JP4179915B2 - 駆動力伝達機構及び電動ドアミラー装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータの駆動力によりミラーを格納位置と展開位置との間で回動させることができる電動ドアミラー装置及びこのような電動ドアミラー装置に採用される駆動力伝達機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の車両における後方視認用のミラーには、運転席や助手席に対応したドアパネルの近傍に設けられたドアミラーが採用されている。
【0003】
また、この種のドアミラーには、運転席等からミラーで車両後方を視認できる展開位置と、ミラーの反射面が車両幅方向内側(すなわち、室内側)を向く格納位置との間でミラーが取り付けられたバイザ等をモータ等の駆動力で回動させる電動ドアミラー装置がある(一例として、下記特許文献1参照)。
【0004】
この種の電動ドアミラー装置は、車体に固定されたスタンドを備えている。スタンドには円筒状のシャフトが形成されている。シャフトには、上記のバイザ等が機械的に連結されたモータアクチュエータのフレームが略車両上下方向を軸方向とする軸周りに所定範囲回動自在に軸支されている。フレームの内部では、リング状に形成された最終のウオームホイールがシャフトに回転自在に軸支されている。但し、この最終のウオームホイールは基本的にはクラッチ機構によりシャフトに一体的に連結されている。
【0005】
また、フレームにはモータが収容されている。モータの出力軸は、フレームの内部に収容された外歯の平歯車やウオームギヤ等のギヤ列から成る減速機構によって最終のウオームホイールに機械的に接続されており、モータの駆動力が減速されつつ最終のウオームホイールに伝えられる。上記のように、最終のウオームホイールは基本的にシャフトに一体的に連結されている。
【0006】
このため、このウオームホイールに噛み合うウオームギヤの回転力を受けると、ウオームホイールはその反力で自らの軸心周り(すなわち、シャフト周り)にウオームギヤを回転させる。これにより、上記の減速機構並びにモータ、ひいてはフレームが回転し、更に、ミラーが設けられているバイザが回転する構造となっている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−274266公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、図5には、ウオームギヤ300が同軸的且つ一体的に設けられたウオームホイール302にウオームギヤ304が噛み合い、また、ウオームギヤ300にウオームホイール306が噛み合った構造が示されている。この構造では、ウオームギヤ304の回転を受けてウオームホイール302が回転し、更に、ウオームホイール302と共に回転するウオームギヤ300の回転を受けてウオームホイール306が回転するという、一般的なウオームホイールとウオームギヤとを用いた駆動力の伝達機構である。
【0009】
以上のようにウオームギヤ304からウオームホイール302及びウオームギヤ300を介してウオームホイール306に回転力が伝えられる際には、ウオームギヤ300とウオームホイール306との噛合部分に、ウオームギヤ300が付与する回転力に応じた反力がウオームホイール306からウオームギヤ300の歯に作用する。この反力はウオームホイール300の回転周方向に対する接線方向成分と回転半径方向外方の成分とに分けられ、ウオームホイール300の回転半径方向外方の成分に基づく反力F1がウオームホイール306からウオームギヤ300を離間させようとする。
【0010】
一方、ウオームギヤ304の回転力もまた、その回転周方向に対する接線方向成分と回転半径方向外方の成分とに分けられ、ウオームギヤ304の回転半径外方の成分に基づく外力F2がウオームホイール302をウオームギヤ304から離間させようとする。
【0011】
図5に示されるように、ウオームホイール306はウオームギヤ300及びウオームホイール302を介してウオームギヤ304とは反対側に設けられているため、上記の反力F1と外力F2とは概ね反対方向を向く。このように、ウオームギヤ300に反力F1が作用し、ウオームホイール302に外力F2が作用することで、ウオームギヤ300及びウオームホイール302は図5における略左周り方向(図5の矢印A方向)に傾こうとする。
【0012】
