JP4180201B2 - 半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造技術、特に、半導体集積回路装置(以下、ICという。)の製造方法に使用される基板処理装置であって、半導体ウエハ(以下、ウエハという。)が搬入されるインナチューブとこのインナチューブを取り囲んだアウタチューブとを有する基板処理装置のメンテナンス技術に関し、例えば、ウエハに窒化シリコン(Si3 N4 )やポリシリコン等を堆積(デポジション)させる減圧CVD装置、および、酸化処理や拡散だけでなくイオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフロー等にも使用される拡散装置等に利用して有効なものに関する。
【0002】
ICの製造方法において、ウエハに窒化シリコンやポリシリコン等のCVD膜をデポジションするのにバッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置が広く使用されている。バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置(以下、CVD装置という。)は、ウエハが搬入されるインナチューブおよびこのインナチューブを取り囲むアウタチューブから構成され縦形に設置されたプロセスチューブと、インナチューブ内に原料ガスを導入するガス導入管と、プロセスチューブ内を真空排気する排気管と、プロセスチューブ外に敷設されてプロセスチューブ内を加熱するヒータとを備えており、複数枚のウエハがボートによって長く整列されて保持された状態でインナチューブ内に下端の炉口から搬入され、インナチューブ内に原料ガスがガス導入管から導入されるとともに、ヒータによってプロセスチューブ内が加熱されることにより、ウエハにCVD膜がデポジションされるように構成されている。
【0003】
このようなCVD装置においては、形成する膜種に関係なく成膜処理回数が増えるに従ってインナチューブの内外壁面やアウタチューブの内壁面およびボートの表面等における累積膜厚が増加し、ある累積膜厚に達すると、パーティクルの発生が急激に増加することが知られている。そこで、このようなCVD装置が使用されたICの製造方法における成膜工程においては、ある累積膜厚に達すると、インナチューブおよびアウタチューブ等を予め洗浄されたものと全て交換する作業(以下、フル交換という。)を実施することにより、パーティクルの発生を防止することが行われている。
【0004】
ちなみに、フル交換は次のような手順で実施される。プロセスチューブの温度を室温まで下げる→アウタチューブを取り外す→インナチューブを取り外す→キャップを取り外す→排気管を取り外す→洗浄済みの配管を取り付ける→洗浄済みのキャップを取り付ける→洗浄済みのインナチューブを取り付ける→洗浄済みのアウタチューブを取り付ける→プロセスチューブの温度を処理温度まで昇温させる→テスト運転する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したフル交換によるパーティクル発生防止方法においては、インナチューブやアウタチューブ等の取り付け取り外し作業に長時間が消費されるばかりでなく、プロセスチューブの温度の降下および再上昇に時間が消費されてしまうため、CVD装置のダウンタイム(休止時間)がきわめて長く(例えば、一回当たり三十時間)なり、成膜処理工程しいてはICの製造工程全体としてのスループットを低下させてしまうという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、処理装置のダウンタイムを短縮しつつパーティクルの発生を防止することができる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板が搬入されるインナチューブとこのインナチューブを取り囲んだアウタチューブとを有する基板処理装置が使用されて前記基板に処理が施される処理工程を備えている半導体装置の製造方法において、
前記インナチューブの交換の頻度が前記アウタチューブの交換の頻度よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0008】
