
2mlのベンズアミジンセファロース(BAS、ファルマシア)をガラス製カラム(直径1cm)に充填した。固定化したトリプシン−アガロースゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりBASカラムの入り口と直接連結させた。BASカラムの出口は弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化した。
【0055】
rFIIを0.4mg/ml(活性:3.5 I.U./ml)で、4mlの20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.8ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにBASカラムに導かれ、BASカラムの通過後、TAGカラムおよびBASカラムを通ってポンプにより2回目のくみ出しをされた。引き続き、BASカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、150mM NaCl)(0.15M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、BASカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、0.1M ベンズアミジン)(0.1M ベンズアミジン溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表5に得られたrFII活性化の結果を列挙する。
【0056】
【表5】
【0057】
図7は固定化トリプシンによるrFIIのrFIIaへの活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収の電気泳動アッセイを示し、レーンaには出発物質(rFII)、レ−ンbには0.1M ベンズアミジン溶離液(rFIIa)およびレーンcにはアプライした分子量マーカーを示している。
該結果は、実施例6に記載した方法によりrFIIが効率良くrFIIaに変換されたことを示す。形成したrFIIaはBASカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000で、BASカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記の方法により、1I.U.のrFIIから150I.U.以上の純度のrFIIaが得られた。
【0058】
実施例7
固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびヘパリンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収。
2mlのヘパリン−セファロースファスト・フロウ(Fast Flow)(HS、ファルマシア)をガラス製カラム(直径1cm)に充填した。固定化したトリプシン−アガロ−スゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりHSカラムの入り口と直接連結させた。BASカラムの出口は弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化し、rFIIを0.4mg/ml(活性:3.5 I.U./ml)で、4mlの20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.8ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにHSカラムに導かれ、HSカラムの通過後、TAGカラムおよびHSカラムを通ってポンプにより2回目のくみ出しをされた。引き続き、HSカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、150mM NaCl)(0.15M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、HSカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、0.5M NaCl)(0.5M NaCl溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表6に実施例7からのrFII活性化の結果を列挙する。
【0059】
【表6】
【0060】
図8は固定化トリプシンによるrFIIのrFIIaへの活性化およびヘパリンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収の電気泳動分析を示し、レーンaには出発物質(rFII)、レ−ンbには0.5M NaCl溶離液(rFIIa)およびレーンcにはアプライした分子量マーカーを示している。
該結果は、実施例7に記載した方法によりrFIIが効率良くrFIIaに変換されたことを示す。形成したrFIIaはHSカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000および35000で、HSカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記の方法により、1I.U.のrFIIから150I.U.以上の純度のrFIIaが得られた。
【0061】
実施例8
固定化トリプシンによるタンパク質混合物中における組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収。
アミノ−ペプチド−CHセファロースカラム(APCHSカラム)を実施例5に記載したように調製した。固定化したトリプシン−アガロースゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりAPCHSカラムの入り口と直接連結させた。APCHSカラムの出口は弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化した。
【0062】
20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中に、rFII(活性 3.5 I.U./ml)を含む4mlのタンパク質混合物(タンパク質濃度1.7mg/ml)を流速0.8ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにAPCHSカラムに導かれ、APTSカラムの通過後、TAGカラムおよびAPCHSカラムを通ってポンプにより2回目のくみ出しをされた。引き続き、APCHSカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、500mM NaCl)(0.5M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、APCHSカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、1.5M KSCN)(1.5M KSCN溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表7に実施例8からのrFII活性化の結果を列挙する。
【0063】
【表7】
【0064】
図9は固定化トリプシンによるタンパク質混合物中のrFIIのrFIIaへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロ−ス上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収の電気泳動分析を示し、レーンaには出発物質(タンパク質混合物)、レ−ンbには1.5M KSCN溶離液(rFIIa)およびレーンcにはアプライした分子量マーカーを示している。