このようにして、ウオームギヤ300及びウオームホイール302が傾くと、ウオームホイール306とウオームギヤ300との噛合性が低下し、異音の発生や回転力の伝達ロスの原因になりうる。
【0013】
本発明は、上記事実を考慮して、ウオームホイールからの反力に起因するウオームギヤの傾きを防止又は効果的に抑制できる駆動力伝達機構及びウオームホイールからの反力でウオームギヤが傾くことに起因する異音の発生や回転力の伝達ロスを防止又は効果的に抑制できる電動ドアミラー装置を得ることが目的である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明に係る駆動力伝達機構は、ウオームホイールに噛み合うウオームギヤによって駆動手段の駆動力を前記ウオームホイールに伝える駆動力伝達機構であって、前記ウオームギヤを介して前記ウオームホイールとは反対側で、前記ウオームギヤの軸方向に対して平行な軸線に沿って互いに同軸的且つ一体的に設けられ、前記駆動手段の駆動力によって一体的に回転する同一形状の一対の原動ギヤと、前記ウオームギヤの軸方向両端に前記ウオームギヤに対して同軸的且つ一体的に設けられ、前記一対の原動ギヤに噛み合い、各々が前記原動ギヤから回転力を受けて回転する同一形状の一対の従動ギヤと、を備えることを特徴としている。
【0015】
請求項1に記載の本発明に係る駆動力伝達機構によれば、一対の原動ギヤの少なくとも何れか一方、又は、これらの原動ギヤを同軸的且つ一体的に連結するシャフト等の連結部材に設けられた他のギヤ等に駆動手段の駆動力が直接或いは間接的に伝えられると、一対の原動ギヤが同軸的且つ一体的に回転する。
【0016】
一対の原動ギヤの一方は、一対の従動ギヤの一方に噛み合っているため、一方の原動ギヤの回転は一方の従動ギヤに伝えられ、これにより一方の従動ギヤが回転する。また、一対の原動ギヤの他方は、一対の従動ギヤの他方に噛み合っているため、他方の原動ギヤの回転は他方の従動ギヤに伝えられ、これにより他方の従動ギヤが回転する。
【0017】
ここで、一対の原動ギヤは互いに同じ形状であり、また、一対の従動ギヤは互いに同じ形状であるため、一対の従動ギヤは互いに同じ速度で回転する。
【0018】
このように一対の従動ギヤが同じ速度で回転すると、これらの従動ギヤの間に設けられたウオームギヤが回転する。さらに、ウオームギヤが回転することで、ウオームギヤに噛み合うウオームホイールにウオームギヤの回転力が伝えられる。
【0019】
一方、上記のように、ウオームギヤの回転力がウオームホイールに伝えられると、この回転力に応じた反力がウオームホイールからウオームギヤに付与される。ウオームギヤに付与された反力はウオームホイールからウオームギヤを離間させ、ウオームギヤを傾けようとする。
【0020】
ここで、本発明に係る駆動力伝達機構では、上記のようにウオームギヤの両端側に同軸的且つ一体的に設けられた従動ギヤに原動ギヤの回転力が伝えられることでウオームギヤが回転する構成である。したがって、本発明に係る駆動力伝達機構では、原動ギヤの回転力のうち、原動ギヤの半径方向外方に向く成分に基づく外力が、ウオームホイールがウオームギヤに付与する反力に対抗する。
【0021】
このように、ウオームギヤに付与された反力に対抗する外力がウオームギヤの軸方向両端に付与されることで、ウオームホイールからの反力と原動ギヤからの外力との釣り合いが取られ、ウオームギヤの傾きが防止又は効果的に抑制される。
【0022】
このため、本発明に係る駆動力伝達機構では、ウオームギヤの傾きに起因する異音の発生や、駆動力の伝達ロスを防止又は効果的に軽減できる。
【0023】
請求項2に記載の本発明に係る駆動力伝達機構は、請求項1に記載の本発明において、前記一対の従動ギヤと前記ウオームギヤとの間で前記ウオームギヤを回転自在に軸支する軸支部を備える、ことを特徴としている。
【0024】
請求項2に記載の本発明に係る駆動力伝達機構によれば、ウオームギヤと一対の従動ギヤとの間にそれぞれ設けられた軸支部によって、ウオームギヤが回転自在に軸支される。
【0025】
ここで、上記のようにウオームギヤにウオームホイールからの反力が付与され、これにより、ウオームギヤがウオームホイールから離間しようとすると、軸支部が反力の作用方向とは反対側からウオームギヤの軸方向両端(更に厳密に言えば、ウオームギヤと各従動ギヤとの間の部分)に干渉し、このときにウオームギヤの軸方向両端が軸支部に付与した押圧力に応じた反力がウオームホイールからの反力とは反対向きに作用して、ウオームホイールからの反力に対抗する。