前記した手段によれば、インナチューブの交換頻度を一定の水準以上に維持することにより、最大のパーティクルのソースであるインナチューブの清浄度を高く維持することができるため、パーティクルの発生を防止することができる。他方、アウタチューブの交換頻度をインナチューブの交換頻度よりも低くすることにより、アウタチューブの取り付け取り外し作業時間等が減少するため、フル交換に比べて全体としての作業時間を短縮することができ、基板処理装置の全体としてのダウンタイムを短縮することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態であるICの製造方法の成膜工程に使用されるCVD装置を示す正面断面図である。図2はそのCVD装置のメンテナンス方法を示す工程図である。図3はその作用を説明するための各線図である。
【0010】
図1に示されているように、本実施形態に係るICの製造方法の成膜工程に使用されるCVD装置は、中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持された縦形のプロセスチューブ1を備えている。プロセスチューブ1はインナチューブ2とアウタチューブ3とから構成されており、インナチューブ2は炭化シリコン(SiC)が使用されて円筒形状に一体成形され、アウタチューブ3は石英ガラスが使用されて円筒形状に一体成形されている。
【0011】
インナチューブ2は上下両端が開口した円筒形状に形成されており、インナチューブ2の筒中空部はボートによって長く整列した状態に保持された複数枚のウエハが搬入される処理室4を実質的に形成している。インナチューブ2の下端開口は被処理基板としてのウエハを出し入れするための炉口5を実質的に構成している。したがって、インナチューブ2の内径は取り扱うウエハの最大外径よりも大きくなるように設定されている。
【0012】
アウタチューブ3は内径がインナチューブ2の外径よりも大きく上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナチューブ2にその外側を取り囲むように同心円に被せられている。インナチューブ2とアウタチューブ3との間の下端部は円形リング形状に形成されたキャップ6によって気密封止されており、キャップ6はインナチューブ2およびアウタチューブ3についての交換等のためにインナチューブ2およびアウタチューブ3にそれぞれ着脱自在に取り付けられている。キャップ6がCVD装置の機枠に支持されることより、プロセスチューブ1は垂直に据え付けられた状態になっている。
【0013】
キャップ6の側壁の上部には排気管7が接続されており、排気管7は高真空排気装置(図示せず)に接続されて処理室4を所定の真空度に真空排気し得るように構成されている。排気管7はインナチューブ2とアウタチューブ3との間に形成された隙間に連通した状態になっており、インナチューブ2とアウタチューブ3との隙間によって排気路8が、横断面形状が一定幅の円形リング形状に構成されている。排気管7がキャップ6に接続されているため、排気管7は円筒形状の中空体を形成されて垂直に延在した排気路8の最下端部に配置された状態になっている。キャップ6の側壁の下部にはガス導入管9がインナチューブ2の炉口5に連通するように接続されている。ガス導入管9によって炉口5に導入されたガスはインナチューブ2の処理室4内を流通して排気路8を通って排気管7によって排気される。
【0014】
キャップ6には下端開口を閉塞するゲート10が垂直方向下側から当接されるようになっている。ゲート10はアウタチューブ3の外径と略等しい円盤形状に形成されており、プロセスチューブ1の外部に垂直に設備されたエレベータ(図示せず)によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ゲート10の中心線上には被処理基板としてのウエハ20を保持するためのボート11が垂直に立脚されて支持されるようになっている。
【0015】
ボート11は上下で一対の端板12、13と、両端板12、13間に架設されて垂直に配設された複数本の保持部材14とを備えており、各保持部材14に長手方向に等間隔に配されて互いに対向して開口するように没設された多数条の保持溝15間にウエハ20を挿入されることにより、複数枚のウエハ20を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するように構成されている。ボート11とゲート10との間には上下で一対の補助端板16、17が複数本の補助保持部材18によって支持されて配設されており、各補助保持部材18には多数条の保持溝19が没設されている。
【0016】
アウタチューブ3の外部にはプロセスチューブ1内を加熱するヒータユニット21が、アウタチューブ3の周囲を包囲するように同心円に設備されており、ヒータユニット21はプロセスチューブ1内を全体にわたって均一に加熱するように構成されている。ヒータユニット21はCVD装置の機枠22に支持されることより垂直に据え付けられた状態になっている。