該結果は、実施例8に記載した方法により、タンパク質混合物中でrFIIが効率良くrFIIaに変換されたことを示す。形成したrFIIaはAPCHSカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000でAPCHSカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記の方法により、1I.U.のrFIIから150I.U.以上の純度のrFIIaが得られた。
【0065】
実施例9
固定化トリプシンによるヒトプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収。
2mlのベンズアミジンセファロース(BAS、ファルマシア)をガラス製カラム(直径1cm)に充填した。固定化したトリプシン−アガロースゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりBASカラムの入り口と直接連結させた。BASカラムの出口は弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化した。
【0066】
ヒトII因子(hFII)を0.5mg/ml(活性:4 I.U./ml)で、4mlの20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.8ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにBASカラムに導かれ、BASカラムの通過後、TAGカラムおよびBASカラムを通ってポンプにより2回目のくみ出しをされた。引き続き、BASカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、150mM NaCl)(0.15M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、BASカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、0.1M ベンズアミジン)(0.1M ベンズアミジン溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表8に実施例9からのhFII活性化の結果を列挙する。
【0067】
【表8】
【0068】
図10は固定化トリプシンによるhFIIのFIIaへの活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収の電気泳動分析を示し、レーンaには分子量マーカー、、レ−ンbには出発物質(hFII)およびレーンcにはアプライした0.1M ベンズアミジン溶離液(FIIa)を示している。
該結果は、実施例9に記載した方法によりhFIIが効率良くFIIaに変換されたことを示す。形成したFIIaはBASカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000で、BASカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記方法により、1I.U.のhFIIから150I.U.以上の純度のFIIaが得られた。
【0069】
実施例10
固定化Xa因子による組換えFIIのFIIaへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収
アミノ−ペプチド−CHセファロースカラム(APCHSカラム)を実施例5に記載したように調製した。20mgのプロテアーゼXa因子(ベーリンガー・マンハイム)を、仕様書に従って、CNBr−活性化したCHセファロース(ファルマシア)1mlに結合させ、ガラス製カラム(直径1cm)(XaSカラム)に充填した。XaSカラムの出口は、ホース結合によりAPCHSカラムの入り口と直接連結させた。APCHSカラムの出口は弁およびポンプを介してXaSカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化した。
【0070】
rFIIを0.4mg/ml(活性:3.5 I.U./ml)で、4mlの20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.1ml/分でXaSカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにAPCHSカラムに導かれ、APTSカラムの通過後、XaSカラムおよびAPCHSカラムを通ってポンプにより2回目のくみ出しをされた。この手続をさらに3回反復した。引き続き、APCHSカラムをXaSカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、500mM NaCl)(0.5M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、APCHSカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、1.5M KSCN)(1.5M KSCN溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表9に実施例10からのrFII活性化の結果を要約する。
【0071】
【表9】
【0072】
図11は固定化Xa因子によるrFIIのrFIIaへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロ−ス上でのアフィニティークロマトグラフィーによるトロンビンの回収の電気泳動分析を示し、レーンaには分子量マーカー、レ−ンbには出発物質(rFII)およびレーンcにはアプライした1.5M KSCN溶離液(rFIIa)を示している。
該結果は、実施例10に記載した方法により、rFIIがプロテアーゼ因子Xaによって効率良くrFIIaに変換されたことを示す。形成したFIIaはAPCHSカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量33000で、APCHSカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。上記の方法により、1I.U.のrFIIから150I.U.以上の純度のrFIIaが得られた。
【0073】
実施例11
固定化トリプシンによるX因子のXa因子への活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるXa因子の回収。
2mlのベンズアミジンセファロース(BAS、ファルマシア)をガラス製カラム(直径1cm)に充填した。固定化したトリプシン−アガロースゲル(TAG)0.1mlを含有したガラス製カラム(直径1cm)の出口は、ホース結合によりBASカラムの入り口と直接連結させた。BASカラムの出口は、弁およびポンプを介してTAGカラムの入り口と連結させ、それにより、液体循環が形成した。両カラムを20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)で平衡化した。
【0074】
2mlの因子X(FX、ベーリンガー・マンハイム製)の溶液を0.5mg/ml(活性:3.5 I.U./ml)で、20mM トリス−HClバッファー(pH8.0)中で分解し、ついで流速0.5ml/分でTAGカラムを通してくみ出した。そこから、該液体の流れは直接、中断なしにBASカラムに導かれ、BASカラムの通過後、TAGカラムおよびBASカラムを通ってポンプにより2回目のくみ出しをされた。引き続き、BASカラムをTAGカラムから分離させ、50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5)で洗い流し(結合しなかった物質を除去するため)、ついで50mM クエン酸ナトリウムバッファー(pH6.5、150mM NaCl)(0.15M NaCl溶離液)で洗浄した。続いて、BASカラムを50mM クエン酸塩バッファー(pH6.5、0.1M ベンズアミジン)(0.1M ベンズアミジン溶離液)で溶離した。活性化で得た断片についてトロンビン活性(I.U./ml)、総活性(I.U.)および比活性(トロンビン活性/mgタンパク質)をアッセイした。表10に実施例11からの因子Xの活性化の結果を列挙する。