【0026】
このように、ウオームギヤに付与されたウオームホイールからの反力に対抗する外力、すなわち、軸支部からの反力がウオームギヤの軸方向両端に付与されることで、ウオームホイールからの反力と軸支部からの反力との釣り合いが取られ、ウオームギヤの傾きが防止又は効果的に抑制される。
【0027】
このため、本発明に係る駆動力伝達機構では、ウオームギヤの傾きに起因する異音の発生や、駆動力の伝達ロスを防止又は効果的に軽減できる。
【0028】
また、本発明に係る駆動力伝達機構では、上記のように一対の従動ギヤとウオームギヤとの間で軸支部がウオームギヤを軸支しているため、仮に、ウオームギヤが傾いたとしても、軸支部がウオームギヤの両端に干渉することで、ウオームギヤの傾きの影響が軸支部を介してウオームギヤとは反対側、すなわち、従動ギヤまで及ばない。
【0029】
さらに、各従動ギヤはウオームギヤと同軸的且つ一体的に連結されているため、各従動ギヤはウオームギヤで軸支部に軸支されることになる。したがって、何らかの理由で従動ギヤが傾くようなことがあっても、軸支部が従動ギヤのウオームギヤ側で干渉することにより、従動ギヤの傾きが軸支部を介して従動ギヤとは反対側、すなわち、ウオームギヤに影響を及ぼすことがない。
【0030】
このため、本発明に係る駆動力伝達機構では、ウオームギヤ及び従動ギヤの何れか一方の傾きの影響を何れか他方に及ぼすことが防止又は効果的に抑制されるため、ウオームギヤとウオームホイールとの噛み合いや原動ギヤと従動ギヤとの噛み合いを良好に維持できる。これによっても異音の発生や、駆動力の伝達ロスを防止又は効果的に軽減できる。
【0031】
請求項3に記載の本発明に係る電動ドアミラー装置は、駆動手段の駆動力によりミラー本体を格納位置と展開位置との間で旋回させる電動ドアミラー装置であって、互いに同軸的且つ一体的に設けられ、前記駆動手段の駆動力によって一体的に回転する一対の原動ギヤと、前記一対の原動ギヤに対して平行な軸周りに回転可能に設けられると共に、前記一対の原動ギヤに噛み合い、各々が前記原動ギヤから回転力を受けて回転する一対の従動ギヤと、前記一対の従動ギヤの間に前記一対の従動ギヤに対して同軸的且つ一体的に設けられたウオームギヤと、前記ウオームギヤを介して前記一対の原動ギヤとは反対側で前記ウオームギヤに噛み合い、前記ウオームギヤの回転力を受けて自らの軸心周りに回転し、又は、前記回転力に応じた反力で前記ウオームギヤを前記軸心周りに回転させるウオームホイールと、を備え、前記ウオームホイールの回転又は前記ウオームホイール周りの前記第ウオームギヤの回転により前記ミラー本体を旋回させる、ことを特徴としている。
【0032】
請求項3に記載の本発明に係る電動ドアミラー装置によれば、一対の原動ギヤの少なくとも何れか一方、又は、これらの原動ギヤを同軸的且つ一体的に連結するシャフト等の連結部材に設けられた他のギヤ等に駆動手段の駆動力が直接或いは間接的に伝えられると、一対の原動ギヤが同軸的且つ一体的に回転する。
【0033】
一対の原動ギヤの一方は、一対の従動ギヤの一方に噛み合っているため、一方の原動ギヤの回転は一方の従動ギヤに伝えられ、これにより一方の従動ギヤが回転する。また、一対の原動ギヤの他方は、一対の従動ギヤの他方に噛み合っているため、他方の原動ギヤの回転は他方の従動ギヤに伝えられ、これにより他方の従動ギヤが回転する。
【0034】
ここで、一対の原動ギヤは互いに同じ形状であり、また、一対の従動ギヤは互いに同じ形状であるため、一対の従動ギヤは互いに同じ速度で回転する。
【0035】
このように一対の従動ギヤが同じ速度で回転すると、これらの従動ギヤの間に設けられたウオームギヤが回転する。さらに、ウオームギヤが回転することで、ウオームギヤに噛み合うウオームホイールにウオームギヤの回転力が伝えられる。
【0036】
ここで、ウオームホイールを回転自在な構造とした場合には、ウオームギヤの回転力を受けたウオームホイールは自らの軸心周りに回転し、このウオームホイールの回転によってミラー本体が格納位置から展開位置へ、又は、展開位置から格納位置へ旋回させられる。
【0037】