【0017】
続いて、ICの製造方法における前記構成に係るCVD装置による成膜工程のバッチ処理の一回を、ウエハに窒化シリコン(Si3 N4 )のCVD膜が形成される場合について説明する。
【0018】
図1に示されているように、複数枚のウエハ20を整列保持したボート11はゲート10の上にウエハ20群が並んだ方向が垂直になる状態で載置され、エレベータによって差し上げられてインナチューブ2の炉口5から処理室4に搬入されて行き、ゲート10に支持されたままの状態で処理室4に存置される。この状態で、ゲート10は炉口5をシールした状態になる。
【0019】
プロセスチューブ1の内部が所定の真空度(数Torr以下)に排気管7によって真空排気される。また、ヒータユニット21によってプロセスチューブ1の内部が所定の温度(約760℃)に全体にわたって均一に加熱される。次いで、原料ガス23がインナチューブ2の処理室4にガス導入管9によって供給される。Si3 N4 のCVD膜をデポジションする場合には原料ガス23として、SiH4 とNH3 や、SiH2 Cl2 とNH3 等が処理室4に導入される。
【0020】
導入された原料ガス23はインナチューブ2の処理室4を上昇し、上端開口からインナチューブ2とアウタチューブ3との隙間によって形成された排気路8に流出して排気管7から排気される。原料ガス23は処理室4を通過する際にウエハ20の表面に接触する。この接触による原料ガス23のCVD反応により、ウエハ20の表面にはSi3 N4 のCVD膜が堆積(デポジション)する。
【0021】
Si3 N4 のCVD膜が所望の堆積膜厚だけデポジションされる予め設定された処理時間が経過すると、ゲート10が下降されて炉口5が開口されるとともに、ボート11に保持された状態でウエハ20群が炉口5からプロセスチューブ1の外部に搬出される。
【0022】
以上の成膜処理において、原料ガス23は流れて行く間にウエハ20だけでなくインナチューブ2の内外壁面やアウタチューブ3の内壁面およびキャップ6の内壁面等に接触するため、これらの表面にもSi3 N4 のCVD膜が堆積することになる。これらの表面に堆積したCVD膜は前述した成膜処理が繰り返される毎に累積して行くため、その累積膜の厚さは成膜のバッチ処理の回数が増えるに従って増加して行くことになる。そして、この累積膜は厚さがある値に達すると、剥離し易くなるため、パーティクルの発生が急激に増加する。
【0023】
そこで、本実施形態に係るICの製造方法におけるCVD膜形成工程においては、CVD装置に対して図2に示されているメンテナンス方法が実施される。以下、本実施形態に係るメンテナンス方法を図2および図3について説明する。
【0024】
図2に示されている成膜ステップ30においてはCVD装置を使用して前述したバッチ処理が複数回繰り返される。本実施形態においては、成膜ステップ30においてバッチ処理が予め設定された回数だけ繰り返されると、最大のパーティクルソースであるインナチューブだけが予め洗浄されたものと交換される作業(以下、パート交換という。)が、図2に示されている第一回目のパート交換ステップ41において実施される。
【0025】
ところで、前述した通り、成膜処理に伴うインナチューブの累積膜厚がある値に達すると、パーティクルの発生が急増する。そして、炭化シリコン製のインナチューブが使用され、Si3 N4 が累積膜である場合において、インナチューブの累積膜厚が2.4μmに達すると、粒径が0.16μmのパーティクルの発生が急増することが究明されている。
【0026】
そこで、本実施形態においては、パーティクルの管理粒径を0.16μmに設定し、インナチューブの累積膜厚が2.4μmに達した時にパート交換ステップを実施するものと設定した。さらに、インナチューブの累積膜厚はバッチ処理回数に依存するため、累積膜厚が2.4μmに達するバッチ処理回数を過去の実績や実験およびコンピュータによるシミュレーション(模擬実験)等によって予め求め、求められたバッチ処理回数に達した時点でパート交換を実施するものと設定した。例えば、CVD装置を制御するコンピュータまたはICの製造方法を統括的に制御するホストコンピュータには、成膜ステップにおいて予め設定されたバッチ処理回数に達した時にCVD装置のパート交換ステップを実施するシーケンスが組み込まれ、このシーケンスの指令に基づいてパート交換が実行されることになる。
【0027】