【0075】
【表10】
【0076】
図12は固定化トリプシンによるFXのFXaへの活性化、およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによるFXaの回収の電気泳動アッセイを示し、レーンaには出発物質(FX)、レ−ンbには0.1M ベンズアミジン溶離液(FXa)およびレーンcにはアプライした分子量マーカーを示している。
該結果は、実施例11に記載した方法によりFXが効率良くFXaに変換されたことを示す。形成したFXaはBASカラムに蓄積し、電気泳動的に純粋な形態で得られ、分子量32000で、BASカラムの特異的な溶離により非常に高い比活性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 トリプシンによる組換えII因子(rFII)のタンパク質加水分解的産物の電気泳動分析の写真。
【図2】 流速(ml/分)でのU/mlにおける形成したrFIIaの活性の依存性を示したグラフである。
【図3】 固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化の電気泳動図。
【図4】 固定化トリプシンによる組換えプロトロンビンのトロンビンへの活性化およびヒルジン−チオールセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる回収の電気泳動図。
【図5】 固定化トリプシンによるrFIIのFIIaへの活性化およびチオール−ペプチド−チオールセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
【図6】 固定化トリプシンによるrFIIのFIIaへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
【図7】 固定化トリプシンによるrFIIのFIIaへの活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
【図8】 固定化トリプシンによるrFIIのFIIaへの活性化およびヘパリンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
【図9】 固定化トリプシンによるタンパク質混合物中のrFIIのFIIaへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
【図10】 固定化トリプシンによるhFIIのFIIaへの活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
【図11】 固定化Xa因子によるrFIIのFIIaへの活性化およびアミノ−ペプチド−CHセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
【図12】 固定化トリプシンによるFXのFXaへの活性化およびベンズアミジンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーによる電気泳動図。
Claims (15)
- 1つの工程でプロタンパク質からタンパク質を調製および回収する方法であって、プロタンパク質含有溶液を、固定化プロテアーゼ、および該プロタンパク質またはその機能的に不活性な分解産物よりも該プロタンパク質からのタンパク質に対して一層高いアフィニティーを有する固相担体であって、固定化ヒルジン、固定化したヒルジン由来のポリペプチドまたは誘導体、固定化ヘパリン、固定化ベンズアミジン、固定化タンパク質またはペプチド、または固定化抗体より選択されるものに、該プロタンパク質がタンパク質に開裂するのに十分であり、該タンパク質の機能的に不活性な分解産物が実質的に形成されない所定の接触時間、接触させて該プロタンパク質をタンパク質加水分解的に開裂させ、生成する該タンパク質を該固相担体上に吸着させて選択的に分離することからなり、その際、該プロタンパク質、該固定化プロテアーゼおよび該固相担体が同一の容器中に共存しており、該プロタンパク質が、II因子、V因子、VII因子、VIII因子、IXプロ因子、IX因子、X因子、XIII因子、プロテインCおよびプロフォンビルブラント因子よりなる群から選ばれたものであり、該固定化プロテアーゼが、トリプシン、キモトリプシン、Xa因子、ヘビ毒プロテアーゼ、トロンビン、プラスミンおよびズブチリシンファミリーのセリンプロテアーゼよりなる群から選ばれたものであることを特徴とする方法。
- 該固定化プロテアーゼが、セルロース、セファロース、デキストラン、アガロース、アクリレートおよびシリケートよりなる群から選ばれた天然または合成担体上に固定化されたプロテアーゼである請求項1に記載の方法。
- プロテアーゼとの接触およびタンパク質の分離後、溶液に残留している非開裂のプロタンパク質を再び該プロテアーゼと接触させ、生成したタンパク質を固相担体に吸着させ、これらの工程を、実質的に全てのプロタンパク質がタンパク質に開裂されるまで繰り返す請求項1または2に記載の方法。
- プロタンパク質とプロテアーゼの接触時間が長くても24時間である請求項1、2または3 のいずれかに記載の方法。
- プロタンパク質とプロテアーゼの接触時間が1秒〜24時間 である請求項1、2、3または4 のいずれかに記載の方法。
- プロタンパク質とプロテアーゼの接触時間が1秒〜5時間である、請求項5に記載の方法。
- プロタンパク質とプロテアーゼの接触時間が1秒〜30分間である、請求項5または6に記載の方法。
- プロタンパク質含有溶液として、精製された形態のプロタンパク質を含有する溶液を使用する請求項1、2、3、4、5、6または7 のいずれかに記載の方法。
- 該タンパク質とともに他のタンパク質を含有する溶液をプロタンパク質含有溶液として使用する請求項1、2、3、4、5、6、7または8 のいずれかに記載の方法。
- 生物学的起源の溶液をプロタンパク質含有溶液として使用する請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9のいずれかに記載の方法。
- 血漿、血漿画分またはそれ由来の溶液をプロタンパク質含有溶液として使用する請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10 のいずれかに記載の方法。
- バイオテクノロジーの方法により生成した溶液をプロタンパク質含有溶液として使用する請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9 のいずれかに記載の方法。
- 組換え細胞培養から調製した培養上清をプロタンパク質含有溶液として使用することを特徴とする請求項12に記載の方法。
- 該固相担体上に吸着した該タンパク質を選択的に該担体から溶離する請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13 のいずれかに記載の方法。
- 活性化II因子、活性化V因子、活性化VII因子、活性化VIII因子、IX因子、活性化IX因子、活性化X因子、活性化XIII因子、活性化プロテインCまたはフォンビルブラント因子を調製するための請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14 のいずれかに記載の方法。
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