これに対して、基本的にウオームホイールの回転を規制した構造とした場合には、ウオームギヤの回転力を受けてもウオームホイールは自らの軸心周りに回転することができない。したがって、ウオームギヤがウオームホイールに付与した回転力に対応するウオームホイールからの反力によってウオームギヤひいてはウオームギヤがウオームホイールの周囲を回転する。このウオームホイール周りのウオームギヤの回転によってミラー本体が格納位置から展開位置へ、又は、展開位置から格納位置へ旋回させられる。
【0038】
一方、上記のように、ウオームギヤの回転力がウオームホイールに伝えられると、この回転力に応じた反力がウオームホイールからウオームギヤに付与される。ウオームギヤに付与された反力はウオームホイールからウオームギヤを離間させ、ウオームギヤを傾けようとする。
【0039】
ここで、本発明に係る電動ドアミラー装置では、上記のようにウオームギヤの両端側に同軸的且つ一体的に設けられた従動ギヤに原動ギヤの回転力が伝えられることでウオームギヤが回転する構成である。したがって、本発明に係る電動ドアミラー装置では、原動ギヤの回転力のうち、原動ギヤの半径方向外方に向く成分に基づく外力が、ウオームホイールがウオームギヤに付与する反力に対抗する。
【0040】
このように、ウオームギヤに付与された反力に対抗する外力がウオームギヤの軸方向両端に付与されることで、ウオームホイールからの反力と原動ギヤからの外力との釣り合いが取られ、ウオームギヤの傾きが防止又は効果的に抑制される。
【0041】
このため、本発明に係る電動ドアミラー装置では、ドアミラー本体の回動道さ中においてウオームギヤの傾きに起因する異音の発生や、駆動力の伝達ロスを防止又は効果的に軽減できる。
【0042】
【発明の実施の形態】
<本実施の形態の構成>
図2には、本発明の一実施の形態に係る電動ドアミラー装置10の駆動部12の構成が断面図によって示されている。この図に示されるように、本電動ドアミラー装置10の駆動部12はスタンド14を含めて構成される基板16を備えている。基板16は、図示しないステーに固定されており、ステーを介して図示しない車両のドアパネルに固定されている。
【0043】
基板16を構成するスタンド14からは、略車両上方へ向けて中空(すなわち、パイプ状)のシャフト18が立設されている。また、スタンド14の略車上方にはベース20が配置されている。ベース20は略車両上方側の端部が開口した略有底筒形状に形成されている。ベース20の底壁22にはシャフト18が貫通する円孔24が形成されており、シャフト18周りにベース20は回動可能とされている。
【0044】
ベース20の内側には、減速手段又は本発明の一実施の形態に係る駆動力伝達機構11を構成する特許請求の範囲で言うところのウオームホイールとしての第2ウオームホイール90がシャフト18に対して同軸的で且つ回転自在にシャフト18に軸支されている。底壁22を介して第2ウオームホイール90とは反対側には、クラッチ盤28が配置されている。クラッチ盤28にはシャフト18が貫通する孔が形成されているが、基本的にシャフト18の軸方向に沿った変位は可能であるものの、シャフト18周りの回転は不能とされている。
【0045】
さらに、クラッチ盤28を介して第2ウオームホイール90とは反対側には、圧縮コイルスプリング30がシャフト18に嵌挿されており、圧縮コイルスプリング30の付勢力がクラッチ盤28を第2ウオームホイール90へ押し付けている。圧縮コイルスプリング30の付勢力に基づくクラッチ盤28の押圧力がベース20の底壁22に第2ウオームホイール90を押し付けており、クラッチ盤28及び底壁22と第2ウオームホイール90との間の摩擦が基本的に底壁22及びシャフト18に対する第2ウオームホイール90の回転を不能にしている。
【0046】
一方、第2ウオームホイール90の半径方向外方のベース20上には、モータ支持盤36が設けられており、このモータ支持盤36上には駆動手段としてのモータ42が取り付けられている。モータ42の駆動軸44は、軸方向がシャフト18の軸方向に対して略同方向とされており、モータ支持盤36を貫通してベース20の底壁22側に延出されている。
【0047】
モータ42の駆動軸44は、軸方向がシャフト18の軸方向に対して略同方向とされており、モータ支持盤36を貫通して底壁22に形成された軸受孔92に回転自在に嵌め込まれて支持されている。
【0048】
モータ支持盤36と底壁22との間には、第1ウオームギヤ94が配置されている。図3に示されるように、第1ウオームギヤ94は略円筒形状に形成されており、その外周部に螺旋状のウオームギヤ歯が形成されている。また、第1ウオームギヤ94の内側は挿通孔96とされており、モータ42の駆動軸44が遊嵌されている。