パート交換は次のような手順によって実行される。処理室4の温度を400℃に下げる→邪魔になるガス導入管9を取り外す→インナチューブ2を取り外す→洗浄済みインナチューブ2を取り付ける→ガス導入管9を取り付ける→処理室4を760℃に上げる→テスト運転する。
【0028】
このようにパート交換に際しては、インナチューブ2だけが取り外されてアウタチューブ3がヒータユニット21の内側空間すなわち処理室4を被覆した状態を維持しているため、処理室4の温度を室温まで下げなくて済む。その結果、処理室を室温まで降下させるフル交換に比べて処理温度からの降下幅が小さくなるため、降温時間および再昇温時間を大幅に短縮することができる。また、処理室4の温度の降下幅が小さいと、熱応力の変化を小さく抑制することができるため、アウタチューブ3等における累積膜の剥離を抑制しパーティクルの発生を防止することができる。
【0029】
以上のようにパート交換に際しては、交換部品点数の減少による取り付け取り外し作業時間の短縮だけでなく、降温時間および再昇温時間を大幅に短縮することができるため、パート交換に要する時間はフル交換に要する時間の五分の一に減少させることができる。例えば、図3(a)および(c)に示されているように、フル交換時間が三十時間であると、パート交換時間は六時間に短縮することができる。
【0030】
図2に示されているように、第一回目のパート交換ステップ41が実施された後には成膜ステップ30が前回と同様に実施される。すなわち、CVD装置を使用して前述したバッチ処理が前回の成膜ステップ30と同様に複数回繰り返される。この際、インナチューブは第一回目のパート交換ステップ41において洗浄済みの清浄なインナチューブ2に交換されているため、図3(d)に示されているように、インナチューブ2における堆積膜の厚さは零に戻っている。したがって、今回の成膜ステップ30におけるインナチューブ2の累積膜厚が予め設定された2.4μmに達するバッチ処理回数は、前回の成膜ステップ30と同等のバッチ処理回数になる。つまり、最大のパーティクルソースであるインナチューブ2が清浄な状態になっているため、今回の成膜ステップ30においても前回の成膜ステップ30と同じバッチ処理回数を、管理粒径が0.16μmのパーティクルを発生することなく実施することができる。
【0031】
そして、今回の成膜ステップ30において累積膜厚が2.4μmに達する処理回数だけバッチ処理が繰り返されると、図2に示されているように、第二回目のパート交換ステップ42が実施される。この第二回目のパート交換ステップ42も第一回目のパート交換ステップ41と同様にインナチューブだけが交換されるため、例えば、図3(c)に示されているように、第二回目のパート交換ステップ42の作業時間は第一回目のパート交換ステップ41と同等の六時間に抑制することができる。また、処理室4の温度の降下幅が小さいと、熱応力の変化が小さく抑制されるため、アウタチューブ3等における累積膜の剥離を抑制し、パーティクルの発生を防止することができる。
【0032】
図2に示されているように、第二回目のパート交換ステップ42が実施された後には成膜ステップ30が前回および前々回と同様に実施される。すなわち、CVD装置を使用して前述したバッチ処理が予め設定された回数だけ繰り返される。この際も、インナチューブは第二回目のパート交換ステップ42において洗浄済みの清浄なインナチューブ2に交換されているため、図3(d)に示されているように、インナチューブ2における堆積膜の厚さは零に戻っている。したがって、今回の成膜ステップ30におけるインナチューブ2の累積膜厚が予め設定された2.4μmに達するバッチ処理回数は、前回および前々回の各成膜ステップ30と同等のバッチ処理回数になる。つまり、最大のパーティクルソースであるインナチューブ2が清浄な状態になっているため、今回の成膜ステップ30においても前回の成膜ステップ30と同じバッチ処理回数を、管理粒径が0.16μmのパーティクルを発生することなく実施することができる。
【0033】
図2に示されているように、本実施形態においては、第二回目のパート交換ステップ42が実施された後の成膜ステップ30の後にインナチューブとアウタチューブが予め洗浄されたものと交換されるフル交換が、フル交換ステップ50において実施される。
【0034】
ところで、前述した通り、成膜処理に伴ってアウタチューブに堆積する膜も累積して行き、累積膜厚がある値に達すると、パーティクルの発生が急増する。そして、石英ガラス製のアウタチューブが使用され、Si3 N4 が累積膜である場合において、アウタチューブの累積膜厚が7.2μmに達すると、粒径が0.16μmのパーティクルの発生が急増することが究明されている。