【0049】
また、第1ウオームギヤ94には第1ウオームギヤ94の軸方向一端(上端)で開口した押圧片収容孔98が形成されており、上記の挿通孔96の上端は押圧片収容孔98の底部にて開口している。図3及び図4(A)に示されるように、押圧片収容孔98は大径部100を備えている。大径部100は挿通孔96よりも大径の円孔で挿通孔96に対して同軸的に形成されている。この大径部100の中心を介して大径部100の半径方向外方の一方の側には扇状部102が形成されており、また、大径部100を介して扇状部102とは反対側にも扇状部102が形成されている。
【0050】
これらの扇状部102は、その要の部分が大径部100や挿通孔96の軸心と略一致する扇形状に形成されている。また、扇状部102は、その軸心から扇の弧状部分までの径寸法は大径部100の半径寸法よりも充分に大きく、したがって、弧状部分は大径部100の内周部よりも第1ウオームギヤ94の外側に位置している。
【0051】
これらの扇状部102及び大径部100により構成された押圧片収容孔98には押圧片104が収容されている。押圧片104は略円筒形状の基部106を備えている。基部106の外径寸法は大径部100の内径寸法よりも極僅かに小さい程度とされており、押圧片104が押圧片収容孔98に収容された状態では、基部106が大径部100の内側で大径部100の軸心周りに回転自在に嵌挿される。
【0052】
また、基部106の内径寸法はモータ42の駆動軸44の外径寸法と略等しく(厳密には極僅かに小さい)、基部106は駆動軸44の基端側まで圧入されて基部106と駆動軸44とが略一体的に結合されている。
【0053】
一方、基部106の外周部からは略直方体形状の矩形片108が延出されている。矩形片108は基部106を介して互いに相反する方向に延出する如く形成されている(すなわち、矩形片108は一対形成されている)。基部106の外周部からの矩形片108の延出寸法は、扇状部102の軸心から弧部分までの径寸法から大径部100の半径寸法を差し引いた長さよりも僅かに小さく、基部106が大径部100に嵌挿された状態では一方の矩形片108が一方の扇状部102の内側に収容され、他方の矩形片108が他方の扇状部102に収容される。
【0054】
また、矩形片108の厚さ寸法(大径部100の軸心周り方向に沿った矩形片108の一方の面から他方の面までの長さ)は、一方の矩形片108の厚さ方向一方の面が一方の扇状部102の一方の辺の部分に相当する内周面に当接した状態で、他方の矩形片108の厚さ方向一方の面が他方の扇状部102の一方の辺の部分に相当する内周面に当接するように設定されている。
【0055】
したがって、両矩形片108の厚さ方向一方の面が扇状部102の内周面に当接した状態で基部106が大径部100の内側で所定角度(例えば、約60度)回転することにより、一方の矩形片108の厚さ方向他方の面が扇状部102の内周面に当接すると、他方の矩形片108の厚さ方向他方の面もまた扇状部102の内周面に当接することになる。
【0056】
一方、図2に示されるように、第1ウオームギヤ94の下端側は底壁22に形成されたギヤ収容部110に収容されている。また、図1及び図3に示されるように、第1ウオームギヤ94の側方には、減速手段又は駆動力伝達機構11を構成する第1ウオームホイール160が配置されており、第1ウオームギヤ94が第1ウオームホイール160に噛み合っている。
【0057】
第1ウオームホイール160の軸方向両端からはシャフト162が第1ウオームホイール160に対して同軸的且つ一体的に延出されている。これらのシャフト162は、周壁34の内側でベース20に機械的に連結された図示しない一対の支持壁に回転自在に軸支されている。また、第1ウオームホイール160の軸方向両端側には、減速手段又は駆動力伝達機構11を構成する原動ギヤ164が第1ウオームホイール160及びシャフト162に対して同軸的且つ一体的に設けられている。
【0058】
これらの原動ギヤ164は互いに同一形状の外歯の平歯車とされている。これらの原動ギヤ164の回転半径方向側方には、それぞれ減速手段又は駆動力伝達機構11を構成する従動ギヤ166が配置されている。これらの従動ギヤ166は、原動ギヤ164よりも歯数が多い外歯の平歯車で互いに同一形状とされており、各々が対応する原動ギヤ164に噛み合っている。