【0035】
そこで、本実施形態においては、パーティクルの管理粒径を0.16μmに設定し、アウタチューブの累積膜厚が7.2μmに達した時にフル交換を実施するものと設定した。さらに、アウタチューブの累積膜厚はバッチ処理回数に依存するため、アウタチューブにおける累積膜厚が7.2μmに達するバッチ処理回数を過去の実績や実験およびコンピュータによるシミュレーション(模擬実験)等によって予め求め、求められたバッチ処理回数に達した時点でフル交換を実施するものと設定することができる。
【0036】
但し、図2および図3(c)〜(d)に示されている実施形態においては、インナチューブにおける累積膜厚の増加率とアウタチューブにおける累積膜厚の増加率とが等しいものと仮定し、7.2÷2.4=3、によって第二回目のパート交換ステップ42が実施された後の成膜ステップ30の後にフル交換ステップ50を実施するものと設定している。
【0037】
ここで、アウタチューブにおける累積膜厚の増加率はインナチューブにおける累積膜厚の増加率に比べて遙に小さいのが実際であるため、フル交換ステップの実施時期は本実施形態に比べて遙に遅らせることができる。つまり、実際上は、パート交換の頻度をフル交換の頻度よりも遙に高く設定することができる。換言すれば、フル交換の頻度を従来に比べて遙に減少させることにより、CVD装置のダウンタイムを従来に比べて遙に短縮することができる。
【0038】
なお、フル交換は従来と同様の次のような手順によって実行される。ヒータユニット21の内側空間の温度を室温(25℃)まで下げる→アウタチューブ3を取り外す→インナチューブ2を取り外す→キャップ6を取り外す→排気管7やガス導入管9等を取り外す→洗浄済みの排気管7やガス導入管9等を取り付ける→洗浄済みのキャップ6を取り付ける→洗浄済みのインナチューブ2を取り付ける→洗浄済みのアウタチューブ3を取り付ける→ヒータユニット21の内側空間の温度を処理温度(760℃)まで上げる→テスト運転する。
【0039】
このようにフル交換に際しては、ヒータユニット21の内側空間が露出してしまうため、ヒータユニット21の温度が処理温度から室温まできわめて大幅に降下されることになり、その結果、降温時間および再昇温時間がきわめて長期間になってしまう。つまり、フル交換に際しては、交換部品点数の増加による取り付け取り外し作業時間の延長だけでなく、降温時間および再昇温時間がきわめて長期間になるため、フル交換に要する時間はパート交換に要する時間の五倍に増加してしまう。例えば、図3(c)に示されているように、パート交換時間が六時間であると、フル交換時間は三十時間になってしまう。
【0040】
以上のようにフル交換ステップ50が実施された後は、図2に示されているルーチンが繰り返されて行くことになる。
【0041】
図3は本実施形態の方法を従来のメンテナンス方法(以下、従来方法という。)と比較して示した各線図である。(a)は従来方法のタイムチャートを示しており、(b)はそのインナチューブの累積膜厚の推移を示している。(c)は本実施形態のタイムチャートを示し、(d)はそのインナチューブの累積膜厚の推移を示し、(e)はそのアウタチューブの累積膜厚の推移を示している。図3においては、成膜処理の処理時間が百八十時間に、フル交換の作業時間が三十時間に、パート交換の作業時間が六時間にそれぞれ取られている。そして、図3においては、前述したルーチンが二回実施された場合を示されている。
【0042】
図3において、従来方法のフル交換の総作業時間は、30×5=150、によって求められるため、百五十時間である。これに対し、本実施形態のパート交換およびフル交換の総作業時間は、6×4+30×2=84、によって求められるため、八十四時間である。そして、同一時間内における従来方法に対する本実施形態の短縮時間は、150−84=66、によって求められるため、六十六時間ということになる。
【0043】
また、本実施形態においては、成膜処理が六回完全に実施されている。これに対し、従来方法においては、成膜処理が約五回半実施されている。ここで、ウエハの成膜処理枚数は成膜処理時間に依存するため、図3(d)に符号60で示されている範囲がスループットの向上分に相当することになる。
【0044】
前記した実施形態によれば、次の効果が得られる。
【0045】
1) インナチューブの交換頻度を多くすることにより、最大のパーティクルのソースであるインナチューブの清浄度を高く維持することができるため、パーティクルの発生を防止することができる。
【0046】