【0059】
これらの従動ギヤ166は、軸方向がシャフト162と同方向のシャフト168によって同軸的且つ一体的に連結されている。さらに、シャフト168の軸方向略中央部には、減速手段又は駆動力伝達機構11を構成する特許請求の範囲で言うところのウオームギヤとしての第2ウオームギヤ170がシャフト168に対して同軸的且つ一体的に設けられている。この第2ウオームギヤ170は、シャフト162(すなわち、原動ギヤ164)とは反対側で且つ上述した第2ウオームホイール90の半径方向外方に設けられており、第2ウオームホイール90に噛み合っている。
【0060】
また、上記の第2ウオームギヤ170と両従動ギヤ166との間には、軸支部としての支持壁172が設けられており、これらの支持壁172によってシャフト168、ひいては第2ウオームギヤ170及び両従動ギヤ166が回転自在に軸支されている。
【0061】
一方、図2に示されるように、周壁34の開口端側にはカバー48が配置されている。カバー48は周壁50を含めて構成されており、周壁50を周壁34の開口端へ嵌合させることで周壁50の周壁34とは反対側に形成された被覆部52が第2ウオームホイール90等、周壁34の内側に配置された各種部材やモータ42を略車両上方側から覆っている。
【0062】
さらに、図2に示されるように、ベース20の周壁34の外周一部にはブラケット82が形成されており、このブラケット82に反射面を有するミラー本体(反射鏡)が取り付けられた図示しないフレームが直接或いは間接的に固定される。
【0063】
<本実施の形態の作用、効果>
本電動ドアミラー装置10では、モータ42に電力が供給されることで駆動軸44が回転する。駆動軸44は挿通孔96に遊挿されているだけであるため、駆動軸44は挿通孔96内で回転する。駆動軸44が回転すると駆動軸44が圧入されることで駆動軸44と一体になった押圧片104が押圧片収容孔98内で回転する。押圧片104が回転することで、図4(A)に示されるように、それまで扇状部102の一方の辺に対応した内周面に接していた矩形片108は、図4(B)に示されるように、扇状部102の一方の辺に対応した内周面から離間して、扇状部102の他方の辺に対応した内周面に向かう。
【0064】
この状態から一定角度(例えば、約60度)駆動軸44が回転すると、図4(C)に示されるように、扇状部102の他方の辺に対応した内周面に矩形片108が干渉する。さらに、この状態から駆動軸44が回転すると、図4(D)に示されるように、駆動軸44の回転方向へ向けて扇状部102の他方の辺に対応した内周面を矩形片108が押圧する。これにより、駆動軸44の回転力、すなわち、モータ42の駆動力が第1ウオームギヤ94に伝えられ、第1ウオームギヤ94が回転する。
【0065】
すなわち、本電動ドアミラー装置10では、上記のようにモータ42に電力が供給されて駆動軸44が回転を開始しても、駆動軸44は空転して第1ウオームギヤ94を回転させることがなく、駆動軸44が所定角度回転して矩形片108が扇状部102の内周面に干渉してから駆動軸44が第1ウオームギヤ94を回転させる。これにより、モータ42の駆動開始直後においてモータ42に作用する負荷を小さくでき、モータ42を確実に作動させて、第1ウオームギヤ94を確実に回転させることができる。
【0066】
また、このように、モータ42の駆動力で第1ウオームギヤ94が回転すると、この回転力は第1ウオームホイール160に伝わり、第1ウオームホイール160を回転させ、更には、第1ウオームホイール160に同軸的且つ一体的に連結されている原動ギヤ164を回転させる。両原動ギヤ164が回転することで各原動ギヤ164にそれぞれ噛み合っている従動ギヤ166が回転する。両原動ギヤ164は互いに同一形状であり、また、両従動ギヤ166は互いに同一形状で同軸的且つ一体的に連結されているため、両原動ギヤ164が一体的に回転すると、両従動ギヤ166が一体的に回転する。両従動ギヤ166が回転することで両従動ギヤ166に同軸的且つ一体的に連結された第2ウオームギヤ170が回転する。
【0067】
このようにして第2ウオームギヤ170が回転することで、この回転力は第2ウオームギヤ170に噛み合う第2ウオームホイール90に伝えられる。
【0068】
しかしながら、上述したように、圧縮コイルスプリング30の付勢力に基づくクラッチ盤28の押圧力でベース20の底壁22及びクラッチ盤28と第2ウオームホイール90との間に摩擦が生じている。この摩擦によって第2ウオームホイール90は回転不能となっている。
【0069】
このため、第2ウオームギヤ170が第2ウオームホイール90に付与する押圧力に応じた第2ウオームホイール90からの反力で、第2ウオームギヤ170が第2ウオームホイール90周り(すなわち、シャフト18周り)に回転し、ベース20がシャフト18周りに回動する。
【0070】
このベース20の回動により車両の後方をミラー本体で視認できる展開位置と、ミラー本体の反射面が略車両幅方向内方(略車両室内側)を向く格納位置との間でブラケット82に固定された図示しないフレームが回動する。
【0071】
ところで、図1に示されるように、ベース20がシャフト18周りに回動する際に第2ウオームギヤ170及びシャフト168が、第2ウオームホイール90からの反力G1を受ける。この反力G1は、第2ウオームホイール90の回転周方向に対する接線方向成分と、第2ウオームホイール90の回転半径方向外方の成分と、に分けることができ、この第2ウオームホイール90の回転半径方向外方の成分である反力(外力)G1が第2ウオームホイール90から第2ウオームギヤ170を離間させるように作用する。
【0072】
ここで、このような反力G1により第2ウオームホイール90から第2ウオームギヤ170が離間しようとすると、反力G1の作用方向とは反対側から両支持壁172が第2ウオームギヤ170の軸方向両側のシャフト168に干渉し、シャフト168が両支持壁172を押圧した際に生じる反力F2が両支持壁172からシャフト168に付与される。
【0073】
このように、本電動ドアミラー装置10では、第2ウオームギヤ170に付与された反力G1に対し、反力G1とは反対方向の反力を両支持壁172が第2ウオームギヤ170の軸方向両側のシャフト168に付与することでバランス(釣り合い)がとられ、第2ウオームギヤ170やシャフト168が傾くことを効果的に抑制又は防止できる。
【0074】
このように、第2ウオームギヤ170やシャフト168の傾き抑制又は防止できることで、第2ウオームホイール90と第2ウオームギヤ170との噛み合いを良好に維持でき、これにより、第2ウオームホイール90と第2ウオームギヤ170との噛合性の低下に起因する異音の発生や回転力の伝達ロスを防止又は効果的に低減できる。
【0075】
また、支持壁172は、第2ウオームギヤ170と各従動ギヤ166との間に設けられ、各従動ギヤ166よりも第2ウオームギヤ170側でシャフト168を支持している。このため、仮に、僅かに第2ウオームギヤ170が傾いたとしても、この傾きに対して支持壁172が干渉することで、支持壁172を介して第2ウオームギヤ170とは反対側、すなわち、従動ギヤ166側に第2ウオームギヤ170の傾きの影響が及ばない。
【0076】
これにより、原動ギヤ164と従動ギヤ166との噛み合いを良好に維持することができ、原動ギヤ164と従動ギヤ166との噛合性の低下に起因する異音の発生や回転力の伝達ロスを防止又は効果的に低減できる。
【0077】
一方、仮に、原動ギヤ164からの回転力のうち、回転半径方向外方の成分である外力G3を従動ギヤ166が受けることで従動ギヤ166が傾こうとすると、従動ギヤ166に対して同軸的且つ一体的に連結されたシャフト168を軸支する支持壁172が外力G3の作用方向とは反対方向からシャフト168に干渉して反力G4をシャフト168に付与する。
【0078】
これにより、従動ギヤ166が原動ギヤ164から回転力を受けることでシャフト168、ひいては第2ウオームギヤ170が傾こうとしても、支持壁172からの反力G4によってシャフト168の傾きが防止又は効果的に抑制される。
【0079】
このようにして、シャフト168の傾きが防止又は効果的に抑制されることによっても第2ウオームホイール90と第2ウオームギヤ170との噛合性の低下に起因する異音の発生や回転力の伝達ロスを防止又は効果的に低減できる。
【0080】
また、僅かに第2ウオームギヤ170が傾いたとしても、この傾きに対して支持壁172が干渉することで、支持壁172を介して従動ギヤ166とは反対側、すなわち、第2ウオームギヤ170側に従動ギヤ166の傾きの影響が及ばない。これによっても、第2ウオームホイール90と第2ウオームギヤ170との噛み合いを良好に維持することができ、第2ウオームホイール90と第2ウオームギヤ170との噛合性の低下に起因する異音の発生や回転力の伝達ロスを防止又は効果的に低減できる。