2) アウタチューブの交換頻度をインナチューブの交換頻度よりも低くすることにより、アウタチューブの取り付け取り外し作業時間等が減少するため、フル交換に比べて全体としての作業時間を短縮することができ、CVD装置の全体としてのダウンタイムを短縮することができる。
【0047】
3) 前記1)および2)により、パーティクルの発生を防止しつつCVD装置および成膜処理工程のスループットを向上させることができる。
【0048】
4) インナチューブだけが交換されるパート交換に際して処理室の降下温度の処理温度に対する降下幅を小さく設定することにより、降温時間および再昇温時間を大幅に短縮することができるため、CVD装置のダウンタイムをより一層短縮することができ、スループットをより一層向上させることができる。
【0049】
5) また、処理室の温度の降下幅を小さく設定すると、熱応力の変化を小さく抑制することができるため、アウタチューブ等における累積膜の剥離を抑制し、パーティクルの発生を防止することができる。
【0050】
6) パート交換の頻度を最大のパーティクルソースであるインナチューブにおける累積膜厚に基づいて設定することにより、パーティクルの発生をシーケンス制御によって確実に防止することができるため、実際のパーティクルの発生状況を検出してパート交換を実施する場合に比べてCVD装置のハードウエアやソフトウエアを簡単化することができる。
【0051】
7) フル交換の頻度をアウタチューブにおける累積膜厚によって設定することにより、パーティクルの発生をシーケンス制御によって確実に防止することができるため、実際のパーティクルの発生状況を検出してフル交換を実施する場合に比べてCVD装置のハードウエアやソフトウエアを簡単化することができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0053】
例えば、インナチューブの交換頻度はアウタチューブの交換頻度の二倍に設定するに限らず、三倍以上に設定してもよい。
【0054】
インナチューブだけを交換するパート交換に際してのインナチューブの着脱作業時の温度は、400℃に限らず、作業の安全性を確保可能な最高温度に設定することができる。つまり、処理が実施される際の温度よりも低く室温よりも高い温度に設定することができる。
【0055】
インナチューブだけを交換するパット交換の頻度を規定する累積膜厚は、2.4μmに限らず、インナチューブの材質や、膜種および管理粒径等の諸条件に対応して適宜に設定することが望ましい。例えば、SiC製のインナチューブが使用され管理粒径が0.3μm以上の場合のパート交換累積膜厚は10μm、SiC製のインナチューブが使用され管理粒径が0.25μm以上の場合のパート交換累積膜厚は、5μm、石英ガラス製のインナチューブが使用され管理粒径が0.16μm以上の場合のパート交換累積膜厚は0.8μmである。
【0056】
インナチューブおよびアウタチューブを交換するフル交換の頻度を規定する累積膜厚は、7.2μmに限らず、アウタチューブの材質や膜種、管理粒径および排気流量等の諸条件に対応して適宜に設定することが望ましい。
【0057】
インナチューブだけのパート交換はインナチューブにおける累積膜厚に基づいて実施するに限らず、実際のパーティクルの発生状況を検出して不定期的に実施してもよい。すなわち、パート交換は定期的に実施するに限らず、不定期的に実施してもよいし、また、定期的交換と不定期的交換とを併用してもよい。
【0058】
インナチューブおよびアウタチューブを交換するフル交換はアウタチューブにおける累積膜厚に基づいて実施するに限らず、キャップ等のインナチューブ以外の構成部品における累積膜厚に基づいて実施してもよい。また、フル交換は実際のパーティクルの発生状況を検出して不定期的に実施してもよいし、定期的交換と不定期的交換とを併用してもよい。
【0059】
成膜処理はSi3 N4 のCVD膜を形成する処理に限らず、ポリシリコンや酸化シリコン等の他のCVD膜を形成する処理であってもよい。
【0060】
CVD装置はバッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置に限らず、横形ホットウオール形減圧CVD装置等の他のCVD装置であってもよい。
【0061】
さらに、基板処理装置はCVD装置に限らず、酸化処理や拡散だけでなくイオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフロー等にも使用される拡散装置であって、ウエハを収容する石英反応管(インナチューブに相当する。)とこの石英反応管を取り囲んだSiC均熱管(アウタチューブに相当する。)とを備えている拡散装置にも適用することができる。つまり、本発明は、基板が搬入されるインナチューブとこのインナチューブを取り囲んだ基板処理装置全般に適用することができる。