【0081】
なお、本実施の形態では、第2ウオームギヤ170の両側でシャフト168を支持壁172で軸支した構成であったが、例えば、従動ギヤ166を介して第2ウオームギヤ170とは反対側に軸受孔等を形成して第2ウオームギヤ170、シャフト168、及び従動ギヤ166を軸支し、両原動ギヤ164の回転力に基づく外力G3で第2ウオームホイール90からの反力G1に対抗して第2ウオームギヤ170の傾きを防止又は抑制する構成としてもよい。
【0082】
また、本実施の形態は、本発明に係る駆動力伝達機構を電動ドアミラー装置10の駆動部12に適用した構成であった。しかしながら、本発明に係る駆動力伝達機構が電動ドアミラー装置10の駆動部12のみに限定されるものではなく、ウオームギヤの回転力をウオームホイールに伝える機構を適用する構造であれば、その用途等に限定されることなく適用できる。
【0083】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明では、第2ウオームホイールからの反力に起因する第2ウオームギヤの撓みを効果的に防止又は抑制でき、このような撓みに起因する回転力の伝達ロスを効果的に防止又は軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電動ドアミラー装置の駆動部の要部(本発明の一実施の形態に係る駆動力伝達機構)を示す概略的な平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る電動ドアミラー装置の駆動部の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る電動ドアミラー装置の駆動部の要部の分解斜視図である。
【図4】駆動軸の回転力を受けるウオームギヤの平面図で、(A)は駆動軸の回転開始前の状態、(B)は駆動軸の回転開始直後の状態、(C)は駆動軸が所定角度回転した状態、(D)は駆動軸が所定角度を超えて回転した状態を示す。
【図5】ウオームギヤがウオームホイールから反力を示す図である。
【符号の説明】
10 電動ドアミラー装置
11 駆動力伝達機構
42 モータ(駆動手段)
44 駆動軸
90 第2ウオームホイール(ウオームホイール)
164 原動ギヤ
166 従動ギヤ
168 シャフト
170 第2ウオームギヤ(ウオームギヤ)
172 支持壁(軸支部)
Claims (3)
- ウオームホイールに噛み合うウオームギヤによって駆動手段の駆動力を前記ウオームホイールに伝える駆動力伝達機構であって、
前記ウオームギヤを介して前記ウオームホイールとは反対側で、前記ウオームギヤの軸方向に対して平行な軸線に沿って互いに同軸的且つ一体的に設けられ、前記駆動手段の駆動力によって一体的に回転する同一形状の一対の原動ギヤと、
前記ウオームギヤの軸方向両端に前記ウオームギヤに対して同軸的且つ一体的に設けられ、前記一対の原動ギヤに噛み合い、各々が前記原動ギヤから回転力を受けて回転する同一形状の一対の従動ギヤと、
を備えることを特徴とする駆動力伝達機構。 - 前記一対の従動ギヤと前記ウオームギヤとの間で前記ウオームギヤを回転自在に軸支する軸支部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動力伝達機構。 - 駆動手段の駆動力によりミラー本体を格納位置と展開位置との間で旋回させる電動ドアミラー装置であって、
互いに同軸的且つ一体的に設けられ、前記駆動手段の駆動力によって一体的に回転する一対の原動ギヤと、
前記一対の原動ギヤに対して平行な軸周りに回転可能に設けられると共に、前記一対の原動ギヤに噛み合い、各々が前記原動ギヤから回転力を受けて回転する一対の従動ギヤと、
前記一対の従動ギヤの間に前記一対の従動ギヤに対して同軸的且つ一体的に設けられたウオームギヤと、
前記ウオームギヤを介して前記一対の原動ギヤとは反対側で前記ウオームギヤに噛み合い、前記ウオームギヤの回転力を受けて自らの軸心周りに回転し、又は、前記回転力に応じた反力で前記ウオームギヤを前記軸心周りに回転させるウオームホイールと、
を備え、前記ウオームホイールの回転又は前記ウオームホイール周りの前記第ウオームギヤの回転により前記ミラー本体を旋回させる、
ことを特徴とする電動ドアミラー装置。
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