【0062】
前記実施形態ではウエハに処理が施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【0063】
【発明の効果】
インナチューブの交換頻度を多くすることにより、最大のパーティクルのソースであるインナチューブの清浄度を高く維持することができるため、パーティクルの発生を防止することができる。他方、アウタチューブの交換頻度をインナチューブの交換頻度よりも低くすることにより、アウタチューブの取り付け取り外し作業時間等を減少させることができるため、フル交換に比べて全体としての作業時間を短縮することができ、基板処理装置を使用した処理工程の全体としてのダウンタイムを短縮することができる。つまり、パーティクルの発生を防止しつつ基板処理装置を使用した処理工程しいては半導体装置の製造方法全体のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるICの製造方法の成膜工程に使用されるCVD装置を示す正面断面図である。
【図2】そのCVD装置のメンテナンス方法を示す工程図である。
【図3】その作用を説明するための各線図である。
【符号の説明】
1…プロセスチューブ、2…インナチューブ、3…アウタチューブ、4…処理室、5…炉口、6…キャップ、7…排気管、8…排気路、9…ガス導入管、10…ゲート、11…ボート、12、13…端板、14…保持部材、15…保持溝、16、17…補助端板、18…補助保持部材、19…保持溝、20…ウエハ(基板)、21…ヒータユニット、22…機枠、23…原料ガス、30…成膜ステップ、41…第一回目のパート交換ステップ、42…第二回目のパート交換ステップ、50…フル交換ステップ。
Claims (5)
- 基板を処理する処理室を形成するインナチューブと、このインナチューブを取り囲んだアウタチューブとを有する基板処理装置が使用されて前記基板に処理が施される処理工程を備えている半導体装置の製造方法において、
前記処理工程が予め設定された回数だけ繰り返された後に、前記処理室内の温度が、前記処理が実施される際の温度よりも低く室温よりも高い温度に設定されて前記インナチューブの交換が行われ、前記インナチューブの交換が予め設定された回数だけ繰り返されるときに、前記処理室内の温度を室温まで下げ、前記アウタチューブの交換も一緒に行われることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 前記インナチューブの交換に際しての前記インナチューブの前記基板処理装置に対する着脱作業時の温度は、前記処理が実施される際の温度よりも低く室温よりも高い温度に設定されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記インナチューブを交換する際に、前記インナチューブを交換した後に、前記処理室内の温度を前記処理が実施される際の温度に上げることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
- 前記アウタチューブを交換する際に、前記アウタチューブを取り外し、前記インナチューブを取り外し、
洗浄済のインナチューブを取り付け、洗浄済のアウタチューブを取り付け、
その後、前記処理室内の温度を前記処理が実施される際の温度に上げ、テスト運転することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。 - 基板を処理する処理室を形成するインナチューブと、このインナチューブを取り囲んだアウタチューブとを有する基板処理装置が使用されて前記基板に処理が施される処理工程を備えている半導体装置の製造方法において、
前記インナチューブの交換の頻度が前記アウタチューブの交換の頻度よりも高く設定されており、
前記インナチューブを交換する際に、前記処理室内の温度を前記処理が実施される際の温度よりも低く室温よりも高い温度に下げ、
前記インナチューブを交換した後に、前記処理室内の温度を前記処理が実施される際の温度に上げ、
前記アウタチューブを交換する際に、前記処理室内の温度を室温まで下げ、
前記アウタチューブおよび前記インナチューブを交換した後に、前記処理室内の温度を前記処理が実施される際の温度に上げることを特徴とする半導体装置の製造方法。
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